JP3864625B2 - 移動体の駆動装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、移動体の駆動装置に関し、詳しくは、車両などの移動体に搭載され、この移動体に対して駆動エネルギを供給する複数の駆動エネルギ源を備える移動体の駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、複数のエネルギ発生装置を駆動エネルギ源として搭載した車両などの移動体が提案されている。例えば近年、駆動力を発生する電動機に電力を供給する電源と、エンジンとを備える駆動装置を搭載したハイブリッド車両が、種々提案されている。ハイブリッド車両の一形態として、電動機とエンジンの双方の動力を駆動軸に出力可能なパラレルハイブリッド車両と呼ばれる構成がある。パラレルハイブリッド車両は、エンジンから動力を出力して走行する他、電源から供給される電力によって電動機から動力を出力して走行することもできる。エンジンは、出力状態によってエネルギ効率が大きく変わるが、パラレルハイブリッド車両では、2種類の駆動エネルギ源を適宜使い分けることによって、エンジンを効率の良い領域で運転させることができる。このように、移動体を駆動するために複数の駆動エネルギ源を搭載する場合には、それぞれの駆動エネルギ源の特性に応じてこれらの駆動エネルギ源を使い分けることにより、移動体全体としてより高いエネルギ効率を実現することが可能となる。
【0003】
また、このような複数の駆動エネルギ源を搭載する移動体において、システム全体のエネルギ効率をより高めるための構成として、駆動エネルギ源に熱電素子を設け、エネルギを発生する際に生じる熱を回収する構成が提案されている(例えば特開平10−309002号公報等)。ここでは、エンジンと電動機とを搭載する車両において、高速走行時に発生する排気熱中の熱エネルギを熱電素子によって回収し、回収したエネルギによって所定の蓄電手段を充電することで、車両全体のエネルギ効率を向上させている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら提案されている移動体においては、実際の使用時に想定される種々の状況に対する対応が、従来充分に検討されていなかった。例えば、熱電素子による熱エネルギの回収に異常が発生した際に対応可能な駆動装置は知られておらず、熱電素子による熱エネルギの回収に異常が生じても、移動体全体で所定のエネルギ効率を維持しつつ充分に対応可能となる実用的な駆動装置が望まれていた。さらに、このように熱電素子による熱エネルギの回収に異常が生じた場合に、複数の駆動エネルギ源を使い分けることにより、システム全体の耐久性を維持することは知られていなかった。本発明の移動体の駆動装置は、こうした問題を解決するために、以下の構成を採った。
【0005】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
本発明の移動体の駆動装置は、移動体に搭載され、前記移動体を駆動するためのエネルギを発生する複数の駆動エネルギ源を備える移動体の駆動装置であって、
前記複数の駆動エネルギ源のうちの少なくとも一つの駆動エネルギ源に設けられ、該駆動エネルギ源が発生する熱を電気エネルギに変換して回収する熱回収手段と、
前記熱回収手段が前記熱を回収する際の動作状態の異常を検出する異常検出手段と、
前記異常検出手段が前記異常を検出したときには、異常が検出された前記熱回収手段を設けた前記駆動エネルギ源において、前記エネルギの発生を停止する異常時停止手段と
を備えることを要旨とする。
【0006】
以上のように構成された本発明の駆動装置は、前記移動体を駆動するためのエネルギを発生する複数の駆動エネルギ源を備え、前記移動体に搭載される。ここで、前記複数の駆動エネルギ源のうちの少なくとも一つの駆動エネルギ源において、該駆動エネルギ源が発生する熱を電気エネルギに変換して回収する熱回収手段が備えられ、この熱回収手段が前記熱を回収する際の動作状態の異常が検出されると、異常が検出された前記熱回収手段を設けた前記駆動エネルギ源において、前記エネルギの発生を停止する。
【0007】
このような本発明の駆動装置によれば、熱回収手段が熱を回収する際の動作状態に異常があったときには、異常が検出された熱回収手段を設けた駆動エネルギ源においてエネルギの発生を停止するため、回収されることなく熱が廃棄されてしまうのを防ぎ、エネルギ効率が低下してしまうのを抑えることができる。
【0008】
本発明の駆動装置において、前記異常検出手段が前記異常を検出したときには、異常が検出された前記熱回収手段を設けた駆動エネルギ源とは異なる駆動エネルギ源によって、前記駆動のためのエネルギを発生することとしてもよい。このような構成とすれば、熱回収手段による熱回収の動作状態に異常が生じても、前記移動体を駆動するためのエネルギを確保することができる。
【0009】
また、本発明の駆動装置において、前記複数の駆動エネルギ源は、エンジンおよび燃料電池を含むこととしてもよい。
【0010】
あるいは、本発明の駆動装置において、前記複数の駆動エネルギ源は、動力を発生するエンジンと、電力を発生する燃料電池と、該燃料電池が発生した電力から動力を発生する電動機とを含み、
前記熱回収手段は、前記燃料電池および/または前記電動機に設けられており、
前記異常検出手段が前記異常を検出したときには、前記エンジンを用いて前記駆動のためのエネルギを発生することとしてもよい。
【0011】
また、本発明の駆動装置において、前記熱回収手段が設けられた前記駆動エネルギ源は、その運転温度を検出する温度検出手段を備え、
前記異常時停止手段は、前記異常検出手段が前記異常を検出した際に、前記温度検出手段が検出した温度が所定の温度を超えない場合には、異常が検出された前記熱回収手段を設けた前記駆動エネルギ源による前記エネルギの発生を続行することとしてもよい。
【0012】
このような構成とすれば、熱回収手段が前記熱を回収する際の動作状態に異常が生じた場合に、この熱回収手段が設けられた駆動エネルギ源の運転温度が許容範囲であれば、この駆動エネルギ源による前記エネルギの発生を続行する。したがって、熱回収の動作に異常が生じても、駆動エネルギ源がエネルギを発生するのに支障がなければ、この駆動エネルギ源によって前記エネルギを発生する動作を継続することができる。熱エネルギの回収が行なわれなくてもなお、この駆動エネルギ源を用いることによる優位性がある場合には、その優位性を生かすことができる。
【0013】
また、本発明の駆動装置において、前記熱回収手段が設けられた前記駆動エネルギ源は、その運転温度を検出する温度検出手段を備え、
前記異常時停止手段は、前記異常検出手段が前記異常を検出しない場合であっても、前記温度検出手段が検出した前記駆動エネルギ源の運転温度が所定の温度以上であれば、前記駆動エネルギ源による前記エネルギの発生を停止する異常発熱時停止手段を備えることとしてもよい。
【0014】
このような構成とすれば、前記熱回収手段が設けられた駆動エネルギ源において、異常発熱による不都合が生じるのを防止することができる。なお、熱回収手段による熱の回収は、駆動エネルギ源を冷却するという作用も果たすため、熱を回収する動作の異常は、結果的に駆動エネルギ源の昇温につながる。したがって、既述した異常検出手段を特別に設けて熱を回収する動作の異常と異常発熱とを区別することなく、駆動エネルギ源の運転温度の上昇によって、前記熱回収手段が前記熱を回収する際の動作状態の異常をも間接的に検出し、この駆動エネルギ源によるエネルギの発生を停止する構成も可能である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以上説明した本発明の構成・作用を一層明らかにするために、以下本発明の実施の形態を実施例に基づき説明する。
(1)装置の構成:
図1は本実施例のハイブリッド車両を表わす概略構成図である。本実施例のハイブリッド車両は、エンジン10とモータ20とを動力源として備えている。図示する通り、本実施例のハイブリッド車両の動力系統は、上流側からエンジン10、入力クラッチ18、モータ20、トルクコンバータ30、および変速機100を直列に結合した構成を有している。即ち、エンジン10のクランクシャフト12は、入力クラッチ18を介してモータ20に結合している。入力クラッチ18をオン・オフすることによって、エンジン10からモータ20へ動力が伝達される状態と、エンジン10からモータ20への動力の伝達が遮断された状態とを切り替えることができる。モータ20の出力軸13は、また、トルクコンバータ30にも結合している。トルクコンバータの出力軸14は変速機100に結合している。変速機100の出力軸15は、ディファレンシャルギヤ16を介して車軸17に結合している。以下、それぞれの構成要素について順に説明する。
【0016】
エンジン10は通常のガソリンエンジンである。但し、エンジン10は、ガソリンと空気の混合気をシリンダに吸い込むための吸気バルブ、および燃焼後の排気をシリンダから排出するための排気バルブの開閉タイミングを、ピストンの上下運動に対して相対的に調整可能な機構を有している(以下、この機構をVVT機構と呼ぶ)。VVT機構の構成については、周知であるため、ここでは詳細な説明を省略する。エンジン10は、ピストンの上下運動に対して各バルブが遅れて閉じるように開閉タイミングを調整することにより、いわゆるポンピングロスを低減することができる。この結果、エンジン10をモータリングする際にモータ20から出力すべきトルクを低減させることもできる。ガソリンを燃焼して動力を出力する際には、VVT機構は、エンジン10の回転数に応じて最も燃焼効率の良いタイミングで各バルブが開閉するように制御される。
【0017】
モータ20は、三相の同期モータであり、外周面に複数個の永久磁石を有するロータ22と、回転磁界を形成するための三相コイルが巻回されたステータ24とを備える。モータ20はロータ22に備えられた永久磁石による磁界とステータ24の三相コイルによって形成される磁界との相互作用により回転駆動する。また、ロータ22が外力によって回転させられる場合には、これらの磁界の相互作用により三相コイルの両端に起電力を生じさせる。なお、モータ20には、ロータ22とステータ24との間の磁束密度が円周方向に正弦分布する正弦波着磁モータを適用することも可能であるが、本実施例では、比較的大きなトルクを出力可能な非正弦波着磁モータを適用した。
【0018】
モータ20の電源としては、バッテリ50と燃料電池装置60とが備えられている。但し、主電源は燃料電池装置60である。バッテリ50は、燃料電池装置60が故障した場合や、充分な電力を出力することができない過渡的な運転状態にある場合(例えば、燃料電池装置60の始動時)などに、これを補完するようモータ20に電力を供給する電源として使用される。バッテリ50の電力は、主として、ハイブリッド車両の制御を行う制御ユニット70や照明装置などの電力機器に供給される。
【0019】
モータ20と各電源との間には、接続状態を切り替えるための切替スイッチ84が設けられている。切替スイッチ84は、バッテリ50,燃料電池装置60,モータ20の3者間の接続状態を任意に切り替えることができる。ステータ24は、切替スイッチ84および駆動回路51を介してバッテリ50に電気的に接続される。また、ステータ24は、切替スイッチ84および駆動回路52を介して燃料電池装置60に接続される。駆動回路51,52は、それぞれトランジスタインバータで構成されており、モータ20の三相それぞれに対して、ソース側とシンク側の2つを一組としてトランジスタが複数備えられている。これらの駆動回路51,52は、制御ユニット70と電気的に接続されている。制御ユニット70が駆動回路51,52の各トランジスタのオン・オフの時間をPWM制御すると、バッテリ50および燃料電池装置60を電源とする擬似三相交流がステータ24の三相コイルに流れ、モータ20において回転磁界が形成される。モータ20は、このような回転磁界の作用によって、先に説明した通り電動機または発電機として機能する。
【0020】
図2は、モータ20の電源として働く燃料電池装置60の概略構成を示す説明図である。燃料電池装置60は、メタノールを貯蔵するメタノールタンク61、水を貯蔵する水タンク62、燃焼ガスを発生するバーナ63、空気の圧縮を行なう圧縮機64、バーナ63と圧縮機64とを併設した蒸発器65、改質反応により燃料ガスを生成する改質器66、燃料ガス中の一酸化炭素(CO)濃度を低減するCO低減部67、電気化学反応により起電力を得る燃料電池60Aを主な構成要素とする。これらの各部の動作は、制御ユニット70により制御される。
【0021】
燃料電池60Aは、固体高分子電解質型の燃料電池であり、電解質膜、カソード、アノード、およびセパレータとを備える単セルを複数積層して構成されている。電解質膜は、例えばフッ素系樹脂などの固体高分子材料で形成されたプロトン伝導性のイオン交換膜である。カソードおよびアノードは、共に炭素繊維を織成したカーボンクロスにより形成されている。セパレータは、カーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボンなど、ガス不透過性を有する導電性部材により形成されている。また、このセパレータは、上記カソードおよびアノードとの間に、燃料ガスおよび酸化ガスの流路を形成する。
【0022】
燃料電池装置60の各構成要素は次の通り接続されている。メタノールタンク61は所定の流路によって蒸発器65に接続されている。この流路の途中に設けられたポンプP2は、原燃料であるメタノールの流量を調整しつつ、メタノールを蒸発器65に供給する。水タンク62も同様に所定の流路によって蒸発器65に接続されている。この流路の途中に設けられたポンプP3は、水の流量を調整しつつ、これを蒸発器65に供給する。なお、メタノールの流路と水の流路とは、それぞれポンプP2,P3の下流側で一つの流路に合流し、蒸発器65に接続される。
【0023】
蒸発器65は、供給されたメタノールと水とを気化させる。蒸発器65には、バーナ63と圧縮機64とが併設されている。蒸発器65は、バーナ63から供給される燃焼ガスによってメタノールと水とを沸騰、気化させる。ここで、メタノールタンク61と蒸発器65とを接続する上記流路は、途中で分岐して、バーナ63とも接続している。この分岐した流路には、ポンプP1が設けられており、これによってバーナ63に供給されるメタノール量が調節される。バーナ63には、燃焼の燃料として、上記メタノールに加えて、燃料電池60Aでの電気化学反応で消費されずに残った燃料排ガスも供給される。バーナ63は、メタノールと燃料排ガスのうち、後者を主として燃焼させる。バーナ63の燃焼温度は、センサT1の出力に基づいて制御されており、約800℃から1000℃に保たれる。バーナ63の燃焼ガスは、蒸発器65に移送される際にタービンを回転させ、圧縮機64を駆動する。圧縮機64は、燃料電池装置60の外部から空気を取り込んでこれを圧縮し、この圧縮空気を燃料電池60Aのカソード側に供給する。
【0024】
蒸発器65と改質器66とは所定の流路で接続されており、蒸発器65で得られた原燃料ガス、即ちメタノールと水蒸気との混合ガスは、この流路を介して改質器66に供給される。改質器66は、内部に改質触媒を備えており、供給されたメタノールと水とからなる原燃料ガスを改質して水素リッチな燃料ガスを生成する。また、蒸発器65と改質器66とを接続する流路の途中には、温度センサT2が設けられており、この流路を通過する上記混合ガスの温度が通常約250℃の所定値になるように、バーナ63に供給するメタノール量が制御される。改質器66では、混合ガスが蒸発器65から持ち込んだ熱を利用して水蒸気改質反応が行なわれる。なお、本実施例の改質器66では、メタノールから水素リッチガスを生成する際に、水蒸気改質反応に加えて酸化反応も同時に進行し、この酸化反応によっても熱を発生させる。そのため、この酸化反応に必要な酸素を供給するために、改質器66には外部から空気を供給するためのブロワ68が併設されている。
【0025】
改質器66とCO低減部67とは所定の流路によって接続されており、改質器66で生成された水素リッチな燃料ガスは、CO低減部67に供給される。所定の触媒下で主に水蒸気改質反応によって水素リッチガスを生成する改質器66から排出される燃料ガス中には、通常は一定量の一酸化炭素(CO)が含まれる。CO低減部67は、この燃料ガス中の一酸化炭素濃度を低減させる。固体高分子型の燃料電池では、燃料ガス中に含まれる一酸化炭素が、アノードにおける反応を阻害して燃料電池の性能を低下させてしまうからである。CO低減部67は、燃料ガス中の一酸化炭素を酸化することにより、一酸化炭素濃度を低減させる。
【0026】
CO低減部67と燃料電池60Aとは所定の流路によって接続されており、一酸化炭素濃度が低減された燃料ガスは、この流路を介して燃料電池60Aのアノード側に供給され、電気化学反応に利用される。また、先に説明した通り、燃料電池60Aのカソード側には、圧縮機64で圧縮された空気が供給されている。この圧縮空気は、酸化ガスとして燃料電池60Aのカソード側で電気化学反応に利用される。
【0027】
以上の構成を有する燃料電池装置60は、メタノールと水を原燃料として電気化学反応によって電力を供給することができる。本実施例では、メタノールタンク61,水タンク62内のメタノールおよび水の残量に応じて、燃料電池の運転状態を制御する。このような制御を実現するため、それぞれのタンクには、容量センサ61a,62aが設けられている。なお、本実施例では、メタノールおよび水を用いる燃料電池装置60を搭載しているが、燃料電池装置60は、これに限定されるものではなく、種々の構成を適用することができる。
【0028】
また、図1に示した燃料電池装置60は、熱電素子40を備えている。この熱電素子40は、実際には図2に示す燃料電池装置60における燃料電池60Aに設けられている。熱電素子とは、ゼーベック効果を利用して熱エネルギを電気エネルギに変換する周知の装置であり、例えばBi2Te3系やPbTe系など、種々の素子が知られている。既述したように、燃料電池は電気化学反応によって起電力を得る装置であるが、燃料の有する化学エネルギは完全に電気エネルギに変換されるわけではなく、電気エネルギに変換されなかったエネルギが熱エネルギとなるなどの理由で、燃料電池60Aは発熱する。本実施例では、燃料電池60Aに熱電素子40を設けることで、燃料電池60Aにおいて発電に伴って生じる熱を、電気エネルギとして回収している。熱電素子40は、燃料電池60Aの外壁面の所定の位置に取り付けられており、燃料電池60Aに取り付けられた取り付け面が、燃料電池60Aの運転温度に応じて、他方の面よりも高温になることによって、起電力を発生する。このような熱電素子40は、スイッチ41を介してバッテリ50に接続されている。スイッチ41がオンの場合には、熱電素子40で得られた電力によってバッテリ50を充電することができる。スイッチ41は制御ユニット70によって制御されており、バッテリ50を充電するのに充分な電圧が熱電素子40に生じていない場合などには、このスイッチ41はオフとなる。
【0029】
さらに、図1に示した燃料電池装置60には、燃料電池60Aの運転温度を制御するための冷却装置が備えられている。上記したように、燃料電池60Aには熱電素子40が備えられており、電気化学反応で生じた熱の一部は電気エネルギとして回収されるが、残りの熱を排出して燃料電池60Aの運転温度を所望の範囲に制御するために、この冷却装置が設けられている。燃料電池装置60の冷却装置は、冷媒路94と、ポンプ93とラジエータ92とからなり、冷却水は、ポンプ93によって冷媒路94を通過し、ラジエータ92で放熱することによって燃料電池60Aの冷却を行なう。ポンプ93は、後述する補機駆動装置82によって駆動される。このような冷却装置では、ポンプ93の駆動状態、すなわち冷却水の流速を制御することによって、冷却の程度を調節することができる。ここで、冷媒路94には、燃料電池60Aとの接続部の近傍であって、燃料電池60Aから冷却水が排出される側において、冷却水温センサ90が設けられている。冷却水温センサ90は、燃料電池60Aから排出された冷却水の温度TW を検出するため、その検出値は、燃料電池60Aの内部温度を直接反映する。
【0030】
なお、以下の説明では、燃料電池での発電に使用されるメタノールおよび水を総称してFC燃料と呼ぶものとする。両者の容量は常に同一とは限らない。以下の説明においてFC燃料量というときは、燃料電池での発電に制約を与える側の容量を意味するものとする。つまり、メタノールおよび水のうち、発電を継続した場合に先に不足する側の容量を意味するものとする。
【0031】
バッテリ50は、既述したように補助的な電源であり、制御ユニット70や照明装置などの電力機器に電力を供給する以外は、主に、燃料電池の始動時などにモータ20に対して電力を補うために用いられる。バッテリとしては、鉛蓄電池や、ニッケル−カドミウム蓄電池、ニッケル−水素蓄電池、リチウム2次電池など種々の2次電池を用いることができる。このバッテリ50の容量は、燃料電池の始動時にその暖機を行なう間、燃料電池を電源として走行すべき後述する運転状態(後述する図4におけるMG領域)において、モータ20を駆動する電源となりうる大きさとした。
【0032】
トルクコンバータ30は、流体を利用した周知の動力伝達機構である。ここでは、トルクコンバータ30の入力軸、即ちモータ20の出力軸13と、トルクコンバータ30の出力軸14との間で、一方の回転軸から他方の回転軸へと動力が伝達される。トルクコンバータ30にはさらにロックアップクラッチが設けられており、これによって、両回転軸が互いに滑りをもって回転可能である状態と、両回転軸が滑りを生じないよう結合された状態とが切り替えられる。ロックアップクラッチのオン・オフは制御ユニット70により制御される。
【0033】
変速機100は、内部に複数のギヤ、クラッチ、ワンウェイクラッチ、ブレーキ等を備え、変速比を切り替えることによってトルクコンバータ30の出力軸14のトルクおよび回転数を変換して出力軸15に伝達可能な機構である。本実施例では前進5段、後進1段の変速段を実現可能な変速機を適用した。変速機100の変速段は、制御ユニット70が車速等に応じて設定する。運転者は、車内に備えられたシフトレバーを手動で操作し、シフトポジションを選択することによって、使用される変速段の範囲を変更することが可能である。なお、変速機100における変速比の切り替えに関わる種々のクラッチやブレーキは、それぞれ、油圧によって係合および開放する。詳細な図示は省略したが、変速機100は、作動を可能とする油圧配管および油圧を制御するためのソレノイドバルブ等が設けられた油圧制御部104を備えており、これによって上記油圧が制御される。さらに変速機100は、電動式の油圧ポンプ102を備えており、この油圧ポンプ102が、上記クラッチおよびブレーキを作動させるための作動油を供給する。本実施例のハイブリッド車両では、制御ユニット70が油圧制御部104内のソレノイドバルブ等に制御信号を出力することによって、各クラッチおよびブレーキの作動を制御する。
【0034】
本実施例のハイブリッド車両では、エンジン10などの動力源から出力される動力は、補機の駆動にも用いられる。図1に示す通り、エンジン10には補機駆動装置82が結合されている。補機には、エアコンのコンプレッサやパワーステアリング用のポンプ等が含まれる。ここでは、エンジン10の動力を利用して駆動される補機類をまとめて補機駆動装置82として示した。補機駆動装置82は、具体的にはエンジン10のクランクシャフトにプーリやベルトを介して結合されており、クランクシャフトの回転動力によって駆動される。
【0035】
補機駆動装置82には、また、補機駆動用モータ80も結合されている。補機駆動用モータ80は、切替スイッチ83を介して燃料電池装置60およびバッテリ50に接続されている。補機駆動用モータ80は、モータ20と同様の構成を有しており、エンジン10の動力によって運転され、発電を行うことができる。補機駆動用モータ80で発電された電力はバッテリ50に充電することができる。また、補機駆動用モータ80は、バッテリ50および燃料電池装置60から電力の供給を受けて力行することもできる。本実施例のハイブリッド車両は、後述する通り、所定の条件下では、エンジン10の運転が停止される。補機駆動用モータ80を力行すれば、エンジン10が停止している時でも補機駆動装置82を駆動することができる。もとより、エンジン10が停止している場合には、入力クラッチ18をオンにして、モータ20の動力で補機駆動装置82を駆動するものとしてもよい。補機駆動用モータ80で補機を駆動する際には、負担を軽減するために、エンジン10と補機駆動装置82との間の補機クラッチ19を解放する。
【0036】
本実施例のハイブリッド車両では、エンジン10、モータ20、トルクコンバータ30、変速機100、補機駆動用モータ80等の運転を制御ユニット70が制御している(図1参照)。制御ユニット70は、内部にCPU、RAM,ROM等を備えるワンチップ・マイクロコンピュータであり、ROMに記録されたプログラムに従い、CPUが後述する種々の制御処理を行う。制御ユニット70には、かかる制御を実現するために種々の入出力信号が接続されている。図3は制御ユニット70に対する入出力信号の結線を示す説明図である。図中の左側に制御ユニット70に入力される信号を示し、右側に制御ユニット70から出力される信号を示す。
【0037】
制御ユニット70に入力される信号は、種々のスイッチおよびセンサからの信号である。このような信号としては、例えば、燃料電池60Aに取り付けた熱電素子40からの信号の他、燃料電池60Aの冷却水の水温、燃料電池用の燃料残量、燃料電池温度、エンジン10の回転数、エンジン10の水温、イグニッションスイッチ、バッテリ残存容量SOC、バッテリ温度、車速、トルクコンバータ30の油温、シフトポジション、サイドブレーキのオン・オフ、フットブレーキの踏み込み量、エンジン10の排気を浄化する触媒の温度、アクセル開度などに関する信号や、車両の加速度センサからの信号などがある。制御ユニット70には、その他にも多くの信号が入力されているが、ここでは図示を省略した。
【0038】
制御ユニット70から出力される信号は、エンジン10,モータ20,トルクコンバータ30,燃料電池60,変速機100等を制御するための信号である。このような信号としては、例えば、熱電素子40によるバッテリ50の充電の実行に関与するスイッチ41の制御信号、エンジン10の点火時期を制御する点火信号、燃料噴射を制御する燃料噴射信号、補機駆動用モータ80の運転を制御する補機駆動用モータ制御信号、モータ20の運転を制御するモータ制御信号、変速機100の変速段を切り替える変速機制御信号、入力クラッチ18及び補機クラッチ19の制御信号、エアコンコンプレッサや油圧ポンプの制御信号などの補機を制御する信号、モータ20の電源の切替スイッチ84の制御信号、補機駆動用モータ80の電源の切替スイッチ83の制御信号、燃料電池装置60の制御信号などがある。制御ユニット70からは、その他にも多くの信号が出力されているが、ここでは図示を省略した。
【0039】
(2)一般的動作:
次に、本実施例のハイブリッド車両の一般的動作について説明する。先に図1で説明した通り、本実施例のハイブリッド車両は動力源としてエンジン10とモータ20とを備える。制御ユニット70は、車両の走行状態、即ち車速およびトルクに応じて両者を使い分けて走行する。両者の使い分けは予めマップとして設定され、制御ユニット70内のROMに記憶されている。
【0040】
図4は車両の走行状態と動力源との関係を示す説明図である。図中の領域MGはモータ20を動力源として走行する領域である。領域MGの外側の領域は、エンジン10を動力源として走行する領域であり、以下、領域EGと呼ぶ。また、前者の領域に対応する走行状態をEV走行と呼び、後者に対応する走行状態をエンジン走行と呼ぶものとする。
【0041】
通常のガソリンエンジンであるエンジン10は、高速走行時に比べて低速走行時にはエネルギ効率が低下するという性質を有している。本実施例のハイブリッド車両では、このような低速走行時にはエンジン10に代えてモータ20から駆動力を得ることによって、車両全体としてのエネルギ効率の低下を抑え、燃費の向上を図っている。したがって、本実施例のハイブリッド車両では、エンジン10を用いた場合にエネルギ効率が特に劣る領域(走行状態)において、充分に駆動力が得られるように、モータ20の性能が設定されている。なお、図1の構成によれば、エンジン10とモータ20の双方を動力源として走行することも可能ではあるが、本実施例では、このような走行領域は設けていない。
【0042】
図示する通り、本実施例のハイブリッド車両は、まずEV走行で発進する。走行状態が領域EGにある間は、入力クラッチ18をオフにして走行する。EV走行により発進した車両が、図4のマップにおける領域MGと領域EGの境界近傍の走行状態に達した時点で、制御ユニット70は、入力クラッチ18をオンにするとともに、エンジン10を始動する。入力クラッチ18をオンにすると、エンジン10はモータ20により回転させられる。制御ユニット70は、エンジン10の回転数が所定値まで増加したタイミングで燃料を噴射し点火する。また、VVT機構を制御して、吸気バルブおよび排気バルブの開閉タイミングをエンジン10の運転に適したタイミングに変更する。
【0043】
こうしてエンジン10が始動して以後、領域EG内ではエンジン10のみを動力源として走行する。エンジン走行が開始されると、制御ユニット70は、駆動回路51,52のトランジスタを全てシャットダウンする。この結果、モータ20は単に空回りした状態となる。
【0044】
制御ユニット70は、このように車両の走行状態に応じて動力源を切り替える制御を行うとともに、変速機100の変速段を切り替える処理も行う。変速段の切り替えは動力源の切り替えと同様、車両の走行状態に応じて予め設定されたマップに基づいてなされる。このようなマップは、シフトポジションごとにそれぞれ異なるものが設けられている。図4にはDポジション、4ポジション、3ポジションに対応するマップを示した。このマップに示す通り、制御ユニット70は、車速が増すにつれて変速比が小さくなるように変速段の切り替えを実行する。
【0045】
ドライブポジション(D)では、図4に示す通り、第5速(5th)までの変速段を用いて走行する。4ポジションでは、このマップにおいて、第4速(4th)までの変速段を用いて走行する。したがって4ポジションでは、図8における5thの領域であっても第4速(4th)が使用される。同様に3ポジションの場合には、図8のマップにおいて、第3速(3rd)までの変速段を用いて走行する。
【0046】
2ポジション、Lポジションでは、マップを各シフトポジションに固有のものに変更して変速段の制御を行う。図5は2ポジションにおける変速段の切り替えの様子を示す説明図である。2ポジションでは、第1速および第2速の変速段が使用される。2ポジションのマップ(図9)において、第1速と第2速の切り替えを行う境界は、Dポジションのマップ(図8)と同じである。また、2ポジションでは、Dポジションに比較して、領域MGの範囲が異なって設定されている(図4および図5においてハッチングを付した領域を参照)。図5中の破線は、Dポジションのマップとの対比のために示したものであり、Dポジションのマップ中の第2速と第3速との境界に対応する曲線である。このように、2ポジションのマップでは、Dポジションのマップに比較して、領域MG中で第2速に対応する領域を広げると共に、全体として領域MGを縮小している。これは、Dポジションのときに第3速の変速段を使用した走行状態を第2速で走行する場合には、モータ20の回転数がより高くなり、モータ20の性能の上限に近づくことによる。したがって、2ポジションにおける領域MGの範囲は、搭載しているモータ20の性能と、エンジン10およびモータ20のそれぞれを用いる場合のエネルギ効率とを考慮して設定すればよく、搭載するモータ20の性能に応じて、より広く、あるいはより狭く設定することとしてもよい。
【0047】
図6はLポジションにおける変速段の切り替えの様子を示す説明図である。Lポジションでは、第1速のみが使用される。2ポジションにおけるマップの設定で説明したのと同様の理由により、Lポジションでは、2ポジションに比較して領域MGの範囲が相違する。Lポジションにおける領域MGは、2ポジションのマップにおいて、領域MG中の第1速に対応する領域よりも広い範囲に設定されている。図7はRポジションにおける変速段の切り替えの様子を示す説明図である。Rポジションでは後進するため、領域MGの広さは前進方向のシフトポジションにおけるマップとは個別に設定した。
【0048】
変速段の切り替えはこのマップによる切り替えの他、運転者がアクセルペダルを急激に踏み込むことにより一段変速比が高い側に変速段を移す、いわゆるキックダウンと呼ばれる切り替えも行われる。このような切り替え制御は、エンジンのみを動力源とし、自動変速装置を備えた周知の車両と同様である。なお、変速段と車両の走行状態との関係は、図4〜図7に示した他、変速機100の変速比に応じて種々の設定が可能である。
【0049】
なお、図4〜図7では、車両の走行状態に応じてEV走行とエンジン走行とを使い分ける場合のマップを示したが、本実施例の制御ユニット70は、全ての領域をエンジン走行で行う場合のマップも備えている。このようなマップは、図4〜図7において、EV走行の領域(領域MG)を除いたものとなっている。EV走行には電力が必要である。制御ユニット70は、バッテリ50および燃料電池装置60から電力を確保できる場合には、EV走行とエンジン走行とを使い分けて運転を行い、充分な電力を確保できない場合には、エンジン走行で運転する。また、EV走行で発進を開始した場合でも、発進後に電力が充分確保できない状況に至った場合には、車両の走行状態が領域MG内にあってもエンジン走行に切り替えられる。さらに、本実施例のハイブリッド車両は、燃料電池装置60に設けた既述した熱電素子40による熱エネルギの回収に異常が生じた場合には、領域MGであってもエンジン走行を行なう。このような動作については後述する。
【0050】
(3)廃熱回収制御処理:
図8はEV廃熱回収制御処理ルーチンのフローチャートである。本ルーチンは、制御ユニット70内のCPUによって、車両の走行中に、所定の時間間隔で周期的に実行される。本ルーチンが開始されると、CPUは、まず、車両の運転状態を入力する(ステップS100)。ここでは、図3に示した種々のセンサからの入力がなされるが、特に、熱電素子40や冷却水温センサ90からの入力信号や、シフトポジション、車速、アクセル開度、バッテリ残容量SOC、燃料電池用の残燃料量FCLなどに関する入力信号が、以後の処理に関与する。
【0051】
次に、CPUは、シフトポジションや、車速、アクセル開度などに基づいて、車両の走行状態が、図4〜図7に示した領域EGに対応する走行状態であるか否かを判断する(ステップS110)。領域EGに対応する走行状態ではない、すなわち、既述したマップにおける領域MGに対応する走行状態であると判断されたときには、燃料電池60Aに設けた熱電素子40によって熱エネルギの回収が正常に行なわれているかどうかを判断する(ステップS120)。熱電素子40によって熱エネルギの回収が正常に行なわれているかは、例えば、熱電素子40がバッテリ50を充電する際の電圧を検出し、熱電素子40によるバッテリ50の充電が、正常範囲の充電電圧で行なわれているかどうかを判断すればよい。あるいは、熱電素子40からバッテリ50への出力を検出して熱電素子40によって回収されたエネルギ量を求め、燃料電池装置60の運転状態などから推定される燃料電池60Aにおける発熱量に基づいて、熱電素子40で回収されたエネルギ量が妥当な量かどうかを判断することとしてもよい。
【0052】
なお、熱電素子40による熱エネルギ回収の異常とは、熱電素子40自体が損傷を受けた場合や、熱エネルギの回収に関わる回路に異常が生じた場合などを含む。また、既述したように、熱電素子40とバッテリ50とを接続する回路には、燃料電池60Aの運転温度が充分に昇温していないときなどに接続が切断されるスイッチ41が設けられているが、以下の説明では、燃料電池60Aの運転温度は充分に昇温しており、スイッチ41はオンとなっているものとする。
【0053】
本実施例のハイブリッド車両は、ステップS120において熱電素子40による熱エネルギの回収の動作に異常が検出されたときには、この熱電素子40を設けた燃料電池装置60を駆動エネルギ源として用いるのを停止することを特徴としているが、ここではさらに、上記異常の有無を判断した後に、燃料電池60Aの運転温度に基づいた判断を行なって、用いる駆動エネルギ源を選択している。ステップS120において、熱電素子40からの熱エネルギの回収が正常に行なわれていないと判断されたときには、後述するステップS150において冷却水の温度の基準値として用いる温度Tlim に対して、値TW1を代入する(ステップS130)。また、ステップS120において、熱電素子40からの熱エネルギの回収が正常に行なわれていると判断されたときには、同じく温度Tlim に対して、値TW2を代入する(ステップS140)。温度Tlim に代入するこれらの値TW1およびTW2は、後述するように燃料電池の運転温度の上限値に対応して予め設定され、制御ユニット70内に記憶された値である。
【0054】
ステップS130あるいはステップS140において、温度Tlim に対して所定の値を代入すると、次に、冷却水温センサ90が検出した冷却水温TW と既述した値Tlim との比較を行なう(ステップS150)。冷却水温TW は、燃料電池60Aの内部温度を直接反映する温度であり、ステップS150では、冷却水温TW を所定の温度Tlim と比較することによって、燃料電池60Aの内部温度が上昇しすぎていないかどうかを判断する。
【0055】
ステップS150において、冷却水温TW が基準温度Tlim 以上であった場合には、燃料電池60Aの内部温度が上昇しすぎていると判断され、以下、燃料電池装置60を電源として用いずエンジン走行を行なうための制御が実行される。まず、車両がエンジン走行中であるかどうかを判断する(ステップS160)。車両がエンジン走行中である場合には、エンジン走行処理を実行し(ステップS170)、本ルーチンを終了する。この処理では、車速やアクセル開度やシフトポジションに応じて、エンジン10の駆動に関わる各種駆動信号の出力を続行する。また、ステップS160において、車両がエンジン走行中ではない、すなわちEV走行中であると判断された場合には、エンジン走行開始処理を実行し(ステップS160)、本ルーチンを終了する。この処理では、燃料電池装置160による発電の動作を停止すると共に、エンジン10を起動し、エンジンの駆動に関わる所定の制御を開始する。
【0056】
また、ステップS150において、冷却水温TW が基準温度Tlim 未満であった場合には、燃料電池60Aの内部温度が許容範囲内であると判断され、以下、燃料電池装置60を電源としてEV走行を行なうための制御が実行される。まず、車両がEV走行中であるかどうかを判断する(ステップS190)。車両がEV走行中である場合には、EV走行処理を実行し(ステップS200)、本ルーチンを終了する。この処理では、車速やアクセル開度やシフトポジションに応じて、燃料電池装置60やモータ20の駆動に関わる各種駆動信号の出力を続行する。また、ステップS190において、車両がEV走行中ではない、すなわちエンジン走行中であると判断された場合には、EV走行開始処理を実行し(ステップS210)、本ルーチンを終了する。この処理では、エンジン10の駆動を停止すると共に、燃料電池装置60およびモータ20を駆動するための所定の制御を開始する。
【0057】
なお、ステップS110において、車両の走行状態が領域EGに対応する走行状態であると判断されたときには、そのままステップS160に移行し、上記したエンジン走行のための制御(ステップS170あるいはステップS180)を行ない、本ルーチンを終了する。
【0058】
なお、ステップS130において基準温度Tlim に代入する値TW1は、上記したように、ステップS120において熱電素子40による熱エネルギの回収が異常であると判断されたときに選択される値である。この値は、燃料電池が定常運転を続けることが可能であるような燃料電池内部温度の上限に対応する冷却水温として設定される。検出された冷却水温Tw がこの値を超えた場合には、熱回収が異常となって燃料電池60Aが充分に冷却されないために、燃料電池60Aの内部温度が、定常運転を行なう範囲を超えて上昇してしまったと判断される。また、ステップS140において基準温度Tlim に代入される値TW2は、上記したように、ステップS120において熱電素子40による熱エネルギの回収が正常であると判断されたときに選択される値である。熱電素子40および冷却装置は、通常予想されるEV走行の状態において充分に燃料電池60Aを冷却可能となるような性能を有するように設計されているが、例えば、設計時に想定した条件を上回る長時間にわたってEV走行が行なわれた場合などに、燃料電池60Aの内部温度が上昇しすぎてしまうことが考えられる。上記値TW2は、このような場合に燃料電池60Aの内部温度の異常上昇を検出するための値として設定されている。基準温度Tlim に代入するこれらの値TW1および値TW2は、上記目的に応じてそれぞれ設定すればよいが、同じ値を設定することとしてもよい。
【0059】
また、本発明のハイブリッド車両では、車速やアクセル開度などに基づく以外に、バッテリ50の残存容量SOCやFC燃料の量などに基づいて、EV走行を行なうかエンジン走行を行なうかが決定される。すなわち、FC燃料の量が所定量以下となり、また、バッテリ50の残存容量SOCが所定量以下となった場合には、車速やアクセル開度から設定される走行状態に関わらず、エンジン走行が行なわれる。その他、強制的にエンジン走行のみを行なうことを指示するスイッチを車両に設けることとしてもよい。したがって、ステップS110においては、マップによって走行状態が領域EGかどうかを判断するのに加え、上記したようにエンジン走行が指示されているかどうかをも判断している。
【0060】
以上のように構成した本実施例のハイブリッド車両によれば、燃料電池60Aで生じた熱エネルギを熱電素子40によって回収する動作に異常が生じたときには、通常は燃料電池装置60を駆動エネルギ源とする走行状態であっても、駆動エネルギ源をエンジン10に切り替えて走行する。したがって、熱電素子40による熱エネルギの回収に異常が生じたときに、燃料電池60Aで生じた熱エネルギが利用されずに廃棄されてしまうのを抑えることができる。このとき、駆動エネルギ源をエンジン10に切り替えるため、車両は走行しつづけることができる。なお、単にこのような効果を得るためには、図8のステップS130ないしステップS150に示した燃料電池60Aの運転温度に基づいた判断を行なわないこととすればよい。すなわち、ステップS120において熱電素子40による熱回収に異常があると判断されたときには、ステップS130ではなくステップS160に移行してエンジン走行を行なうこととし、ステップS120において熱電素子40による熱回収が正常であると判断されたときには、ステップS140ではなくステップS190に移行してEV走行を行なうこととすればよい。
【0061】
本実施例では、上記した熱電素子40による熱回収の異常の有無の判断に加えて、さらに、燃料電池60Aの運転温度に関する判断を行なって、駆動エネルギ源を選択している。ここでは、熱電素子40による熱エネルギの回収に異常が生じた場合であっても、車両がEV走行を行なうべき走行状態であって、燃料電池60Aの内部温度が許容できる温度であれば、車両の駆動エネルギ源として燃料電池装置60を用いる。したがって、上記した効果に加えて、さらに以下のような効果を奏する。すなわち、車両がEV走行をすべき走行状態のときに、エンジン10を駆動エネルギ源とすることによってエネルギ効率が低下してしまうのを抑えることができる。
【0062】
さらに、本発明のハイブリッド車両では、熱電素子40による熱エネルギ回収の動作そのものに異常が生じた場合に加えて、熱エネルギ回収の動作が正常であっても、熱電素子40を設けた燃料電池60Aの発熱状態が異常となり、燃料電池60Aの温度が上昇しすぎた場合には、駆動エネルギ源をエンジン10に切り替える。したがって、燃料電池60Aの運転温度が上昇しすぎてしまうのを防止し、燃料電池装置60の耐久性を確保することができる。なお、熱電素子40による熱エネルギの回収が行なわれているにもかかわらず、燃料電池60Aが異常発熱する原因としては、既述したように車両の運転状態が設計規格が基づく条件を超えてしまった場合の他、燃料電池60Aそのものに異常が生じた場合や、燃料電池装置に設けた冷却装置(例えばポンプ93)に異常が生じた場合などが考えられる。このような場合にも、異常発熱を検知して燃料電池装置60による発電を停止することができるため、燃料電池装置60の安全性を高めることができる。
【0063】
また、ステップS120において熱電素子40が正常と判断されたときに、ステップS150において冷却水温度TW (あるいは燃料電池内部温度)が所定の基準温度を超えたかどうかを判断する代わりに、冷却水温度TW の上昇率が所定値を超えていないかを判断することとしてもよい。上記したように燃料電池60Aが異常発熱を起こすような状況が起きたときには、熱電素子40および冷却装置の冷却能力を超える熱が生じて、高い温度上昇率を示すようになる。このような状態を検知すれば、燃料電池60Aの運転温度が実際に許容範囲を超えてしまう前に、EV走行を停止することができる。
【0064】
なお、上記実施例では、燃料電池60Aの内部温度を、燃料電池60Aから排出された冷却水の温度TW に基づいて判断したが、燃料電池60Aに温度センサを直接取り付けることとしてもよい。この場合には、ステップS130およびステップS140において温度センサに対応する基準温度を設定し、この温度センサの検出値に基づいて、図8に示したステップS150に対応する判断を行なえばよい。燃料電池60Aから排出される冷却水温TW は、燃料電池60Aの内部温度を直接反映するとはいえ、ポンプ93の駆動状態、すなわち冷却水による冷却効率によって、燃料電池60Aの内部温度と冷却水温との対応関係は変化する。したがって、冷却水温TW を用いて燃料電池60Aの内部温度を判断する場合には、ステップS130ないしステップS150で冷却水温TW と基準温度とを比較する際に、ポンプ93の駆動状態に応じて、冷却水温TW あるいは基準温度を補正することが望ましい。また、燃料電池60Aの内部温度変化と冷却水温TW の変化との間には、所定の遅れが生じるが、上記したように燃料電池60Aに温度センサを設け、その検出結果に基づいて判断を行なう場合には、このような温度変化の遅れが生じることなく、正確に制御を行なうことができる。
【0065】
上記実施例では、熱電素子40による熱エネルギの回収状態が異常であっても、領域MG(エンジン10を駆動エネルギ源として用いたときにはエネルギ効率が低下する領域)に対応する走行状態では、燃料電池60Aの運転温度が所定温度以上に上昇するまでは、燃料電池装置60による発電を続行してEV走行を行ない、エネルギ効率を確保することとした。ここで、EV走行とエンジン走行それぞれのエネルギ効率に基づいて図4〜図7に示したマップを作成する際に、EV走行では熱電素子40に回収されるエネルギ量を考慮するならば、熱電素子40による熱エネルギの回収に異常が生じたときには、車両の走行状態が図4〜図7に示したMG領域にあっても、エンジン走行の方がエネルギ効率が高くなる可能性がある。したがって、熱電素子40による熱エネルギ回収に異常が生じたときには、さらに、熱エネルギの回収が行なわれないことでエネルギ効率が低下してしまうことに基づいて、EV走行を行なうかエンジン走行を行なうかを決定することとしてもよい。もとより、熱エネルギの回収に異常が生じるとEV走行のエネルギ効率が大きく低下する場合には、異常を検知したら直ちにエンジン走行を行なうこととしてもよい。
【0066】
本実施例のハイブリッド車両では、熱電素子40によって熱エネルギの回収を行なうため、冷却水を用いる冷却装置のみによって燃料電池60Aを冷却する(発生した熱をすべて廃棄する)場合に比べて、エネルギ効率を向上させることができると共に、冷却装置をより小型化できるという効果を奏する。ここで、冷却能力が充分に高い冷却装置を備えることとすれば、熱電素子40による熱回収に異常が生じた場合であっても、車両が領域MGに対応する走行状態にあるうちは、EV走行を行なうことが可能となる。このような構成では、熱電素子40による熱エネルギの回収に異常が生じたときには、熱エネルギが回収されないことでエネルギ効率が低下してしまうことに加えて、冷却装置のみで冷却を行なうことでエネルギ消費量が増大(例えばポンプ93の消費電力の増大)してしまうことに基づいて、車両全体でより高いエネルギ効率が実現できるように、EV走行を行なうかエンジン走行を行なうかを決めることとすれば、常に高いエネルギ効率を維持することができる。
【0067】
上記実施例では、燃料電池60Aに熱電素子40を取り付け、電気化学反応の進行と共に生じる熱の一部を電気エネルギに換えて回収することとしたが、同様の熱電素子40を、燃料電池60Aの代わりにモータ20に取り付けることとしてもよい。また、燃料電池60Aとモータ20との両方に取り付けることとしてもよい。すなわち、モータ20も回転駆動に伴って発熱するため、モータ20に熱電素子を取り付け、生じた熱を電気エネルギに変換して回収し、バッテリ50に蓄えることによって、システム全体のエネルギ効率を向上させることができる。燃料電池とモータとの両方に熱電素子を取り付けたハイブリッド車両の構成を、第2実施例として図9に示す。このハイブリッド車両は、既述した実施例と同様に、燃料電池60Aが熱電素子40を備えると共に、モータ20が熱電素子42を備えている。なお、既述した図1では記載を省略したが、図1に示したハイブリッド車両が備えるモータ20も、所定の冷却装置を備えている。図9のハイブリッド車両では、燃料電池60Aの冷却装置とモータ20の冷却装置とが、共通する冷媒路194とラジエータ192とポンプ193とを備えることとし、また、モータ20から排出される冷却水温を検出する冷却水温センサ91を設けた。なお、図1に示したハイブリッド車両と図9に示したハイブリッド車両とでは、ほぼ同じ構成を備えているため、共通する部材には同じ番号を付し、詳しい説明は省略する。
【0068】
第2実施例のハイブリッド車両では、燃料電池60Aとモータ20の両方において熱電素子が設けられている。このハイブリッド車両の走行中には、図8と同様の廃熱回収制御処理ルーチンが実行される。ただし、ステップS120に対応する工程では、燃料電池60Aに取り付けた熱電素子40と、モータ20に取り付けた熱電素子42との両方について、熱エネルギの回収が正常に行なわれているかどうかが判断される。また、図8に示したステップ130ないしステップS150に対応する工程では、冷却水温センサ90が検出する燃料電池60Aの温度と、冷却水温センサ91が検出するモータ20の温度とのそれぞれにおいて、同様の処理を行なう。冷却水温センサ90の検出値と、冷却水温センサ91の検出値のうちの少なくともいずれかが、所定の基準温度以上であった場合には、エンジン走行を行ない(ステップS160ないしステップS170参照)、所定の基準温度を超えない場合には、EV走行を行なう(ステップS190ないしステップS210参照)。
【0069】
このような第2実施例のハイブリッド車両によれば、第1実施例のハイブリッド車両と同様に、熱電素子による熱エネルギの回収が行なわれないときにはEV走行を行なわないため、エネルギ回収が行なわれない燃料電池60Aやモータ20を用いることによってエネルギ効率が低下してしまうのを防止することができる。また、第2実施例のハイブリッド車両は、モータ20にも熱電素子42を設けて、モータ20の駆動時に生じる熱エネルギを回収するため、車両全体のエネルギ効率をさらに向上させることができる。
【0070】
なお、第2実施例のハイブリッド車両において、いずれかの熱電素子に異常が生じた場合には、図8と同様に冷却水の温度に基づく他に、さらにエネルギ効率の変化に基づいて、EV走行を行なうかエンジン走行を行なうかを判断することとしてもよい。すなわち、熱電素子によって熱エネルギが回収されないことによるエネルギ効率の低下と、EV走行に代えてエンジン走行を行なうことによるエネルギ効率の変化とに基づいて、車両全体でより高いエネルギ効率を実現できるように、EV走行を行なうかエンジン走行を行なうかを判断することとしてもよい。これによって、常に高いエネルギ効率を維持することができる。
【0071】
上記実施例では、燃料電池60Aやモータ20といったEV走行に関わる構成に熱電素子を設けることとしたが、エンジン10に熱電素子を設けることとしてもよい。このような構成のハイブリッド車両を第3実施例として図10に示す。第3実施例のハイブリッド車両は、エンジン10において熱電素子44を備えているが、これ以外は図1に示した第1実施例のハイブリッド車両とほぼ同様の構成を備えている。また、図10では記載を省略したが、エンジン10に取り付けた熱電素子44は、燃料電池60Aに取り付けた熱電素子40と同様にバッテリ50に接続されてこれを充電可能となっており、エネルギ回収の状態に関わる信号を制御ユニット70に出力する。第3実施例のハイブリッド車両は、エンジン10で生じる熱も、電気エネルギに変換して回収できるため、車両全体のエネルギ効率をさらに向上させることができる。
【0072】
本実施例のハイブリッド車両では、車両の走行中に図8に示した廃熱回収制御処理ルーチンと同様の処理を実行する。したがって、第1実施例と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施例では、エンジン10にも熱電素子44を設けているため、エンジン10から外部に廃棄される熱を電気エネルギに変換して回収することができ、車両全体のエネルギ効率をさらに向上させることができる。
【0073】
また、エンジン10に設けた熱電素子44についても、熱エネルギ回収の動作に異常がないかどうかを検出し、その結果に加えてエネルギ効率をさらに考慮して、EV走行とエンジン走行とを切り替える構成としてもよい。例えば、ドライブポジションで走行中は、図4と同様のマップに従ってEV走行とエンジン走行とを切り替える。ここで、領域MGと領域EGとの境界が、熱電素子40および熱電素子44による熱エネルギの回収を考慮したものであれば、いずれかの熱電素子による熱エネルギ回収の動作に異常が生じると、この境界の近傍に相当する走行状態では、EV走行とエンジン走行との間でエネルギ効率の優劣関係が逆転する場合がある。すなわち、モータ20の性能が充分であれば、図4に示すマップでは領域EGに属する走行状態であっても、熱電素子44による熱エネルギの回収が行なわれないと、EV走行を行なった方がエネルギ効率が高くなる場合が考えられる。このように、熱電素子による熱エネルギの回収に異常が生じた場合に、熱電素子による熱エネルギの回収が行なわれないことによるエネルギ効率の低下に基づいて、車両全体でより高いエネルギ効率を実現できるように、EV走行とエンジン走行とを切り替える、すなわち駆動エネルギ源を選択すれば、常に高いエネルギ効率を確保することができる。
【0074】
なお、本実施例のハイブリッド車両が搭載するモータ20の性能は、図4〜図7に示した領域EG全体に対応可能とはなっていない。したがって、所定の走行状態においては、熱電素子44による熱回収に異常が生じた場合であっても、駆動エネルギ源を燃料電池装置60(およびモータ20)に切り替えることはない。本実施例のハイブリッド車両が搭載するエンジン10は、常に所望の車速および加速度を実現するために、熱電素子44による熱回収に異常が生じた場合にもエンジン走行を続けることが可能となるような、充分な性能の冷却装置を備えている。本実施例では、熱エネルギの回収状態やエネルギ効率に基づいた上記したような駆動エネルギ源の使い分けは、モータ20の性能に応じた(モータ20を用いることができる)走行状態においてなされる。
【0075】
既述した実施例では、エンジン10の動力を直接車軸17に出力可能なパラレルハイブリッド車両に適用した場合を例示した。本発明は、かかる構成に限らず種々のハイブリッド車両に適用可能であり、また、シリーズハイブリッド車両にも適用可能である。図11は第4実施例のシリーズハイブリッド車両の構成を示す説明図である。図11では、既述した実施例の構成と共通する部材には、値100を加えた部材番号を付すこととし、詳しい説明を省略する。この構成では、走行するための動力を直接出力するのはモータ120のみである。図1の構成と異なりエンジン110の動力を直接車軸117に出力することはできない。エンジン110から出力された動力は発電機Gにより一旦電力に変換され、駆動回路153を介してバッテリ150を充電する。駆動回路151を介してこの電力をモータ120に供給してこれを力行することにより、エンジン110の動力は間接的に車両の走行に使用される。さらに、図1の構成と同様、モータ120の電源として燃料電池装置160も備えられている。なお、図11においては、切替スイッチや冷却系統の図示を省略したが、これらについては図1と同様の構成で備えられている。また、図11の構成では、車速に対応する回転数をモータ120によって実現することとしたが、図1と同様に、トルクコンバータや変速機などの構造を設けることとしてもよい。
【0076】
このような構成のハイブリッド車両において、燃料電池装置160(実際には燃料電池60Aに対応する燃料電池)およびエンジン110に、熱電素子140,144を設ければ、先に実施例で説明したハイブリッド車両と同様、運転中に廃熱を回収することができるため、運転効率を向上することができる。また、いずれかの熱電素子において、熱エネルギ回収の動作に異常が生じた場合には、この異常の生じた熱電素子が取り付けられた駆動エネルギ源(燃料電池装置160あるいはエンジン110)の運転を停止すれば、熱電素子により持ち去られるはずの熱エネルギ分を冷却系で冷却する場合に起こりうる冷却系部品の耐久性低下などのシステム全体としての耐久性低下を抑制できる。
【0077】
以上の実施例では、熱回収手段である熱電素子を、エンジンと燃料電池とを搭載するハイブリッド車両に適用した場合を例示した。一般に車両の場合は、出力可能なエネルギの総量がFC燃料の搭載量などにより制限されていることが多いため、廃熱回収を行えばエネルギを有効活用することができる点で有用性が高い。実施例では、車両への適用を例示したが、その他、船舶、航空機、飛翔体など動力を利用して移動する種々の移動体に適用することができる。また、ハイブリッド式の動力源を備えるものに限らず、熱機関を動力源とする移動体にも適用することができる。
【0078】
以上本発明の実施例について説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる様態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な一実施例であるハイブリッド車両の概略構成図である。
【図2】燃料電池装置60の概略構成を表わす説明図である。
【図3】制御ユニット70に対する入出力信号の結線を示す説明図である。
【図4】車両の走行状態と動力源との関係を示す説明図である。
【図5】2ポジションにおける変速段の切り替えの様子を表わす説明図である。
【図6】Lポジションにおける変速段の切り替えの様子を表わす説明図である。
【図7】Rポジションにおける変速段の切り替えの様子を表わす説明図である。
【図8】廃熱回収制御処理ルーチンを表わすフローチャートである。
【図9】第2実施例のハイブリッド車両の構成を示す説明図である。
【図10】第3実施例のハイブリッド車両の構成を示す説明図である。
【図11】第4実施例のハイブリッド車両の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
10,110…エンジン
12…クランクシャフト
13…出力軸
14…出力軸
15…出力軸
16…ディファレンシャルギヤ
17,117…車軸
18…入力クラッチ
19…補機クラッチ
20,120…モータ
22…ロータ
24…ステータ
30…トルクコンバータ
40,42,44,140,144…熱電素子
41…スイッチ
50,150…バッテリ
51,52,151…駆動回路
60,160…燃料電池装置
60A…燃料電池
61…メタノールタンク
61a,62a…容量センサ
62…水タンク
63…バーナ
64…圧縮機
65…蒸発器
66…改質器
67…CO低減部
68…ブロワ
70…制御ユニット
80…補機駆動用モータ
82…補機駆動装置
83,84…切替スイッチ
90,91…冷却水温センサ
92,192…ラジエータ
93,193…ポンプ
94,194…冷媒路
100…変速機
102…油圧ポンプ
104…油圧制御部
153…駆動回路

Claims (6)

  1. 移動体に搭載され、前記移動体を駆動するためのエネルギを発生する複数の駆動エネルギ源を備える移動体の駆動装置であって、
    前記複数の駆動エネルギ源のうちの少なくとも一つの駆動エネルギ源に設けられ、該駆動エネルギ源が発生する熱を電気エネルギに変換して回収する熱回収手段と、
    前記熱回収手段が前記熱を回収する際の動作状態の異常を検出する異常検出手段と、
    前記異常検出手段が前記異常を検出したときには、異常が検出された前記熱回収手段を設けた前記駆動エネルギ源において、前記エネルギの発生を停止する異常時停止手段と
    を備える移動体の駆動装置。
  2. 前記異常検出手段が前記異常を検出したときには、異常が検出された前記熱回収手段を設けた駆動エネルギ源とは異なる駆動エネルギ源によって、前記駆動のためのエネルギを発生することを特徴とする
    請求項1記載の駆動装置。
  3. 前記複数の駆動エネルギ源は、エンジンおよび燃料電池を含む
    請求項1または2記載の駆動装置。
  4. 請求項2記載の駆動装置であって、
    前記複数の駆動エネルギ源は、動力を発生するエンジンと、電力を発生する燃料電池と、該燃料電池が発生した電力から動力を発生する電動機とを含み、
    前記熱回収手段は、前記燃料電池および/または前記電動機に設けられており、
    前記異常検出手段が前記異常を検出したときには、前記エンジンを用いて前記駆動のためのエネルギを発生することを特徴とする
    駆動装置。
  5. 請求項1または2記載の駆動装置であって、
    前記熱回収手段が設けられた前記駆動エネルギ源は、その運転温度を検出する温度検出手段を備え、
    前記異常時停止手段は、前記異常検出手段が前記異常を検出した際に、前記温度検出手段が検出した温度が所定の温度を超えない場合には、異常が検出された前記熱回収手段を設けた前記駆動エネルギ源による前記エネルギの発生を続行することを特徴とする
    駆動装置。
  6. 請求項1または2記載の駆動装置であって、
    前記熱回収手段が設けられた前記駆動エネルギ源は、その運転温度を検出する温度検出手段を備え、
    前記異常時停止手段は、前記異常検出手段が前記異常を検出しない場合であっても、前記温度検出手段が検出した前記駆動エネルギ源の運転温度が所定の温度以上であれば、前記駆動エネルギ源による前記エネルギの発生を停止する異常発熱時停止手段を備えることを特徴とする
    駆動装置。
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