JP5822362B2 - 電子顕微鏡用包埋樹脂組成物及び当該組成物を用いた電子顕微鏡による試料の観察方法 - Google Patents
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Description
特許文献1には、観察用試料を包埋剤にて包埋し、ミクロトーム等により薄切し調製する方法が記載されている。包埋剤としてはエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等が用いられているが、いずれも絶縁物である。そのため、電子顕微鏡での観察時に帯電し対象物の観察が困難となったり、電子顕微鏡内での放電現象により検出器を傷めるといった問題がある。この問題は特にSEMにて絶縁物を観察する時に問題となる。
SEMでの観察時の帯電に対し、観察方法を工夫する方法が従来用いられてきた。例えば入射電子と放出電子のバランスがある特定角度条件のもとでの観察や、低真空条件での観察や、あるいは低電流条件での観察等が従来行われてきたが、観察可能な範囲が狭く、十分なコントラストや分解能が得られず、元素分析が行えないといった問題がある。
また、特許文献2には、エポキシ樹脂に、アルカリ金属塩とポリエーテル系高分子を添加することで、帯電防止能を有するエポキシ樹脂組成物が記載されている。しかし当該組成物は機械的強度が十分ではないため、包埋性能、薄切性等の包埋剤としての性能を満足しない。
[1]イオン液体と、
エポキシ系樹脂、メタクリル酸樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂からなる包埋剤を含み、
帯電防止能を有する電子顕微鏡用包埋樹脂組成物。
[2]イオン液体が式(I)
R1、R2、R3及びR4の少なくとも一つが、アルケニル基、アルカジエン基、アルカトリエン基又はエポキシ基を含む基であり、
R1、R2、R3及びR4が互いに結合し環を形成してもよい。)
で表される第4級アンモニウム化合物及び
BF4 −、PF6 −、(CF3SO2)2N−、ハロゲン化物イオン、カルボン酸の共役塩基、スルホン酸の共役塩基及び無機酸の共役塩基からなる群より選択されるアニオンからなる[1]に記載の組成物。
[3]R1が、エポキシ基、グリシジル基又は炭素数2〜10のアルケニル基である[2]に記載の組成物。
[4]R2、R3及びR4がそれぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基である[2]又は[3]に記載の組成物。
[5]第4級アンモニウム化合物がモノマー若しくはオリゴマー又はこれらの混合物である[2]〜[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]アニオンが(CF3SO2)2N−である[2]〜[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]イオン液体の添加量が、組成物全体に対し5〜35体積%である[1]〜[6]のいずれかに記載の組成物。
[8][1]〜[7]のいずれかに記載の組成物を用いて試料を包埋する包埋工程を有する電子顕微鏡による試料の観察方法。
[9]試料を染色する染色工程を有し、
染色工程の後に包埋工程を行う[8]に記載の観察方法。
[10]電子顕微鏡が走査型電子顕微鏡である[8]又は[9]に記載の観察方法。
[11]試料が生体試料である[8]〜[10]のいずれかに記載の観察方法。
[12]生体試料が植物又は動物の細胞又は組織である[11]に記載の観察方法。
[13]試料が非生体試料である[8]〜[10]のいずれかに記載の観察方法。
[14]非生体試料が樹脂、ゴム、合成樹脂、顔料、塗料、化粧品、医薬品、セラミック、磁性体、磁気材料、半導体、金属、金属酸化物、鉱物、有機塩又は無機塩である[13]に記載の観察方法。
[15]試料が粉体である[8]〜[14]のいずれかに記載の観察方法。
本発明に用いるイオン液体とは、常温下で液体状態を示す塩をいう。
本発明に用いるイオン液体におけるカチオンは、イオン液体を構成するものであれば特に限定されず、例えばイミダゾリウム、ピリジウム、ピロリジニウム、第4級ホスホニウム、第4級アンモニウム化合物等を用いることができる。これらのカチオンは1種を単独又は2種以上を混合して用いてもよい。
ピリジニウムとしては、例えば1−エチルピリジニウム、1−ブチルピリジニウム、1−ブチル−4−メチルピリジニウム、1−エチル−3−メチルピリジニウム、1−エチル−3−(ヒドロキシメチル)ピリジニウム等が挙げられる。
ピロリジニウムとしては、例えばN−メチル−N−プロピルピロリジニウム、N−メチル−N−ブチルピロリジニウム等が挙げられる。
第4級ホスホニウムとしては、例えばトリブチルラウリルホスホニウム、トリブチルミリスチルホスホニウム、トリブチルセチルホスホニウム、トリブチルステアリルホスホニウム、トリフェニルラウリルホスホニウム、トリフェニルミリスチルホスホニウム、トリフェニルセチルホスホニウム、トリフェニルステアリルホスホニウム、ベンジルジメチルラウリルホスホニウム、ベンジルジメチルミリスチルホスホニウム、ベンジルジメチルセチルホスホニウム、ベンジルジメチルステアリルホスホニウム等が挙げられる。
第4級アンモニウム化合物としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウム;トリアゾリウム、ピリダジニウム、チアゾリウム、オキサゾリウム、ピリミジニウム、ピラジニウム等が挙げられる。
R1、R2、R3及びR4の少なくとも一つが、アルケニル基、アルカジエン基、アルカトリエン基又はエポキシ基を含む基であり、
R1、R2、R3及びR4が互いに結合し環を形成してもよい。)
で表される第4級アンモニウム化合物であることがより好ましい。
R1、R2、R3及びR4で表されるアルキニル基としては、直鎖状でも分岐状でもよい、例えば炭素数2〜15、好ましくは炭素数2〜10、より好ましくは炭素数2〜6のアルキニル基が挙げられ、具体的にはエチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、3−ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基等が挙げられる。
R1、R2、R3及びR4で表されるアルケニル基としては、直鎖状でも分岐状でもよい、例えば炭素数2〜15、好ましくは炭素数2〜10、より好ましくは炭素数2〜6のアルケニル基が挙げられ、具体的にはビニル基、1−プロペニル基、アリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、イソプロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基等が挙げられる。
R1、R2、R3及びR4で表されるアルカジエン基としては、直鎖状でも分岐状でもよい、例えば炭素数3〜15、好ましくは炭素数4〜10のアルカジエン基が挙げられ、具体的にはブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン等が挙げられる。
R1、R2、R3及びR4で表されるアルカトリエン基としては、直鎖状でも分岐状でもよい、例えば炭素数4〜15、好ましくは炭素数6〜12のアルカトリエン基が挙げられ、具体的にはヘキサトリエン、ヘプタトリエン、オクタトリエン等が挙げられる。
R1、R2、R3及びR4で表される脂肪族複素環基としては、例えば炭素数2〜14で、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子等の異種原子を含んでいる、5〜8員、好ましくは5又は6員の単環の脂肪族複素環基、多環又は縮合環の脂肪族複素環基が挙げられる。脂肪族複素環基としては、例えばピロリジル−2−オン基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチエニル基等が挙げられる。
置換基としてのアルキニル基としては、直鎖状でも分岐状でもよい、例えば炭素数2〜15、好ましくは炭素数2〜10、より好ましくは炭素数2〜6のアルキニル基が挙げられる。具体的には、上記R1、R2、R3及びR4としてのアルキニル基と同じである。
置換基としてのアルケニル基としては、直鎖状でも分岐状でもよい、例えば炭素数2〜15、好ましくは炭素数2〜10、より好ましくは炭素数2〜6のアルケニル基が挙げられ、具体的には、上記R1、R2、R3及びR4としてのアルケニル基と同じである。
置換基としてのアルカジエン基としては、直鎖状でも分岐状でもよい、例えば炭素数3〜15、好ましくは炭素数4〜10のアルカジエン基が挙げられ、具体的には上記R1、R2、R3及びR4としてのアルカジエン基と同じである。
置換基としてのアルカトリエン基としては、直鎖状でも分岐状でもよい、例えば炭素数4〜15、好ましくは炭素数6〜12のアルカトリエン基が挙げられ、具体的には上記R1、R2、R3及びR4としてのアルカトリエン基と同じである。
置換基としての脂肪族複素環基としては、例えば炭素数2〜14で、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる、5〜8員、好ましくは5又は6員の単環の脂肪族複素環基、多環又は縮合環の脂肪族複素環基が挙げられる。具体的には、上記R1、R2、R3及びR4としての脂肪族複素環基と同じである。
置換基としてのアリールオキシ基としては、例えば炭素数6〜14のアリールオキシ基が挙げられ、具体的にはフェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、ナフトキシ基、アントリルオキシ基等が挙げられる。
置換基としてのアラルキル基としては、上記アルキル基の少なくとも1個の水素原子が上記アリール基で置換された基が挙げられ、具体的には炭素数7〜18のアラルキル基が挙げられ、具体的にはベンジル基、フェネチル基、1−フェニルプロピル基、3−ナフチルプロピル基、ジフェニルメチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、2,2−ジフェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基、5−フェニルペンチル基等が挙げられる。
置換基としての芳香族複素環基としては、例えば炭素数2〜15で、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等の異種原子を含んでいる、5〜8員、好ましくは5又は6員の単環式ヘテロアリール基、多環式又は縮合環式のヘテロアリール基が挙げられる。5又は6員の単環式ヘテロアリール基、多環式又は縮合環式のヘテロアリール基としては、例えばフリル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、ピリダジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、フタラジル基、キナゾリル基、ナフチリジル基、シンノリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基等が挙げられる。
置換基としてのアルキレンジオキシ基としては、例えば炭素数1〜3のアルキレンジオキシ基が挙げられ、具体的にはメチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基、トリメチレンジオキシ基、プロピレンジオキシ基、イソプロピリデンジオキシ基等が挙げられる。
置換基としてのアラルキルオキシ基としては、例えば炭素数7〜12のアラルキルオキシ基が挙げられ、具体的には、ベンジルオキシ基、1−フェニルエトキシ基、2−フェニルエトキシ基、1−フェニルプロポキシ基、2−フェニルプロポキシ基、3−フェニルプロポキシ基、1−フェニルブトキシ基、3−フェニルブトキシ基、4−フェニルブトキシ基、1−フェニルペンチルオキシ基、2−フェニルペンチルオキシ基、3−フェニルペンチルオキシ基、4−フェニルペンチルオキシ基、5−フェニルペンチルオキシ基、1−フェニルヘキシルオキシ基、2−フェニルヘキシルオキシ基、3−フェニルヘキシルオキシ基、4−フェニルヘキシルオキシ基、5−フェニルヘキシルオキシ基、6−フェニルヘキシルオキシ基等が挙げられる。
置換基としてのヘテロアリールオキシ基としては、例えば、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等の異種原子を含んでいる、炭素数2〜14のヘテロアリールオキシ基が挙げられ、具体的には、2−ピリジルオキシ基、2−ピラジルオキシ基、2−ピリミジルオキシ基、2−キノリルオキシ基等が挙げられる。
ヘテロアリールチオ基としては、例えば異種原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等の異種原子を含んでいる、炭素数2〜14のヘテロアリールチオ基が挙げられ、具体的には、例えば2−ピリジルチオ基、4−ピリジルチオ基、2−ベンズイミダゾリルチオ基、2−ベンズオキサゾリルチオ基、2−ベンズチアゾリルチオ基等が挙げられる。
アルキル基で置換されたアミノ基、即ちアルキル基置換アミノ基としては、例えばN−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジイソプロピルアミノ基、N−シクロヘキシルアミノ基等のモノ又はジアルキルアミノ基が挙げられる。
アリール基で置換されたアミノ基、即ちアリール基置換アミノ基としては、例えばN−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジトリルアミノ基、N−ナフチルアミノ基、N−ナフチル−N−フェニルアミノ基等のモノ又はジアリールアミノ基が挙げられる。
アラルキル基で置換されたアミノ基、即ちアラルキル基置換アミノ基としては、例えばN−ベンジルアミノ基、N,N−ジベンジルアミノ基等のモノ又はジアラルキルアミノ基が挙げられる。
上記置換基は一又は二以上の水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
エポキシ基を含む基としては、例えばエポキシ基、グリシジル基等が挙げられるが、反応性の観点よりグリシジル基が好ましい。
アルケニル基、アルカジエン基、アルカトリエン基としては、上記R1、R2、R3及びR4としてのアルケニル基と同じものが挙げられる。
R1で表される炭素数2〜10のアルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、イソプロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基等が挙げられる。
R1は、反応性の観点よりグリシジル基又は炭素数1〜6のアルケニル基であることが特に好ましい。
本発明に用いるイオン液体におけるアニオンは、イオン液体を構成するルイス酸の共役塩基であれば特に限定されないが、BF4 −、PF6 −、(CF3SO2)2N−、ハロゲン化物イオン、カルボン酸の共役塩基、スルホン酸の共役塩基又は無機酸の共役塩基が好ましい。中でも、融点が低い点及び耐熱性が高い点より、BF4 −、PF6 −又は(CF3SO2)2N−がより好ましく、(CF3SO2)2N−が特に好ましい。
本発明に用いるイオン液体は、上記カチオン及びアニオンの混合物であれば特に限定されない。イオン液体としては、グリシジルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、エチルグリシジルジメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ジエチルグリシジルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルグリシジルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが好ましく、グリシジルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが特に好ましい。
イオン液体は公知の方法により製造され、例えばカチオンとアニオンを混合する等の方法により製造することができる。
イオン液体の添加量としては、組成物全体に対し1〜50体積%であればよく、5〜35体積%であることが好ましく、7.5〜25体積%であることがより好ましく、10〜20体積%であることが特に好ましい。
本発明に用いる包埋剤は、エポキシ系樹脂、メタクリル酸樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂からなる。本発明に用いる包埋剤は、重合反応を行ったエポキシ系樹脂、メタクリル酸樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂を用いてもよいし、重合反応を行う前のエポキシ系樹脂、メタクリル酸樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂を用いてもよい。
本発明に用いる包埋剤は、強度、包埋性能、薄切性の観点より、エポキシ系樹脂を含むことが好ましい。
エポキシ系樹脂、メタクリル酸樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂の添加量は、組成物全体に対して50〜99体積%であればよく、65〜95体積%であることが好ましく、75〜92.5体積%であることがより好ましく、80〜90体積%であることが特に好ましい。
エポキシ系樹脂は、例えばモノマー、重合開始剤、硬化剤等を混合することで調製できる。
エポキシ系樹脂に用いるモノマーとしては特に限定されず、脂肪族エポキシモノマー、芳香族エポキシモノマーのいずれを用いてもよい。また、各モノマーは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
脂肪族系エポキシモノマーとしては、例えば3,4−エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチルカルボキシレート、ダイマー酸グリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロビスフェノールAジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、トリグリジシルイソシアヌレート、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルヘキサン、ジペンタエリスリトールヘキサグリシジルエーテル等が挙げられる。
芳香族モノマーとしては、例えばビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型、ノボラック型、ビフェニル型、グリシジルエーテル型、グリシジルアミン型のエポキシモノマー等が挙げられる。
エポキシ系樹脂に用いるモノマーは市販品を用いてもよいし、公知の方法により製造してもよい。エポキシ系樹脂に用いるモノマーの市販品としては、例えばアラルダイトCY−212、Epon812、Epok812(以上ABBA社製)等が挙げられる。
メタクリル酸樹脂は、例えばモノマー、重合開始剤、硬化剤等を混合することで調製できる。
メタクリル酸樹脂に用いるモノマーとしては特に限定されないが、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸エステル及びスチレンモノマーを混合して用いることが好ましい。
ポリエステル樹脂は、例えばモノマー、重合開始剤、硬化剤等を混合することで調製できる。
不飽和ポリエステル樹脂に用いるモノマーとしては特に限定されないが、リゴラック(商品名)及びスチレンモノマーを混合して用いることが好ましい。
本発明に用いるエポキシ樹脂からなる包埋剤は、硬化剤を含むことが好ましい。硬化剤としては特に限定されず、カルボン酸無水物、アミン類、硫黄含有化合物、ジシアンジアミド、有機ヒドラジッド類等が挙げられる。硬化剤は1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用しても良い。
脂肪族カルボン酸無水物としては、無水酢酸、無水マレイン酸、プロピオン酸無水物、コハク酸無水物、アセチルコハク酸無水物、3−ドデセニル無水コハク酸(DDSA)、アジピン酸無水物、アゼライン酸無水物、シトラリンゴ酸無水物、マロン酸無水物、グルタル酸無水物、クエン酸無水物、酒石酸無水物、オキソグルタル酸無水物、ピメリン酸無水物、セバシン酸無水物、イタコン酸無水物、スベリン酸無水物、ジグリコール酸無水物等が挙げられる。
環状脂肪族カルボン酸無水物としては、例えばヘキサヒドロフタル酸無水物、シクロブタンジカルボン酸無水物、シクロペンタンジカルボン酸無水物、ノルボルナンジカルボン酸無水物、ヘキサヒドロトリメリット酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、クロレンド酸無水物、メチルヘキサヒドロナジック酸無水物等が挙げられる。
芳香族カルボン酸無水物としては、無水フタル酸、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、メロファン酸無水物、ナフタル酸無水物等が挙げられる。
上記カルボン酸無水物は、いずれの水素原子又は炭化水素基が置換基で置換されていてもよい。
硫黄含有化合物としては、ポリスルフィド、ポリメルカプタン等が挙げられる。
ジシアンジアミドとしては、例えば油化シェルエポキシ社製のDICY−7等が挙げられる。
有機ヒドラジッド類としては、例えばアジピン酸ヒドラジッド、フタル酸ヒドラジッド7,11−オクタデカジエン−1,18−カルボヒドラジッド、ビスフェノールAエーテルジカルボン酸ヒドラジッド等が挙げられる。
本発明に用いる包埋剤は、発明の効果を妨げない範囲で、反応促進剤、重合開始剤、着色顔料、フィラー、繊維、各種添加剤、溶剤、反応性希釈剤等を添加することができる。
本発明に用いるエポキシ樹脂からなる包埋剤包埋剤は、例えばトリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン(BDMA)、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−10)、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチルフェノール)(DMP−30)等の3級アミン類、トリフェニルフォスフィン等の反応促進剤を含むことが好ましい。
本発明に用いるメタクリル酸樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂からなる包埋剤は、重合開始剤を含むことが好ましい。重合開始剤としては特に限定されず、熱重合開始剤を用いても光重合開始剤を用いてもよい。
光重合開始剤としては、例えばアルキルフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド系、チタノセン系等のラジカル反応開始剤が挙げられる。
熱重合開始剤としては、例えば過酸化ベンゾイル(BPO)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のラジカル反応開始剤が挙げられる。
光重合開始剤としては、カチオン型重合開始剤が挙げられ、例えばジアゾニウム、スルホニウム塩、ヨードニウム、オキソニウム等のカチオンとPF6 −、SbF6 −、(C6F5)4B−、BF4 −等のアニオンからなる塩等が挙げられる。
本発明の電子顕微鏡用包埋樹脂組成物は、イオン液体と、エポキシ系樹脂、メタクリル酸樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂からなる包埋剤を混合することにより得られる。
本明細書において、「電子顕微鏡用包埋樹脂組成物」とは包埋に供する液状、ペースト状又はスラリー状の組成物をいう。電子顕微鏡用包埋樹脂組成物は、硬化を行う前のものが好ましい。
本発明の電子顕微鏡用包埋樹脂組成物は、イオン液体と、エポキシ系樹脂、メタクリル酸樹脂又は不飽和ポリエステル樹脂からなる包埋剤を混合し、試料を包埋した後に重合及び硬化を行うことが好ましい。組成物の重合は、例えば光の照射もしくは、40〜80℃にて24〜96時間加熱する等により行うことができる。また、組成物の硬化は、例えば常温〜100℃にて24〜96時間加熱する等により行うことができる。
(帯電防止能)
本発明の電子顕微鏡用包埋樹脂組成物は、帯電防止能を有する。本発明の電子顕微鏡用包埋樹脂組成物は、帯電防止能を有することにより、試料表面の帯電を防止し、試料を詳細に観察することができるため、十分な分解能を発揮することができる。
本発明の電子顕微鏡用包埋樹脂組成物の帯電防止能は、組成物の表面抵抗値において1.0×1015Ω/□以下であればよく、1.0×1014Ω/□以下であることが好ましく、7.5×1013Ω/□以下であることが特に好ましい。表面抵抗値が上記範囲にあることにより、試料表面の帯電を効率的に防止し、様々な非導電性試料を詳細に観察することができる。また、十分な分解能を発揮することができる。
帯電防止能は、試料を走査型電子顕微鏡で撮影し、画像に帯電が見られず、画像不良や歪みが見られないことが好ましい。
本発明の電子顕微鏡用包埋樹脂組成物は、薄切性、包埋性能等の包埋樹脂組成物として要求される一般的性能を満たす。
なお、包埋性能とは、試料を電子顕微鏡にて撮影した際に十分な画像が得られることをいう。また、薄切性とは、試料を包埋した際に、十分な薄さに薄切できることをいう。
本発明の電子顕微鏡用包埋樹脂組成物は、電子顕微鏡による試料観察時の包埋処理に用いることができる。
包埋する試料は、後述する包埋工程に用いることができれば特に限定されず、生体試料、非生体試料のいずれであってもよい。
生体試料は、動物又は植物の細胞又は組織であることが好ましい。
植物としては、例えば原核生物、原生生物、菌類、藻類、陸上植物等が挙げられる。
原核生物としては、例えば大腸菌、乳酸菌、肺炎双球菌、亜硝酸菌、硝酸菌、硫黄細菌等の細菌類;緑色硫黄細菌、紅色硫黄細菌、ユレモ、ネンジュモ等のラン藻類;等が挙げられる。
原生生物としては、例えば原生動物、単細胞藻類等が挙げられる。原生動物としては、例えばアメーバ等の根足虫類;ゾウリムシ等の繊毛虫類;トリパノゾーマ等のべん毛虫類;マラリア病原菌等の胞子虫類等が挙げられる。単細胞藻類としては、例えばミドリムシ、トックリヒゲムシ等のミドリムシ類;ツノモ、ヤコウチュウ等の渦ベン毛藻類;ハネケイソウ、フナガタケイソウ等のケイ藻類;等が挙げられる。
菌類としては、例えば粘菌類、真菌類等が挙げられる。粘菌類としては、例えばムラサキホコリカビ、ケホコリカビ等の変形菌類;タマホコリカビ、アクラシス等の細胞性粘菌類;等が挙げられる。真菌類としては、例えばミズカビ、ワタカビ、フハイカビ等の卵菌類;クモノスカビ、ケカビ、トリモチカビ等の接合菌類;コウジカビ、アオカビ、アカパンカビ、チャワンタケ、酵母菌等の子のう菌類;マツタケ、シイタケ、キクラゲ、エノキダケ等の担子菌類;等が挙げられる。
藻類としては、例えばアサクサノリ、テングサ、フノリ、トサカノリ、カワモズク等の紅藻類;コンブ、ワカメ、ヒジキ、モズク、ホンダワラ、ウミウチワ等の褐藻類;ボルボックス、クラミドモナス、クロレラ、アオサ、カサノリ等の緑藻類;シャジクモ、フラスコモ等のシャジクモ類;等が挙げられる。
陸上植物としては、例えばゼニゴケ、シャゴケ、スギゴケ、ミズゴケ等のコケ植物;マツバラン、ヒカゲノカズラ、スギナ、トクサ、ワラビ、ゼンマイ等のシダ植物;ソテツ、イチョウ、アカマツ、スギ、ヒノキ等の裸子植物;イネ、ヤシ、ラン等の被子植物;等が挙げられる。
海綿動物としては、例えばクロイソカイメン、ムラサキカイメン、カイロウドウケツ等が挙げられる。校長動物としては、例えばイソギンチャク、サンゴ、ヒドラ等が挙げられる。へん形動物としては、例えばプラナリア、サナダムシ、コウガイビル等が挙げられる。袋形動物としては、センチュウ、カイチュウ、ギョウチュウ、ハリガネムシ等の線形動物;ツボワムシ、ネズミワムシ、ヒルガタワムシ等の輪形動物;等が挙げられる。
環形動物としては、例えばミミズ、イドミミズ、ゴカイ、ケヤリ、ヒル等が挙げられる。軟体動物としては、例えばハマグリ、シジミ等のおの足類;サザエ、マイマイ等の腹足類;タコ、イカ等の頭足類;等が挙げられる。節足動物としては、例えばミジンコ、エビ、カニ等の甲殻類;オオムカゲ、ゲジ等のムカデ類;ジョロウグモ、ダニ等のクモ類;バッタ、カブトムシ等の昆虫類;等が挙げられる。毛がく動物としては、例えばオオヤムシ等が挙げられる。きょく皮動物としては、例えばウミユリ、ウミシダ、ナマコ、ウニ、ヒトデ等が挙げられる。
脊椎動物としては、例えばホヤ、ウミタル、ナメクジウオ等の原索動物;ヤツメウナギ等の無がく類;サメ、エイ等の軟骨魚類;コイ、サンマ等の硬骨魚類;カエル、イモリ等の両生類;トカゲ、カメ、ヘビ等のは虫類;ハト、ツバメ、キジ、スズメ、ニワトリ等の鳥類;ヒト、サル、ライオン、クジラ、ラット、ウシ、ウマ、ヒツジ等のほ乳類;等が挙げられる。
動物の細胞又は組織としては、例えば皮膚の表皮、毛、つめ、消化管内壁、毛細血管、だ液腺等の上皮組織;皮膚の真皮、腱、血液、軟骨、骨、脂肪等の結合組織;横紋筋、平滑筋、心筋等の筋組織;ニューロン等の神経組織;等又はその細胞が挙げられる。
また、動物の細胞又は組織としては、例えば口腔、だ液腺、食道、胃、膵臓、胆嚢、肝臓、十二指腸、小腸、大腸、虫垂、直腸等の消化系器官;心臓、大動脈、下大静脈、上腕動脈、上腕静脈、頸動脈、頸静脈、鎖骨下動脈、鎖骨下静脈等の循環系器官;気管、気管支、肺等の呼吸系器官;腎臓、輸尿管、膀胱等の排出系器官、脳、脊髄、末梢神経等の神経系器官;頭蓋骨、脊柱、骨盤、大腿骨、肩胛骨等の骨格系器官;大胸筋、上腕二頭筋、前頭筋等の筋肉系器官;生殖腺、輸卵管、輸精管、子宮、胎盤等の生殖系器官;脳下垂体、甲状腺、副甲状腺、副腎、膵臓、生殖腺等の内分泌系器官;目、耳、鼻、舌、皮膚等の感覚系器官;等の器官の細胞又は組織が挙げられる。
植物の細胞又は組織としては、例えば皮膚組織、機械組織、吸収組織、同化組織、通道組織、貯蔵組織、通気組織、分泌組織等又はその細胞が挙げられる。
また、植物の細胞又は組織としては、例えば根、茎、葉、種子、花等の器官の細胞又は組織が挙げられる。
非生体試料は、有機物であってもよいし、無機物であってもよい。非生体試料は、自然界に存在するものであってもよいし、人工的に合成したものであってもよい。非生体試料としては、例えば樹脂、ゴム、合成樹脂、顔料、塗料、化粧品、医薬品、セラミック、磁性体、磁気材料、半導体、金属、金属酸化物、鉱物、有機塩又は無機塩等が挙げられる。
試料の大きさは特に限定されず、粉体であってもよい。粉体としては、例えば小麦粉、コーヒー、塩、砂糖、デンプン、香辛料、調味料等の食品;顆粒、化粧品、粉薬等の医薬品;アルミナ、酸化鉄、酸化錫等の金属酸化物;金属、飼料、洗剤、化粧品、顔料、粉体塗料、カーボントナー、磁性体、磁気材料、セメント、ガラス、研磨剤、砂、半導体、セラミックス、鉱物、焼結体、火薬等が挙げられる。
(包埋工程)
本発明の電子顕微鏡による試料の観察方法は、上記電子顕微鏡用包埋樹脂組成物を用いて試料を包埋する包埋工程を有する。
包埋工程は、上記組成物を用いる以外は公知の方法またはこれに準ずる方法により行うことができる。包埋工程としては、例えば観察試料を本発明の電子顕微鏡用包埋樹脂組成物に埋め込むこと等が挙げられる。上記工程において、観察試料としては例えば生体試料、非生体試料、粉体試料等の非導電性試料を用いることができる。含水試料の場合は、例えばアルコールもしくはアセトン上昇系列等を用い脱水した後に包埋することができる。例えば非生体試料、粉体試料等の水を含まない試料の場合は、樹脂にそのまま、または混和することで包埋ができる。なお生体試料を用いる場合、予め試料をグルタールアルデヒド等で固定した後に観察部分を切り出したもの等を用いることができる。
本発明の電子顕微鏡による試料の観察方法は、上記電子顕微鏡用包埋樹脂組成物が帯電防止能を有することにより、試料の表面構造を十分に観察することができる、また上記電子顕微鏡用包埋樹脂組成物は包埋樹脂組成物として十分な性能を有するため、様々な試料の包埋に用いることができる。
本発明の電子顕微鏡による試料の観察方法は、無染色試料を用いて観察することができる。試料に染色を行わないことで、試料自身の元素組成を反映したコントラストを得ることができる。
本発明の電子顕微鏡による試料の観察方法は、試料を染色する染色工程を有することができる。染色工程を有することで、表面構造または内部構造を詳細に観察できる。染色工程は、生体試料、非生体試料のいずれに対しても行うことができる。
染色は公知の方法により行うことができ、例えば1)en bloc染色法:オスミウム酸単独、もしくはタンニン酸−オスミウム酸染色(TaO法)、フェロシアン化カリ−オスミウム酸−チオカルボハイドラザイド−オスミウム酸重染色(OTO法)の後、酢酸ウラニル染色、鉛染色(Walton法)、リンタングステン酸染色、過マンガン酸カリ染色等の追加染色をおこなう、や2)観察面作成後の試料表面からの酢酸ウラニル溶液にて直接染色する、等の方法を用いることができる。
上記染色工程は包埋工程の前に行ってもよいし、包埋工程の後に行ってもよいが、染色工程の後に包埋工程を行うことが好ましい。予め試料を染色しておくことにより、使用する樹脂によらず十分な染色が行えるからである。
本発明の電子顕微鏡による試料の観察方法は、さらに試料を薄切もしくは表面を露出する手技を有することが好ましい。薄切工程は、ウルトラミクロトームや研磨装置等の公知の装置を用いて行うことができる。薄切工程において、試料は50nm〜100nmに薄切することが好ましい。表面露出はダイヤモンドナイフを用いたウルトラミクロトームを用いるか、収束イオンビーム装置(FIB)、イオン研磨装置、精密機械研磨装置によって行い、得られた表面を走査型電子顕微鏡で観察できる。
薄切にはミクロトーム(ライヘルト社(現ライカ社)製の「UltracutE」)を用いた。
用いた試薬は、特記あるものを除き市販品を用いた。
重合性は、組成物が重合した場合を良好とした。
薄切性は、組成物を用いて試料を包埋した場合に、試料を50nmに薄切できた場合を良好とした。
包埋性能は、試料をSEM(走査型電子顕微鏡)で撮影し、イオン液体を含まない組成物を包埋剤として用いた場合と遜色ない画像が得られた場合を良好とした。
生体試料の観察において、帯電防止能は、表面抵抗が1.0×1015以下の場合を良好とした。また、非生体試料の観察において、帯電防止能は、試料を走査型電子顕微鏡で撮影し、画像に帯電が見られず、画像不良や歪みが見られない場合を良好とした。
(実施例1)
(エポキシ系樹脂の調製)
Luftの処方(6:4)に従い、エポキシ系樹脂を調製した。TABB社製のEPON812樹脂キットを用いた。エポキシモノマーとしてShell Chemical社製のEPON812を4.7ml、硬化剤として無水メチルナディック酸(MNA)を2.8ml及び無水ドデセニールコハク酸(DDSA)を2.5ml混合した。これに重合促進剤として2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−30)を0.15ml加え、ペースト状のエポキシ系樹脂を得た。
上記エポキシ系樹脂を4.00ml、イオン液体としてN−グリシジルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(日本カーリット社製、以下「GTA−TFSI」ともいう。)を1.00ml混合し、ペースト状の電子顕微鏡用包埋樹脂組成物を得た。
観察試料としてラットの肝組織を用いた。2%グルタールアルデヒド+2.5%フォルムアルデヒド液にて固定後、切り出しを行った肝臓組織試料を2%オスミウム酸、1%フェロシアンカリウム溶液にて後固定後、1%酢酸ウラニル水溶液にてen bloc染色を行った。
その後、観察試料と包埋樹脂組成物を混和し、型に流し込んだ。これを加熱し、63〜65℃にて48時間加熱し、包埋樹脂組成物の重合及び硬化を行った。硬化した包埋樹脂脂組成物をダイヤモンドナイフ及びウルトラミクロトームにて薄切・切削し、平滑面が形成されたSEM観察用の包埋樹脂組成物を作成した。その組成物を銀ペーストにてSEM試料台に固定し、表面に導電コーティング等の処理は行なわず、組成物の平滑面をSEMにて観察した。
エポキシ系樹脂の添加量を4.50ml、GTA−TFSIの添加量を0.50mlとした以外は実施例1と同様に実験を行った。
エポキシ系樹脂の添加量を4.75ml、GTA−TFSIの添加量を0.25mlとした以外は実施例1と同様に実験を行った。
エポキシ系樹脂の添加量を5.00ml、GTA−TFSIの添加量を0mlとした以外は実施例1と同様に実験を行った。
実施例1〜3及び比較例1の結果を表1に示す。
実施例1〜3の包埋樹脂組成物は、薄切性、包埋性能という包埋樹脂組成物の基本性能を保ちつつ、十分な帯電防止能を有することが分かった。
また、比較例1のSEM観察時の二次電子像を図2に示す。図2より、試料表面が帯電し、表面状態が十分に観察できないことが分かった。
(実施例4)
(電子顕微鏡用包埋樹脂組成物の調製)
実施例1で調製したエポキシ系樹脂を3.75ml、イオン液体としてGTA−TFSIを1.25ml混合し、ペースト状の電子顕微鏡用包埋樹脂組成物を得た。
観察試料としてカラーコピー機の廃トナーを用いた。観察試料を5重量部、包埋樹脂組成物を95重量部混和し、型に流し込んだ。これを加熱し、63〜65℃にて48時間加熱し、包埋樹脂組成物の重合及び硬化を行った。
硬化した包埋樹脂脂組成物をダイヤモンドナイフ及びウルトラミクロトームにて薄切・切削し、平滑面が形成されたSEM観察用の包埋樹脂組成物を作成した。その組成物を銀ペーストにてSEM試料台に固定し、表面に導電コーティング等の処理を行わず、組成物の平滑面をSEMにて観察した。得られた二次電子像を図3に、反射電子像を図4にそれぞれ示す。
エポキシ系樹脂5.00mlのみからなり、イオン液体を含まない樹脂組成物を用いた以外は、実施例4と同様に実験を行った。得られた二次電子像を図5に、反射電子像を図6にそれぞれ示す。
観察試料としてプラスチック系付箋紙(のり付き)を用いた。実施例1で調製したペースト状の包埋樹脂組成物を型に流し込み、観察試料を埋入した。63〜65℃にて48時間加熱し、包埋樹脂組成物を重合及び硬化させた。硬化した樹脂脂組成物の表面をミクロトームにて薄切・切削し、平滑面が形成されたSEM観察用の包埋樹脂組成物を作成した。その組成物を銀ペーストにてSEM試料台に固定し、表面に導電コーティング等の処理を行わず、組成物の平滑面をSEMにて観察した。得られた二次電子像を図7に、反射電子像を図8にそれぞれ示す。また、プラスチック系付箋紙ののり部分の反射電子像を図9に示す。
エポキシ系樹脂5.00mlのみからなり、イオン液体を含まない樹脂組成物を用いた以外は、実施例5と同様に実験を行った。得られた二次電子像を図10に、反射電子像を図11にそれぞれ示す。
実施例4,5及び比較例2,3の結果を表2に示す。
表2より、実施例4及び5の包埋樹脂組成物は、薄切性、包埋性能という包埋樹脂組成物の基本性能を保ちつつ、十分な帯電防止能を有することが分かった。
実施例4の反射電子像(図4参照)において、トナーの組成コントラストを明瞭に観察することができた。一方、比較例2の反射電子像(図6参照)において、強度の帯電により意味のある画像を得ることはできず、試料の組成コントラストの観察は不可能であった。
実施例5の反射電子像(図8参照)において、エポキシ系樹脂とイオン液体の混合物を包埋樹脂組成物として用いた場合、試料表面に大きな帯電は見られず、試料の組成コントラストを観察可能であることがわかった。また、試料ののり部分も明瞭に観察することができた(図9参照)。一方、比較例3の反射電子像(図11参照)において、強度の帯電による強いノイズが見られ、試料を十分に観察することができないことが分かった。
観察試料として実施例4のカラーコピー機の廃トナー包埋試料を用いた。試料表面をFIBにて100nmずつ連続切削した。切削により得られた新鮮な平滑面を、実施例4と同様の方法によりSEM観察した。この切削・観察のサイクルを377回繰り返し包埋試料の連続切削像を取得した。(観察領域:42μm×42μm×38μm, Voxel Size:41.6nm×41.6nm×100nm)。得られた画像をAvizo 6.3 software(VSG Inc., Bordeaux, France) にて処理し、三次元的再構築をおこない、廃トナー粒子の立体画像を得た。得られた画像を図12に示す。
実施例6の三次元構築画像(図12参照)より、エポキシ系樹脂とイオン液体の混合物を包埋樹脂組成物として用いることで、帯電の影響なく廃トナーの三次元構造を詳細に観察できることが分かった。
Claims (13)
- イオン液体が式(I)
- R2、R3及びR4がそれぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基である請求項1に記載の組成物。
- 第4級アンモニウム化合物がモノマー若しくはオリゴマー又はこれらの混合物である請求項1または請求項2に記載の組成物。
- アニオンが(CF3SO2)2N−である請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
- イオン液体の添加量が、組成物全体に対し5〜35体積%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物を用いて試料を包埋する包埋工程を有する電子顕微鏡による試料の観察方法。
- 試料を染色する染色工程を有し、
染色工程の後に包埋工程を行う請求項6に記載の観察方法。 - 電子顕微鏡が走査型電子顕微鏡である請求項6又は7に記載の観察方法。
- 試料が生体試料である請求項6〜8のいずれかに1項に記載の観察方法。
- 生体試料が植物又は動物の細胞又は組織である請求項9に記載の観察方法。
- 試料が非生体試料である請求項6〜8のいずれか1項に記載の観察方法。
- 非生体試料が樹脂、ゴム、合成樹脂、顔料、塗料、化粧品、医薬品、セラミック、磁性体、磁気材料、半導体、金属、金属酸化物、鉱物、有機塩又は無機塩である請求項11に記載の観察方法。
- 試料が粉体である請求項6〜12のいずれか1項に記載の観察方法。
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