JP3876306B2 - 混合伝導性酸化物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸素分離材料や酸素富化材料等として有用な、新規な混合伝導性酸化物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、たとえばLa1-xSrxCo1-yFeyO3のような複合酸化物からなる、酸素イオン伝導体を用いて酸素を分離し純酸素や酸素富化空気を製造することは知られている。
しかし、これらの複合酸化物は,▲1▼酸素透過速度が低い、▲2▼酸素の透過により脆化現象が起こり耐久性に欠ける、▲3▼試料中に含まれる酸素量(酸素不定比性)が変化しやすく、温度、雰囲気によって試料の膨張、収縮が大きく、試料合成時に機械的な破壊が起こりやすいためその製造が困難である、等といった欠点があり、実使用上大きな制約があった。
【0003】
このため、酸素イオン伝導体と電子伝導体を複合化し、それぞれの材料の性能を十分に発揮できる微細構造を自己組織化的に形成させ、高酸素イオン透過性能と高電子伝導性を両立させた、酸化物イオン伝導体と金属からなる複合材料系混合伝導体が検討されている(Keqin Huang et al. Electrochemical and Solid-State Letters, 2(8) (1999) p.375-378;J. E. ten Elshof et al. J. Electrochemical Society, 144(12) (1997) p.4361-4366;C. S. Chen et al. Solid State Ionics, 76 (1995) p.23-28 ;C. S. Chen et al. Solid State Ionics, 99 (1997) p.215-219 )。
これらの混合伝導体は、具体的には、混合伝導体における電子伝導性向上のために金属成分殊に貴金属を分散させたものであり、電子伝導性は高まるものの、添加金属の融点の制約から高温焼結ができず緻密な焼結体の作製が困難であり、またその安定性、耐久性等にも難があり、更には本質的にそれぞれの材料の伝導度に大きな制約があるため、両者の伝導性を効率よく発現するものではなかった。
【0004】
また、MgLaCrOxとZr0.862Y0.138O1.931の混合焼結体( 特開2000-229215号公報)、
1000℃における酸化ネオジウム(Nd2O3)/酸化銅(CuO)/酸化セリウム(CeO2)の組成と生成する化合物(N. Charles, Pieczulewski, K. S. Kirkpatrick, and T. Mason, J. Am. Ceram. Soc., 73 (1990) p.2141-43.)、酸化ジルコニウム(ZrO2)に酸化インジウム(In2O3)を混ぜて1600℃で反応させた系(L. J. Gauckler and K. Sasaki, Solid State Ionics, 75 (1995) p.203-210)、酸素イオン伝導性酸化物Ce0.8Gd0.2O1.9と電子伝導性酸化物Gd0.7Ca0.3CoO3-dとの系(U. Nigge, H-D, Wiemhofer, E. W. J. Romer, H. J. M. Bouwmeester, and T. R. Schulte, Solid State Ionics, 146 (2002) p.163-174)などが報告されている。
【0005】
しかし、これらの報告には、反応・混合系における両酸化物の存在状態、熱力学的な安定挙動の有無、更には、両者の酸化物の形成する共存組織相が与える酸化物イオン伝導性及び電子伝導性の調製機能及びそれに由来する酸素透過性などの特性の解明については何ら触れられていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術を克服するためになされたものであり、酸素の授受が行われても脆化することなく安定に存在し、また、酸素イオン伝導性と電子伝導性の機能を物性の異なる酸化物の組み合わせや両者の組成比などを変えることにより任意に調節でき、これにより例えば所望の酸素イオン透過速度を与える材料や反応性材料として有効に使用することができ、しかも焼結性、成型性、加工性などに優れた混合伝導性酸化物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、混合伝導性酸化物の特性・性能・安定性等を改善すべく鋭意検討した結果、酸素イオン伝導性を有する酸化物と電子伝導性を有する酸化物の特定な組み合わせ系においては、両者の酸化物が複合酸化物(単一物質)を生成することなく熱力学的に平衡な二相共存状態を形成すること及びそれぞれの酸化物相に酸素イオン伝導性と電子伝導性を受け持たせ、必要によりその存在比率を例えば組成比を制御することでそれぞれの伝導性を等しくまたは近い状態とした場合には全体として最高の伝導性を確保できることを更には二相共存状態にある各酸化物は酸素の透過などによっても脆化することなく安定に存在することを見出し本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、この出願は以下の発明を提供するものである。
(1) CeO 2 − Ln 2 O 3 − ZnO ( Ln はランタノイド元素)、 Bi 2 O 3 − Ln 2 O 3 − ZnO ( Ln はランタノイド元素)、 CeO 2 − Nd 2 O 3 − Mn 2 O 3 および CeO 2 − Y 2 O 3 − ZnO − Al 2 O 3 から選ばれた酸素イオン伝導性を有する酸化物と電子伝導性を有する酸化物の組み合わせからなり、かつ該酸素イオン伝導性を有する酸化物と該電子伝導性を有する酸化物とは熱力学的に平衡状態にある混合組織相として存在していることを特徴とする混合伝導性酸化物。
(2) 上記(1)に記載の混合伝導性酸化物からなる酸素分離材料。
(3) 上記(1)に記載の混合伝導性酸化物からなる酸素富化材料。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の混合伝導性酸化物は、 CeO 2 − Ln 2 O 3 − ZnO ( Ln はランタノイド元素)、 Bi 2 O 3 − Ln 2 O 3 − ZnO ( Ln はランタノイド元素)、 CeO 2 − Nd 2 O 3 − Mn 2 O 3 および CeO 2 − Y 2 O 3 − ZnO − Al 2 O 3 から選ばれた酸素イオン伝導性を有する酸化物と電子伝導性を有する酸化物の組み合わせからなり、かつ該酸素イオン伝導性を有する酸化物と該電子伝導性を有する酸化物とは熱力学的に平衡状態にある混合組織相として存在していることを特徴としている。
【0010】
本明細書でいう、「酸素イオン伝導性を有する酸化物」とは低価数の金属イオンを溶解させることにより、高温で安定な蛍石構造相を低温まで安定化した酸化物)を意味する。なお、ここでいう、蛍石構造相には、立方晶系を有する安定化ジルコニア、酸化セリウム、安定化ビスマス酸化物のみならず、例えば正方晶系を有するジルコニア、菱面体晶系を有するアルカリ金属酸化物-酸化ビスマス化合物のように蛍石構造相に類似する構造をとりうる酸化物も包含される。
また、本明細書でいう、「電子伝導性を有する酸化物」とは、酸素不定比性あるいは価数の異なるイオンの溶解により自由電子が生成し、電子による伝導が固体内の構成イオンの伝導よりも100倍以上大きい酸化物を意味する。
また、「両者の酸化物とが熱力学的に平衡状態にある混合組織相として存在する」とは、「複数の構成成分を混ぜて反応させ、平衡状態に至ったときに、化学的に種類の異なる少なくとも2つの生成物(相)が安定に混じり合う領域が存在する」と定義される。
【0011】
本発明においては、上記した混合組織相を形成するそれぞれの酸化物相に酸素イオン伝導性と電子伝導性を各別に受け持たせたことから、組成比などを制御するにことによりそれぞれの伝導性を等しくまたは近い状態とすることができ、全体として最高の伝導性を与える混合伝導性酸化物を得ることができる。またかかる混合伝導性酸化物においては、混合組織相(少なくとも2相共存状態)にある各酸化物は酸素の透過などによっても脆化することなく安定に存在するから、従来公知の単一の複合酸化物からなる混合導電性酸化物のように酸素の授受によって劣化することがなく耐久性に優れたものとなる。また、混合組織相系であるため、従来既知の単一混合伝導性酸化物の如く組成のズレによる性能の低下を防止することが可能となる。
【0012】
本発明に係る、「酸素イオン伝導性を有する酸化物と該電子伝導性を有する酸化物とが熱力学的に平衡状態にある二相混合組織相として存在する混合酸化物系」は例えば熱力学データを用いた組成状態図の理論計算等の種々の方法によって得ることができるが、両者の酸化物の理論的或いは実証的な多元系状態図を作成し、各相状態を詳細に観察する手法が好ましく採用される。
すなわち、三元系をはじめとする多元系状態図はその多くが未だ確立されておらず、二元系状態図を用いての材料開発と同様の展開はできないとされているが、多元系化合物やその状態図における個々の理論的考察から,熱力学的に平衡な状態で存在し得る二元系もしくはそれ以上の系の共存状態を予測することは可能である。
以下、一般的な多元系状態図の作成手順及び共存状態の観察手法について説明する。
【0013】
多元系状態図の作成に当たっては、まず、従来公知の酸素イオン伝導性酸化物及び電子伝導性酸化物を選定する。
酸素イオン伝導性酸化物は、従来公知の酸化物から選択される。このような酸化物としては、酸化セリウム、酸化ビスマス、酸化ジルコニウムの単純酸化物及び酸素イオン伝導性を示す複合酸化物LaGaO3, Ba2In2O5これらの単純酸化物に例えば酸化ストロンチウムなどのアルカリ土類金属酸化物、酸化イットリウムなどの3価の希土類およびランタノイド酸化物のような酸素イオン伝導性賦活酸化物が導入されたLa0.9Sr0.1Ga0.8Mg0.2O2.85,Ce0.8Y0.2O1.9,Zr0.86Y0.14O1.93,Bi1.6Y0.4O3などが挙げられる。
【0014】
なお、本願発明は、上記したように、混合組織相を形成するそれぞれの酸化物相に酸素イオン伝導性と電子伝導性を各別に受け持たせたことから、組成比などを制御するにことによりそれぞれの伝導性を等しくまたは近い状態とし、全体として最高の伝導性を与える混合伝導性酸化物を得ることを目的としているので、酸素イオン伝導性賦活酸化物としては、電子伝導性酸化物の電子伝導性を阻害しないような酸化物を選定しておくことが重要である。
【0015】
電子伝導性酸化物としては、従来公知のZnO,TiO2,SnO2,In2O3,SrTiO3, Nd2CuO4,LaMnO3などが挙げられるが、酸素透過膜の作動温度(800〜1000℃)で電子伝導度の高い単純酸化物(1種類の金属イオンと酸素から構成される酸化物)、例えばZnO,TiO2,SnO2,In2O3,CuO,Mn2O3などを選定しておくことが好ましい。
【0016】
上記酸素イオン伝導性酸化物と電子伝導性酸化物の選定終了後、これらの酸化物系の各状態図を理論的・実証的に作成する。ついで両者間に複合酸化物(単一化合物)を形成しない混合系を逐次検索することにより、所望の酸素イオン伝導性を有する酸化物と該電子伝導性を有する酸化物とが熱力学的に平衡状態にある二相混合組織相として存在する所望の混合伝導性酸化物を得ることができる。
【0017】
本発明の混合伝導性酸化物は、上記したような手法により選定された、 CeO 2 − Ln 2 O 3 − ZnO ( Ln はランタノイド元素)、 Bi 2 O 3 − Ln 2 O 3 − ZnO ( Ln はランタノイド元素)、 CeO 2 − Nd 2 O 3 − Mn 2 O 3 および CeO 2 − Y 2 O 3 − ZnO − Al 2 O 3 から選ばれた酸素イオン伝導性を有する酸化物と電子伝導性を有する酸化物の組み合わせからなるものである。
【0018】
つぎに、酸素イオン伝導性酸化物、酸素イオン伝導性賦活酸化物、電子伝導性酸化物を様々な組成比で混合した場合を例にとりその状態図を説明する。
ギブスの相律によれば、このような混合系においては、平衡状態であれば1種類酸化物のみの組成領域、2種類の酸化物が混合した組成領域、3種類の酸化物が混合した組成領域に分類される。
【0019】
例えば、まず、酸素イオン伝導性酸化物としてCeO2を、酸素イオン伝導性賦活酸化物としてLn2O3を、電子伝導性酸化物としてZnOを組み合わせた場合、一定温度条件下での組成領域と生成する酸化物の関係(組成状態図)は図1のようになる。
【0020】
図1において、白の組成領域は各酸化物が1種類のみ存在する領域、濃ハッチングの組成領域は2種類の酸化物が2相平衡して存在する領域(2相平衡領域)する領域、薄ハッチングは3種類の酸化物が3相平衡して存在する領域(3相平衡領域)である。
図1から、CeO2−Ln2O3−ZnOの混合系においては酸素イオン伝導性酸化物(Ln2O3を固溶したCeO2)と電子伝導性酸化物(ZnO)との間に複合酸化物が形成されておらず、これらの酸化物は少なくとも熱力学的に平衡状態にある二相混合組織相として存在していることが分かる。従ってこの酸化物混合系は、本発明で使用できる混合伝導性酸化物ということができる。
【0021】
また、酸素イオン伝導性酸化物としてBi2O3を、酸素イオン伝導性賦活酸化物としてLn2O3を、電子伝導性酸化物としてZnOを組み合わせた場合、一定温度条件下での組成領域と生成する酸化物の関係(組成状態図)は図2のようになる。
図2において、白の組成領域は各酸化物が1種類のみ存在する領域、濃ハッチングの組成領域は2種類の酸化物が2相平衡して存在する領域(2相平衡領域)する領域、薄ハッチングは3種類の酸化物が3相平衡して存在する領域(3相平衡領域)である。
【0022】
図2から、Bi2O3−Ln2O3−ZnOの混合系においては酸素イオン伝導性酸化物(Bi2O3,Ln2O3)と電子導電性酸化物ZnOとの間に複合酸化物が形成されておらず、これらの酸化物は少なくとも熱力学的に平衡状態にある二相混合組織相として存在していることが分かる。従ってこの酸化物混合系は、本発明で使用できる混合伝導性酸化物系ということができる。
なお、この系においては、酸素イオン伝導性酸化物であるBi2O3と酸素イオン伝導性賦活酸化物Ln2O3の間に複合酸化物1、複合酸化物2及び複合酸化物3が形成され、これらの各複合酸化物1〜3と電子伝導性酸化物との間に新たな2相平衡領域が生まれ、全体として二相平衡領域が拡がることから、図1のものに比べさらに有利な混合電子伝導性酸化物ということができる。
【0023】
また、酸素イオン伝導性酸化物としてCeO2を、酸素イオン伝導性賦活酸化物としてY2O3を、電子伝導性酸化物としてTiO2を組み合わせた場合、一定温度条件下での組成領域と生成する酸化物の関係(組成状態図)は図3のようになる。
図3において、白の組成領域は各酸化物が1種類のみ存在する領域、濃ハッチングの組成領域は2種類の酸化物が2相平衡して存在する領域(2相平衡領域)する領域、薄ハッチングは3種類の酸化物が3相平衡して存在する領域(3相平衡領域)である。
【0024】
図3から、CeO2−Y2O3−TiO2の混合系においては、酸素イオン伝導性酸化物であるCeO2と酸素イオン伝導性賦活酸化物Y2O3と間に両者の複合酸化物であるY2Ti2O7が生成する。そしてこの複合酸化物が生成したことにより本来CeO2−TiO2からなる系が有する2相平衡領域が狭まることは実験的に確認されている。また、この複合酸化物Y2Ti2O7は電子伝導性を有するものでないことから、この酸化物混合系は、本発明においては好ましくない混合伝導性酸化物系と結論される。
【0025】
また、同様な相関系として CeO 2 − Nd 2 O 3 − Mn 2 O 3 がある。この系では酸素イオン伝導相としてネオジウムを溶解した酸化セリウムが、電子伝導相としてネオジウムマンガナイト( NdMnO 3 )が存在する。
また、 CeO 2 − Y 2 O 3 − ZnO − Al 2 O 3 の共存系も高い酸素イオン伝導性を有する混合伝導性酸化物体であることが確認されている。
【0026】
本発明に係る混合伝導性酸化物は上記手法などにより選ばれた金属種を例えばその酸化物、あるいはその無機塩(硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩など)、有機酸塩(フマール酸塩、酢酸塩など)、ハロゲン化物、水酸化物などとしこれらを所望の割合で混合し、固相反応法あるいは液相法を用いて作製することができる。
【0027】
以下、CeO2−Y2O3−ZnO−Al2O3などを例にとり、固相法、液相法による具体的な作成例を示す。
【0028】
[固相法によるCeO2−Y2O3−ZnO−Al2O3の合成]
Ce0.8Y0.2O1.9とZn0.98Al0.02Oが体積比で1:1となるよう酸化セリウム5.44g、酸化イットリウム1.56g、酸化亜鉛5.89g、酸化アルミニウム0.07gにエタノールを加えてアルミナ乳鉢を用いて混合する。混合後、乾燥してエタノールを除き、仮焼(例えば1250℃で3時間)すれば上記CeO2−Y2O3−ZnO−Al2O3の前駆体が得られる。
ついで、得られた仮焼粉末に溶媒(例えばエタノールなど)の溶媒と少量のバインダー溶液(例えば20重量%ポリビニルアルコール水溶液など)を加えてアルミナ乳鉢で粉砕、混合した後、乾燥させてエタノールと水を除き、乾燥した原料を再度アルミナ乳鉢で粉砕して得られた粉末を適宜圧力(例えば179MPa)をかけてディスク状等に成形し、更に高温処理(例えば400℃で10時間、昇降温速度10℃/min大気流中での焼成)することにより、酸素分離材料や酸素富化材料として有用なCeO2−Y2O3−ZnO−Al2O3酸化物(成型体)とすることができる。
【0029】
[液相法(クエン酸ゾル-ゲル法)によるCeO2−Y2O3−ZnO−Al2O3の合成]
セリウム4.45g、イットリウム1.36g、亜鉛4.73g、アルミニウム0.04gを含む硝酸水溶液を調整した後、クエン酸47gを加えて均質透明溶液となるよう室温で攪拌する。均質溶液となった後、更にエチレングリコールを25mlを加え、約1時間攪拌する。得られた溶液をホットスターラーを用いて攪拌しながら190℃まで加熱してゲル化させる。ビーカー内に得られたゲルを300℃に設定したマントルヒーターに移し、残留有機成分を熱分解させ前駆体を作製する。ついで得られた前駆体をアルミナ乳鉢で粉砕し、この粉末を高圧(例えば179MPaの圧力)にて直径20mm、厚さ2mmのディスク状などに成形し、高温処理(例えば1400℃で3時間、昇降温速度10℃/min)すれば、酸素分離材料や酸素富化材料として有用な上記CeO2−Y2O3−ZnO−Al2O3酸化物(成型体)とすることができる。なお、前駆体に残留有機成分が多い場合には成型前に大気中で仮焼(例えば600℃、1時間)しておくことが望ましい。
【0032】
本発明に係る混合伝導性酸化物は、混合組織状態にある各酸化物は酸素の透過などによっても脆化することなく安定に存在するから、従来公知の単一の複合酸化物からなる混合導電性酸化物のように酸素の授受によって劣化することがなく耐久性に優れたものとなる。また、混合組織系であるため、従来既知の単一混合伝導性酸化物の如く組成のズレによる性能の低下を防止することが可能となる。
従って、本発明の混合伝導性酸化物は、上記した特異な特性を有することから、酸素透過材料、酸素富化材料などとして極めて有用なものである。
【0033】
本発明に係る混合伝導性酸化物を酸素透過性材料あるいは酸素富化材料として使用する場合、その形状は特に限定されず、ディスク状、平膜状、管状など種々の形態とすることができる。
また、その表面に酸素分離を促進する触媒を設けておくことが好ましい。このような触媒としては、白金、パラジウム、金、銀、ビスマス、バリウム、バナジウム、モリブデン、セリウム、ルテニウム、マンガン、コバルト、ロジウム、プラセオジウム、亜鉛などの金属または金属酸化物があげられる。
【0034】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
【0035】
(実施例1)
CeO 2 が Y 2 O 3 を固溶し,酸素イオン伝導性が向上することと, ZnO が Al 2 O 3 を固溶して電子伝導性が向上することに着目し, Y 2 O 3 固溶 CeO 2 と Al 2 O 3 固溶 ZnO との二相共存状態を観察する。
[ 50vol % Ce 0.8 Y 0.2 O 1.9 − 50 vol % Zn 0.98 Al 0.02 O なる二相共存状態の作製]
Ce 0.8 Y 0.2 O 1.9 と Zn 0.98 Al 0.02 O が体積比で1:1となるよう酸化セリウム 5.44 g、酸化イットリウム 1.56 g、酸化亜鉛 5.89 g、酸化アルミニウム 0.07 gにエタノールを加えてアルミナ乳鉢を用いて混合した。混合後、乾燥してエタノールを除き、 1250 ℃で 3 時間仮焼した。得られた仮焼粉末にエタノールと少量の 20 重量%ポリビニルアルコール水溶液を加えてをアルミナ乳鉢で粉砕、混合した後、乾燥させてエタノールと水を除いた。ポリビニルアルコールは試料成形剤(バインダー)である。乾燥した原料を再度アルミナ乳鉢で粉砕して得られた粉末を 179MPa の圧力にて直径 20mm 、厚さ 2mm のディスク状に成形し、更に 1400 ℃で 10 時間、大気流中で焼成した。昇降温速度は 10 ℃ /min である。このようにして 50vol % Ce 0.8 Y 0.2 O 1.9 − 50vol % Zn 0.98 Al 0.02 O 化合物相を作製し,二相が共存していることをX線回折により確認した。
[混合伝導性酸化物の酸素透過特性]
上記で得た、混合伝導性酸化物からなる焼結体円板の表面を研磨した後,超音波洗浄機を用いて洗浄し、厚さ 1.5mm で混合伝導体酸化物試料とした。この試料の酸素透過速度を図4に示す評価装置を用いて評価した。なお、低酸素分圧ガス導入口2から試料6表面に導入したガスをガスクロメーター9に導入し、ヘリウムガス中に含まれる酸素濃度を測定し、試料の酸素透過速度とした。
高酸素分圧酸素ガス導入口1に空気を 50 cc/min の速度で導入した。低酸素分圧導入口2側にはヘリウムガスを 50 cc/min の速度で導入した。混合伝導体酸化物試料6は銀シール8により、高酸素分圧側と低酸素分圧側に対して気密性を保てるようにした。この試料が緻密体であることは低酸素分圧側に窒素ガスが検出されないことから確認した。電気炉5により試料部分を加熱し, 1000 ℃で高酸素分圧側酸素分圧 0.21atm 、低酸素分圧側 10 -4 atm で測定したところ,酸素透過速度は 0.06ml/min ・ cm 2 であった。
【0036】
【発明の効果】
本発明の混合伝導性酸化物は、混合組織相を形成するそれぞれの酸化物相に酸素イオン伝導性と電子伝導性を各別に受け持たせたことから、組成比などを制御するにことによりそれぞれの伝導性を等しくまたは近い状態とすることができ、全体として最高の伝導性を与える混合伝導性酸化物を得ることができる。
また、かかる混合伝導性酸化物においては、混合組織状態にある各酸化物は酸素の透過などによっても脆化することなく安定に存在するから、従来公知の単一の複合酸化物からなる混合導電性酸化物のように酸素の授受によって劣化することがなく耐久性に優れたものとなる。
また、混合組織系であるため、従来既知の単一混合伝導性酸化物の如く組成のズレによる性能の低下を防止することが可能となる。
従って、本発明の混合伝導性酸化物は、上記した特異な特性を有することから、酸素透過材料、酸素富化材料などとして極めて有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】CeO2−Ln2O3−ZnOの組成状態図
【図2】Bi2O3−Ln2O3−ZnOの組成状態図
【図3】CeO2−Y2O3−TiO2の組成状態図
【図4】酸素透過速度の評価装置の説明図
【符号の説明】
1. 高分圧酸素ガス導入口
2. 低酸素分圧ガス導入口
3. 外殻管
4. ガス導入内管
5. 電気炉
6. 試料
7. 熱電対
8. 銀またはガラスシール
9. ガスクロメーター
Claims (3)
- CeO 2 − Ln 2 O 3 − ZnO ( Ln はランタノイド元素)、 Bi 2 O 3 − Ln 2 O 3 − ZnO ( Ln はランタノイド元素)、 CeO 2 − Nd 2 O 3 − Mn 2 O 3 および CeO 2 − Y 2 O 3 − ZnO − Al 2 O 3 から選ばれた酸素イオン伝導性を有する酸化物と電子伝導性を有する酸化物の組み合わせからなり、かつ該酸素イオン伝導性を有する酸化物と該電子伝導性を有する酸化物とは熱力学的に平衡状態にある混合組織相として存在していることを特徴とする混合伝導性酸化物。
- 請求項1に記載の混合伝導性酸化物からなる酸素分離材料。
- 請求項1に記載の混合伝導性酸化物からなる酸素富化材料。
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