JP3865486B2 - スパイラルフィンチューブへの溶射皮膜の再溶融処理方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スパイラルフィンチューブの外周面に溶射された皮膜を、螺旋フィンを溶損させることなく、再溶融処理を行なうスパイラルフィンチューブへの溶射皮膜の再溶融処理方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ボイラー等に用いるスパイラルフィンチューブは、その耐久性を向上するため、例えば、ニッケル合金等の自溶合金を、その外周面に被覆している。また、この自溶合金の被覆に際しては、自溶合金の特性を向上すると共に、スパイラルフィンチューブの密着性を向上するため、再溶融処理を行なっている。
従来、このような再溶融処理は、回転装置によって軸線周りに回転しているスパイラルフィンチューブの外周面に作業者が手持ちトーチを近づけ、螺旋溝に沿って既に被覆している自溶合金を再溶融することによって行なっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような手持ちトーチによるスパイラルフィンチューブの外周面への溶射皮膜の再溶融処理は、未だ、以下の解決すべき課題を有していた。
(1)再溶融処理作業の始まりから終わりまで、作業者は目を離すことができず、また、一定の作業姿勢を長時間(例えば、50〜60分)保持しなくてはならないので、目や、首や、腰等が疲れる。
(2)横移動するとき、手持ちトーチを一度上げる必要があるので、一周の遅れが出やすい。
(3)誤って、スパイラルフィンチューブの外周面ではなく、螺旋フィンに火炎を吹き付け、螺旋フィンを溶損する場合がある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、スパイラルフィンチューブの再溶融処理を効率的にかつ正確に行なうことができるスパイラルフィンチューブへの溶射皮膜の再溶融処理方法及び装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記目的に沿う請求項1記載のスパイラルフィンチューブへの溶射皮膜の再溶融処理方法は、所定のピッチで螺旋フィンを外周面に巻き付けたスパイラルフィンチューブを軸線周りに回転し、該回転に連動して、先部を該スパイラルフィンチューブのフィン部材間に形成される螺旋溝に挿入したガイド部材を前記スパイラルフィンチューブの軸線方向に台車を介して平行移動させ、該ガイド部材の移動に同期して、先部が前記ガイド部材より所定のピッチ数だけ離隔した位置で前記螺旋溝に指向すると共に前記台車に取付けた加熱用トーチを前記スパイラルフィンチューブの軸線方向に平行移動させ、該加熱用トーチからの火炎によって前記螺旋溝に被覆されている溶射皮膜を再溶融し、しかも、前記ガイド部材の先部を前記スパイラルフィンチューブの螺旋フィンの螺旋面に摺動自在に当接させ、前記スパイラルフィンチューブの軸線周りの回転力を用いて、前記ガイド部材、前記台車、及び、前記加熱用トーチを一体的に前記スパイラルフィンチューブの軸線方向に直接的に平行移動させるようにする。
【0006】
【0007】
請求項2記載のスパイラルフィンチューブへの溶射皮膜の再溶融処理装置は、所定のピッチで螺旋フィンを外周面に巻き付けたスパイラルフィンチューブを軸線周りに回転自在に保持する回転装置と、
前記スパイラルフィンチューブと平行をなす軌道上を走行自在な台車と、
前記台車上に取付けられ、先部が前記スパイラルフィンチューブのフィン部材間に形成される螺旋溝に挿入されると共に前記螺旋フィンの螺旋面に摺動自在に当接されるガイド部材と、
前記台車の移動方向に前記ガイド部材から所定のピッチ数離隔した位置で前記台車上に取付けられ、先部が前記螺旋溝に指向する加熱用トーチとを具備し、
前記スパイラルフィンチューブの軸線周りの回転に連動して前記ガイド部材が前記スパイラルフィンチューブに対して平行移動し、該ガイド部材の移動に同期して前記台車及び前記加熱用トーチも前記スパイラルフィンチューブに対して平行移動するようにし、さらに、前記加熱用トーチによって再溶融処理される溶射皮膜の再溶融状態を検出する再溶融状態検出センサを具備し、該再溶融状態検出センサの検出出力に基づいて前記スパイラルフィンチューブの回転速度を調整するようにしている。
【0008】
【0009】
【発明の実施の形態】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
【0010】
まず、図1及び図2を参照して、本発明の一実施の形態に係るスパイラルフィンチューブへの溶射皮膜の再溶融処理装置Aの全体構成について説明する。
図1及び図2に示すように、スパイラルフィンチューブ10の外周面には、所定のピッチpで多数のフィン部材11を連設して形成された螺旋フィン12が巻き付けられており、フィン部材11間をなすスパイラルフィンチューブ10の外周面には溶射皮膜Wが形成されている。
【0011】
スパイラルフィンチューブ10の両端には小径軸部13、14がそれぞれ連設されており、一方の小径軸部13は一対の軸受ローラ15上に回転自在に支承され、他方の小径軸部14は回転モータ16によって回転されるチャック17に着脱自在に挟持されている。かかる構成によって、回転モータ16を駆動することによって、スパイラルフィンチューブ10を、その軸線18周りに回転することができる。なお、軸受ローラ15、回転モータ16、及び、チャック17によって回転装置が構成されることになる。
【0012】
図1に示すように、スパイラルフィンチューブ10の前方をなす床面上には、スパイラルフィンチューブ10と平行間隔を開けて軌道19が敷設されており、軌道19上には、車輪20を具備する矩形板からなる台車21が走行自在に載置されている。
【0013】
図1に示すように、台車21の一長手方向側にはガイド部材支持柱22が立設されており、ガイド部材支持柱22の上端部には、スパイラルフィンチューブ10の軸線18と直行する方向に配列された丸棒からなるガイド部材23の基部が固着されている。ガイド部材23の先部23aは、図1及び図2に示すように、螺旋フィン12を構成するフィン部材11間に形成される螺旋溝に挿入されると共に、その一側面はフィン部材11の対応する外周面に摺動自在に当接されている。
【0014】
図1に示すように、台車21の他長手方向側にはトーチ垂直支持筒24が立設されており、トーチ垂直支持筒24の上端部には、スパイラルフィンチューブ10の軸線18と直行する方向に配列されたトーチ水平支持筒25の基部が固着されている。そして、トーチ水平支持筒25には、加熱用トーチ26の基部が進退量を調整自在に固着されている。一方、加熱用トーチ26の先部に形成された火口27は、ガイド部材23の先部23aが挿入されるフィン部材11から所定ピッチ(本実施の形態では6ピッチ)だけスパイラルフィンチューブ10の軸線方向(台車21の移動方向)に離隔した位置において、フィン部材11間の螺旋溝に指向しており、溶射皮膜Wに対峙されている。なお、本実施の形態では、火口27はフィン部材11間の螺旋溝に挿入されているが、必ずしも挿入する必要はない。
このように、加熱用トーチ26の火口27をガイド部材23の先部23aが挿入されるフィン部材11から所定ピッチ数(整数)だけスパイラルフィンチューブ10の軸線方向に離隔した位置に配置することにしたのは、火口27から吹き出される火炎によってガイド部材23が熱的影響を受け、変形等するのを防止するためである。
【0015】
次に、上記した構成を有するスパイラルフィンチューブへの溶射皮膜の再溶融処理装置Aを用いたスパイラルフィンチューブへの溶射皮膜の再溶融処理方法について、図1及び図2を参照して説明する。
図1に示すように、回転装置を構成する回転モータ16を駆動し、一定のピッチpで螺旋フィン12を外周面に巻き付けたスパイラルフィンチューブ10を軸線18周りに回転する。
【0016】
ガイド部材23の先部23aは螺旋フィン12の外周面ないし螺旋面に摺動自在に当接しているので、スパイラルフィンチューブ10の回転に連動して、スパイラルフィンチューブ10の軸線周りの回転力を用いて、ガイド部材23をスパイラルフィンチューブ10の軸線方向に自動的かつ直接的に平行移動することになる。一方、加熱用トーチ26は台車21上にガイド部材23と一体的に搭載されているので、このガイド部材23の平行移動に同期して、先部に火口27を有する加熱用トーチ26もスパイラルフィンチューブ10の軸線方向に平行移動されることになる。
【0017】
そして、加熱用トーチ26の平行移動に伴って加熱用トーチ26の火口27から火炎を吹き出すことによって、螺旋溝に被覆されている溶射皮膜Wを再溶融処理することができる。
このように、本実施の形態では、回転装置によってスパイラルフィンチューブ10を回転するだけで、ガイド部材23を介して、自動的に、加熱用トーチ26を移動して再溶融処理を行なうことができるので、再溶融処理作業を短時間で効率的に行なうことができる。また、再溶融処理作業は自動的に行なわれるので、作業者を、大きな苦痛を伴う同一姿勢による長時間の溶接作業から完全に解放することができる。
【0018】
また、ガイド部材23は螺旋フィン12をなぞって移動するので、加熱用トーチ26がフィン部材11を飛び越して再溶融処理するのを確実に防止することができ、再溶融処理の信頼性を高めることができると共に、誤って、螺旋フィン12に火炎を吹き付け、螺旋フィン12を溶損するのを確実に防止でき、品質向上を図ることができる。
【0019】
また、ガイド部材23は螺旋フィン12をなぞって移動するので、スパイラルフィンチューブ10毎に螺旋フィン12のピッチpが異なっていても、全てのスパイラルフィンチューブ10に確実かつ迅速に再溶融処理を施すことができる。
また、ガイド部材23を螺旋フィン12の外周面に直接的に当接させることによって、スパイラルフィンチューブ10の回転と共にガイド部材23を平行移動させるようにしているので、加熱用トーチ26を搭載した台車21を移動させるための走行モータが不要となり、設備費の低減を図ることができる。
【0020】
さらに、ガイド部材23と加熱用トーチ26を、スパイラルフィンチューブ10と平行をなす軌道19上に走行自在に配設した台車21上に一体的に取付けたので、ガイド部材23と加熱用トーチ26とを安定状態にスパイラルフィンチューブ10の軸線方向と平行に移動することができ、火口27と溶射皮膜Wとの間の距離を一定に保持でき、安定した再溶融処理を行なうことができる。
【0021】
なお、この際、加熱用トーチ26をトーチ水平支持筒25に進退量調整自在に取付けることによって、火口27と溶射皮膜Wとの間の距離を微調整することができ、この面からも安定した再溶融処理を行なうことができる。また、トーチ水平支持筒25をトーチ垂直支持筒24に対して高さ調整自在に取付けることによって、スパイラルフィンチューブ10の直径が異なる場合でも、水平方向に進退自在な加熱用トーチ26と協働して、火口27と溶射皮膜Wとの間の距離を一定に保持して、安定した再溶融処理を行なうことができる。
【0022】
ところで、上記した実施の形態においては、ガイド部材23の先部23aは螺旋フィン12の外周面に摺動自在に当接したが、ガイド部材23の先部23aに非接触型センサを取付け、この非接触型センサと螺旋フィン12の外周面との距離を常時検出し、この検出出力に基づいて、台車21に設けた走行駆動モータを駆動し、台車21、ガイド部材23、及び、加熱用トーチ26を、スパイラルフィンチューブ10の軸線方向に平行移動させるようにすることもできる。
【0023】
また、図3に、本実施の形態の変形例に係るスパイラルフィンチューブへの溶射皮膜の再溶融処理装置A1の構成を示す。
図示するように、火口27によって再溶融処理される溶射皮膜Wの再溶融状態を検出する再溶融状態検出センサの一例である温度センサ28が、トーチ水平支持筒25に、センサ取付ブラケット29を介して取付けられている。
従って、この温度センサ28の検出出力に基づいて、溶射皮膜Wの再溶融状態を判断し、回転装置によるスパイラルフィンチューブ10の回転速度を調整することによって、溶射皮膜Wを垂れや未溶融状態のない最適の再溶融状態に常時保持することができる。なお、本変形例において、同一の構成部材は同一の符号で示している。
【0024】
以上、本発明を、一実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
例えば、上記した実施の形態においては、ガイド部材は加熱用トーチの片側のみに配置されているが、加熱用トーチの両側に配置することもでき、この場合、スパイラルフィンチューブの取付位置を交換することなく再溶融処理できる。また、上記した実施の形態では、加熱用トーチの火口は、スパイラルフィンチューブの側面に臨ませているが、スパイラルフィンチューブの上面に臨ませることもできる。
【0025】
【発明の効果】
請求項1、2記載のスパイラルフィンチューブへの溶射皮膜の再溶融処理方法及び装置においては、スパイラルフィンチューブの回転に連動してガイド部材を移動し、このガイド部材の移動に同期して、加熱用トーチを移動して再溶融処理を行なうことができるので、再溶融処理作業を自動的に行なうことができ、再溶融処理を短時間で効率的に行なうことができると共に、作業者を、大きな苦痛を伴う同一姿勢による長時間の溶接作業から完全に解放することができる。また、ガイド部材は螺旋フィンをなぞって移動するので、加熱用トーチがフィン部材を飛び越して再溶融処理するのを確実に防止することができ、再溶融処理の信頼性を高めることができると共に、誤って、螺旋フィンに火炎を吹き付け、螺旋フィンを溶損するのを確実に防止することができ、品質向上を図ることができる。
【0026】
また、請求項1記載のスパイラルフィンチューブへの溶射皮膜の再溶融処理方法においては、ガイド部材を螺旋フィンの螺旋面に直接的に当接させることによって、スパイラルフィンチューブの回転と共にガイド部材を平行移動させるようにしているので、加熱用トーチを搭載した台車等を移動させるための走行モータが不要となり、設備費の低減を図ることができる。
【0027】
請求項2記載のスパイラルフィンチューブへの溶射皮膜の再溶融処理装置においては、ガイド部材と加熱用トーチを、スパイラルフィンチューブと平行をなす軌道上に走行自在に配設した台車上に取付けたので、ガイド部材と加熱用トーチとを安定状態にスパイラルフィンチューブの軸線方向と平行に移動することができ、火口と溶射皮膜との間の距離を一定に保持して安定して再溶融処理を行なうことができる。
【0028】
そして、再溶融状態検出センサの検出出力に基づいて、溶射皮膜の再溶融状態を判断し、回転装置によるスパイラルフィンチューブの回転速度を調整することができるので、溶射皮膜を垂れや未溶融状態のない最適の再溶融状態に常時保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るスパイラルフィンチューブへの溶射皮膜の再溶融処理方法によるスパイラルフィンチューブへの再溶融処理状態を示す説明図である。
【図2】同要部拡大平面図である。
【図3】本発明の一実施の形態の変形例に係るスパイラルフィンチューブへの溶射皮膜の再溶融処理方法によるスパイラルフィンチューブへの再溶融処理状態を示す説明図である。
【符号の説明】
A スパイラルフィンチューブへの溶射皮膜の再溶融処理装置
A1 スパイラルフィンチューブへの溶射皮膜の再溶融処理装置
W 溶射皮膜 p ピッチ
10 スパイラルフィンチューブ 11 フィン部材
12 螺旋フィン 13 小径軸部
14 小径軸部 15 軸受ローラ
16 回転モータ 17 チャック
18 軸線 19 軌道
20 車輪 21 台車
22 ガイド部材支持柱 23 ガイド部材
23a 先部 24 トーチ垂直支持筒
25 トーチ水平支持筒 26 加熱用トーチ
27 火口
28 温度センサ(再溶融状態検出センサ)
29 センサ取付ブラケット
Claims (2)
- 所定のピッチで螺旋フィンを外周面に巻き付けたスパイラルフィンチューブを軸線周りに回転し、該回転に連動して、先部を該スパイラルフィンチューブのフィン部材間に形成される螺旋溝に挿入したガイド部材を前記スパイラルフィンチューブの軸線方向に台車を介して平行移動させ、該ガイド部材の移動に同期して、先部が前記ガイド部材より所定のピッチ数だけ離隔した位置で前記螺旋溝に指向すると共に前記台車に取付けた加熱用トーチを前記スパイラルフィンチューブの軸線方向に平行移動させ、該加熱用トーチからの火炎によって前記螺旋溝に被覆されている溶射皮膜を再溶融し、しかも、前記ガイド部材の先部を前記スパイラルフィンチューブの螺旋フィンの螺旋面に摺動自在に当接させ、前記スパイラルフィンチューブの軸線周りの回転力を用いて、前記ガイド部材、前記台車、及び、前記加熱用トーチを一体的に前記スパイラルフィンチューブの軸線方向に直接的に平行移動させるようにしたことを特徴とするスパイラルフィンチューブへの溶射皮膜の再溶融処理方法。
- 所定のピッチで螺旋フィンを外周面に巻き付けたスパイラルフィンチューブを軸線周りに回転自在に保持する回転装置と、
前記スパイラルフィンチューブと平行をなす軌道上を走行自在な台車と、
前記台車上に取付けられ、先部が前記スパイラルフィンチューブのフィン部材間に形成される螺旋溝に挿入されると共に前記螺旋フィンの螺旋面に摺動自在に当接されるガイド部材と、
前記台車の移動方向に前記ガイド部材から所定のピッチ数離隔した位置で前記台車上に取付けられ、先部が前記螺旋溝に指向する加熱用トーチとを具備し、
前記スパイラルフィンチューブの軸線周りの回転に連動して前記ガイド部材が前記スパイラルフィンチューブに対して平行移動し、該ガイド部材の移動に同期して前記台車及び前記加熱用トーチも前記スパイラルフィンチューブに対して平行移動するようにし、さらに、前記加熱用トーチによって再溶融処理される溶射皮膜の再溶融状態を検出する再溶融状態検出センサを具備し、該再溶融状態検出センサの検出出力に基づいて前記スパイラルフィンチューブの回転速度を調整するようにしたことを特徴とするスパイラルフィンチューブへの溶射皮膜の再溶融処理装置。
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