JP3862561B2 - 接着剤組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は特に建材関係に使用される接着剤組成物に関する。さらに詳しくは、合板、MDF(中質繊維板)、パーティクルボード等の木質材料、スレート板、珪カル板、石膏ボード等の無機質材料と塩ビ製シート、オレフィン製シート等の化粧シートとの貼合せに使用される接着剤である。また、プラスチックフィルムや印刷等で加工された加工紙等、ワックス等でコートされた撥水ダンボール等の撥水性材料の接着剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、建材、加工紙、撥水ダンボール等の接着剤にはエチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンを主体にした接着剤が好適に使用されているが、特に低温での接着性の向上を目的にトルエン、キシレン等の環境や人体に対して好ましくない有機溶剤を含有させている。また、トルエン、キシレンを含有させない技術として特開平11−209722号公報ではエチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョン(以下「EVA系エマルジョン」と称す)と水性ポリウレタンエマルジョンを必須成分として、アジピン酸ジメチル、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチルのうち少なくとも1種を含有させたプラスチックオーバーレイ用接着剤の技術が開示されているが、トルエン、キシレンを含有させる主目的である低温での接着性が必ずしも満足するものではなかった。また、新築住宅の高気密化に伴い、シックハウス症候群との関連で揮発性有機化合物(VOC)の室内濃度を一層低減させることが望まれ、個々のVOC成分に対するガイドライン値や総揮発性有機化合物(TVOC)の指針値の設定が検討されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は環境や人体に対して悪影響の懸念があるトルエン、キシレンを添加しないで、低温接着性、耐寒性、耐熱性のバランスに優れた水性接着剤を提供することを目的とし、さらに極力、有機化合物の揮発性を抑制でき、低臭気の水性接着剤を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記の目的を達成すべく接着性改良剤を鋭意検討した結果(A)EVA系エマルジョンの固形分100質量部当たり、(B)アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、コハク酸ジメチルのうち少なくとも1種からなる化合物1〜30質量部、(C)凝固点もしくは融点が20℃以下、大気圧での沸点が200℃以上、且つ、SPの値が16.0〜20.5であるエステル系化合物1〜30質量部、(D)水性ポリウレタンエマルジョンを含有する接着剤組成物が低温接着性、耐寒性、耐熱性のバランスに優れ、有機溶剤臭が少ないことを見出したのである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の(A)成分であるEVA系エマルジョンのエチレンと酢酸ビニルとその他共重合可能な単量体の割合は質量比で5〜40:95〜40:0〜20、好ましくは10〜35:90〜50:0〜15である。その他共重合可能な単量体としては、例えば塩化ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタアクリレート、プロピルメタアクリレート、ブチルメタアクリレート、2−エチルヘキシルメタアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、スチレン、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミドがあるが、これらの成分を一種類以上含有させることができる。また、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートを併用することもできる。
【0006】
本発明(A)成分のEVA系エマルジョンにおいて、エチレンの割合が5〜40質量%の範囲から外れると低温接着性、初期接着性、耐熱性の少なくとも1つの特性が損なわれる。また酢酸ビニルの割合が95質量%を超えると低温接着性が低下し、逆に酢酸ビニルの割合が40質量%未満になると乳化重合時のエマルジョンの安定性もしくは常態接着強度が低下する傾向がある。その他共重合可能な単量体の割合が20質量%を超えると低温接着性もしくは常態接着強度が低下する傾向がある。
【0007】
本発明(A)成分のEVA系エマルジョンは通常、乳化重合により得ることができるが、EVA系エマルジョンの固形分100質量部当たり、ポリビニルアルコール(以下「PVA」と称す。)1〜15質量部、特に1.5〜10質量部を保護コロイドとして含有することが、低温接着性や初期接着性の点で好ましい。PVAの添加量が15質量部を超えると、プラスチックフィルムへの接着性が十分でなくなる傾向がある。PVAはEVAエマルジョンを乳化重合により製造する際に保護コロイドとして添加されてEVAエマルジョンに含有されるものであっても、あるいは乳化重合の際には全く用いないで重合後にEVAエマルジョンに添加されて含有されるものであってもよい。
【0008】
本発明におけるPVAとしては、通常使用されているものを用いることができ、例えば、平均重合度は200〜4500、ケン化度についても特に制限はなく、完全ケン化PVAやケン化度65〜95%の部分ケン化PVAが通常用いられる。また、アセトアセチル基、スルホン基、カルボキシル基、アミド基等により変性もしくはオレフィンと共重合されたPVAを用いてもよい。
【0009】
本発明の課題達成を阻害しない範囲でPVA以外の乳化分散剤を併用することができる。PVA以外の乳化分散剤として、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の水溶性高分子、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤、ラウリル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩等のアニオン系界面活性剤として挙げられるが、好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤である。
【0010】
本発明(A)成分のEVA系エマルジョンは通常のラジカル開始剤を用いて重合することにより、製造できる。例えば、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩を使用することができる。また、ラジカル開始剤とナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、グリオキサール亜硫酸塩、L−アスコルビン酸(塩)、エリソルビン酸(塩)、ホルムアミジンスルフィン酸、硫酸第一鉄等の還元剤を併用するレドックス触媒を用いることもできる。なかでも過硫酸アンモニウムや過硫酸カリウムといった過硫酸塩を好適に用いることができる。重合温度は使用するラジカル開始剤の種類により異なるが40〜80℃が望ましい。
【0011】
本発明におけるEVA系エマルジョンの重合方法として、公知の乳化重合法が用いられ、例えば、モノマー逐次添加法、一括仕込法、二段重合法等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。
【0012】
本発明の(B)成分であるアジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、コハク酸ジメチルのうち少なくとも1種からなる化合物は、低温接着性の改良効果を有するだけでなく、耐寒性においても特に優れている。
【0013】
(B)成分の添加量はEVA系エマルジョンの固形分100質量部当たり、1〜30質量部、好ましくは2〜25質量部、特に好ましくは3〜20質量部である。(B)成分の添加量が1質量部未満の場合、得られる接着剤組成物の低温接着性や耐寒性が不十分であり、また、30質量部を超えると常態接着強度が低下する傾向がある。
【0014】
本発明の(C)成分であるエステル系化合物は、凝固点もしくは融点が20℃以下、大気圧での沸点が200℃以上、且つ、SPの値が16.0〜20.5であることを特徴とする。
凝固点もしくは融点が20℃を超えると、低温接着性や耐寒性が低下し、大気圧での沸点が200℃未満の場合、異臭の問題が発生するおそれがある。さらにSPの値が16.0〜20.5の範囲を超えると接着性改良効果が低下する傾向がある。好ましくは、凝固点もしくは融点が10℃以下、沸点220℃以上、且つ、SPの値が16.5〜19.5のエステル系化合物である。特に好ましくは、凝固点もしくは融点が0℃以下、沸点230℃以上、且つ、SPの値が16.7〜19.0のエステル系化合物である。
【0015】
本発明におけるSPの値は、下記の式(1)を用いて計算する。
【0016】
SP=(dΣG)/M (1)
(ここで、M:化合物の分子量、d:化合物の密度、G:化合物の原子団、基に固有の定数(日本接着学会発行「接着の技術」誌;Vol.12,No.1,1992年版,23頁,表4.4に記載されている沖津の修正値を採用))
【0017】
本発明の(C)成分であるエステル系化合物の具体例としては、蓚酸ジブチル、蓚酸ジペンチル、マロン酸ジブチル、コハク酸、グルタル酸及びアジピン酸の炭素数2〜10の脂肪族や脂環族アルコールのジエステル、コルク酸、ピメリン酸、アゼライン酸及びセバシン酸の炭素数1〜10の脂肪族や脂環族アルコールのジエステル化合物、カプロン酸の炭素数4〜10の脂肪族アルコールとのエステル、エナント酸と炭素数3〜10の脂肪族アルコールとのエステル、カプリル酸と炭素数2〜10の脂肪族アルコールとのエステル、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸及びオレイン酸と炭素数1〜10の脂肪族アルコールとのエステルが挙げられる。好ましくは、コハク酸ジブチル、グルタル酸ジエチル、グルタル酸ジブチル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジn−オクチル、アジピン酸ジイソノニル、アゼライン酸ジエチル、アゼライン酸ジヘキシル、アゼライン酸ジイソオクチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジイソオクチル、カプロン酸ヘキシル、エナント酸ヘプチル、カプリル酸ブチル、ラウリル酸エチル、ラウリル酸ヘプチル、ミリスチン酸ブチル、ミリスチン酸イソデシル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸ブチル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート等であり、特に好ましくは、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソノニル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジヘキシル、ラウリル酸ヘプチル、ミリスチン酸イソデシル、オレイン酸メチル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート等であり、特に好ましくは2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートである。勿論、これらエステル系化合物を2種以上併用してもよい。
【0018】
本発明の(C)成分であるエステル系化合物の添加量はEVA系エマルジョンの固形分100質量部当たり、1〜30質量部、好ましくは2〜25質量部、特に好ましくは3〜20質量部である。エステル系化合物の添加量が1質量部未満の場合、得られる接着剤組成物の低温接着性や耐寒性が不十分であり、また、30質量部を超えると常態接着性や耐熱性が低下する傾向がある。
【0019】
さらに本発明の(B)成分と(C)成分の合計の添加量はEVA系エマルジョンの固形分100質量部当たり、1〜30質量部、好ましくは2〜25質量部、特に好ましくは3〜20質量部である。(B)成分と(C)成分の合計の添加量が1質量部未満の場合、得られる接着剤組成物の低温接着性や耐寒性が不十分であり、また、30質量部を超えると常態接着性や耐熱性が低下する傾向がある。
【0020】
本発明の(D)成分である水性ポリウレタンエマルジョンは水性ポリウレタンエマルジョンであれば、とくに限定なく使用することができるが、貯蔵安定性、接着性を維持する点から、スルホン酸変性したものが好ましく、特に酸価が10〜50、さらには15〜30であるものが好ましい。この水性ポリウレタンエマルジョンを添加することにより、耐熱性が格段に向上した接着剤を得ることができる。水性ポリウレタンエマルジョンの添加量は、EVA系エマルジョンの固形分100質量部当たり、固形分換算で1〜50質量部、好ましくは5〜40質量部である。また、前記水性ポリウレタンエマルジョンの固形分濃度としては、20〜60%、さらには35〜55%であるのが、接着剤使用時の作業性、機械的安定性の点から好ましい。
【0021】
前記水性ポリウレタンエマルジョンの好ましい具体例としては、住友バイエルウレタン(株)製、ディスパコールU−42、U−53、U−54、KA−8481、KA−8584、大日本インキ化学工業(株)製ハイドランHW−111、HW−311、HW−333、HW−350、HW−337、HW−374、AP−20、AP−60LM、AP−80、三洋化成工業(株)製サンプレンUXA−3005、UXA−306、UX−312、第一工業製薬(株)製スーパーフレックス107M、110、126、130、150、160、300、361、370、410、420、460、700、750、820などがあげられる。
【0022】
本発明者らは上記の(B)成分、(C)成分、及び(D)成分を接着性改良剤として詳細に検討した結果、(B)成分と(C)成分を特定量併用し、さらに(D)成分を含有させることにより、EVA系共重合体と親和して低温接着性、耐寒性が優れ、かつ格段に耐熱クリープ性を改良できることを見出した。またこれら各成分の大気圧での沸点が高いことが、低揮発性や低臭気に重要であることを見出し、しかも広い範囲のエチレン組成のEVA系エマルジョンの接着性を改良することを見出したのである。
【0023】
本発明の接着剤は製法及び使用方法には特別な限定はなく、(A)成分、(B)成分、必要ならば可塑剤、沈殿防止剤、増粘剤、流動性改良剤、防腐剤、防錆剤、消泡剤、充填剤、湿潤剤、着色剤等を所定量、任意の順序、方法で混合することにより製造することができる。なお、接着剤組成物中の固形分濃度は35〜85質量%、好ましくは40〜80質量%である。
【0024】
【実施例】
以下更に詳細に実施例をもって説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでない。なお、本発明記載の部及び%は特に記載がなければ、いずれも質量基準で示したものである。
以下に実施例及び比較例において使用した(A)EVA系エマルジョン、(B)成分、及び(C)成分のエステル系化合物、PVA、その他の添加剤等及び評価方法を示す。
【0025】
接着性改良のための添加剤として、使用した化合物を次に示す。キシレン(Xylと略す)、グルタル酸ジメチル(以下GDMと略す)、コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチルがそれぞれ17%、66%、17%の混合物(DBEと略す)、アジピン酸ジイソノニル(ADNと略す)、セバシン酸ジn−ブチル(SBDBと略す)、オレイン酸メチル(OLMと略す)、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(TMPmと略す)、ステアリン酸ブチル(StBと略す)、第一工業製薬(株)製ウレタンエマルジョンSF410(SF410と略す)、同SF750(SF750と略す)。尚、表には記載していないが、GDMの凝固点は−37℃、沸点は210℃、SPの値は21.0であり、Xylの凝固点は−25℃、沸点は140℃、SPの値は17.8である。
PVAとして、電気化学工業株式会社製のデンカポバールB−05(平均重合度600、ケン化度88%)及びB−17(平均重合度1700、ケン化度88%)を使用した。
【0026】
<EVA系エマルジョンの製造例>
攪拌機付の高圧重合缶に酢酸ビニル80部、1.6部のB−05、1.6部のB−17、酢酸ソーダ0.2部、ロンガリット(ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、住友精化社製)0.12部、硫酸第一鉄・七水和物0.004部、エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム0.008部を72部の水に溶解した水溶液を攪拌下仕込み、窒素で重合缶内部を置換した後、エチレン20部を充填した。温度を55℃とした後、5%の過硫酸アンモニウム水溶液を添加し重合を行った。未反応の酢酸ビニルモノマー量が2%未満となった時点で残存するエチレンをパージしEVAエマルジョンを得た。生成したEVAエマルジョン中の未反応の酢酸ビニルモノマーを減圧下除去し、未反応の酢酸ビニルモノマーが0.5重量%以下、エチレン含有率19%、固形分55.0%のEVA系エマルジョンを得た。以下、Em−1と略す。
酢酸ビニル71部、エチレン29部に変更した以外は、上記と同様にして、未反応の酢酸ビニルモノマーが0.5重量%以下、エチレン含有率27%、固形分55.2%のEVA系エマルジョンを得た。以下、Em2−と略す。同様にエチレン含有率10%、固形分55.0%のEVA系エマルジョンをEm−3、エチレン含有率18%、固形分55.4%のEVA系エマルジョンをEm−4として試験に供した。
【0027】
<接着剤組成物の調整>
上記で得られたEVA系エマルジョンの固形分100部に対し、表1〜2に記載した量の添加剤((B)成分、(C)成分、(D)成分、その他)を均一に混合して、接着剤組成物を得た。
【0028】
<不揮発分、粘度>
JIS K 6828に準じて評価した。
<エチレン含有率>
プロトンNMRを使用し、酢酸ビニルとエチレンに由来するピーク強度の積分値より算出した。
装置 :BRUKER製 AVANCE300
観測周波数:1H 300MHz
測定溶媒:重クロロホルム
濃度:約5g/100cm3
測定温度:55℃
【0029】
<低温接着性>
接着特性はパーティクルボード(10mm厚)と半硬質塩化ビニルシートで評価した。2℃雰囲気下で接着剤組成物と試験片を1日間保持して冷却し、2℃の温度条件で接着剤組成物を半硬質塩化ビニルシート上にバーコーターで90g/m2(wet)塗布し、パーティクルボードと貼り合わせ、2kgのゴムローラーで脱気後、そのまま2℃で1日放置した後、手で強制剥離して破壊状態を判定した。10個のうちパーティクルボード表面が破壊した(木破)割合を示すが、この数値が大きいほど低温接着性が良好である。
【0030】
<耐寒性>
上記の試験体を−20℃雰囲気下、1日放置後、鋸で切断し切断面を以下の規準で判定した。
シートが木と密着し、界面剥離が見られない:○
シートと木が一部界面剥離する :△
シートと木とが大部分、界面剥離する :×
【0031】
<臭気>
密閉した容器に添加剤を添加した接着剤組成物を入れ、所定の温度で2時間以上放置後、開栓し迅速に4名が直接嗅ぎ、以下の基準で判定した。なお、放置する温度は、通常の使用条件を想定した20℃及び夏期の高温下を想定し、より厳しい温度である40℃の両方で行った。
不快な臭が感じられない :○
不快な臭がややある :△
不快な臭いがある :×
<耐熱性;耐熱クリープ>
接着特性はパーティクルボード(10mm厚)と半硬質塩化ビニルシートで評価した。20℃で接着剤組成物を半硬質塩化ビニルシート上にバーコーターで90g/m2(wet)塗布し、パーティクルボードと貼り合わせ、2kgのゴムローラーで脱気後、そのまま20℃で1日放置した後、長さ300mm、幅25mmに切断した接着試験片を作成した。この試験片を半硬質塩化ビニルシートを下側にして両端を固定した状態で水平に置き、60℃のギヤーオーブン中に1時間放置した。雰囲気温度60℃、90度剥離の状態で500g/25mmの静荷重をかけ、30分後の剥離長さを測定した。
以上の評価結果を表1、2に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
表1及び2から、アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、コハク酸ジメチルのうち少なくとも1種からなる化合物(B)と凝固点が20℃以下、大気圧での沸点が200℃以上、且つ、SPの値が16.0〜20.5のエステル系化合物(C)及びポリウレタンエマルジョン(D)を含有した接着剤は低温接着性、耐寒性が良好で、耐熱クリープ性に優れ、且つ低臭気である。
【0035】
【発明の効果】
本発明の(A)エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンの固形分100質量部当たり、(B)アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、コハク酸ジメチルのうち少なくとも1種からなる化合物1〜30質量部、(C)凝固点もしくは融点が20℃以下、大気圧での沸点が200℃以上、且つ、SPの値が16.0〜20.5であるエステル系化合物1〜30質量部、(D)ポリウレタンエマルジョンを含有する接着剤組成物は低温接着性、耐寒性、耐熱性のバランスに優れ、特に耐熱性に優れる。また、揮発性有機物質(VOC)が少ない。本発明の接着剤組成物は環境や人体により適合した接着剤として木材やプラスチック、紙とプラスチック、無機質材料とプラスチック、金属と紙等の接着剤に限らず、木工用、紙包装用、一般用等としても好適である。
Claims (5)
- (A)エチレンと酢酸ビニルを必須成分とするエチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンの固形分100質量部当たり、(B)アジピン酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、コハク酸ジメチルのうち少なくとも1種からなる化合物1〜30質量部、(C)凝固点もしくは融点が20℃以下、大気圧での沸点が200℃以上、且つ下記(1)式で求めたSPの値が16.0〜20.5であるエステル系化合物1〜30質量部、(D)水性ポリウレタンエマルジョンを含有することを特徴とする接着剤組成物。
SP=(dΣG)/M (1)
(ここで、M:化合物の分子量、d:化合物の密度、D:化合物の原子団、基に固有の定数) - 請求項1記載の(B)成分と(C)成分の合計量が(A)の固形分100質量部当たり1〜30質量部であることを特徴とする請求項1記載の接着剤組成物。
- 請求項1記載のエチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンがポリビニルアルコールを保護コロイドとして含有することを特徴とする請求項1または2記載の接着剤組成物。
- 請求項1記載の(C)成分が2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレートであることを特徴とする請求項1〜3記載の接着剤組成物。
- トルエン、キシレンを含まないことを特徴とする請求項1〜4記載の接着剤組成物。
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