JP3872160B2 - 受液器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも冷媒の入口部と出口部とを備えた気・液分離タンクと、該タンク内に設けらているドライアーユニットとからなる受液器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
カー・エアコンのような冷凍サイクルに用いられる受液器は、周知のように、気体と液体とを分離するタンクと、このタンク内に設けられているドライアーユニットとから構成されている。ドライアーユニット自体も、文献名を挙げるまでもなく従来周知で、例えば図4に示されているように構成されている。すなわち、ドライアーユニット50は、図4の(イ)に分解して示されているように、カップ状の容器51、円板状のフィルタ53、カップ状の容器51の開口部よりも大径のシールフィルタ54、カバー55、吸上管57等の複数個の部品から構成されている。なお、カップ状の容器51の底板とカバー55には冷媒流通用の複数個の小孔が開けられている。
【0003】
組立に際しては、カップ状の容器51、円板状のフィルタ53、シールフィルタ54およびカバー55を、この順序で吸上管57に挿通する。そして、カップ状の容器51の底に円板状のフィルタ53を位置させて乾燥剤60を収納し、カップ状の容器51の開口部52の縁52’をシールフィルタ54で包み込むようにして折り返し、そしてカバー55を押し込む。これにより、カップ状の容器51、円板状のフィルタ53、シールフィルタ54およびカバー55が一体化される。そして、吸上管57にはビーディング加工等により凸部58が形成されているので、この凸部58に一体化されたカバー55が当接した状態で、カップ状の容器51の底板の位置59で吸上管57を加締、変形する。これにより、一体化された部品が吸上管57に位置決めされ、ドライアーユニット50が構成される。この状態が、図4の(ロ)に示されている。
【0004】
上記のようにして組み立てられたドライアーユニット50を、図には示されていない気・液分離タンクに挿入し、そして気・液分離タンクの上方の開口部に電磁成形等によりヘッダを取り付けると、受液器が構成される。なお、ヘッダには、周知のように冷媒入口通路、吸上管57に連通する冷媒出口通路等が設けられ、またプレッシャーゲージ、サイトグラス等も取り付けられている。
したがって、凝縮器から冷媒入口通路を通って気・液分離タンクに入った冷媒は、ドライアーユニット50を通過する間に水分は除去される。また、気・液分離タンク内で気液に分離され、液のみが吸上管57から吸い上げられ、そして冷媒出口通路を通って蒸発器に送られる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来のドライアーユニット50も、気・液分離タンクと組み合わされて受液器が構成されると、機能的には問題はない。しかしながら、製作コストが高いという欠点がある。すなわち、従来のドライアーユニット50は、前述したようにカップ状の容器51、フィルタ53、シールフィルタ54、カバー55、吸上管57等の複数個の部品から構成されているので、個々の部品を個々に製作し、また個々に製作された部品を順序に従って組み立てなければならないので、製作費が嵩む欠点がある。特に、シールフィルタ54は、カップ状の容器51の開口部52の縁52’を包み込むようにして折り返す曲げ加工を必要とし、また一体化されたカップ状の容器51、カバー55等を位置決めするために、吸上管57を位置59で加締、変形する工程も必要とし、全体としてコスト高になっている。さらには、ドライアーユニット50を気・液分離タンク内に設けるときのシール性の問題もあり、またドライアーユニット50の固定、ズレ等の位置決めの問題もある。
本発明は、上記したような欠点、問題点等を解決した受液器を提供しようとするもので、具体的には、部品数が少なくて、しかも組立時のコスト高の原因になるシールフィルタを折り返すような曲げ加工、吸上管に施す加締、変形加工等のような組立加工を必要としない受液器を提供することを目的としている。また、他の発明は、上記目的に加えて、ドライアーユニットと気・液分離タンクとの間のシール性が向上すると共に、ドライアーユニットが所定の位置に確実に位置決めされる受液器を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、ドライアーユニットの構成要素であるカップ状容器と吸上管は、カップ状容器には蓋体を装着するとき互いに密接する嵌合部を有するように、合成樹脂により一体的に形成される。すなわち、本発明は、上記目的を達成するために、少なくとも冷媒の入口部と出口部とを備えた気・液分離タンクと、該タンク内に設けらているドライアーユニットとからなる受液器であって、前記ドライアーユニットは、乾燥剤が入れられるカップ状容器と、冷媒が通る吸上管と、前記カップ状容器の開口部に装着される蓋体とからなり、
前記カップ状容器は、該カップ状容器の開口部に前記蓋体を装着するとき互いに密接する嵌合部を有するように、前記吸上管と合成樹脂により一体的に成形される。請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の受液器において、カップ状容器と蓋体の嵌合部には、いずれか一方の嵌合部には透孔が、そして他方の嵌合部には前記透孔に嵌る突起が設けられ、そして請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の受液器において、カップ状容器の外周部には、気・液分離タンクに装着するとき、該タンクの内周壁に接触する可撓性のヒレが設けられている。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかの項に記載の受液器において、カップ状容器は、底壁と周壁とを有し、前記底壁の中心部を貫通する形で、吸上管と一体的に合成樹脂により形成され、請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかの項に記載の受液器において、カップ状容器は、その周壁は底壁から開口部に向かって肉厚がテーパ状に薄くなっているテーパ部を有し、その開口端部では同一肉厚になって、その内周面が蓋体の嵌合部と互いに密接する嵌合部となり、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の受液器において、カップ状容器の嵌合部の内周面に、蓋体の嵌合凸部が嵌る嵌合凹溝が形成され、請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれかの項に記載の受液器において、カップ状容器と一体的に形成されている吸上管は、前記カップ状容器の底壁から、開口端部対応した位置に向かって肉厚がテーパ状に薄くなっているテーパ部を有するように、請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれかの項に記載の受液器において、カップ状容器の開口端部に装着される蓋体は、多数の冷媒通路用の透孔が開けられている底壁と、該底壁の中心部に絞加工のような形で開けられている吸上管挿通用開口と、前記底壁の周部から立ち上がっている嵌合部とからなり、前記嵌合部の外周面には半径外方へ突出した嵌合凸部が設けられ、そして請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれかの項に記載の受液器において、ドライアーユニットが、カップ状容器の底壁にフィルタを入れ、次いで乾燥剤を収納し、収納した乾燥剤を押さえるフィルタを入れ、そして蓋体を前記カップ状の容器の開口端部に押し込み組み立てられているように構成される。請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれかの項に記載の受液器を備えた冷凍サイクルのように構成される。
【0007】
【発明の実施の形態】
初めに、本発明の第1の実施の形態を図1、2により説明する。図1に示されている第1の実施の形態によると、乾燥剤が入れられるカップ状容器2と、冷媒が吸い上げられる吸上管10は、合成樹脂により一体的に成形されている。さらに詳しく説明すると、カップ状容器2は、底壁3と周壁5とを有し、底壁3の中心部を貫通する形で吸上管10と一体的に合成樹脂により成形されている。カップ状容器2の周壁5は、底壁3から開口端部6に向かって肉厚がテーパ状に薄くなっているテーパ部5’を有する。これにより、金型が開き易くなっている。また、開口端部6では、同一肉厚になって、その内周面が後述する蓋体の嵌合部と互いに密接する嵌合部7となっている。この嵌合部7の内周面には、第1の実施の形態では、図1の(ロ)に拡大して示されているように、嵌合凹溝8が成形されている。なお、カップ状容器2の底壁3には、図1の(ハ)に示されているように、多数の冷媒流通用の透孔4、4、…が開けられている。
【0008】
カップ状容器2と一体的に成形されている吸上管10も、カップ状容器2の底壁3から、カップ状容器2の開口端部6に対応した位置に向かって肉厚がテーパ状に薄くなっているテーパ部10’を有する。また、底壁3から図1の(イ)において下方に向かってもテーパ状に薄くなっている。これにより、例えばカップ状容器2の底壁3を、金型のパーティング面で成形するようにして、カップ状容器2と吸上管10とを同時に一体的に成形し、そして容易に金型から取り出すことができる。
【0009】
カップ状容器2の開口端部6に装着される蓋体14は、図2の(ロ)に示されているように、多数の冷媒流通用の透孔が開けられている底壁15と、この底壁15の中心部に絞加工のような形で開けられている吸上管挿通用開口16と、底壁15の周部から立ち上がっている嵌合部17とから、アルミニウムあるいは合成樹脂から形成されている。そして、嵌合部17の外周面には、図2の(ロ)に拡大して示されているように、半径外方へ突出した嵌合凸部18が設けられている。この嵌合凸部18が、組立時にカップ状容器2の嵌合凹溝8に嵌る。なお、嵌合部17の上端部からは、組立時にカップ状容器2の開口端縁に当接してストッパの作用をするフランジ19が半径外方へ形成されている。
【0010】
本実施の形態によると、カップ状容器2と吸上管10とが、合成樹脂により一体的に成形されているので、簡単にドライアーユニットを組み立てることができる。すなわち、カップ状容器2の底壁3にフィルタを入れ、次いで乾燥剤を収納し、そして収納した乾燥剤を押さえる形で再びフィルタを入れ、そしてカップ状容器2の開口端部6に蓋体14を押し込むと、カップ状容器2の嵌合凹溝8に蓋体14の嵌合凸部18が嵌まり、蓋体14がカップ状容器2に装着される。これにより、ドライアーユニットが組み立てられる。このようにして組み立てられたドライアーユニットの吸上管10を、ヘッダの冷媒出口通路に接続して、周知の気・液分離タンクに挿入し、そして冷媒入口通路等が設けられているヘッダで気・液分離タンクの開口部を閉鎖すると、受液器が構成される。この受液器によって、従来周知のようにして、供給された冷媒から水分が除去され、また、気・液分離タンク内で気・液に分離され、液のみが吸上管10から吸い上げられ、そして冷媒出口通路を通って蒸発器に送られることは明らかである。
【0011】
次に、本発明の第2の実施の形態を図3により説明する。なお、前述した第1の形態の構成要素と同じ構成要素には同じ参照数字を付けて、また同様な構成要素には同じ参照数字にダッシュ「’」を付けて重複説明はしない。第2の実施の形態によると、カップ状容器2’の嵌合部7’には、図3の(イ)に示されているように、複数個の嵌合用の透孔8’、8’、…が成形されている。また、カップ状容器2’の下端部の外周部には、半径外方へ向かってテーパ状に薄肉になっている可撓性のヒレ9が設けられている。
【0012】
第2の実施の形態によると、蓋体14’の嵌合部17’には、カップ状容器2’の透孔8’、8’、…に対応する複数個の嵌合用のツメ18’、18’、…が形成されている。これらのツメ18’、18’、…は、上方に向かって厚くなっている。したがって、蓋体14’をカップ状容器2’に押し込むとき、ツメ18’、18’、…は、透孔8’、8’、…に入るが、一旦入ると抜けることはない。本実施の形態に係わるカップ状容器2’、蓋体14’等から、前述したようにしてドライアーユニットを組み立てることができることも、また組み立てられたドライアーユニットを気・液分離タンク内に同様に挿入し、ヘッダを取り付けると、受液器が構成されることも明らかである。
【0013】
本実施の形態によると、蓋体14’は、カップ状容器2’にツメ18’、18’、…と透孔8’、8’、…とにより嵌合しているので、蓋体14’はより確実にカップ状容器2’に保持される。また、カップ状容器2’には可撓性のヒレ9が一体的に成形されているので、ドライアーユニットを気・液分離タンク内に挿入すると、可撓性のヒレ9の先端部が、図3の(ロ)の左側において示されているように、気・液分離タンクTの内周面に当接して折曲げられる。これにより、カップ状容器2’の外周面と気・液分離タンクTの内周面との間のシール性が向上すると共に、カップ状容器2’の、気・液分離タンクTに対する位置のズレが防止される。なお、図3に示されている実施の形態では、透孔8’、8’、…がカップ状容器2’に、そしてツメ18’、18’、…が蓋体14’に設けられているが、これとは逆に透孔を蓋体14’に、そしてツメをカップ状容器2’に設けても同様に実施できることは明らかである。また、可撓性のヒレ9もカップ状容器2’の必ずしも下端部に設ける必要はなく、例えばカップ状容器2’の中間部近傍に設けても略同様な効果が得られることも明らかである。
【0014】
【発明の効果】
以上のように、本発明によると、受液器を構成しているドライアーユニットが、乾燥剤が入れられるカップ状容器と、冷媒が通る吸上管と、カップ状容器の開口部に装着される蓋体とからなり、カップ状容器は、該カップ状容器の開口部に蓋体を装着するとき互いに密接する嵌合部を有するように、吸上管と合成樹脂により一体的に成形されているので、従来のドライアーユニットに比較して部品数が少なくなり、また、組立時に従来のようにシールフィルタの曲げ加工、吸上管の加締、変形加工等の加工が不要で、単に蓋体をカップ状容器に装着するだけで、ドライアーユニットが構成される。したがって、本発明によると、安価に受液器を得ることができるという、本発明特有の効果が得られる。また、他の発明によると、カップ状容器と蓋体の嵌合部には、いずれか一方の嵌合部には透孔が、そして他方の嵌合部には透孔に嵌る突起が設けられているので、蓋体はより確実にカップ状容器に保持される効果が付加され、さらにカップ状容器の外周部に、気・液分離タンクに装着するとき、該タンクの内周壁に接触する可撓性のヒレが設けられている発明によると、上記効果に加えて、ドライアーユニットと気・液分離タンクとの間のシール性が向上すると共に、ドライアーユニットが所定の位置に確実に位置決めされる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態に係わるドライアーユニットの構成要素であるカップ状容器と吸上管とを示す図で、その(イ)は全体の断面図、その(ロ)は(イ)において矢印ロで示す部分の拡大断面図、その(ハ)は底面図である。
【図2】 本発明の第1の実施の形態に係わるドライアーユニットの構成要素である蓋体を示す図で、その(イ)はその正面断面図、その(ロ)は(イ)において矢印ロで示す部分の拡大断面図である。
【図3】 本発明の第2の実施の形態に係わるドライアーユニットの構成要素の一部を示す図で、その(イ)はカップ状容器と吸上管を、そしてその(ロ)は蓋体を示す断面図である。
【図4】 従来のドライアーユニットを示す図で、その(イ)は一部を断面にして示す組立前の正面図、その(ロ)は一部を断面にして示す組立後の正面図である。
【符号の説明】
2、2’ カップ状容器
7、17’ 嵌合部
8 嵌合凹溝
8’ 透孔
10 吸上管
14、14’ 蓋体
18 嵌合凸部
18’ ツメ
Claims (10)
- 少なくとも冷媒の入口部と出口部とを備えた気・液分離タンクと、該タンク内に設けらているドライアーユニットとからなる受液器であって、
前記ドライアーユニットは、乾燥剤が入れられるカップ状容器と、冷媒が通る吸上管と、前記カップ状容器の開口部に装着される蓋体とからなり、
前記カップ状容器は、該カップ状容器の開口部に前記蓋体を装着するとき互いに密接する嵌合部を有するように、前記吸上管と合成樹脂により一体的に成形されている、ことを特徴とする受液器。 - 請求項1に記載の受液器において、カップ状容器と蓋体の嵌合部には、いずれか一方の嵌合部には透孔が、そして他方の嵌合部には前記透孔に嵌る突起が設けられている、受液器。
- 請求項1または2に記載の受液器において、カップ状容器の外周部には、気・液分離タンクに装着するとき、該タンクの内周壁に接触する可撓性のヒレが設けられている、受液器。
- 請求項1〜3のいずれかの項に記載の受液器において、カップ状容器は、底壁と周壁とを有し、前記底壁の中心部を貫通する形で、吸上管と一体的に合成樹脂により形成されている、受液器。
- 請求項1〜4のいずれかの項に記載の受液器において、カップ状容器は、その周壁は底壁から開口部に向かって肉厚がテーパ状に薄くなっているテーパ部を有し、その開口端部では同一肉厚になって、その内周面が蓋体の嵌合部と互いに密接する嵌合部となっている、受液器。
- 請求項5に記載の受液器において、カップ状容器の嵌合部の内周面に、蓋体の嵌合凸部が嵌る嵌合凹溝が形成されている、受液器。
- 請求項1〜6のいずれかの項に記載の受液器において、カップ状容器と一体的に形成されている吸上管は、前記カップ状容器の底壁から、開口端部対応した位置に向かって肉厚がテーパ状に薄くなっているテーパ部を有する、受液器。
- 請求項1〜7のいずれかの項に記載の受液器において、カップ状容器の開口端部に装着される蓋体は、多数の冷媒通路用の透孔が開けられている底壁と、該底壁の中心部に絞加工のような形で開けられている吸上管挿通用開口と、前記底壁の周部から立ち上がっている嵌合部とからなり、前記嵌合部の外周面には半径外方へ突出した嵌合凸部が設けられている、受液器。
- 請求項1〜8のいずれかの項に記載の受液器において、ドライアーユニットが、カップ状容器の底壁にフィルタを入れ、次いで乾燥剤を収納し、収納した乾燥剤を押さえるフィルタを入れ、そして蓋体を前記カップ状の容器の開口端部に押し込み組み立てられている、受液器。
- 請求項1〜9のいずれかの項に記載の受液器を備えた冷凍サイクル。
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