JP3863231B2 - ビリルビンオキシダーゼの安定化 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビリルビンオキシダーゼの安定化方法、さらに詳しくは、ビリルビンオキシダーゼを液状で保存する場合において、ビリルビンオキシダーゼの酵素活性を長期間安定に保持することのできる安定化方法および該方法を適用したビリルビンオキシダーゼ試薬に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビリルビンオキシダーゼは、ビリルビンをビリベルジンに酸化させる反応を触媒する酵素であり、臨床検査上、生体中のビリルビンの光学的測定法および測定試薬に用いられる。
ビリルビンオキシダーゼを用いてビリルビンを測定する試薬(本明細書においては、ビリルビンオキシダーゼ試薬と称する)としては総ビリルビン測定用試薬および直接ビリルビン測定用試薬とが挙げられ、ビリルビンオキシダーゼはその凍結乾燥品のごとき粉末を緩衝液に溶解ないしは分散し、水性液状にして使用される。
総ビリルビン測定用試薬には、pH6.0〜9.0の範囲の緩衝液、例えば、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(略称ACES)緩衝液などのグッド緩衝液、またはリン酸緩衝液が用いられ、反応促進のために、コール酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム(略称SDS)などの直接化剤を該緩衝液に添加するのが好ましい。
【0003】
直接ビリルビン測定用試薬には、pH3.0〜4.5の範囲の緩衝液、例えば、乳酸−乳酸ナトリウム緩衝液、クエン酸緩衝液などが用いられる。
ビリルビンオキシダーゼとしては、例えば、ミロセシウム属由来ビリルビンオキシダーゼ、エビタケ(Trachydermatsumodae)の産生するビリルビンオキシダーゼ等多くのものが知られており、その使用量は所望の酵素活性を示す範囲で適宣用いられるが、通常、反応液中に0.04〜10単位/ml、好ましくは、総ビリルビン測定用には0.08〜4単位/ml、直接ビリルビン測定用には、0.4〜8単位/mlの範囲で用いられる。
ところが、ビリルビンオキシダーゼは、液状で非常に不安定で、低温においてもpH9.2〜9.7の0.1Mリン酸緩衝液中で96時間安定であるに過ぎず[アグリカルチュラル・アンド・バイオロジカル・ケミストリー(Agric.Biol.Chem.)、第46巻第8号、2031〜2034頁、1982年]、また、常温(25℃)において本酵素の安定pHで保存する場合であっても、14日間後には、10.5%の残存活性しか示さない。
【0004】
一般に、ビリルビンオキシダーゼ試薬は凍結乾燥品のごとき粉末で市販されているが、この場合、用時、必要量を液状に調製しなければならず、手間がかかるほか、一旦調製すると短期間のうちに使用しなければならない。一方、ビリルビンオキシダーゼ試薬が液状で入手できれば、ビリルビンの測定操作を簡便に行うことができるが、そのためにはビリルビンオキシダーゼが液状で長期間安定であることが必要である。
従来、ビリルビンオキシダーゼを液状で安定化する方法として、pH8以上、好ましくはpH8〜10のアルカリ性緩衝液で、例えばジエチルバルビツール酸ナトリウム・塩酸緩衝液、トリスヒドロキシアミノメタン・塩酸緩衝液など、または、これらの緩衝液に乳糖アラニン、グリシン、牛アルブミン、シクロデキストリン等の安定化剤、窒化ソーダ等を適宣添加配合した溶液で保存する方法(特開昭60-151561)、pH7〜9付近のリン酸緩衝液、トリス・塩酸塩緩衝液、ジメチルグルタル酸−NaOH緩衝液で保存する方法(特開昭61-209587)、そしてpH5〜10.5の0.1Mリン酸緩衝液で保存する方法(特公昭62-33880)等が知られている。しかし、これらの方法を用いてもビリルビンオキシダーゼの活性を長期間保持することは困難である。
【0005】
また、ビリルビンオキシダーゼの活性を安定化する他の方法として、アスパラギン酸および/又はトリプトファンを添加する方法(特開平6−284886)があり、これらの安定化剤の中で、トリプトファンに安定化効果があるが、ビリルビンオキシダーゼ含有試液にトリプトファンを添加した場合、保存中に徐々に茶色に着色してしまい、吸光度変化を測定するビリルビン測定用試薬には不向きである。
最近、ビリルビンオキシダーゼの活性を長期間安定に保持する方法として、ハロゲン化物によるビリルビンオキシダーゼの安定化方法(特開平7−203962)および、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン等の緩衝剤と酒石酸ナトリウムカリウム等のカルボン酸類によるビリルビンオキシダーゼの安定化方法(特開平8−66196)等が公開された。これらの安定化方法を用いれば、冷蔵(7℃)で一年間保存後でも約50%の残存活性を保持することができるが、さらなる長期安定化が望まれていた。
【0006】
【本発明が解決しようとする課題】
かかる事情に鑑み、本発明は、不安定なビリルビンオキシダーゼを水性液状で長期間安定に保存する方法、および、該方法を適用した安定なビリルビンオキシダーゼ試薬を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、意外にも、一般式(1):
【化4】
[式中、R1とR2は共に水素原子であるか、または一緒になって、低級アルキル基で置換されていてもよいベンゼン環を形成する。R3は水素原子または低級アルキル基である];
一般式(2)
【化5】
[式中、R4およびR5のいずれか一方は水素原子または低級アルキル基であり、他方はそれが結合する窒素原子と隣接する5位の炭素原子との間で二重結合を形成する];または
一般式(3):
【化6】
:
[式中、R6は水素原子または低級アルキル基である]
で示される含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体の一種または二種以上を液状のビリルビンオキシダーゼ試薬に添加することにより、ビリルビンオキシダーゼの安定性が飛躍的に向上することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、ビリルビンオキシダーゼ含有液に前記一般式(1)、(2)または(3)で示される含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体の一種または二種以上を配合することを特徴とするビリルビンオキシダーゼの安定化方法、およびそのように調製される安定なビリルビンオキシダーゼ試薬を提供するものである。
本発明の好ましい態様においては、ビリルビンオキシダーゼ含有液に緩衝剤を添加し、pH7.0〜12.0の間に緩衝能をもたせ、これに前記一般式(1)、(2)または(3)で示される含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体の一種または二種以上を配合することを特徴とするビリルビンオキシダーゼの安定化方法、およびそのように調製される安定なビリルビンオキシダーゼ試薬を提供するものである。
本発明で用いられる含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体の具体例としては、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、6−メルカプトプリン、3−メルカプト−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール、および、2−メルカプトベンズイミダゾール等が挙げられ、好ましくは2−メルカプト−1−メチルイミダゾールおよび3−メルカプト−1,2,4−トリアゾールである。
【0009】
含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体の添加量は、十分な安定化効果が得られる量であれば特に限定するものではなく、一般に用時のビリルビンオキシダーゼ水性液中の最終濃度が5mM以上であれば所望の安定化効果が得られ、通常、最終濃度として5mM〜750mM、好ましくは、10mM〜500mM、さらに好ましくは15mM〜250mMである。また、これら含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体は必要に応じてそのアルカリ金属塩や塩酸塩などの形態で用いてもよい。
本発明で用いられる上記の緩衝剤は、ビリルビンオキシダーゼの安定なpH域(pH7.0〜12.0)において緩衝能を有するものに限られない。またこれらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましい緩衝剤は、2−モルホリノエタンスルホン酸一水和物(略号MES)、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(略号Bis−Tris)、N−(2−アセトアミド)イミノ二酢酸(略号ADA)、ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸)(略号PIPES)、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(略号ACES)、2−ヒドロキシ−3−モルホリノプロパンスルホン酸(略号MOPSO)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(略号BES)、3−モルホリノプロパンスルホン酸(略号MOPS)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(略号TES)、2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジン]エタンスルホン酸(略号HEPES)、ピペラジン−1,4−ビス(2−ヒドロキシ−3−プロパンスルホン酸)二水和物(PIPSO)、3−[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(略号DIPSO)、2−ヒドロキシ−N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸(略号TAPSO)、2−ヒドロキシ−3−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジン]プロパンスルホン酸一水和物(略号HEPPSO)、3−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジン]プロパンスルホン酸(略号EPPS)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン(略号Tricine)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(略号Bicine)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸(略号TAPS)、N−シクロヘキシル−2−アミノエタンスルホン酸(略号CHES)、N−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−3−アミノプロパンスルホン酸(略号CAPSO)、N−シクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸(略号CAPS)、2−(エチルアミノ)エタノール(略号EAE)、ジエタノールアミン(略号DEA)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(略号Tris)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンマレイン酸塩(略号Tris−マレイン酸)、グリシンアミド、グリシルグリシン、グリシン、ホウ酸緩衝剤[ホウ酸(H3BO4)および四ホウ酸ナトリウム(Na2B4O7)]、または、リン酸緩衝剤[リン酸水素二ナトリム(Na2HPO4)およびリン酸二水素ナトリム(NaH2PO4)]であり、さらに好ましくは、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(Bicine)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸(TAPS)、N−シクロヘキシル−2−アミノエタンスルホン酸(CHES)、N−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−3−アミノプロパンスルホン酸(CAPSO)、N−シクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸(CAPS)、2−(エチルアミノ)エタノール(EAE)、ジエタノールアミン(DEA)、または、ホウ酸緩衝剤であり、特に好ましくはN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(Bicine)およびホウ酸緩衝剤である。緩衝剤の添加量は、十分に安定化効果が得られる量であれば特に限定するものではなく、一般に用時のビリルビンオキシダーゼ含有液中の最終濃度が10mM以上であれば、所望の安定化効果が得られ、通常、最終濃度として10mM〜1M、好ましくは、10mM〜100mMとする。
【0010】
これら含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体の一種または二種以上と緩衝剤の一種または二種以上との組み合わせのうち、好ましい組み合わせは、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、6−メルカプトプリン、3−メルカプト−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール、および、2−メルカプトベンズイミダゾールから選ばれる一種または二種以上とN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(Bicine)、N−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−3−アミノプロパンスルホン酸(CAPSO)、2−(エチルアミノ)エタノール(EAE)、ジエタノールアミン(DEA)、およびホウ酸緩衝剤から選ばれる一種または二種以上の組み合わせであり、さらに好ましくは、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、6−メルカプトプリン、3−メルカプト−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール、および、2−メルカプトベンズイミダゾールから選ばれる一種または二種以上とN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(Bicine)およびホウ酸緩衝剤から選ばれる一種または二種の組み合わせで、最も好ましい組み合わせは2−メルカプト−1−メチルイミダゾールと3−メルカプト−1,2,4−トリアゾールから選ばれる一種または二種とN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(Bicine)およびホウ酸緩衝剤から選ばれる一種または二種の組み合わせである。
【0011】
これらの含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体と緩衝剤との組み合わせによるビリルビンオキシダーゼの安定化効果は、さらにカルボン酸類の一種または二種以上を組み合わせた場合において著しく安定性が向上する。これら含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体と緩衝剤に組み合わせるカルボン酸としては、酒石酸、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、酒石酸水素カリウム、酒石酸ナトリウムカリウム、クエン酸ナトリウムが好ましく、酒石酸ナトリウムカリウムが特に好ましい。
ビリルビンオキシダーゼとしては公知の酵素がいずれも用いられ、例えば、ミロセシウム(Myrothecium)属菌、例えばミロセシウム・ベルカリア(Myrothecium verrucaria)由来ビリルビンオキシダーゼ、エビタケ(Trachydermatsumodae)の産生するビリルビンオキシダーゼ、ペニシリウム・ジャンシネラム(Penicillium janthinellum)由来ビリルビンオキシダーゼ、バチルス・リヒェニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来ビリルビンオキシダーゼ、アガリカス・ビスポラス(Agaricus bisporus)菌茸由来ビリルビンオキシダーゼ等が挙げられる。ビリルビンオキシダーゼの使用量は所望の酵素活性を示す範囲で適宣用いられるが、 通常、反応液中に0.04〜10単位/ml、好ましくは、総ビリルビン測定用には0.08〜4単位/ml、直接ビリルビン測定用には、0.4〜8単位/mlの範囲で用いられる。
【0012】
本発明によるビリルビンオキシダーゼの安定化には、上記のように調製される緩衝剤と、含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体の1種または2種以上を配合したビリルビンオキシダーゼ含有液のpH値を、通常、pH7.0〜12.0、好ましくはpH8.0〜11.0、さらに好ましくはpH9.0〜11.0とする。
上記ビリルビンオキシダーゼ試薬には、必要により、通常の緩衝剤や防腐剤等の他の成分を添加してもよい。また、含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体を用いてビリルビンオキシダーゼを安定化する際に、ジチオスレイトール、L−システイン、N−アセチル−L−システイン、メチオニン、メルカプトエタノール等のメルカプト基を有する化合物やヒスチジン等の還元剤を一緒に添加しておけば、ビリルビンオキシダーゼの安定化効果はさらに良くなる。
【0013】
本発明により、ビリルビンオキシダーゼを安定化するには、ビリルビンオキシダーゼ含有液に、前記緩衝剤の一種または二種以上と含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体の一種または二種以上との組み合わせで添加することにより達成され、また、この組み合わせにカルボン酸類の一種または二種以上を添加することにより、さらに安定性が良くなる。実際上は、緩衝剤を常法に従って、通常のpH調整剤、例えば塩酸、硫酸、乳酸、酢酸などの無機酸または有機酸、あるいは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、などの無機塩基または有機塩基を用いて適当なpH領域を有する緩衝液を調製し、これにビリルビンオキシダーゼを分散または溶解させ、その前後に含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体の一種または二種以上を添加する方法により行われる。
【0014】
本発明のビリルビンオキシダーゼ試薬は、液状でも、または、粉末などの固形状であってもよい。液状の試薬の調製は、上述したように、pH7.0〜12.0の間に緩衝能をもったビリルビンオキシダーゼ含有液に5mM以上の含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体の一種または二種以上を配合することにより行われる。
固形状の試薬の調製は、上記の緩衝剤の一種または二種以上と含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体の一種または二種以上を配合したビリルビンオキシダーゼ含有液を凍結乾燥してもよく、また、粉末状のビリルビンオキシダーゼに、前記緩衝剤の一種または二種以上と含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体の一種または二種以上とを、それぞれ、液状にした際の濃度が10mM以上および5mM以上となるように配合することにより行われる。
【0015】
本発明のビリルビンオキシダーゼ試薬はキットの形態にすることもでき、例えば、粉末状のビリルビンオキシダーゼと、含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体の一種または二種以上と緩衝剤との固形状混合物とそれを溶解するための緩衝液との組み合わせ、あるいは粉末状ビリルビンオキシダーゼと緩衝剤との固形状混合物または凍結乾燥品とそれを溶解するための含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体の一種または二種以上を含有する緩衝液との組み合わせ等があり、それらは用時混合して用いられる。
本発明の方法および試薬は、ビリルビンオキシダーゼを液状で極めて安定に保存でき、ビリルビンオキシダーゼを用いる測定法、例えば、総ビリルビン測定、直接ビリルビン測定に有効に使用できる。
【0016】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例におけるビリルビンオキシダーゼの残存活性は、つぎのようにして測定した。
活性測定用試薬
試料 :ビリルビンオキシダーゼ(ミロセシウム属由来)
第1試液:50mM リン酸緩衝液 pH7.2
1% コール酸ナトリウム
第2試液:ビリルビンの管理血清 5mg/dl
[市販の管理血清(ネスコール(日本商事(株)製))に、ビリル ビン(ICN社製)を5mg/dlとなるように添加したもの]
活性測定法
0.02単位/ml以下となるように調製したビリルビンオキシダーゼ溶液2μlに第1試液270μlを添加し、37℃で5分間インキュベートした後、第2試液90μlを加えて3分後から5分後までの450nmにおける吸光度変化を測定し、1分間あたりの吸光度変化の量で活性を示した。酵素1単位(U)は、本条件下、1分間に1μmoleのアルブミン結合ビリルビンを酸化するのに必要な酵素量と定義される。
【0017】
実施例1
2−メルカプト−1−メチルイミダゾールによるビリルビンオキシダーゼの長期安定化効果
基本処方として、25mMビシン緩衝液に酒石酸ナトリウムカリウム25mMを添加した処方に、ビリルビンオキシダーゼ4U/mlを添加し、pH10.0に調整した処方を用いた。
この基本処方に2−メルカプト−1−メチルイミダゾール(以下MMIと称す)25mMを含有するように調製した酵素液(pH10.0)を7℃で保存し、8ヶ月後と11ヶ月後の残存活性を上記測定方法により測定し基本処方と比較した。その結果を表1に示す。
【表1】
表1より、従来技術をもちいた基本処方では7℃11ヶ月保存後で42.3%の残存活性しか残すことができないが、2−メルカプト−1−メチルイミダゾールを添加した場合、7℃保存11ヶ月後でも84.8%の残存活性を保っていることがわかる。
【0018】
実施例2
各種含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体によるビリルビンオキシダーゼの安定化効果
100mMホウ酸緩衝液にビリルビンオキシダーゼ2U/ml、および下記表2に示す物質25mMを含有するように調製した酵素液(pH10.0)を苛酷な条件(30℃)で保存し、6日後の残存活性を上記測定方法により測定し基本処方と比較した。その結果を表2に示す。
【表2】
表2に示すごとく、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、6−メルカプトプリン、3−メルカプト−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール、および、2−メルカプトベンズイミダゾールで安定化の効果が大きいことが認められた。特に2−メルカプト−1−メチルイミダゾールの効果が顕著であった。
【0019】
実施例3
2−メルカプト−1−メチルイミダゾールの添加濃度と安定化効果との関係
100mMホウ酸緩衝液にビリルビンオキシダーゼ2U/mlを含有するように調製した酵素液(pH10.0)に種々の濃度の2−メルカプト−1−メチルイミダゾールを添加し30℃で保存し、5日後の残存活性を上記測定方法により測定し比較した。その結果を表3に示す。
【表3】
表3より、2−メルカプト−1−メチルイミダゾールは5mM〜750mMの間で安定化効果を示すことがわかった。また750mM以上添加すると安定化効果は弱くなることがわかった。
【0020】
実施例4
2−メルカプト−1−メチルイミダゾール添加処方と無添加処方との比較
2−メルカプト−1−メチルイミダゾールを添加した処方と2−メルカプト−1−メチルイミダゾール無添加の処方とを総ビリルビン測定用試薬および直接ビリルビン測定用試薬に適用した調製時の試薬で相関関係を調べた。総ビリルビン測定用試薬に適用した場合の結果を図1に、また、直接ビリルビン測定用試薬に適用した場合の結果を図2に示す。総ビリルビン測定用試薬および直接ビリルビン測定用試薬としてはVL T−BILおよびVL D−BIL(日本商事(株)製)を用いた。
図1および図2より、2−メルカプト−1−メチルイミダゾールを添加した処方でも、無添加のものと変わらない性能を示し、これら安定化剤の添加によってもビリルビン測定性能が影響されないことがわかった。
【0021】
実施例5
7℃で1年間保存した試薬と調製時の試薬との比較
2−メルカプト−1−メチルイミダゾールを添加し、7℃で1年間保存した試薬を用いて、調製時の試薬との相関関係を調べた。その結果を図3に示す。
図3より、7℃で1年間経過しても調製時と変わらない性能を示すことがわかった。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、pH7.0〜12.0の間に緩衝能をもたせたビリルビンオキシダーゼ含有液に前記一般式(1)、(2)または(3)で示される含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体の一種または二種以上を添加するという非常に簡単で、経済的な方法により、ビリルビンオキシダーゼを液状で長期間安定化させることができ、ビリルビンの測定毎に新たにビリルビンオキシダーゼ試薬を調製する必要がなく、一度調製したビリルビンオキシダーゼ試薬を長期間に亙って使用することができ、あるいはまた、入手されるビリルビンオキシダーゼ試薬溶液をそのまま測定に使用できるため所望の総ビリルビンおよび直接ビリルビンの測定がきわめて簡便にかつ容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 総ビリルビン測定用試薬に適用した場合のMMI添加処方と無添加処方との相関関係を示すグラフである。
【図2】 直接ビリルビン測定用試薬に適用した場合のMMI添加処方と無添加処方との相関関係を示すグラフである。
【図3】 総ビリルビン測定用試薬に適用した場合のMMI添加処方における、調製時と7℃1年保存後との相関関係を示すグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビリルビンオキシダーゼの安定化方法、さらに詳しくは、ビリルビンオキシダーゼを液状で保存する場合において、ビリルビンオキシダーゼの酵素活性を長期間安定に保持することのできる安定化方法および該方法を適用したビリルビンオキシダーゼ試薬に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビリルビンオキシダーゼは、ビリルビンをビリベルジンに酸化させる反応を触媒する酵素であり、臨床検査上、生体中のビリルビンの光学的測定法および測定試薬に用いられる。
ビリルビンオキシダーゼを用いてビリルビンを測定する試薬(本明細書においては、ビリルビンオキシダーゼ試薬と称する)としては総ビリルビン測定用試薬および直接ビリルビン測定用試薬とが挙げられ、ビリルビンオキシダーゼはその凍結乾燥品のごとき粉末を緩衝液に溶解ないしは分散し、水性液状にして使用される。
総ビリルビン測定用試薬には、pH6.0〜9.0の範囲の緩衝液、例えば、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(略称ACES)緩衝液などのグッド緩衝液、またはリン酸緩衝液が用いられ、反応促進のために、コール酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム(略称SDS)などの直接化剤を該緩衝液に添加するのが好ましい。
【0003】
直接ビリルビン測定用試薬には、pH3.0〜4.5の範囲の緩衝液、例えば、乳酸−乳酸ナトリウム緩衝液、クエン酸緩衝液などが用いられる。
ビリルビンオキシダーゼとしては、例えば、ミロセシウム属由来ビリルビンオキシダーゼ、エビタケ(Trachydermatsumodae)の産生するビリルビンオキシダーゼ等多くのものが知られており、その使用量は所望の酵素活性を示す範囲で適宣用いられるが、通常、反応液中に0.04〜10単位/ml、好ましくは、総ビリルビン測定用には0.08〜4単位/ml、直接ビリルビン測定用には、0.4〜8単位/mlの範囲で用いられる。
ところが、ビリルビンオキシダーゼは、液状で非常に不安定で、低温においてもpH9.2〜9.7の0.1Mリン酸緩衝液中で96時間安定であるに過ぎず[アグリカルチュラル・アンド・バイオロジカル・ケミストリー(Agric.Biol.Chem.)、第46巻第8号、2031〜2034頁、1982年]、また、常温(25℃)において本酵素の安定pHで保存する場合であっても、14日間後には、10.5%の残存活性しか示さない。
【0004】
一般に、ビリルビンオキシダーゼ試薬は凍結乾燥品のごとき粉末で市販されているが、この場合、用時、必要量を液状に調製しなければならず、手間がかかるほか、一旦調製すると短期間のうちに使用しなければならない。一方、ビリルビンオキシダーゼ試薬が液状で入手できれば、ビリルビンの測定操作を簡便に行うことができるが、そのためにはビリルビンオキシダーゼが液状で長期間安定であることが必要である。
従来、ビリルビンオキシダーゼを液状で安定化する方法として、pH8以上、好ましくはpH8〜10のアルカリ性緩衝液で、例えばジエチルバルビツール酸ナトリウム・塩酸緩衝液、トリスヒドロキシアミノメタン・塩酸緩衝液など、または、これらの緩衝液に乳糖アラニン、グリシン、牛アルブミン、シクロデキストリン等の安定化剤、窒化ソーダ等を適宣添加配合した溶液で保存する方法(特開昭60-151561)、pH7〜9付近のリン酸緩衝液、トリス・塩酸塩緩衝液、ジメチルグルタル酸−NaOH緩衝液で保存する方法(特開昭61-209587)、そしてpH5〜10.5の0.1Mリン酸緩衝液で保存する方法(特公昭62-33880)等が知られている。しかし、これらの方法を用いてもビリルビンオキシダーゼの活性を長期間保持することは困難である。
【0005】
また、ビリルビンオキシダーゼの活性を安定化する他の方法として、アスパラギン酸および/又はトリプトファンを添加する方法(特開平6−284886)があり、これらの安定化剤の中で、トリプトファンに安定化効果があるが、ビリルビンオキシダーゼ含有試液にトリプトファンを添加した場合、保存中に徐々に茶色に着色してしまい、吸光度変化を測定するビリルビン測定用試薬には不向きである。
最近、ビリルビンオキシダーゼの活性を長期間安定に保持する方法として、ハロゲン化物によるビリルビンオキシダーゼの安定化方法(特開平7−203962)および、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン等の緩衝剤と酒石酸ナトリウムカリウム等のカルボン酸類によるビリルビンオキシダーゼの安定化方法(特開平8−66196)等が公開された。これらの安定化方法を用いれば、冷蔵(7℃)で一年間保存後でも約50%の残存活性を保持することができるが、さらなる長期安定化が望まれていた。
【0006】
【本発明が解決しようとする課題】
かかる事情に鑑み、本発明は、不安定なビリルビンオキシダーゼを水性液状で長期間安定に保存する方法、および、該方法を適用した安定なビリルビンオキシダーゼ試薬を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、意外にも、一般式(1):
【化4】
[式中、R1とR2は共に水素原子であるか、または一緒になって、低級アルキル基で置換されていてもよいベンゼン環を形成する。R3は水素原子または低級アルキル基である];
一般式(2)
【化5】
[式中、R4およびR5のいずれか一方は水素原子または低級アルキル基であり、他方はそれが結合する窒素原子と隣接する5位の炭素原子との間で二重結合を形成する];または
一般式(3):
【化6】
:
[式中、R6は水素原子または低級アルキル基である]
で示される含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体の一種または二種以上を液状のビリルビンオキシダーゼ試薬に添加することにより、ビリルビンオキシダーゼの安定性が飛躍的に向上することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、ビリルビンオキシダーゼ含有液に前記一般式(1)、(2)または(3)で示される含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体の一種または二種以上を配合することを特徴とするビリルビンオキシダーゼの安定化方法、およびそのように調製される安定なビリルビンオキシダーゼ試薬を提供するものである。
本発明の好ましい態様においては、ビリルビンオキシダーゼ含有液に緩衝剤を添加し、pH7.0〜12.0の間に緩衝能をもたせ、これに前記一般式(1)、(2)または(3)で示される含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体の一種または二種以上を配合することを特徴とするビリルビンオキシダーゼの安定化方法、およびそのように調製される安定なビリルビンオキシダーゼ試薬を提供するものである。
本発明で用いられる含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体の具体例としては、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、6−メルカプトプリン、3−メルカプト−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール、および、2−メルカプトベンズイミダゾール等が挙げられ、好ましくは2−メルカプト−1−メチルイミダゾールおよび3−メルカプト−1,2,4−トリアゾールである。
【0009】
含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体の添加量は、十分な安定化効果が得られる量であれば特に限定するものではなく、一般に用時のビリルビンオキシダーゼ水性液中の最終濃度が5mM以上であれば所望の安定化効果が得られ、通常、最終濃度として5mM〜750mM、好ましくは、10mM〜500mM、さらに好ましくは15mM〜250mMである。また、これら含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体は必要に応じてそのアルカリ金属塩や塩酸塩などの形態で用いてもよい。
本発明で用いられる上記の緩衝剤は、ビリルビンオキシダーゼの安定なpH域(pH7.0〜12.0)において緩衝能を有するものに限られない。またこれらは単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましい緩衝剤は、2−モルホリノエタンスルホン酸一水和物(略号MES)、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(略号Bis−Tris)、N−(2−アセトアミド)イミノ二酢酸(略号ADA)、ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸)(略号PIPES)、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(略号ACES)、2−ヒドロキシ−3−モルホリノプロパンスルホン酸(略号MOPSO)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(略号BES)、3−モルホリノプロパンスルホン酸(略号MOPS)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(略号TES)、2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジン]エタンスルホン酸(略号HEPES)、ピペラジン−1,4−ビス(2−ヒドロキシ−3−プロパンスルホン酸)二水和物(PIPSO)、3−[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(略号DIPSO)、2−ヒドロキシ−N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸(略号TAPSO)、2−ヒドロキシ−3−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジン]プロパンスルホン酸一水和物(略号HEPPSO)、3−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジン]プロパンスルホン酸(略号EPPS)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン(略号Tricine)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(略号Bicine)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸(略号TAPS)、N−シクロヘキシル−2−アミノエタンスルホン酸(略号CHES)、N−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−3−アミノプロパンスルホン酸(略号CAPSO)、N−シクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸(略号CAPS)、2−(エチルアミノ)エタノール(略号EAE)、ジエタノールアミン(略号DEA)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(略号Tris)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンマレイン酸塩(略号Tris−マレイン酸)、グリシンアミド、グリシルグリシン、グリシン、ホウ酸緩衝剤[ホウ酸(H3BO4)および四ホウ酸ナトリウム(Na2B4O7)]、または、リン酸緩衝剤[リン酸水素二ナトリム(Na2HPO4)およびリン酸二水素ナトリム(NaH2PO4)]であり、さらに好ましくは、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(Bicine)、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸(TAPS)、N−シクロヘキシル−2−アミノエタンスルホン酸(CHES)、N−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−3−アミノプロパンスルホン酸(CAPSO)、N−シクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸(CAPS)、2−(エチルアミノ)エタノール(EAE)、ジエタノールアミン(DEA)、または、ホウ酸緩衝剤であり、特に好ましくはN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(Bicine)およびホウ酸緩衝剤である。緩衝剤の添加量は、十分に安定化効果が得られる量であれば特に限定するものではなく、一般に用時のビリルビンオキシダーゼ含有液中の最終濃度が10mM以上であれば、所望の安定化効果が得られ、通常、最終濃度として10mM〜1M、好ましくは、10mM〜100mMとする。
【0010】
これら含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体の一種または二種以上と緩衝剤の一種または二種以上との組み合わせのうち、好ましい組み合わせは、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、6−メルカプトプリン、3−メルカプト−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール、および、2−メルカプトベンズイミダゾールから選ばれる一種または二種以上とN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(Bicine)、N−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−3−アミノプロパンスルホン酸(CAPSO)、2−(エチルアミノ)エタノール(EAE)、ジエタノールアミン(DEA)、およびホウ酸緩衝剤から選ばれる一種または二種以上の組み合わせであり、さらに好ましくは、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、6−メルカプトプリン、3−メルカプト−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール、および、2−メルカプトベンズイミダゾールから選ばれる一種または二種以上とN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(Bicine)およびホウ酸緩衝剤から選ばれる一種または二種の組み合わせで、最も好ましい組み合わせは2−メルカプト−1−メチルイミダゾールと3−メルカプト−1,2,4−トリアゾールから選ばれる一種または二種とN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(Bicine)およびホウ酸緩衝剤から選ばれる一種または二種の組み合わせである。
【0011】
これらの含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体と緩衝剤との組み合わせによるビリルビンオキシダーゼの安定化効果は、さらにカルボン酸類の一種または二種以上を組み合わせた場合において著しく安定性が向上する。これら含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体と緩衝剤に組み合わせるカルボン酸としては、酒石酸、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、酒石酸水素カリウム、酒石酸ナトリウムカリウム、クエン酸ナトリウムが好ましく、酒石酸ナトリウムカリウムが特に好ましい。
ビリルビンオキシダーゼとしては公知の酵素がいずれも用いられ、例えば、ミロセシウム(Myrothecium)属菌、例えばミロセシウム・ベルカリア(Myrothecium verrucaria)由来ビリルビンオキシダーゼ、エビタケ(Trachydermatsumodae)の産生するビリルビンオキシダーゼ、ペニシリウム・ジャンシネラム(Penicillium janthinellum)由来ビリルビンオキシダーゼ、バチルス・リヒェニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来ビリルビンオキシダーゼ、アガリカス・ビスポラス(Agaricus bisporus)菌茸由来ビリルビンオキシダーゼ等が挙げられる。ビリルビンオキシダーゼの使用量は所望の酵素活性を示す範囲で適宣用いられるが、 通常、反応液中に0.04〜10単位/ml、好ましくは、総ビリルビン測定用には0.08〜4単位/ml、直接ビリルビン測定用には、0.4〜8単位/mlの範囲で用いられる。
【0012】
本発明によるビリルビンオキシダーゼの安定化には、上記のように調製される緩衝剤と、含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体の1種または2種以上を配合したビリルビンオキシダーゼ含有液のpH値を、通常、pH7.0〜12.0、好ましくはpH8.0〜11.0、さらに好ましくはpH9.0〜11.0とする。
上記ビリルビンオキシダーゼ試薬には、必要により、通常の緩衝剤や防腐剤等の他の成分を添加してもよい。また、含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体を用いてビリルビンオキシダーゼを安定化する際に、ジチオスレイトール、L−システイン、N−アセチル−L−システイン、メチオニン、メルカプトエタノール等のメルカプト基を有する化合物やヒスチジン等の還元剤を一緒に添加しておけば、ビリルビンオキシダーゼの安定化効果はさらに良くなる。
【0013】
本発明により、ビリルビンオキシダーゼを安定化するには、ビリルビンオキシダーゼ含有液に、前記緩衝剤の一種または二種以上と含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体の一種または二種以上との組み合わせで添加することにより達成され、また、この組み合わせにカルボン酸類の一種または二種以上を添加することにより、さらに安定性が良くなる。実際上は、緩衝剤を常法に従って、通常のpH調整剤、例えば塩酸、硫酸、乳酸、酢酸などの無機酸または有機酸、あるいは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、などの無機塩基または有機塩基を用いて適当なpH領域を有する緩衝液を調製し、これにビリルビンオキシダーゼを分散または溶解させ、その前後に含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体の一種または二種以上を添加する方法により行われる。
【0014】
本発明のビリルビンオキシダーゼ試薬は、液状でも、または、粉末などの固形状であってもよい。液状の試薬の調製は、上述したように、pH7.0〜12.0の間に緩衝能をもったビリルビンオキシダーゼ含有液に5mM以上の含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体の一種または二種以上を配合することにより行われる。
固形状の試薬の調製は、上記の緩衝剤の一種または二種以上と含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体の一種または二種以上を配合したビリルビンオキシダーゼ含有液を凍結乾燥してもよく、また、粉末状のビリルビンオキシダーゼに、前記緩衝剤の一種または二種以上と含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体の一種または二種以上とを、それぞれ、液状にした際の濃度が10mM以上および5mM以上となるように配合することにより行われる。
【0015】
本発明のビリルビンオキシダーゼ試薬はキットの形態にすることもでき、例えば、粉末状のビリルビンオキシダーゼと、含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体の一種または二種以上と緩衝剤との固形状混合物とそれを溶解するための緩衝液との組み合わせ、あるいは粉末状ビリルビンオキシダーゼと緩衝剤との固形状混合物または凍結乾燥品とそれを溶解するための含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体の一種または二種以上を含有する緩衝液との組み合わせ等があり、それらは用時混合して用いられる。
本発明の方法および試薬は、ビリルビンオキシダーゼを液状で極めて安定に保存でき、ビリルビンオキシダーゼを用いる測定法、例えば、総ビリルビン測定、直接ビリルビン測定に有効に使用できる。
【0016】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例におけるビリルビンオキシダーゼの残存活性は、つぎのようにして測定した。
活性測定用試薬
試料 :ビリルビンオキシダーゼ(ミロセシウム属由来)
第1試液:50mM リン酸緩衝液 pH7.2
1% コール酸ナトリウム
第2試液:ビリルビンの管理血清 5mg/dl
[市販の管理血清(ネスコール(日本商事(株)製))に、ビリル ビン(ICN社製)を5mg/dlとなるように添加したもの]
活性測定法
0.02単位/ml以下となるように調製したビリルビンオキシダーゼ溶液2μlに第1試液270μlを添加し、37℃で5分間インキュベートした後、第2試液90μlを加えて3分後から5分後までの450nmにおける吸光度変化を測定し、1分間あたりの吸光度変化の量で活性を示した。酵素1単位(U)は、本条件下、1分間に1μmoleのアルブミン結合ビリルビンを酸化するのに必要な酵素量と定義される。
【0017】
実施例1
2−メルカプト−1−メチルイミダゾールによるビリルビンオキシダーゼの長期安定化効果
基本処方として、25mMビシン緩衝液に酒石酸ナトリウムカリウム25mMを添加した処方に、ビリルビンオキシダーゼ4U/mlを添加し、pH10.0に調整した処方を用いた。
この基本処方に2−メルカプト−1−メチルイミダゾール(以下MMIと称す)25mMを含有するように調製した酵素液(pH10.0)を7℃で保存し、8ヶ月後と11ヶ月後の残存活性を上記測定方法により測定し基本処方と比較した。その結果を表1に示す。
【表1】
表1より、従来技術をもちいた基本処方では7℃11ヶ月保存後で42.3%の残存活性しか残すことができないが、2−メルカプト−1−メチルイミダゾールを添加した場合、7℃保存11ヶ月後でも84.8%の残存活性を保っていることがわかる。
【0018】
実施例2
各種含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体によるビリルビンオキシダーゼの安定化効果
100mMホウ酸緩衝液にビリルビンオキシダーゼ2U/ml、および下記表2に示す物質25mMを含有するように調製した酵素液(pH10.0)を苛酷な条件(30℃)で保存し、6日後の残存活性を上記測定方法により測定し基本処方と比較した。その結果を表2に示す。
【表2】
表2に示すごとく、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、6−メルカプトプリン、3−メルカプト−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール、および、2−メルカプトベンズイミダゾールで安定化の効果が大きいことが認められた。特に2−メルカプト−1−メチルイミダゾールの効果が顕著であった。
【0019】
実施例3
2−メルカプト−1−メチルイミダゾールの添加濃度と安定化効果との関係
100mMホウ酸緩衝液にビリルビンオキシダーゼ2U/mlを含有するように調製した酵素液(pH10.0)に種々の濃度の2−メルカプト−1−メチルイミダゾールを添加し30℃で保存し、5日後の残存活性を上記測定方法により測定し比較した。その結果を表3に示す。
【表3】
表3より、2−メルカプト−1−メチルイミダゾールは5mM〜750mMの間で安定化効果を示すことがわかった。また750mM以上添加すると安定化効果は弱くなることがわかった。
【0020】
実施例4
2−メルカプト−1−メチルイミダゾール添加処方と無添加処方との比較
2−メルカプト−1−メチルイミダゾールを添加した処方と2−メルカプト−1−メチルイミダゾール無添加の処方とを総ビリルビン測定用試薬および直接ビリルビン測定用試薬に適用した調製時の試薬で相関関係を調べた。総ビリルビン測定用試薬に適用した場合の結果を図1に、また、直接ビリルビン測定用試薬に適用した場合の結果を図2に示す。総ビリルビン測定用試薬および直接ビリルビン測定用試薬としてはVL T−BILおよびVL D−BIL(日本商事(株)製)を用いた。
図1および図2より、2−メルカプト−1−メチルイミダゾールを添加した処方でも、無添加のものと変わらない性能を示し、これら安定化剤の添加によってもビリルビン測定性能が影響されないことがわかった。
【0021】
実施例5
7℃で1年間保存した試薬と調製時の試薬との比較
2−メルカプト−1−メチルイミダゾールを添加し、7℃で1年間保存した試薬を用いて、調製時の試薬との相関関係を調べた。その結果を図3に示す。
図3より、7℃で1年間経過しても調製時と変わらない性能を示すことがわかった。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、pH7.0〜12.0の間に緩衝能をもたせたビリルビンオキシダーゼ含有液に前記一般式(1)、(2)または(3)で示される含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体の一種または二種以上を添加するという非常に簡単で、経済的な方法により、ビリルビンオキシダーゼを液状で長期間安定化させることができ、ビリルビンの測定毎に新たにビリルビンオキシダーゼ試薬を調製する必要がなく、一度調製したビリルビンオキシダーゼ試薬を長期間に亙って使用することができ、あるいはまた、入手されるビリルビンオキシダーゼ試薬溶液をそのまま測定に使用できるため所望の総ビリルビンおよび直接ビリルビンの測定がきわめて簡便にかつ容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 総ビリルビン測定用試薬に適用した場合のMMI添加処方と無添加処方との相関関係を示すグラフである。
【図2】 直接ビリルビン測定用試薬に適用した場合のMMI添加処方と無添加処方との相関関係を示すグラフである。
【図3】 総ビリルビン測定用試薬に適用した場合のMMI添加処方における、調製時と7℃1年保存後との相関関係を示すグラフである。
Claims (4)
- ビリルビンオキシダーゼ含有液に、一般式(1):
一般式(2)
一般式(3):
【化3】
:
[式中、R6は水素原子または低級アルキル基である]
で示される含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体の一種または二種以上を配合することを特徴とするビリルビンオキシダーゼの安定化方法。 - 含窒素複素環化合物のメルカプト誘導体が2−メルカプト−1−メチルイミダゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、6−メルカプトプリン、3−メルカプト−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール、および、2−メルカプトベンズイミダゾールである請求項1記載のビリルビンオキシダーゼの安定化方法。
- ビリルビンオキシダーゼ含有液に緩衝剤を添加し、pH7.0から12.0の間の緩衝能下に保存することを特徴とする請求項1および2記載のビリルビンオキシダーゼの安定化方法。
- 緩衝剤としてN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン、2−(エチルアミノ)エタノール、ジエタノールアミン、または、ホウ酸緩衝剤を用いることを特徴とする請求項3記載のビリルビンオキシダーゼの安定化方法。
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