JP3869970B2 - 高周波電力増幅装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波電力増幅装置に関し、特に搬送波を有するSSB変調信号の電力増幅器の非直線歪みを補償するために負帰還制御を行う高周波電力増幅装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ディジタル携帯電話等のディジタル無線通信において、4値PSK(Phase Shift Keying)や16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)等の線形変調方式を用いる場合が多くなっており、これらの変調信号を増幅する高周波電力増幅器の線形性への要求が厳しくなっている。そして、この高周波電力増幅器の線形化の手法の1つとして、例えば、電力増幅器の出力の一部を復調してベースバンド信号の形で負帰還を施すことにより非線形歪みを補償するカーティシャンループ型の負帰還増幅器がある。
図3は、従来の擬似的な搬送波成分を付加するタイプのSSB変調にカーティシャンループ型の負帰還増幅器を適用した例を示す構成概要図である。同図に示すように本負帰還増幅器は、入力ベースバンド信号の同相成分Iから帰還ベースバンド信号の同相成分I’を減算する減算器1a及び入力変調信号の直交成分Qから帰還ベースバンド信号の直交成分Q’を減算する減算器1bと、減算器1a、1bのそれぞれの出力信号の帯域制限を行うローパスフィルタ2a、2bと、帯域制限された信号Iにバイアス用直流信号を付加する加算器3と、搬送波信号を発生する発振器10と、前記減算器1bの出力信号及び加算器3の出力信号で前記発振器10が発生する搬送波信号を直交変調する直交変調器4と、直交変調器4の出力の直交変調波を所定の電力に増幅する電力増幅器5と、電力増幅器5の出力を放射するアンテナ6と、電力増幅器5の出力を所定のレベルに減衰させる減衰器7と、発振器10が発生する搬送波信号の位相を変化させて復調用搬送波を出力する移相器9と、復調用搬送波によって減衰器7から供給された帰還信号を復調し帰還復調信号の同相成分Ix’及び直交成分Qx’を出力する直交復調器8と、帰還復調信号Ix’、Qx’の直流成分をそれぞれ遮断して帰還ベースバンド信号I’、Q’を生成するキャパシタ11a、11bとで構成される。
【0003】
上記構成において、入力端に入力ベースバンド信号I及びQが入力すると、減算器1a及び2bにおいてはベースバンド信号I及びQから帰還ベースバンド信号I’及びQ’をそれぞれ減算し、得られた変調信号をローパスフィルタ2a、2bに入力する。ローパスフィルタ2a、2bではそれぞれの変調信号の帯域制限を行う。前記ローパスフィルタ2a出力の変調信号は、加算器3においてバイアス用直流信号Cが付加されて変調信号Ixとなり、該変調信号Ixと前記ローパスフィルタ2bの出力の変調信号Qxが直交変調器4に入力される。
直交変調器4は、発振器10が発生する角周波数ω0の搬送波信号を前記変調信号Ix及びQxによって直交変調して、式(1)に示される直交変調によるSSB信号変調波Sを得る。
S= Ix cos ω0t + Qx sin ω0t (1)
この直交変調波Sは、電力増幅器5によって増幅されて送信信号SAとなり、アンテナ6より放射される。
ここでこの例のように、Ixに直流バイアスとしてCを付加すると直交変調波Sに単側帯波のみならず、擬似的な搬送波成分が現われ、この擬似搬送波成分を利用することにより、受信側では同期確立や搬送波再生が容易になることが知られている。
【0004】
送信信号SAの一部は、図示しないカップラ等で分岐されて減衰器7に入力される。減衰器7は、送信信号SAを所定のレベルに減衰させた帰還信号Rを直交復調器8に供給する。
直交復調器8は、発振器10が発生する角周波数ω0の搬送波信号(直交変調器に供給する信号と同一の信号)を移相器9で位相変化させた復調用搬送波信号によって帰還信号Rを復調して、直交変調器4の入力変調信号Ix及びQxに対応する帰還復調信号Ix’及びQx’を出力する。
帰還復調信号Ix’及びQx’は、それぞれキャパシタ11a及び11bによって信号中に含まれる直流成分が遮断され、入力ベースバンド信号I及びQに対応する帰還ベースバンド信号I’及びQ’となって前記減算器1a及び1bに入力される。
前記帰還ベースバンド信号I’及びQ’は、電力増幅器5の非線形歪みにより振幅歪み及び位相歪みを受けているが、図の負帰還増幅器においては、帰還ベースバンド信号I’及びQ’を上述のように減算器1a、1bに供給して、電力増幅器5の非線形歪み成分を負帰還することによって、電力増幅器5の非線形歪みを補償している。
【0005】
上記電力増幅器5の非線形歪みを補償する原理を、図5に示す増幅部に歪みを有する負帰還増幅回路の原理図で説明する。
同図に示すように、入力Xが、歪みdをもつ増幅率Aの非線形増幅器で増幅され、その出力Yが帰還率βで入力にフィードバックされ、そのループゲインがGである負帰還増幅回路においては、出力Yは、
Y=(X−βY)GA+d
と表わされ、β=1/Aとし、また、G>>1を当てはめると、式(2)が得られる。
Y=GAX/(1+G)+d/(1+G)
Y≒AX+d/G (2)
また、負帰還をかけずに、入力を歪みdをもつ増幅率Aの非線形増幅器で増幅したときは、式(3)が得られる。
Y=AX+d (3)
即ち、負帰還増幅することによって、出力の歪み成分は1/Gに低減されることになる。
【0006】
上記のような負帰還を行う高周波増幅器では、一般的に負帰還回路のループ長、電力増幅器5の周波数特性等によって、直交変調波Sに比べ帰還信号Rが遅延し、両者の搬送波の位相が異なってしまう。この位相のずれをΔψとすると、式(1)の直交変調波Sに対し、帰還信号Rは式(4)のようにあらわされる。
R=( Ix cos Δψ + Qx sinΔψ)cosω0t
+( Qx cos Δψ− Ix sinΔψ )sinω0t (4)
従って、帰還復調信号Ix’、Qx’は、入力変調信号Ix、Qxとは異なった、式(5)、(6)で表わされる信号となり、負帰還増幅器の歪み補償特性に劣化を与えることになる。
Ix’= Ix cos Δψ + Qx sin Δψ (5)
Qx’= Qx cos Δψ − Ix sinΔψ (6)
このため、予め移相器8に対し予想される位相のずれ分だけ位相をシフトさせる制御信号を与えて、位相ずれの補正を行っている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の位相ずれの補正のために移相器8に与えられる位相シフト量Δφが固定値であると、チャネル変更に伴う搬送波周波数の変動、電力増幅部の温度特性、アンテナ負荷変動等によって位相ずれの量が変化した場合、歪み補償特性が劣化するという問題があった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、 簡単な構成で優れた位相ずれの補正制御を行うことができるカーティシアン型のSSB高周波電力増幅装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明においては、同相及び直交入力ベースバンド信号から、同相及び直交帰還復調信号から直流分を除去した信号をそれぞれ減算する第1及び第2の減算器と、前記同相信号の減算器出力に直流バイアスを付加する加算器と、前記加算器出力の同相変調信号と前記第2の減算器出力の直交変調信号とで搬送波を変調する直交変調器と、前記直交変調器出力を復調して同相成分と直交成分の帰還復調信号を出力する直交復調器と、前記直交復調器に位相制御された搬送波を供給する移相器とで構成される高周波電力増幅装置において、前記帰還復調信号の直交成分から変調信号を除去して直流成分を取り出すフィルタと、該フィルタ出力が最小となるように前記移相器を制御する位相制御回路を備えたことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示した実施の形態に基づいて説明する。図1は、本発明に係わる搬送波を付加したタイプのSSB変調波に対する高周波電力増幅装置の実施の一形態例を示す構成概要図である。同図に示すように、本高周波電力増幅装置は入力ベースバンド信号の同相成分Iから帰還ベースバンド信号の同相成分I’を減算する減算器1a及び入力変調信号の直交成分Qから帰還ベースバンド信号の直交成分Q’を減算する減算器1bと、減算器1a、1bのそれぞれの出力信号の帯域制限を行うローパスフィルタ2a、2bと、帯域制限された信号Iにバイアス用直流信号を付加する加算器3と、搬送波信号を発生する発振器10と、前記減算器1bの出力信号及び加算器3の出力信号で前記発振器10が発生する搬送波信号を直交変調する直交変調器4と、前記直交変調器4の出力の直交変調波を所定の電力に増幅する電力増幅器5と、電力増幅器5の出力を放射するアンテナ6と、電力増幅器5の出力を所定のレベルに減衰させる減衰器7と、発振器10が発生する搬送波信号の位相を変化させて復調用搬送波を出力する移相器9と、復調用搬送波によって減衰器7から供給された帰還信号を復調し帰還復調信号の同相成分Ix’及び直交成分Qx’を出力する直交復調器8と、帰還復調信号Ix’及びQx’からそれぞれ直流成分を遮断して帰還ベースバンド信号I’及びQ’を生成するキャパシタ11a、11bと、前記帰還復調信号Qx’からベースバンド信号を除去して直流成分を取り出すローパスフィルタ12と、該ローパスフィルタ12の出力に基づいて前記移相器9の動作を制御する位相制御器13とで構成される。
【0010】
本発明の高周波電力増幅装置は、従来技術の負帰還増幅器に前記のローパスフィルタ12と位相制御器13とを追加した構成であり、この追加した構成部分と移相器9の機能以外は従来技術の負帰還増幅器と同じで、構成各部の符号も同じ番号を付与しており、ここではその機能、動作の説明を省略する。
【0011】
図1の高周波電力増幅装置において、直交復調器8から出力される帰還復調信号Ix’及びQx’は、前述のように、一般的に負帰還回路のループ長、電力増幅器5の周波数特性等によって直交変調波Sと帰還信号Rの搬送波の間に位相ずれΔψを生じるため、入力ベースバンド信号I及びQに対応する変調信号の成分I’及びQ’のほかに、図4のI、Q平面上のバイアス直流分Cのベクトル図に示すように、それぞれにバイアス直流分Cに対応する直流分Ci’及びCq’を含んだ信号となっている。そして、 直交変調波Sと帰還信号Rの搬送波の間に位相ずれ(Δψ)が無い場合は、前記直交成分Qx’には直流分は現れず、Cq’=0である。
本発明は、このQx’に含まれている直流分Cq’を検出して、 Cq’を最小にするように位相器9を制御する点が特徴となっている。
【0012】
本高周波電力増幅装置においては、直交復調器8出力の帰還復調信号Qx’はローパスフィルタ12に入力され、変調信号に対応する帰還ベースバンド信号
Q’が除去されて直流分Cq’が取り出され、位相制御器13に出力される。前記ローパスフィルタ12は、例えばベースバンド信号の帯域が300Hzから3.4kHzの音声信号の場合は、遮断周波数が300Hz以下であればよい。
位相制御器13は、直流分Cq’=0となるように搬送波の位相をシフトさせる制御信号を位相器9に出力し、該制御信号に基づいて位相器9は発振器10出力の復調用搬送波の位相を変化させることによって位相のずれの補正を行う。
【0013】
図2は、本発明に係わる搬送波を有するSSB変調波に対する高周波電力増幅装置の他の実施例を示す構成概要図である。本実施例の高周波電力増幅装置は、同図に示すように、図1の高周波電力増幅装置における帰還復調信号Qx’からベースバンド信号を除去して直流成分を取り出して移相器9に制御信号を出力するためのローパスフィルタ12と位相制御器13の回路を、前記帰還復調信号Qx’をディジタル信号に変換するA/D変換器14と、ディジタル化された
Qx’のうちのベースバンド信号成分を除去して直流成分を取り出すディジタルのローパスフィルタ15と、該ディジタルローパスフィルタ15の出力に基づいて移相器9の制御信号を出力する位相制御器16と、該位相制御器16の出力信号をアナログ信号に変換して前記移相器9に出力するD/A変換器16とに置き換えた構成になっている。
【0014】
図2に示される高周波電力増幅装置は、図1の高周波電力増幅装置においてはアナログ処理によって直交復調器8出力の帰還復調信号Qx’から直流分Cq’を取り出していたものを、ディジタル処理によって行うものである。その他の構成部分の動作・機能は、図1で説明した動作・機能と同じであるので説明は省略する。
同図の直交復調器8出力の帰還復調信号Qx’は、前記A/D変換器14によってディジタル信号に変換され、ディジタルローパスフィルタ15によって帰還ベースバンド信号成分が除去され、直流分Cq’のみが出力される。
該直流分Cq’は位相制御器13に入力され、位相制御器13においては直流分Cq’=0となるように復調用搬送波の位相をシフトさせるディジタル制御信号が生成される。該制御信号をD/A変換器17でアナログ信号に変換して位相器9に出力し、入力された制御信号に基づいて位相器9は発振器10出力の復調用搬送波の位相を変化させることによって位相のずれを補正することができる。本変形実施例の帰還復調信号Qx’をディジタル信号に変換してディジタルローパスフィルタで除去する回路構成は、アナログ信号で除去する手段に比べ、低コストで信頼性の高い構成であり、より有利な手段であるといえる。
なお、上記の構成に替えて、帰還復調信号Qx’からアナログのローパスフィルタで直流分を取り出し、その直流成分をA/D変換器でディジタル信号に変換して位相制御回路で制御信号を生成し、この信号をD/A変換器でアナログ信号に変換して移相器9に入力するようにしてもよいことは当然のことである。
【0015】
上記実施例では、帰還復調信号の直流分が最小となるように移相器9を制御しているが、帰還復調信号Ix’の直流分が最大となるように、或いはIx’とQx’の差(または比)が最大となるように移相器9を制御するといった変形が可能である。
更に、上記の実施例は、RZ−SSBのような擬似的な搬送波成分を付加するタイプのSSB変調方式を前提として説明したが、通常の抑圧搬送波SSB変調方式であっても、ベースバンド信号に直流分を付加して本発明を実現してもよく、このとき受信側では擬似搬送波成分を無視して、これまで通り単側帯波成分のみを復調すればよいから、受信側には何ら変更を加える必要は生じない。
【0016】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、直交変調器出力と直交復調器入力の搬送波の間に位相のずれが生じたときに、直交復調器出力の帰還復調信号の直交成分に現れる直流バイアス成分を検出し、これが最小(同相成分に現れる直流バイアス成分を検出を検出する場合は、最大)となるように位相器を制御するように構成したので、簡単な回路構成で、温度特性の変動等で位相回転が変化しても歪み補償特性が劣化することのない高周波電力増幅装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る高周波電力増幅装置の実施の一形態例を示す構成概要図。
【図2】本発明に係る高周波電力増幅装置の他の変形実施例を示す構成概要図。
【図3】従来のカーティシアン型の負帰還増幅器の一例を示す構成概要図。
【図4】I、Q平面上のバイアス直流分Cのベクトル図。
【図5】増幅部に比線形歪みを有する負帰還増幅回路の動作原理図。
【符号の説明】
1a、1b・・減算器、 2a、2b・・ローパスフィルタ、
3・・加算器、 4・・直交変調器、 5・・電力増幅器、
6・・アンテナ、 7・・減衰器、 8・・直交復調器、
9・・移相器 10・・発振器 11a、11b・・キャパシタ、
(以下、本発明に係わる)
12・・ローパスフィルタ、 13・・移相制御器、
14・・A/D変換器、 15・・ディジタルローパスフィルタ、
16・・移相制御器、 17・・ D/A変換器
Claims (4)
- 同相及び直交入力ベースバンド信号から、同相及び直交帰還復調信号から直流分を除去した信号をそれぞれ減算する第1及び第2の減算器と、前記同相信号の減算器出力に直流バイアスを付加する加算器と、前記加算器出力の
同相変調信号と前記第2の減算器出力の直交変調信号とで搬送波を変調する直交変調器と、前記直交変調器出力を復調して同相成分と直交成分の帰還復調信号を出力する直交復調器と、前記直交復調器に位相制御された搬送波を供給する移相器とで構成される高周波電力増幅装置において、
前記帰還復調信号の少なくとも一方から変調信号を除去して直流成分を取り出し、該直流成分に基づいて前記移相器を制御するようにしたことを特徴とする高周波電力増幅装置。 - 前記帰還復調信号の直交成分から変調信号を除去して直流成分を取り出し、該直流成分が最小となるように前記移相器を制御する位相制御手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の高周波電力増幅装置。
- 前記帰還復調信号の同相成分から変調信号を除去して直流成分を取り出し、該直流成分が最大となるように前記移相器を制御する位相制御手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の高周波電力増幅装置。
- 前記帰還復調信号の同相及び直交成分から変調信号を除去してそれぞれの直流成分を取り出し、両者の比もしくは差が最大となるように前記移相器を制御する位相制御手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の高周波電力増幅装置。
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