JP3864020B2 - 電池用セパレータ用紙及びその製造方法 - Google Patents
電池用セパレータ用紙及びその製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルカリマンガン電池、水銀電池、酸化銀電池、空気亜鉛電池等のアルカリ一次電池に好適な電池用セパレータ用紙及びその製造方法と該電池用セパレータ用紙から得られる電池用セパレータに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にアルカリ一次電池等の電池には、陽極活物質と陰極活物質を隔離するためのセパレータが用いられている。このセパレータには
▲1▼前記陽極物質と陰極物質の内部短絡を防止すること
▲2▼十分な起電反応を生じさせるために高い電解液吸液性を有していること
▲3▼電池内部に組込まれた際の占有率が小さく、陽極活物質等の量を増やせる(電池使用可能時間を長くできる)こと
などの様々な性能が要求される。
上記の性能を具備する電池用セパレータとして、耐薬品性、親水性、機械的性能等に優れていることからポリビニルアルコール系繊維を用いた電池用セパレータや、さらに電解質保液性等を高めるためにセルロース系繊維等を併用した電池用セパレータが従来広く使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年の電器製品等の発展に伴って一層高性能で使用可能時間の長い電池が要求されていることから、電池用セパレータの耐膨潤性等のさらなる改善・薄型化が強く要望されている。
本願発明の目的は、内部短絡防止性、電解液吸液性に優れ、かつ一層薄型化可能で電池使用可能時間を延長できる電池用セパレータ用紙及びその製造方法と、さらに該セパレータ用紙を用いてなる電池用セパレータを提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)単繊維繊度0.0001〜0.5dのエチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維を2〜45重量%、ポリビニルアルコール系繊維を5〜50重量%及びセルロース系繊維を10〜90重量%配合してなる電池用セパレータ用紙、(2)エチレン−ビニルアルコール系共重合体を島成分とする海島繊維の海成分を除去することにより得られる単繊維繊度0.0001〜0.5dのエチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維を用い、該エチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維の配合割合が2〜45重量%、ポリビニルアルコール系繊維の配合割合が5〜50重量%、セルロース系繊維の配合割合が10〜90重量%となるように湿式抄造する電池用セパレータ用紙の製造方法、に関する。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明は、単繊維繊度0.0001〜0.5dのエチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維を2〜45重量%配合した電池用セパレータ用紙を用いることによって、諸性能に優れる電池用セパレータが得られることを見出したものである。
ポリビニルアルコール(PVA)系繊維などの親水性の高い極細繊維を配合した場合には、セパレータのセパレート性は向上するものの膨潤しやすい傾向があり、特に極細繊維においてはその傾向が顕著になる。従ってPVA系極細繊維を配合するとセパレータの膨潤を抑制できないために電池使用可能時間を効率的に延長できないのみでなく圧力損失が大きくなる。しかしながら、本発明においては、エチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維を用いていることから、繊維の膨潤が抑制されて圧力損失が問題とならず、しかも極細繊維であっても機械的性能が劣化しないために「コシ」の高いセパレータが得られる。さらにポアサイズが小さくなることから薄型化しても優れたセパレート性(内部短絡防止性)が確保できるのである。
さらに一般にオレフィン系繊維を配合すると親水性が低下して電解液の吸液性が損われやすくなり、またスルホン化処理などにより親水性を高めるには多大な労力及び煩雑な工程が必要となる。しかしながら、本発明においてはエチレン−ビニルアルコール系共重合体は親水基を有していることから、吸液性等を実質的に損うことなくセパレート性、耐膨潤性等を効率的に高めることができる。
【0006】
本発明においては、単繊維繊度0.5d以下、好ましくは0.1d以下、さらに好ましくは0.05d以下のエチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維を用いる必要がある。かかる極細繊維を用いることにより、ポアサイズが小さくなってセパレート性を一層改善できるとともにセパレータを一層薄型化することができる。また吸液性の点からもかかる細繊度のエチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維を用いる必要がある。すなわちエチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維の繊度が小さい場合には繊維間に電解液を保吸することが可能であるが、繊維そのものの吸液性はそれほど高くないために繊度が大きくなるとセパレータの吸液性も低下することとなるのである。また膨潤性の高い繊維の場合には繊度が小さくなりすぎると内部抵抗が大きくなる問題が生じるが、エチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維は耐膨潤性が高いことから、繊度を極めて小さくした場合であっても優れた効果が得られる。
抄紙性及び内部抵抗の上昇を抑制する点からは単繊維繊度0.0001d以上、特に0.01d以上のエチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維を用いるのが好ましい。
繊維長は抄紙性、セパレート性等の点から、0.5〜20mm、特に1〜5mmとするのが好ましい。
【0007】
かかるエチレン−ビニルアルコール系共重合体極細繊維の配合量は、2〜45重量%/紙、好ましくは3重量%以上/紙、さらに好ましくは4重量%以上/紙であり、また40重量%以下/紙、さらに20重量%以下/紙とするのが好ましい。エチレン−ビニルアルコール系極細繊維の配合量が多すぎると吸液性が不十分になるとともに内部抵抗が大きくなり、逆に配合量が小さすぎると耐膨潤性等の点で本発明の効果が十分に得られない。
【0008】
本発明のエチレン−ビニルアルコール系共重合繊維を構成するエチレン−ビニルアルコール系共重合体は特に限定されないが、親水性、耐膨潤性、紡糸性、耐熱性等の点からエチレン含有量が30〜70モル%の共重合体であるのが好ましい。エチレン含有量が高くなると耐膨潤性は高くなるものの吸液性が低下する傾向があり、エチレン含有量が小さくなると吸液性は向上するものの耐膨潤性は低くなる傾向がある。目的等に応じてエチレン含有量を設定すればよい。耐膨潤性及び吸液性の点からは特にエチレン含有量(エチレンからなる繰り返し単位の割合)が40〜60モル%とするのが好ましい。また該共重合体はランダム、ブロック、グラフトいずれの共重合体でもかまわない。
【0009】
本発明に使用されるエチレン−ビニルアルコール系共重合体の製造方法は特に限定されないが、エチレン−酢酸ビニル系共重合体をケン化することにより効率的に製造できる。親水性の点からはビニルアルコールユニットのケン化度は95モル%以上、特に98モル%以上であるのが好ましい。
また該エチレン−ビニルアルコール系共重合体には他のユニットが共重合されていてもかまわないが、本発明の効果を効率的に得る点からは、エチレンユニット及びビニルアルコールユニット以外の共重合成分が30モル%以下、特に10モル%以下であるのが好ましい。また該共重合体の平均分子量は、紡糸性、耐熱水性等の点から500〜5000、特に800〜3500程度とするのが好ましい。
【0010】
さらに該エチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体のみから構成されている必要はなく、本発明の効果や電池性能に悪影響を与えない範囲で他のポリマーや他の添加物(酸化防止剤、工程助剤等)を含んでいてもかまわない。しかしながら、本発明の効果を効率的に得る点から、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の割合が50重量%以上、特に70重量%以上、さらに90重量%以上であるのが好ましい。
【0011】
該繊維の製造方法は特に限定されない。しかしながら単にエチレン−ビニルアルコール系共重合体を紡糸したのみでは極細繊維が得られにくいことから、エチレン−ビニルアルコール系共重合体を一成分とする多成分繊維を紡糸し、得られた多成分繊維の他の成分を除去する方法や分割する方法を採用するのが好ましい。なかでもエチレン−ビニルアルコール系共重合体を島成分とする海島繊維を紡糸し、次いで該海島繊維の海成分を除去する方法を採用するのが好ましく、かかる方法等により得られる極細繊維を用いて抄紙することにより所望のセパレータが得られる。抄紙後に海成分(他の成分)を除去することによっても極細繊維が得られるが、該方法によると繊維が緻密に絡合した紙にならずポアサイズが大きくなるので、極細繊維を用いて抄紙する方法を採用するのが好ましい。
【0012】
エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A成分)と複合紡糸又は混合紡糸するポリマー(B成分)は、該共重合体の性能を実質的に損うことなく除去できる熱可塑性ポリマーであれば特に限定されない。たとえば酸性水溶液で除去可能なポリアミド系ポリマー(好適にはナイロン6)やアルカリ性水溶液で除去可能な易アルカリ減量性ポリエステル系ポリマー等が挙げられる。紡糸性、減量加工性、コスト等の点からは易アルカリ減量性ポリエステルを用いるのが好ましい。
【0013】
具体的なポリエステルの種類は特に限定されず、アルカリにより分解及び/又は溶解するポリエステルを用いればよい。なかでも98℃、20g/リットルの水酸化ナトリウム水溶液中に浴比1:500の条件で浸漬して攪拌した際に1時間以内、特に30分以内に溶解又は分解するポリエステルを用いるのが好ましい。
【0014】
かかるA成分及びB成分を混合紡糸してA成分を島成分、B成分を海成分とする海島繊維を製造すればよい。A成分及びB成分の配合割合等は適宜変更すればよいが、コスト、繊維径等の点からA成分:B成分=30:70〜95:5,特に40:60〜70:30(重量比)とするのが好ましい。
なお本発明にいう海島繊維とは、繊維の横断面においてマトリックスとなる海成分中に数個から数万、好ましくは数十から数千個程度の島(A成分:オレフィン系樹脂)が存在する繊維をいう。該海島繊維は押出により成形され、かつ島成分が繊維軸方向にある程度連続しているものであればよく、海島繊維の直径や断面形状は特に限定されない。
【0015】
また、セパレータの吸液性、吸液速度及び抄紙時の水分散性の点からは、エチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維の親水度が0.30g/g以上、特に0.35g/g以上、さらに0.38g/g以上であるのが好ましく、吸水速度は300sec/25mm以下、特に250sec/25mm以下であるのが好ましい。
このとき、エチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維の親水性を高める、すなわち電池内組み込み時の初期の吸液性・吸液速度を高め、さらに抄紙時の水分散性を向上させるために、電池性能に悪影響を及ぼさない範囲で親水性の界面活性剤を繊維表面に付与してもかまわない。
【0016】
かかるエチレン−ビニルアルコール系極細繊維を用いてセパレータ用紙を製造すればよいが、該極細繊維と併用可能な繊維の種類は特に限定されない。しかしながら、セパレータの吸液性を高める点からは少なくとも耐薬品性及び電解液吸液性に優れた繊維を配合するのが好ましい。具体的にはPVA系繊維及びセルロース系繊維を主体成分として配合し、該繊維の配合量は10〜98重量%/紙、好ましくは50重量%以上/紙、さらに好ましくは60重量%以上/紙、95重量%以下/紙とするのが好ましい。
【0017】
セパレータの吸液性、機械的性能等の点からは、PVA系繊維とセルロース系繊維をともに配合する必要があり、PVA系繊維の配合量は5重量%以上50重量%以下、さらに10重量%以上とするのが好ましく、さらに40重量%以下とするのが好ましい。また同理由からセルロース系繊維の配合量は10重量%以上90重量%以下、さらに30重量%以上とするのが好ましく、また80重量%以下とするのが好ましい。PVA系繊維及びセルロース系繊維はともに電解液吸液性に優れたものであるが、セルロース系繊維の方がより電解液吸液性が高く、さらにPVA系繊維の方がより耐膨潤性、機械的性能に優れている。したがって両繊維の配合比を変更することにより所望の性能を得ることができる。
【0018】
本発明に使用できるPVA系繊維は特に限定されないが、主体繊維としては水中溶解温度90℃以上、特に100℃以上の繊維が好ましい。具体的には平均重合度1000〜5000、けん化度95モル%以上、特に99モル%以上のビニルアルコール系ポリマーからなる繊維が好適に挙げられる。該ビニルアルコール系ポリマーは他の共重合成分により共重合されていてもよいが、耐水性等の点から共重合割合は20モル%以下、特に10モル%以下であるのが好ましい。またアセタール化等の処理が施されていてもかまわない。
【0019】
またPVA系繊維はビニルアルコール系ポリマーのみから構成されている必要はなく、他のポリマーを含んでいても構わない。勿論、他のポリマーとの複合紡糸繊維、混合紡糸繊維(海島繊維)であってもかまわない。電解液吸液性、機械的性能等の点からはビニルアルコール系ポリマーを30重量%以上、特に50重量%以上、さらに80重量%以上含むPVA系繊維を用いるのが好ましい。
該繊維の繊度は、セパレート性、薄型化の点から3d以下、特に1d以下、さらに0.8d以下であるのが好ましく、抄紙性、内部圧力の増大を抑制する点から0.1d以上、さらに0.2d以上であるのが好ましい。繊維長さは単繊維デニールに応じて適宜設定すれば良いが、抄紙性等の点から繊維長0.5〜10mm、特に1〜5mmとするのが好ましい。
【0020】
また本発明に使用できるセルロース系繊維としては、レーヨン繊維(ポリノジックレーヨン繊維等を含む)、アセテート系繊維、天然パルプ(木材パルプ、コットンリンターパルプ、麻パルプ等)等が挙げられ、これらにマーセル化処理等の処理を行ったものや、これらの叩解物等も使用できる。耐アルカリ性、耐膨潤性等の点からはレーヨン繊維を用いるのが好ましい。
セルロース系繊維の繊度は特に限定されず、たとえば繊度0.1〜3d程度のカットファイバー、カットファイバーやパルプの叩解物等が使用できるが、耐膨潤性の点からは繊度0.1〜3d程度のカットファイバーを少なくとも30重量%以上/紙配合するのが好ましい。勿論カットファイバーとパルプ状物を併用しても構わない。
【0021】
不織布の機械的性能、寸法安定性等の点からは水中溶解温度80℃以下、好ましくは60〜75℃のバインダー成分(樹脂状、繊維状)を配合するのが好ましい。バインダー成分の配合量は1〜30重量%/紙、特に5〜20重量%/紙であるのが好ましい。
紙のポアサイズ及び内部圧力の増大を減じる点からは繊維状バインダーを使用するのが好ましく、特に親水性で吸液性の高いことからPVA系繊維状バインダーを配合するのが好ましい。なかでも平均重合度は500〜3000程度、けん化度97〜99モル%のPVAから構成された繊維が好適に使用される。勿論ビニルアルコール系ポリマーのみから構成されている必要はなく、他のポリマーを含んでいても構わない。勿論、他のポリマーとの複合紡糸繊維、混合紡糸繊維(海島繊維)であってもかまわない。電解液吸液性、機械的性能等の点からはビニルアルコール系ポリマーを30重量%以上、特に50重量%以上、さらに80重量%以上含むPVA系繊維を用いるのが好ましい。PVA系繊維の繊度は、水分散性、他成分との接着性、ポアサイズ等の点から0.2〜2d程度であるのが好ましく、繊維長1〜5mm程度であるのが好ましい。勿論、上記繊維以外の他の繊維を配合しても構わない。
【0022】
かかる繊維を用いて抄紙することにより電池用セパレータ用紙が得られるが、その方法は特に限定されない。たとえば一般の湿式抄紙機を用いることにより効率的に所望の紙を製造できる。用いる抄き網としては円網、短網及び長網等が挙げられ、これらの抄き網を単独で用いて単層としても、また抄き網の組み合せによる複数層の抄きあわせシートとしてもよい。地合斑のない均質で電気特性に優れた紙を得る点からは複数層の抄きあわせとするのが好ましく、なかでも短網―円網抄紙機にて2層抄きあわせ紙とするのが好ましい。紙料を含むスラリーを抄き上げた後にヤンキー型乾燥機等で乾燥することにより目的とする電池用セパレータが得られる。勿論、必要に応じて熱プレス加工等をさらに行うこともできる。
【0023】
セパレータ用紙の厚さは、保液性、薄型化の点から0.2mm以下、特に0.1mm以下、さらに0.09mm以下とするのが好ましく、セパレート性、機械的性能及びコシの点から0.05mm以上、さらに0.06mm以上とするのが好ましい。同理由から密度は0.5g/cm3以下、さらに0.4g/cm3以下、さらに0.35g/cm3以下であるのが好ましく、0.1g/cm3以上であるのが好ましい。
【0024】
セパレータ用紙のポアサイズは、セパレート性の点から20μm以下、特に18μm以下、さらに17μm以下、またさらに15μm以下であるのが好ましく、圧力損失等の点からは10μm以上であるのが好ましい。また同理由から、紙の通気度は22cc/cm2/sec以下、特に20cc/cm2/sec以下、さらに17cc/cm2/sec以下であるのが好ましく、内部圧力の点から5cc/cm2/sec以上であるのが好ましい。
【0025】
セパレータ用紙の膨潤度(%)は、電池内の占有面積低減、内部圧力増大抑制、機械的性能の確保等の点から35%以下、特に30%以下、特に25%以下、であるのが好ましい。
またセパレータ用紙の電解液吸液量は0.2g/2500mm2以上、特に0.3g/2500mm2以上、さらに0.35g/2500mm2以上、特に0.38g/2500mm2以上のセパレータが好ましく、本発明によれば電解液吸液性に優れるセパレータが得られる。
【0026】
セパレータ用紙の機械的性能、寸法安定性、取扱性等の点からは、裂断長が4km以上、特に4.5km以上、さらに5km以上であるのが好ましく、コシは0.25kgf以上であるのが好ましい。特にコシが高いものは電池内の組み込みが容易になるのみでなく、電池使用時に落下等により衝撃を受けても変形しにくく、変形による内部短絡の発生が抑制できるという優れた効果が得られる。
【0027】
本発明の電池用セパレータ用紙をそのまま用いて、または袋状体や渦巻状体等の所望の形状に加工することにより電池用セパレータとすることができる。もちろん本発明の電池用セパレータ用紙以外のものと組み合せて電池用セパレータを製造してもよい。たとえば他の不織布、フィルム等と積層したり、継ぎ合せることができる。しかしながら、本発明の効果を効率的に得る点からは実質的に本発明の電池用セパレータ用紙のみから電池用セパレータを製造するのが好ましい。
本発明の電池用セパレータ用紙はあらゆる電池用セパレータに適用することができるが、耐アルカリ性、アルカリ電解液吸液性に優れていることから、アルカリマンガン電池、水銀電池、酸化銀電池、空気亜鉛電池等のアルカリ一次電池用セパレータとして好適であり、特にアルカリマンガン電池用セパレータとして優れた性能を有している。本発明の電池用セパレータを組込むことによって諸性能に優れた電池が得られる。
【0028】
【実施例】
以下に実施例により本発明を説明するが、本実施例により何等限定されるものではない。
[親水度 g/g]
重量Agのエチレン−ビニルアルコール系繊維を浴比1/100の条件で35%KOH液に24時間浸漬し、次いで3000rpm×10minの条件で遠心脱水した後の繊維の重量Bgを測定し、(B−A)/Aにより算出した。
【0029】
[水中溶解温度 ℃]
400ccの水(20℃)に試料繊維を2.6g投入し、昇温速度1℃/min,攪拌速度280rpmの条件で攪拌しながら昇温し、繊維が完全に溶解したときの温度を水中溶解温度として測定した。
[濾水度(CSF)ml]
JIS P 8121「パルプのろ水度試験方法」に準じてカナダ標準濾水度を測定した。
【0030】
[厚さ mm 密度 g/cm3]
JIS P 8118「紙及び板紙の厚さと密度の試験方法」に準じて測定した。
[坪量 g/m2]
JIS P 8124「紙のメートル坪量測定方法」に準じて測定した。
[裂断長 km]
JIS P 8113「紙及び板紙の引張強さ試験方法」に準じて測定した。
【0031】
[吸液量 g/g]
50mm×50mmの紙試料を35%KOH液に浴比1/100の条件で24時間浸漬し、30秒間自然液切りした後の試料重量を測定し、保液された液体の重量を紙重量で除すことによって吸液量を算出した。
[吸液速度 秒]
試料の端部を35%KOH液に浸漬し、35%KOH液が高さ25mmまで吸い上げるまでに要した時間により吸液速度を評価した。
【0032】
[通気度 cm3/cm2/sec]
JIS L 1096―1996「一般織物試験方法」の通気性測定方法に準じ、株式会社東洋精機製作所製ブラジール型通気度試験機により測定した。
[ポアサイズ μm]
コールター・エレクトロニクス社製:colter POROMETERIIにより測定した。
【0033】
[膨潤度 %]
試料を35%KOHも30分間浸漬し、浸漬前後のサンプルの厚さをダイヤルシックネスゲージで測定し、膨潤度=(浸漬後の厚さー浸漬前の厚さ)/浸漬前の厚さ×100により算出した。
[コシ kgf]
25mm×90mmの試料を35%KOHに30分間浸漬した後、20mm(高さ)×7mmФの中芯に4重に巻き、20mm(高さ)×9mmФ(内径)の筒内にセットし、株式会社レオテック社製「レオメーターRT―2010―CW」にて、圧縮強力を測定する方法を用いた。
【0034】
[易アルカリ減量性ポリエステル繊維]
5―ナトリウムスルホイソフタル酸(I)が共重合ポリエステルを構成する全酸成分の2.5モル%、分子量2000のポリエチレングリコール(II)及び化1で示されるポリオキシエチレングリシジルエーテル(III)から得られる構成単位が全共重合ポリエステルのそれぞれ10重量%を占め、残部がテレフタル酸及びエチレングリコールから得られる構成単位により構成された共重合ポリエステル(固有粘度0.58dl/g)を用いた。なお、該共重合ポリエステルは、98℃、20g/リットルの水酸化ナトリウム水溶液中に浴比1:500の条件で浸漬して攪拌した際に30分以内に完全に溶解するものであった。
【0035】
【化1】
【0036】
[参考例1]
エチレン含有量44モル%、ケン化度99%のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ製「E105Y」)50重量%、易アルカリ減量性共重合ポリエステル50重量%を混合紡糸して、エチレン−ビニルアルコール系共重合体が島成分、易アルカリ減量性共重合ポリエステルが海成分を構成した3.5デニールの海島型繊維(島数50)を製造し、これを長さ3mmにカットした後、6%NaOH水溶液(80℃)にて30分間浸漬して海成分を除去して単繊維繊度0.035デニールのエチレン−ビニルアルコール共重合体繊維(親水度0.50g/g)を得た。
【0037】
[参考例2]
エチレン含有量44モル%、ケン化度99%のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ製「E105Y」)50重量%、易アルカリ減量性共重合ポリエステル50重量%を混合紡糸して、エチレン−ビニルアルコール系共重合体が島成分、易アルカリ減量性共重合ポリエステルが海成分を構成した11.2デニールの海島型繊維(島数16)を製造し、これを長さ10mmにカットした後、6%NaOH水溶液(80℃)にて30分間浸漬して海成分を除去して単繊維繊度0.35デニールのエチレン−ビニルアルコール共重合体繊維(親水度0.43/g)を得た。
【0038】
[参考例3]
エチレン含有量44モル%、ケン化度99%のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(株式会社クラレ製「E105Y」)50重量%、易アルカリ減量性共重合ポリエステル50重量%を複合紡糸して、エチレン−ビニルアルコール系共重合体が芯成分、易アルカリ減量性共重合ポリエステルが鞘成分を構成した2.2デニールの芯鞘型繊維を製造し、これを長さ5mmにカットした後、6%NaOH水溶液(80℃)にて30分間浸漬して海成分を除去して単繊維繊度1.1デニールのエチレン−ビニルアルコール共重合体繊維(親水度0.37g/g)を得た。
【0039】
[実施例1]
参考例1において得られたエチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維(0.035d×3mm)5重量部、ポリビニルアルコール系主体繊維(0.5d×2mm 株式会社クラレ製「VPB053×2」、水中溶解温度100℃以上)30重量部、レーヨン繊維(1d×2mm、東洋紡績株式会社製造「KPR1.0×2」、CSF600ml)55重量部、PVA系バインダー繊維(1d×3mm 株式会社クラレ製「VPB105―1×3」、水中溶解温度70℃)10重量部を水に分散してスラリーを製造し、これを短網―円網抄紙機にて2層抄きあわせ抄紙を行い、ヤンキー型乾燥機にて乾燥して目的とする電池用セパレータ用紙を得た。得られたセパレータ用紙は薄厚でも高強力、セパレート性、電解液吸液性等の諸性能が高く、しかも耐膨潤性に優れたものであった。また2層抄きあわせ構造にしていることから地合が極めて良好かつ均質でセパレータ用紙として優れた構造を有していた。結果を表1に示す。
【0040】
[実施例2、3、比較例1、2]
配合比を表1のように変更した以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
[実施例4]
参考例2において得られたエチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維(0.35d×10mm)を用い、表1のように配合を変更した以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
【0041】
[比較例3、比較例4]
参考例3において得られたエチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維(1.1d×5mm)を用いて、またはエチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維を配合することなく表1のように配合を変更した以外は実施例1と同様に行った。比較例3においては電解液保液性及び耐膨潤性に優れたものであったが、ポアサイズが大きくセパレート性の低いものであった。また比較例4において得られたセパレータは電解液保持性に優れているものの、耐膨潤性が低いために電池における占有面積が大きく、電池使用可能時間は実施例に比して短いものであった。結果を表1に示す。
なお比較例4で使用したポリビニルアルコール系主体繊維(1.0d×3mm)は、水中溶解温度100℃以上の繊維(株式会社クラレ製「VPB103×3」)であり、マーセル化コットンのCSFは550mlである。
【0042】
【表1】
Claims (4)
- 単繊維繊度0.0001〜0.5dのエチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維を2〜45重量%、ポリビニルアルコール系繊維を5〜50重量%及びセルロース系繊維を10〜90重量%配合してなる電池用セパレータ用紙。
- 単繊維繊度0.0001〜0.5dのエチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維を構成するエチレン−ビニルアルコール系共重合体におけるエチレン含有量が、30〜70モル%である請求項1記載の電池用セパレータ用紙。
- エチレン−ビニルアルコール系共重合体を島成分とする海島繊維の海成分を除去することにより得られる単繊維繊度0.0001〜0.5dのエチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維を用い、該エチレン−ビニルアルコール系共重合体繊維の配合割合が2〜45重量%、ポリビニルアルコール系繊維の配合割合が5〜50重量%、セルロース系繊維の配合割合が10〜90重量%となるように湿式抄造する電池用セパレータ用紙の製造方法。
- 請求項1又は請求項2に記載の電池用セパレータ用紙を用いてなる電池用セパレータ。
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