JP3863611B2 - 金属板と金属パイプの溶接装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属板と金属パイプの溶接装置に関し、特に、金属板に狭い間隔で以て形成した複数個の透孔をそれぞれ貫通し、密接して配設される金属パイプと金属板の接触部をすみ肉溶接することにより、両者をシール状態を保った状態で接合するために適用される溶接装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば、食品工業、化学工業、窯業等の原材料に混入している微細鉄粉を原材料から除去するために、原材料供給路の途中に配設して使用されている微細鉄粉除去装置には、マグネット体を内部に収容するためのステンレススチール製の複数本のパイプを、原材料供給路と外部を区画する仕切壁となるステンレススチール製の円板に貫通し、円板とパイプの接触部をすみ肉溶接することにより、シール状態を保った状態で接合した構造体が用いられている。
【0003】
ところで、微細鉄粉除去装置において、微細鉄粉の吸着能力及び吸着精度を向上させるためには、パイプを配設する間隔を小さく設定する必要があるが、パイプを配設する間隔を小さくしようとすればするほど、パイプと円板の接触部をシール状態を保つようにすみ肉溶接することが困難となる。
このため、図4に示すように、円板1を予め複数に分割し、分割した円板部材1a,1b,1cにそれぞれ形成した透孔を貫通してパイプ2を配設し、円板部材1a,1b,1cとパイプ2の接触部をすみ肉溶接10することにより、シール状態を保った状態で接合した後、分割した円板部材1a,1b,1c同士を溶接することにより一体化し、目的とする構造体を得るようにしているのが現状であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の方法は、目的とする構造体を得るために手数を要し、構造体の製造コストが上昇するだけでなく、構造体の寸法精度が低下し、円板部材1a,1b,1c同士を溶接する際に生じるビードによる影響と相俟って、原材料供給路を流通する原材料の性状に悪影響を及ぼすおそれがあった。
また、上記の方法によっても、円板1に比べて肉厚の薄いパイプ2(例えば、円板1の厚み:3〜5mmに対して、パイプ2の厚み:0.5mm)を、パイプ2に欠陥を生じさせることなく溶接するには、極めて高度な技術を要した。
【0005】
本発明は上記従来の金属板と金属パイプの溶接方法の有する問題点に鑑み、金属板を分割、再接合する工程を経ることなく、金属板に狭い間隔で以て形成した複数個の透孔をそれぞれ貫通し、密接して配設される金属パイプと金属板の接触部をすみ肉溶接することにより、両者をシール状態を保った状態で接合するために適用される溶接装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の金属板と金属パイプの溶接装置は、金属板に形成した透孔を貫通して配設した金属パイプの外周面を回転軸として回転する円筒形状の内管及び外管からなる回転体と、金属板の表面に当接して回転体の下端と金属板の表面との距離を一定に保持する、回転体を構成する円筒形状の内管と外管の下端部間に支持部材を介して略等間隔に配設した複数個の倣いボール又は倣いローラによりなる当接部材と、回転体に配設したTIG溶接用の溶接電極と、金属板と金属パイプの接触部の近傍に不活性ガスを供給し、不活性ガスの雰囲気を形成する、回転体を構成する円筒形状の内管と外管の間に配設した不活性ガス供給管とからなり、該不活性ガス供給管を電気導体により形成し、不活性ガス供給管の先端にTIG溶接用の溶接電極を配設したことを特徴とする。
【0007】
本発明の金属板と金属パイプの溶接装置は、簡易な機構により、溶接を行おうとする金属パイプと隣接する金属パイプとの間に、溶接を行う金属パイプを回転軸として溶接電極を回転させることができる間隙が存在する限界まで、金属パイプを密接して配設することができ、また、溶接電極を高い精度を以て、金属板の表面との距離を一定に保持しながら回転させて、金属板と金属パイプの接触部をすみ肉溶接することができ、これにより、溶接の品質及び精度を向上することができる。
そして、不活性ガス供給管を電気導体により形成し、不活性ガス供給管の先端にTIG溶接用の溶接電極を配設することにより、溶接が行われる溶接電極の近傍位置に正確に不活性ガスの雰囲気を形成することができ、これにより、溶接の品質及び精度をより一層向上することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の金属板と金属パイプの溶接装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0009】
図1〜図3に、本発明の金属板と金属パイプの溶接装置の一実施例を示す。
この溶接装置は、溶接装置本体3と制御部4とからなる。
【0010】
溶接装置本体3は、金属板1に形成した透孔を貫通して配設した金属パイプ2の外周面を回転軸として回転する円筒形状の内管31及び外管32とからなる回転体30と、この回転体30の下端部に配設され、金属板1の表面に当接して回転体30の下端と金属板1の表面との距離を一定に保持する当接部材36と、回転体30内に回転体30とは電気的に絶縁して配設した銅等の電気導体により形成したTIG溶接用の不活性ガス供給管34と、不活性ガス供給管34の先端に、金属板1と金属パイプ2の接触部、すなわち、溶接部10を指向するように配設したタングステン等の減耗性の材料により形成したTIG溶接用の溶接電極35と、回転体30を回転するモータ37とから構成される。
【0011】
この場合において、回転体30を構成する円筒形状の内管31と外管32の間には、必要に応じて、スペーサ33を配設し、このスペーサ33により先端に溶接電極35を配設した不活性ガス供給管34を支持するようにする。
また、内管31及び外管32を固定し、モータ37の回転駆動力を内管31及び外管32に伝える回転体30の上端部材38は、溶接装置本体3の固定側39に設けたモータ37の回転軸37aに上下方向に摺動可能に接続することにより、回転体30の下端と金属板1の表面との距離を一定に保持できるようにする。
また、回転体30の下端部に配設した当接部材36は、回転体30が金属板1の表面との距離を一定に保持しながら、金属パイプ2を回転軸として円滑に回転するように、回転体30に支持部材36aを介して略等間隔に配設した複数個の倣いボール36b又は倣いローラにより構成する。
【0012】
ところで、本実施例においては、溶接部10の近傍位置の金属パイプ2内に、金属パイプ2の内径と略等しい外径、より具体的には、内径−0.5mmの外径を有し、銅等の熱伝導率高い材料により円柱形状に形成した放熱部材5を配設するようにしている。
これにより、金属パイプ2への溶接入熱を放熱部材5に速やかに逃がすことができ、金属板1と金属板1に比べて肉厚の薄い金属パイプ2の溶接入熱の均衡を図って、溶接入熱により金属パイプ2が溶断することを防止することができ、金属板1に比べて肉厚の薄い金属パイプ2を、金属パイプ2に欠陥を生じさせることなく溶接することができる。
【0013】
なお、本実施例においては、不活性ガス供給管34を電気導体により形成し、この先端に溶接電極35を配設するようにしたが、不活性ガス供給管34内に銅等からなる導電部材を挿通し、この先端に溶接電極を配設する等、不活性ガス供給管と溶接電極を分離して構成することもできる。
また、金属パイプ2を回転軸として回転する回転体30は、必ずしも円筒形状の内管31及び外管32から構成する必要はなく、溶接電極35を、金属パイプ2を回転軸とし、かつ、金属板1の表面との距離を一定に保持しながら、溶接部10を指向して回転させることができるものであれば、例えば、外管32を省略したり、内管31及び外管32に代えて、金属パイプ2の外周面に当接しながら自転する回転体又は摺動する摺動体を、等間隔、例えば、120°又は90°間隔に配設して構成したり、回転体30を金属パイプ2の内周面を回転軸として回転するように構成する等、任意の構成を採用することができる。
【0014】
一方、制御部4は、溶接装置本体3の回転体30の回転を操作する操作箱41と、溶接条件等を制御する制御装置42と、TIG溶接機43と、TIG溶接用のアルゴンガス等の不活性ガスを供給するためのガス調整器44と、ガスボンベ45とから構成される。
【0015】
この場合において、溶接装置本体3の回転体30の回転を操作する操作箱41は、回転体30の回転の起動及び停止、自動操作及び手動操作の切換、正逆回転の切換等をボタン操作で行うことができるように構成されている。
【0016】
TIG溶接機43には、汎用のものを使用することができるが、溶接の溶け込みが深く、溶接電極35の電気容量が大きくなる等の理由から、溶接電極35側を直流マイナス側に設定するようにする。
また、金属板1と金属パイプ2の接触部の溶接の品質及び精度を向上させるためには、アークの直進性を高めることが重要であり、このためには、溶接電流を増加する必要がある。この場合、金属板1に比べて肉厚の薄い金属パイプ2を、金属パイプ2に欠陥を生じさせることなく溶接することができるように、溶接電流には、低周波パルス電流を使用し、金属パイプ2への溶接入熱を減少させることが望ましい。
【0017】
次に、この溶接装置を用いて行う金属板と金属パイプの溶接方法について説明する。
まず、金属板1に形成した透孔を貫通して金属パイプ2を配設する。この場合、金属板1と金属パイプ2は、適宜の補助治具を用いたり、部分的に仮溶接を行う等により、所定の精度を以て固定するようにする。
金属パイプ2の外周面に、この金属パイプ2を回転軸として回転するように円筒形状の内管31及び外管32とからなる回転体30を、金属パイプ2の上方から装着する。
モータ37を駆動することにより、回転体30を回転させ、これによって、溶接電極35を、金属パイプ2を回転軸とし、かつ、金属板1の表面との距離を一定に保持しながら、溶接部10を指向して回転させる。
これと合わせて、不活性ガス供給管34からTIG溶接用の不活性ガスを供給、放出し、不活性ガスの雰囲気を溶接部10の近傍に形成しながら、溶接電極35に溶接電流を供給することにより、金属板1と金属パイプ2の接触部をすみ肉溶接する。
【0018】
この場合、溶接部10の近傍位置の金属パイプ2内に金属パイプ2の内径と略等しい外径を有する放熱部材5を配設することにより、金属パイプ2への溶接入熱を放熱部材5に速やかに逃がすことができ、溶接入熱により金属パイプ2が溶断することを防止することができる。
また、溶接電極35側を直流マイナス側に設定することにより、溶接の溶け込みを深くするとともに、溶接電極35の電気容量を大きくすることができる。
また、溶接電流に低周波パルス電流を使用することにより、金属パイプ2への溶接入熱を減少させることができ、金属板1に比べて肉厚の薄い金属パイプ2を、金属パイプ2に欠陥を生じさせることなく溶接することができる。なお、この効果は、逆に、金属パイプ2に比べて金属板1の肉厚が薄い場合にも発揮され、金属板1に欠陥を生じさせることなく溶接を行うことができるものとなる。
【0019】
以上、本発明の金属板と金属パイプの溶接装置の実施の一形態について説明したが、本発明の金属板と金属パイプの溶接装置の適用対象は、図4に示すような、微細鉄粉除去装置のマグネット体を内部に収容するためのステンレススチール製の複数本のパイプ2を、原材料供給路と外部を区画する仕切壁となるステンレススチール製の円板1に貫通し、円板1とパイプ2の接触部をすみ肉溶接することにより、シール状態を保った状態で接合する構造体に限定されるものではなく、産業機械等の用途に広範囲に適用可能なものである。
【0020】
【発明の効果】
本発明によれば、溶接を行おうとする金属パイプと隣接する金属パイプとの間に、溶接を行う金属パイプを回転軸として溶接電極を回転させることができる間隙が存在する限界まで、金属パイプを密接して配設することができ、また、溶接電極を金属板の表面との距離を一定に保持しながら回転させて、金属板と金属パイプの接触部をすみ肉溶接するため、溶接の品質、精度及び信頼性を向上することができるとともに、溶接作業の自動化が可能となり、溶接の作業効率を向上することができるとともに、コストを低廉にできる。
さらに、不活性ガス供給管を電気導体により形成し、不活性ガス供給管の先端にTIG溶接用の溶接電極を配設することにより、簡易な機構により、溶接が行われる溶接電極の近傍位置に正確に不活性ガスの雰囲気を形成することができ、これにより、溶接の品質及び精度をより一層向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の金属板と金属パイプの溶接装置の要部を示す正面断面図である。
【図2】 図1のA−A線断面図である。
【図3】 本発明の金属板と金属パイプの溶接装置を示す模式図である。
【図4】 微細鉄粉除去装置に用いられる円板とパイプを溶接した従来の構造体を示す説明図である。
【符号の説明】
1 金属板
2 金属パイプ
3 溶接装置本体
30 回転体
31 内管
32 外管
34 不活性ガス供給管
35 溶接電極
36 当接部材
37 モータ
4 制御部
5 放熱部材
10 溶接部
Claims (1)
- 金属板に形成した透孔を貫通して配設した金属パイプの外周面を回転軸として回転する円筒形状の内管及び外管からなる回転体と、金属板の表面に当接して回転体の下端と金属板の表面との距離を一定に保持する、回転体を構成する円筒形状の内管と外管の下端部間に支持部材を介して略等間隔に配設した複数個の倣いボール又は倣いローラによりなる当接部材と、回転体に配設したTIG溶接用の溶接電極と、金属板と金属パイプの接触部の近傍に不活性ガスを供給し、不活性ガスの雰囲気を形成する、回転体を構成する円筒形状の内管と外管の間に配設した不活性ガス供給管とからなり、該不活性ガス供給管を電気導体により形成し、不活性ガス供給管の先端にTIG溶接用の溶接電極を配設したことを特徴とする金属板と金属パイプの溶接装置。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP32753596A JP3863611B2 (ja) | 1996-11-22 | 1996-11-22 | 金属板と金属パイプの溶接装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP32753596A JP3863611B2 (ja) | 1996-11-22 | 1996-11-22 | 金属板と金属パイプの溶接装置 |
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JPH10156533A JPH10156533A (ja) | 1998-06-16 |
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- 1996-11-22 JP JP32753596A patent/JP3863611B2/ja not_active Expired - Fee Related
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