JP3862869B2 - 非接触式眼圧計 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、被検眼に向けて気流を吹き付けると共に、この気流による角膜の変形を光学的に検出することにより、被検眼の眼圧を非接触で測定する非接触式眼圧計に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、被検眼に向けてエアパルスを吹き付けて角膜を圧平させる(角膜頂点部分が平面になるまで角膜を変形させることをいう。以下、同じ。)と共に、このエアパルスによる被検眼の角膜の圧平を光学的に検知することにより、被検眼の眼圧を非接触で測定する非接触式眼圧計が広く知られている。
【0003】
具体的には、図8に示すように、時間に比例して吹付圧が増加するエアパルスApを被検眼の吹き付けると共に、被検眼に向けて図9の様な平行な光束Liを照射する。
【0004】
エアパルス吹き付け動作開始前においては、角膜が通常の球面形状をしているので、この入射光束Liの角膜Cにおける反射光束Lrは、図10の様に角膜Cの曲率中心RoからRo/2だけ隔てた点Aから放射される様に反射する。
【0005】
一方、角膜がエアパルスにより圧平された状態では、反射光束Lrはそのまま同じ平行光束となって反射される。この反射光束Liは、角膜Cが圧平された時点でその受光光量が最大となるような位置に配置された受光素子により検出される。これにより、受光光量が最大となるまでの時間、即ち角膜が圧平されるまでの時間T0 (図8)を演算し、これに基づいて眼圧を算出する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の非接触式眼圧計は、被検眼を圧平させないと測定をすることができないので、吹き付けられる気流の圧力が非常に大きいものとならざるを得ず、被検者にとっては不愉快なものであった。また、空気吹き付けにより生ずる音も大きく、被検者を驚かせるという不都合があった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、この点に鑑み、被検眼に向けて吹き付ける気流の圧力を最小限に抑えることができ、これにより被検者の負担を軽減する非接触式眼圧計を提供することを目的とする。
【0008】
このため、請求項1の発明は、被検眼の角膜に気流を吹き付けて前記角膜を変形させる気流吹付手段と、該気流吹付手段による前記角膜の変形を光学的に検出する角膜変形検出手段と、該角膜変形検出手段の出力に基づき被検眼の眼圧を演算する演算手段とを備えた非接触式眼圧計において、眼圧が既知である被検眼の角膜に前記気流を吹き付けて得られた前記角膜の変形度合いの比較データを複数記憶して保持しているメモリを更に備え、前記角膜変形検出手段は前記気流吹付手段が前記角膜に気流の吹き付けを開始してから所定時間内における角膜変形の度合いを検出すると共に、前記演算手段は、前記角膜変形検出手段により検出された前記角膜の変形から前記所定時間内における前記角膜の変形度合を求めて、この求めた前記角膜の変形度合いを前記メモリに記憶保持させた複数の比較データと比較し、この求めた前記角膜の変形度合いに近い比較データを前記複数の比較データから選定し、この選定した前記比較データに対応する眼圧値を表示装置に表示させる非接触式眼圧計としたことを特徴とする。
【0009】
この請求項1の発明によれば、気流の吹き付けによる角膜の形状の所定時間内における変化は、被検眼の眼圧の大小により異なる。すなわち、眼圧が高ければ角膜の形状変化は少なく、逆に眼圧が低ければ角膜の形状変化は大きい。従って、この変化の度合いを解析することにより、被検眼の眼圧を算出することができる。そして、この場合、被検眼角膜を圧平させる必要は必ずしもないので、従来の非接触式眼圧計に比べてエアパルスの圧力を低減させることができる。
【0010】
また、請求項2の発明によれば、前記角膜変形検出手段は、前記被検眼に向けてパターン光束を投影するパターン光束投影系と、該パターン光束の角膜反射を受光する受光手段とを備えており、該受光手段上により所定時間内における角膜変形の度合いを検出するように構成したことを特徴とする。
【0011】
この請求項2の発明によれば、被検眼に向けて投影されたパターン光束が角膜において反射され、受光手段上にパターン像が形成される。この受光手段上のパターン像は、気流の吹き付けにより形状が変化する。そして、所定時間内におけるこの像の変化は、被検眼の眼圧の大小により異なる。すなわち、眼圧が高ければ、パターン像の形状変化は少なく、逆に眼圧が低ければパターン像の形状変化は大きい。従って、この変化の度合いを解析することにより、被検眼の眼圧を算出することができる。そして、この場合、被検眼角膜を圧平させる必要は必ずしもないので、従来の非接触式眼圧計に比べてエアパルスの圧力を低減させることができる。
【0012】
更に、請求項3の発明は、前記角膜変形検出手段は被検眼前眼部の断面像を撮像する撮像手段を備え、該撮像手段により所定時間内における角膜変形の度合いを検出するように構成したことを特徴とする。
【0013】
この請求項3の発明によれば、気流の吹き付けによる角膜の断面形状の所定時間内における変化は、被検眼の眼圧の大小により異なる。すなわち、眼圧が高ければ角膜の断面形状変化は少なく、逆に眼圧が低ければ角膜の断面形状変化は大きい。従って、この変化の度合いを解析することにより、被検眼の眼圧を算出することができる。そして、この場合、被検眼角膜を圧平させる必要は必ずしもないので、従来の非接触式眼圧計に比べてエアパルスの圧力を低減させることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図6に基づいて説明する。
(1)第1実施例
本実施例の非接触式眼圧計は、図1に示したように、プラチドリング照明系(パターン光束投影系)10,観察光学系20,エアパルス噴射系(気流吹付手段)30,XYアライメント投影光学系40,XYアライメント検出光学系50,作動距離検出系60,制御系100,表示装置200とから大略構成される。
(プラチドリング照明系10)
図1に示したプラチドリング照明系10は、パターン光束としての同心円状の複数のリングパターンを被検眼Eの角膜Cに投影するためのものであり、図2に示したように同心円状に配列された多数の発光ダイオード11及び図3に示したような同心円状の複数のリングパターンを有する拡散板12とからなる。具体的には、特開平8−275920号公報に詳細に説明されるプラチドパターン投影系と同様の構造を採用することが可能である。尚、図3において、a1〜a6は光透過部、b1〜b6は光不透過部である。
(観察光学系20)
観察光学系20は、被検眼前眼部を観察すると共に、プラチドリング像を観察・記録するためのものであり、対物レンズ21,テレセントリック絞り22,結像レンズ23,CCD(受光手段)24とからなる。観察光学系20の光軸Oは、プラチドリング照明系10の複数のリングパターンのリング中心O′と一致している。
【0015】
また、CCD24は、対物レンズ21及び結像レンズ23に関し、適正な作動距離Wに位置した被検眼の角膜の焦点面と光学的に共役である。
【0016】
プラチドリング照明系10から発したリング照明光束は、角膜Cにおいて反射し、角膜Cの焦点面Fの近傍にプラチドリングの虚像が形成される。観察光学系20は、物側に関しテレセントリックな光学系であるので、プラチドリング像は、作動距離が多少のズレに拘わらず同じ大きさでCCD24上に投影されることになる。
(エアパルス噴射系30)
エアパルス噴射系30は、被検眼角膜を変形させるため、時間に比例して吹付圧の増加するエアパルスを噴射するためのものであり、シリンダ31,ピストン32,このピストン32を駆動するソレノイド33,オリフィス管34とからなる。オリフィス管34は、図1に示すように対物レンズ21の中心を貫通すると共に、シリンダ31の先端部分に取り付けられていて、これにより、ピストン32の駆動により生成された圧縮空気を被検眼角膜に向けて噴射するようにされている。
【0017】
後述するように、本発明においては、エアパルス噴射前後におけるプラチドリング像の形状の変化に基づいて眼圧を測定するので、被検眼を圧平する必要はなく、このため、エアパルスの強さは、従来のものに比して弱いもので足りる。例えば、圧力のピーク値が5mmHgのエアパルスで十分である。なお、従来の非接触式眼圧計ではピーク値が15mmHg程度のエアパルスが必要である。
(XYアライメント投影光学系40)
XYアライメント投影光学系40は、被検眼Eと光軸Oとの上下方向(y方向)及び左右方向(X方向)に関する位置合せ状態を検出するためのアライメント指標光を被検眼Eに向けて投影するためのものであり、光源41,ピンホール42,コリメートレンズ43,ハーフミラー44,対物レンズ21とを備えている。ピンホール42は、コリメートレンズ43の前側焦点位置に配置されており、これによりXYアライメント指標光としての平行光が対物レンズ21を介して被検眼Eに投影される。
(XYアライメント検出光学系50)
XYアライメント検出光学系50は、被検眼EとのXY方向に関する位置合せ状態を検出する為のものであり、対物レンズ21,結像レンズ23,ハーフミラー51,受光素子52とを備えている。受光素子52は、入射光の光量を検出可能なフォトダイオードが用いられる。このフォトダイオードは、XYアライメント投影光学系からのXYアライメント指標光の角膜反射光を受光し、この光量に基づいてXY方向のアライメント状態を検出する役割を有する。なお、受光素子として、入射光量の重心位置を検出可能なPSDを用いることも可能である。
(作動距離検出系60)
作動距離検出系60は、光源61,スリット62,コリメートレンズ63,集光レンズ64,受光素子65を備えている。光源61から発した光は、スリット62,コリメートレンズ63により作動距離検出指標光としての平行スリット光束とされ、被検眼Eに斜め方向から投影される。被検眼角膜において反射したスリット光束は、集光レンズ64により受光素子65に導かれる。受光素子65としては、例えば受光位置を検出可能なラインセンサが採用できる。受光素子65は、スリット光束の到達位置に基づいて作動距離の調節状態を検出する。
(制御系100)
制御系100は、演算制御回路101,A/D変換器102,メモリ103とから構成されている。この演算制御回路101には受光素子52,4からの検出信号が入力される。また、ソレノイド33は演算制御回路101により駆動制御される。
【0018】
演算制御回路101は、CCD24によりAD変換器102を介して得られたプラチドリング画像情報を所定のタイミングでメモリ103に転送する。例えば、図4に示すように、アライメント完了信号が得られた時刻t0とエアパルスの噴射が開始される時刻t2との間の時刻t1において画像情報の一度目の転送がなされると共に、エアパルスの噴射が開始される時刻t2からT秒後であってエアパルスの圧力が最大となる時刻t4よりも手前の間の時刻t3において画像情報の二度目の転送が行われる。メモリ103は、この様にして転送された画像情報を記憶する。
【0019】
眼圧が10mmHgである場合と、眼圧が15mmHgである場合とでは、同じ強さのエアパルスを噴射が開始された時刻t2からT秒経過後の角膜の変形度合いは大きく異なる。図5は、角膜の変形度合いを概念的に示したものであり、(1)は眼圧が10mmHgである被検眼に5mmHgのエアパルスを噴射してからT秒経過後の角膜の変形度合いを示しており、(2)は眼圧が15mmHgである被検眼に5mmHgのエアパルスを噴射してからT秒経過後の角膜の変形度合いを示しており、眼圧が大きいほど角膜は凹みにくい。そのため、眼圧が大きいほど、リング形状の変化は小さい。従って、リング形状の変化の度合いを分析することにより、眼圧の大きさが分かることになる。
【0020】
メモリ103は、被検眼の眼圧を決定するための比較データとして、ピーク値が5mmHgであるエアパルス(以下、5mmHgエアパルスと略す)を眼圧が既知である被検眼に噴射した場合におけるプラチドリング画像のデータを保持している。例えば、5mmHgエアパルスを眼圧が10+i(mmHg)(i=1,2,3・・・・・・10)と分かっている被検眼に噴射した場合のプラチドリング画像の図6(a)〜図6(i)に示したようなデータを保持している。
【0021】
演算制御回路101は、この比較データとしての画像データと、得られた画像データとを比較し、最も形状が近い比較データを選定する。そして、選定された比較データに対応する眼圧値を表示装置200に表示する。尚、CCD24は角膜変形検出手段を構成している。
【0022】
次に、この様な構成の非接触式眼圧計の作用を説明する。
【0023】
図示を省略した前眼部照明光源を点灯させて、被検眼Eの前眼部を照明して、被検眼Eの前眼部からの反射光を対物レンズ21,ハーフミラー44,テレセン絞り22,結像レンズ23,ハーフミラー51を介してCCD24に受光させる。これにより、被検眼前眼部像がCCD24に結像され、CCD24からの画像信号がA/D変換器102及び演算制御回路101を介して表示装置200に入力され、表示装置200に被検眼Eの前眼部像が表示される。
【0024】
一方、アライメント用の光源41,61を点灯させる。この光源41を点灯させると、光源41からのアライメント光がハーフミラー44及び対物レンズ21を介して被検眼Eに投影され、このアライメント光が被検眼Eの角膜Cで反射する。そして、この反射光が、対物レンズ21,ハーフミラー,ハーフミラー44,テレセン絞り22,結像レンズ23及びハーフミラー51を介して受光素子52により受光される。
【0025】
また、アライメント用の光源61を点灯させると、光源61からの光はスリット62及びコリメートレンズ63を介して平行スリット光束とされ、この平行スリット光束が被検眼Eの角膜Cに投影されて反射する。この反射光は、集光レンズ64を介して受光素子65に受光される。
【0026】
この受光素子52,65からの検出信号は演算制御回路101に入力される。そして、演算制御回路101は受光素子52からの検出信号に基づいて表示装置200の前眼部像にアライメントのための輝点像(図示せず)を重ねて表示する。この状態で、図示しないジョイスティックを左右上下方向(XY方向)に操作して、表示装置200に映し出された輝点像が装置の光軸Oと一致するように操作すると共に、ジョイスティックを前後に移動させて、対物レンズ21と角膜Cの頂点との作動距離Wを距離を受光素子52及び演算制御回路101により検出させ、即ち装置の光軸方向(Z軸方向)へのアライメントを行わせる。
【0027】
尚、この様な輝点像を用いたXYアライメント及び受光素子65からの出力信号を基にした光軸方向のアライメント検出には周知の方法が使用できるので、その詳細な説明は省略する。
【0028】
そして、演算制御回路101は、受光素子52,65から出力信号を基に装置が角膜Cの頂点にアライメントされたのを時間t0で検出すると、即ち、時間t0でアライメント完了信号が得られると、多数の発光ダイオード11を点灯させて、この発光ダイオード11からの光を拡散板12のリングパターンの光透過部を透過させて被検眼Eの角膜Cに投影させて反射させる。この反射光は、対物レンズ21,ハーフミラー44,テレセン絞り22,結像レンズ23,ハーフミラー51を介してCCD24に受光させる。これにより、被検眼前眼部像及びリングパターン像がCCD24に結像され、CCD24からの画像信号がA/D変換器102を介して演算制御回路101に入力される。しかも、演算制御回路101は、時刻t1からエアパルスの噴射が開始される時刻t2までの間において、CCD24に結像される前眼部像及びリングパターン像等の画像情報を一度目の情報としてメモリ103に転送して記憶する。
【0029】
この後、演算制御回路101は、時刻t2においてソレノイド33を作動させ、ピストン32を駆動してシリンダ31内のエアの圧縮を開始する。この圧縮動作により、シリンダ31内のエア圧は図4のAPで示したように略比例的に時間t4においてピーク値が5mmHgとなるまで上昇させられる。
【0030】
また、演算制御回路101は、エアパルスの噴射が開始される時刻t2からT秒後であって、エアパルスの圧力が最大となる時刻t4よりも手前の時刻t3において、CCD24から入力される前眼部像及びリングパターン像等の画像情報を二度目の情報としてメモリ103に転送して記憶させる。
【0031】
この様にしてメモリ103に第二回目の前眼部像及びリングパターン像が記憶されると、演算制御回路101はメモリ103に記憶されたリングパターン像と比較データ(図6)とのパターンマッチングを行う。そして、演算制御回路101は、比較データ(図6)の中から得られリングパターン像と最も形状が近いデータを選定し、選定されたデータに対応する眼圧値を表示装置200に表示させる。例えば、メモリ103に記憶されたリングパターン像が、図6の(a)のものに一致している場合には被検眼Eの眼圧が10mmHgであり、図6の(b)のものに一致している場合には被検眼Eの眼圧が15mmHgであり、図6の(i)のものに一致している場合には被検眼Eの眼圧がPmmHgである旨を表示装置200に表示する。
【0032】
また、演算制御回路101は、メモリ103に第一回目に記憶されたリングパターン像に基づいて被検眼角膜の曲率半径を演算し、この演算結果を上述した様にして得られる眼圧値の補正に用いる。
【0033】
以上の実施例では、パターン光束の形状を多重リングとしているが、これに限らず、一重のリング光束やバーコードの様なものでもよい。
(2)第2実施例
以上説明した実施例では、被検眼角膜への気流吹き付け時に、パターン投影系によりパターン光束を被検眼前眼部に投影して、被検眼角膜から反射するパターン光束の変化から被検眼角膜の変形を検出するようにしたが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0034】
例えば、被検眼角膜への気流吹き付け時に、シャインプルーグの原理を用いた光学系により、被検眼角膜の断面形状の変化を検出するようにしてもよい。即ち、図1に示したプラチドリング照明系10及びテレセントリック絞り22を省略すると共に、図7に示したようにスリット照明系70及び前眼部断面撮影系80を設けて、このスリット照明系70及び前眼部断面撮影系80により被検眼角膜の断面形状を撮影することにより、被検眼角膜への気流吹き付け時に、被検眼角膜の断面形状の変化を検出するようにしてもよい。
【0035】
このスリット照明系70は、撮影用の赤外光源71からの照明光をスリット72によりスリット光束とすると共にコリメートレンズ73で平行光束とし、平行光束とされたスリット光束をハーフミラー74,44及び対物レンズ21を介して被検眼角膜Cに投影するようになっている。
【0036】
前眼部断面撮影系80は、スリット照明系70からのスリット光束による被検眼角膜Cからの反射光束を撮影レンズ81を介して赤外に感度のあるエリアCCD82(撮像手段)に受光するようになっている。このCCD82の撮像面は光軸OSに対して傾斜させられている。尚、本実施例ではCCD82は光軸OSに対して45°傾斜させられている。しかも、スリット72の投影像の光断面の延長面、撮影レンズ81の主平面S1及びCCD82の結像面82aの延長面S2が1本の交線で交わるような配置となっている。
【0037】
メモリ103は、被検眼の眼圧を決定するための比較データとして、ピーク値が5mmHgであるエアパルス(以下、5mmHgエアパルスと略す)を眼圧が既知である被検眼に噴射した場合におけるプラチドリング画像のデータを保持している。例えば、5mmHgエアパルスを眼圧が10+i(mmHg)(i=1,2,3・・・・・・10)と分かっている被検眼に噴射した場合の角膜断面形状データ(図示略)を保持している。
【0038】
次に、この構成の作用を説明する。
【0039】
この構成により被検眼角膜Cの角膜断面を撮影する場合には、第1実施例と同様にしてXY方向の被検眼角膜Cに対するアライメントを行う。この際、Z方向の大まかなアライメントを表示装置200を見ながら行う。一方、演算制御回路101により照明光源71を点灯させて、スリット照明光を被検眼角膜Cに投影させる。
【0040】
演算制御回路101は、アライメントが完了後、図4の時刻がt1からエアパルスが噴射される時刻t2までの間に、被検眼角膜Cの角膜断面をエリアCCD82で撮影する。このエリアCCD82からの出力は演算制御回路101を介してメモり103に一度目の角膜断面形状の画像情報として記憶される。
【0041】
この後、演算制御回路101は、図4の時刻t2においてソレノイド33を作動させ、ピストン32を駆動してシリンダ31内のエアの圧縮を開始する。この圧縮動作により、シリンダ31内のエア圧は図4のAPで示したように略比例的に時間t4においてピーク値が5mmHgになるまで上昇させられる。
【0042】
そして、演算制御回路101は、エアパルスの噴射が開始される時刻t2からT秒後であって、エアパルスの圧力が最大となる時刻t4よりも手前の間の時刻t3において、被検眼角膜Cの角膜断面をエリアCCD82で撮影させる。このエリアCCD82からの出力は演算制御回路101を介してメモり103に二度目の角膜断面形状の画像情報として記憶される。
【0043】
次に、演算制御回路101は、メモリ103に第二回目の被検眼角膜Cの断面形状が記憶されると、メモリ103に第一回目に記憶された被検眼角膜の断面形状と、メモリ103に二度目に記憶された被検眼角膜形状を重ねて表示装置200に表示させる。
【0044】
また、演算制御回路101は、メモリ103に記憶された比較データを順次呼び出して、この呼び出した比較データとメモリ103に記憶させた第一回目と第二回目の角膜断面形状とを比較し、最も近い比較データを特定すると共に、該データに対応する眼圧値を表示装置200に表示させる。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明は、被検眼の角膜に気流を吹き付けて前記角膜を変形させる気流吹付手段と、該気流吹付手段による前記角膜の変形を光学的に検出する角膜変形検出手段と、該角膜変形検出手段の出力に基づき被検眼の眼圧を演算する演算手段とを備えた非接触式眼圧計において、眼圧が既知である被検眼の角膜に前記気流を吹き付けて得られた前記角膜の変形度合いの比較データを複数記憶して保持しているメモリを更に備え、前記角膜変形検出手段は前記気流吹付手段が前記角膜に気流の吹き付けを開始してから所定時間内における角膜変形の度合いを検出すると共に、前記演算手段は、前記角膜変形検出手段により検出された前記角膜の変形から前記所定時間内における前記角膜の変形度合を求めて、この求めた前記角膜の変形度合いを前記メモリに記憶保持させた複数の比較データと比較し、この求めた前記角膜の変形度合いに近い比較データを前記複数の比較データから選定し、この選定した前記比較データに対応する眼圧値を表示装置に表示させる構成としたので、被検眼に向けて吹き付ける気流の圧力を最小限に抑えることができ、これにより被検者の負担を軽減することができる。即ち、被検眼角膜を圧平させる必要は必ずしもないので、従来の非接触式眼圧計に比べてエアパルスの圧力を低減させることができる。
【0046】
また、請求項2の発明によれば、前記角膜変形検出手段は、前記被検眼に向けてパターン光束を投影するパターン光束投影系と、該パターン光束の角膜反射を受光する受光手段とを備えており、被検眼角膜に気流を吹き付けたときのパターン像の所定時間内における変化の度合いを解析することにより、被検眼の眼圧を算出することができる。そして、この場合も、被検眼角膜を圧平させる必要は必ずしもないので、従来の非接触式眼圧計に比べてエアパルスの圧力を低減させることができる。
【0047】
更に、請求項3の発明は、前記角膜変形検出手段は被検眼前眼部の断面像を撮像する撮像手段を備え、該撮像手段により所定時間内における角膜変形の度合いを検出するように構成したので、
気流の吹き付けによる角膜の断面形状の所定時間内における変化の度合いを解析することにより、被検眼の眼圧を算出することができる。そして、この場合も、被検眼角膜を圧平させる必要は必ずしもないので、従来の非接触式眼圧計に比べてエアパルスの圧力を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る非接触式眼圧計の光学系及び制御回路の一実施例を示す説明図である。
【図2】図1に示した拡散板と発光ダイオードとの関係を示す説明図である。
【図3】図1に示した拡散板に設けたパターンの説明図である。
【図4】図1に示した非接触式眼圧計の撮影とエアパルスとの関係を示す説明図である。
【図5】図1に示した被検眼にエアパルスを吹き付けたときの説明図である。
【図6】図4の被検眼の角膜の変形と眼圧との関係を示すパターン像の説明図である。
【図7】この発明に係る非接触式眼圧計の光学系及び制御回路の他の実施例を示す説明図である。
【図8】従来のエアパルス吹き付けと眼圧値との関係を示す説明図である。
【図9】エアパルスを吹き付けていないときの角膜圧平検出のための光束の説明図である。
【図10】エアパルスを吹き付けたときの角膜圧平検出のための光束の説明図である。
【符号の説明】
10・・・プラチドリング照明系(パターン光束投影系)
24・・・CCD(受光手段)
30・・・エアパルス噴射系(気流吹付手段)
101・・・演算制御回路(演算手段)

Claims (3)

  1. 被検眼の角膜に気流を吹き付けて前記角膜を変形させる気流吹付手段と、該気流吹付手段による前記角膜の変形を光学的に検出する角膜変形検出手段と、該角膜変形検出手段の出力に基づき被検眼の眼圧を演算する演算手段とを備えた非接触式眼圧計において、
    眼圧が既知である被検眼の角膜に前記気流を吹き付けて得られた前記角膜の変形度合いの比較データを複数記憶して保持しているメモリを更に備え、前記角膜変形検出手段は前記気流吹付手段が前記角膜に気流の吹き付けを開始してから所定時間内における角膜変形の度合いを検出すると共に、
    前記演算手段は、前記角膜変形検出手段により検出された前記角膜の変形から前記所定時間内における前記角膜の変形度合を求めて、この求めた前記角膜の変形度合いを前記メモリに記憶保持させた複数の比較データと比較し、この求めた前記角膜の変形度合いに近い比較データを前記複数の比較データから選定し、この選定した前記比較データに対応する眼圧値を表示装置に表示させることを特徴とする非接触式眼圧計。
  2. 前記角膜変形検出手段は、前記被検眼に向けてパターン光束を投影するパターン光束投影系と、該パターン光束の角膜反射を受光する受光手段とを備えており、
    該受光手段上により所定時間内における角膜変形の度合いを検出するように構成した請求項1に記載の非接触式眼圧計。
  3. 前記角膜変形検出手段は被検眼前眼部の断面像を撮像する撮像手段を備え、該撮像手段により所定時間内における角膜変形の度合いを検出するように構成した請求項2に記載の非接触式眼圧計。
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