JP3865624B2 - エポキシ樹脂用硬化剤組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はエポキシ樹脂用硬化剤組成物に関し、詳しくは、イミダゾール化合物及び不飽和環状炭化水素基含有多価芳香族エポキシとを反応させて得られる付加反応物を含有してなる、ポリエポキシ化合物と混合した際に常温では安定で、加熱することで硬化可能なエポキシ樹脂用硬化剤組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
エポキシ樹脂は、各種基材への接着性に優れており、また、エポキシ樹脂を硬化剤で硬化させた硬化物は、耐熱性、耐薬品性、電気特性、機械特性等が比較的優れているため、広い分野、特に、塗料あるいは接着剤の分野で賞用されている。
【0003】
従来、エポキシ樹脂組成物は、使用直前に硬化剤や硬化促進剤を添加する二成分系が主流であった。二成分系は、常温あるいは低温において硬化させることができる特徴を有しているが、その反面、使用直前に計量、混合しなければならならず、さらに可使時間が短く、自動機械への適用が困難である等その使用条件が制限されるという欠点を有している。このような問題点を解消するために一成分硬化性エポキシ樹脂組成物が望まれている。
【0004】
このような一成分硬化性樹脂組成物を得るためには、室温では反応しないが、加熱により反応を開始し硬化する性質を有する硬化剤、いわゆる潜在性硬化剤が必要である。潜在性硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド、二塩基酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯塩、グアナミン類、メラミン、イミダゾール類等が提案されている。しかし、例えば、ジシアンジアミド、メラミン、グアナミン類をエポキシ樹脂と混合したものは貯蔵安定性には優れているが、150℃以上の高温長時間の硬化条件を必要とする欠点を有している。また、これらと硬化促進剤を併用して硬化時間を短縮することも広く行われているが、貯蔵安定性が著しく損なわれるという欠点が生じてしまう。一方、二塩基酸ジヒドラジドやイミダゾール類は比較的低温で硬化はするが、貯蔵安定性に乏しい。三フッ化ホウ素アミン錯塩は貯蔵安定性に優れ硬化時間は短いという長所があるが、耐水性に劣り、そして金属に対する腐食性を持つ等それぞれに欠点を有している。
【0005】
また、イミダゾール類にエポキシ化合物を付加することで安定性を調整しようとする試みも行われている。例えば、米国特許第4066625号公報には、イミダゾール化合物とポリエポキシ化合物との反応物を潜在性硬化剤とすることが記載され、ポリカルボン酸やフェノールノボラックもともに反応し得ることが記載されており、特開平9−296024号公報には、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂及びグリシジルアミノ基を有する芳香族エポキシ樹脂を組み合わせてなるエポキシ樹脂に対し、ジアミノジフェニルスルホン、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のエポキシ化合物を付加させたイミダゾール化合物、ホウ酸又はホウ酸エステル化合物及びフェノール系化合物を組み合わせて使用することが記載されている。
【0006】
しかし、これらの公報に記載されているような汎用のエポキシ化合物とイミダゾール化合物との付加物を使用した場合には、硬化性と安定性のバランスが十分満足できるものは得られていない。
【0007】
従って、本発明の目的は、保存安定性に優れ、かつ、硬化性に優れた一成分硬化性エポキシ樹脂組成物を提供し得るエポキシ樹脂用硬化剤組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、イミダゾール化合物と不飽和環状炭化水素基含有多価芳香族エポキシを反応して得られる付加反応物が、ポリエポキシ化合物と組み合わせることで保存安定性に優れ、かつ硬化性に優れた一成分硬化性エポキシ樹脂組成物を提供し得ることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
即ち、本発明は、(a)下記一般式(I)で表されるイミダゾール化合物及び(b)下記一般式(II)で表されるエポキシ化合物を反応して得られる付加反応物を含有してなるエポキシ樹脂用硬化剤組成物を提供するものである。
【化4】
(式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜18のアルキル基又はアリール基を表す。)
【化5】
(式中、Rは水素原子又は炭素原子数1〜18のヒドロキシル基で置換されてもよい炭化水素基を表し、Xは脂環式炭化水素基を表し、nは0又は正の数を表す。)
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物について詳細に説明する。
【0011】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物は、(a)上記一般式(I)で表されるイミダゾール化合物及び(b)上記一般式(II)で表されるエポキシ化合物を反応して得られる付加反応物を含有してなる。
【0012】
上記一般式(I)中、R1、R2及びR3で表される炭素原子数1〜18のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、第三オクチル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル等の基が挙げられ、あるいはこれらは不飽和結合を有することもできる。R1、R2及びR3で表されるアリール基としては、フェニル、ナフチル等の基が挙げられ、あるいはこれらは上記に例示したアルキル基によって1〜4置換されることもできる。
【0013】
本発明に使用される(a)イミダゾール化合物としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等が挙げられるが、特に2−エチル−4−メチルイミダゾールを使用した場合には樹脂との溶解性が優れるため好ましい。
【0014】
本発明に使用される(b)エポキシ化合物は、フェノール化合物及び不飽和環状炭化水素化合物を反応せしめて得られるフェノール性重合体にエピクロルヒドリンを反応させたエポキシ化合物である。
【0015】
ここでフェノール化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、第三ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、シクロヘキシルフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−チオジフェノール、ジヒドロキシジフェニルメタン、ナフトール等が挙げられる。
これらのフェノール性化合物の中でもフェノール、クレゾールが好ましい。
【0016】
ここで不飽和環状炭化水素化合物としては、置換基を有していてもよく、その場合にはアルキレン基を介してフェノール化合物と結合することもできる。具体的には、例えば、ジシクロペンタジエン、4−ビニルシクロヘキセン、5−ビニルノルボナ−2−エン、3a,4,7,7a−テトラヒドロインデン、α−ピネン、β−ピネン、リモネン等が挙げられる。
特に、シクロペンタジエンを用いることで、保存安定性に優れ、かつ硬化性に優れたものが得られるため好ましい。
【0017】
ここでフェノール性化合物及び不飽和環状炭化水素を反応せしめる際には、酸触媒下で行われることが好ましく、ここで酸触媒としては、例えば、イオン交換樹脂、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素錯体(エーテル、フェノール、水、アルコール、アミン等)、三塩化アルミニウム、ジエチルアルミニウムモノクロリド、塩化鉄、四塩化チタン、硫酸、フッ化水素、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ゼオライト触媒あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0018】
また、溶媒中で行うことができ、好ましくは、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒中で行われる。
【0019】
本発明に使用される(b)ポリエポキシ化合物の中でも、特に、下記一般式(II−1)で表されるようなジシクロペンタジエン縮合型フェノールのポリグリシジルエーテル化合物を使用することで、保存安定性に優れ、かつ硬化性に優れたものが得られるため好ましい。
【0020】
【化6】
【0021】
また、(b)エポキシ化合物のエポキシ当量は、特に限定されるものではないが、通常、200〜300g/eqであることが本発明の効果が顕著である点から好ましく、その中でも220〜280g/eqの範囲が好ましい。
【0022】
本発明で用いられる(b)エポキシ化合物として、市販品としては、例えば、XD−1000−L(日本化薬(株)製)等が挙げられる。
【0023】
ここで(a)イミダゾール化合物と(b)エポキシ化合物の反応は、(a)イミダゾール化合物の活性水素が1当量となる量に対し、(b)エポキシ化合物のエポキシ当量が0.5〜2当量、好ましくは0.8〜1.5当量となる比率で行われ、0.5当量未満では、保存安定性が不十分なものとなるおそれがあり、2当量を超えて使用した場合には硬化性が低下するおそれがあるため好ましくない。
【0024】
本発明の硬化剤組成物は、更に(c)フェノール系化合物を使用することによって安定性が向上するため好ましい。ここでフェノール系化合物としては、例えば、カテコール、4−第三ブチルカテコール、ピロガロール、レゾルシン、ハイドロキノン、フロログルジノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ジヒドロキシビフェニル、ジヒドロキシナフタレン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)スルフォン、ノボラック型あるいはレゾール型のフェノール樹脂、ポリビニルフェノール、テルペンフェノール化合物等が挙げられる。
特にテルペンフェノール化合物を使用することで保存安定性の優れたものが得られるため好ましい。
【0025】
ここで、テルペンフェノ−ル化合物とは、α−ピネン、β−ピネン、リモネン等の環状テルペン化合物にフェノール又はオルトクレゾール等のアルキルフェノール化合物を付加あるいはこれらを共重合して得られるものである。また、これらをアルデヒドあるいはケトン類によって縮合したものでもよい。
【0026】
次に、テルペンフェノールの具体的な例を挙げるがこれに制限されるものではない。
【0027】
【化7】
【0028】
これらの(c)フェノール化合物は、上記付加反応物100質量部に対し、150質量部以下、好ましくは10〜100質量部であり、150質量部を超えても無駄であるばかりでなく、硬化性に悪影響を与えるおそれがあり好ましくない。
【0029】
本発明の硬化剤組成物は、更に(d)ホウ酸又はホウ酸エステル化合物を使用することで保存安定性が向上するため好ましい。ここでホウ酸エステルとしては、ホウ酸とアルコール類あるいはフェノール類から得られるものであり、例えば、トリメチルホウ酸、トリエチルホウ酸、トリフェニルホウ酸等が挙げられる。
【0030】
これらのホウ酸エステル化合物は、上記付加反応物100質量部に対し、50質量部以下、好ましくは1〜20質量部であり、50質量部を超えても無駄であるばかりでなく、硬化性に悪影響を与えるおそれがあり好ましくない。
【0031】
これらのフェノール化合物やホウ酸エステル化合物は、単に併用することもできるし、あるいは上記付加化合物のブロック剤として反応させて使用することもできる。
【0032】
また、本発明のエポキシ樹脂用硬化組成物には、例えば、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等のポリカルボン酸を併用することもできる。
【0033】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物は、取り扱いを容易にするため種々の溶剤に溶解して使用することができる。これら、溶剤として、例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン等のエーテル類;イソ−又はn−ブタノール、イソ−又はn−プロパノール、アミルアルコール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;アニリン、トリエチルアミン、ピリジン、ジオキサン、アセトニトリル等が挙げられる。
【0034】
上記有機溶剤の使用量は、固形分の合計量100質量部に対し、0〜200質量部、好ましくは30〜150質量部使用される。該使用量が200質量部を超えた場合には、揮発して危険性、有害性等を発生するため好ましくない。
【0035】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物は、ポリエポキシ化合物を主成分とする主剤と組み合わせて使用される。
【0036】
これらポリエポキシ化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルクシノール等の単核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物;ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、テルペンフェノール等の多核多価フェノール化合物のポリグリジルエーテル化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ポリグリコール、チオジグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビスフェノールA−エチレンオキシド付加物等の多価アルコール類のポリグリシジルエーテル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の脂肪族、芳香族又は脂環族多塩基酸のグリシジルエステル類及びグリシジルメタクリレートの単独重合体又は共重合体;N,N−ジグリシジルアニリン、ビス(4−(N−メチル−N−グリシジルアミノ)フェニル)メタン等のグリシジルアミノ基を有するエポキシ化合物;ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ジシクロペンタンジエンジエポキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート等の環状オレフィン化合物のエポキシ化物;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン−ブタジエン共重合物等のエポキシ化共役ジエン重合体、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環化合物が挙げられる。また、これらのエポキシ樹脂は末端イソシアネートのプレポリマーによって内部架橋されたものあるいは多価の活性水素化合物(多価フェノール、ポリアミン、ポリリン酸エステル等)で高分子量化したものでもよい。
【0037】
また、ポリエポキシ化合物は、エポキシ当量100〜2000、更に150〜1500のものが好ましい。該エポキシ当量が100未満では、硬化性が低下するおそれがあり、2000よりも大きい場合には、十分な塗膜物性が得られないおそれがあるため好ましくない。
【0038】
これらのポリエポキシ化合物は取り扱いを容易とするため種々の溶剤に溶解して用いることができ、これら溶剤として、上述の溶剤の他、例えば、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、アセトン、メチルイソプロピルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;テレピン油、D−リモネン、ピネン等のテルペン系炭化水素油;ミネラルスピリット、スワゾール#310(コスモ松山石油(株))、ソルベッソ#100(エクソン化学(株))等の高沸点パラフィン系溶剤等が挙げられる。
【0039】
上記有機溶剤の使用量は、ポリエポキシ化合物100質量部に対し、0〜200質量部、好ましくは30〜150質量部使用される。該使用量が200質量部を超えた場合には、揮発して危険性、有害性等を発生するため好ましくない。
【0040】
また、ポリエポキシ化合物を主とする主剤には、反応性あるいは非反応性希釈剤を使用することもでき、反応性希釈剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、プロピルフェノール、p−第三ブチルフェノール、p−第三アミルフェノール、ヘキシルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、オクタデシルフェノールあるいはテルペンフェノール等のモノグリシジルエーテル等のモノグリシジルエーテル化合物が挙げられ、非反応性希釈剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ベンジルアルコール等が挙げられる。
【0041】
これら一成分系硬化性エポキシ樹脂組成物中において、ポリエポキシ化合物と本発明の硬化剤組成物の使用量は、前者のエポキシ当量と後者の活性水素当量が好ましくは等しくなる量が使用されるが、その量は必要に応じて任意の範囲で変更することができる。
【0042】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物は、ポリエポキシ化合物を主体とする主剤と組み合わせて、例えば、コンクリート、セメントモルタル、各種金属、皮革、ガラス、ゴム、プラスチック、木、布、紙等に対する塗料あるいは接着剤;包装用粘着テープ、粘着ラベル、冷凍食品ラベル、リムーバルラベル、POSラベル、粘着壁紙、粘着床材の粘着剤;アート紙、軽量コート紙、キャストコート紙、塗工板紙、カーボンレス複写機、含浸紙等の加工紙;天然繊維、合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維等の収束剤、ほつれ防止剤、加工剤等の繊維処理剤;シーリング材、セメント混和剤、防水材等の建築材料等の広範な用途に使用することができる。
【0043】
【実施例】
以下、実施例及び使用例を示して本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
〔実施例1〕加熱、冷却装置、攪拌装置、滴下装置、脱水装置を備えたフラスコにキシレン117質量部、イソブチルアルコール117質量部及び2−エチル−4−メチルイミダゾール192質量部(2モル)を仕込み、80℃まで加熱して溶解させた。完全に溶解した後でXD−1000−L(日本化薬(株)製;ジシクロペンタジエン−フェノールのポリエポキシ樹脂、エポキシ当量247、式(II−1)でRが水素であり、nが0.6の化合物)494質量部(2当量)を系内の温度が80〜90℃となるように必要に応じて冷却しながら徐々に加えた。その後80〜90℃で1時間熟成反応を行った。その後180〜200℃まで加熱しながら溶剤を除去していき、さらに180〜200℃で30〜50トールまで減圧して溶剤分を完全に留去し、付加反応物であるイミダゾール−エポキシ反応物(IE−1)を得た。
【0045】
上記により得られたイミダゾール−エポキシ化合物(IE−1)60質量部を180〜200℃まで攪拌しながら昇温し、そこにマイティーエースG−150(ヤスハラケミカル社製;テルペン−フェノール共重合体)35質量部、MP−810(旭有機材製;低分子量フェノール樹脂)10質量部及びトリ−n−ブチルボレート5質量部を仕込み、1時間混合溶解させた。次いで、180〜200℃で1時間熟成した後、30〜50トール、30分間減圧して溶剤を留去し、硬化剤(EH−1)を得た。
【0046】
〔実施例2〕加熱、冷却装置、攪拌装置、滴下装置、脱水装置を備えたフラスコにキシレン117質量部、イソブチルアルコール117質量部及び2−エチル−4−メチルイミダゾール192質量部(2モル)を仕込み、80℃まで加熱して溶解させた。完全に溶解した後でXD−1000−L 544質量部(2.2当量)を系内の温度が80〜90℃となるように必要に応じて冷却しながら徐々に加えた。その後80〜90℃で1時間熟成反応を行った。その後180〜200℃まで加熱しながら溶剤を除去していき、さらに180〜200℃で30〜50トールまで減圧して溶剤分を完全に留去し、付加反応物であるイミダゾール−エポキシ反応物(IE−2)を得た。
【0047】
上記により得られたイミダゾール−エポキシ化合物(IE−2)60質量部を180〜200℃まで攪拌しながら昇温し、そこにマイティーエースG−15035質量部、MP−810 10質量部及びトリ−n−ブチルボレート5質量部を仕込み、1時間混合溶解させた。次いで、180〜200℃で1時間熟成した後、30〜50トール、30分間減圧して溶剤を留去し、硬化剤(EH−2)を得た。
【0048】
〔実施例3〕加熱、冷却装置、攪拌装置、滴下装置、脱水装置を備えたフラスコにキシレン117質量部、イソブチルアルコール117質量部及び2−メチルイミダゾール136質量部(2モル)を仕込み、80℃まで加熱して溶解させた。完全に溶解した後でXD−1000−L 544質量部(2.2当量)を系内の温度が80〜90℃となるように必要に応じて冷却しながら徐々に加えた。その後80〜90℃で1時間熟成反応を行った。その後180〜200℃まで加熱しながら溶剤を除去していき、さらに180〜200℃で30〜50トールまで減圧して溶剤分を完全に留去し、付加反応物であるイミダゾール−エポキシ反応物(IE−3)を得た。
【0049】
上記により得られたイミダゾール−エポキシ化合物(IE−3)60質量部を180〜200℃まで攪拌しながら昇温し、そこにマイティーエースG−15035質量部、MP−810 10質量部及びトリ−n−ブチルボレート5質量部を仕込み、1時間混合溶解させた。次いで、180〜200℃で1時間熟成した後、30〜50トール、30分間減圧して溶剤を留去し、硬化剤(EH−3)を得た。
【0050】
〔実施例4〕加熱、冷却装置、攪拌装置、滴下装置、脱水装置を備えたフラスコにキシレン117質量部、イソブチルアルコール117質量部及び2−ウンデシルイミダゾール388質量部(2モル)を仕込み、80℃まで加熱して溶解させた。完全に溶解した後でXD−1000−L 544質量部(2.2当量)を系内の温度が80〜90℃となるように必要に応じて冷却しながら徐々に加えた。その後80〜90℃で1時間熟成反応を行った。その後180〜200℃まで加熱しながら溶剤を除去していき、さらに180〜200℃で30〜50トールまで減圧して溶剤分を完全に留去し、付加反応物であるイミダゾール−エポキシ反応物(IE−4)を得た。
【0051】
上記により得られたイミダゾール−エポキシ化合物(IE−4)60質量部を180〜200℃まで攪拌しながら昇温し、そこにマイティーエースG−15035質量部、MP−810 10質量部及びトリ−n−ブチルボレート5質量部を仕込み、1時間混合溶解させた。次いで、180〜200℃で1時間熟成した後、30〜50トール、30分間減圧して溶剤を留去し、硬化剤(EH−4)を得た。
【0052】
〔参考例1〕
加熱、冷却装置、攪拌装置、滴下装置、脱水装置を備えたフラスコにフェノール3384質量部(36モル)、三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体34質量部を仕込み、70〜80℃でリモネン816質量部(6モル)を3時間かけて滴下し、さらに同温度で2時間攪拌した。次いで、生成物を蒸留水1リットルで3回水洗したのち、減圧下でフェノールと副生成物を留去し、最終的には160℃、5mmHgで1時間保持し、1520質量部の環状テルペン骨格含有多価フェノール化合物を得た。この多価フェノール化合物は、液体クロマトグラフィ分析結果から2量体の純度は89%、他はオリゴマーで一般式(II)でn=0.1であった。
【0053】
さらに、加熱、冷却装置、攪拌装置、滴下装置、脱水装置を備えた別のフラスコに、上記で製造した環状テルペン骨格含有多価フェノール化合物1020質量部、エピクロルヒドリン2775質量部及びイソプロピルアルコール1080質量部を仕込み、混合溶解させて35℃まで加熱した後、48.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液544質量部を1時間かけて滴下した。その後、65℃で30分間保持して反応を行わせた。反応終了後、水洗して副生塩、過剰の水酸化ナトリウムを除去した。次いで、生成物から減圧下で過剰のエピクロルヒドリン及びイソプロパノールを除去して粗製エポキシ化合物を得た。
【0054】
この粗製エポキシ化合物をトルエン1300質量部に溶解させ、48.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液30質量部を加え、65℃で1時間反応させた。反応終了後、第一リン酸ナトリウムを加えて過剰の水酸化ナトリウムを中和し、水洗して副生塩を除去した。次いで、減圧下で溶剤を完全に除去してエポキシ当量220の短黄色固体のエポキシ化合物(EP)を得た。
【0055】
〔実施例5〕
加熱、冷却装置、攪拌装置、滴下装置、脱水装置を備えたフラスコにキシレン117質量部、イソブチルアルコール117質量部及び2−エチル−4−メチルイミダゾール192質量部(2モル)を仕込み、80℃まで加熱して溶解させた。完全に溶解した後で参考例1で得られたエポキシ化合物(EP)550質量部(2.2当量)を系内の温度が80〜90℃となるように必要に応じて冷却しながら徐々に加えた。その後80〜90℃で1時間熟成反応を行った。その後180〜200℃まで加熱しながら溶剤を除去していき、さらに180〜200℃で30〜50トールまで減圧して溶剤分を完全に留去し、付加反応物であるイミダゾール−エポキシ反応物(IE−5)を得た。
【0056】
上記により得られたイミダゾール−エポキシ化合物(IE−5)60質量部を180〜200℃まで攪拌しながら昇温し、そこにマイティーエースG−15035質量部、MP−810 10質量部及びトリ−n−ブチルボレート5質量部を仕込み、1時間混合溶解させた。次いで、180〜200℃で1時間熟成した後、30〜50トール、30分間減圧して溶剤を留去し、硬化剤(EH−2)を得た。
【0057】
〔比較例1〕
加熱、冷却装置、攪拌装置、滴下装置、脱水装置を備えたフラスコにキシレン117質量部、イソブチルアルコール117質量部及び2−エチル−4−メチルイミダゾール192質量部(2モル)を仕込み、80℃まで加熱して溶解させた。完全に溶解した後でアデカレジンEP−4100E(旭電化工業(株)製;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190)494質量部(2当量)を系内の温度が80〜90℃となるように必要に応じて冷却しながら徐々に加えた。その後80〜90℃で1時間熟成反応を行った。その後180〜200℃まで加熱しながら溶剤を除去していき、さらに180〜200℃で30〜50トールまで減圧して溶剤分を完全に留去し、イミダゾール−エポキシ反応物(HIE−1)を得た。
【0058】
上記により得られたイミダゾール−エポキシ化合物(HIE−1)60質量部を180〜200℃まで攪拌しながら昇温し、そこにマイティーエースG−150 35質量部、MP−810 10質量部及びトリ−n−ブチルボレート5質量部を仕込み、1時間混合溶解させた。次いで、180〜200℃で1時間熟成した後、30〜50トール、30分間減圧して溶剤を留去し、硬化剤(HEH−1)を得た。
【0059】
〔比較例2〕
2−エチル−4−メチルイミダゾール60質量部を180〜200℃まで攪拌しながら昇温し、そこにマイティーエースG−150 35質量部、MP−810 10質量部及びトリ−n−ブチルボレート5質量部を仕込み、1時間混合溶解させた。次いで、180〜200℃で1時間熟成した後、30〜50トール、30分間減圧して溶剤を留去し、硬化剤(HEH−5)を得た。
【0060】
〔使用例〕
アデカレジンEP−4100E 100質量部及び上記により得られた硬化剤20質量部を配合し、3本ロールで2回かけして一成分硬化性エポキシ樹脂組成物を製造し、以下の性能評価を行った。その結果を表1に示す。
【0061】
(硬化性)
上記により得られた一成分硬化性エポキシ樹脂組成物を製造直後にゲル化試験機に入れて、糸を引かなくなった時点をゲル化時間(分/80℃)とした。
【0062】
(保存安定性)
上記により得られた一成分硬化性エポキシ樹脂組成物を25℃で3時間放置したものの25℃で粘度を初期粘度として、40℃下に放置(18時間、3日、5日、7日)したときの粘度を初期粘度で割ったものを粘度変化とした。ここで数値が10を超えるものは実用的でない。
【0063】
【表1】
【0064】
表1より明らかなように、イミダゾール化合物にエポキシ化合物を付加することなく使用すると、エポキシ樹脂とブレンド後間もなくゲル化して一成分系硬化性のエポキシ樹脂組成物を得ることができない(比較例2)。また、イミダゾール化合物と汎用のビスフェノール型エポキシ樹脂を付加することで、ある程度保存安定性は示すものの未だ不十分なものである(比較例2)。
【0065】
これに対して、本発明のイミダゾール化合物及び特定のエポキシ化合物を反応させて得られる付加反応物を含有してなる硬化剤を使用した場合には、保存安定性に優れ、かつ、比較的低温での硬化性に優れた一成分硬化性エポキシ樹脂組成物を得ることができる(実施例1〜5)。
【0066】
【発明の効果】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤組成物は、保存安定性、硬化性に優れた一成分硬化性エポキシ樹脂組成物を提供することができる。
Claims (7)
- 上記(a)イミダゾール化合物が、2−エチル−4−メチルイミダゾールである請求項1記載のエポキシ樹脂用硬化剤組成物。
- (c)フェノール化合物を含有してなる請求項1、2又は3載のエポキシ樹脂用硬化剤組成物。
- 上記(c)フェノール化合物が、テルペンフェノール化合物である請求項4記載のエポキシ樹脂用硬化剤組成物。
- (d)ホウ酸又はホウ酸エステル化合物を含有してなる請求項1〜5記載のいずれかにエポキシ樹脂用硬化剤組成物。
- ポリエポキシ化合物と請求項1〜6のいずれかに記載のエポキシ樹脂用硬化剤組成物とを含有してなるエポキシ樹脂組成物。
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