JP3862574B2 - 溶融炉 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
この発明は、熱分解炉で生成される熱分解ガス中に含まれる飛灰等や、焼却炉から排出される焼却灰等を溶融するための溶融炉に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
飛灰や焼却灰等の減容、無害化処理に用いられる溶融炉では、炉内で発生する高温排ガスに含まれる金属塩化物の低沸点ガス状物質が、高温排ガスの排出ダクト内で冷却されて凝縮、固着したり、高温排ガスとともに排出ダクトに流入する飛散ダストが排出ダクト内に付着、堆積したりして、排出ダクトが閉塞される問題がある。
【０００３】
この問題に対処するための溶融炉としては、例えば、特開平５−１８５０５８号公報に記載されたものがある。この溶融炉は、図３に示すように、溶融室５１の下部側方に溶融スラグと高温排ガスが一緒に排出される排出部５２を設け、排出部５２の天井に設けた高温排ガスの排出ダクト５３の入口部で、耐熱性多孔板５４で形成した風室５５から冷却空気を供給し、排出ダクト５３に流入する低沸点ガス状物質を急速冷却で凝縮させることにより、固体化してパージするとともに、飛散ダストもパージするようにしている。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、この種の溶融炉で発生する高温排ガスは１０００℃以上であり、この高温排ガスに含まれる金属塩化物の低沸点ガス状物質の凝縮温度は５００℃以下であることが知られている。この金属塩化物は飛散ダストにもかなり含まれている。
【０００５】
一方、この種の溶融炉の高温排ガスは熱交換器等に導かれ、廃熱回収に利用されることが多い。このため、上述した低沸点ガス状物質を急速冷却で凝縮させてパージする方法では、排出ダクトの入口部で高温排ガスを５００℃以下に著しく低下させる必要があり、その廃熱を効率よく回収できなくなる問題がある。上述した従来の溶融炉は、排出ダクトの入口部に冷却空気を供給する風室を設けるために、その構造が複雑となり、設備コストが大幅に増加する問題もある。
【０００６】
また、金属塩化物が凝縮すると粘性の高い物質となるので、高温排ガスの廃熱を熱交換器等の機器で利用する場合は、高温排ガス中に金属塩化物が多く含まれると、これが熱交換器等の内壁や熱媒体に付着し、これらの機器の機能を阻害する問題もある。
【０００７】
そこで、この発明の課題は、高温排ガスの温度を著しく低下させることなく、低沸点ガス状物質や飛散ダストの排出ダクトへの流入を効率よく抑制できる溶融炉を提供することである。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、この発明は、溶融室から溶融スラグと高温排ガスが一緒に排出される排出部を備え、この排出部に高温排ガスの排出ダクトへの接続口が設けられた溶融炉において、前記接続口をエアカーテン状に遮る空気を噴出する噴出口を設けた構成を採用した。
【０００９】
すなわち、排出ダクトへの接続口をエアカーテン状に遮る空気を噴出する噴出口を設けることにより、このエアカーテン状の空気の流れで、高温排ガスがそのまま接続口に流入しないようにして、固体である飛散ダストはその慣性を利用して接続口に流入するのを抑制するとともに、高温排ガスとともに気体である低沸点ガス状物質はその流れ経路を迂回させて、溶融スラグ、飛散ダスト、排出部の壁等に補足される機会を増やし、接続口に流入するのを抑制するようにした。
【００１０】
したがって、高温排ガスの温度を著しく低下させることなく、簡単な構成で金属塩化物の低沸点ガス状物質や飛散ダストの排出ダクトへの流入を抑制でき、排出ダクトの閉塞や、高温排ガスの廃熱を利用する機器での金属塩化物付着による機能阻害を防止することができる。
【００１１】
前記接続口を前記排出部の壁に横向きに設け、前記エアカーテン状の空気を、前記接続口の上方から前記排出部の内側斜め下方へ噴出することにより、より効率よく低沸点ガス状物質や飛散ダストの排出ダクトへの流入を抑制することができる。
【００１２】
前記接続口を、前記溶融スラグが下方の冷却ピットに流下する前記排出部の流下路の途中に設けることにより、比較的大きい飛散ダストはその慣性質量で溶融スラグとともに下方の冷却ピットへ落下させ、小さい飛散ダストや低沸点ガス状物質のみの接続口への流入を、より少ないエアカーテン状空気の噴出量で抑制することができる。
【００１３】
前記エアカーテン状の空気の噴出量は、排出ダクトに排出される高温排ガスの温度低下をより少なくするために、Ｎｍ³ 換算で、前記排出ダクトからの高温排ガスの排出量の２０％以下、望ましくは１０％以下とされる。また、その噴出口から噴出する空気を常温空気とすることにより、前記エアカーテン状の空気流に触れる高温排ガスを局部的に冷却して、この冷却効果で低沸点ガス状物質を高温排ガス中から凝縮させることができる。なお、この凝縮物は直径１μｍ程度で非常に慣性質量の小さいものであるが、飛散ダストに付着させて接続口に流入するのを抑制される。
【００１４】
前記噴出口からの空気の噴出速度は、この噴出口の飛散ダストや金属塩化物の付着による閉塞を防止するために、１０ｍ／秒以上とすることが望ましい。
【００１５】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき、この発明の実施形態を説明する。この溶融炉は熱分解炉からの熱分解ガスに含まれる飛灰等を溶融する縦型の旋回式溶融炉であり、図１に示すように、旋回溶融室１の上端側に筒状部２が連設され、この筒状部２に飛灰等を含む熱分解ガスの導入口３が接線方向に開口するとともに、その中心に空気供給管４が上方から挿入されて、その下端の吹き込み口５から燃焼用一次空気が吹き込まれるようになっている。空気供給管４には、着火時や燃焼不足の際に燃料を供給する燃料供給管６が内嵌されている。
【００１６】
また、前記溶融室１の上部には燃焼用二次空気の吹き込み口７が設けられ、その下端には、溶融スラグＡと高温排ガスＢが一緒に排出される排出部８が連設されている。排出部８は堰９で溶融スラグＡを溜める溶融池室１０と、堰９からオーバフローする溶融スラグＡを樋１１から下方の冷却ピット１２に流下させる流下路１３とから成り、溶融池室１０の天井に補助バーナ１４が設けられ、流下路１３の途中の壁に、高温排ガスＢの排出ダクト（図示省略）への接続口１５が横向きに設けられている。
【００１７】
前記接続口１５の上端縁には、常温空気を流下路１３の内側斜め下方へ噴出する噴出口１６が設けられている。この噴出口１６は、図２（ａ）、（ｂ）に示すように、接続口１５の上端縁の耐火物に埋め込まれた圧縮空気の配管１７に所定の間隔で複数個設けられ、接続口１５をエアカーテン状に遮るように常温空気を噴出するようになっている。これらの噴出口１６からの常温空気の噴出量は、Ｎｍ³ 換算で高温排ガスＢの排出量の２０％以下とされ、その噴出速度は１０ｍ／秒以上とされている。
【００１８】
したがって、前記斜め下向きにエアカーテン状に噴出される常温空気の流れで、高温排ガスＢはそのまま接続口１５へ流入するのを阻止され、図１中に矢印で示したように、流下路１３の下方から迂回して接続口１５へ流入する。このため、大きい飛散ダストは溶融スラグＡとともに下方の冷却ピット１２へそのまま落下し、小さい飛散ダストは斜め下向きの空気流で流下路１３の下方へと押しやられ、大きい飛散ダストと同様に冷却ピット１２へ落下する。
【００１９】
なお、前記配管１７は耐火物に埋め込まれているので、高温排ガスＢ中のダストや金属塩化物がその外表面に付着することはなく、圧縮空気の噴出口１６が付着物の堆積で塞がれる恐れはない。
【００２０】
一方、エアカーテン状の常温空気に触れる高温排ガスＢ中に含まれる金属塩化物の低沸点ガス状物質は直径１μｍ程度の粒に凝縮し、飛散ダストに付着して冷却ピット１２へ落下する。また、エアカーテン状の常温空気に触れない高温排ガスＢ中に含まれる低沸点ガス状物質も、その迂回流で溶融スラグＡや流下路１３の壁等に補足される機会が増え、接続口１５への流入を抑制される。
【００２１】
上述した実施形態では、溶融炉の形態を縦型の旋回式のものとしたが、本発明に係る溶融炉は、溶融スラグと高温排ガスが一緒に排出される排出部が溶融室に連設されたものであればよく、横型の旋回式溶融炉等の他の形式の溶融炉も採用することができる。また、排出部の形態と、エアカーテン状の空気噴出口の形態も実施形態のものに限定されることはなく、排出部に高温排ガスの排出ダクトへの接続口が設けられ、この接続口を遮るようにエアカーテン状の空気を噴出するものであればよい。
【００２２】
【発明の効果】
以上のように、この発明の溶融炉は、高温排ガスの排出ダクトへの接続口をエアカーテン状に遮る空気を噴出する噴出口を設けることにより、このエアカーテン状の空気の流れで高温排ガスが接続口にそのまま流入するのを遮り、金属塩化物の低沸点ガス状物質や飛散ダストの排出ダクトへの流入を抑制するようにしたので、高温排ガスの温度を著しく低下させることなく、簡単な構成で排出ダクトの閉塞や、高温排ガスの廃熱を利用する熱交換器等の機器での金属塩化物付着による機能阻害を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】溶融炉の実施形態を示す縦断面図
【図２】ａは図１の接続口を拡大して示す正面図、ｂはａのII−II線に沿った断面図
【図３】従来の溶融炉を示す一部省略縦断面図
【符号の説明】
１ 溶融室
２ 筒状部
３ 導入口
４ 空気供給管
５ 吹き込み口
６ 燃料供給管
７ 吹き込み口
８ 排出部
９ 堰
１０ 溶融池室
１１ 樋
１２ 冷却ピット
１３ 流下路
１４ 補助バーナ
１５ 接続口
１６ 噴出口
１７ 配管

Claims (1)

1. 溶融室から溶融スラグと高温排ガスが一緒に排出される排出部を備え、この排出部に高温排ガスの排出ダクトへの接続口が設けられた溶融炉において、前記接続口を、前記溶融スラグが下方の冷却ピットに流下する前記排出部の流下路の途中の壁に横向きに設け、前記接続口の上方から前記排出部の内側斜め下方へ、接続口をエアカーテン状に遮る空気を噴出する噴出口を設けたことを特徴とする溶融炉。

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