JP3869976B2 - 高周波電力増幅装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波電力増幅装置に関し、特に搬送波を有するSSB変調信号の電力増幅器の非直線歪みを補償するために負帰還制御を行う高周波電力増幅装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ディジタル携帯電話等のディジタル無線通信において、4値PSK(Phase Shift Keying)や16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)等の線形変調方式を用いる場合が多くなっており、これらの変調信号を増幅する高周波電力増幅器の線形性への要求が厳しくなっている。そして、この高周波電力増幅器の線形化の手法の1つとして、例えば、電力増幅器の出力の一部を復調してベースバンド信号の形で負帰還を施すことにより非線形歪みを補償するカーティシャンループ型の負帰還増幅器がある。
【0003】
図2は、従来の擬似的な搬送波成分を付加するタイプのSSB変調にカーティシャンループ型の負帰還増幅方式を適用した高周波電力増幅装置のうちの、本出願と同一出願人による特願平11−067958号に示される高周波電力増幅装置の一例を示す構成概要図である。
同図に示すように、本高周波電力増幅装置は、入力ベースバンド信号の同相成分Iから帰還ベースバンド信号の同相成分I’を減算する減算器1a及び入力ベースバンド信号の直交成分Qから帰還ベースバンド信号の直交成分Q’を減算する減算器1bと、前記減算器1a、1bのそれぞれの出力信号の帯域制限を行うローパスフィルタ2a、2bと、当該帯域制限された同相信号Iに後述する位相制御を行うためのバイアス用直流信号Cを付加する加算器3と、搬送波信号を発生する発振器10と、前記ローパスフィルタ2bを介した減算器1bの出力信号及び加算器3の出力信号により前記発振器10が発生する搬送波信号を直交変調する直交変調器4と、直交変調器4の出力の直交被変調波を所定の電力に増幅する電力増幅器5と、前記電力増幅器5の出力信号を放射するアンテナ6と、前記電力増幅器5の出力信号を所定のレベルに減衰させる減衰器7と、前記発振器10が発生する搬送波信号の位相を位相制御信号に基づいて変化させて復調用搬送波を出力する移相器9と、前記復調用搬送波によって減衰器7から供給された帰還信号を復調し帰還復調信号の同相成分Ix’及び直交成分Qx’を出力する直交復調器8と、帰還復調信号Ix’、 Qx’ の直流成分をそれぞれ遮断して帰還ベースバンド信号I’、Q’を生成するキャパシタ11a、11bと、前記帰還復調信号Qx’からベースバンド信号を除去して直流成分を取り出すローパスフィルタ12と、該ローパスフィルタ12の出力に基づいて位相制御信号を出力する位相制御器13とで構成される。
【0004】
上記構成において、入力端に入力ベースバンド信号I及びQが入力すると、減算器1a及び2bにおいてはベースバンド信号I及びQから帰還ベースバンド信号I’及びQ’をそれぞれ減算し、得られた変調信号をローパスフィルタ2a、2bに入力する。ローパスフィルタ2a、2bではそれぞれの変調信号の帯域制限を行う。前記ローパスフィルタ2a出力の変調信号は、加算器3においてバイアス用直流信号Cが付加されて変調信号Ixとなり、該変調信号Ixと前記ローパスフィルタ2bの出力の変調信号Qxが直交変調器4に入力される。
直交変調器4は、発振器10が発生する角周波数ω0の搬送波信号を前記変調信号Ix及びQxによって直交変調して、式(1)に示される直交変調によるSSB信号変調波Sを得る。
S= Ix cos ω0t + Qx sin ω0t (1)
この直交変調波Sは、電力増幅器5によって増幅されて送信信号SAとなり、アンテナ6より放射される。
【0005】
送信信号SAの一部は、図示しないカップラ等で分岐されて減衰器7に入力される。減衰器7は、送信信号SAを所定のレベルに減衰させた帰還信号Rを直交復調器8に供給する。
直交復調器8においては、発振器10が発生する角周波数ω0の搬送波信号(直交変調器に供給する信号と同一の信号)を、後述するように直交変調器4出力から直交復調器8に至る経路の搬送波信号の位相回転分を補正するため、移相器9で当該補正分を位相変化させた復調用搬送波信号によって帰還信号Rを復調して、直交変調器4の入力変調信号Ix及びQxに対応する帰還復調信号Ix’及びQx’を出力する。該帰還復調信号Ix’及びQx’は、それぞれキャパシタ11a及び11bによって信号中に含まれる直流成分が遮断され、入力ベースバンド信号I及びQに対応する帰還ベースバンド信号I’及びQ’となって前記減算器1a及び1bに入力される。
前記帰還ベースバンド信号I’及びQ’は、電力増幅器5の非線形歪みにより振幅歪み及び位相歪みを受けているが、図の高周波電力増幅装置においては、帰還ベースバンド信号I’及びQ’を上述のように減算器1a、1bに供給して負帰還ループを形成することにより、電力増幅器5の非線形歪み成分を低減し、もって電力増幅器5の非線形歪みを補償している。
【0006】
上記のような負帰還を行う高周波増幅器では、一般的に負帰還回路のループ長、電力増幅器5の周波数特性等によって、直交変調波Sに比べ帰還信号Rが遅延し、両者の搬送波の位相が異なってしまい、負帰還増幅による高周波電力増幅装置の歪み補償特性に劣化を与えることになる。
この位相のずれをΔφとすると、帰還信号Rは式(2)のようにあらわされる。
従って、帰還復調信号Ix’、Qx’は、入力変調信号Ix、Qxとは異なった、式(3)、(4)で表わされる信号となり、高周波電力増幅装置の歪み補償特性に劣化を与えることになる。
Ix’= Ix cos Δφ + Qx sin Δφ (3)
Qx’= Qx cosΔφ − Ix sinΔφ (4)
このため、予め移相器8に対し予想されるずれ分だけ位相をシフトさせる信号を与えて、該位相ずれを補正するのが一般的である。
しかしながら、補正のための位相シフト量が固定値であると、高周波電力増幅装置のチャネル変更に伴う搬送波周波数の変動、電力増幅部の温度特性、アンテナ負荷変動等によって上記の位相ずれΔφが変化した場合、歪み補償特性が劣化する。上記問題を解決するための手段として、図2に示された高周波電力増幅装置が考案されている。
【0007】
図3は、I、Q平面上にバイアス直流分Cをベクトル表示した図である。本高周波電力増幅装置の直交復調器8から出力される帰還復調信号Ix’及びQx’には、前述のように直交変調波Sと帰還信号Rの搬送波の間に位相ずれΔφを生じるため、直交復調器8の出力において、加算器3によりIx 成分に付加されたバイアス用直流信号CもΔφの位相ずれを起こしてC’信号となり、I、Q成分としてCi’及びCq’を有することになる。
そして、直交変調波Sと帰還信号Rの搬送波の間に位相ずれが無い(Δφ=0)場合は、前記C’信号はC信号となるのでCq’=0となり、従って、前記直交成分Qx’には直流分は現れない。
そこで、位相制御器13は、このQx’に含まれている直流分Cq’を検出して、Cq’=0となるように搬送波の位相をシフトさせる制御信号を位相器9に出力し、該制御信号に基づいて位相器9は発振器10出力の復調用搬送波の位相を変化させる。この動作によって、本高周波電力増幅装置では、直交変調波Sと帰還信号Rの搬送波の間の位相ずれの補正を行うものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記出願の高周波電力増幅装置が所定のチャネル周波数での動作を開始するとき、その周波数に対しての位相ずれの補正回路が動作して最適の制御状態に収束するまでに、移相器による搬送周波数の位相シフトの状態が前記チャネル周波数の最適状態とかけ離れている場合は、余分の時間がかかってしまうという問題があった。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、簡単な構成で、動作開始直後であってもすばやく最適の補正状態に制御することができるカーティシアン型のSSB高周波電力増幅装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の高周波電力増幅装置は、直交したベースバンド信号を変調信号とする直交変調器と電力増幅器と該電力増幅器の出力信号を復調して直交したベースバンド信号を出力する直交復調器とをループ状に接続するとともに、前記直交復調器に復調用搬送波の位相を補正するための移相器を接続し、前記移相器の移相量を制御するため前記直交変調器の変調信号に直流信号を付加した負帰還型の高周波電力増幅装置であって、
前記移相器の移相量制御を行うに際して、前記直交復調器の出力において前記ループ状に接続された回路の高周波部分による前記付加された直流信号成分の位相変化を検出するとともに、予め設定した前記ループ状に接続された回路の高周波部分に係わる所定周波数での通過位相量に基づき、チャネル変更に伴う前記通過位相量の変化を把握して前記移相器の移相量制御を行うようにしたことを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示した実施の形態に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明に係わる搬送波を付加したタイプのSSB変調波に対する高周波電力増幅装置の実施の一形態例を示す機能ブロック図である。
同図に示すように、本発明の高周波電力増幅装置は、入力ベースバンド信号の同相成分Iから帰還ベースバンド信号の同相成分I’を減算する減算器1a及び入力ベースバンド信号の直交成分Qから帰還ベースバンド信号の直交成分Q’を減算する減算器1bと、前記減算器1a、1bのそれぞれの出力信号の帯域制限を行うローパスフィルタ2a、2bと、当該帯域制限された同相信号Iに後述する位相制御を行うためのバイアス用直流信号Cを付加する加算器3と、搬送波信号を発生する発振器10と、前記ローパスフィルタ2bを介した減算器1bの出力信号及び加算器3の出力信号により前記発振器10が発生する搬送波信号を直交変調する直交変調器4と、前記直交変調器4の出力の直交被変調波を所定の電力に増幅する電力増幅器5と、前記電力増幅器5の出力信号を放射するアンテナ6と、前記電力増幅器5の出力信号を所定のレベルに減衰させる減衰器7と、前記発振器10が発生する搬送波信号の位相を位相制御信号に基づいて変化させて復調用搬送波を出力する移相器9と、前記復調用搬送波によって減衰器7から供給された帰還信号を復調し帰還復調信号の同相成分Ix’及び直交成分Qx’を出力する直交復調器8と、帰還復調信号Ix’及びQx’からそれぞれ直流成分を遮断して帰還ベースバンド信号I’及びQ’を生成するキャパシタ11a、11bとを有する。
【0011】
更に、本発明に係わる高周波電力増幅装置は、前記帰還復調信号Qx’からベースバンド信号を除去して直流成分を取り出すローパスフィルタ12と、該ローパスフィルタ12の出力信号に基づいて前記移相器9の動作を制御する位相制御器13と、送信周波数帯の中心周波数に対する負帰還ループの位相ずれと前記中心周波数から所定の離れた周波数に対する位相ずれとの変動分を算出して前記位相制御器13に出力する位相計算回路14とで構成される。
【0012】
前記構成の高周波電力増幅装置は、図2の高周波電力増幅装置に前記位相計算回路14を追加した構成であり、この追加した構成部分と移相器9を除いて、本高周波電力増幅装置の構成各部の動作・機能は、図2に示した高周波電力増幅装置と同じであり、共通の構成各部の符号も同じ番号を付与しており、ここでは共通部分の機能、動作の説明は省略する。
【0013】
上述したように、カーティシアン型の負帰還増幅器において送信チャネルの変更により搬送波周波数が変化すると、負帰還ループの周波数特性によって直交被変調波Sと帰還信号Rの搬送波との間の位相ずれに変動が生じ、負帰還増幅器の歪み補償特性が劣化することになる。
本発明による高周波電力増幅装置においては、予め、該高周波電力増幅装置が使用する送信周波数帯の中心周波数f0bに対する直交変調器4の出力(図中にSと示す)から直交復調器8の入力(図中にRと示す)までの間の基準の遅延時間τ0bを、実測あるいは構成部品の特性規格から推定して求める。そして、前記位相計算回路14は、高周波電力増幅装置においてチャネル変更が行われた場合、変更後の周波数f0と中心周波数f0bとの差に基づいて基準の遅延時間τ0bからの遅延時間変動量を計算し、その結果から周波数f0に対する遅延時間τを求める。
前記位相計算回路14は、求めた遅延時間τから式(5)で表される初期位相制御信号φ0を位相制御器13に出力する。
φ0=2πf0τ (5)
上記のように構成することによって、チャネル変更時に、位相器9は前記位相制御器13を介して前記位相計算回路14からの初期位相制御信号φ0によって、予め搬送周波数の変動による位相の変化分を推定して補正してしまうことになる。その結果、ローパスフィルタ12及び位相制御器13による位相制御は、制御範囲が狭くなり、収束時間が早くなる。同時に、制御系の安定性も向上する。
【0014】
上述の高周波電力増幅装置の位相計算回路14は、初期位相制御信号として、変更後の搬送周波数f0に対する遅延時間τを求め、その遅延時間τから式(5)で得られるφ0=2πf0τを位相制御器13を介して移相器9に出力したが、簡易な手段として、チャネル変更にかかわらず、高周波電力増幅装置が使用する送信周波数帯の中心周波数f0bに対する基準の遅延時間τ0bを用いた初期位相制御信号φ0=2πf0τ0bを前記位相計算回路14から移相器9に出力してもよい。
尚、上記構成においては、ローパスフィルタ12、位相制御器13及び位相計算回路14の動作はアナログ信号による処理で説明したが、前記ローパスフィルタ12と位相計算回路14のそれぞれ入力側にA/D変換器を付加すると共に、前記移相制御器13の出力側にはD/A変換器を付加することによって位相制御信号の生成をディジタル的に処理すれば、低コストで信頼性の高い構成にすることができる。
【0015】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、直交変調器出力と直交復調器入力の搬送波の間に位相のずれが生じたときに、従来の帰還復調信号から検出した直流分に基づく位相制御にあわせて、使用する搬送周波数に対する推定の遅延時間に基づく移相制御信号をも加えて制御するように構成したので、簡単な回路構成で、すばやく制御動作が収束し、しかも制御系の安定性が高い高周波電力増幅装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る高周波電力増幅装置の実施の一形態例を示す構成概要図。
【図2】特願平11−067958号に示される高周波電力増幅装置の一例を示す構成概要図。
【図3】I、Q平面上のバイアス直流分Cのベクトル図。
【符号の説明】
1a、1b・・減算器、 2a、2b・・ローパスフィルタ、
3・・加算器、 4・・直交変調器、 5・・電力増幅器、
6・・アンテナ、 7・・減衰器、 8・・直交復調器、
9・・移相器 10・・発振器 11a、11b・・キャパシタ、
12・・ローパスフィルタ、 13・・移相制御器、
14・・位相計算回路
Claims (1)
- 直交したベースバンド信号を変調信号とする直交変調器と電力増幅器と該電力増幅器の出力信号を復調して直交したベースバンド信号を出力する直交復調器とをループ状に接続するとともに、前記直交復調器に復調用搬送波の位相を補正するための移相器を接続し、前記移相器の移相量を制御するため前記直交変調器の変調信号に直流信号を付加した負帰還型の高周波電力増幅装置であって、
前記移相器の移相量制御を行うに際して、前記直交復調器の出力において前記ループ状に接続された回路の高周波部分による前記付加された直流信号成分の位相変化を検出するとともに、予め設定した前記ループ状に接続された回路の高周波部分に係わる所定周波数での通過位相量に基づき、チャネル変更に伴う前記通過位相量の変化を把握して前記移相器の移相量制御を行うようにしたことを特徴とする高周波電力増幅装置。
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