JP3910106B2 - カーテシアン方式送信機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カーテシアン方式送信機に係り、更に詳しくはカーテシアン方式送信機における帰還信号の位相補正に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)や多値QAM(Quadrature Amplitude Modulation)のような線形変調方式を使用するディジタル無線機、特に移動通信用ディジタル無線機においてはその目的からくる条件ゆえに、電力増幅器の非線形歪により、隣接チャネルへの妨害が発生するため、電力増幅器の出力が線形化するように補償する必要がある。
【0003】
従来の一例であるカーテシアン方式送信機について図3を参照して説明する。図3は、従来のカーテシアン方式送信機の構成を示す回路図である。図3において、1は直交成分信号入力端子、2は同相成分信号入力端子、3は直交成分信号Qと帰還直交成分信号Qrとを加算する加算器、4は同相成分信号Iと帰還同相成分信号Irとを加算する加算器、5は加算器3で加算補正された直交成分信号Qを増幅する増幅器、6は加算器4で加算補正された同相成分信号Iを増幅する増幅器、7は直交成分信号Qを変調する変調器、8は同相成分信号Iを変調する変調器、9は搬送波Loを同相成分LoIと直交成分LoQとに分けて出力する0°/90°移相器である。10は変調器7及び変調器8からの変調信号を加算する加算器、21は変調器7、変調器8、0°/90°移相器9、加算器10から成る直交変調器、11は直交変調器21から出力された直交変調信号の不要成分を除去するフィルタ、12は直交変調信号を所要電力まで増幅する電力増幅器、13はアンテナ、14は電力増幅器12の出力段から帰還直交変調信号を取り出すための方向性結合器である。15は帰還直交変調信号を復調して帰還直交成分信号Qrを出力する復調器、16は帰還直交変調信号を復調して帰還直交成分信号Irを出力する復調器、17は搬送波Loを同相成分LoIと直交成分LoQとに分けて出力する0°/90°移相器、22は復調器15、復調器16、0°/90°移相器17から成る直交復調器である。18は所要周波数の搬送波を出力する搬送波発振器、20は入力信号(直交成分信号Q、同相成分信号I)と帰還信号(帰還直交成分信号Qr、帰還同相成分信号Ir)との位相差を検出する位相差検出器、19は位相差検出器20が検出した位相差だけ搬送波Loを移相する可変位相器である。
【0004】
以下、従来のカーテシアン方式送信機の動作について説明する。直交成分信号入力端子1より入力された直交成分信号Qは、加算器3と位相差検出器20に入力されると共に、同相成分信号入力端子2より入力された同相成分信号Iは、加算器4と位相差検出器20に入力される。
【0005】
加算器3に直交成分信号Qと帰還直交成分信号Qrが入力されると、直交成分信号Qは減算されて(即ち、Q←Q−Qrとなり)、増幅器5に出力される。更に増幅器5で所要のレベルまで増幅されてから直交変調器21の変調器7に出力される。同様にして、加算器4に同相成分信号Iと帰還同相成分信号Irが入力されると、同相成分信号Iは減算されて(即ち、I←I−Irとなり)、増幅器6に出力される。更に、増幅器6で所要のレベルまで増幅されてから直交変調器21の変調器8に出力される。
【0006】
搬送波発振器18では、所要周波数の搬送波Loが発振されており、直交変調器21の0°/90°移相器9及び可変位相器19に出力される。0°/90°移相器9に入力した搬送波Loは直交成分と同相成分とに分けられ、直交成分は変調器7に、同相成分は変調器8へ出力される。変調器7に出力される搬送波LoQは変調器8に出力される搬送波LoIに対して位相が90°ずれており、変調器8に出力される搬送波LoIは0°/90°移相器9に入力される搬送波Loと同位相かまたは180°ずれている。(搬送波LoIと搬送波Loとが同位相であるときと、180°ずれることがある理由については後で詳細に説明する。)
一方、可変位相器19に入力した搬送波Loは、位相補正された(可変位相器19での位相補正については、後で詳細に説明する。)後、直交復調器22の0°/90°移相器17に出力される。0°/90°移相器17に入力した搬送波Loは直交成分と同相成分とに分けられ、直交成分は復調器15に、同相成分は復調器16に出力される。復調器15に出力される搬送波LoQは復調器16に出力される搬送波LoIに対して位相が90°ずれており、復調器16に出力される搬送波LoIは0°/90°移相器17に入力した搬送波Loと同位相かまたは180°ずれている。(搬送波LoIと搬送波Loとが同位相であるときと、180°ずれることがある理由については後で詳細に説明する。)
変調器7に入力された所要レベルの直交成分信号Q、変調器8に入力された所要レベルの同相成分信号Iは、それぞれ搬送波LoQ、搬送波LoIにより変調された後、加算器10に出力されることで合成される。合成されることで得られた直交変調信号は、フィルタ11で不要成分を除去された後、電力増幅器12に出力される。そして、所要電力まで増幅された後、アンテナ13より送信される。
【0007】
電力増幅器12で所要電力まで増幅された直交変調信号の一部は、方向性結合器14で取り出され、直交復調器22の復調器15、復調器16に帰還入力される。復調器15では帰還直交変調信号を0°/90°移相器17から出力された搬送波LoQにより復調して帰還直交成分信号Qrを出力する。一方、復調器16では帰還直交変調信号を0°/90°移相器17から出力された搬送波LoIにより復調して帰還同相成分信号Irを出力する。そして、復調器15から出力された帰還直交成分信号Qrは加算器3及び位相差検出器20に、復調器16から出力された帰還同相成分信号Irは加算器4及び位相差検出器20に出力される。
【0008】
次に、可変位相器19での位相補正について説明する。帰還直交変調信号を復調するために直交復調器22に入力される搬送波Loは可変位相器19で位相補正されるが、位相補正量は直交変調信号と帰還直交変調信号との位相差Θである。(直交変調器21から直交復調器22までの可変減衰器24、フィルタ11、電力増幅器12、方向性結合器14、可変減衰器25での処理による遅延により、直交変調信号と帰還直交変調信号とに位相差Θが生じる。)この位相差Θは、遅延直交成分信号Qと帰還直交成分信号Qrとの位相差、同相成分信号Iと帰還同相成分信号Irとの位相差と同じであることにより、位相差検出器20に遅延直交成分信号Q、帰還直交成分信号Qr、同相成分信号I、帰還同相成分信号Irが入力されることで検出される。検出した位相差Θだけ位相差検出器20は可変位相器19に対して搬送波Loを移相させる。
【0009】
次に、可変位相器19の構成について図4を参照して説明する。図4は可変位相器19の構成を示す回路図である。可変位相器19は、直交変調器74を使用した移相器であり、サイン・コサインROM71、D/A変換器72、D/A変換器73、直交変調器74より構成されている。この可変位相器19では、補正位相情報(位相差Θ)に応じてサイン・コサインROM71がSINΘデータ、COSΘデータを出力した後、D/A変換器72、D/A変換器73がそれぞれアナログ信号に変換する。更に、アナログ信号に変換されたSINΘデータ、COSΘデータにより、直交変調器74が局部発振信号入力端子から入力される搬送波に位相変調をかけることで、位相差Θだけ搬送波の移相を行っている。
【0010】
次に、0°/90°移相器(図3記載の0°/90°移相器9、0°/90°移相器17)の構成について図5を参照して説明する。図5は0°/90°移相器の構成を示す回路図である。この0°/90°移相器はフリップフロップ型0°/90°移相器であり、2逓倍器91、Dフリップフロップ92、Dフリップフロップ93より構成されている。このフリップフロップ型0°/90°移相器では、搬送波Lo(図3記載の搬送波Lo)を2逓倍器91で2逓倍した後、Dフリップフロップ92、Dフリップフロップ93より構成されるマスタスレーブ型フリップフロップ94で2分周することにより、互いの位相差が90°である搬送波LoI(図3記載の搬送波LoI)、搬送波LoQ(図3記載の搬送波LoQ)を得る。しかし、搬送波LoIの位相は、搬送波Loの位相と同じ場合と、180°ずれる場合があり、不確定である。それ故に、フリップフロップ型0°/90°移相器を使用すると、搬送波LoIの位相が搬送波Loの位相に対して180°ずれた場合、図3記載の加算器3に入力する直交成分信号Qと帰還直交成分信号Qrとの位相差、加算器4に入力する同相成分信号Iと帰還同相成分信号Irとの位相差は共に180°となる。その結果、直交成分信号Q、同相成分信号Iが時間の経過と共に増大するため、過入力による電力増幅器12の破壊、出力レベルが規定値以上となることによる不法電波の送信を招く。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
前述の従来のカーテシアン方式送信機では、0°/90°移相器から出力される搬送波LoIの位相が搬送波Loの位相に対して180°ずれた場合、直交成分信号Qと帰還直交成分信号Qrとの位相差、同相成分信号Iと帰還同相成分信号Irとの位相差は加算器入力段で共に180°となることで、直交成分信号Q、同相成分信号Iが時間の経過と共に増大する。その結果、過入力による電力増幅器12の破壊、出力レベルが規定値以上となることによる不法電波の送信を招くという欠点がある。
そこで本発明では、搬送波LoIの位相が搬送波Loの位相に対して180°ずれた場合でも直交成分信号Qと帰還直交成分信号Qrとの位相差、同相成分信号Iと帰還同相成分信号Irとの位相差は加算器入力段で共に0°となるようにすることにより、前記欠点を解決することを目的とする。即ち、過入力による電力増幅器の破壊、出力レベルが規定値以上である不法電波の送信を防止できるようにすることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明では、下記▲1▼〜▲3▼を備えることにより、下記▲1▼の帰還路にのみ帰還信号を通過させたときに、帰還信号が所定位相量(実施例では、180°)だけずれていることを検出することができるようにしたものである。
▲1▼加算器−電力増幅器間に設けた分岐点と位相補正手段(実施例では、位相差検出/補正器と可変位相器と直交復調器)とを接続する帰還路
▲2▼位相補正手段の前段に設けられ送信信号から取り出した帰還信号の通過、遮断を切り換える第1の切換手段(実施例では、可変減衰器、またはスイッチ)
▲3▼位相補正手段の前段に設けられ▲1▼の帰還路への前記帰還信号の通過、遮断を切り換える第2の切換手段(実施例では、可変減衰器)
更に、位相補正手段に下記▲4▼、▲5▼を備えることにより、送信動作前に▲1▼の帰還路にのみ帰還信号を通過させたときに帰還信号が所定位相量ずれているのを検出した場合、下記▲4▼より帰還信号の位相ずれを補正するようにしたものである。
▲4▼帰還信号の位相補正量を設定する位相補正量設定手段(実施例では、位相差検出/補正器)
▲5▼上記▲4▼に接続されると共に前記位相補正量だけ位相補正する移相補正手段(実施例では、可変位相器と直交復調器)
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例であるカーテシアン方式送信機について図1、2により説明する。図1は第1の実施例であるカーテシアン方式送信機の構成を示す回路図、図2は第2の実施例であるカーテシアン方式送信機の構成を示す回路図である。第1の実施例であるカーテシアン方式送信機についての説明は<実施形態1>に、第2の実施例であるカーテシアン方式送信機についての説明は<実施形態2>に記載する。
<実施形態1>
図1において、1は直交成分信号入力端子、2は同相成分信号入力端子、3は直交成分信号Qと帰還直交成分信号Qrとを加算する加算器、4は同相成分信号Iと帰還同相成分信号Irとを加算する加算器、5は加算器3で加算補正された直交成分信号Qを増幅する増幅器、6は加算器4で加算補正された同相成分信号Iを増幅する増幅器、7は直交成分信号Qを変調する変調器、8は同相成分信号Iを変調する変調器、9は搬送波Loを同相成分の搬送波LoIと直交成分の搬送波LoQとに分けて出力する0°/90°移相器である。10は変調器7及び変調器8からの変調信号を加算する加算器、21は変調器7、変調器8、0°/90°移相器9、加算器10から成る直交変調器、24は加算器10から出力された直交変調信号のレベルを調整する可変減衰器、11は可変減衰器24から出力された直交変調信号の不要成分を除去するフィルタ、12は直交変調信号を所要電力まで増幅する電力増幅器、13はアンテナ、14は電力増幅器12の出力段から帰還直交変調信号を取り出すための方向性結合器である。25は方向性結合器14から出力された帰還直交変調信号のレベルを調整する可変減衰器、15は帰還直交変調信号を復調して帰還直交成分信号Qrを出力する復調器、16は帰還直交変調信号を復調して帰還同相成分信号Irを出力する復調器である。17は搬送波Loを同相成分の搬送波LoIと直交成分の搬送波LoQとに分けて出力する0°/90°移相器、22は復調器15、復調器16、0°/90°移相器17から成る直交復調器、18は所要周波数の搬送波を出力する搬送波発振器、23は入力信号(直交成分信号Q、同相成分信号I)と帰還信号(帰還直交成分信号Qr、帰還同相成分信号I)との位相差を検出して出力すると共に検出した位相差を記憶する位相差検出/補正器、19は位相差検出/補正器23が検出した位相差だけ搬送波発振器18から出力された搬送波Loを移相する可変位相器である。26は加算器10から出力された直交変調信号のレベルを調整する可変減衰器である。
【0014】
以下、第1の実施例であるカーテシアン方式送信機の動作について説明する。まず下記(1)の動作を行わせて直交成分信号Q、同相成分信号Iが時間の経過と共に増大するか否かを検出する。(直交成分信号Q、同相成分信号Iが時間の経過と共に増大するか否かの検出は、直交復調器22の後段に設けたレベル検出器(図示せず)により行う。)そして、直交成分信号Q、同相成分信号Iが時間の経過と共に増大しているとき、可変位相器19での搬送波の移相量を180°ずらす。即ち、搬送波の移相量をΘ2+180°とする(Θ2:位相差検出/補正器23が検出した入力信号(直交成分信号Q、同相成分信号I)と帰還信号(帰還直交成分信号Qr、帰還同相成分信号Ir)との位相差)。可変位相器19での搬送波の移相量を180°ずらすことにより、入力信号(直交成分信号Q、同相成分信号I)と帰還信号(帰還直交成分信号Qr、帰還同相成分信号Ir)との位相が合うため、直交復調器22から加算器3及び加算器4へ正しい帰還が行なわれる。即ち、直交成分信号Q、同相成分信号Iが時間の経過と共に増大するという不具合はなくなる。その後、下記(2)の動作を行わせることにより送信させる。下記(1)の動作を行わせたときに入力信号(直交成分信号Q、同相成分信号I)と帰還信号(帰還直交成分信号Qr、帰還同相成分信号Ir)との位相差が0°となるように既に可変位相器19での搬送波の移相量の補正は行っているため、過入力による電力増幅器12の破壊、出力レベルが規定値以上である電波の送信を防止することができる。
(1)加算器10の出力段から帰還変調信号を取り出させる。
(2)電力増幅器12の出力段から帰還変調信号を取り出させる。
【0015】
まず、上記(1)の動作について説明する。上記(1)の動作を行わせるため、可変減衰器24、可変減衰器25の減衰量を規定値以上にして帰還変調信号が通過するのを遮断すると共に、可変減衰器26の減衰量を規定値未満にして加算器10の出力段から帰還変調信号を取り出す。取り出された帰還変調信号は直交復調器22で復調されると共に直交成分と同相成分とに分けられる。更に、直交成分である帰還直交成分信号Qrは加算器3と位相差検出/補正器23に入力されると共に、同相成分である帰還同相成分信号Irは加算器4と位相差検出/補正器23に入力される。一方、直交成分信号入力端子1より入力された直交成分信号Qは、加算器3と位相差検出/補正器23に入力されると共に、同相成分信号入力端子2より入力された同相成分信号Iは、加算器4と位相差検出/補正器23に入力される。
【0016】
加算器3に直交成分信号Qと帰還直交成分信号Qrが入力されると、直交成分信号Qは減算されて(即ち、Q←Q−Qrとなり)、増幅器5に出力される。更に、増幅器5で所要のレベルまで増幅されてから直交変調器21の変調器7に出力される。同様にして、加算器4に同相成分信号Iと帰還同相成分信号Irが入力されると、同相成分信号Iは減算されて(即ち、I←I−Irとなり)、増幅器6に出力される。更に、増幅器6で所要のレベルまで増幅されてから直交変調器21の変調器8に出力される。
【0017】
搬送波発振器18では、所要周波数の搬送波Loが発振されており、直交変調器21の0°/90°移相器9及び可変位相器19に出力される。0°/90°移相器9に入力した搬送波Loは直交成分と同相成分とに分けられ、直交成分は変調器7に、同相成分は変調器8に出力される。変調器7に出力される搬送波LoQは変調器8に出力される搬送波LoIに対して位相が90°ずれており、変調器8に出力される搬送波LoIは0°/90°移相器9に入力される搬送波Loと同位相かまたは180°ずれている。搬送波LoIが搬送波Loに対して180°ずれることがあるのは、前述したように0°/90°移相器9が2逓倍器91とマスタスレーブ型Dフリップフロップ94(Dフリップフロップ92とDフリップフロップ93)とにより構成しているためである。
【0018】
一方、可変位相器19に入力した搬送波Loは、位相補正された(可変位相器19での位相補正については、後で詳細に説明する。)後、直交復調器22の0°/90°移相器17に出力される。0°/90°移相器17に入力した搬送波Loは直交成分と同相成分とに分けられ、直交成分は復調器15に、同相成分は復調器16に出力される。復調器15に出力される搬送波LoQは復調器16に出力される搬送波LoIに対して位相が90°ずれており、復調器16に出力される搬送波LoIは0°/90°移相器9に入力される搬送波Loと同位相かまたは180°ずれている。搬送波LoIが搬送波Loに対して180°ずれることがあるのは、前述したように0°/90°移相器9が2逓倍器91とマスタスレーブ型Dフリップフロップ94(Dフリップフロップ92とDフリップフロップ93)とにより構成しているためである。
【0019】
変調器7に入力された直交成分信号Q、変調器8に入力された同相成分信号Iは、それぞれ搬送波LoQ、搬送波LoIにより変調された後、加算器10に出力されることで合成される。合成されることで得られた直交変調信号は、直交復調器22の復調器15、復調器16に帰還直交変調信号として帰還入力される。復調器15では帰還直交変調信号を0°/90°移相器17から出力された搬送波LoQにより復調して帰還直交成分信号Qrを出力する。一方、復調器16では帰還直交変調信号を0°/90°移相器17から出力された搬送波LoIにより復調して帰還同相成分信号Irを出力する。そして、復調器15から出力された帰還直交成分信号Qrは加算器3及び位相差検出/補正器23に、復調器16から出力された帰還同相成分信号Irは加算器4及び位相差検出/補正器23に出力される。
【0020】
帰還直交変調信号を復調するために直交復調器22に入力される搬送波Loは可変位相器19で位相補正されるが、位相補正量は直交変調信号と帰還直交変調信号との位相差Θ2である。(可変減衰器26での処理による遅延により、直交変調信号と帰還直交変調信号とに位相差Θ2が生じる。)この位相差Θ2は、位相差検出/補正器23が検出する遅延直交成分信号Qと帰還直交成分信号Qrとの位相差、同相成分信号Iと帰還同相成分信号Irとの位相差と同じである。検出した位相差Θ2だけ位相差検出/補正器23は可変位相器19に対して搬送波Loを移相させる。
【0021】
そして、直交成分信号Q、同相成分信号Iが発散するか(時間の経過と共に増大するか)否かを検出する。直交成分信号Q、同相成分信号Iが発散する場合、可変位相器19での搬送波の移相量を180°ずらす。即ち、搬送波の移相量をΘ2+180°とする(Θ2:位相差検出/補正器23が検出した入力信号(直交成分信号Q、同相成分信号I)と帰還信号(帰還直交成分信号Qr、帰還同相成分信号Ir)との位相差)。その結果、負帰還となることで加算器3での直交成分信号Qと帰還直交成分信号Qrとの位相、加算器4での同相成分信号Iと帰還同相成分信号Irとの位相が合わせることができる。即ち、直交成分信号Q、同相成分信号Iが発散するのを防止できる。可変位相器19での搬送波の移相量を180°ずらして直交成分信号Q、同相成分信号Iが発散しないのを確認した後、位相補正量をΘ2+180°にして位相差検出/補正器23に記憶させる。位相補正量を記憶させた後、上記(2)の動作に移行する。
【0022】
逆に、直交成分信号Q、同相成分信号Iが発散していない場合、負帰還となっているため、即ち、加算器3での直交成分信号Qと帰還直交成分信号Qrとの位相、加算器4での同相成分信号Iと帰還同相成分信号Irとの位相が合っているため、直交成分信号Q、同相成分信号Iが発散することはない。従って、位相補正量をΘ2のままとして位相差検出/補正器23に記憶させる。位相補正量を記憶された後、上記(2)の動作に移行する。
【0023】
次に、上記(2)の動作について説明する。上記(2)の動作を行わせるため、可変位相器19での位相補正量をΘ2、またはΘ2+180°としたまま、可変減衰器26の減衰量を規定値以上にして帰還変調信号が通過するのを遮断すると共に、可変減衰器24、可変減衰器25の減衰量を規定値未満にして電力増幅器12の出力段から帰還変調信号を取り出す。取り出された帰還変調信号は直交復調器22で復調されると共に直交成分と同相成分とに分けられる。更に、直交成分である帰還直交成分信号Qrは加算器3と位相差検出/補正器23に入力されると共に、同相成分である帰還同相成分信号Irは加算器4と位相差検出/補正器23に入力される。一方、直交成分信号入力端子1より入力された直交成分信号Qは、加算器3と位相差検出/補正器23に入力されると共に、同相成分信号入力端子2より入力された同相成分信号Iは、加算器4と位相差検出/補正器23に入力される。
【0024】
加算器3に直交成分信号Qと帰還直交成分信号Qrが入力されると、直交成分信号Qは減算されて(即ち、Q←Q−Qrとなり)、増幅器5に出力される。更に、増幅器5で所要のレベルまで増幅されてから直交変調器21の変調器7に出力される。同様にして、加算器4に同相成分信号Iと帰還同相成分信号Irが入力されると、同相成分信号Iは減算されて(即ち、I←I−Irとなり)、増幅器6に出力される。更に、増幅器6で所要のレベルまで増幅されてから直交変調器21の変調器8に出力される。
【0025】
搬送波発振器18では、所要周波数の搬送波Loが発振されており、直交変調器21の0°/90°移相器9及び可変位相器19に出力される。0°/90°移相器9に入力した搬送波Loは直交成分と同相成分とに分けられ、直交成分は変調器7に、同相成分は変調器8に出力される。変調器7に出力される搬送波LoQは変調器8に出力される搬送波LoIに対して位相が90°ずれており、変調器8に出力される搬送波LoIは0°/90°移相器9に入力される搬送波Loと同位相かまたは180°ずれている。搬送波LoIが搬送波Loに対して180°ずれることがあるのは、前述したように0°/90°移相器9が2逓倍器91とマスタスレーブ型Dフリップフロップ94(Dフリップフロップ92とDフリップフロップ93)とで構成しているためである。
【0026】
一方、可変位相器19に入力した搬送波Loは、位相補正された(可変位相器19での位相補正については、後で詳細に説明する。)後、直交復調器22の0°/90°移相器17に出力される。0°/90°移相器17に入力した搬送波Loは直交成分と同相成分とに分けられ、直交成分は復調器15に、同相成分は復調器16に出力される。復調器15に出力される搬送波LoQは復調器16に出力される搬送波LoIに対して位相が90°ずれており、復調器16に出力される搬送波LoIは0°/90°移相器9に入力される搬送波Loと同位相かまたは180°ずれている。搬送波LoIが搬送波Loに対して180°ずれることがあるのは、前述したように0°/90°移相器9が2逓倍器91とマスタスレーブ型Dフリップフロップ94(Dフリップフロップ92とDフリップフロップ93)とに構成しているためである。
【0027】
変調器7に入力された直交成分信号Q、変調器8に入力された同相成分信号Iは、それぞれ搬送波LoQ、搬送波LoIにより変調された後、加算器10に出力されることで合成される。合成されることで得られた直交変調信号は、フィルタ11で不要成分が除去された後、電力増幅器12に出力される。そして、所要電力まで増幅された後、アンテナ13より送信される。
【0028】
電力増幅器12で所要電力まで増幅された直交変調信号の一部は、方向性結合器14で取り出され、直交復調器22の復調器15、復調器16に帰還入力される。復調器15では帰還直交変調信号を0°/90°移相器17から出力された搬送波LoQにより復調して帰還直交成分信号Qrを出力する。一方、復調器16では帰還直交変調信号を0°/90°移相器17から出力された搬送波LoIにより復調して帰還同相成分信号Irを出力する。そして、復調器15から出力された帰還直交成分信号Qrは加算器3及び位相差検出/補正器23に、復調器16から出力された帰還同相成分信号Irは加算器4及び位相差検出/補正器23に出力される。
【0029】
帰還直交変調信号を復調するために直交復調器22に入力される搬送波Loは可変位相器19で位相補正されるが、位相補正量は直交変調信号と帰還直交変調信号との位相差Θ1である。(直交変調器21から直交復調器22までの可変減衰器24、フィルタ11、電力増幅器12、方向性結合器14、可変減衰器25での処理による遅延により、直交変調信号と帰還直交変調信号とに位相差Θ1が生じる。)この位相差Θ1は、遅延直交成分信号Qと帰還直交成分信号Qrとの位相差、同相成分信号Iと帰還同相成分信号Irとの位相差と同じであることにより、位相差検出/補正器23に遅延直交成分信号Q、帰還直交成分信号Qr、同相成分信号I、帰還同相成分信号Irが入力されることで検出される。検出した位相差Θ1だけ位相差検出/補正器23は可変位相器19に対して搬送波Loを移相させる。
【0030】
そして、上記(1)の動作を行ったときに位相差検出/補正器23に記憶させた位相補正量がΘ2だったとき、位相差Θ1を上記(2)の動作を行ったときの位相補正量として位相差検出/補正器23に記憶させる。一方、上記(2)の動作を行ったときに位相差検出/補正器23に記憶させた位相補正量がΘ2+180°だったとき、位相補正量を位相差Θ1ではなくΘ1+180°として位相差検出/補正器23に記憶させる。位相補正量がΘ1であるとき、Θ1+180°であるとき共に、負帰還となることで加算器3での直交成分信号Qと帰還直交成分信号Qrとの位相、加算器4での同相成分信号Iと帰還同相成分信号Irとの位相が合わせることができる。即ち、直交成分信号Q、同相成分信号Iが発散することがないため、過入力による電力増幅器12の破壊、出力レベルが規定値以上である電波の送信を防止できる。
【0031】
更に、上記(2)の動作を行っているとき、位相補正量Θ1´(Θ1´=Θ1、Θ1+180°)が記憶されるだけでなく、上記(1)の動作を行ったときの位相補正量Θ2´(Θ2´=Θ2、Θ2+180°)との差である位相補正量差ΔΘ(=Θ1´−Θ2´)も位相差検出/補正器23に記憶される。
【0032】
以上の<実施形態1>の説明により、可変減衰器24、可変減衰器25の減衰量を規定値以上にして帰還変調信号が通過するのを遮断すると共に、可変減衰器26の減衰量を規定値未満にして加算器10の出力段から帰還変調信号を取り出す動作を行わせたとき、位相差検出/補正器23より位相補正量Θ2' (Θ2´=Θ2、Θ2+180°)で位相補正を行う。そして、搬送波発振器18から搬送波Loを出力させたままで、可変減衰器26の減衰量を規定値以上にして帰還変調信号が通過するのを遮断すると共に、可変減衰器24、可変減衰器25の減衰量を規定値未満にして電力増幅器12の出力段から帰還変調信号を取り出させる動作を行わせたとき、位相補正量をΘ2'+ ΔΘとする。この位相補正量で動作させたとき、負帰還となることで加算器3での直交成分信号Qと帰還直交成分信号Qrとの位相、加算器4での同相成分信号Iと帰還同相成分信号Irとの位相が合わせることができる。即ち、直交成分信号Q、同相成分信号Iが発散することがないため、過入力による電力増幅器12の破壊、出力レベルが規定値以上である電波の送信を防止できる。更に、歪のない直交変調信号をアンテナ13より送信させることができる。
【0033】
<実施形態2>
図2において、1〜25は図1のカーテシアン方式送信機と同じである。27はスイッチであり、図1の可変減衰器26の代わりに用いている。<実施形態1>のときと同様に、下記(3)、(4)の手順で動作させることにより、過入力による電力増幅器12の破壊、出力レベルが規定値以上である電波の送信を防止できると共に、歪のない直交変調信号をアンテナ13より送信させることができる。
(3)スイッチ27をオンにすると共に、可変減衰器24、可変減衰器25の減衰量を規定値以上にして、加算器10の出力段から帰還変調信号を取り出させる。
(4)スイッチ27をオフにすると共に、可変減衰器24、可変減衰器25の減衰量を規定値未満にして電力増幅器12の出力段から帰還変調信号を取り出させる。
【0034】
<実施形態1>、<実施形態2>では、帰還路における帰還変調信号の通過、遮断を切り換える手段として、スイッチ、可変減衰器を用いた場合について説明したが、これに本発明は限定されるものではない。帰還路における帰還変調信号の通過、遮断を切り換える手段がスイッチ、可変減衰器を用いた場合でなくても、過入力による電力増幅器12の破壊、出力レベルが規定値以上である電波の送信を防止できると共に、歪のない直交変調信号をアンテナ13より送信させることができる。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、送信動作を行わせる前に電力増幅器の前段から帰還変調信号を取り出したとき、搬送波Loと搬送波同相成分LoIとの位相差が180°であっても加算器に入力する入力信号と帰還信号との位相とが合うように位相補正量を変えることができる。そして、位相補正量を変えてから送信動作を行わせるため、過入力による電力増幅器の破壊、出力レベルが規定値以上である電波の送信を防止できると共に、歪のない直交変調信号を送信させることができる。従って、極めて信頼性の高いカーテシアン方式送信機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例であるカーテシアン方式送信機の構成を示す回路図。
【図2】本発明の第2の実施例であるカーテシアン方式送信機の構成を示す回路図。
【図3】従来の一例であるカーテシアン方式送信機の構成を示す回路図。
【図4】可変位相器の構成を示す回路図。
【図5】0°/90°位相器の構成を示す回路図。
【符号の説明】
1:直交成分信号入力端子 2:同相成分信号入力端子
3:加算器 4:加算器
5:増幅器 6:増幅器
7:変調器 8:変調器
9:0°/90°移相器 10:加算器
11:フィルタ 12:電力増幅器
13:アンテナ 14:方向性結合器
15:復調器 16:復調器
17:0°/90°移相器 18:搬送波発振器
19:可変位相器 20:位相差検出器
21:直交変調器 22:直交復調器
23:位相差検出/補正器 24:可変減衰器
25:可変減衰器 26:可変減衰器
27:スイッチ
71:サイン・コサインROM 72:D/A変換器
73:D/A変換器 74:直交変調器
91:2逓倍器 92:Dフリップフロップ
93:Dフリップフロップ
94:マスタスレーブ型フリップフロップ
Claims (2)
- 送信信号を出力する電力増幅器と、該電力増幅器の前段に設けられ入力信号と前記送信信号の一部である帰還信号が第1の帰還路を介して入力される加算器と、前記入力信号と前記帰還信号とが入力されると共に第1の帰還路に設けられ前記帰還信号の位相を補正する位相補正手段と、該位相補正手段と前記加算器との間に設けられ前記帰還信号のレベルを検出する帰還信号レベル検出手段を含むカーテシアン方式送信機において、
前記加算器、前記電力増幅器間に設けた分岐点と前記位相補正手段とを接続する第2の帰還路を備えると共に、
第1の帰還路への前記帰還信号の通過、遮断を切り換える第1の切換手段と、第2の帰還路への前記帰還信号の通過、遮断を切り換える第2の切換手段をそれぞれ第1の帰還路、第2の帰還路での前記位相補正手段の前段に備え、
第2の帰還路に前記帰還信号を通過させたとき、前記帰還信号レベル検出手段によって、直交成分信号Qおよび同相成分信号Iが時間の経過と共に増大しているかを検出し、
該検出がされた場合に、前記位相補正手段における位相補正量を 180 度ずらすように構成したことを特徴とするカーテシアン方式送信機。 - 送信信号を出力する電力増幅器と、該電力増幅器の前段に設けられ入力信号と前記送信信号の一部である帰還信号が第1の帰還路を介して入力される加算器と、前記入力信号と前記帰還信号とが入力されると共に第1の帰還路に設けられ前記帰還信号の位相を補正する位相補正手段と、該位相補正手段と前記加算器との間に設けられ前記帰還信号のレベルを検出する帰還信号レベル検出手段を含むカーテシアン方式送信機において、
前記加算器、前記電力増幅器間に設けた分岐点と前記位相補正手段とを接続する第2の帰還路を備えると共に、
第1の帰還路への前記帰還信号の通過、遮断を切り換える第1の切換手段と、第2の帰還路への前記帰還信号の通過、遮断を切り換える第2の切換手段をそれぞれ第1の帰還路、第2の帰還路での前記位相補正手段の前段に備え、
前記位相補正手段は、該帰還信号の位相補正量を設定する位相補正量設定手段と、該位相補正量設定手段に接続されると共に前記位相補正量を位相補正する移相補正手段を備え、
送信動作前に第2の帰還路に前記帰還信号を通過させたときに前記帰還信号が前記所定位相量ずれているのを検出した場合、前記帰還信号の位相補正を行わせるように構成したことを特徴とするカーテシアン方式送信機。
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