JP3875880B2 - パラ−ジアリールホスフィノベンゼンスルホン酸カリウム塩の製造方法 - Google Patents
パラ−ジアリールホスフィノベンゼンスルホン酸カリウム塩の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、パラ−ジアリールホスフィノベンゼンスルホン酸カリウム塩の製造方法に関する。本発明により提供されるパラ−ジアリールホスフィノベンゼンスルホン酸カリウム塩は、ヒドロホルミル化反応などの貴金属触媒反応の配位子として用いられるパラ−ジアリールホスフィノベンゼンスルホン酸リチウム塩またはナトリウム塩の原料として有用である(特願2001−172229明細書参照)。
【0002】
【従来の技術】
パラ−ジフェニルホスフィノベンゼンスルホン酸カリウム塩の製造方法として、ジフェニルリン化カリウム(カリウムジフェニルホスフィド)をパラ−クロロベンゼンスルホン酸リチウム塩と反応させることを含む方法が知られている(特表平8−506110号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来法は、カリウムジフェニルホスフィドを調製するに際して、高価であり、かつ空気中の湿気により発火し易く、取扱い難い金属カリウムを用いており、工業的に有利な方法ではない。また、上記公報の実施例によれば、パラ−ジフェニルホスフィノベンゼンスルホン酸カリウム塩は約50%の収率で得られており、かかる収率は工業的に満足できるものではない。
【0004】
一方、カリウムジフェニルホスフィドとパラ−クロロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩をテトラヒドロフラン中、67℃で24時間煮沸させることにより、パラ−ジフェニルホスフィノベンゼンスルホン酸ナトリウム塩を得たことが報告されている[モナッシュ ケム(Monatsh Chem.)、96巻6号、2051〜2057頁(1965年)参照]。しかしながら、該報告ではパラ−ジフェニルホスフィノベンゼンスルホン酸ナトリウム塩の収率は言及されていない。本発明者らの追試によれば、パラ−ジフェニルホスフィノベンゼンスルホン酸カリウム塩とナトリウム塩の混合物(カリウム塩/ナトリウム塩=93/7)が収率23%で得られた。すなわち、上記報告の方法によってもパラ−ジフェニルホスフィノベンゼンスルホン酸カリウム塩を得ることはできるが、その収率は極めて低い。
【0005】
本発明の目的は、金属カリウムを使用することなく、パラ−ジアリールホスフィノベンゼンスルホン酸カリウム塩を高純度かつ良好な収率で工業的に有利に製造し得る方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(A)一般式(I)
【0007】
【化5】
【0008】
(式中、Xはハロゲン原子を表す。)
で示されるパラ−ハロゲノベンゼンスルホン酸リチウム塩[以下、これをスルホン酸リチウム塩(I)と称することがある]と一般式(II)
【0009】
【化6】
【0010】
(式中、R1およびR2はそれぞれ置換基を有していてもよいアリール基を表し、Mはナトリウム原子またはリチウム原子を表す。)
で示される金属ジアリールホスフィド[以下、これを金属ジアリールホスフィド(II)と称することがある]を有機溶媒の存在下に反応させることにより、一般式(III)
【0011】
【化7】
【0012】
(式中、R1、R2およびMは前記定義のとおりである。)
で示されるパラ−ジアリールホスフィノベンゼンスルホン酸塩[以下、これをスルホン酸金属塩(III)と称することがある]を得る反応工程、
(B)工程(A)で得られるスルホン酸金属塩(III)を含む反応混合液について、(1)当該反応混合液に酸カリウム塩水溶液または酸カリウム塩および水を加えるか、または(2)当該反応混合液に存在する有機溶媒を水で置換した後、他の有機溶媒および酸カリウム塩水溶液または酸カリウム塩を加える操作を施し、スルホン酸金属塩(III)と酸カリウム塩を反応させることにより、一般式(IV)
【0013】
【化8】
【0014】
(式中、R1およびR2は前記定義のとおりである。)
で示されるパラ−ジアリールホスフィノベンゼンスルホン酸カリウム塩[以下、これをスルホン酸カリウム塩(IV)と称することがある]を含む有機層と水層との2層状態を形成させるイオン交換工程、
(C)工程(B)で得られるスルホン酸カリウム塩(IV)を含む有機層に水を加えて抽出操作を行うことにより、スルホン酸カリウム塩(IV)水性溶液を得る水抽出工程
を含むことを特徴とするスルホン酸カリウム塩(IV)の製造方法である。
【0015】
本発明の好ましい実施形態においては、イオン交換工程(B)で得られる2層状態において、水層を除去し、有機層に酸カリウム塩水溶液または酸カリウム塩および水を加える操作を繰り返し行うことにより、スルホン酸金属塩(III)からスルホン酸カリウム塩(IV)への変換効率を高める。
【0016】
【発明の実施の形態】
上記の一般式において、Xが表すハロゲン原子としては、例えばヨウ素原子、臭素原子、塩素原子、フッ素原子などが挙げられるが、ヨウ素原子、臭素原子および塩素原子が好ましい。R1 およびR2 がそれぞれ表すアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。これらのアリール基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、トリフルオロメチル基などのアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ピバロイル基などのアシル基;アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基などのアシルオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基;アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アセチルアミノ基などのアミノ基;カルボン酸基またはその金属塩;スルホン酸基またはその金属塩などが挙げられる。
【0017】
本発明における全ての操作および反応は大気下で実施することができるが、金属ジアリールホスフィド(II)、スルホン酸金属塩(III)およびスルホン酸カリウム塩(IV)の酸化を抑制するために、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
【0018】
金属ジアリールホスフィド(II)のうち、ナトリウムジアリールホスフィド[一般式(II)においてMがナトリウム原子を表す化合物]は、ジn−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン、2−エトキシエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどの溶媒中で調製された金属ナトリウム分散液に、ハロゲン化ジアリールホスフィンを98℃〜溶媒還流温度の液温で加えることにより調製される。溶媒としては、水との層分離性、金属ナトリウムよりも密度が低い点を考慮すれば、ジn−ブチルエーテルを使用するのが好ましい。溶媒の使用量は、金属ナトリウムに対して1〜50倍重量の範囲の量であるのが好ましく、2〜20倍重量の範囲の量であるのがより好ましい。金属ナトリウムの使用量は、ハロゲン化ジアリールホスフィン1モルに対して0.5〜10モルの範囲であるのが好ましく、0.8〜4モルの範囲であるのがより好ましい。
【0019】
また、リチウムジアリールホスフィド[一般式(II)においてMがリチウム原子を表す化合物]は、ジアリールホスフィンのテトラヒドロフラン溶液に、n−ブチルリチウム、イソブチルリチウム、t−ブチルリチウムなどのアルキルリチウムのヘキサン溶液などの溶液を−75℃〜室温の液温で加えることにより調製される。テトラヒドロフランの使用量は、ジアリールホスフィンに対して1〜100倍重量の範囲の量であるのが好ましく、2〜40倍重量の範囲の量であるのがより好ましい。アルキルリチウムの使用量は、ジアリールホスフィン1モルに対して0.8〜1.2モルの範囲であるのが好ましく、1モルであるのがより好ましい。
【0020】
まず、反応工程(A)について説明する。
工程(A)では、スルホン酸リチウム塩(I)と金属ジアリールホスフィド(II)を有機溶媒の存在下に反応させることによりスルホン酸金属塩(III)を得る。
【0021】
スルホン酸リチウム塩(I)としては、金属ジアリールホスフィド(II)との反応性を考慮して、ハロゲン原子[一般式(I)におけるX]としてヨウ素原子、臭素原子または塩素原子を有するものが好ましく、入手容易な点から、塩素原子を有するものがより好ましい。金属ジアリールホスフィド(II)としては、それらの原料コストの対比において、ジアリールホスフィンはハロゲン化ジアリールホスフィンよりも高価であり、かつアルキルリチウムは金属ナトリウムよりも高価であることから、リチウムジアリールホスフィドよりもナトリウムジアリールホスフィドを使用するのが経済的であり好ましい。
【0022】
有機溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、2−エトキシエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどが使用される。スルホン酸リチウム塩(I)および金属ジアリールホスフィド(II)の溶解度、沸点、水との層分離性を考慮すれば、有機溶媒としてテトラヒドロフランを使用するのが好ましい。有機溶媒の使用量は、スルホン酸リチウム塩(I)に対して2〜50倍重量の範囲であるのが好ましく、4〜20倍重量の範囲であるのがより好ましい。
【0023】
スルホン酸リチウム塩(I)と金属ジアリールホスフィド(II)との反応は、金属ジアリールホスフィド(II)の懸濁液または溶液に、スルホン酸リチウム塩(I)を固体状態、懸濁液または溶液で加えるか、またはスルホン酸リチウム塩(I)の固体状態、懸濁液または溶液に、金属ジアリールホスフィド(II)の懸濁液または溶液を加えることにより行われるが、反応温度の制御、目的物であるスルホン酸金属塩(III)の収率の点から、スルホン酸リチウム塩(I)の懸濁液に金属ジアリールホスフィド(II)の溶液を加えることにより行うのが好ましい。金属ジアリールホスフィド(II)の使用量は、スルホン酸リチウム塩(I)1モルに対して0.5〜10モルの範囲であるのが好ましく、0.8〜2モルの範囲であるのがより好ましい。反応温度は、−75℃〜溶媒の還流温度の範囲から選べるが、反応時間を考慮すれば、50℃〜溶媒の還流温度の範囲であるのがより好ましい。反応時間は、10時間までの範囲で選べるが、目的物であるスルホン酸金属塩(III)の収率の点から、0.5〜3時間の範囲であるのが好ましい。
【0024】
次に、イオン交換工程(B)について説明する。
工程(B)では、工程(A)で得られるスルホン酸金属塩(III)を含む反応混合液について、(1)当該反応混合液に酸カリウム塩水溶液または酸カリウム塩および水を加えるか、または(2)当該反応混合液に存在する有機溶媒を水で置換した後、他の有機溶媒および酸カリウム塩水溶液または酸カリウム塩を加える操作を施し、スルホン酸金属塩(III)と酸カリウム塩を反応させることにより、スルホン酸カリウム塩(IV)を含む有機層と水層との2層状態を形成させる。
【0025】
上記の工程(B)−(1)における操作は、工程(A)で得られる反応混合液そのもの、その濃縮液またはその有機溶媒組成を変化させた混合液に、酸カリウム塩水溶液または酸カリウム塩および水を加えることにより行われる。一方、工程(B)−(2)における操作は、工程(A)で得られる反応混合液そのもの、その濃縮液またはその有機溶媒組成を変化させた混合液に、水を加えて抽出操作を行うことにより得られるスルホン酸金属塩(III)の水性溶液に、他の有機溶媒および酸カリウム塩水溶液または酸カリウム塩を加えることにより行われる。反応混合液の有機溶媒組成を変化させる場合には、例えば、反応混合液を濃縮した後、異なる有機溶媒を加えるか、または反応混合液に直接異なる有機溶媒を加えることにより行う。かかる操作を行うことにより、スルホン酸金属塩(III)と酸カリウム塩を反応させることができ、スルホン酸カリウム塩(IV)が生成する。
【0026】
生成したスルホン酸カリウム塩(IV)を含む有機層と水層との2層状態を形成させる際に使用される有機溶媒として、例えばテトラヒドロフラン、酢酸メチル、酢酸エチル、エチルメチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエンなどが挙げられる。例えば、工程(B)−(1)の操作は、工程(A)において有機溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、得られる反応混合液に直接酸カリウム塩水溶液または酸カリウム塩および水を加えることにより、スルホン酸カリウム塩(IV)を含む有機層と水層との2層状態を形成することができる。また、工程(B)−(2)の操作は、工程(A)において有機溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、得られる反応混合液にジイソプロピルエーテルおよび水を加えて抽出操作を行い、得られるスルホン酸金属塩(III)の水性溶液に酢酸エチルおよび酸カリウム水溶液または酸カリウム塩を加えることにより、スルホン酸カリウム塩(IV)を含む有機層と水層との2層状態を形成することができる。有機溶媒の使用量は、スルホン酸金属塩(III)およびスルホン酸カリウム塩(IV)を含む有機層と酸カリウム塩を含む水層との層分離性、スルホン酸金属塩(III)およびスルホン酸カリウム塩(IV)の水層への流出の程度により異なるが、スルホン酸金属塩(III)に対して1〜500倍重量の範囲の量であるのが好ましく、5〜100倍重量の範囲の量であるのがより好ましい。
【0027】
酸カリウム塩としては、水に対する溶解度が20℃、100gの水に対して10〜60重量%の範囲であるものを使用するのが好ましい。酸カリウム塩としては、例えば炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、二リン酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素塩、ヨウ化水素塩などが挙げられる。これらの中でも、価格および入手容易な点から塩酸塩を使用するのが好ましい。酸カリウム塩水溶液を使用する場合、酸カリウム塩の使用量は、反応混合液中に存在するナトリウムおよびリチウムの総和モル数に対して1〜10000倍モルの範囲の量であるのが好ましく、2〜100倍モルの範囲の量であるのがより好ましい。酸カリウム塩および水を別個に加える場合、酸カリウム塩の使用量は、水に対する飽和量の0.1〜100倍重量の範囲であるのが好ましく、分液性および操作性の点から0.8〜2倍重量の範囲であるのがより好ましい。
【0028】
2層状態は、スルホン酸金属塩(III)およびスルホン酸カリウム塩(IV)を含む有機層と酸カリウム塩、反応より生じた酸ナトリウム塩および酸リチウム塩を含む水層からなる。スルホン酸金属塩(III)およびスルホン酸カリウム塩(IV)の水層への流出が少ない条件を適宜選択して、酸カリウム塩、反応より生じた酸ナトリウム塩および酸リチウム塩を含む水層を除去し、再び有機層に酸カリウム塩水溶液または酸カリウム塩および水を加える操作を繰り返し行うことにより、スルホン酸金属塩(III)からスルホン酸カリウム塩(IV)への変換効率を高めることができる。
【0029】
次に、水抽出工程(C)を説明する。
工程(C)では、工程(B)で得られるスルホン酸カリウム塩(IV)を含む有機層に水を加えて抽出操作を行うことにより、スルホン酸カリウム塩(IV)水性溶液を得る。
【0030】
工程(B)で得られる有機層そのもの、その濃縮液またはその有機溶媒組成を変化させた液に水を加えて抽出操作を行うことにより、スルホン酸カリウム塩(IV)水性溶液を得ることができる。
【0031】
スルホン酸カリウム塩(IV)水性溶液を直接冷却するか、該水性溶液を濃縮後冷却するか、または該水性溶液に水溶性のアルコールを加えて冷却することにより、スルホン酸カリウム塩(IV)を結晶として単離することができる。得られるスルホン酸カリウム塩(IV)は、純度が高く、塩素含有量も低いが、必要に応じて再結晶を繰り返すことにより所望の純度とすることができる。
【0032】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。なお、実施例および比較例において、特に断わりのない限り、操作はすべて窒素ガス雰囲気下で行った。
【0033】
塩素、リチウム、ナトリウムおよびカリウムの定量は、イオンクロマトグラフィー(日本ダイオネクス株式会社製、DX−120型)を用いて行った。パラ−クロロベンゼンスルホン酸塩の定量は、1H−NMR分光装置(日本電子株式会社製、ラムダ500型)を用いて行い、パラ−ジアリールホスフィノベンゼンスルホン酸塩およびその酸化物の定量は、31P−NMR分光装置(日本電子株式会社製、ラムダ500型)を用いて行った。
【0034】
実施例1
還流管、滴下ロート、温度計および磁気回転子を備えた内容積1Lの3ツ口フラスコに、ジノルマルブチルエーテル200 mlを入れ、さらに金属ナトリウム20g(0.88mol)を加えた後、液温100℃で0.5時間攪拌して金属ナトリウムの分散液を得た。この分散液にクロロジフェニルホスフィン97g(0.44mol)を、液温100〜110℃を維持するような速度で2時間かけて滴下した後、さらに1時間同液温で攪拌し、ナトリウムジフェニルホスフィドを得た。この液を35℃にし、テトラヒドロフラン250mlを加えた。
【0035】
一方、還流管、滴下ロート、温度計およびメカ攪拌器を備えた内容積2Lの3ツ口フラスコに、パラ−クロロベンゼンスルホン酸リチウム塩110g(0.57mol)およびテトラヒドロフラン750mlを加え、30分間還流条件で攪拌した。先に調製したナトリウムジフェニルホスフィドを滴下ロートより、液温60〜70℃を維持するような速度で2時間かけて滴下した後、さらに同液温で1時間攪拌し、反応混合物を得た。
【0036】
室温にて、該反応混合物に対して飽和塩化カリウム水溶液1.5Lを加えて分液し、下層を除いた。さらに、飽和塩化カリウム水溶液750mlで同様の分液操作を3回行った。得られた有機層に水300mlを加え、分液し、水層を得た。水層からテトラヒドロフランを留去し、次いで、10℃まで氷冷し、析出した無色固体を濾取した。この無色固体をさらに水を用いて1回再結晶を行うことにより、下記の物性を有するパラ−ジフェニルホスフィノベンゼンスルホン酸カリウム塩(107g、クロロジフェニルホスフィン基準で収率64%)を得た。
【0037】
陽イオンは、カリウムイオン99%およびナトリウムイオン1%であり、塩素イオン含量は0.004mol%、パラ−ジフェニルホスフィノベンゼンスルホン酸カリウム塩の酸化物の含量は0.12mol%、パラ−クロロベンゼンスルホン酸カリウム塩の含量は0.03mol%以下であった。
【0038】
1H−NMR(500MHz,重水,TSP,ppm):δ=7.3ppm(m,14H)、7.7ppm(d,2H)
31P−NMR(500MHz,重水,リン酸,ppm):δ=−5.37ppm(s,P)
【0039】
実施例2
還流管、滴下ロート、温度計および磁気回転子を備えた内容積1Lの3ツ口フラスコに、ジノルマルブチルエーテル200 mlを入れ、さらに金属ナトリウム20g(0.88mol)を加えた後、液温100℃で0.5時間攪拌して金属ナトリウムの分散液を得た。この分散液にクロロジフェニルホスフィン97g(0.44mol)を、液温100〜110℃を維持するような速度で2時間かけて滴下した後、さらに1時間同液温で攪拌し、ナトリウムジフェニルホスフィドを得た。この液を35℃にし、テトラヒドロフラン250mlを加えた。
【0040】
一方、還流管、滴下ロート、温度計およびメカ攪拌器を備えた内容積2Lの3ツ口フラスコに、パラ−クロロベンゼンスルホン酸リチウム塩110g(0.57mol)およびテトラヒドロフラン750mlを加え、30分間還流条件で攪拌した。先に調製したナトリウムジフェニルホスフィドを滴下ロートより、液温60〜70℃を維持するような速度で2時間かけて滴下した後、さらに同液温で1時間攪拌し、反応混合物を得た。
【0041】
反応混合物よりテトラヒドロフランを500ml留去し、その残留物に室温にて水500mlおよびジイソプロピルエーテル500mlを加え、分液操作を行うことにより水層を得た。水層に酢酸エチル700mlおよび飽和塩化カリウム水溶液700mlを加え分液し、下層を除いた。さらに、飽和塩化カリウム水溶液700mlで同様の分液操作を3回行った。得られた有機層に水700mlを加え、酢酸エチルを留去し、次いで、10℃まで氷冷し、析出した無色固体を濾取した。この無色固体をさらに水を用いて1回再結晶を行うことにより、下記の物性を有するパラ−ジフェニルホスフィノベンゼンスルホン酸カリウム塩(101g、クロロジフェニルホスフィン基準で収率60%)を得た。
【0042】
陽イオンは、カリウムイオン99%およびナトリウムイオン1%であり、塩素イオン含量は0.003mol%、パラ−ジフェニルホスフィノベンゼンスルホン酸カリウム塩の酸化物の含量は0.23mol%、パラ−クロロベンゼンスルホン酸カリウム塩の含量は0.03mol%以下であった。
【0043】
1H−NMR(500MHz,重水,TSP,ppm):δ=7.3ppm(m,14H)、7.7ppm(d,2H)
31P−NMR(500MHz,重水,リン酸,ppm):δ=−5.37ppm(s,P)
【0044】
実施例3
還流管、滴下ロート、温度計および磁気回転子を備えた内容積500mLの3ツ口フラスコに、テトラヒドロフラン200 mlを入れ、さらにジフェニルホスフィン20g(0.11mol)を加えた後、液温−75℃に冷却した。その後、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.56mol/L)69ml(0.11mol)を、液温−75〜−65℃を維持するような速度で2時間かけて滴下した後、さらに1時間同液温で攪拌し、リチウムジフェニルホスフィドを得た。同温度で、パラ−クロロベンゼンスルホン酸リチウム塩21g(0.11mol)を含むテトラヒドロフラン(100ml)の懸濁液を滴下ロートより加え、攪拌しながら室温に戻した。室温にした後、60℃で30分さらに攪拌し、反応混合物を得た。
【0045】
反応混合物よりテトラヒドロフランを200ml留去し、その残留物に室温にて飽和塩化カリウム水溶液300mlを加えて分液し、下層を除いた。さらに、飽和塩化カリウム水溶液200mlで同様の分液操作を3回行った。得られた有機層に水300mlを加え、分液し、水層を得た。水層からテトラヒドロフランを留去し、次いで、10℃まで氷冷し、析出した無色固体を濾取した。この無色固体をさらに水を用いて1回再結晶を行うことにより、下記の物性を有するパラ−ジフェニルホスフィノベンゼンスルホン酸カリウム塩(21g、クロロジフェニルホスフィン基準で収率51%)を得た。
【0046】
陽イオンは、カリウムイオン100%であり、塩素イオン含量は0.007mol%、パラ−ジフェニルホスフィノベンゼンスルホン酸カリウム塩の酸化物の含量は0.03mol%、パラ−クロロベンゼンスルホン酸カリウム塩の含量は0.03mol%以下であった。
【0047】
1H−NMR(500MHz,重水,TSP,ppm):δ=7.3ppm(m,14H)、7.7ppm(d,2H)
31P−NMR(500MHz,重水,リン酸,ppm):δ=−5.37ppm(s,P)
【0048】
比較例1
還流管、滴下ロート、温度計および磁気回転子を備えた内容積1Lの3ツ口フラスコに、テトラヒドロフラン700mlを入れ、さらに金属カリウム29g(0.74mol)を加えた後、0.5時間還流して金属カリウムの分散液を得た。この分散液にクロロジフェニルホスフィン83g(0.376mol)を1.2時間かけて滴下した後、さらに1時間還流を行い、カリウムジフェニルホスフィドの溶液を得た。この溶液を35℃にし、パラ−クロロベンゼンスルホン酸リチウム塩74g(0.373mol)を加えた後、浴温50℃で0.75時間攪拌した。
【0049】
反応終了後、得られた反応混合物からテトラヒドロフラン350mlを留去し、得られた溶液に、ジイソプロピルエーテル300mlおよび水700mlを加え、抽出操作を行い、水層およびテトラヒドロフラン層からなる混合層を得た。この混合層をジイソプロピルエーテル300mlで洗浄し、水層を得た。この水層を濾過した後、容積が3分の2になるまで濃縮し、次いで、10℃まで氷冷し、析出した無色固体を濾取した。この無色固体をさらに水を用いて2回再結晶を行うことにより、下記の物性を有するパラ−ジフェニルホスフィノベンゼンスルホン酸カリウム塩(73g、クロロジフェニルホスフィン基準で収率50%)を得た。
【0050】
陽イオンは、カリウムイオン99%およびナトリウムイオン1%であり、塩素イオン含量は0.006mol%、パラ−ジフェニルホスフィノベンゼンスルホン酸カリウム塩の酸化物の含量は0.47mol%、パラ−クロロベンゼンスルホン酸カリウム塩の含量は0.03mol%以下であった。
【0051】
1H−NMR(500MHz,重水,TSP,ppm):δ=7.3ppm(m,14H)、7.7ppm(d,2H)
31P−NMR(500MHz,重水,リン酸,ppm):δ=−5.37ppm(s,P)
【0052】
比較例2
還流管、滴下ロート、温度計および磁気回転子を備えた内容積1Lの3ツ口フラスコに、テトラヒドロフラン400mlを入れ、さらに金属カリウム18.6g(0.477mol)を加えた後、0.5時間還流して金属カリウムの分散液を得た。この分散液にクロロジフェニルホスフィン52.6g(0.238mol)を1時間かけて滴下した後、さらに2時間還流を行い、カリウムジフェニルホスフィドの溶液を得た。この溶液を35℃にし、固体状態のパラ−クロロベンゼンスルホン酸ナトリウム塩51.0g(0.238mol)を加えた後、浴温65℃で4時間攪拌した。
【0053】
反応終了後、水400mlを加え、反応混合物からテトラヒドロフラン400mlを留去した。得られた溶液に、ジイソプロピルエーテル400mlを加え、抽出操作を行い、水層を得た。ジイソプロピルエーテル層に水300mlを加え、抽出操作を行い、水層を得、先の水層と合わせた。この水層を、容積が400mlになるまで濃縮し、次いで、10℃まで氷冷し、析出した無色固体41gを濾取した。この無色固体をさらに水を用いて再結晶を行うことにより、カリウムイオン93%とナトリウムイオン7%を含むパラ−ジフェニルホスフィノベンゼンスルホン酸塩(20g、クロロジフェニルホスフィン基準で収率23%)を得た。この無色固体をさらに水を用いて再結晶を行うことにより、下記の物性を有するカリウムイオン96%とナトリウムイオン4%を含むパラ−ジフェニルホスフィノベンゼンスルホン酸塩(13g、クロロジフェニルホスフィン基準で収率14%)を得た。
【0054】
塩素イオン含量は0.012mol%、パラ−ジフェニルホスフィノベンゼンスルホン酸塩の酸化物の含量は0.32mol%、パラ−クロロベンゼンスルホン酸カリウム塩の含量は0.03mol%以下であった。
【0055】
1H−NMR(500MHz,重水,TSP,ppm):δ=7.3ppm(m,14H)、7.7ppm(d,2H)
31P−NMR(500MHz,重水,リン酸,ppm):δ=−5.37ppm(s,P)
【0056】
【発明の効果】
本発明によれば、高価で取扱い難い金属カリウムを使用することなく、パラ−ジアリールホスフィノベンゼンスルホン酸カリウム塩を高純度かつ良好な収率で工業的に有利に製造し得る。
Claims (5)
- (A)一般式(I)
で示されるパラ−ハロゲノベンゼンスルホン酸リチウム塩と一般式(II)
で示される金属ジアリールホスフィドを有機溶媒の存在下に反応させることにより、一般式(III)
で示されるパラ−ジアリールホスフィノベンゼンスルホン酸塩を得る反応工程、(B)工程(A)で得られるパラ−ジアリールホスフィノベンゼンスルホン酸塩を含む反応混合液について、(1)当該反応混合液に酸カリウム塩水溶液または酸カリウム塩および水を加えるか、または(2)当該反応混合液に存在する有機溶媒を水で置換した後、他の有機溶媒および酸カリウム塩水溶液または酸カリウム塩を加える操作を施し、パラ−ジアリールホスフィノベンゼンスルホン酸塩と酸カリウム塩を反応させることにより、一般式(IV)
で示されるパラ−ジアリールホスフィノベンゼンスルホン酸カリウム塩を含む有機層と水層との2層状態を形成させるイオン交換工程、
(C)工程(B)で得られる前記パラ−ジアリールホスフィノベンゼンスルホン酸カリウム塩を含む有機層に水を加えて抽出操作を行うことにより、当該パラ−ジアリールホスフィノベンゼンスルホン酸カリウム塩水性溶液を得る水抽出工程を含むことを特徴とする前記パラ−ジアリールホスフィノベンゼンスルホン酸カリウム塩の製造方法。 - 工程(B)において、反応混合液に酸カリウム塩水溶液または酸カリウム塩および水を加える操作を施す請求項1記載の製造方法。
- 工程(B)において、反応混合液に酸カリウム塩水溶液を加えて2層状態を形成し得るように、該反応混合液に存在する有機溶媒の組成を変化させる請求項1記載の製造方法。
- 工程(B)において、反応混合液に、必要に応じて当該反応混合液に存在する有機溶媒の組成を変化させた後、有機溶媒を水で置換し、次いで、他の有機溶媒および酸カリウム塩水溶液または酸カリウム塩を加える操作を施す請求項1記載の製造方法。
- イオン交換工程(B)で得られる2層状態において、水層を除去し、有機層に酸カリウム塩水溶液または酸カリウム塩および水を加える操作を繰り返し行うことにより、前記パラ−ジアリールホスフィノベンゼンスルホン酸塩から前記パラ−ジアリールホスフィノベンゼンスルホン酸カリウム塩への変換効率を高める請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
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