JP3876488B2 - 炭化珪素単結晶の製造方法 - Google Patents

炭化珪素単結晶の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭化珪素単結晶の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、炭化珪素単結晶基板は高耐圧電力用トランジスタ、高耐圧ダイオード等の高耐圧大電力用半導体装置の半導体基板として開発されている。そして、この炭化珪素単結晶基板の製造方法として、大面積かつ高品質の炭化珪素単結晶成長に有利な昇華再結晶法が主に採用されている。
【0003】
この昇華再結晶法は、黒鉛製ルツボ内に配置された炭化珪素原料を加熱昇華させ、同じく黒鉛製ルツボ内に炭化珪素原料と対向する位置に配置された炭化珪素単結晶からなる炭化珪素種結晶上に炭化珪素単結晶を成長させるものである。
そして、炭化珪素種結晶を効率よく形成する方法として、シリコン基板上に炭化珪素単結晶層をCVD法によりエピタキシャル成長させたあと、シリコン基板を除去して炭化珪素単結晶層のみを残し、この炭化珪素単結晶層を種結晶として昇華再結晶法により炭化珪素単結晶を成長させる方法がある。
【0004】
また、エピタキシャル成長の成長速度が非常に遅いため、再現性を考慮すると、種結晶となる炭化珪素単結晶層の膜厚はせいぜい20μmの厚さにしかできない。このような極めて薄い種結晶は破損し易いため、特開平9−77595号公報に示すように、炭化珪素単結晶層に補強部材を設けたあとシリコン基板を薬液や機械研磨によって除去し、シリコン基板を除去した後においては補強部材によって種結晶が破損するのを防止するという方法がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、薬液によってシリコン基板を除去する場合には、シリコン基板を薬液に浸す工程や洗浄工程等が必要となり、ハンドリング工程も多くなる。また、種結晶である炭化珪素単結晶層を固定しておく接着剤が薬液によって溶けてしまうという問題がある。
【0006】
一方、機械研磨によってシリコン基板を除去する場合には、研磨工程等の工程が必要になるだけでなく、炭化珪素単結晶層の膜厚を考慮した膜厚設定が困難であるという問題がある。
本発明は上記問題に鑑みたもので、薬液や機械研磨によらずにシリコン基板を除去することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、以下の技術的手段を採用する
【0008】
請求項に記載の発明においては、珪素単結晶基板(11)上に炭化珪素単結晶層(12)を成長させる工程と、炭化珪素単結晶層(12)を台座(4b)に接合することにより炭化珪素単結晶層(12)及び珪素単結晶基板(11)を台座(4b)に固定する工程と、その台座(4b)を珪素単結晶基板(11)の融点以上の温度状態として珪素単結晶基板(11)を溶融・除去して炭化珪素単結晶層(12)を種結晶として露出させる工程とを備えることを特徴としている。
【0009】
このように、珪素単結晶基板(11)を熱処理によって溶融、除去しているため、薬液や機械研磨によらずに珪素単結晶基板(11)を除去することができる。そして、熱処理によって珪素単結晶基板(11)を除去できるため、洗浄工程や膜厚設定等を行う必要もない。そして、珪素単結晶基板(11)を除去する前に、炭化珪素単結晶層(12)及び珪素単結晶基板(11)を台座(4b)に固定しているため、珪素単結晶基板(11)を除去したあとにおいても台座(4b)が補強層としての役割を果たし、ハンドリング時等に炭化珪素単結晶層(12)が破損することを防止することができる。
【0010】
さらに、請求項に示すように、結晶成長装置(17)内で珪素単結晶基板(11)を溶融、除去すれば、珪素単結晶基板(11)の除去を炭化珪素単結晶(16)を形成する結晶成長装置(17)によって行うことができるため、珪素単結晶基板(11)の除去を個別に行う場合に比して工程数を削減することができる。
【0011】
請求項に記載の発明においては、炭化珪素単結晶層(12)の表面に補強層(14)を形成しておき、この補強層(14)を台座(4b)に接合することによって炭化珪素単結晶層(12)及び珪素単結晶基板(11)を台座(4b)に固定することを特徴としている。このように、補強層(14)を設けることによって炭化珪素単結晶層(12)を補強することができ、より炭化珪素単結晶層(12)の破損を防止することができる。
【0012】
具体的には、請求項に示すように、珪素単結晶基板(11)を溶融、除去する工程における温度よりも高い温度で、炭化珪素単結晶層(12)を種結晶として炭化珪素単結晶(16)を成長させる工程を行うようにする。請求項に記載の発明においては、珪素単結晶基板(11)を溶融、除去する工程を、2000℃以下の温度で行うことを特徴としている。
【0013】
2000℃を超える温度で長時間の熱処理を行うと、炭化珪素単結晶層(12)において再結晶、多形の転移に伴う欠陥の発生及び変質という不具合が発生する場合がある。そして、珪素単結晶基板(11)を除去するための工程は長時間必要とされるため、この工程における温度を2000℃以下で行うことにより上記不具合の発生を防止することができる。
【0014】
請求項に記載の発明においては、珪素単結晶基板(11)として、厚さが1乃至3mmのものを用いることを特徴としている。このように、珪素単結晶基板(11)の厚さを1mm以上にすることにより、珪素単結晶基板(11)と炭化珪素単結晶層(12)の熱膨張率の相違から発生する反りを低減することができる。これにより、前記反りによって発生する炭化珪素単結晶層(12)の破損を防止することができる。また、珪素単結晶基板(11)の厚さを3mm以下にすることによって珪素単結晶基板(11)を除去する時間を比較的短時間にすることができる。
【0015】
請求項に記載の発明においては、珪素単結晶基板(11)として、複数枚の珪素単結晶基板を張り合わせたものを用いることを特徴としている。このように、珪素単結晶基板(12)として、複数枚の珪素単結晶基板(12)を張り合わせたものにすることにより、珪素単結晶基板(12)の剛性を向上させることができると共に、珪素単結晶基板(11)と炭化珪素単結晶層(12)の熱膨張率の相違から発生する反りによって珪素単結晶基板(12)のうちの一部が割れてしまっても残りの部分で珪素単結晶基板(12)全体が割れることを防止することができる。これにより、炭化珪素単結晶層(12)の破損を防止することができる。
【0016】
請求項に記載の発明においては、炭化珪素単結晶層(12)を種結晶として炭化珪素単結晶(16)を成長させる工程は、黒鉛製ルツボ内(4a)において炭化珪素原料粉末(15)を不活性ガス雰囲気中で加熱昇華させ、炭化珪素原料粉末(15)よりやや低温になっている炭化珪素単結晶層(12)の表面側に炭化珪素単結晶(16)を成長させるものであることを特徴としている。
【0017】
このように、いわゆる昇華再結晶法によって炭化珪素単結晶(16)を成長させることによって、炭化珪素基板に適した厚いバルク状の炭化珪素単結晶(16)を短時間で形成することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。
本実施形態で用いる結晶成長装置を図1に示す。この結晶成長装置17は、昇華再結晶法により炭化珪素バルク単結晶16を形成するためのものである。以下、図1に基づいて結晶成長装置について説明する。
【0019】
結晶成長装置17には、真空容器(チャンバー)1が備えられている。この真空容器1内には基台2が設けられており、この基台2の上には断熱材3で覆われた黒鉛製ルツボ4が搭載されている。黒鉛製ルツボ4は、上面が開口するルツボ本体4aと、ルツボ本体4aの開口部を塞ぐ蓋材4bとからなる。そして、蓋材4bが、種結晶となる(111)面立方晶炭化珪素単結晶層12を支持する台座になる。
【0020】
又、断熱材3は、黒鉛製ルツボ4の底面および側面を覆う本体部3aと、黒鉛製ルツボ4の上部を覆う蓋部3bとからなっている。
真空容器1には排気弁7を備えた排気管5が設けられている。また、排気管5には真空ポンプ6が接続されており、この真空ポンプ6によって真空容器1内の排気が行えるようになっている。さらに、真空容器1には不活性ガス導入管8が設けられており、この不活性ガス導入管8を通して不活性ガスであるアルゴンガスを真空容器1に導入できるようになっている。
【0021】
真空容器1内における断熱材3の外周側には誘導コイル9が配置され、この誘導コイル9に対し高周波電源から電力を供給することにより黒鉛製ルツボ4を誘導加熱できるようになっている。
真空容器1の内部における断熱材3の蓋部3b及び底面部には温度測定穴10a、10bがそれぞれ設けられており、この温度測定穴10a、10bを通して黒鉛製ルツボ4内の光を取り出して光放射温度計にてルツボ本体4aの温度を測定できるようになっている。
【0022】
次に、炭化珪素バルク単結晶の製造方法を図2(a)〜(e)に示す炭化珪素単結晶の状態図に基づいて説明する。
〔図2(a)の工程〕
まず、立方晶型結晶である珪素単結晶基板として、(111)面方位を基板表面とするシリコンウェハ11を用意する。このシリコンウェハ11には、直径が4インチで、厚さが1乃至3mmのものを用いている。
【0023】
そして、このシリコンウェハ11の上に種結晶となる表面が(111)面方位である立方晶炭化珪素単結晶層12を化学的気相エピタキシャル成長法(CVD)により成長させる。より詳しくは、メタンなどの炭素供給用原料ガスおよびシランなどの珪素供給用原料ガスの化学反応による化学的気相成長法を用いる。このとき、炭化珪素単結晶層12の膜厚は1〜20μmである。
【0024】
〔図2(b)の工程〕
次に、図1における黒鉛製ルツボの蓋材4bを結晶成長装置17から取り外し、シリコンウェハ11と炭化珪素単結晶層12を一体にしたまま、炭化珪素単結晶層12側に接着剤13を付着させて、これらを蓋材4bに固定する。
このとき、シリコンウェハ11を予め除去して薄い炭化珪素単結晶層12だけを直接蓋材4bに接着固定すると、薄い炭化珪素単結晶層12が反ったり、浮いてしまったり、若しくはうねってしまったりする場合が発生するが、シリコンウェハ11が補強部材の役割を果たすため、このような状態を防ぐことができる。
【0025】
また、上記接着に際して、シリコンウェハ11や炭化珪素単結晶層12に発生した反りを戻しつつ行う必要があるが、この反りを戻すことによって炭化珪素単結晶層12が割れたりして破損することがある。
図3(a)に炭化珪素単結晶層12を成長させた時におけるシリコンウェハ11の反り特性を示す。但し、図3(a)はシリコンウェハ11の直径が100mmであり、炭化結晶単結晶層12の厚さが20μmの場合の特性を示している。シリコンウェハ11に炭化珪素単結晶12を成長させたとき、シリコンウェハ11と炭化珪素単結晶層12との熱膨張率の相違から図3(b)に示すように反りが発生する。この反りは、シリコンウェハ11の厚さに関係しており、厚くなればなるほど反りが小さくなる。そして、図3(b)に示されるようにシリコンウェハ11の厚さが1mm以上になると上記反りが十分に低減されていることが分かる。
【0026】
このように、シリコンウェハ11として厚さが1mm以上のものを用いているため、上記反りが低減でき、この反りを戻そうとするときに炭化珪素単結晶層12が割れるのを防止することができる。また、シリコンウェハ11の厚さが厚くなるとシリコンウェハ11を除去するために長時間必要となるため、シリコンウェハ11の厚さは3mm以下にするのが好ましい。
【0027】
続いて、図1に示すように、黒鉛製ルツボの蓋材4bを結晶成長装置17に装着する。このようにして、(111)面立方晶炭化珪素単結晶層12が黒鉛製ルツボの蓋材4bの下面に配置される。
一方、図1における黒鉛製ルツボ4には炭化珪素原料粉末15が100g充填されている。炭化珪素原料粉末15は、研磨材として市販されている平均粒径500μmのものを予め真空中で1800〜2000℃の熱処理を施して使用している。
【0028】
この状態から、排気管5と排気弁7とを通して真空ポンプ6により真空容器1内を排気する。このときの真空度は10-3〜10-4Torr とする。
さらに、高周波電源から誘導コイル9に電力供給を行って、黒鉛製ルツボ4を誘導加熱する。このとき、温度は温度測定穴10aを通して黒鉛製ルツボ4の底を光放射温度計により測定する。そして、温度を監視しながら1200℃まで温度を上昇した後、不活性ガス導入管8よりアルゴンガスを導入して真空容器1内の圧力を500Torr にする。
【0029】
〔図2(c)の工程〕
その後、誘導コイル9に電力を供給して再び温度を上昇させて、黒鉛製ルツボ4の温度をシリコンの溶融温度にする。このシリコンの溶融温度は約1400℃であるため、黒鉛製ルツボ4の温度が1400℃以上の温度になるように、温度測定穴10bを通して光放射温度計により監視しながら、誘導コイル9への供給電力を調整する。このとき、真空容器1の圧力を低くするとシリコンの蒸発速度が大きくなるため、真空ポンプ6により真空容器1の圧力を低くした方がシリコンの除去時間を短くできる。ここでは真空容器の真空度を1Torrとした。
【0030】
但し、このとき、黒鉛製ルツボ4内の温度が2000℃にならないように行う。シリコンウェハ11の除去には比較的長時間が必要とされ、長時間に渡って黒鉛製ルツボ4内の温度が2000℃以上である場合には、炭化珪素単結晶層12の再結晶、多形の転移に伴う欠陥の発生、変質等の不具合が生じてしまうからである。
【0031】
そして、黒鉛製ルツボ4の温度が1400℃以上になるようにして所定時間維持すると、シリコンウェハ11が全て溶融、除去されてしまい、種結晶となる炭化珪素単結晶層12のみが残留した状態となる。
このように、黒鉛製ルツボ4内でシリコンウェハ11を除去しているため、シリコンウェハ11を除去するためにのみ必要な工程を廃止できると共に、シリコンウェハ11を除去したあとの種結晶となる炭化珪素単結晶層12の表面が大気に触れることがないため、種結晶表面の汚染による欠陥発生をなくすことができる。
【0032】
なお、このシリコンウェハ11は除去されたのち、結晶成長装置17外に排出してもよいが、結晶成長装置17内に残留させた場合においても、シリコンウェハ11は珪素で構成されているため、炭化珪素単結晶16を成長させるときの原料として寄与する。
〔図2(d)の工程〕
続いて、再び真空容器1の圧力を500Torrに戻し、さらに誘導コイル10に電力を供給し、さらに黒鉛製ルツボ4の温度を上昇させて炭化珪素原料粉末15の昇華温度にする。この炭化珪素原料粉末15の昇華温度は2330℃であり、温度測定穴10aを通じて光放射温度計により監視して行う。このとき、(111)面立方晶炭化珪素単結晶層12の温度は、黒鉛製ルツボ4と誘導コイル10の相対的な位置関係により50〜350℃だけ炭化珪素原料粉末15の温度より低くなっている。
【0033】
そして、炭化珪素原料粉末15と(111)面立方晶炭化珪素単結晶層12の温度が安定した後、真空ポンプ76より真空容器1を減圧する。減圧とともに炭化珪素原料粉末15から昇華が始まり結晶成長が開始される。この際、1Torr まで減圧して成長圧力とする。又、結晶成長中はアルゴンガスを10リットル/min流し、排気弁7の開度を調節しながら真空ポンプ6により圧力を制御する。
【0034】
炭化珪素原料粉末15から昇華したガスは種結晶である炭化珪素単結晶層12との温度差を駆動力として(111)面立方晶炭化珪素単結晶層12まで到達して、炭化珪素単結晶の結晶成長が進行する。そして、5時間の結晶成長を行った後、アルゴンガスを真空容器1に導入すると共に誘導コイル9への電力供給を停止し、温度を下げて成長終了とする。
【0035】
その結果、種結晶である(111)面立方晶の炭化珪素単結晶層12上に(0001)面α型炭化珪素単結晶(炭化珪素単結晶インゴット)16が形成される。(0001)面α型炭化珪素単結晶16はその厚さが約2mm、直径が4インチである。このようにして、大口径の炭化珪素単結晶インゴットが得られる。つまり、黒鉛製ルツボ4内において炭化珪素原料粉末15を不活性ガス雰囲気中で加熱昇華させ、炭化珪素原料粉末15よりやや低温になっている(111)面立方晶の炭化珪素単結晶層12の表面側に炭化珪素単結晶を成長させるという昇華再結晶法にて(0001)面α型炭化珪素単結晶16が得られる。この昇華再結晶法により(0001)面α型炭化珪素単結晶16を形成した場合、比較的短時間で炭化珪素単結晶16を炭化珪素基板に適した厚いバルク状のもので形成することができる。
【0036】
〔図2(e)の工程〕
さらに、図6に示すように、(0001)面α型炭化珪素単結晶16を黒鉛製ルツボの蓋材4bから取り外し、得られた結晶をスライス、研磨して半導体基板となる。この基板をX線回折およびラマン分光により結晶面方位、結晶構造(多形)を判定した結果、6H型の(0001)面方位をもつものであることが確認された。
【0037】
この基板を用いて、大電力用の縦型MOSFET、pnダイオード、ショットキーターイオード等の半導体装置を作製することができる。
このように、シリコンウェハ11を除去しない状態で、炭化珪素単結晶層12を台座となる蓋材4bに接着させ、この台座に接着した状態で黒鉛製ルツボ4に入れて、シリコンウェハ11を除去すると共に炭化珪素単結晶層12の表面に(0001)面α型炭化珪素単結晶16を形成しているため、薬液や機械研磨によらなくても(0001)面α型炭化珪素結晶16を形成することができる。また、炭化珪素単結晶層12を形成後のハンドリング工程としては炭化珪素単結晶層12を台座に接着する工程のみであり、非常に少ない。このため、極めて薄い炭化珪素単結晶層12をハンドリング工程において破損させてしまったりすることを防止することができる。
【0038】
なお、本実施形態においては、シリコンウェハ11が補強材としての役割を果たしてため、炭化珪素単結晶層12の割れなどを防止するための補強材をシリコンウェハ11の他に設ける必要がない。このため、シリコンウェハ11とは別の補強材を形成する場合において必要とされる工程を廃止することができる。
(第2実施形態)
図4(a)〜(f)に本実施形態における炭化珪素単結晶の状態図を示し、この図に基づいて本実施形態における炭化珪素バルク単結晶の製造方法を説明する。本実施形態における炭化珪素バルク単結晶の製造方法においては、上記第1実施形態と異なりシリコンウェハ11とは別個に、炭化珪素単結晶層12を挟んでシリコンウェハ11の反対側の面に補強層14を設け、これによって炭化珪素単結晶層12を補強した状態で炭化珪素単結晶の結晶成長を施している。
【0039】
まず、図4(a)に示す工程においては、第1実施形態の図2(a)に示す工程と同様の工程を経てシリコンウェハ11上に炭化珪素単結晶層12を成長させる。
そして、図4(b)に示すように、炭化珪素単結晶層12を挟んでシリコンウェハ11の反対側の面に補強層14を形成する。この補強層14は炭化珪素単結晶層12を形成したのち、続けて同一の装置内で形成する。具体的には、炭化珪素単結晶層12より結晶性の劣る炭化珪素単結晶をCVD法によって成長させて補強層14を形成する。このとき、補強層14は、膜厚が50〜200μmで形成する。
【0040】
その後、図4(c)に示すように補強層14に接着剤を付着させて、シリコンウェハ11、炭化珪素単結晶層12及び補強層14を一体にしたまま黒鉛製ルツボの蓋材4bに固定する。
この後の図4(d)〜(f)に示す工程は、第1実施形態における図2(c)〜(e)と同様な工程であり、それぞれシリコンウェハ11を除去する工程、(0001)面α型炭化珪素単結晶16を成長させる工程、(0001)面α型炭化珪素単結晶16を黒鉛製ルツボの蓋材4bから取り外す工程等を経て炭化珪素バルク単結晶の製造が終了する。
【0041】
このように補強層14を設けることによって炭化珪素単結晶層12を補強することができるため、より炭化珪素単結晶層12の破損を防止することができる。
(他の実施形態)
▲1▼第1、第2実施形態においては、シリコンウェハ11を結晶成長装置17内で除去しているが、シリコンウェハ11を熱処理によって除去するものであれば、結晶成長装置17以外の装置でシリコンウェハ11を除去してもよい。
【0042】
この場合においても、洗浄工程等を行う必要がないため、シリコンウェハ11を薬液で除去する場合に比して、ハンドリング工程が少なくできる。
▲2▼第1、第2実施形態においては、単一の基板からなるシリコンウェハ11を基板に用いて種結晶の炭化珪素単結晶層12を形成したが、所望の厚さのシリコンウェハを複数張り合わせたもの、例えば、厚さが0.9mmのウェハを2枚張り合わせたものを基板に用いてもよい。
【0043】
このように複数枚のシリコンウェハを張り合わせた場合には、炭化珪素単結晶層12とシリコンウェハとの熱膨張率の相違によって複数枚のシリコンウェハのうちの一部が割れてしまった場合においても他のシリコンウェハによって炭化珪素単結晶が割れるのを防止することができる。
なお、規格品にある比較的薄いシリコンウェハを複数枚張り合わせることによって比較的厚めなシリコンウェハが形成できるため、基板として規格品のシリコンウェハを適用することもできる。
【0044】
▲3▼第1、第2実施形態においては、昇華再結晶法によって炭化珪素単結晶インゴットを形成したが、結晶成長法によって形成するものであれば他の方法でもよく、例えばCVD法によって炭化珪素単結晶インゴットを形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に用いる炭化珪素単結晶の成長装置の断面図である。
【図2】炭化珪素単結晶の状態を示す説明図である。
【図3】シリコンウェハ11の厚さに対する反り量の特性を示す相関図である。
【図4】第2実施形態における炭化珪素単結晶の状態を示す説明図である。
【符号の説明】
4…黒鉛製ルツボ、4b…蓋材、11…シリコンウェハ、
12…炭化珪素単結晶層、13…接着剤、14…補強層、
16…炭化珪素単結晶インゴット、17…結晶成長装置。

Claims (8)

  1. 炭化珪素単結晶層(12)を種結晶とし、該種結晶を台座(4b)に接合した状態にて、炭化珪素単結晶(16)を成長させる装置(4a)内に該台座(4b)を載置して炭化珪素原材料(15)を加熱昇華させ、前記種結晶上に前記炭化珪素単結晶(16)を成長させる方法であって、
    珪素単結晶基板(11)上に前記炭化珪素単結晶層(12)を成長させる工程と、
    前記珪素単結晶基板(11)と前記炭化珪素単結晶層(12)のうち、前記炭化珪素単結晶層(12)側を前記台座(4b)に接合することにより前記炭化珪素単結晶層(12)及び前記珪素単結晶基板(11)を前記蓋部材(4b)に固定する工程と、
    前記炭化珪素単結晶層(12)及び前記珪素単結晶基板(11)が固定された前記台座(4b)を前記珪素単結晶基板(11)の融点以上の温度状態とし、前記珪素単結晶基板(11)を溶融・除去して前記炭化珪素単結晶層(12)を前記種結晶として露出させる工程とを備えることを特徴とする炭化珪素単結晶の製造方法。
  2. 珪素単結晶基板(11)上に炭化珪素単結晶層(12)を成長させる工程と、
    前記珪素単結晶基板(11)と前記炭化珪素単結晶層(12)のうち、前記炭化珪素単結晶層(12)側を結晶成長装置(1)の台座(4b)に接合することにより前記炭化珪素単結晶層(12)及び前記珪素単結晶基板(11)を前記台座(4b)に固定する工程と、
    前記台座(4b)を前記結晶成長装置(17)に装着する工程と、
    前記結晶成長装置(17)内の温度を前記珪素単結晶基板(11)の融点以上の温度にして、前記珪素単結晶基板(11)を溶融、除去する工程と、
    前記結晶成長装置(17)内に炭化珪素単結晶(16)の原料のガスを供給することにより、前記炭化珪素単結晶層(12)を種結晶として炭化珪素単結晶(16)を成長させる工程とを備えたことを特徴とする炭化珪素単結晶の製造方法。
  3. 前記炭化珪素単結晶層(12)の表面に補強層(14)を形成する工程を有し、前記補強層(14)を前記台座(4b)に接合することによって前記炭化珪素単結晶層(12)及び前記珪素単結晶基板(11)を前記台座(4b)に固定することを特徴とする請求項1または2に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
  4. 前記炭化珪素単結晶層(12)を種結晶として炭化珪素単結晶(16)を成長させる工程における温度は、前記珪素単結晶基板(11)を溶融、除去する工程における温度よりも高温で行うことを特徴とする請求項1または2に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
  5. 前記珪素単結晶基板(11)を溶融、除去する工程を、2000℃以下の温度で行うことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1つに記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
  6. 前記珪素単結晶基板(11)として、厚さが1乃至3mmのものを用いることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1つに記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
  7. 前記珪素単結晶基板(11)として、複数枚の珪素単結晶基板を張り合わせたものを用いることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1つに記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
  8. 前記炭化珪素単結晶層(12)を種結晶として炭化珪素単結晶(16)を成長させる工程は、黒鉛製ルツボ内(4a)において炭化珪素原料粉末(15)を不活性ガス雰囲気中で加熱昇華させ、前記炭化珪素原料粉末(15)よりやや低温になっている前記炭化珪素単結晶層(12)の表面側に炭化珪素単結晶(16)を成長させるものであることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1つに記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
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