JP3865903B2 - 薄切片作製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、理科学試料分析や生体試料の顕微鏡観察等の医療分析において用いられるミクロトーム(固形試料又はカッタナイフを希望切断厚さに対応する量だけ移動させた後、カッタナイフによって、固形試料を切断し、薄切片を作製する装置)に係り、切断工程の前に薄切片となる固形試料面に薄切補助部材を密着固定した後、薄切を行い、薄切補助部材と密着固定した薄切片を作製し、その後、前記薄切片を前記薄切補助部材から顕微鏡用スライドガラスに転写し、スライドガラスに密着固定した組織観察用薄切片を作製する方法及びそのための装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、薄切片の作製(切り出し)作業は、ミクロトームを用い作業者(人間)が行っている。固形試料には主として生体試料をパラフィン包埋したものが用いられ、これを薄切し、薄切片を作製する。この薄切片作製工程において、重要かつ、困難な作業として、切断中及び切断工程終了後の薄切片のハンドリングがある。
【0003】
以下、そのハンドリングについて、図2を参照しながら説明する。
【0004】
(1)まず、図2(a)に示すように、送り工程が終了した後の切断工程で、カッタナイフ101をA方向へ送り、検体を包埋した固形試料102の薄切を開始する。
【0005】
(2)次に、図2(b)に示すように、作業者は片手でカッタナイフ101を移動させつつ、もう一方の手でこの時生成される薄切片104の切れ始めに、水分を含ませた非常に細い筆などの治具(他に紙製の小さい短冊に水分を含ませたものや、先端を鋭利に削った木製の鉛筆状の治具などが使用される)103の先端部を接触させる。
【0006】
(3)そのままカッタナイフ101を移動させる速度と同じ速度で薄切片104に接触させた治具103を動かしながら切断を終了させることにより、図2(c)に示すように、切断終了時には一端が治具103に接触した状態の薄切片104を取り出すことができる。
【0007】
そして、取り出した薄切片104をガラス製のスライドガラス(図示なし)に載せる(一般的には取り出した薄切片のしわや縮みを伸ばす目的で、一度水面に浮かべた後スライドガラスですくい取るのであるが、どちらにしろ薄切片を、ある定まった場所へ移動させる工程が存在することに変わりはない)。
【0008】
このような困難な作業を省くために、以下に示すような方法が提案されている。
【0009】
(1)被薄切(観察)対象である検体を包埋材で包埋した固形試料またはカッタナイフを、希望する薄切片の厚さに対応する量だけ移動させ(送り工程)、
(2)前記固形試料面と前記薄切補助部材を密着固定させ(密着固定工程)、
(3)前記カッタナイフによって、前記固形試料を薄切し(薄切工程)、前記薄切補助部材と密着固定した薄切片を作製し、
(4)その後、前記薄切補助部材に密着固定した前記薄切片のみを顕微鏡用スライドガラス(以後、スライドガラスという)表面に密着固定させ、前記薄切片のみを前記スライドガラスに転写(転写工程)する。
【0010】
この転写工程について、より詳細に述べると、前記薄切片を載せるスライドガラス表面を帯電装置により、密着固定工程において薄切補助部材に供給したものと同じ極性の電荷を供給し、帯電させた後、薄切補助部材に密着固定した前記薄切片を前記スライドガラスの帯電した面上(この場合も帯電したスライドガラス面に接触させることが望ましいが、密着固定工程と同様に前記スライドガラス面と薄切補助部材に密着固定された薄切片が引き付け合うため微小間隔ならば前記スライドガラス面と前記薄切片は離れていてもよい)に移動させ、薄切補助部材の前記スライドガラス(薄切片)側と反対側に、帯電装置により、密着固定工程において薄切補助部材に供給したものと異なる極性の電荷を供給し(固形試料面に供給したものと同じ極性の電荷を供給し)、帯電させた後、薄切補助部材のみをスライドガラスから引き剥がすことにより(前記薄切片を前記薄切補助部材から前記スライドガラスに転写する方法を用いることにより)、スライドガラス上に密着固定した薄切片を作製する。
【0011】
ここで、薄切片作製方法の具体的な説明を図3〜図6を用いて行う。
【0012】
図3において、固形試料2はY方向のみに移動可能なガイド(図示なし)に拘束され、試料送り用のアクチュエータ13によりY方向への移動が可能である。カッタナイフ1、帯電装置(固形試料面帯電用電極)7、帯電装置(第1の薄切補助部材帯電用電極)8及び薄切補助部材(図3に示す例ではロール状に巻いた絶縁テープ)5用のガイド6はX方向のみに移動可能な同一のベース(図示なし)上に載っている。
【0013】
また、固形試料2と対向する位置に薄切補助部材となる絶縁テープ5、この絶縁テープ5に一定の張力を与える(Fに示す方向に張力を与える)張力発生装置としてトルクモータ12、絶縁テープ5の送り出し装置としてステッピングモータ(E+に示す方向に回転することにより絶縁テープを送り出すモータ)11を配備し、加えてスライドガラス14(14a,14b,14c,14d)を保持するスライドガラスホルダ15、帯電装置(スライドガラス帯電用電極)9、第2の帯電装置(第2の薄切補助部材帯電用電極)10を具備する。
【0014】
次に、薄切片を作製するまでを工程の順に説明する。
【0015】
(1)まず、X軸方向に移動可能な同一ベース(図示なし)上に固定されたカッタナイフ1(ガイド6)、帯電装置7、帯電装置8は、図3に示す位置にあり、固形試料2の薄切片となる面16へ、対向する場所に位置する帯電装置7によって正もしくは負の電荷を供給し(付着させ)、帯電させる(極性は正、負どちらでも構わないが、ここでは正(+)に帯電させることにする)。
【0016】
(2)次に、同一ベース(図示なし)上に固定されたカッタナイフ1(ガイド6)、帯電装置7、帯電装置8を、図4に示す位置へ移動(X−方向)する。
【0017】
(3)次に、固形試料2を、希望する薄切厚さに対応する量だけY+方向に移動し〔送り工程〕、密着固定工程に備える。
【0018】
(4)次に、固形試料2と対向する場所に薄切補助部材となる絶縁テープ5を挟んで位置する帯電装置8により、絶縁テープ5の前記固形試料面16と反対側に、既に帯電させてある固形試料面16と異なる極性の電荷(−)を供給し(付着させ)、帯電させることにより、前記固形試料面と前記絶縁テープを密着固定させる〔密着固定工程〕。
【0019】
(5)次いで、図5に示すように、カッタナイフ1をX+の方向に移動させ固形試料2を薄切する。固形試料2には前記(1)〜(4)の工程において絶縁テープ5が密着固定されているため、薄切片を絶縁テープ5上に取り出すことができる〔薄切工程〕。その後、前記絶縁テープ5上の薄切片4がスライドガラス14bに対向する位置にくるように、前記ステッピングモータ11により絶縁テープ5を送り出す。
【0020】
(6)次に、図6に示すように、帯電装置9によりスライドガラス14aの表面に、固形試料面と異なる極性の電荷(−)を供給し(付着させ)、帯電させた後、スライドガラスホルダ15をBの方向に回転させ転写工程に備える。なお、この工程を前記工程(5)と同時に行うことにより、薄切片作製のサイクルタイムを短縮し、高能率化を図ることができる。
【0021】
(7)次に、第2の帯電装置10により薄切片4が密着固定された絶縁テープ5の薄切片4と反対側に前記密着固定工程において固形試料面に供給したものと同じ極性に電荷(+)を供給し、帯電させた後、スライドガラスホルダ15をさらにBの方向に回転させることにより、薄切補助部材のみをスライドガラス14から引き剥がし、前記薄切片4を前記薄切補助部材から前記スライドガラス14に転写することができる〔転写工程〕。
【0022】
なお、前記工程(4)で述べた帯電装置8による電荷供給時にCに示す方向に絶縁テープを小さな力で固形試料面に押し付けると、密着固定の確実性が向上する。同じように工程(7)で述べた第2の帯電装置10による電荷供給時にDに示す方向に絶縁テープを小さなスライドガラス面に押し付けると、転写の確実性が向上する。
【0023】
また、印加電圧の極性を変更可能な帯電装置を使用し、かつ、図3に示すZ+方向(紙面に向かって手前方向)もしくはZ−方向(紙面奥行き方向)に帯電装置の移動機構を設ければ、帯電装置7と帯電装置8の2つの帯電装置を1つの帯電装置に変更することも可能であり、同じように第1の帯電装置9と第2の帯電装置10の2つの帯電装置を1つの帯電装置に変更することも可能である。
【0024】
しかし、前述のような帯電装置の移動機構が必要であり、加えて印加電圧の極性を変更可能な帯電装置を使用しなければならないため、装置及び制御が複雑になる(印加電圧の極性を変更することは技術的に困難ではないが、前述のように極性変更の頻度が多いと、帯電装置の寿命の面から考えると現状ではあまりよい方法とはいえない)。
【0025】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した薄切片の作製方法は、以下のような問題点があった。
【0026】
従来、被薄切(観察)対象である検体を包埋する包埋材に電気的に絶縁性のものを用いているため、前記密着固定工程前に前記固形試料面へ、帯電装置により正もしくは負の電荷を供給し(付着させ)、帯電させる必要がある。
【0027】
その後、前記固形試料の薄切片となる面上に位置するように移動した薄切補助部材の前記固形試料面と反対側に、帯電装置により、既に帯電させてある固形試料面と異なる極性の電荷を供給し(付着させ)帯電させ、前記固形試料面と前記薄切補助部材を密着固定させる。この時点で2度の帯電工程が必要となる。
【0028】
また、同様にスライドガラスも電気的に絶縁性材料であるため、転写工程前に前記薄切片を載せるスライドガラス表面を帯電装置により、密着固定工程において薄切補助部材に供給したものと同じ極性の電荷を供給し、帯電させた後、薄切補助部材に密着固定した前記薄切片を前記スライドガラスの帯電した面上に移動させ、薄切補助部材の前記スライドガラス(薄切片)側と反対側に、帯電装置により、密着固定工程において薄切補助部材に供給したものと異なる極性の電荷を供給し(固形試料面に供給したものと同じ極性の電荷を供給し)、帯電させた後、薄切補助部材のみをスライドガラスから引き剥がすことにより、前記薄切片を前記薄切補助部材から前記スライドガラスに転写する。この際にも2度の帯電工程が必要となる。
【0029】
したがって、被薄切(観察)対象である検体を包埋する包埋材に電気的に絶縁性のものを用い、かつスライドガラスも電気的に絶縁性のものを用いた場合、1枚の薄切片試料を作製する際に4度もの帯電工程が必要となる。
【0030】
前記帯電工程は一瞬にて終了するものではなく、少なくとも数秒かかり、加えて帯電装置を希望する位置に移動するのに要する移動時間等を含めると1帯電工程に要する時間が短いとは言えないのが現状である。
【0031】
本発明は、上記問題点を除去し、帯電工程を削減することにより、薄切片作製のサイクルタイムの向上を図り得る薄切片作製方法を提供することを目的とする。
【0032】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕被薄切対象である検体を包埋材で包埋した固形試料またはカッタナイフを、希望する薄切片の厚さに対応する量だけ移動し、前記固形試料の薄切片となる固形試料面と薄切補助部材が引き付け合うように静電気を作用させ、前記固形試料面と前記薄切補助部材を密着固定させ、前記カッタナイフによって前記固形試料を薄切し、前記薄切補助部材と密着固定した薄切片を作製し、その後、前記薄切補助部材に密着固定した前記薄切片のみが顕微鏡用スライドガラス表面に密着固定するように静電気力を作用させることにより、前記薄切片のみを前記スライドガラスに転写し、前記スライドガラス上に密着固定した薄切片を作製する薄切片作製方法において、前記薄切補助部材には絶縁テープを用いるとともに、薄切片を載せるスライドガラスに導電性のものを用い、前記スライドガラスに転写する転写工程において、前記薄切補助部材に密着固定した前記薄切片を前記スライドガラスの面上に移動させ、前記薄切補助部材の前記スライドガラス側と反対側に、帯電装置により密着固定工程において前記薄切補助部材に供給したものと異なる極性の電荷を供給し、帯電させた後、前記薄切補助部材のみを前記スライドガラスから引き剥がすことにより、前記薄切片を前記薄切補助部材から前記スライドガラスに転写するようにしたものである。
【0033】
〔2〕被薄切対象である検体を包埋材で包埋した固形試料またはカッタナイフを、希望する薄切片の厚さに対応する量だけ移動し、前記固形試料の薄切片となる固形試料面と薄切補助部材が引き付け合うように静電気を作用させ、前記固形試料面と前記薄切補助部材を密着固定させ、前記カッタナイフによって前記固形試料を薄切し、前記薄切補助部材と密着固定した薄切片を作製し、その後、前記薄切補助部材に密着固定した前記薄切片のみが顕微鏡用スライドガラス表面に密着固定するように静電気力を作用させることにより、前記薄切片のみを前記スライドガラスに転写し、前記スライドガラス上に密着固定した薄切片を作製する薄切片作製方法において、前記薄切補助部材には絶縁テープを用いるとともに、被薄切対象である検体を包埋する包埋材に導電性のものを用い、前記薄切補助部材の密着固定工程において、前記固形試料面上の前記薄切補助部材の前記固形試料面と反対側に、帯電装置により正もしくは負の電荷を供給し、帯電させることにより、前記固形試料面と前記薄切補助部材を密着固定させ、前記薄切片を載せるスライドガラスに導電性のものを用い、前記スライドガラスに転写する転写工程において、前記薄切補助部材に密着固定した前記薄切片を前記スライドガラスの面上に移動させ、薄切補助部材の前記スライドガラス側と反対側に、帯電装置により密着固定工程において薄切補助部材に供給したものと異なる極性の電荷を供給し、帯電させた後、前記薄切補助部材のみをスライドガラスから引き剥がすことにより、前記薄切片を前記薄切補助部材から前記スライドガラスに転写するようにしたものである。
【0034】
本発明によれば、上記のように構成したので、
従来の方法で必要であった4度の帯電工程を、被薄切(観察)対象である検体を包埋する包埋材に導電性のものを用いることにより、薄切補助部材の密着固定工程における1度の帯電工程を省略することができ、3度の帯電工程で済むようにすることができる。また、図3に示す帯電装置7が不要となり、装置の簡素化を図ることができる。さらに、固形試料面16を帯電させるために要していた時間も必要なくなるため、薄切片作製のサイクルタイム向上にもつながる。
【0035】
また、スライドガラスに導電性のものを用いることにより、スライドガラスへの転写工程における1度の帯電工程を省略することができ、3度の帯電工程で済むようにすることができる。また、図3に示される帯電装置9が不要となり、装置の簡素化を図ることができる。さらに、スライドガラス14(14a,14b,14c,14d)を帯電させるために要していた時間も必要なくなるため、薄切片作製のサイクルタイム向上にもつながる。
【0036】
さらに、前記包埋材と前記スライドガラスの両方について導電性のものを用いれば、合計2度の帯電工程を省略することが可能となり、2度の帯電工程で済むようになり、また、図3に示される帯電装置7及び9が不要になり、更なる薄切片作製のサイクルタイムの向上を図ることができる。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0038】
図1は本発明の参考例を示す薄切片作製方法の説明図である。なお、図3におけるものと同一の部分については、同じ符号を付してそれらの説明は省略する。
【0039】
〔1〕まず、本発明の参考例について説明する。
【0040】
図1に示すように、被薄切(観察)対象である検体51を包埋する包埋材52に電気的に導電性のものを用いることにより、固形試料面53を帯電させる工程、つまり、従来技術である図3に示す工程(1)か不要となる。
【0041】
薄切対象である検体51を包埋する包埋材52に導電性のものを用いるため、図3に示される帯電装置7を省略することができる。
【0042】
なお、帯電による固形試料の薄切補助部材への密着固定方法については、本願発明者によって既に提案された特願平8−91186号、特願平8−91187号などがあり、それによれば、被薄切(観察)対象である検体51を包埋する包埋材52として、一般的にはパラフィンや樹脂性コンパウンド等、電気的に絶縁物質のものが広く用いられてきた。このように包埋材が絶縁物質の場合、包埋材内を電荷が移動し難いため、固形試料面を帯電させる必要があるが、前記包埋材に導電物質を用いることにより、前記包埋材内を電荷が容易に移動可能となり、図4を用いた具体的な説明の工程(4)を省くことができる。
【0043】
したがって、従来の方法で必要であった4度の帯電工程を、被薄切(観察)対象である検体51を包埋する包埋材52に導電性のものを用いることにより、薄切補助部材の密着固定工程における1度の帯電工程を省略することができ、3度の帯電工程で済むようにすることができる。
【0044】
また、図3に示される帯電装置7が不必要となり、装置の簡素化を図ることができる。さらに、固形試料面16を帯電させるために要していた時間も必要なくなるため薄切片作製のサイクルタイムの向上にもつながる。
【0045】
なお、良好な薄切片4を絶縁テープ5上に取り出すためには、絶縁テープ5と固形試料面53の密着固定強度が大きく関係する。前記密着固定力が小さいと薄切工程において、切り出される薄切片4にしわ(縮み)や破れ等の不具合が生じるためである。参考例の方法を用いることにより(帯電に用いる印加電圧が同じ場合)、従来技術の方法よりも大きな密着固定強度を得ることができるため、装置を作製する上でも非常に有効な方法といえる。
【0046】
〔2〕次に、本発明の第1実施例について説明する。
【0047】
この実施例では、薄切片を載せるスライドガラス61に導電性のものを用いることにより、図3に示される帯電装置9を省略することができる。
【0048】
従来、スライドガラスには電気的に絶縁物質のものが広く用いられている。このようにスライドガラスが絶縁物質の場合、上記した理由により、スライドガラス14a(スライドガラス14b,14c,14dも同様)の表面を帯電させる必要があるが、前記スライドガラス14aに導電性のものを用いることにより、第2の帯電装置10により薄切片が密着固定された絶縁テープの薄切片と反対側に前記密着固定工程において、固形試料面に供給したものと同じ極性に電荷(+)を供給し、帯電させることにより、スライドガラス表面に前記帯電の極性と異なる極性の電荷(今の場合−)が移動してくるためである。
【0049】
そこで、図1に示すように、前記スライドガラスに転写する転写工程において、薄切補助部材(絶縁テープ)5に密着固定した前記薄切片4を前記スライドガラス61bの面上に移動させ、薄切補助部材(絶縁テープ)5の前記スライドガラス側と反対側に、第2の帯電装置10により、密着固定工程において薄切補助部材(絶縁テープ)5に供給したものと異なる極性の電荷を供給し、帯電させた後、薄切補助部材(絶縁テープ)5のみをスライドガラスから引き剥がすことにより、前記薄切片4を前記薄切補助部材(絶縁テープ)5から前記スライドガラス61bに転写することができる。
【0050】
このように、スライドガラスに導電性のものを用いることにより、スライドガラス61への転写工程における1度の帯電工程を省略することができ、3度の帯電工程で済むようにすることができる。
【0051】
また、図3に示される帯電装置9が不要となり、装置の簡素化を図ることができる。さらに、スライドガラス61を帯電させるために要していた時間も必要なくなるため、薄切片作製のサイクルタイムの向上にもつながる。
【0052】
なお、良好な薄切片4をスライドガラス61b上に転写するためには、絶縁テープ(薄切片)とスライドガラス61表面の密着固定強度が大きく関係する。前記密着固定力が小さいと転写工程において、薄切片4にしわ(縮み)や破れ等の不具合が生じるためである。第1実施例の方法を用いることにより(帯電に用いる印加電圧が同じ場合)、従来技術の方法よりも大きな密着固定強度を得ることができるため、装置を作製する上でも非常に有効な方法といえる。
【0053】
〔3〕本発明の第2実施例について説明する。
【0054】
この実施例では、薄切補助部材には絶縁テープ5を用いるとともに、被薄切対象である検体51を包埋する包埋材52に導電性のものを用い、かつ、薄切片を載せるスライドガラス61に導電性のものを用いるようにしたものである。
【0055】
薄切補助部材(絶縁テープ)の密着固定工程において、前記固形試料面53上の薄切補助部材(絶縁テープ)の固形試料面53と反対側に、第1の帯電装置8により、正もしくは負の電荷を供給し、帯電させることにより、前記固形試料面53と前記薄切補助部材(絶縁テープ)5を密着固定させる。
【0056】
更に、前記スライドガラスに転写する転写工程において、薄切補助部材(絶縁テープ)5に密着固定した前記薄切片4を前記スライドガラス61の面上に移動させ、薄切補助部材(絶縁テープ)5の前記スライドガラス61側と反対側に、第2の帯電装置10により、密着固定工程において薄切補助部材(絶縁テープ)5に供給したものと異なる極性の電荷を供給し、帯電させた後、薄切補助部材(絶縁テープ)5のみをスライドガラスから引き剥がすことにより、前記薄切片を前記薄切補助部材(絶縁テープ)5から前記スライドガラス61bに転写することができる。
【0057】
このように構成することにより、薄切補助部材の密着固定工程における1度の帯電工程と、スライドガラスへの転写工程における1度の帯電工程との合計2度の帯電工程を省略することが可能となり、2度の帯電工程で済むようになり、更なる薄切片作製のサイクルタイムの向上を図ることができる。
【0058】
また、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0059】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、
(1)請求項1記載の発明によれば、スライドガラスに導電性のものを用いることにより、スライドガラスへの転写工程における1度の帯電工程を省略することができ、3度の帯電工程で済むようにすることができる。
【0060】
また、スライドガラス表面を帯電させるための帯電装置が不要となり、装置の簡素化を図ることができる。さらに、スライドガラス表面を帯電させるために要していた時間も必要なくなるため、薄切片作製のサイクルタイム向上にもつながる。
【0061】
なお、良好な薄切片をスライドガラス上に転写するためには絶縁テープ(薄切片)とスライドガラス表面の密着固定強度が大きく関係する。前記密着固定力が小さいと転写工程において、薄切片にしわ(縮み)や破れ等の不具合が生じるためである。この方法を用いることにより(帯電に用いる印加電圧が同じ場合)、従来技術の方法よりも大きな密着固定強度を得ることができるため、装置を作製するうえでも有効である。
【0062】
(2)請求項2記載の発明によれば、薄切補助部材の密着固定工程における1度の帯電工程と、スライドガラスへの転写工程における1度の帯電工程との合計2度の帯電工程を省略することが可能となり、2度の帯電工程で済むようになり、更なる薄切片作製のサイクルタイムの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例を示す薄切片作製方法の説明図である。
【図2】 従来の薄切片作製方法の説明図である。
【図3】 従来の他の薄切片作製方法の説明図(その1)である。
【図4】 従来の他の薄切片作製方法の説明図(その2)である。
【図5】 従来の他の薄切片作製方法の説明図(その3)である。
【図6】 従来の他の薄切片作製方法の説明図(その4)である。
【符号の説明】
1 カッタナイフ
2 固形試料
4 薄切片
5 絶縁テープ(薄切補助部材)
6 ガイド
8 第1の帯電装置(第1の薄切補助部材帯電用電極)
10 第2の帯電装置
11 ステッピングモータ
12 トルクモータ
13 アクチュエータ
15 スライドガラスホルダ
51 検体
52 包埋材
53 固形試料面
61 スライドガラス
Claims (2)
- 被薄切対象である検体を包埋材で包埋した固形試料またはカッタナイフを、希望する薄切片の厚さに対応する量だけ移動し、前記固形試料の薄切片となる固形試料面と薄切補助部材が引き付け合うように静電気を作用させ、前記固形試料面と前記薄切補助部材を密着固定させ、前記カッタナイフによって前記固形試料を薄切し、前記薄切補助部材と密着固定した薄切片を作製し、その後、前記薄切補助部材に密着固定した前記薄切片のみが顕微鏡用スライドガラス表面に密着固定するように静電気力を作用させることにより、前記薄切片のみを前記スライドガラスに転写し、前記スライドガラス上に密着固定した薄切片を作製する薄切片作製方法において、
(a)前記薄切補助部材には絶縁テープを用いるとともに、薄切片を載せるスライドガラスに導電性のものを用い、
(b)前記スライドガラスに転写する転写工程において、前記薄切補助部材に密着固定した前記薄切片を前記スライドガラスの面上に移動させ、前記薄切補助部材の前記スライドガラス側と反対側に、帯電装置により密着固定工程において前記薄切補助部材に供給したものと異なる極性の電荷を供給し、帯電させた後、前記薄切補助部材のみを前記スライドガラスから引き剥がすことにより、前記薄切片を前記薄切補助部材から前記スライドガラスに転写することを特徴とする薄切片作製方法。 - 被薄切対象である検体を包埋材で包埋した固形試料またはカッタナイフを、希望する薄切片の厚さに対応する量だけ移動し、前記固形試料の薄切片となる固形試料面と薄切補助部材が引き付け合うように静電気を作用させ、前記固形試料面と前記薄切補助部材を密着固定させ、前記カッタナイフによって前記固形試料を薄切し、前記薄切補助部材と密着固定した薄切片を作製し、その後、前記薄切補助部材に密着固定した前記薄切片のみが顕微鏡用スライドガラス表面に密着固定するように静電気力を作用させることにより、前記薄切片のみを前記スライドガラスに転写し、前記スライドガラス上に密着固定した薄切片を作製する薄切片作製方法において、
(a)前記薄切補助部材には絶縁テープを用いるとともに、被薄切対象である検体を包埋する包埋材に導電性のものを用い、
(b)前記薄切補助部材の密着固定工程において、前記固形試料面上の前記薄切補助部材の前記固形試料面と反対側に、帯電装置により正もしくは負の電荷を供給し、帯電させることにより、前記固形試料面と前記薄切補助部材を密着固定させ、
(c)前記薄切片を載せるスライドガラスに導電性のものを用い、
(d)前記スライドガラスに転写する転写工程において、前記薄切補助部材に密着固定した前記薄切片を前記スライドガラスの面上に移動させ、薄切補助部材の前記スライドガラス側と反対側に、帯電装置により密着固定工程において薄切補助部材に供給したものと異なる極性の電荷を供給し、帯電させた後、前記薄切補助部材のみを前記スライドガラスから引き剥がすことにより、前記薄切片を前記薄切補助部材から前記スライドガラスに転写することを特徴とする薄切片作製方法。
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