JP3871725B2 - レーザー処理方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本明細書で開示する発明は、量産性に優れ、ばらつきが小さく、歩留りの高いレーザー光照射による半導体デバイスの作製方法、およびその作製方法に利用できるレーザー処理装置に関する。特に、本明細書で開示する発明は、1部もしくは全部が非晶質成分からなる半導体材料、あるいは、実質的に真性な多結晶の半導体材料、さらには、イオン照射、イオン注入、イオンドーピング等によってダメージを受けて、結晶性が著しく損なわれた半導体材料にレーザー光を照射することによって、該半導体材料の結晶性を向上せしめ、あるいは結晶性を回復させる方法、およびそれらの方法に利用できるレーザー処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体素子プロセスの低温化に関して研究が盛んに進められている。その大きな理由は、ガラス等の耐熱性のそれ程高くない絶縁基板上に半導体素子を形成する必要が生じたからである。その他にも素子の小型化や素子の多層化に伴う要請もある。
【0003】
素子の特性の優劣は半導体材料の結晶性が決定する。このため、半導体プロセスにおいて、半導体材料に含まれる非晶質成分もしくは非晶質半導体材料を結晶化させることや、結晶性であったものの、イオンを照射したために結晶性が低下した半導体材料の結晶性を回復することや、結晶性であるが、より結晶性を向上させることが必要とされている。
【0004】
従来、このような目的のためには熱的なアニールが採用さている。半導体材料として珪素を用いる場合には、600℃から1100℃の温度で0.1〜48時間、もしくはそれ以上の時間のアニールをおこなうことによって、非晶質の結晶化、結晶性の回復、結晶性の向上等がなされる。
【0005】
一般に、熱アニールは温度が高いほど、処理時間が短縮でき、結晶化の効果が大きくなる。そのため、500℃以下の温度では、ほとんど効果がないため、プロセスの低温化の観点からは、従来、熱アニールによってなされていた工程を他の手段によって置き換えることが必要とされている。
【0006】
この熱アニール変わる技術として、レーザー光を照射することによってアニールを行う技術が低温プロセスと注目されている。レーザー光は熱アニールに匹敵する高いエネルギーを必要とされる箇所に限定して与えることができるため、レーザーアニールは基板全体を高い温度にさらす必要がないからである。
【0007】
レーザー光の照射に関しては、大きく分けて2つの方法が提案されている。第1の方法はアルゴンイオンレーザー等の連続発振レーザーを用いて、スポット状のビームを半導体材料に照射する方法である。スポット状のビームが半導体材料に照射されると、ビーム内部でのエネルギー分布の差、およびビームの移動によって、半導体材料が溶融され、緩やかに凝固することによって結晶化される。
【0008】
第2の方法はエキシマーレーザー等のパルス発振レーザーを用いる方法である。高いエネルギー密度でレーザーパルスを半導体材料に照射して、半導体材料を瞬間的に溶融させ、凝固させることによって半導体材料を結晶化させる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の第1のレーザー照射方法では、連続発振レーザーの最大エネルギーが限られたものであるため、ビームスポットの寸法は高々数mmφ程度であるため、処理に時間がかかるという問題点がある。他方、第2のレーザー処理方法では、レーザーの最大エネルギーは非常に大きいため、数cm2 以上の大きなスポット(一般には正方形や長方形のビームパターンとなる)を用いて、より量産性を上げることができる。
【0010】
しかしながら、通常用いられる正方形もしくは長方形の形状のビームでは、1枚の大きな面積の基板を処理するには、ビームを二次元的に走査させる必要があり、量産性の面で依然として改善する余地があった。
【0011】
これに関しては、ビームを線状に変形し、ビームの長手方向の長さを処理すべき基板を越える長さとしすることにより、ビームを一次元のみに走査すればよいので、処理時間を短縮できる。
【0012】
レーザー照射による結晶化工程は、レーザーエネルギーの強度が完成する半導体デバイスの特性を大きく左右する。従って、レーザーエネルギーの最適化が重要課題の一つとなる。
【0013】
しかしながら、パルス発振レーザーはパルス毎にエネルギーがある程度変動してしまい、その変動の度合いは出力エネルギーに依存する。特にパルスレーザー光はレーザーエネルギーの強度が低すぎると、レーザーエネルギーの安定性が著しく低下する傾向を有する。上記最適エネルギーがレーザー発振の安定性を著しく低下させる領域にあるとき、レーザー照射面の均一性が著しく悪くなるため、基板全面にわたって均一なエネルギーでレーザーを照射することは困難であり、半導体材料を均一に結晶化することができない。
【0014】
半導体材料の結晶性の不均一性を緩和する方法として、強いパルスレーザー光を照射する前に、それよりも弱いパルスレーザー光を予備的に照射することにより、結晶生の均一性が向上することが報告されている。さらに、予備的な照射と本照射とのビームの走査方向を互いに概略直行させることで、複数回の照射で生ずる結晶性の不均一が相殺されて、基板全体の結晶性がより均一になることも判明している。しかしながら、レーザーエネルギーの変動により生じる結晶性の不均一を根本的に解決していない。
【0015】
レーザーを異なるエネルギーで同一基板に照射する方法は、照射毎にレーザー光のエネルギーを変化させねばならない。レーザー出力を変化すると、しばらくの間、パルス発振レーザーは出力が不安定になるため、レーザー出力が安定するまで照射を待たねばならない。複数回のレーザーの照射は結晶性の均一性を高める長所を有するが、処理時間が大幅に増加してしまうという欠点を有する。
【0016】
本発明の目的は、上述の問題点を解決して、レーザー光を複数回照射する場合でも、最適なエネルギーでレーザー光を安定に照射し得るレーザー処理方法を提供することにある。
【0017】
また、本発明の他の目的は、上述の問題点を解決して、レーザー光を安定に照射し、かつレーザー光照射を短時間に行い得るレーザー処理方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上述の問題点を解決するために本発明に係るレーザー処理方法の構成は、安定に発振するエネルギーで出力された線状のレーザー光を走査しながら基板上の半導体膜に照射し、前記半導体膜を結晶化するレーザー処理方法において、
前記レーザー光の長手方向の長さは前記基板を越える長さであり、
前記レーザー光の光路上に第1の減光フィルターを挿入することにより、前記レーザー光のエネルギーを調節し、前記レーザー光を前記基板に対して相対的に走査して前記半導体膜に照射する第1のレーザー光照射を行い、
前記基板を(n/2+1/4)回転(nは0を含む自然数)させ、
前記レーザー光の光路上から前記第1の減光フィルターを除去し、前記レーザー光の光路上に第2の減光フィルターを挿入することにより、前記レーザー光のエネルギーを調節し、前記第1のレーザー光照射におけるレーザー光の照射エネルギーとは異なるエネルギーで、前記レーザー光を前記基板に対して相対的に且つ前記第1のレーザー光走査方向とは反対の方向に走査して、前記半導体膜に照射する第2のレーザー光照射を行うことを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係るレーザー処理方法の他の構成は、安定に発振するエネルギーで出力された線状のレーザー光を走査しながら基板上の半導体膜に照射し、前記半導体膜を結晶化するレーザー処理方法において、前記レーザー光の長手方向の長さは前記基板を越える長さであり、前記レーザー光の光路上に第1の減光フィルターを挿入することにより、前記レーザー光のエネルギーを調節し、前記レーザー光を前記基板に対して相対的に走査して前記半導体膜に照射する第1のレーザー光照射を行い、前記基板を(n/2+1/4)回転(nは0を含む自然数)させ、前記レーザー光の光路上から前記第1の減光フィルターを除去し、前記レーザー光の光路上に第2の減光フィルターを挿入することにより、前記レーザー光のエネルギーを調節し、前記第1のレーザー光照射におけるレーザー光の照射エネルギーより高いエネルギーで、前記レーザー光を前記基板に対して相対的に且つ前記第1のレーザー光走査方向とは反対の方向に走査して、前記半導体膜に照射する第2のレーザー光照射を行うことを特徴とする。
【0020】
本発明に係るレーザー処理方法の他の構成は、安定に発振するエネルギーで出力された線状のレーザー光を走査しながら基板上の半導体膜に照射し、前記半導体膜を結晶化するレーザー処理方法において、前記レーザー光の長手方向の長さは前記基板を越える長さであり、前記レーザー光の光路上に減光フィルターを挿入することにより、前記レーザー光のエネルギーを調節し、前記レーザー光を前記基板に対して相対的に走査して前記半導体膜に照射する第1のレーザー光照射を行い、前記基板を(n/2+1/4)回転(nは0を含む自然数)させ、前記レーザー光の光路上から前記減光フィルターを除去し、前記第1のレーザー光照射におけるレーザー光の照射エネルギーより高いエネルギーで、前記レーザー光を前記基板に対して相対的に且つ前記第1のレーザー光走査方向とは反対の方向に走査して、前記半導体膜に照射する第2のレーザー光照射を行うことを特徴とし、
さらに、本発明に係るレーザー処理方法の他の構成は、安定に発振するエネルギーで出力された線状のレーザー光を走査しながら基板上の半導体膜に照射し、前記半導体膜を結晶化するレーザー処理方法において、前記レーザー光の長手方向の長さは前記基板を越える長さであり、前記レーザー光の光路上に複数の減光フィルターを挿入することにより、前記レーザー光のエネルギーを調節し、前記レーザー光を前記基板に対して相対的に走査して前記半導体膜に照射する第1のレーザー光照射を行い、前記基板を(n/2+1/4)回転(nは0を含む自然数)させ、前記レーザー光の光路上から前記複数の減光フィルターの一部を除去し、前記第1のレーザー光照射におけるレーザー光の照射エネルギーより高いエネルギーで、前記レーザー光を前記基板に対して相対的に且つ前記第1のレーザー光走査方向とは反対の方向に走査して、前記半導体膜に照射する第2のレーザー光照射を行うことを特徴とする。
【0021】
【作用】
上記の構成を有する本発明に係るレーザー処理方法は、安定に発振するエネルギーでレーザーを出力して、減光フィルターを少なくとも1枚以上組み合わせて用いることで、レーザーエネルギーを最適エネルギーに調節して、基板に照射する。特に、レーザー光の出力エネルギーよりも、照射すべきエネルギーが低い場合に、有効である。なお、減光フィルターを用いずに、上記最適エネルギーで安定に基板に照射できる場合は、このフィルターを用いる必要がないことは言うまでもない。
【0022】
さらに、本明細書で開示する発明は、同一基板上に複数回レーザー照射を行なう場合に、照射毎にレーザーエネルギーを変化させる方法(例えば、前述した予備照射と本照射の2回照射を行なう方法)において実施するとより効果的である。すなわち、レーザー出力を変えずに、照射毎に減光フィルターの種類及び3/又は枚数を変更するのみで、レーザーエネルギーを最適化する。このため、レーザー出力が安定な状態を保ったまま、複数回のレーザー照射を行なうことができるので、レーザーを安定させる時間を省略できる。このため、処理工程の時短化が図れる。
【0023】
また、レーザー照射を複数回行なう場合には、レーザービームを基板に対して相対的に往復させながら走査する。この際に、かつ往路と復路とでは、レーザービームの走査方向が略直行するようにするとよい。このため、非常に無駄の無い動作で均一にレーザーを照射することができると共に、レーザー照射に要する時間を短縮できる。なお複数回レーザー照射を行なう場合には、レーザービームの走査の往路または復路が終了した時点で、減光フィルターを迅速にレーザー光路上に挿脱すればよい。
【0024】
なお、以上説明した構成を採用することによって得られる作用効果は、単なるレーザーと減光フィルターの組み合わせによるエネルギー調節にとどまらず、使用するパルス発振レーザーが安定に出せる最大のエネルギーよりも低い任意のエネルギーで、安定にレーザー照射できる効果と、先に述べたような異なるエネルギーで複数回レーザー照射を行う場合にレーザー出力を変えることなく連続的にレーザー照射を行える効果を指す。
【0025】
【実施例】
〔実施例1〕
レーザー光を非晶質状態もしくは結晶性を有する状態の珪素膜または珪素化合物膜に照射することによりこの膜の結晶性を高める過程で、膜表面の均質性が低下する傾向がみられる。その低下を極力抑さえる方法を本実施例で示し、さらにその方法を用いることによりレーザー照射の作業時間を大幅に短縮できることを述べる。
【0026】
図1には本実施例で使用するレーザーアニール装置の構成図を示す。基台1上には、レーザー光を発振する発振器2が配置されている。発振器2の出射方向の光路上には、全反射ミラー5、6が配列され、全反射ミラー6の反射方向の光路上には、増幅器3、全反射ミラー7、8、光学系4、全反射ミラー9が順次に配列されている。全反射ミラー9により下方に屈曲された光路上には、試料11を載置するステージ10が配置されている。
【0027】
ステージ10はコンピュータにより制御されて、一次元方向に往復移動可能とされ、また、ステージ10面内で回転可能とされている。ステージ10にはヒーターが内臓されており、試料11を所定の温度に保つことができるようになっている。
【0028】
更に、図1には示さないが、全反射ミラー8と光学系4との間に減光フィルターが挿脱自在に配置されている。図3に減光フィルターの駆動機構の構造を示す。遠隔操作により、減光フィルター31〜34はレール35〜38に沿って移動可能とされており、この直線移動により光路から挿脱自在とされている。減光フィルター31〜34は透過率が互いに異なっており、それらを組み合わせることにより15通りの異なる減光率を得ることができる。本実施例では、減光フィルター31〜34の透過率をそれぞれ96%、92%、85%、77%とする。これら4つの減光フィルター31〜34を組み合わせて、透過率57〜96%の領域をほぼカバーすることができる。例えば、透過率96%の減光フィルター31と92%の減光フィルター32とを組み合わせることで透過率88%の減光フィルターを得ることができる。
【0029】
なお、減光フィルター31〜34は石英に酸化ハフニウムと二酸化珪素とを層状に交互にコーティングしたものであり、減光フィルター31〜34の透過率はコーティングされた層数に依存する。
【0030】
レーザー光は発振器2で発振される。発振器2で発振されるレーザー光は、KrFエキシマレーザー(波長248nm、パルス幅25ns)である。勿論、他のエキシマレーザーさらには他の方式のレーザーを用いることもできる。
【0031】
発振器2で発振されたレーザー光は、全反射ミラー5、6を経由して増幅器3で増幅されて、全反射ミラー7、8でそれぞれ反射されて光学系4に入射される。
【0032】
図2は光学系4の内部の光学配置図であり、光学系4に入射したレーザー光はシリンドリカル凹レンズA、シリンドリカル凸レンズB、横方向のフライアイレンズC、Dを通過することによって、レーザー光はそれまでのガウス分布型から短形分布に変化する。さらに、シリンドリカル凸レンズE、Fを通過してミラーG(図1ではミラー9に相当)で反射され、シリンドリカルレンズHによって集束されて、線状ビームに成形されて、試料11に照射される。
【0033】
光学系4に入射する直前のレーザービームは3×2cm2 程度の長方形であるが、光学系4によって、長さ10〜30cm、幅0.1〜1cm程度の細長い線状ビームに加工される。この光学系4を経たレーザー光のエネルギーは最大で1000mJ/ショットである。
【0034】
レーザー光をこのような細長いビームに加工するのは、加工性を向上させるためである。線状のビームは光学系4を出射した後に、全反射ミラー9を経て、試料11に照射されるが、ビームの幅は試料11の幅よりも長いので、試料11を1方向に移動させることで、試料11全体に対してレーザー光を照射することができる。従って、ステージ10の駆動装置10の構造を簡素にでき、保守も容易になる。また、試料11を固定する際のアラインメントも容易になる。
【0035】
以下に、レーザー光の照射によって、ガラス基板上に結晶性を有する珪素膜を形成する例を示す。10cm角のガラス基板(例えばコーニング7959ガラス基板)を用意する。このガラス基板上に、プラズマCVD法により、TEOSを原料として酸化珪素膜を2000Åの厚さに形成する。この酸化珪素膜は、ガラス基板側から不純物が半導体膜に拡散するのを防止する下地膜として機能する。
【0036】
次にプラズマCVD法によって、非晶質珪素膜を厚さ500Åに成膜する。ここでは、プラズマCVD法を用いるが、減圧熱CVD法を用いるのでもよい。また、非晶質珪素膜の膜厚は必要とする厚さとすればよい。
【0037】
次に過水アンモニアに基板を浸して、70℃に5分間保つことにより、非晶質珪素膜の表面に酸化膜を形成する。その後、液相ニッケル酢酸塩をスピンコート法により非晶質珪素膜の表面に塗布する。ニッケル元素は非晶質珪素膜が結晶化する際に結晶化を助長する触媒として機能する。なお、酸化膜はニッケル溶液の密着性を向上する作用をする。
【0038】
次に窒素雰囲気中において、450℃の温度で1時間加熱することにより、非晶質珪素膜中の水素を離脱させる。これは、非晶質珪素膜中に不対結合手を意図的に形成することにより、後の結晶化に際してのしきい値エネルギーを下げるためである。更に、窒素雰囲気中において、550℃、4時間の加熱処理を施すことにより、非晶質珪素膜を結晶化させる。この結晶化の温度を550℃と低くすることができるのは、ニッケル元素の触媒作用によるものである。
【0039】
こうして、ガラス基板上に結晶性を有する珪素膜を得ることができる。更に、この珪素膜にレーザー光を照射して、結晶性をさらに高める
【0040】
レーザー光を照射するには、図1に示す装置を用いて、KrFエキシマレーザー(波長248nm、パルス幅25ns)を照射する。雰囲気制御は特に行わず、大気中で照射を行う。
【0041】
ステージ10に載置された基板はステージ10内部のヒーターにより、温度が400℃に保たれている。これは、レーザー照射間に、基板表面温度の上昇と下降の速度を緩和するためである。一般に、環境の急激な変化は物質の均一性を損なわれることが知られている。そのため、レーザー照射間に基板温度を高く一定に保つようにして、基板表面の均一性の劣化を極力抑制する。なお、基板温度を400℃に設定しているが、100℃〜600℃までの範囲でレーザーアニールに最適な温度を選ぶことができる。
【0042】
発振器2で発振されたレーザー光は光学系4において、線状ビームに成形されて、ステージ10上の基板に照射される。被照射部分でのビーム面積は125mm×1mmとされる。基板の寸法は10cm×10cmであるので、ステージ10をレーザービームの長手方向と直交する方向に直線移動することにより、基板の全面にレーザービームが照射される。なお、ステージ10の移動速度は2mm/sとする。
【0043】
珪素膜を結晶化するには、先ず予備照射として低いエネルギーでレーザーを照射して、次に本照射として高いエネルギーでレーザーを照射する。2段階でレーザーを照射とするのは、レーザー照射による膜表面の均一性が劣化するのを極力抑さえるためである。上記の工程で得られた結晶性珪素膜は非晶質部分が多く残っており、レーザーエネルギーの吸収率が多結晶珪素とかなり異なるため、1回目の予備照射により、珪素膜に残っている非晶質部分を結晶化する。2回目の本照射により、結晶化を全体的に促進させる。この結果、珪素膜の結晶性が均一になり、半導体半導体デバイスの特性が著しく向上する。さらに、その均一性を高めるために、予備照射と本照射において、ステージ10を90度回転して、ビームの走査方向を概略直交させるとよい。なお、ステージ10の回転角度は90度に限るものではなく、一般的には、ステージ10を(n/2+1/4)回転(nは0 を含む自然数)させることにより、線状レーザーの走査方向を概略直交させることができる。
【0044】
本実施例では、予備照射のエネルギーを200mJ/cm2 とし、本照射のエネルギーを300mJ/cm2 として、レーザーアニールを行なう。また、レーザーの出力エネルギーは300mJ/cm2 とする。このエネルギーはレーザーが安定して出力される範囲である。
【0045】
予備照射の際には、図3に示す装置を使用して、透過率85%、77%の減光フィルターをレーザーの光路に挿入して、レーザービームの強度を200mJ/cm2 に減衰させる。次に、本照射の際には、これらの減光フィルターをレーザー光路から退避して、エネルギーを減衰させずに、レーザー照射を行う。
【0046】
なお、本照射のエネルギーがレーザーが安定に出力されるエネルギー領域よりも低い場合には、本照射時にも減光フィルターを用いることは言うまでもない。例えば、レーザーが安定に照射できるエネルギー範囲が250mJ/cm2 以上であり、予備照射のエネルギーが170mJ/cm2 であり、本照射のエネルギーが220mJ/cm2 でレーザー照射を行う場合を考える。この場合、レーザー出力を例えば300mJ/cm2 に固定する。予備照射時は、4枚の減光フィルターをすべて光路に挿入する。本照射時は、透過率92%と85%の減光フィルターを光路中から退避して、透過率96%と77%の減光フィルターを光路中に挿入したままにする。これにより。必要とするエネルギーで、レーザーを照射することができる。
【0047】
本実施例では、レーザーの出力を変化させずに、減光フィルターを光路から挿脱するのみで、レーザーの照射エネルギーを変化することができるため、一連のレーザー処理工程において、基板毎に照射回数、照射エネルギーを任意に設定することができる。従って、異なる性質の膜が形成された基板を一括して処理することができる。
【0048】
一連のレーザー処理工程において、基板毎に照射回数、照射エネルギー等を設定して、図1に示したレーザー装置のコントローラに記憶させておく。基板をステージに載置し、アライメントをする。アライメント終了後に、コントローラにより、ステージ10を往復させながら、同一基板に複数回レーザーを照射する。この間レーザーの出力は一定に保たれており、ステージ10の往路、復路で基板にレーザー照射が行われる度に、コントローラは入力されたデータに従って、減光フィルターをレーザー光路に適宜に挿脱して、照射エネルギーを調節する。さらに、ステージ10の軌道が、往路から復路にもしくは復路から再び往路に変わる間に、少なくとも1回、ステージ10が概略直角に回転されて、ビームの走査方向を往路と復路で直交させている。これにより、レーザーが基板に均一に照射されるため、膜質をより均一にすることができる。
【0049】
〔実施例2〕
実施例1に記載した珪素膜もしくは珪素化合物膜に対するレーザー処理技術を、大量生産性を有した産業用機械(マルチチャンバー化し、ロボットアームによって基板の搬送を行う)で実施し、レーザー照射時の基板の雰囲気調整をすることで基板間の均質性を高める方法について述べる。
【0050】
まず、装置を簡単に説明する。図4は装置の上面から見た構成図であり、図5は装置を図4のA−A’で切った断面図である。室41はレーザー照射室である。基板を置く場所の下にはヒーターが埋め込まれており、レーザー照射時に基板を所定の温度に保てるようになっている。室42は、加熱室であり、基板を加熱するためのホットプレートが配置されている。室43はレーザー照射前の基板をストックしておく予備室であり、この予備室43を介して、基板の搬入搬出を行うことができる。即ち、予備室43から装置内に基板の搬入が行われ、予備室43から装置外に基板の搬出が行われる。
【0051】
図中央の基板搬入室40には基板運搬用のロボットアーム44が設けられており、室41〜43間で基板を移動するために使用する。また、これらの室41〜43は密封性を有しており、雰囲気制御ができるよう設計されている。また各部屋を仕切るためにゲイトバルブ45〜47が設けられており、このゲイトバルブ45〜47を閉鎖することで、各室41〜43間における雰囲気の混合を防止することができる。また各室41〜43には、真空排気装置が個別に備えられており、必要とする圧力に真空引きを行えるように構成されている。
【0052】
また55で示されるのが、レーザー発振装置であって、例えば図1に示すような構成を有すし、図3に示すような減光フィルターシステムが内蔵されており、減光フィルターを適宜に光路中に挿脱して、レーザーのエネルギーを照射すべき大きさに減衰することができる。
【0053】
次に、装置使用方法について述べる。まず、レーザー光を照射しようとする薄膜が成膜された複数枚の基板をカートリッジに収納して、カートリッジごと予備室43に搬入される。それから、4つの室40〜43をすべて真空に引く。
【0054】
真空中でのレーザー処理は気体の影響を受けないので、レーザー処理の再現性が高まる。あるいは、レーザー処理室を常に一定の雰囲気に保つことによっても再現性を保つという方法も、真空中で照射するのと同等の効果を生む。この効果は特に大量生産の際に、製品のばらつきを抑え、その製品の信頼性を高める上で有用である。
【0055】
そして、ゲイトバルブ45と47を開け、基板搬入室40内に配置されたロボットアーム44を用いて、基板を1枚づつ加熱室42に搬送する。加熱室42に移送された基板は、ホットプレート上に置かれ所定の温度まで加熱される。
【0056】
基板の加熱温度は200℃とする。この間、ゲイトバルブ47を閉鎖しておくことは、不純物の汚染を防止する点からは好ましいが、生産性の点からは不利となる。ゲイトバルブ47を閉鎖するか否かは、実施において適宜に選択すればよい。基板が充分温まったら、ロボットアーム44で基板をレーザー照射室41へ搬出する。レーザー照射室41では実施例1と同様な条件で、予備照射と本照射として、2回レーザー照射を行なう。
【0057】
基板の寸法が10cm×10cmであり、被照射面でのレーザービームの面積は125mm×1mmであり、ステ−ジの移動速度が2mm/sであるため、2回のレーザー照射に要する時間は100秒強となる。加熱室42で、基板が温たたまる時間は3分ほどである。従って、一度にレーザーが照射される基板の枚数の2倍の枚数の基板が加熱室42で一度に温められるようにしておけば、より能率的になる。
【0058】
予め、加熱室42で基板を所定の枚数温める。加熱終了後に、先ずその半数の基板を加熱室42からレーザー照射室41へ搬送して、レーザーを照射する。レーザー照射間に、予備室43から加熱室42に加熱すべき基板を補充する。レーザー照射が終了後に、レーザー処理済みの基板をレーザー照射室41から予備室43に戻し、最初に搬入された基板の残り半数の基板を加熱室42からレーザー照射室41に搬入して、レーザーを照射する。このレーザー照射の終了後には、加熱室42において、予備室43から補充された基板の加熱が終了している。従って、以上の動作を連続的に繰り返すことにより、レーザー照射前に基板を温める時間を節約することができるため、処理時間が短縮される。
【0059】
一回のレーザー処理において、基板を温める時間3分であり、レーザー照射時間100秒であるため、合計約5分ほど要するが、図4、5に示す装置を用いることで、処理時間を半分以下に抑えることが可能となる。また、処理すべき基板を全て予め予備室43に収納することができるため、レーザー照射室41の雰囲気が外部から汚染されないため、清浄な雰囲気(真空状態も含む)中で連続してレーザーアニールを連続して行うことができる。
【0060】
【発明の効果】
本発明に係るレーザー処理工程おいては、減光フィルターにより、レーザーの照射エネルギーを調節するようにしたため、レーザーの出力を終始一定に保つことができる。このため、使用するパルス発振レーザーが安定するエネルギーで出力させても、このエネルギーよりも低い任意のエネルギーで、レーザーを安定に照射できるため、半導体デバイスとなるべき膜の均一性を高めることができる。更に、複数回レーザー照射する場合でも、レーザー出力を変化させる必要がないので、レーザーを安定させる時間を省くことができる。特に大量生産を行う場合に、作業能率向上やコストの削減に多大な効果をもたらす。
【0061】
本明細書で開示される発明は、半導体デバイスのプロセスに利用される全てのレーザー処理プロセスに利用できる。特に、半導体デバイスとしてTFTに本発明を応用した場合に、例えば、本発明のレーザー処理工程を結晶化工程に応用することにより、優れた結晶性珪素膜を得ることができるため、TFTのしきい値電圧の均一性を向上することができる。或いは、本発明のレーザー処理工程をソース/ドレインの不純物元素の活性化工程に応用することにより、TFTの電界効果移動度、あるいはオン電流の均一性を向上できる。このように本発明は工業上、有益なものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1のレーザー照射装置の構成図である。
【図2】 レーザー光をビーム状にするための光学系の配置図である。
【図3】 減光フィルターの概略の構成を示す図である。
【図4】 実施例2のレーザー処理装置の上面図である。
【図5】 実施例2のレーザー処理装置の側面図である。
【符号の説明】
2 レーザー発振器
5、6 全反射ミラー
3 増幅器
4 光学系
7、8 全反射ミラー
31〜34 減光レンズ
10 ステージ
40 基板搬送室
41 レーザー照射室
42 加熱室
43 予備室
44 ロボットアーム
45〜47 ゲイトバルブ
55 レーザー発振装置
Claims (7)
- 安定に発振するエネルギーで出力された線状のレーザー光を走査しながら基板上の半導体膜に照射し、前記半導体膜を結晶化するレーザー処理方法において、
前記レーザー光の長手方向の長さは前記基板を越える長さであり、
前記レーザー光の光路上に第1の減光フィルターを挿入することにより、前記レーザー光のエネルギーを調節し、前記レーザー光を前記基板に対して相対的に走査して前記半導体膜に照射する第1のレーザー光照射を行い、
前記基板を(n/2+1/4)回転(nは0を含む自然数)させ、
前記レーザー光の光路上から前記第1の減光フィルターを除去し、前記レーザー光の光路上に第2の減光フィルターを挿入することにより、前記レーザー光のエネルギーを調節し、前記第1のレーザー光照射におけるレーザー光の照射エネルギーとは異なるエネルギーで、前記レーザー光を前記基板に対して相対的に且つ前記第1のレーザー光走査方向とは反対の方向に走査して、前記半導体膜に照射する第2のレーザー光照射を行うことを特徴とするレーザー処理方法。 - 安定に発振するエネルギーで出力された線状のレーザー光を走査しながら基板上の半導体膜に照射し、前記半導体膜を結晶化するレーザー処理方法において、
前記レーザー光の長手方向の長さは前記基板を越える長さであり、
前記レーザー光の光路上に第1の減光フィルターを挿入することにより、前記レーザー光のエネルギーを調節し、前記レーザー光を前記基板に対して相対的に走査して前記半導体膜に照射する第1のレーザー光照射を行い、
前記基板を(n/2+1/4)回転(nは0を含む自然数)させ、
前記レーザー光の光路上から前記第1の減光フィルターを除去し、前記レーザー光の光路上に第2の減光フィルターを挿入することにより、前記レーザー光のエネルギーを調節し、前記第1のレーザー光照射におけるレーザー光の照射エネルギーより高いエネルギーで、前記レーザー光を前記基板に対して相対的に且つ前記第1のレーザー光走査方向とは反対の方向に走査して、前記半導体膜に照射する第2のレーザー光照射を行うことを特徴とするレーザー処理方法。 - 安定に発振するエネルギーで出力された線状のレーザー光を走査しながら基板上の半導体膜に照射し、前記半導体膜を結晶化するレーザー処理方法において、
前記レーザー光の長手方向の長さは前記基板を越える長さであり、
前記レーザー光の光路上に減光フィルターを挿入することにより、前記レーザー光のエネルギーを調節し、前記レーザー光を前記基板に対して相対的に走査して前記半導体膜に照射する第1のレーザー光照射を行い、
前記基板を(n/2+1/4)回転(nは0を含む自然数)させ、
前記レーザー光の光路上から前記減光フィルターを除去し、前記第1のレーザー光照射におけるレーザー光の照射エネルギーより高いエネルギーで、前記レーザー光を前記基板に対して相対的に且つ前記第1のレーザー光走査方向とは反対の方向に走査して、前記半導体膜に照射する第2のレーザー光照射を行うことを特徴とするレーザー処理方法。 - 安定に発振するエネルギーで出力された線状のレーザー光を走査しながら基板上の半導体膜に照射し、前記半導体膜を結晶化するレーザー処理方法において、
前記レーザー光の長手方向の長さは前記基板を越える長さであり、
前記レーザー光の光路上に複数の減光フィルターを挿入することにより、前記レーザー光のエネルギーを調節し、前記レーザー光を前記基板に対して相対的に走査して前記半導体膜に照射する第1のレーザー光照射を行い、
前記基板を(n/2+1/4)回転(nは0を含む自然数)させ、
前記レーザー光の光路上から前記複数の減光フィルターの一部を除去し、前記第1のレ ーザー光照射におけるレーザー光の照射エネルギーより高いエネルギーで、前記レーザー光を前記基板に対して相対的に且つ前記第1のレーザー光走査方向とは反対の方向に走査して、前記半導体膜に照射する第2のレーザー光照射を行うことを特徴とするレーザー処理方法。 - 請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
前記レーザー光はエキシマレーザーであることを特徴とするレーザー処理方法。 - 請求項1乃至請求項5のいずれか一において、
前記第1のレーザー光照射及び前記第2のレーザー光照射を一定の雰囲気に保たれた室内で行うことを特徴とするレーザー処理方法。 - 請求項1乃至請求項5のいずれか一において、
前記第1のレーザー光照射及び前記第2のレーザー光照射を真空に保たれた室内で行うことを特徴とするレーザー処理方法。
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