JP4068999B2 - カーテシアン型送信機 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、負帰還ループを形成するカーテシアン型送信機に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、QPSK(Quadri Phase Shift Keying)や多値QAM(Quadrature Amplitude Modulation)のような線形変調方式を使用するディジタル無線機、特に移動通信用においては、周波数有効利用の観点より、限られた帯域の中で多数のチャネルが設けられる。しかし、チャネル間で干渉が起きると通信品質が劣化するため、厳しい隣接チャンネル漏洩電力が規定されている。
【0003】
隣接チャネルへの妨害が発生する主な原因に無線機における高周波電力増幅器の非線形歪がある。このため、非線形歪を相殺して補償することが高周波電力増幅器に必須となっている。
【0004】
高周波電力増幅器の非線形歪補償を行なう従来のカーテシアン型送信機の一例(例えば特許文献1参照)を図3に示す。同相信号と直交信号とにより増幅器に負帰還を掛けるカーテシアン型の負帰還ループによって非線形歪補償が行なわれる。
【0005】
信号入力端子1より印加された直交成分信号Qは、加算器3と位相差検出器20に入力され、信号入力端子2より印加された同相成分信号Iは、加算器4と位相差検出器20に入力される。加算器3に入力された直交成分信号Qは、加算器3に別途入力される帰還直交成分信号Qrを減算された直交成分信号となり、増幅器5へ出力され、増幅器5で所要のレベルまで増幅されてから直交変調器21の変調器7へ出力される。加算器4に入力された同相成分信号Iは、加算器4に別途入力される帰還同相成分信号Irを減算された同相成分信号となり、増幅器6へ出力され、増幅器6で所要のレベルまで増幅されてから直交変調器21の変調器8へ出力される。帰還直交成分信号Qrの直交成分信号Qに対する最適位相差値、及び帰還直交成分信号Irの直交成分信号Iに対する最適位相差値は、いずれも0°である。
【0006】
一方、搬送波発振器18は発振して所要周波数の搬送波Loを出力する。搬送波Loは、直交変調器21の0°/90°移相器9及び可変位相器19へ出力される。0°/90°移相器9に入力した搬送波Loは、互いに位相が90°ずれた搬送波LoQ,LoIとなり、それぞれ直交変調器21の変調器7,8へ入力される。また、可変位相器19に入力した搬送波Loは所要量だけ移相されて搬送波Lodとなり、直交復調器22の0°/90°移相器17へ入力される。0°/90°移相器17に入力した搬送波Lodは、互いに位相が90°ずれた搬送波LodQ,LodIとなり、それぞれ直交復調器22の復調器15,16へ入力される。
【0007】
変調器7に入力された直交成分信号は、0°/90°移相器9出力の搬送波LoQを変調する。そして、直交成分信号による変調信号は、加算器10へ出力される。変調器8に入力された同相成分信号は、0°/90°移相器9出力の搬送波LoIを変調する。そして、同相成分信号による変調信号は、加算器10へ出力される。直交成分信号による変調信号と同相成分信号による変調信号とは、加算器10で加算されて直交変調信号となり、フィルタ11へ出力される。
【0008】
フィルタ11に入力した直交変調信号は、不要成分を除去された後、電力増幅器12へ出力される。電力増幅器12に入力した直交変調信号は、所要電力まで増幅される。このとき、電力増幅器12の非線形歪が相殺補償され、歪のない直交変調信号がアンテナ13より送信される。
【0009】
電力増幅器12で所要電力まで増幅された送信出力の一部は、方向性結合器14で取り出され、直交復調器22の復調器15、16に帰還入力される。復調器15に帰還入力した帰還信号は、復調器15に入力される搬送波LodQによって復調されて帰還直交成分信号Qrとなる。帰還直交成分信号Qrは、加算器3及び位相差検出器20へ入力される。更に、復調器16に帰還入力した帰還信号は、搬送波LodIよって復調されて帰還同相成分信号Irとなる。帰還同相成分信号Irは、加算器4及び位相差検出器20へ入力される。
【0010】
直交復調器22に入力される搬送波Lodは、帰還信号Ir,Qrが信号I,Qに対して最適な位相となるよう可変位相器19で搬送波Loが位相差Θだけ補正されたものである。この位相量の検出制御は、位相差検出器20により行なわれる。
【0011】
位相差Θは、直交変調器21から直交復調器22までのフィルタ11、電力増幅器12、方向性結合器14等による遅延時間により決まる値で、入力した直交成分信号Qと帰還直交成分信号Qr、及び同相成分信号Iと帰還同相成分信号Irより求められる。加算器3,4から直交変調器21及び直交復調器22を経て再び加算器3,4に戻る経路によって負帰還ループが構成され、電力増幅器12等により発生する非線形歪が相殺されて補償される。
【0012】
図4に可変位相器19の従来例を示す。可変位相器19は、直交変調器を使用した移相器であり、サイン・コサインROM71、二つのD/A変換器72,73、直交変調器74で構成されている。サイン・コサインROM71に入力される補正位相情報Cが位相差Θに応じて変化すると、サイン・コサインROM71からSINΘ、COSΘデータが出力される。このSINΘ、COSΘデータは、D/A変換器72、73によりアナログ信号に変換され、直交変調器74に入力される。アナログ信号は、直交変調器74に別途入力する搬送波Loに位相変調を掛ける。これにより、搬送波Loは、位相Θだけ移相され、搬送波Lodとなって出力される。
【0013】
次に、図5にフリップフロップを用いた0°/90°移相器9の従来例を示す。移相器9は、搬送波Loを2逓倍器91で2逓倍し、Dフリップフロップ92、93を用いたマスタスレーブ型フリップフロップ94で2分周して、互いに位相差が90°の搬送波LoQ,LoIを得る。0°/90°移相器17も同じ構成である。
【0014】
【特許文献1】
特開2001−285387号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
図5に示すフリップフロップを用いた0°/90°移相器は構成が簡単であるが、例えば起動時の搬送波LoIの位相は、搬送波Loの位相と同じ場合と、180°ずれる場合とがあり、不確定である。それ故に、直交変調器及び直交復調器に使用する0°/90°移相器にフリップフロップを用いた場合、同相信号と直交信号とにより負帰還を行なうカーテシアン型送信機において、電源を投入する度に、即ち運用の度に可変移相器の移相量がΘ又はΘ+180°となって不確定であり、可変移相器の移相量を確定することができない(可変移相器の位相量を誤ると、正帰還が行なわれることで時間の経過と共に送信出力が増大するため、過大な送信出力を有する電波の送信、電力増幅器の破壊といった問題が発生する)。そのため、運用の度に、アンテナ13を終端抵抗に付け替える作業を行なった上で移相量の補正を行なうか、或いは、スイッチを設けてアンテナ13を終端抵抗に切り換える動作を行なった上で移相量の補正を行なうなどの対策が必要になる。しかし、この対策は、面倒で煩雑であり、無線機の実用性を著しく落とすという問題がある。
【0016】
本発明の目的は、直交変調器及び直交復調器にフリップフロップを用いた0°/90°移相器を用いたカーテシアン型送信機において、運用時に可変移相器の移相量を容易に確定できるようにすることで上記問題を解決することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明では、互いに直交する入力信号から互いに直交する帰還信号を同じ直交性を有する信号同士で減算する加算器と、該加算器の出力信号を直交変調する直交変調器と、該直交変調器の出力信号を電力増幅する増幅器と、該増幅器と上記直交変調器の内、一方の出力信号を直交復調して上記帰還信号を出力する直交復調器と、上記入力信号と上記帰還信号の間の位相差Θを検出する位相差検出器と、該位相差検出器の制御により上記帰還信号の位相を補正する可変移相器を含むカーテシアン型送信機において、上記位相差検出器に接続されると共に、送信動作を行なわせる前に上記直交変調器の出力信号を上記直交復調器に入力させた場合の上記直交変調器の出力信号を検波する検波器を備えるようにしたことを特徴とする。
【0018】
その結果、該検波器の出力信号レベルが所定値以上であることで帰還ループが正帰還になっていると上記位相差検出器が判定したとき、送信動作時に上記位相差検出器は、運用前に予め求めておいた上記入力信号と上記帰還信号の位相差Θ1に所定の位相量(180°)を加算した位相量Θ1+180°だけ上記帰還信号の位相を補正させるように上記可変移相器を制御することにより、帰還ループが負帰還となるようにする。負帰還となった後、上記増幅器の出力信号を上記直交復調器に入力させることで送信動作を行なわせるようにする。
【0019】
このような本発明のカーテシアン型送信機の好ましい一実施形態を例にとって、可変移相器の移相量を確定する方法を更に具体的に以下に説明する。
【0020】
位相差検出補正器において、予め、運用前に通常動作時の位相補正量Θ1を求めてから(ただし、増幅器からの出力信号はアンテナではなく終端抵抗に伝送されるようにする)そのまま電源を切らずに直交変調器から出力される直交変調信号が直接に直交復調器に入力されるように信号の経路を切り替え、そのときの位相補正量を調整用位相補正量Θ2として求めておく。
【0021】
運用時に、送信に先立って、この調整用位相補正量Θ2で直交復調器に与える搬送波を移相させてから、直交変調信号が直接に直交復調器に入力されるように信号の経路を切り替える。このとき、帰還ループは、負帰還となるか正帰還となるかのいずれかとなる。負帰還となったとき正常動作するものの、正帰還となったとき時間の経過と共に送信出力が増大する。即ち、例えば搬送波LoIと搬送波LodIの間の位相関係が運用前と送信動作時とで一致しているとき、入力信号と帰還信号の位相差は調整用位相補正量Θ2と等しくなるため、帰還ループは負帰還となる。一方、搬送波LoIと搬送波LodIの間の位相関係が運用前と送信動作時とで異なっているとき、入力信号と帰還信号の位相差は調整用位相補正量Θ2に180°を加算した値となるため、帰還ループは正帰還となる。
【0022】
負帰還のときと正帰還のときとで検波電圧が異なるので、位相差検出補正器は、検波電圧の相違から、負帰還であるか正帰還であるかを判定し、正帰還であるとき予め求めておいた位相補正量Θ1に180°を加えた値を送信時の位相補正量Θとすることにより、可変移相器の移相量が確定される。移相量が確定してから、送信が行なわれるようにするために、増幅器の出力信号が直交復調器に入力されるよう信号の経路の切り替える。
【0023】
運用の送信の前後で行なう切り替えの操作は簡単であり、負帰還であるか正帰還であるかの検出も検波電圧の相違で行なわれるので容易である。また、切り替えでは、電力増幅が行なわれる前の信号が対象になるので、切り替えの手段、例えば、スイッチや可変減衰器は小型のものでよく、損失も問題にならない。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る高周波電力増幅器を図面に示した発明の実施の形態を参照して更に詳細に説明する。
<発明の実施の形態1>
信号経路の切り替えを可変減衰器を用いて行なうようにした本発明のカーテシアン型送信機の第1の実施形態を図1に示す。図1において、1は直交成分信号Qを入力する入力端子、2は同相成分信号Iを入力する入力端子、3は、入力した直交成分信号Qから同じ直交性を有する帰還直交成分信号Qrを減算する加算器、4は、入力した同相成分信号Iから同じ直交性を有する帰還同相成分信号Irを減算する加算器、5は、加算器3において加算された直交成分信号を増幅する増幅器、6は、加算器4において加算された同相成分信号を増幅する増幅器、7は、増幅器5が出力する直交成分信号で搬送波LoQを変調する変調器、8は、増幅器6が出力する同相成分信号で搬送波LoIを変調する変調器、9は、搬送波Loから互いに位相が90°異なる搬送波LoQ,LoIを生成する0°/90°移相器、10は、変調器7,8からの変調信号を加算する加算器、21は、変調器7,8と0°/90°移相器9と加算器10とからなる直交変調器、11は、直交変調信号の不要成分を除去するフィルタ、12は、フィルタ11が出力する直交変調信号を所要電力まで増幅する電力増幅器、13はアンテナを示す。
【0025】
更に、図1において、14は、電力増幅器12の出力から帰還信号を取り出すための方向性結合器、15は、帰還直交変調信号から直交成分信号を搬送波LodQを用いて復調する復調器、16は、帰還直交変調信号から同相成分信号を搬送波LodIを用いて復調する復調器、17は、搬送波Lodから互いに位相が90°異なる搬送波LodQ,LodIを生成する0°/90°移相器、22は、復調器15,16と0°/90°移相器17とからなる直交復調器、18は、搬送波Loを発振する搬送波発振器(局部発振器)、19は、搬送波Loを移相して搬送波Lodを出力する可変移相器、23は、入力信号と帰還信号との位相差を検出し補正位相情報を記憶し出力する位相差検出補正器(以下「位相差検出/補正器」とする)、24、25、26は可変減衰器、27は、直交変調器21が出力する直交変調信号を検波する検波器を示す。
【0026】
可変減衰器26の減衰量を所定の大きい減衰量にして可変減衰器26の経路には信号を伝達させなくし、可変減衰器24,25の減衰量を所定の小さい減衰量にして非線形歪を補償しながら増幅を行なう通常動作について説明する。
【0027】
入力端子1より印加された直交成分信号Qは、加算器3と位相差検出/補正器23に入力され、同相成分信号入力端子2より印加された同相成分信号Iは、加算器4と位相差検出/補正器23に入力される。加算器3に入力された直交成分信号は、加算器3に別途入力される帰還直交成分信号Qrを減算された直交成分信号となり、増幅器5へ出力され、増幅器5で所要のレベルまで増幅されてから直交変調器21の変調器7へ出力される。加算器4に入力された同相成分信号Iは、加算器4に別途入力される帰還同相成分信号Irを減算された同相成分信号となり、増幅器6へ出力され、増幅器6で所要のレベルまで増幅されてから直交変調器21の変調器8へ出力される。直交成分信号Qに対する帰還直交成分信号Qrに対する最適位相差値、及び帰還直交成分信号Irの直交成分信号Iに対する最適位相差値は、いずれも0°である。
【0028】
一方、搬送波発振器18は発振して所要周波数の搬送波Loを出力する。搬送波Loは、直交変調器21の0°/90°移相器9及び可変位相器19へ出力される。0°/90°移相器9に入力した搬送波Loは、互いに位相が90°ずれた搬送波LoQ,LoIとなり、それぞれ直交変調器21の変調器7,8へ入力される。また、可変位相器19に入力した搬送波Loは所要量だけ移相されて搬送波Lodとなり、直交復調器22の0°/90°移相器17へ入力される。0°/90°移相器17に入力した搬送波Lodは、互いに位相が90°ずれた搬送波LodQ,LodIとなり、それぞれ直交復調器22の復調器15,16へ入力される。
【0029】
変調器7に入力された直交成分信号は、0°/90°移相器9出力の搬送波LoQを変調する。そして、直交成分信号による変調信号は、加算器10へ出力される。変調器8に入力された同相成分信号は、変調器8に入力される搬送波LoIを変調する。そして、同相成分信号による変調信号は、加算器10へ出力される。直交成分信号による変調信号と同相成分信号による変調信号とは、加算器10で加算されて直交変調信号となり、可変減衰器24を経てフィルタ11へ出力される。
【0030】
フィルタ11に入力した直交変調信号は、不要成分を除去された後、電力増幅器12へ出力される。電力増幅器12に入力した直交変調信号は、所要電力まで増幅され、アンテナ13より送信される。
【0031】
電力増幅器12で所要電力まで増幅された送信出力の一部は、方向性結合器14で取り出され、可変減衰器25を経て直交復調器22の復調器15、16に帰還入力される。復調器15に帰還入力した帰還信号は、復調器15に入力される搬送波LodQによって復調されて帰還直交成分信号Qrとなる。帰還直交成分信号Qrは、加算器3及び位相差検出/補正器23へ入力される。更に、復調器16に帰還入力した帰還信号は、搬送波LodIによって復調されて帰還同相成分信号Irとなる。帰還同相成分信号Irは、加算器4及び位相差検出/補正器23へ入力される。
【0032】
直交復調器22に入力される搬送波Lodは、帰還信号Ir,Qrが信号I,Qに対して最適な位相即ち最適位相差値0°となるよう可変位相器19で搬送波Loが位相差Θだけ補正されたものである。この位相量の検出制御は、位相差検出/補正器23により行なわれる。
【0033】
位相差Θは、直交変調器21から直交復調器22までの可変減衰器24,25、フィルタ11、電力増幅器12、方向性結合器14等による遅延時間により決まる値で、入力した直交成分信号Qと帰還直交成分信号Qr、及び同相成分信号Iと帰還同相成分信号Irより求められる。加算器3,4から直交変調器21及び直交復調器22を経て再び加算器3,4に戻る経路によって負帰還ループが構成され、電力増幅器12等により発生する非線形歪が相殺されて補償される。
【0034】
ここで、カーテシアン型送信機の工場出荷前即ち運用前に行なう記憶設定について説明する。まず、アンテナ13の代わりに終端抵抗を接続して上記の動作を行なわせ、このときの最適位相差値0°からの位相差Θ1を位相差検出/補正器23に位相補正量Θ1として記憶させる。
【0035】
次に、位相補正量Θ1が検出されたときのまま搬送波発振器18の発振を継続させ、可変減衰器24,25の減衰量を所定の大きい減衰量として可変減衰器24,25の経路には信号を伝達させなくし、可変減衰器26の減衰量を所定の小さい減衰量とし、可変減衰器26の経路に信号を伝達させる。これにより、直交変調器21が出力する直交変調信号が直接に直交復調器22に入力される。
【0036】
この状態において、直交復調器22に入力される搬送波Lodは、帰還信号Ir,Qrが最適な位相となるよう可変位相器19で位相差Θ2だけ補正される。この位相補正量は調整用位相補正量となるもので、その検出制御が位相差検出/補正器23により行なわれる。位相差Θ2は、直交変調器21から直交復調器22までの可変減衰器26等のみの遅延時間により決まる値であり、従って、位相差Θ2の値は、位相差Θ1よりも小さい。
【0037】
位相差Θ2は、位相差検出/補正器23において、入力した直交成分信号Qと帰還直交成分信号Qr、及び入力した同相成分信号Iと帰還同相成分信号Irより求められる。このときの最適位相差値0°からの位相差Θ2が位相差検出/補正器23に調整用位相補正量Θ2として記憶される。そして、位相差検出/補正器23は、位相補正量Θ1と調整用位相補正量Θ2の差である位相補正量差ΔΘ(=Θ1−Θ2)を記憶する。更に、このときに検波器27で検波した検波電圧V2を記憶する。
【0038】
続いて、位相補正量をΘ2+180°とする。帰還ループは、この状態では正帰還となって発振する。位相差検出/補正器23は、このときに検波器27で検波した検波電圧V3を記憶する。
【0039】
以上により、運用前の記憶設定が終了する。次に、記憶したデータΘ1,Θ2,ΔΘ,V2,V3を用いた高周波増幅器の運用時動作について説明する。
【0040】
まず、送信に先立って、可変減衰器24,25の減衰量を所定の大きい減衰量にして可変減衰器24、25の経路には信号を伝達させなくし、可変減衰器26の減衰量を所定の小さい減衰量にして可変減衰器26の経路には信号を伝達させる。この動作にて、位相差検出/補正器23より位相補正量Θ2で位相補正を行なう。
【0041】
次いで、位相差検出/補正器23は、検波器27で検波した検波電圧を調べる。V2又はV3のいずれかである検波電圧がV2の場合は、負帰還となっているので、搬送波発振器18はそのままの状態で、位相補正量をΘ2+ΔΘとする。
【0042】
ここで、電圧V2及び電圧V3の検出は、正帰還の場合の電圧V3が発振により高い電圧となるので、所定の電圧値を設け、検波電圧がこの所定値以上となったときに、検波電圧は正帰還の場合の電圧V3であると判定する。
【0043】
続いて、可変減衰器26の減衰量を所定の大きい減衰量にして可変減衰器26の経路には信号を伝達させなくし、可変減衰器24,25の減衰量を所定小さい減衰量にして可変減衰器24,25の経路に信号を伝達させて通常状態にする。運用の送信時の位相補正量ΘがΘ=Θ2+ΔΘ=Θ1となる。
【0044】
また、検波器27で検波した検波電圧がV3の場合は、正帰還となっているので、搬送波発振器18はそのままの状態で、位相補正量をΘ2+180°+ΔΘとする。
【0045】
続いて、可変減衰器26の減衰量を所定の大きい減衰量にして可変減衰器26の経路には信号を伝達させなくし、可変減衰器24,25の減衰量を所定の小さい減衰量にして可変減衰器24,25の経路に信号を伝達させて通常状態にする。運用の送信時の位相補正量ΘがΘ=Θ2+180°+ΔΘ=Θ1+180°となる。
【0046】
このように、位相差検出/補正器23は、送信前に得た検波器27の検波電圧から、帰還ループが負帰還であるか正帰還であるかを送信に先立って検出し、正帰還であるとき位相補正量Θ1に180°を加えて送信時の位相補正量Θにする。
【0047】
可変減衰器24,25,26の操作は簡単であり、本実施形態により、電源投入の都度、可変移相器19の移相量を確定することが可能となり、歪のない直交変調信号がアンテナ13より送信される。
<発明の実施の形態2>
信号経路の切り替えをスイッチと可変減衰器を用いて行なうようにした本発明のカーテシアン型送信機の第2の実施形態を図2に示す。本実施形態では、図1の可変減衰器26の代わりにスイッチ28が用いられる。スイッチ28をONすることによりスイッチ28の経路に信号を伝達させ、スイッチ28をOFFすることによりスイッチ28の経路に信号を伝達させる。その他の構成は実施形態1と変わりがない。
【0048】
スイッチ28及び可変減衰器24,25の操作は簡単であり、本実施形態により、電源投入の都度、可変移相器の移相量を確定することが可能となり、歪のない直交変調信号がアンテナ13より送信される。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、非線形歪補償を行なう負帰還ループにフリップフロップ型0°/90°移相器を用いた場合に起こる運用時の位相の不確定が解消され、可変移相器の移相量を容易に確定することができる。運用時の移相量を確定するために行なう操作は簡単であり、実用性の高い高周波電力増幅器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る高周波電力増幅器の第1の発明の実施の形態を説明するための回路ブロック図。
【図2】本発明の第2の発明の実施の形態を説明するための回路ブロック図。
【図3】従来の高周波電力増幅器を説明するための回路ブロック図。
【図4】可変位相器を説明するための回路ブロック図。
【図5】フリップフロップ型0°/90°移相器を説明するための回路図。
【符号の説明】
1,2…信号入力端子、3,4…加算器、5,6…増幅器、7,8…変調器、9,17…0°/90°移相器、10…加算器、12…電力増幅器、14…方向性結合器、15、16…復調器、18…搬送波発振器、19…可変位相器、20…位相差検出器、21…直交変調器、22…直交復調器、23…位相差検出/補正器、24、25、26…可変減衰器、27…検波器、28…スイッチ。
Claims (3)
- 互いに直交する入力信号から互いに直交する帰還信号を同じ直交性を有する信号同士で減算する加算器と、
上記加算器の出力信号を直交変調する直交変調器と、
上記直交変調器の出力信号を電力増幅する増幅器と、
送信動作を行なわせる前に上記直交変調器の出力信号を直交復調して上記帰還信号を出力し、送信動作時に上記増幅器の出力信号を直交復調して上記帰還信号を出力する直交復調器と、
上記入力信号と上記帰還信号の間の位相差を検出する位相差検出器と、
上記位相差検出器の制御により上記帰還信号の位相を補正する可変移相器と、
上記位相差検出器に接続されると共に、送信動作を行なわせる前に上記直交変調器の出力信号を上記直交復調器に入力させた場合の上記直交変調器の出力信号を検波する検波器とを備え、
上記検波器の出力信号レベルが所定値を越えないとき、送信動作時において上記位相差検出器は、運用前に予め求めておいた上記入力信号と上記帰還信号の位相差に相当する位相量だけ上記帰還信号の位相を補正するように上記可変移相器を制御し、
上記検波器の出力信号レベルが所定値以上であるとき、送信動作時において上記位相差検出器は、運用前に予め求めておいた上記入力信号と上記帰還信号の位相差に所定の位相量を加算した位相量だけ上記帰還信号の位相を補正するように可変移相器を制御することを特徴とするカーテシアン型送信機。 - 上記直交変調器に直交変調用搬送波を供給するための第1の移相器と、上記直交復調器に直交復調用搬送波を供給するための第2の移相器とを備え、
上記第1及び第2の移相器は、それぞれフリップフロップを用いて構成されることを特徴とする請求項1に記載のカーテシアン型送信機。 - 上記直交復調器に、送信動作を行なわせる前に上記直交変調器の出力信号を供給し、送信動作時に上記増幅器の出力信号を供給する信号切替手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のカーテシアン型送信機。
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