JP3874869B2 - フィルム成形用高中密度ポリエチレン組成物及びその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特にインフレーション成形などに適するフィルム成形用高中密度ポリエチレン組成物の製造法及び組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にフィルム成形用途に用いられる高中密度ポリエチレン組成物には、引裂強度や衝撃強度などのフィルム強度と、押出成形時の樹脂圧や押出機の負荷電流などの押出性、及びインフレーション成形の場合のバブルの安定性などの押出成形性のバランスをとるため、分子量分布が比較的広いものが適することが知られている。
【0003】
一般にフィルム強度を持たせるためには高分子量成分が必要であるが、高分子量成分のみであると、樹脂の粘度が高くなり過ぎ押出不良を起こしやすくなったり、押出時の負荷電流が増大しやすい。このような問題は、一般には低分子量成分を導入することにより解決できる。分子量分布の広い高中密度ポリエチレン組成物は、高分子量成分と低分子量成分を有するため、フィルム強度と押出性、押出成形性のバランスがとりやすい。
【0004】
分子量分布の広い高中密度ポリエチレン組成物の製造法としては、多段重合により高分子量成分と低分子量成分を順次重合する方法や、それぞれ別個に製造された高分子量成分と低分子量成分を混合する方法などが知られている。これらの方法により、高分子量成分と低分子量成分を有するいわゆるポリモーダル構造を有する高中密度ポリエチレン組成物が得られる。
【0005】
このような高中密度ポリエチレン組成物の一般的な製造法では、気相法、液相法、スラリー法等公知の方法で重合された高中密度ポリエチレン組成物の樹脂粉末を2軸あるいは、1軸押出機などの溶融混練機で溶融混練しペレット化する。このようなポリモーダル構造を有するポリエチレン組成物及びその製造法に関しては、たとえば特公昭46−11349号公報、特公昭48−42716号公報、特公昭51−47079号公報、特公昭52−19788号公報、特公平1−12779号公報等に記載されている。
【0006】
例えば特公平1−12779号公報によるとチーグラー型触媒を用いた2段重合法により製造されたバイモーダル構造を有する実質的に高中密度ポリエチレン組成物について記載されており、この組成物は溶融時の流動特性、成形したフィルムの強度、光沢などのフィルム物性などに優れ、また薄膜フィルムの高速成形が可能であるとされている。
【0007】
しかしながら、上述のような従来の高中密度ポリエチレン組成物では、フィルム押出成形時に肉厚むら(偏肉)が発生しやすいという問題を有していた。フィルムに偏肉があると、フィルムをロール巻きした際にフィルムの厚い部分がコブ状になり、巻き姿が悪くなるばかりか、フィルム走行中に蛇行しやすく、特にフィルム2次加工工程、特に印刷工程での印刷位置ズレや、自動製袋機でのシール工程でのシール位置がずれたりしてトラブルとなる場合があるため、一般にはシビアな偏肉精度が要求されている。
【0008】
また、一般のインフレ加工工場においては、例えば1台の押出機で白色顔料のマスターバッチや、特殊な添加剤などを含有したマスターバッチ等を混合した樹脂を押出す場合が多々あり、このようなマスターバッチを含有した樹脂を押出した後に連続して、マスターバッチ等を含有しない無添加の樹脂を押出すケースも多かった。このような場合、ダイス内で先に使用したマスターバッチ入り樹脂から無添加の樹脂への置換が完了するまでの間にフィルムの偏肉が極端に悪くなる場合があり、完全に置換するまで待つ必要があった。樹脂置換中のフィルムは偏肉が悪いために製品とはならずロスとなる場合が多く、フィルムの製造コストアップになっている場合が多かった。従来の高中密度ポリエチレン組成物ではこのような樹脂の置換性が悪いため、樹脂の置換に長時間を要しており製品ロスが多く発生する傾向にあった。
【0009】
上述のようなフィルムの偏肉を防ぐには一般には、押出成形時の溶融樹脂の流動性を均一化することが考えられており、そのような方法として重合条件の調整により樹脂に超高分子量成分を導入することが考えられている。しかし、この場合は過度に超高分子化した一部の高分子量成分の分散性が悪くなり、フィルムのゲルとなりやすい。
【0010】
また、樹脂を酸素やラジカル発生剤で架橋する方法も考えられている。樹脂を架橋する方法として、特開昭59−166507号公報には溶融混練時の酸素濃度が0.5〜10容量%であり、溶融混練温度230℃〜300℃で架橋しながら溶融混練する方法が記載されている。しかしながらこの方法は中空成形における押出時の樹脂の流動性と製品外観の向上を計ったものであり、本発明の目的とするフィルム成形用途での偏肉改良には全く触れられていない。
【0011】
また、特開昭60−20946号公報、及び特開平8−208898号公報には溶融混練工程においてラジカル発生剤を添加して溶融混練する方法が記載されている。しかし、これらの方法においてはラジカル発生剤の残留成分による臭気の問題があったり、ラジカル発生剤の樹脂への分散不良による部分的な過度の架橋により押出時の樹脂の流動が不均一となり偏肉が改善されないばかりか、樹脂ペレットのカラーが悪くなりやすい。また、フィルムの横方向の引裂強度が低下する場合がある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、かかる上記の事情に鑑み、フィルム成形時の偏肉及び樹脂の置換性が良好であり、押出成形時のバブル安定性がよく、押出負荷電流も低く経済的であり、尚かつ引裂強度にも優れ、ペレットのカラーが良好であるフィルム成形用高中密度ポリエチレン組成物及びその製造法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、重量平均分子量Mw(A)が15万以上140万以下である高分子量成分(A)と重量平均分子量Mw(B)が0.1万以上10万以下である低分子量成分(B)とからなる密度が0.93g/cm 3 以上0.98g/cm 3 以下である高中密度ポリエチレン組成物を溶融混練する工程において、該高中密度ポリエチレン組成物を下記の条件1〜2のいずれかの条件で溶融混練することを特徴とした、フィルム成形用高中密度ポリエチレン組成物の製造法、である。
【0014】
条件1 150℃≦X≦220℃ かつ
−X/70+3.14≦Y≦10
条件2 220℃<X≦320℃ かつ
0≦Y≦−2X/25+27.6
{ただし、Y(容量%)は溶融混練機内の酸素濃度であり、X(℃)は溶融混練温度を示す。}
【0015】
本発明の製造法は、重量平均分子量Mw(A)が15万以上140万以下である高分子量成分(A)と重量平均分子量Mw(B)が0.1万以上10万以下である低分子量成分(B)とからなる密度が0.93g/cm 3 以上0.98g/cm 3 以下である高中密度ポリエチレン組成物を、下記の条件1〜2のいずれかの範囲で溶融混練することにある。偏肉及び樹脂置換性を改良することができる。
条件1 150℃≦X≦220℃ かつ
−X/70+3.14≦Y≦10
条件2 220℃<X≦320℃ かつ
0≦Y≦−2X/25+27.6
{ただし、Y(容量%)は溶融混練機内の酸素濃度であり、X(℃)は溶融混練温度を示す。}
さらに好ましくは、下記の条件3〜4のいずれかの範囲で溶融混練することである。偏肉を改良し、更に引裂強度を高くすることができ、ペレットのカラーを良好にすることができる。
【0016】
条件3 170℃≦X≦230℃かつ
−X/60+3.83≦Y≦4
条件4 230℃<X≦300℃かつ
0≦Y≦−2X/70+10.6
本発明でいう酸素濃度とは、溶融混練機(通常、2軸または1軸の押出機や混練機)内部で、樹脂粉末等を溶融混練する雰囲気中の酸素濃度をいう。また、ここでいう溶融混練温度とは、溶融混練を行う押出機などの押出温度をいい、2軸混練機などの場合は、通常混練機出口温度を測定したものを用いてよい。
【0017】
本発明の溶融混練条件は、酸素濃度と溶融混練温度の組合せで決まるが、溶融混練時の酸素濃度が本発明の範囲よりも低いと、微架橋が不十分であり偏肉が改善されない。また、樹脂の置換性も悪く、顔料マスターバッチなどを添加した樹脂から無添加樹脂への切換時間が長くなる傾向にある。
一方、酸素濃度が本発明の範囲よりも高いと、部分的に酸素による架橋反応が進みすぎ、溶融時の樹脂流動が不均一になり易いために偏肉改善効果が不十分になったり、インフレ成形中にバブルが不安定になりやすい。またペレットが黄褐色になりカラーが悪くなったり、フィルムの横方向の引裂強度が低下する傾向になる。
【0018】
溶融混練温度が本発明の範囲よりも低い場合は、微架橋が不十分となり偏肉が改善されない。特に150℃以下では溶融混練機の押出負荷や樹脂圧が高くなりすぎて溶融混練できない。また溶融混練温度が本発明の範囲よりも高いと、架橋の進みすぎにより、偏肉改良効果、バブル安定性が不十分であるばかりか、引裂強度が不十分となりやすい。またペレットのカラーが悪かったり、長時間押出成形した場合にゲルが発生し外観不良を起こしやすかったりする。
【0019】
本発明の溶融混練法では、微架橋の進みすぎによるゲルの発生や、ペレットのカラーの悪化、あるいは溶融樹脂の流動が不均一になるなどの熱安定性の低下を防ぐために、溶融混練時に1000ppm以上5000ppm以下の酸化防止剤を添加することが好ましい。また添加量の調整により、同一溶融混練条件において微架橋反応の進行を調整することもできる。
【0020】
酸化防止剤の例としては、ペンタエリスルチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン系のフェノール系酸化防止剤、ジラウリル−チオ−ジプロピオネート、ジステアリル−チオ−ジプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4−ビフェニレンフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルフォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト等のリン系酸化防止剤などが挙げられる。
【0021】
本発明において溶融混練に用いる押出機、混練機としては、具体名をあげると日本製鋼社製CIM、CIMP、CMP、TEX等、神戸製鋼社製LCM、LCMG等、ファレル社製FCM、DSM等の2軸スクリュータイプの混練機や、あるいはバンバリミキサーなどが挙げられる。
2軸タイプの押出機には、スクリューの一部分に、特にシェアストレスがかかり樹脂粉末を溶融混練しやすくするための、いわゆるローターあるいはニーディングディスクと呼ばれる構造を有しているものが多く、本発明に用いる押出機は、このような2軸タイプのものが好ましく、均一混練ができる。1軸スクリュータイプの押出機を用いてもよい。
【0022】
押出機を2段に直列配置して用いる場合は、2軸タイプと1軸タイプを併用するなどしてもよい。例としては、1段目として2軸の混練機を用い、本発明の条件で溶融混練し、2段目として1軸の押出機やギヤポンプを用いる方法などがある。また、1台の押出機で複数回押出してもよい。
本発明で溶融混練する方法では、混練機に供給する高中密度ポリエチレン組成物は、ペレット状でも粉末状でもよい。
【0023】
本発明で酸素濃度の調節法としては、あらかじめ酸素と窒素を所定の割合に混合した混合気体を樹脂粉末と一緒に樹脂供給ホッパーから供給する方法や、混練機の内部の酸素濃度が所定の値になるように酸素と窒素を別々に各々流量調節して供給する方法等が挙げられる。このような方法の例としては、樹脂を供給するホッパー内の酸素濃度が本発明の範囲内になるように調整する方法がある。これらの方法においては、酸素の代わりに空気を用いてもよい。
【0024】
また、本発明の高中密度ポリエチレン組成物には、酸化防止剤の他にも一般的な添加剤を使用してもよい。例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛などの金属石鹸類、顔料、耐候剤、帯電防止剤、防曇剤、充填剤などである。上述のように、本発明の製造方法により溶融混練したフィルム成形用高中密度ポリエチレン組成物に、本発明の主旨を損なわない範囲で別の樹脂をブレンドしてもよい。その場合の別の樹脂のブレンド量は、ブレンド後の全体の樹脂量を100重量%としたとき、好ましくは40重量%以下であり、さらに好ましくは30重量%以下である。
【0025】
本発明でいう、フィルム成形用高中密度ポリエチレン組成物とは、密度が特に限定されないが、好ましくは0.93g/cm3以上0.98g/cm3 以下、さらに好ましくは0.94g/cm3以上0.97g/cm3以下であるものをいう。密度が0.93g/cm3未満であるとフィルムの剛性が弱くなりすぎる傾向になり、0.98g/cm3 を超えるとフィルムが硬くなりすぎる傾向にな
る。
また、本発明でいう、フィルム成形用高中密度ポリエチレン組成物とは、MI(メルトインデックス)が、好ましくは0.01g/10min以上0.5g/10min以下の範囲内であり、さらに好ましくは0.02g/10min以上0.2g/10min以下の範囲のものをいう。MIが0.01g/10min以下であると押出成形時の負荷電流が高くなりすぎる傾向になり、0.5g/10min以上であるとフィルム成形した際の強度が、用途によっては不十分となる場合がある。
【0026】
本発明でいうフィルム成形用高中密度ポリエチレン組成物とは、高分子量成分(A)と低分子量成分(B)とからなるものをいうが、高分子量成分(A)および低分子量成分(B)とは、密度が0.93g/cm3以上0.98g/cm3 以下のエチレン単独重合体、または、エチレンと他のオレフィン、ジエン類との共重合体及びそれらの混合物をいう。
【0027】
共重合に用いられる他のオレフィン、ジエン類とは、たとえば、プロピレン、ブテン、ペンテン、4−メチルペンテン1、ヘキセン、オクテン、デセンなどのα−オレフィン類や、ブタジエン、イソプレン等のジオレフィン類、シクロペンタジエン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン等のシクロオレフィン類などが挙げられる。
【0028】
高分子量成分(A)は、好ましくは重量平均分子量Mw(A)が15万以上140万以下、さらに好ましくは40万以上100万以下のものであり、低分子量成分(B)は、好ましくは重量平均分子量Mw(B)が0.1万以上10万以下、さらに好ましくは0.5万以上7万以下のものである。
フィルム成形用途としては、(A)と(B)とのMwの比、Mw(A)/Mw(B)が、2以上100以下であるのが好ましい。さらに好ましくは3以上50以下である。
【0029】
高分子量成分(A)の重量W(A)と低分子量成分(B)の重量W(B)との混合比率W(A)/W(B)は、一般には5/95以上80/20の範囲内であるが、本発明でいうフィルム成形用高中密度ポリエチレン組成物は、20/80以上70/30以下の範囲内であるのが好ましい。この範囲内であると前述の押出成形性とフィルム強度のバランスをとることができる。W(A)/W(B)が5/95未満であるとフィルム強度が低下する傾向になり、80/20を越えると押出成形性が低下する傾向になる。
【0030】
本発明でいう高分子量成分(A)と低分子量成分(B)とは、一般的な、通常のスラリー法、気相法、溶液法などの多段重合法で重合製造されたものをいい、高分子量成分(A)と低分子量成分(B)の重合順序はどちらからでもよい。
本発明の重要な点は、高分子量成分(A)と低分子量成分(B)とからなる高中密度ポリエチレン組成物を、特定範囲内の酸素濃度と溶融混練温度を組み合わせた条件で溶融混練することであり、必要な酸素濃度の範囲は溶融混練温度によって異なるという点である。
【0031】
本発明の製造方法は、特定の条件で溶融混練することにより、本発明の課題、特に偏肉、樹脂置換性を大幅に改善することができる。
偏肉が改善される理由は、次のように推定される。本発明の範囲内の溶融混練条件で溶融混練を行うと樹脂が軽度に微架橋反応をおこすが、微架橋反応の程度は溶融混練条件の操作で調整することができる。微架橋反応の程度を調整することで溶融時の粘弾性を変化させることができ、それにより溶融樹脂の流動性を均一に調整しやすいため、肉厚むら(偏肉)が改善されると推定される。
【0032】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を実施例により詳細に説明する。先ず、本発明における物性測定法、フィルム評価法を説明する。
(1)分子量
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(日本ウォーターズ社製、商品名150−GPC)を使用し、カラムとしてSHODEX AT−807Sを一本と、TOSO TSK−GEL GMH−6Hを2本つないで使用した。さらに、溶媒として1,2,4−トリクロルベンゼンを使用して、カラム温度140℃で測定し、重量平均分子量と数平均分子量を測定した。
(2)MI(メルトインデックス)
ASTM D1235に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
(3)フィルムの製膜
用いたインフレーション成形装置及び製膜状態を図1に模式的に示す。直径70mm,L/D=23のフルフライトタイプのスクリューを有する押出機1に60meshのスクリーンフィルターを装着し、ダイスはリップ径100mm、スリット幅1.2mmのサーキュラーダイス2を用い、シリンダー温度200℃、押出量46kg/hr、ブロー比2.2、引取速度60m/minの条件で押出しインフレーション成形した。ダイスを出た溶融状態の樹脂はエアリング3より吹き出る冷却風にて冷却固化させた。また、バブルの揺動を防ぐために内部安定体4を使用しインフレーション成形を行った。フィルムのサイズは厚み20μm、幅350mmに調整した。
(4)偏肉
製膜したフィルムの全周方向を、接触式連続厚み測定装置{安立電気(株)製商品名ANRITSU K310D}にて厚みを測定し、チャート上でベースラインに対するピークの高さをもって下記4段階に評価した。なお、ピークは高さが3μm以上のもののみをカウントした。ピークが複数発現する場合は各ピークの合計値とした。
【0033】
◎(非常によい)…8μm未満。
○(問題なし) …8μm以上、13μm未満。
△(悪い) …13μm以上、20μm未満。
×(非常に悪い)…20μm以上。
(5)樹脂の置換性
二酸化チタン(白色顔料)を2重量%添加した樹脂ペレットを、上記(3)フィルムの製膜の方法で記載の30分押出で成形した後、無添加のペレットに切り替えた時刻から、15分おきにフィルムをサンプリングして偏肉を測定し、下記
の3段階で評価した。
【0034】
○(良い) …30分以内に偏肉が13μm未満になる。
△(やや悪い)…30分以上60分以内に偏肉が13μm未満になる。
×(悪い) …60分経っても偏肉が13μm以上ある。
(6)製膜安定性
製膜中のバブルの揺動、パンクの発生などにより下記3段階で判定した。
【0035】
○(良い) …安定している。
△(やや悪い)…バブルがやや不安定になり、揺動する。
×(悪い) …バブルの揺動が激しく製膜できない。
(7)引裂強度(ETS)
ASTM D1922に準拠した方法の、横方向の引裂強度で下記4段階に評価した。
【0036】
◎(非常によい)…60kg/cm以上。
○(良い) …45kg/cm以上、60kg/cm未満。
△(やや悪い) …30kg/cm以上、45kg/cm未満。
×(悪い) …30kg/cm未満。
(8)ペレットのカラー
日本電飾工業(株)製、カラーマシン、商品名Z−300Aを用いて、ペレットの黄変色に関するファクターであるb値を測定し、下記3段階に評価した。
【0037】
◎(カラーが良い)…−1.0未満。
○(問題なし) …−1.0以上0未満。
×(カラーが悪い)…0以上。
(9)総合性能
上記(4)〜(8)の樹脂性能を総合して下記4段階に評価し、◎と○を合格とした。
【0038】
◎(非常によい) …偏肉・引裂強度・カラーが◎で、他のすべてが○の 場合。
○(問題なし) …偏肉が○で、他のすべての性能が○又は◎の場合。
△(やや悪い) …×はないが、いずれか一つでも△の場合。
×(悪い) …いずれか一つでも×がある場合。
【0039】
(イ)触媒の合成
トリクロルシラン(HSiCl3)1mol/リットルのヘキサン溶液2リットルを8リットルのオートクレーブに入れ50℃に保った。これに組成AlMg6.0(C2H5)2.0(n−C4H9)9.5(OC4H9)3.5の有機アルミニウム−マグネシウム錯体の1mol/リットルのヘキサン溶液2リットルを攪拌下に2時間かけて滴下し、さらにこの温度で2時間反応させた。生成した固体成分を2リットルのヘキサンで2回沈降法によって洗浄した。この固体成分を含むスラリーに四塩化チタン2リットルを仕込み、130℃にて2時間反応させた後、固体触媒を単離し、遊離のハロゲンが検出されなくなるまでヘキサンで洗浄した。この固体触媒は2.1重量%のチタンを有していた。
【0040】
(ロ)高中密度ポリエチレン組成物の2段重合
最初に1段目の重合で低分子量成分(B)を重合するために、反応容積300lのステンレス製重合器1を用い、重合温度83℃、重合圧力11kg/cm2 の条件で、触媒は上記の固体触媒を1.3mmol(Ti原子基準)/hr、トリエチルアルミニウムを20mmol(金属原子基準)/hr、またヘキサンは40l/hrの速度で導入した。分子量調整剤としては水素を用い、エチレンに対する水素濃度が75mol%になるように供給し重合を行った。
【0041】
重合器1内のポリマースラリー溶液を圧力1kg/cm2 G、温度75℃のフラッシュドラムに導き、未反応のエチレン、水素を分離した後反応容積250リットルの重合器2にスラリーポンプで昇圧して導入した。
重合器2では高分子量成分(A)を重合する。温度78℃、圧力4kg/cm2 Gの条件下で、トリエチルアルミニウムを7.5mmol/hr、ヘキサンは40リットル/hrの速度で導入した。これに、エチレン、水素、ブテン−1を水素の気相濃度が約1mol%、ブテンの気相濃度が約2.5mol%になるように導入して重合を行った。このようにしてポリエチレン組成物を粉末として得た。
【0042】
【実施例1】
上記(ロ)で製造したポリエチレン組成物粉末に酸化防止剤としてジ−ターシャリーブチルヒドロキシトルエン(BHT)800ppm、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート1500ppm、滑剤としてステアリン酸カルシウム2500ppmを添加し、ヘンシェルミキサーで充分混合した後、スクリュー径65mm、L/D=23の1軸押出機に供給し、押出速度は30kg/hrで押出し、第一回目の溶融混練を行った。押出機内の樹脂の滞留時間は約150秒であった。溶融混練条件は溶融混練温度を190℃、酸素濃度を2.0容量%に調整した。溶融混練温度は、ダイス部分に取り付けた温度計により測定した値を用いた。
【0043】
シリンダー部分とダイス部分の設定温度は同じにした。酸素濃度は、押出機の樹脂供給ホッパー内の雰囲気濃度を酸素濃度計を用いて測定した値であり、その調整はホッパーに空気と窒素ガスを供給し、それぞれの流量を調整することで行った。ホッパー内は、外部の空気が不用意に入り込まないように、隙間や開口部は目張りしてシールした。また押出機にはストランドダイスを設置し、ストランドはストランドカッターでペレット化した。
【0044】
上記のような第1回目の溶融混練を施された樹脂ペレットは、未だ高分子量成分の分散が不十分であったため、このペレットを再度樹脂供給ホッパーに供給し、第2回目の溶融混練を行った。第2回目は酸素濃度を0容量%、溶融混練温度を200℃とした以外は、第1回目と同様の条件で溶融混練した。
このように2回の溶融混練により得られた高中密度ポリエチレン組成物のペレットの密度は0.954g/cm3、MIは0.05g/10minであった。またこのポリエチレン組成物の分子量分布をGPCにて測定すると、ピークが2つ発現しており、高分子量成分(A)の重量平均分子量Mw(A)は約70万であり、低分子量成分(B)の重量平均分子量Mw(B)は約1.8万であり、その比Mw(A)/Mw(B)は39であった。また、(A)、(B)の混合重量比率W(A)/W(B)は50/50であった。
【0045】
上記のような方法で得られた高中密度ポリエチレン組成物のペレットを、前述の製膜法でインフレーション製膜した。得られたフィルムの評価結果を表1に示す。この高中密度ポリエチレン組成物は偏肉、樹脂置換性、製膜安定性、引裂強度、樹脂のカラーの総合性能に◎の性能を持つ優れた樹脂であった。
【0046】
【比較例1】
第1回目の溶融混練を、溶融混練温度190℃、酸素濃度0容量%とした以外は実施例1と同様の方法で溶融混練し、得られた高中密度ポリエチレン組成物のペレットを実施例1と同様の方法でインフレーション製膜したフィルムの評価結果を表1に示す。表1より明らかなように、このフィルムは実施例1のフィルムに比べ偏肉、樹脂置換性が大きく劣っていた。
【0047】
【実施例2〜29及び比較例2〜9】
第1回目の溶融混練を、表2に記載した条件で行った以外は、実施例1と同様の方法で溶融混練し、得られた高中密度ポリエチレン組成物のペレットを実施例1と同様の方法でインフレーション製膜したフィルムの評価結果を表2に示す。表2から明らかなように、本発明の課題を解決できる総合性能が優れた樹脂を得るには、本発明の範囲内条件で溶融混練しなければならないことがわかる。
【0048】
また例えば、比較例2と実施例7は溶融混練温度は異なるが、いずれも酸素濃度0.5容量%である。これらを比較すると、総合性能を合格とするためには、溶融混練温度に応じた酸素濃度が必要であることがわかる。
この結果から明らかなように、本発明の製造法により製造されたフィルム成形用中密度ポリエチレン組成物は、偏肉、樹脂置換性、製膜安定性、引裂強度に優れ、ペレットのカラーも良い優れた性能を有している。
【0049】
【実施例30】
第1回目の溶融混練を、酸素濃度2容量%、溶融混練温度190℃で行い、第2回目の溶融混練を酸素濃度2容量%、溶融混練温度280℃で行った以外は、実施例1と同様の方法で溶融混練した。この高中密度ポリエチレン組成物より得られたフィルムの評価結果は表3に示すとおり、総合性能◎であった。
【0050】
【比較例10】
第1回目の溶融混練の際にラジカル発生剤として2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンの3%マスターバッチ(基材樹脂 低密度ポリエチレン MI=2.4g/10min、密度=.922g/cm3 )を用いて、ラジカル発生剤が80ppmになるように添加し混合した以外は実施例14と同様の方法で溶融混練した。この高中密度ポリエチレン組成物より得られたフィルムの評価結果を表3に示す。このフィルムの偏肉は△であった。またフィルムの横方向の引裂強度も低下しており、ペレットのカラーが悪化しており、黄褐色になっていた。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
【発明の効果】
本発明の製造法は、フィルム成形時の偏肉、及び樹脂の置換性が良好であり、押出成形時のバブル安定性がよく、押出負荷電流も低く経済的であり、尚かつ引裂強度にも優れ、ペレットのカラーも良好であるフィルム成形用高中密度ポリエチレン組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例で用いたインフレーション成形装置の概略及び製膜状態の概略を模式的に示す説明図。
【符号の説明】
1.押出機
2.サーキュラーダイス
3.エアリング
4.内部安定体
Claims (2)
- 重量平均分子量Mw(A)が15万以上140万以下である高分子量成分(A)と重量平均分子量Mw(B)が0.1万以上10万以下である低分子量成分(B)とからなる密度が0.93g/cm 3 以上0.98g/cm 3 以下である高中密度ポリエチレン組成物を溶融混練する工程において、該高中密度ポリエチレン組成物を下記の条件1〜2のいずれかの条件で溶融混練することを特徴としたフィルム成形用高中密度ポリエチレン組成物の製造法。
条件1 150℃≦X≦220℃ かつ
−X/70+3.14≦Y≦10
条件2 220℃<X≦320℃ かつ
0≦Y≦−2X/25+27.6
{ただし、Y(容量%)は溶融混練機内の酸素濃度であり、X(℃)は溶融混練温度を示す。} - 溶融混練する際に、酸化防止剤を1000ppm以上5000ppm以下の範囲内で混合することを特徴とする請求項1記載のフィルム成形用高中密度ポリエチレン組成物の製造法。
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