JP3873584B2 - 車両用自動運転装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シャーシダイナモメータ上の車両を自動運転する装置、特にアクセルアクチュエータの制御に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から車両用走行性能試験のために、シャーシダイナモメータ上で車両の自動運転を行う自動運転装置が用いられている。
【0003】
車両の自動運転を行うためには、指令車速Vrとシャーシダイナモメータにおける車両の実際の速度(以下、「実車速」という)Viとの差Ver(以下、「車速偏差」という)を制御系に入力し、アクセルペダルのストロークをフィードバック制御およびフィードフォワード制御をする技術が用いられている。
【0004】
このような車両の自動運転技術において、適切な制御を行うために、従来から種々の技術が提案されている。
【0005】
例えば、車両の自動運転を行う上で、試験車両毎に最適なアクセル制御系のゲイン(以下、「アクセルゲイン」と称する)を設定する技術としては、以下のようなものがある。
【0006】
まず、同一シフト位置(例えば、セカンド等)において、定常走行に必要なアクセルのストロークと一定の加速度を発生するのに必要なアクセルストロークとの差に基づいて、Pゲインを求め、このPゲインに変速比に基づいた係数を乗じることによって、アクセル制御系のゲインとする技術(特開平5−312685)がある。また、他の例として、車速偏差をPI(比例−積分)制御系に入力し、アクセル制御系のストロークをフィードバック制御する技術において、車両にその能力以上の加速の目標車速が与えられたときには、I(積分)項出力値が小さくなるように補正する技術(特開平9−133610)、および、指令車速が一定であり、かつ、車速偏差が所定の値以下になったとき、PI制御における制御定数であるP、Iを小さくする技術(特開平10−197412)などが知られている。
【0007】
また、車両の自動運転を行う上で、アクセル制御系のヒステリシスによる問題、すなわち、同じアクセルペダルのストロークの指令値に基づいてアクセルペダルを操作する場であっても、アクセルペダルの押し側で操作する場合と引き側で操作する場合とでは、スロットルバルブの開度が異なり、エンジン回転数等が異なってしまうといった問題に関しては、例えば、常にアクセルペダルの押し側を基準として制御を行う技術(特許2751691号)が知られている。
【0008】
さらに、アクセルペダルを操作してから車速が変化するまでにかかる応答遅れ時間を予め考慮して、本来の指令車速から一定時間だけ先行する指令車速に基づいて制御を行う技術(特開昭62−148831)が知られている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
以上の技術は、車両の自動運転を行う上で有効なものではあるが、未だ解決されない以下のような課題がある。
【0010】
適切なゲインを設定する技術に関しては次のような問題がある。上記の従来技術によれば、限られた運転条件(例えば、同一の変速位置といった運転条件、低速度側のみでの運転条件)の下で学習(ティーチング)を行うものにすぎないため、アクセルペダルのストロークとエンジン出力トルク等が正比例していると見なせないような広い運転条件全域に、従来技術をそのまま適用した場合、運転条件の領域の一部では、アクセルゲインが不適当に設定される場合が生じる。すなわち、アクセルゲインが必要以上に高く設定されることによって、発振などが生じる一方、アクセルゲインが低く設定されてしまうことによって、モード追従性が悪くなる。したがって、試運転によって、オペレータは、アクセルのストロークと実速度との関係を適宜、最終調整する必要があった。
【0011】
アクセル制御系のヒステリシスの影響を低減する技術に関しては次のような問題がある。従来技術は、常にアクセルペダルの押し側などを基準として制御を行うため、加速時の追従性は良いものの、加速および減速を小刻みに繰り返す必要がある状況では、アクセルペダルを操作してもスロットルバルブが動かず、追従性が悪い場合があった。
【0012】
応答遅れ時間を考慮した制御を行う技術に関しては次のような問題がある。従来技術は、一定時間だけ先行する指令車速に基づいて制御を行うため、車両の加速度または動力の値に応じて応答遅れ時間が変化した場合に対応できず、アクセルペダルの操作のタイミングが早すぎたり、遅すぎたりし、所望の車速を得られない場合があった。
【0013】
したがって、本発明の目的は、限られた運転条件に限らずに、広い運転条件下においても、適切なアクセルゲインや補正量を設定することができる技術を提供することである。
【0014】
また、本発明の他の目的は、加速および減速を小刻みに繰り返す必要がある運転モードの状況においても、アクセルペダルの操作に対するスロットルバルブの追従性を極端に損なうことなく、アクセル制御系におけるヒステリシスの影響を軽減することができる技術を提供することである。
【0015】
さらに、本発明の他の目的は、アクセルペダルの操作のタイミングが早すぎたり、遅すぎたりすることをなくし、所望の車速を得ることができるように、適切な応答遅れ時間を考慮した制御を行うことができる技術を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は、以下のように構成される。
【0017】
(1)アクチュエータを用いてアクセルペダルを操作する車両用自動運転装置であって、車速と走行抵抗動力との関係を示す走行抵抗動力特性のデータを記憶する手段と、前記走行抵抗動力特性のデータに基づいて、車速と当該車速で走行するために必要なトルクとの比であるトルク−車速感度を算出する手段と、算出されたトルク−車速感度を用いて、指令車速と実車速との偏差に基づいてアクセルペダルのストロークをフィードバック制御する制御手段と、を有することを特徴とする車両用自動運転装置。
【0018】
(2)アクチュエータを用いてアクセルペダルを操作する車両用自動運転装置であって、アクセルペダルのストロークとエンジン出力トルクとの関係を示すエンジン出力トルク特性のデータを記憶する手段と、前記エンジン出力トルク特性のデータに基づいて、アクセルペダルのストロークとエンジン出力トルクとの比であるストローク−トルク感度を算出する手段と、算出されたストローク−トルク感度を用いて、指令車速と実車速との偏差に基づいてアクセルペダルのストロークをフィードバック制御する制御手段と、を有することを特徴とする車両用自動運転装置。
【0019】
(3)アクチュエータを用いてアクセルペダルを操作する車両用自動運転装置であって、車速と走行抵抗動力との関係を示す走行抵抗動力特性のデータを記憶する手段と、前記走行抵抗動力特性のデータに基づいて、車速と当該車速で走行するために必要なトルクとの比であるトルク−車速感度を算出する手段と、アクセルペダルのストロークとエンジン出力トルクとの関係を示すエンジン出力トルク特性のデータを記憶する手段と、前記エンジン出力トルク特性のデータに基づいて、アクセルペダルのストロークとエンジン出力トルクとの比であるストローク−トルク感度を算出する手段と、算出されたトルク−車速感度とストローク−トルク感度とを乗じて得られるアクセル感度を用いて、指令車速と実車速との偏差に基づいてアクセルペダルのストロークをフィードバック制御する制御手段と、を有することを特徴とする車両用自動運転装置。
【0020】
(4)アクチュエータを用いてアクセルペダルを操作する車両用自動運転装置であって、車速と走行抵抗動力との関係を示す走行抵抗動力特性のデータを記憶する手段と、前記走行抵抗動力特性のデータに基づいて、車速と当該車速で走行するために必要なトルクとの比であるトルク−車速感度を算出する手段と、指令車速および指令加速度に応じて車両を走行するために要求されるエンジン動力を算出する手段と、前記トルク−車速感度の算出結果を用いて、要求される前記エンジン動力を補正する手段と、補正されたエンジン動力をエンジンの回転数を用いてエンジン出力トルクに換算する手段と、換算されたエンジン出力トルクに基づいてアクセルペダルのストロークの指令値を算出し、アクセルペダルのストロークをフィードフォワード制御する制御手段と、を有することを特徴とする車両用自動運転装置。
【0021】
(5)アクチュエータを用いてアクセルペダルを操作する車両用自動運転装置であって、指令車速および指令加速度に応じて車両を走行するために要求されるエンジン動力を算出する手段と、要求されるエンジン動力をエンジンの回転数を用いてエンジン出力トルクに換算する手段と、換算されたエンジン出力トルクに基づいてアクセルペダルのストロークの基本指令値をフィードフォワード制御する第1制御手段と、車速と走行抵抗動力との関係を示す走行抵抗動力特性のデータを記憶する手段と、前記走行抵抗動力特性のデータに基づいて、車速と当該車速で走行するために必要なトルクとの比であるトルク−車速感度を算出する手段と、アクセルペダルのストロークとエンジン出力トルクとの関係を示すエンジン出力トルク特性のデータを記憶する手段と、前記エンジン出力トルク特性のデータに基づいて、アクセルペダルのストロークとエンジン出力トルクとの比であるストローク−トルク感度を算出する手段と、算出されたストローク−トルク感度とストローク−トルク感度とを乗じて得られるアクセル感度を用いて、指令車速と実車速との偏差に基づいてアクセルペダルのストロークの指令値の補正量をフィードバック制御する第2制御手段と、前記第1制御手段によって制御される基本指令値と前記第2制御手段によって制御される補正量とを加えた指令値に基づいて、アクセルペダルを操作する手段と、を有することを特徴とする車両用自動運転装置。
【0022】
(6)アクチュエータを用いてアクセルペダルを操作する車両用自動運転装置であって、車速と走行抵抗動力との関係を示す走行抵抗動力特性のデータを記憶する手段と、前記走行抵抗動力特性のデータに基づいて、車速と当該車速で走行するために必要なトルクとの比であるトルク−車速感度を算出する手段と、アクセルペダルのストロークとエンジン出力トルクとの関係を示すエンジン出力トルク特性のデータを記憶する手段と、前記エンジン出力トルク特性のデータに基づいて、アクセルペダルのストロークとエンジン出力トルクとの比であるストローク−トルク感度を算出する手段と、算出されたストローク−トルク感度とストローク−トルク感度とを乗じて得られるアクセル感度を用いて、指令車速と実車速との偏差に基づいて第1の指令値をフィードバック制御するフィードバック制御手段と、前記指令車速および指令加速度に応じて車両を走行するために要求されるエンジン動力を算出する手段と、前記トルク−車速感度の算出結果を用いて、要求されるエンジン動力を補正する手段と、補正されたエンジン動力をエンジンの回転数を用いてエンジン出力トルクに換算する手段と、換算されたエンジン出力トルクに基づいて第2の指令値をフィードフォワード制御するフィードフォワード制御手段と、フィードバック制御手段およびフィードフォワード制御手段によって各々制御される第1および第2指令値を加えた指令値に基づいてアクセルペダルを操作する手段と、を有することを特徴とする車両用自動運転装置。
【0023】
(7)アクチュエータを用いてアクセルペダルを操作する車両用自動運転装置であって、アクセルペダルを揺動する揺動手段と、前記揺動手段によるアクセルペダルの揺動幅を順次変化させる手段と、アクセスペダルの揺動幅を順次変化させたときのエンジン回転数の振れ幅を順次に計測する計測手段と、順次に変化させた前記アクセルペダルの揺動幅と、前記計測手段によって順次に計測されたエンジン回転数の振れ幅との相関関係にしたがって、エンジン回転数の振れ幅を0とすることができるアクセルペダルの揺動幅を検出する検出手段と、を有することを特徴とする車両用自動運転装置。
【0024】
(8)前記検出手段は、無負荷状態で前記揺動幅の検出を行うことを特徴とする前記(7)に記載の車両用自動運転装置。
【0025】
(9)アクチュエータを用いてアクセルペダルを操作する車両用自動運転装置であって、アクセルペダルを揺動する揺動手段と、前記揺動手段によるアクセルペダルの揺動幅を順次変化させる手段と、アクセスペダルの揺動幅を順次変化させたときの実車速の振れ幅を順次に計測する計測手段と、順次に変化させた前記アクセルペダルの揺動幅と、前記計測手段によって順次に計測された実車速の振れ幅との相関関係にしたがって、実車速の振れ幅を0とすることができるアクセルペダルの揺動幅を検出する検出手段と、を有することを特徴とする車両用自動運転装置。
【0026】
(10)さらに、アクセルペダルのストロークの指令値を算出する手段と、前記検出手段によって検出された前記揺動幅で揺動させながら、前記指令値に応じてアクセルペダルを操作する操作手段と、を特徴とする(7)〜(9)のいずれか1つに記載の車両用自動運転装置。
【0028】
(11)アクチュエータを用いてアクセルペダルを操作する車両用自動運転装置であって、アクセルペダルのストロークを制御する制御手段と、前記制御に基づいて、実車速が定速に制御されている状態で前記アクセルペダルのストロークを増加させたときの実車速を検出する車速検出手段と、実車速の検出結果に基づいて、前記アクセルペダルのストロークを増加させてから前記実車速が増加するまでの時間である応答遅れ時間を検出する応答遅れ時間検出手段と、実車速の検出結果に基づいて、実車速の変化速度である実加速度または駆動力を算出する算出手段と、前記アクセルペダルのストロークの増加量を順次増加または減少させて各応答遅れ時間を前記応答遅れ時間検出手段を用いて検出するとともに、そのときの実加速度または駆動力を前記算出手段を用いて算出することによって、加速度または駆動力と応答遅れ時間との関係を自動的に学習する応答遅れ時間学習手段と、を有することを特徴とする車両用自動運転装置。
【0029】
(12)前記制御手段は、基準となる基準ストローク値、当該基準ストローク値にストローク増加分を加えた値、当該基準ストローク状態からストロークを減少させた値に交互になるようにアクセルペダルのストロークを変化させるとともに、前記ストロークの増加量を順次変化させることを特徴とする前記(11)に記載の車両用自動運転装置。
【0030】
(13)さらに、前記減少状態において、ブレーキペダルを踏み込むようにブレーキペダルのストロークを変化させるブレーキストローク変化手段と、ブレーキペダルのストロークを変化させたときの減速時の加速度を算出する加速度算出手段と、前記ブレーキペダルの踏み込み量を順次増加または減少させて各加速度を検出することによって、ブレーキ制動力を自動的に学習するブレーキ制動力学習手段と、を有することを特徴とする前記(12)に記載の車両用自動運転装置。
【0031】
(14)指令車速データを記憶する車速データ記憶手段と、前記応答遅れ時間学習手段によって学習された、加速度または駆動力と応答遅れ時間との関係を示すデータを記憶する記憶手段と、前記データに基づいて、前記加速度または駆動力に応じた応答遅れ時間だけ時間的に先行した指令車速データを前記車速データ記憶手段から読み出す手段と、読み出された指令車速データに基づいてアクセルペダルを操作する操作手段と、を有することを特徴とする(11)に記載の車両用自動運転装置。
【0032】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、トルク−車速感度を算出し、算出されたトルク−車速感度を用いて、指令車速と実車速との偏差に基づいてアクセルペダルのストロークをフィードバック制御するので、車速と走行抵抗動力が正比例していると見做せないような広い運転条件の領域で、適切なゲイン設定を行うことができ、アクセルゲインが必要以上に高く設定されることによって、発振などが生じたり、アクセルゲインが低く設定されてしまうことによって、モード追従性が悪くなったりするといった事態の発生を防止することができる。
【0033】
請求項2に記載の発明によれば、ストローク−トルク感度を算出し、算出されたストローク−トルク感度を用いて、指令車速と実車速との偏差に基づいてアクセルペダルのストロークをフィードバック制御するので、アクセルペダルのストロークとエンジン出力トルクが正比例していると見做せないような広い運転条件の領域で、適切なゲイン設定を行うことができ、アクセルゲインが必要以上に高く設定されることによって、発振などが生じたり、アクセルゲインが低く設定されてしまうことによって、モード追従性が悪くなったりするといった事態を防止することができる。
【0034】
請求項3に記載の発明によれば、算出されたトルク−車速感度とストローク−トルク感度とを乗じて得られるアクセル感度を用いて、指令車速と実車速との偏差に基づいてアクセルペダルのストロークをフィードバック制御するので、自動運転上で問題となる非線形の問題について、走行抵抗動力特性の非線形とエンジン出力トルク特性の非線形とに要因を分けて処理することができるようになり、広い運転領域で、適切なゲイン設定を行うことができる。また、ゲイン設定を行う上で、従来のように変速比に基づいた係数を乗じる必要はなく、特にCVT(無段変速機)を用いた車両の自動運転装置に適用しやすくなる。
【0035】
請求項4に記載の発明によれば、トルク−車速感度の算出結果を用いて、要求される前記エンジン動力を補正し、補正されたエンジン動力をエンジンの回転数を用いてエンジン出力トルクに換算するので、走行抵抗動力特性に含まれる非線形成分を考慮して要求されるエンジン出力トルクが補正され、適切なアクセルペダルのストローク指令値を算出することができ、フィードフォワード制御の精度を格段に向上することができる。
【0036】
請求項5に記載の発明によれば、フィードバック制御およびフィードフォワード制御を共に採用するタイプの自動運転装置において、フィードバック制御側でのゲイン設定を適切に行うことができ、アクセルゲインが必要以上に高く設定されることによって、発振などが生じたり、アクセルゲインが低く設定されてしまうことによって、モード追従性が悪くなったりするといった事態を防止することができる。特に、エンジン出力トルク特性の非線形成分に起因するアクセルペダルタッチ点やスロットルタッチ点の位置などに関するアクセルストロークのデータ誤差を補正することができ、適切な自動運転が可能となる。
【0037】
請求項6に記載の発明によれば、フィードバック制御およびフィードフォワード制御を共に採用するタイプの自動運転装置において、フィードバック制御側では、適切なゲイン設定を行うことができるとともに、フィードフォワード制御側では、適切なアクセルペダルのストローク指令値を出力することができ、走行抵抗動力特性における走行抵抗動力のデータ誤差、エンジン出力トルク特性における要求エンジントルクのデータ誤差、およびアクセルペダルのタッチ点やスロットルタッチ点の位置などに関するアクセルストロークのデータ誤差を補正した、適切な自動運転が可能となる。
【0038】
請求項7に記載の発明によれば、アクセルペダルを揺動する揺動幅を順次変化させ、順次に変化させた前記アクセルペダルの揺動幅と、前記計測手段によって順次に計測されたエンジン回転数の振れ幅との相関関係にしたがって、エンジン回転数の振れ幅を0とすることができるアクセルペダルの揺動幅を検出するので、自動的に、アクセルヒステリシス量を測定することができるようになり、アクセルヒステリシスによる悪影響を防止するための基本データを自動的に学習し、記憶することができる。
【0039】
請求項8に記載の発明によれば、無負荷状態で前記揺動幅の検出を行うので、エンジン回転数が変化する立ち上がり点での揺動幅を正確に検出することができ、正確なアクセルヒステリシス量を自動的に学習することが容易になる。
【0040】
請求項9に記載の発明によれば、アクセルペダルを揺動する揺動幅を順次変化させ、順次に変化させた前記アクセルペダルの揺動幅と、前記計測手段によって順次に計測された実車速の振れ幅との相関関係にしたがって、実車速の振れ幅を0とすることができるアクセルペダルの揺動幅を検出するので、走行中にアクセルヒステリシス量を測定することができるようになり、アクセルヒステリシスによる悪影響を防止するための基本データを自動的に学習するためにかかる時間を短縮化できる。
【0041】
請求項10に記載の発明によれば、さらに、アクセルペダルのストロークの指令値を算出し、前記検出手段によって検出された揺動幅で揺動させながら、前記指令値に応じてアクセルペダルを操作するので、アクセルヒステリシスの影響を軽減し、加速および減速を小刻みに繰り返す必要がある運転モードの状況においても、アクセルペダルの操作に対するスロットルバルブの追従性を極端に損なうことなく、アクセル制御系におけるヒステリシスの影響を軽減することができ、アクセルペダルの動きをスロットバルブに確実に伝達させることができる。特に一台の自動運転装置でアクセルペダルのヒステリシス量の学習と、アクセるペダルの制御を行うことができるので、データの受け渡し等の手間を省くことができる。
【0043】
請求項11に記載の発明によれば、実車速が定速に制御されている状態で前記アクセルペダルのストロークを増加させたときの実車速を検出する車速検出手段と、実車速の検出結果に基づいて、前記アクセルペダルのストロークを増加させてから前記実車速が増加するまでの時間である応答遅れ時間を検出するとともに、そのときの実加速または駆動力を算出することによって、加速度または駆動力と応答遅れ時間との関係を自動的に学習するので、加速度または駆動力に応じて定まる応答遅れ時間のデータを容易に取得することができるようになる。
【0044】
請求項12に記載の発明によれば、基準となる基準ストローク値、当該基準ストローク値にストローク増加分を加えた値、当該基準ストローク状態からストロークを減少させた値に交互になるようにアクセルペダルのストロークを変化させるとともに、前記ストロークの増加量を順次変化させるので、比較的簡単な制御によって、応答遅れ時間のデータを取得することができる。
【0045】
請求項13に記載の発明によれば、ブレーキペダルの踏み込み量を順次増加または減少させて各加速度を検出することによって、ブレーキ制動力を自動的に学習するので、応答遅れ時間の学習の際に使用するブレーキ操作を利用して、ブレーキ制動力についても学習することができ、応答遅れ時間の学習とブレーキ制動力の学習を一括して行うことができるため、学習時間の短縮を図ることができる。
【0046】
請求項14に記載の発明によれば、前記応答遅れ時間学習手段によって学習された、加速度または駆動力に応じた応答遅れ時間だけ時間的に先行した指令車速データを前記車速データ記憶手段から読み出し、アクセルペダルを操作するように構成したので、加速度または駆動力に応じて応答遅れ時間を調整して先行指令を出すことができるようになり、応答遅れ時間を固定する場合と異なり、アクセルペダルの操作のタイミングが早すぎたり、遅すぎたりすることを防止することができる。
【0047】
【発明の実施の形態】
以下、図面にしたがって、本発明の一実施形態を詳細に説明する。
【0048】
(第1の実施形態)
第1の実施形態は、適正なゲインやアクセルペダルのストローク(以下、「アクセルストローク」と称する)の指令値の補正量を設定することができる車両の自動運転装置に関する。
【0049】
最初の例として、図1〜図5に基づいて、車速偏差をPI(比例−積分)制御系に入力し、アクセルストロークをフィードバック制御を行うタイプの自動運転装置に本発明を適用した場合を説明する。
【0050】
図1は、フィードバック制御を行うタイプの自動運転装置に本発明を適用した場合の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【0051】
自動運転装置100は、サーボモータ等のアクセル制御アクチュエータ40によって、車両20のアクセルペダルを操作する。これによって車両20は、シャーシダイナモメータ30上で自動運転される。
【0052】
車速検出手段102は、車両20またはシャーシダイナモメータ30に取り付けられた車速検出センサ104によって出力された信号に基づいて、車両20の実車速を検出する。例えば、タコジェネレータの電圧入力やまたはパルスジェネレータによるパルス入力から実車速Viを検出することが可能である。
【0053】
エンジン回転数検出手段106は、車両20に取り付けられたエンジン回転数検出センサ108によって出力された信号に基づいて、エンジン回転数Neを検出する。例えば、車両20のエンジンの点火信号パルス信号に基づいて、車両20のエンジン回転数Neを検出することができる。
【0054】
慣性重量入力手段110は、車両20の慣性重量Wを入力するものである。重量計などを用いて計量することによって車両20の慣性重量を入力をすることもでき、車両の種類毎の重量のデータを慣性重量入力手段110に予め記憶しておき、図示していないキーボードやポインティングデバイスなどを用いて、オペレータが車両の種類を特定することによって、慣性重量Wを設定するように構成することもできる。
【0055】
指令車速データ記憶手段112は、経過時間tと指令車速Vrとの関係を示すテーブルを予め記憶している。自動運転装置100は、この指令車速Vrで車両を自動運転するように制御する。
【0056】
学習データ記憶手段114は、自動運転に先だって、走行抵抗動力特性およびエンジン出力トルク特性を記憶している。走行抵抗動力特性およびエンジン出力トルク特性は、好適には、指令速度やエンジンによって出力されるトルクなどの全域にわたって記憶されている。
【0057】
走行抵抗動力特性およびエンジン出力トルク特性の具体例を各々図2および図3に示す。
【0058】
図2に示されるように、走行抵抗動力特性は、走行抵抗動力と車速との関係を示す特性であり、駆動力吸収側の特性を表している。ここで、走行抵抗動力(走行抵抗馬力)とは、一定の速度で車両が走行するのに必要な動力であり、ころがり抵抗動力、風損抵抗動力などを含む。図2から明らかなように、車速が大きくなるのにしたがって、走行抵抗動力も大きくなる。ただし、車両の走行に使用される全車速範囲を考慮すると、車速が大きくなるにつれて、走行抵抗動力の上昇率(図2のグラフの傾きに相到する)が大きくなるため、走行抵抗動力と車速は、線形な関係とみなすことができず、非線形な関係として扱う必要が生じる。自動運転装置100は、非線形な走行抵抗動力特性を考慮して、アクセル制御系のゲインを適正に決定することを特徴としている。したがって、非線形な走行抵抗動力特性のデータが学習データ記憶手段114に記憶されている。
【0059】
一方、図3に示されるように、エンジン出力トルク特性とは、車両20のエンジンのエンジン出力トルクとアクセルストロークとの関係を示す特性であり、駆動力出力側の特性を表している。アクセルストロークが大きくなる(アクセルペダルの踏み込みが大きくなる)にしたがって、エンジン出力トルクは大きくなる。ただし、車両の走行に使用される全エンジン出力範囲を考慮すると、アクセルストロークが大きくなるにつれて、エンジン出力トルクの上昇率(図3の傾きに相当)が低下し、飽和する傾向があるため、アクセルストロークとエンジン出力トルクとは、線形な関係とみなすことができず、非線形な関係として扱う必要が生じる。自動運転装置100は、非線形なエンジン出力トルク特性を考慮して、アクセル制御系のゲインを適正に決定することを特徴としている。したがって、非線形なエンジン出力トルク特性のデータが学習データ記憶手段114に記憶されている。なお、図3にはアクセルペダルの遊び代についても記載されている。アクセルペダルを放した状態から、遊び代まで踏み込むことによって、スロットルバルブが開き始める点(スロットルタッチ点)に達する。
【0060】
図2および図3に示された走行抵抗動力特性およびエンジン出力トルク特性は、ティーチング走行によって学習することができるが、同車種の特性が既に学習されている場合には、新たにティーチング走行を行うことなく、エンジン出力トルク特性として、既に学習されている特性を使用することができる。
【0061】
ティーチング走行は、例えば、以下のように行うことができる。
【0062】
図2に示した走行抵抗動力は、シャーシダイナモメータ30上で車両20を所定の車速で走行させた後、アクセル制御アクチュエータ40に指令するアクセルストロークを所定量小さくした場合の加速度(減速度)を測定し、この車速と加速度に基づいて測定することができる。
【0063】
一方、図3に示したエンジン出力トルク特性も学習されるが、エンジン回転数Neが相違すると同一ストロークでもエンジン出力トルクが変化するため、この例では、3種類のエンジン回転数(低回転数、中回転数、および高回転数)に対してエンジン出力トルク特性が学習されている。
【0064】
図1のアクセル感度演算手段116は、アクセル感度を演算し算出するものである。アクセル感度は、アクセルストロークと車速偏差の比、すなわち、アクセルストロークの値を車速偏差の値で除算した値である。実際には、トルク車速感度とストローク−トルク感度とを乗じたものがアクセル感度となる。なお、走行抵抗動力特性データに基づいてトルク−車速感度が求められ、エンジン出力トルク特性データに基づいてストローク−トルク感度が求められる。
【0065】
ここで、トルク−車速感度とは、走行抵抗動力特性データの非線形性を考慮するための補正係数として機能するものであり、具体的には、所定の車速で走行するために必要なトルクと当該車速との比(傾き)である。また、ストローク−トルク感度とは、エンジン出力トルク特性データの非線形性を考慮するための補正係数として機能するものであり、具体的には、アクセルストロークとエンジン出力トルクとの比(傾き)である。したがって、トルク−車速感度とストローク−トルク感度との積で表されるアクセル感度は、前記走行抵抗動力特性データおよびエンジン出力トルク特性データの双方の非線形性に基づく影響を軽減するために用いることができる。
【0066】
加算器118は、指令車速Vrと実車速Viとの差分をとり車速偏差Verを求めるものである。
【0067】
P項アクセルストローク演算手段120は、通常のPI制御(比例−積分制御)の場合と同様に、P(微分)項出力を計算するものであるが、本実施形態の車両の自動運転装置100では、上述したアクセル感度を用いて補正されたP項出力を計算する点に特徴がある。
【0068】
I項アクセルストローク演算手段122は、I(積分)項出力を計算するものであるが、本実施形態の車両の自動運転装置100では、上述したアクセル感度を用いて補正されたI項出力を計算する点に特徴がある。この結果、前記走行抵抗動力特性データおよびエンジン出力トルク特性データの非線形性に基づく影響を補正して、アクセルゲインを決定できる。
【0069】
加算器124は、P項出力値とI項出力値とを足し合せて、最終的にアクセルストローク指令値を出力する。出力されたアクセルストローク指令値にしたがってアクセル制御アクチュエータ40が動作し、車両30のアクセルペダルが操作される。
【0070】
以上のように構成される本実施形態の自動運転装置は、以下のように動作を行う。
【0071】
まず、車速偏差Verが計算される。指令車速データ記憶手段112から、指令車速Vrが読み出されるとともに、車速検出センサ104および車速検出手段102によって、実車速Viが検出される。この結果に基づいて、加算器118は、車速偏差Ver=Vr−Viを計算する。この処理は、従来の自動運転装置と同様である。
【0072】
次にトルク−車速感度Ktvが計算される。
【0073】
上記図2に示すような走行抵抗動力特性データが学習データ記憶手段114から読み出される。走行抵抗動力特性データが参照することによって、前記指令車速Vrに対応する走行抵抗動力P0と、速度ΔVを増加させたVr+ΔVに対応する走行抵抗動力P1が算出される。
【0074】
そして、上記図2に示されるグラフの傾きに相当する動力−車速感度Kpvが次式で計算される。
【0075】
Kpv=(P1−P0)/ΔV…(1)
ここで、動力−車速感度Kpvは、その車速で車両が走行するために必要な走行抵抗動力と当該車速との比であり、走行抵抗動力特性データを微分したものに相当する。
【0076】
動力と車速との関係を、トルクと車速との関係に変換するために、次式にしたがって、動力−車速感度Kpvがトルク−車速感度Ktvに変換される。
【0077】
Kpv=9552×Kpv/Ne…(2)
なお、(2)式において、動力−車速感度Kpvをトルク−車速感度Ktvに変換するためには、エンジン回転数検出手段106およびエンジン回転検出センサ108によって検出されたエンジン回転数Neが用いられる。
【0078】
このように求められたトルク−車速感度Ktvを図4に示す。図4では、エンジン回転数Neをパラメータとして、低速のエンジン回転数の場合、中速のエンジン回転数の場合、高速のエンジン回転数の場合について、トルク−車速感度Ktvと車速との関係が示されている。車速が高くなるにしたがって、トルク−車速感度Ktvは高くなり、グラフの傾きも増加する。また、回転数が高くなるにしたがって、トルク−車速感度Ktvは低くなる。
【0079】
なお、上記説明では、動力−車速感度Kpvを計算した後、トルク−車速感度Ktvに変換する場合を説明したが、まず、図2に示す走行抵抗動力特性を、図5に示すような要求エンジントルクと車速との関係に変換した後、トルク−車速感度Ktvを算出するように構成することも可能である。
【0080】
次にストローク−トルク感度が計算される。
【0081】
指令車速データ記憶手段112から指令車速Vrが読み出されるとともに、指令車速の変化速度である指令加速度αrが算出される。なお、指令加速度αrは、事前に入力しておいてもよく、指令車速を逐次微分することによって求めることも可能である。また、慣性重量入力手段110から入力されている車両20の慣性重量Wが取得される。
【0082】
これらの指令速度Vr、指令加速度αr、および慣性重量Wに基づいて、指令速度Vrおよび指令加速度αrで車両20が走行するために要求される要求エンジン動力が算出される。要求エンジン動力は、次式で計算される。
【0083】
Pr=(1/1000×W/g×Vr×αr)+P0…(3)
なお、gは、重力加速度である。さらに、エンジン回転数検出手段106およびエンジン回転検出センサ108によって検出されたエンジン回転数Neを用い、次式にしたがって、要求エンジン動力PrをエンジントルクTrに変換する。
【0084】
Tr=9552×Pr/Ne…(4)
そして、上記図3に示すようなエンジン出力トルク特性データを参照することによって、取得されたエンジン回転数Neの場合における、エンジントルクTrに対応するアクセルストロークS0と、トルクΔTを増加させたTr+ΔTに対応するアクセルストロークS1とが読み出される。
【0085】
そして、上記図3に示されるグラフの傾きに相当するストローク−トルク感度Kstが次式で計算される。
【0086】
Kst=(S1−S0)/ΔT…(5)
ここで、ストローク−トルク感度Kstは、図3に示されるエンジン出力トルク特性データを微分したものに相当する。
【0087】
このように求められたストローク−トルク感度Kstを図6に示す。図6では、エンジン回転数Neをパラメータとして、低速のエンジン回転数の場合、中速のエンジン回転数の場合、および高速のエンジン回転数の場合について、ストローク−トルク感度KstとエンジントルクTrとの関係が示されている。エンジントルクTrが高くなるにしたがって、ストローク−トルク感度Kstは高くなり、グラフの傾きも増加する。また、回転数が高くなるにしたがって、ストローク−トルク感度Kstは低くなる。
【0088】
以上のように算出されたトルク−車速感度Ktvとストローク−トルク感度Kstとを乗じることによってアクセル感度Kaが得られる。
【0089】
Ka=Ktv×Kst…(6)
そして、算出されたアクセル感度Kaに基づいて、ゲインが設定される。すなわち、PI制御の場合には、P(微分)項出力と、I(積分)項出力とが計算される。
【0090】
P項出力は、次式で計算される。
【0091】
P項出力=KPs×Ka×Ver…(7)
ここで、KPsは、ストローク比例定数である。
【0092】
I項出力は、次式で計算される。
【0093】
I項出力=Σ(KIs×Ka×Ver)…(8)
ここで、KIsは、ストローク積分定数である。
【0094】
(7)式、および(8)式から明らかなように、通常のPI制御の場合に比べて、アクセル感度Kaによる補正がされている点が特徴である。このアクセル感度Kaによる補正がされているために、走行抵抗動力特性データおよびエンジン出力トルク特性データの非線形成分による影響が軽減され、運転条件の全域に亘って、適性なP項出力およびI項出力が決定される。すなわち、適性なゲインが設定される。換言すれば、図1に示す実施形態は、ストロークの値を補正する場合に相当する。
【0095】
最終的に、P項出力とI項出力とを加算してなるアクセルストローク指令値(=P項出力+I項出力)が、アクセル制御アクチュエータ40に出力され、アクセルペダルが操作されることによって、指令速度Vrに応じた自動運転を行うことができる。
【0096】
以上のように、本実施形態の自動運転装置100によれば、トルク−車速感度Ktv、およびストローク−トルク感度Kstという概念を用いて、アクセル感度Kaを算出し、走行抵抗動力特性データにおける非線形性、およびエンジン出力トルク特性データにおける非線形性における影響を軽減する補正を行うので、すべての運転条件の領域において、適正なアクセルゲイン、すなわちP項出力およびI項出力を決定することができるフィードバック制御を実現することができる。また、トルクとエンジン回転数によって、データを処理することができるため、シフト位置を検出し、シフト位置に応じたギア比に基づいて、アクセルゲインを決定するといった処理をする必要はなく、特にCVT(無断変速機)を用いた車両の自動運転への適用が容易となる。
【0097】
なお、以上、トルク−車速感度Ktvおよびストローク−トルク感度Kstの双方を算出することによって、走行抵抗動力特性データにおける非線形性およびエンジン出力トルク特性データにおける非線形性における影響をともに軽減する場合を説明したが、トルク−車速感度Ktvのみを使用して補正する場合でも、走行抵抗動力特性データにおける非線形性における影響を軽減するといった効果を有する。また、ストローク−トルク感度Kstのみを使用して補正する場合でも、エンジン出力トルク特性データにおける非線形性における影響を軽減するといった効果を有する。
【0098】
次に、図7に基づいて、フィードフォワード制御を行うタイプの自動運転装置に本発明を適用した場合の変形例を説明する。ここで、扱われるフィードフォワード制御とは、予め記憶されている走行抵抗動力特性データに基づいて、指令車速および指令加速度で車両が走行するのに必要な要求動力を計算し、順次、要求トルクに変換し、最終的にアクセルストロークの指令値を算出する制御である。
【0099】
図7は、フィードフォワード制御を行うタイプの自動運転装置に本発明を適用した場合の変形例の構成を示すブロック図である。
【0100】
なお、図1に示した構成要素と同じ構成要素には、同一の番号を記し、詳しい説明は省略する。
【0101】
図7に示すように、本変形例では、図1のアクセル感度演算手段116、P項アクセルストローク演算手段120、I項アクセルストローク演算手段122が削除され、代わりに、動力−車速感度演算手段126、要求エンジン動力演算手段128、P項エンジン動力補正演算手段130、I項エンジン動力補正演算手段132、加算器134,136、エンジントルク演算手段138、アクセルストローク演算手段140が設けられている。
【0102】
動力−車速感度演算手段126は、動力−車速感度Kpvを算出するものである。動力−車速感度Kpvは、その車速で車両が走行するために必要な動力と当該車速との比であり、走行抵抗動力特性データを微分したものに相当する.
要求エンジン動力演算手段128は、指令速度Vrおよび指令加速度αrで車両20が走行するために要求される要求エンジン動力を演算するものである。
【0103】
P項エンジン動力補正手段130およびI項エンジン動力補正手段132は、、演算された前記要求エンジン動力を補正するための補正値(補正動力)を算出するものである。具体的には、P項エンジン動力補正演算手段130は、P項エンジン補正動力を算出し、I項エンジン動力補正手段132は、I項エンジン動力補正動力を算出する。加算器134は、P項エンジン補正動力とI項エンジン補正動力とを加算して、最終的なエンジン動力の補正値を算出する。ここで、エンジン動力の補正値とは、前記要求エンジン動力を補正するための値である。動力−車速感度Kpvを考慮して、要求エンジン動力の補正値を決定するため、走行抵抗動力特性データの非線形性に基づく影響を軽減し、正確な補正値を算出することができる。
【0104】
加算器136は、算出された要求エンジン動力について、前記エンジン動力補正値を加算することによって補正し、正確な補正ずみの要求エンジン動力を算出するものである。
【0105】
エンジントルク演算手段138は、補正された要求エンジン動力をエンジン回転数Neを用いて、補正された要求エンジン出力トルクに変換するものである。
【0106】
アクセルストローク変換手段140は、図3に示したようなエンジン出力トルク特性データを参照し、補正された要求エンジン出力トルクから、最終的なアクセルストロークの指令値を算出するものである。アクセルストローク指令値に基づいてアクセル制御アクチュエータ40が動作し、車両30のアクセルペダルが操作される。
【0107】
次に、本変形例の車両の自動運転装置の具体的な動作について説明する。
【0108】
まず、指令車速データ記憶手段112から指定車速Vrが読み出されるともに、指令車速Vrの変化速度である指令加速度αrが計算される。また、慣性重量入力手段110から入力されている車両20の慣性重量Wが取得される。これらの指令速度Vr、指令加速度αr、および慣性重量Wに基づいて、指令速度Vrおよび指令加速度αrで車両20が走行するために要求される要求エンジン動力Prが上記(3)式と同様な計算式によって算出される。
【0109】
次に、この要求エンジン動力Prを補正するための動力補正値が算出される。
【0110】
まず、上記(1)にしてがって、動力−車速感度Kpvが計算される。動力−車速感度Kpvは、その車速で車両が走行するために必要な動力と当該車速との比であり、走行抵抗動力特性データを微分したものに相当する。
【0111】
そして、この動力−車速感度Kpvに基づいて、P(微分)項エンジン補正動力と、I(積分)項エンジン補正動力とが計算される。
【0112】
P項エンジン補正動力は、次式で計算される。
【0113】
P項エンジン補正動力=KPp×Kpv×Ver…(9)
ここで、kPpは、動力比例定数であり、Verは、車速偏差である。車速偏差Verは、図1の場合と同様に求められる。
【0114】
I項エンジン補正動力は、次式で計算される。
【0115】
I項エンジン補正動力=Σ(KIp×Kpv×Ver)…(10)
ここで、KIpは、動力積分定数である。
【0116】
(9)式、および(10)式から明らかなように、通常のフィードフォワード制御の場合に比べて、動力−速度感度Kpvによる補正がされている点が特徴である。この動力−速度感度Kpvによる補正がされているために、走行抵抗動力データの非線形成分による影響が軽減され、運転条件の全域に亘って、適正な補正値を求めることができる。
【0117】
最終的に、補正分の動力(補正値)Ph=P項エンジン補正動力+I項エンジン補正動力が計算され、先に算出された要求エンジン動力Prに加算され、補正された要求エンジン動力Prh=Pr+Phが算出される。
【0118】
この補正された要求エンジン動力Prhは、エンジン回転数Neに基づいて、(補正された)要求エンジン出力トルクTrhに変換される。変換式は、上記の(4)式と同様であるので、説明を省略する。
【0119】
そして、上記図3に示すようなエンジン出力トルク特性データが学習データ記憶手段114から読み込まれる。このエンジン出力トルク特性データを参照することによって、エンジン回転数Neと、補正された要求エンジン出力トルクTrhとに基づいて、アクセルストロークの指令値Sが求められる。
【0120】
以上のように、本変形例の自動運転装置100によれば、動力−車速感度Kpvを算出し、走行抵抗動力特性データにおける非線形性を軽減し、要求エンジン動力について、正確な補正値を計算することができるため、フィードフォワード制御においても正確な制御を行うことができる。
【0121】
次に、図8に基づいて、フィードバック制御と、フィードフォワード制御とを併用するタイプの車両の自動運転装置における、フィードバック制御部分に関して、本発明を適用した場合の変形例を説明する。
【0122】
なお、フィードバック制御のみを用いる自動運転装置では、制御が収束しづらくなり、いわゆるハンチング(発振)が生じやすいという問題がある一方、フィードフォワード制御のみを用いる自動運転装置では、ティーチングによって学習されたデータの誤差やエンジンの状態が温度等に依存して変化することに起因して正確な制御が難しい場合があるため、両者の欠点を互いに補うことができるようにフィードバックとフィードフォワード制御を併用するタイプの自動運転装置が望まれる。本変形例では、当該タイプの自動運転装置におけるフィードバック制御の処理に第1図で説明した技術を適用した場合を説明する。
【0123】
図8は、フィードバックとフィードフォワード制御を併用するタイプの自動運転装置におけるフィードバック制御の処理に本発明を適用した場合のブロック図である。
【0124】
なお、図1または図7に示した構成要素と同じ構成要素には、同一の番号を記し、詳しい説明は省略する。
【0125】
図8において、アクセル感度演算手段116、P項アクセルストローク演算手段120、I項アクセルストローク演算手段122は、フィードバック制御系として機能する。一方、要求エンジン動力演算手段128、エンジントルク演算手段138、およびアクセルストローク変換手段140は、フィードフォワード制御系として機能する。
【0126】
具体的には、アクセル感度演算手段116は、上記の(1)式〜(6)式を用いて、図1で説明したアクセル感度Kaを算出し、さらに、上記(7)式および(8)式に基づいて、補正されたP項出力およびI項出力が計算される。P項出力とI項出力とが加算器124によって加算される。本変形例では、この加算された結果が、アクセルストロークの補正値Shとなる。
【0127】
一方、要求エンジン動力演算手段128は、上記(3)式を用い、指令車速Vr、慣性質量W、および図2に示されるような走行抵抗動力特性データに基づいて、要求エンジン動力Prを計算する。要求エンジン動力Prは、エンジン回転数Neに応じて要求エンジン出力トルクに変換される。さらに、アクセルストローク変換手段140は、図3に示したようなエンジン出力トルク特性データを参照し、前記要求エンジントルクから、アクセルストロークに変換する。この変換されたアクセルストロークS0が、アクセルストロークの基本指令値となる。したがって、アクセル感度Kaを計算する過程をそのまま利用して、アクセルストロークの基本指令値S0が計算される。
【0128】
加算器142は、アクセルストロークの基本指令値S0に対し、アクセルストロークの補正指令値Shを加えることによって、最終的なアクセルストローク指令値Sを算出する。
【0129】
次に、図9に基づいて、フィードバック制御とフィードフォワード制御とを併用するタイプの車両の自動運転装置における、フィードバック制御部分の制御およびフィードフォワード制御の双方に関して、本発明を適用した場合の変形例を説明する。本変形例では、当該タイプの自動運転装置におけるフィードバック制御の処理に第1図で説明した制御方式を適用し、フィードフォワード制御の処理に第7図で説明した制御方式を適用するものである。
【0130】
図9は、フィードバックとフィードフォワード制御を併用するタイプの自動運転装置におけるフィードバック制御およびフィードフォワード制御の双方の処理に本発明を適用した場合のブロック図である。
【0131】
なお、図1および図7に示した構成要素と同じ構成要素には、同一の番号を記し、詳しい説明は省略する。
【0132】
図9において、アクセル感度演算手段116、フィードバック演算手段144は、フィードバック制御系として機能する。ここで、フィードバック演算手段144は、図1におけるP項アクセルストローク演算手段120、I項アクセルストローク演算手段122、および加算器124を一括して表示した要素である。一方、動力車速感度演算手段126、要求エンジン動力演算手段128、およびエンジン動力補正手段146は、フィードフォワード制御系として機能する。ここで、エンジン動力補正手段146は、図7におけるP項エンジン動力補正演算手段130、I項エンジン動力補正演算手段132、および加算器134を一括して表示した要素である。
【0133】
具体的には、アクセル感度演算手段116は、上記の(1)式〜(6)式を用いて、図1で説明されているアクセル感度Kaを算出し、上記(7)式および(8)式に基づいて、アクセル感度Kaに応じて補正されたP項出力およびI項出力を計算する。P項出力とI項出力とが加算された結果が、アクセルストロークの補正値Shとなる。すなわち、PI制御を用いたフィードバック制御が行われる。この点、図8の場合と同様である。
【0134】
一方、要求エンジン動力演算手段128は、(3)式を用いて、要求エンジン動力Prを算出する。また、動力−車速感度演算手段126は、上記の(1)式を用いて、図7で説明されている動力−車速感度Kpvを算出する。なお、前記アクセル感度Kaを算出する際に算出される動力−車速感度Kpvを、そのまま用いることも可能である。そして、上記(9)式および(10)式に基づいて、動力−車速感度Kpvに応じて、P項エンジン補正動力とI項補正エンジン動力が計算される。これらの補正動力が要求エンジン動力Prに加えられて、補正された要求エンジン動力Prhが算出される。さらに、この補正された要求エンジン動力Prhは、エンジン回転数Neに応じて、補正された要求エンジン出力トルクTrhに変換される。さらに、アクセルストローク変換手段140は、図3に示したようなエンジン出力トルク特性データを参照し、前記補正された要求エンジントルクから、アクセルストロークの指令値に変換する。この変換されたアクセルストロークの指令値S0が、アクセルストロークの基本指令値S0となる。
【0135】
加算器142は、アクセルストロークの基本指令値S0に対し、アクセルストロークの補正指令値Shを加えることによって、最終的なアクセルストローク指令Sを算出する。すなわち、図8に示された場合のように要求エンジン動力Prをそのまま用いて、アクセルストロークの補正指令値Shを算出するのではなく、図7で説明された手順によって補正された要求エンジン動力Prhを用いて、アクセルストロークの補正指令値Shを算出する。
【0136】
以上のように、第1の実施形態における自動運転装置100によれば、アクセル感度Ka、すなわち、トルク−車速感度Ktvおよび/またはストローク−トルク感度Kstを用いることによって、フィードバック制御および/またはフィードフォワード制御を用いた車両用自動運転装置において、運転条件の領域全体にわた適正なゲインの設定やデータ補正を行うことができ、高精度に制御された自動運転を行うことができる。
【0137】
(第2の実施形態)
第1の実施形態は、適正なゲイン設定や補正量を設定する技術に関するものであったが、第2の実施形態は、アクセル制御系のヒステリシスによる問題および応答遅れ時間の問題を解決する技術に関する。
【0138】
図10および図11は、本発明の一実施形態に対応する自動運転装置のブロック図である。図10は、本実施形態に対応する自動運転装置のティーチング機能を説明するブロック図であり、図11は、アクセルストロークの指令値に基づいてアクセルペダルを操作する機能を説明するブロック図である。
【0139】
なお、図1または図7に示した構成要素と同じ構成要素には、同一の番号を記し、詳しい説明は省略する。
【0140】
図10において、走行データ学習手段150は、アクセルペダル位置、ギヤ位置、走行吸収動力特性(シャーシダイナモメータ吸収動力特性)、エンジン摩擦動力、エンジン出力トルク特性、およびブレーキ制動力などの一般的な走行データをサンプリングして学習する。
【0141】
まず、車速検出センサ104等によって取得された慣性重量、実車速、およびエンジン回転数に基づいて、アクセルペダル、ブレーキペダル、クラッチペダル、シフトレバー、エンジンキー等が操作され、ティーチング走行がされる。かかる操作は、制御アクチュエータ152によって制御される。なお、ティーチング走行は、自動走行運転に先だって行われる。具体的なティーチングの処理内容は、従来の技術と同様であるので、説明を省略する。
【0142】
本実施形態の自動運転装置は、通常の走行データ学習手段150の他に、ヒステリシス量学習手段154および応答遅れ時間学習手段156を有している点に特徴がある。
【0143】
ヒステリシス量学習手段154は、アクセル制御アクチュエータ40を制御し、エンジン回転数を計測しながら、アクセル制御系のヒステリシス量を自動的に学習するものである。ここで、アクセル制御系のヒステリシスは、主にアクセルペダルとスロットルとの間の伝達機構によって生じるものであり、特にアクセルワイヤによるヒステリシスである。
【0144】
アクセルストロークの値によって、アクセル制御系のヒステリシスの値も変化する。このことは、アクセルストロークの値によって、アクセルワイヤなどの張力が変化することに起因する。したがって、ヒステリシス量は、アクセルストローク毎に学習されることが望ましい。
【0145】
応答遅れ時間学習手段156は、アクセルペダルまたはブレーキペダルの操作を開始してから、車速が変化するまでにかかる応答遅れ時間を学習するものである。応答遅れ時間学習手段156は、制御アクチュエータ152(アクセル制御アクチュエータ40や図示していないブレーキ制御アクチュエータなど)を制御して、実車速を計測しながら、応答遅れ時間を学習する。応答遅れ時間は、駆動力又は加速度に応じて変化するため、応答遅れ時間は、駆動力または加速度毎に学習される。走行データ学習手段150、ヒステリシス量学習手段154、および応答遅れ時間学習手段156によって学習されたデータは、学習データ記憶手段114に記憶される。
【0146】
図11は、アクセルストロークの指令値に基づいてアクセルペダルを操作する機能を説明するブロック図である。
【0147】
図11において、基準指令値演算手段158は、従来型のフィードバック制御、フィードフォワード制御、または、その組み合わせによる制御、もしくは、第1の実施形態で説明したフィードバック制御、フィードフォワード制御およびその組み合わせによる制御を用いて、アクセルストロークの指令値を算出するものである。通常の車両の自動運転装置では、このアクセルストロークの指令値(以下、基準アクセルストローク指令値という)に基づいて、アクセルペダルを操作するだけであるが、本実施形態では、基準アクセルストローク指令値に、揺動成分を加えた値を新たなアクセルストローク指令値として、この新たなアクセルストローク指令値に基づいてアクセルペダルを操作する。この点が本実施形態の自動運転装置の特徴である。
【0148】
アクセルゆすり量演算手段160は、前記基準指令値演算手段158に基づいて算出された基準アクセルストローク指令値に応じて、アクセルペダルを揺動させるための揺動成分(揺動データ)を演算する。
【0149】
加算器162は、基準アクセルストロークの指令値に前記揺動成分を加算して得られる新たなアクセルストローク指令値をアクセル制御アクチュエータ40に出力する。その結果、所定の揺動幅(振幅)で揺動させながら、基準アクセルストローク指令値に応じたアクセルペダルの操作を行うことができる。より具体的には、基準アクセルストローク指令値を中心に、アクセルペダルの踏み込み位置を前後に一定時間毎に変化させる。
【0150】
先行指令演算手段164は、現在の駆動力に対応する応答遅れ時間を演算する。例えば、応答遅れ時間は、学習データ記憶手段に記憶されている駆動力毎の応答遅れ時間の学習結果に基づいて求めることができる。
【0151】
次に、本実施形態の車両の自動運転装置の具体的な動作について説明する。
まず、アクセルヒステリシスに関する処理について説明する。
【0152】
図12は、ヒステリシス量を学習する場合の処理を説明するための図である。
【0153】
あるアクセルストロークの値Sを基準として、アクセルペダルを揺動させる。アクセルペダルを揺動する揺動幅(振幅)ΔSを、経過時間にしたがって徐々に変化させるように構成させる。
【0154】
例えば、図12Aに示した場合では、まず、無負荷状態で、一定のエンジン回転数になるように制御し、この時のアクセルストロークの値をSとする。その後、所定時間ts経過した後、まず、揺動幅ΔSy1の揺動を行う。すなわち、はじめに、アクセルストロークSに揺動幅ΔSy1の半値0.5ΔSy1を加えた値を出力し、さらに所定時間が経過した後、アクセルストローク値Sから揺動幅ΔSy1の半値0.5ΔSy1を差し引いた値を出力する。次に、揺動幅をΔSy1からΔSy2に増加し、同様の処理を行う。さらに、順次、揺動幅ΔSyを徐々に増加し、同様の処理を繰り返す。なお、アクセルペダルの揺動は、周波数0.1〜0.5Hz程度で行うことが望ましい。揺動幅ΔSyを徐々に増加させた場合のエンジン回転数Nの変化が順次、計測される。
【0155】
図12Bに示すように、揺動幅ΔSyの値が小さい場合、エンジン回転数は変化しない。一方、揺動幅ΔSyの値が大きくなるにしたがって、エンジン回転数は、所定の振れ幅ΔNで増減するようになる。揺動幅ΔSyの値が小さい場合に、エンジン回転数が変化しないのは、アクセルペダルを操作しても、アクセルペダルとスロットルバルブとの間のアクセルワイヤなどの伸縮によってアクセルペダルの動きがスロットルバルブまで伝達されずに吸収されてしまい、スロットルの開度が変化しないためである。
【0156】
図13は、アクセルペダルの揺動幅(アクセルゆすり量)とエンジン回転数の振れ幅との関係の測定結果である。
【0157】
図13では、アクセルペダルの揺動幅ΔSyが0.5mm未満の領域では、エンジン回転数は変化せず、エンジン回転数の振幅ΔNは0である。アクセルペダルの揺動幅ΔSyが0.5mm以上の領域では、アクセルペダルの揺動幅ΔSyが増加するのにしたがって、エンジン回転数の振幅ΔNの値が増加する。
【0158】
実際には、アクセルペダルの揺動幅ΔSを徐々に増加しながら、そのときのエンジン回転数Neの振れ幅ΔNが順次計測される。計測されたアクセルペダルの揺動幅ΔSyとエンジン回転の振れ幅ΔNとの相間関係にしたがって近似線を用いて、振れ幅ΔNが0になる場合のアクセルペダルの揺動幅ΔSyが算出される。この揺動幅ΔSyがヒステリシス量H1となる。すなわち、アクセルペダルの揺動幅を変化させた場合に、エンジン回転数が変化するようになる立ち上がり点での前記揺動幅がアクセルヒステリシス量H1となる。
【0159】
なお、アクセルストローク値Sに依存してアクセルヒステリシスの値も変化する。
【0160】
図14は、アクセルストロークSとアクセルヒステリシスの値との関係を示している。図14に示された例は、アクセルストロークが大きくなるにしたがって、徐々にアクセルヒステリシスの値が小さくなる傾向を示している。
【0161】
したがって、各アクセルストローク毎に、上述の処理を繰り返すことによって、各アクセルストロークSにおけるアクセルヒステリシスの値を学習することが可能である。
【0162】
ただし、異なるアクセルストロークS毎にアクセルヒステリシスの値を学習するのではなく、一定のアクセルストロークSの場合におけるアクセルヒステリシスを学習する構成を採用してもよい。特に、第1の実施形態において図3に示したように、アクセルストローク値Sが大きい領域では、アクセルストローク値に対してエンジン出力トルクが依存しにくくなり、アクセルストローク値Sの誤差による影響が少ない。したがって、仮に、アクセルストローク値が小さい領域で学習されたアクセルヒステリシスをそのままアクセルストローク値が大きい領域に適用しても影響が少ない。
【0163】
以上のように、本実施形態によれば、アクセルペダルを操作しても、スロットルバルブが動かない領域を自動的に計測し、アクセルヒステリシスを自動学習することができる。
【0164】
次に、以上のように学習されたヒステリシス量に基づいて、実際にアクセルストロークを制御する処理について説明する。
【0165】
図11に示された基準指令値演算手段158によって、基準アクセルストローク指令値Sbが算出される。運転条件の領域全体にわたって正確な自動運転を可能とする見地からは、基準アクセルストローク指令値は、第1の実施形態で説明した制御方式のいずれを用いて算出されることが望ましいが、従来技術として説明した通常のフィードバック制御方式またはフィードフォワード制御方式を用いて算出することも可能である。
【0166】
次にアクセルゆすり量演算手段160は、学習データ記憶手段114に記憶されているアクセルヒステリシス量の特性データを参照し、基準アクセルストローク指令値に応じたアクセルヒステリシス量を算出する。ここで、アクセルヒステリシス量の特性データは、例えば、上述した図14に示されるデータであって、アクセルストローク毎に学習されたアクセルヒステリシス量のデータであることが望ましい。なお、アクセルヒステリシス量のデータは、ヒステリシス学習手段154によって自動学習されたものであることが望ましいが、オペレータによって事前に入力されたものであってもよい。
【0167】
そして、このアクセルヒステリシス量を揺動幅(振幅)とする揺動成分が作成される。例えば、アクセルヒステリシス量Hの半値を算出し、作成された半値の符号を一定の周期で反転した値Sydが作成される。ここで、揺動成分の周波数は、例えば、2〜5Hzであることが望ましい。
【0168】
そして、加算器162によって、定常アクセルストローク指令値Sbに揺動成分Sydを加算して、ヒステリシス量を考慮したアクセルストローク指令値=Sb+Sydが算出される。したがって、アクセルストローク指令値は、Sb+H/2と、Sb−H/2とを交互に繰り返す値となる。このアクセルストローク指令値がアクセル制御アクチュエータ40に出力され、アクセルペダルの操作が行われる。この結果、アクセルペダルを揺動させながら、自動運転がされることになる。ただし、アクセルペダルの揺動幅は、アクセルヒステリシス量に応じて決定されているため、スロットルバルブの開度が変化しない範囲でアクセルペダルは揺動される。したがって、車速が揺動的に変化してしまう事態は発生しない。
【0169】
このような本実施形態によれば、アクセルペダルの押し側のみ、または引き側のみを用いてアクセルストロークを制御する場合と異なり、確実にアクセルペダルの動きをスロットルバルブに伝えることができる。したがって、アクセルペダルの押し側で操作する場合や引き側で操作する場合においてスロットルバルブの開度が異なり、エンジン回転数等が異なってしまうという事態を防止するとともに、加速と減速を小刻みに繰り返す必要がある自動運転の場合においても、追従性が保たれることとなる。
【0170】
また、アクセルペダルを揺動させながら、アクセルペダルを制御する場合としては、車両を自動運転する走行モードの場合のみななず、無負荷アクセル特性を学習するティーチングモードの場合にも適用することができる。例えば、図15に示すように、無負荷アクセル特性の学習時にもアクセルペダルを揺動させながら学習データを取得することができる。この結果、アクセルペダルの押し側または引き側に依存しない平均化された無負荷アクセル特性を得ることができる。
【0171】
なお、以上の説明では、基準アクセルストローク指令値に応じた異なるアクセスヒステリシス量を用いて揺動幅を決定する場合を説明したが、自動運転の特性上、要求精度が低い場合にあっては、アクセルヒステリシスの特性データとしてがアクセル低開度側の1点のみの値を用いて、揺動幅を決定する構成とすることが可能であることは上記説明から明らかである。
。
【0172】
また、上記の説明では、アクセルストロークの揺動幅とアクセルヒステリシス量とが等しくなるように設定する場合を説明したが、周辺環境の変化などを考慮して、アクセルヒステリシス量よりも小さい範囲でアクセルストロークの揺動幅を設定することも可能である。
【0173】
さらに、上記の説明では、アクセルヒステリシスの学習段階において、揺動幅を徐々に大きくしていく場合を例にとって説明したが、逆に揺動幅を徐々に小さくしていって、エンジン回転数の振り幅が0となる点、すなわち、立ち上がり点を求めることによって、アクセルヒステリシスを算出し、自動学習するようにする構成も可能である。
【0174】
また、上記の説明ではアクセルヒステリシスの学習段階およびアクセルストロークの制御段階において、矩形パルス状の揺動成分を加える場合を説明したが、他の揺動成分、例えば、サイン関数の揺動成分を用いる構成も可能である。
【0175】
以上、アクセル制御系のヒステリシスに関する処理について説明したが、次に応答遅れ時間に関する処理を説明する。
【0176】
図16は、応答遅れ時間を学習する場合の処理を説明するための図である。
【0177】
図16Aに示されるように所定のアクセルストロークSを基準にして、車両を所定車速に制御した後、アクセルステップ量ΔSea1を加える。図16Cに示されるように、そのときの実車速Viを計測し、アクセルステップ量を加えてから、車速の立ち上がりまでの時間Δtdを算出し、算出されたΔtdを応答遅れ時間taとする。
【0178】
次に、アクセルストロークをスロットルタッチ点以下(例えば0)まで戻す一方、図16Bに示すように、ブレーキストローク指令値を出力することによって、車両を所定の車速まで減速する。そして、再び、所定のアクセルストロークSを基準にして、車両を所定車速に制御した後、更に増加されたアクセルステップ量ΔSea2(>ΔSea1)を加え、その時の応答遅れ時間を測定する。同様に、アクセルステップ量ΔSeaを順次、増加させ、増加されたアクセルステップ量ΔSeaを所定のアクセルストロークSに加えた場合の実車速を検出することによって、応答遅れ時間を測定する。
【0179】
また、応答遅れ時間学習手段156は、検出された実車速Viの変化速度である実加速度αiと、車両の慣性重量Wとを取得するとともに、図3に示したような走行抵抗動力特性データから実速度Viに対応する走行抵抗動力Piを取得する。実加速度αiは、図16Cに示されるようにΔV1/Δt1として計算することができる。さらに、応答遅れ時間学習手段156は、実加速度αi、慣性質量W、および走行抵抗動力Piとに基づいて、車両の動力Pを計算する。
【0180】
動力Pは、次式によって計算される。
【0181】
動力P=(1/1000×W/g×Vi×αi)+Pi…(11)
さらに、動力Pは、次式によって駆動力に変換される。
【0182】
駆動力F=1000×P/Vi…(12)
以上のように駆動力Fを算出することによって、応答遅れ時間taと駆動力Fの値との関係を学習することができる。
【0183】
図17は、学習された応答遅れ時間taと駆動力Fの値との関係、すなわち、応答遅れ時間特性を示している。図17から明らかなように、駆動力Fが小さくなるにしたがって、応答遅れ時間taが大きくなる。なお、応答遅れ特定のデータは学習データ記憶手段114に格納される。
【0184】
以上のように、本実施形態においては、応答遅れ時間taの値が駆動力Fに応じて変化することを考慮し、各駆動力Fに応じた応答遅れ時間taを自動的に測定し、学習できるようになる。
【0185】
なお、以上の説明では、応答遅れ時間特性として、応答遅れ時間taと駆動力Fとの関係を自動的に学習する場合を例にとって説明したが、簡易的には、応答遅れ時間taと実加速度αiとの関係を自動的に学習する構成とすることも可能である。
【0186】
また、以上の説明では、アクセルステップΔSeaの値を順次に大きくしていく場合を説明したが、例えば、アクセルステップΔSeaの値を順次に小さくしていき、その時の応答遅れ時間taと駆動力Fまたは加速度αiとの関係を算出するように構成することも可能である。
【0187】
以上のように、本実施形態によれば、駆動力Fまたは加速度αiに依存した応答遅れ時間を自動的に学習することができる。
【0188】
次に、以上のように学習された応答遅れ時間に基づいて、実際にアクセルストロークを制御する処理について説明する。
【0189】
本実施形態の自動運転装置は、駆動力Fまたは加速度αiに依存して応答遅れ時間が変化することを考慮して、先行指令車速を出力する点に特徴がある。
【0190】
図11に示された先行指令演算手段164は、指令車速データ記憶手段112から指令車速Vrを読み出す。さらに、指令加速度αrが求められる。ここで、指令加速度αrは、指令車速Vrを順次、微分して得ることもでき、事前に指令車速データ記憶手段112に記憶しておくこともできる。また、車両の慣性重量Wが慣性重量入力手段110によって取得される。さらに、学習データ記憶手段114に記憶されている走行抵抗動力特性データが参照されて、指令車速Vrに対応する走行抵抗動力P0が読み出される。
【0191】
以上のデータから、要求エンジン動力Prが次式によって算出される。
【0192】
Pr=(1/1000×W/g×Vr×αr)+P0…(13)
なお、ここで、gは、重力加速度である。
【0193】
さらに、算出された要求エンジン動力Prを変換することによって、駆動力Fが次式によって計算される。
【0194】
駆動力F=1000×Pr/Vr…(14)
次に、学習データ記憶手段114に記憶されている応答遅れ時間特性が参照され、計算された駆動力Fに対応した応答遅れ時間taが求まる。
【0195】
先行指令演算手段164は、現時点から応答遅れ時間taだけ時間的に先行した先行指令車速Varおよび先行指令加速度αarを読み出し、基準指令値演算手段158に出力する。図18に指令車速と先行指令車速との関係を図示する。車速の変化速度である加速度(図中の傾き)が大きい領域では、応答遅れ時間taが短くなることが図示されている。
【0196】
このように、本実施形態の自動運転装置によれば、駆動力Fに応じて変化する応答遅れ時間taを考慮して、先行指令車速を出力するので、適正な先行指令車速に基づいて車両を制御することができる。
【0197】
なお、以上の説明では、駆動力Fと応答遅れ時間taとの関係を応答遅れ時間特性として記憶しておき、この関係に基づいて先行指令車速を出力する場合を説明したが、加速度αと応答遅れ時間taとの関係を応答遅れ時間特性として記憶しておき、この関係に基づいて先行指令車速を出力するように構成することもできる。
【0198】
また、応答遅れ時間特性は、図10に示されるような応答遅れ時間学習手段156に基づいて、自動的に学習されるように構成することが望ましいが、応答遅れ時間学習手段156によって学習されたデータに限らず、事前の計算やシミュレーションによって求められた応答遅れ時間特性をオペレータが入力しておき、この応答遅れ時間特性に基づいて、駆動力Fまたは加速度αに依存する応答遅れ時間taに応じて、先行指令車速を出力するように構成することもできる。
【0199】
さらに、上記の説明では、第2の実施形態として、アクセルヒステリシスの影響と、応答遅れ時間の影響の双方ともを考慮して制御を行う自動運転装置を説明したが、たとえば、どちらか一方のみを考慮して制御を行う自動運転装置を構成することもできる。
【0200】
また、本実施形態の自動運転装置は、以下のような変形が可能である。
【0201】
図19および図20を用いて、応答遅れ時間ともに、エンジン出力トルク特性およびフットブレーキ制動力を同時に学習するように構成された変形例を説明し、図21を用いて、走行中にアクセルヒステリシスを求める変形例を説明する。
【0202】
図19は、エンジン出力トルク特性の学習と、応答遅れ時間の学習と、フットブレーキ制動力の学習を同時に行うように構成された変形例を説明するためのブロック図である。
【0203】
車速検出手段102は、車速検出センサ104の信号に基づいて、実車速Viを検出する。また、エンジン回転数検出手段106は、エンジン回転数検出センサ108の信号に基づいて、エンジン回転数Neを検出する。
【0204】
ティーチングモード記憶手段170は、車速・エンジン回転数・加速度・応答遅れ時間を計測し、制御し、記憶する手段として機能する。ここで、ティーチングモード記憶手段170は、実車速Viとエンジン回転数Neとに基づいて、制御アクチュエータ152を制御する。ここで、制御アクチュエータ152は、アクセル、ブレーキ、クラッチ、ギヤ、エンジンキーなどの各制御アクチュエータから構成されている。制御アクチュエータ152が制御されることによって、シャーシダイナモメータ30上の車両20がティーチング走行され、平均車速、平均エンジン回転数、加速度、応答遅れ時間などが計測される。計測結果は順次、記憶されるとともに、応答遅れ時間演算手段172、エンジン出力トルク演算手段173、およびフットブレーキ制動力演算手段174とに各々入力される。
【0205】
応答遅れ時間演算手段172、エンジン出力トルク演算手段173、およびフットブレーキ制動力演算手段174は、それぞれ、慣性重量入力手段110から得られる車両の重量Wを適宜参照して演算を行うことで、応答遅れ時間、エンジン出力トルク特性、エンジン出力トルク特性を算出する。算出された各データは、学習データ記憶手段114に記憶される。
【0206】
以上のように構成される自動運転装置は、以下のように動作する。
図20は、本変形例の自動運転装置の処理を説明するための図である。
【0207】
実車速Viと、エンジン回転数Neと、車両の慣性重量Wとに基づいて、ティーチングモード記憶手段170は、図20に示されるような制御を行い、車両を運転する。
【0208】
この変形例におけるティーチング走行の内容を以下に説明する。
【0209】
まず、車両20が、所定の車速で走行するように制御する。この時のアクセルストロークをSとする。その時のアクセルストロークSに、アクセルステップ量ΔSeaを加えたときの実車速Viが計測され、アクセルステップ量ΔSeaを加えてから、車速が増加を開始するまでの時間Δtdが算出される。
【0210】
一方、加速時における実加速度αi1が求められる。具体的には、図20Dに示されるように、ΔV1/Δt1によって、実加速度αi1が求められる。また、この時の平均車速Vi1および平均エンジン回転数Ne1も求められる。
【0211】
その後、アクセルペダルを少なくともスロットルタッチ点まで戻し、ギヤをニュートラルの状態とし、ブレーキステップ量ΔSsbをブレーキストローク指令として出力する。
【0212】
この結果、車両は減速される。この減速時の実加速度αi2が求められる。具体的には、図20Dに示されるように、ΔV2/Δt2によって、実加速度αi2が求められる。また、この時の平均車速Vi2および平均エンジン回転数Ne2も求められる。
【0213】
以上のアクセルステップΔSea、およびブレーキステップΔSsbの大きさを徐々に変化させることによって、順次、Δtd、αi1、Ne1、αi2、Ne2を計測し、記憶する。
【0214】
この結果は、各演算手段172〜174に入力される。応答遅れ時間演算手段172は、Δtdから応答遅れ時間特性を算出し、エンジン出力トルク演算手段173は、αi1およびNe1などに基づいて、既知の方法によってエンジン出力トルク特性を算出し、フットブレーキ制動力演算手段174は、αi2、Ne2などに基づいて、既知の方法によってブレーキ制動力を算出する。算出された結果は、学習データ記憶手段114に順次、記憶される。
【0215】
この変形例によれば、図16で示した応答遅れ時間の学習過程において、エンジン出力トルク特性およびブレーキ制動力を同時に学習することができるため、学習時間の短縮化を図ることができる。
【0216】
図21は、走行中にアクセルヒステリシスを学習する場合の変形例を説明するための図である。
【0217】
まず、実車速Viが一定になるように制御される。この時のアクセルストロークをSとする。このアクセルストロークSを基準として、アクセルペダルを揺動する。揺動幅ΔSyを順次に変化させる。図21の場合には、揺動幅ΔSyを徐々に大きくしていき、その時の実車速Viが検出される。具体的には、揺動幅ΔSyの半値を基準アクセルストローク指令値Sに加え、その後、揺動幅ΔSyの半値をアクセルストロークSから差し引く。さらに揺動幅ΔSyを順次、大きくし、同様の処理を繰り返す。
【0218】
図21に示すように、揺動幅ΔSyが小さい場合には、アクセルペダルの動作がアクセルワイヤに吸収され、スロットルまで伝達しないため、実車速Viに変化は表われない。一方、揺動幅ΔSyが大きくなるにつれて、実車速Viが変化するようになる。アクセルペダルの揺動幅ΔSyと、実車速Viの振れ幅との関係を計測し、実車速Viの振れ幅が生じ始める位置(振れ幅が0である位置)、すなわち、立ち上がり点が決定され、この点における揺動幅ΔSyがアクセルヒステリシスとされる。また、順次、アクセルストロークSの値を変化させ、各アクセルストロークの値に応じて、実車速Viの振れ幅を計測することによって、上述の図14に示したものと同様なアクセルヒステリシス特性が計測される。
【0219】
本変形例によれば、アクセルヒステリシス特性を走行中に算出することができる。
【0220】
以上、説明したように、第1実施形態として説明したアクセル制御系のゲインおよび/または補正量の適正な設定に関する技術、第2の実施形態として説明したアクセルヒステリシスを考慮した制御、および、応答遅れ時間を考慮した制御技術に関する本発明は、好ましくは、互いに組み合わされて適用されることによって、良好な自動運転装置を構成することができ、また、必要に応じて、各技術を単独で用いることができることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 フィードバック制御を行うタイプの自動運転装置に本発明を適用した場合の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】 走行抵抗動力特性の一例を示す図である。
【図3】 エンジン出力特性の一例を示す図である。
【図4】 トルク−車速感度の特性を示す図である。
【図5】 要求エンジントルク特性を示す図である。
【図6】 ストローク−トルク感度を示す図である。
【図7】 フィードフォワード制御をするタイプの自動運転装置に本発明を適用した場合の変形例の構成を示すブロック図である。
【図8】 フィードバックとフィードフォワード制御を併用するタイプの自動運転装置におけるフィードバック制御の処理に本発明を適用した場合のブロック図である。
【図9】 フィードバックとフィードフォワード制御を併用するタイプの自動運転装置におけるフィードバック制御およびフィードフォワード制御の双方の処理に本発明を適用した場合のブロック図である。
【図10】 第2の実施形態に対応する自動運転装置のティーチング機能を説明するブロック図である。
【図11】 第2の実施形態に対応するアクセルストロークの指令値に基づいてアクセルペダルを操作する機能を説明するブロック図である。
【図12】 アクセルヒステリシス量を学習する処理を説明するための図である。
【図13】 アクセルゆすり量とエンジン回転数の振れ幅との関係の測定結果を示す図面である。
【図14】 アクセルストロークとアクセルヒステリシスとの関係を示す測定例を示す図面である。
【図15】 無負荷アクセル特性の測定結果の例を示す図面である。
【図16】 応答遅れ時間を学習する場合の処理を説明するための図である。
【図17】 学習された応答遅れ時間特性を示す図である。
【図18】 指令車速と先行指令車速との関係を示す図である。
【図19】 第2の実施形態に対応する自動運転装置の変型例を説明するためのブロック図である。
【図20】 第2の実施形態に対応する自動運転装置の変型例の処理を説明する図である。
【図21】 走行中にアクセルヒステリシスを学習する場合の変形例を説明するための図である。
【符号の説明】
100…自動運転装置、
102…車速検出手段、
106…エンジン回転数検出手段、
110…慣性重量入力手段、
112…指令車速データ記憶手段、
114…学習データ記憶手段、
116…アクセル感度演算手段、
120…P項アクセルストローク演算手段、
122…I項アクセルストローク演算手段、、
126…動力−車速感度演算手段、
128…要求エンジン動力演算手段、
130…P項エンジン動力補正演算手段、
132…I項エンジン動力補正演算手段、
138…エンジントルク演算手段、
140…アクセルストローク演算手段、
144…フィードバック補正手段、
146…エンジン動力補正手段、
150…走行データ学習手段、
152…制御アクチュエータ、
154…ヒステリシス量学習手段、
156…応答遅れ時間学習手段、
158…基準指令値演算手段、
160…アクセルゆすり量演算手段。
Claims (14)
- アクチュエータを用いてアクセルペダルを操作する車両用自動運転装置であって、
車速と走行抵抗動力との関係を示す走行抵抗動力特性のデータを記憶する手段と、
前記走行抵抗動力特性のデータに基づいて、車速と当該車速で走行するために必要なトルクとの比であるトルク−車速感度を算出する手段と、
算出されたトルク−車速感度を用いて、指令車速と実車速との偏差に基づいてアクセルペダルのストロークをフィードバック制御する制御手段と、
を有することを特徴とする車両用自動運転装置。 - アクチュエータを用いてアクセルペダルを操作する車両用自動運転装置であって、
アクセルペダルのストロークとエンジン出力トルクとの関係を示すエンジン出力トルク特性のデータを記憶する手段と、
前記エンジン出力トルク特性のデータに基づいて、アクセルペダルのストロークとエンジン出力トルクとの比であるストローク−トルク感度を算出する手段と、
算出されたストローク−トルク感度を用いて、指令車速と実車速との偏差に基づいてアクセルペダルのストロークをフィードバック制御する制御手段と、
を有することを特徴とする車両用自動運転装置。 - アクチュエータを用いてアクセルペダルを操作する車両用自動運転装置であって、
車速と走行抵抗動力との関係を示す走行抵抗動力特性のデータを記憶する手段と、
前記走行抵抗動力特性のデータに基づいて、車速と当該車速で走行するために必要なトルクとの比であるトルク−車速感度を算出する手段と、
アクセルペダルのストロークとエンジン出力トルクとの関係を示すエンジン出力トルク特性のデータを記憶する手段と、
前記エンジン出力トルク特性のデータに基づいて、アクセルペダルのストロークとエンジン出力トルクとの比であるストローク−トルク感度を算出する手段と、
算出されたトルク−車速感度とストローク−トルク感度とを乗じて得られるアクセル感度を用いて、指令車速と実車速との偏差に基づいてアクセルペダルのストロークをフィードバック制御する制御手段と、
を有することを特徴とする車両用自動運転装置。 - アクチュエータを用いてアクセルペダルを操作する車両用自動運転装置であって、
車速と走行抵抗動力との関係を示す走行抵抗動力特性のデータを記憶する手段と、
前記走行抵抗動力特性のデータに基づいて、車速と当該車速で走行するために必要なトルクとの比であるトルク−車速感度を算出する手段と、
指令車速および指令加速度に応じて車両を走行するために要求されるエンジン動力を算出する手段と、
前記トルク−車速感度の算出結果を用いて、要求される前記エンジン動力を補正する手段と、
補正されたエンジン動力をエンジンの回転数を用いてエンジン出力トルクに換算する手段と、
換算されたエンジン出力トルクに基づいてアクセルペダルのストロークの指令値を算出し、アクセルペダルのストロークをフィードフォワード制御する制御手段と、
を有することを特徴とする車両用自動運転装置。 - アクチュエータを用いてアクセルペダルを操作する車両用自動運転装置であって、
指令車速および指令加速度に応じて車両を走行するために要求されるエンジン動力を算出する手段と、
要求されるエンジン動力をエンジンの回転数を用いてエンジン出力トルクに換算する手段と、
換算されたエンジン出力トルクに基づいてアクセルペダルのストロークの基本指令値をフィードフォワード制御する第1制御手段と、
車速と走行抵抗動力との関係を示す走行抵抗動力特性のデータを記憶する手段と、
前記走行抵抗動力特性のデータに基づいて、車速と当該車速で走行するために必要なトルクとの比であるトルク−車速感度を算出する手段と、
アクセルペダルのストロークとエンジン出力トルクとの関係を示すエンジン出力トルク特性のデータを記憶する手段と、
前記エンジン出力トルク特性のデータに基づいて、アクセルペダルのストロークとエンジン出力トルクとの比であるストローク−トルク感度を算出する手段と、
算出されたストローク−トルク感度とストローク−トルク感度とを乗じて得られるアクセル感度を用いて、指令車速と実車速との偏差に基づいてアクセルペダルのストロークの指令値の補正量をフィードバック制御する第2制御手段と、
前記第1制御手段によって制御される基本指令値と前記第2制御手段によって制御される補正量とを加えた指令値に基づいて、アクセルペダルを操作する手段と、を有することを特徴とする車両用自動運転装置。 - アクチュエータを用いてアクセルペダルを操作する車両用自動運転装置であって、
車速と走行抵抗動力との関係を示す走行抵抗動力特性のデータを記憶する手段と、
前記走行抵抗動力特性のデータに基づいて、車速と当該車速で走行するために必要なトルクとの比であるトルク−車速感度を算出する手段と、
アクセルペダルのストロークとエンジン出力トルクとの関係を示すエンジン出力トルク特性のデータを記憶する手段と、
前記エンジン出力トルク特性のデータに基づいて、アクセルペダルのストロークとエンジン出力トルクとの比であるストローク−トルク感度を算出する手段と、
算出されたストローク−トルク感度とストローク−トルク感度とを乗じて得られるアクセル感度を用いて、指令車速と実車速との偏差に基づいて第1の指令値をフィードバック制御するフィードバック制御手段と、
前記指令車速および指令加速度に応じて車両を走行するために要求されるエンジン動力を算出する手段と、
前記トルク−車速感度の算出結果を用いて、要求されるエンジン動力を補正する手段と、
補正されたエンジン動力をエンジンの回転数を用いてエンジン出力トルクに換算する手段と、
換算されたエンジン出力トルクに基づいて第2の指令値をフィードフォワード制御するフィードフォワード制御手段と、
フィードバック制御手段およびフィードフォワード制御手段によって各々制御される第1および第2指令値を加えた指令値に基づいてアクセルペダルを操作する手段と、
を有することを特徴とする車両用自動運転装置。 - アクチュエータを用いてアクセルペダルを操作する車両用自動運転装置であって、
アクセルペダルを揺動する揺動手段と、
前記揺動手段によるアクセルペダルの揺動幅を順次変化させる手段と、
アクセスペダルの揺動幅を順次変化させたときのエンジン回転数の振れ幅を順次に計測する計測手段と、
順次に変化させた前記アクセルペダルの揺動幅と、前記計測手段によって順次に計測されたエンジン回転数の振れ幅との相関関係にしたがって、エンジン回転数の振れ幅を0とすることができるアクセルペダルの揺動幅を検出する検出手段と、を有することを特徴とする車両用自動運転装置。 - 前記検出手段は、無負荷状態で前記揺動幅の検出を行うことを特徴とする請求項7に記載の車両用自動運転装置。
- アクチュエータを用いてアクセルペダルを操作する車両用自動運転装置であって、
アクセルペダルを揺動する揺動手段と、
前記揺動手段によるアクセルペダルの揺動幅を順次変化させる手段と、
アクセスペダルの揺動幅を順次変化させたときの実車速の振れ幅を順次に計測する計測手段と、
順次に変化させた前記アクセルペダルの揺動幅と、前記計測手段によって順次に計測された実車速の振れ幅との相関関係にしたがって、実車速の振れ幅を0とすることができるアクセルペダルの揺動幅を検出する検出手段と、を有することを特徴とする車両用自動運転装置。 - さらに、アクセルペダルのストロークの指令値を算出する手段と、
前記検出手段によって検出された前記揺動幅で揺動させながら、当該指令値に応じてアクセルペダルを操作する操作手段と、
を特徴とする請求項7〜9のいずれか1つに記載の車両用自動運転装置。 - アクチュエータを用いてアクセルペダルを操作する車両用自動運転装置であって、
アクセルペダルのストロークを制御する制御手段と、
前記制御に基づいて、実車速が定速に制御されている状態で前記アクセルペダルのストロークを増加させたときの実車速を検出する車速検出手段と、
実車速の検出結果に基づいて、前記アクセルペダルのストロークを増加させてから前記実車速が増加するまでの時間である応答遅れ時間を検出する応答遅れ時間検出手段と、
実車速の検出結果に基づいて、実車速の変化速度である実加速度または駆動力を算出する算出手段と、
前記アクセルペダルのストロークの増加量を順次増加または減少させて各応答遅れ時間を前記応答遅れ時間検出手段を用いて検出するとともに、そのときの実加速度または駆動力を前記算出手段を用いて算出することによって、加速度または駆動力と応答遅れ時間との関係を自動的に学習する応答遅れ時間学習手段と、
を有することを特徴とする車両用自動運転装置。 - 前記制御手段は、基準となる基準ストローク値、当該基準ストローク値にストローク増加分を加えた値、当該基準ストローク状態からストロークを減少させた値に交互になるようにアクセルペダルのストロークを変化させるとともに、前記ストロークの増加量を順次変化させることを特徴とする請求項11に記載の車両用自動運転装置。
- さらに、前記アクセルストロークを減少させたときに、ブレーキペダルを踏み込むようにブレーキペダルのストロークを変化させるブレーキストローク変化手段と、ブレーキペダルのストロークを変化させたときの減速時の加速度を算出する加速度算出手段と、前記ブレーキペダルの踏み込み量を順次増加または減少させて各加速度を検出することによって、ブレーキ制動力を自動的に学習するブレーキ制動力学習手段と、を有することを特徴とする請求項12に記載の車両用自動運転装置。
- 指令車速データを記憶する車速データ記憶手段と、
前記応答遅れ時間学習手段によって学習された、加速度または駆動力と応答遅れ時間との関係を示すデータを記憶する記憶手段と、
前記データに基づいて、前記加速度または駆動力に応じた応答遅れ時間だけ時間的に先行した指令車速データを前記車速データ記憶手段から読み出す手段と、
読み出された指令車速データに基づいてアクセルペダルを操作する操作手段と、を有することを特徴とする請求項11に記載の車両用自動運転装置。
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