JP4319779B2 - エチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンの製造方法及びそのエマルジョン並びに接着剤組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はホルムアミジンスルフィン酸(以下[FAS」と略す)、二酸化チオ尿素及びこれらの誘導体から選ばれた少なくとも1種以上の化合物を還元剤として用いて重合することによって得られる、ホルムアルデヒド含有量が著しく少ないエチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョン(以下「EVA系エマルジョン」と略す)およびその製造方法等に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
EVA系エマルジョンは接着剤として、また土木建材分野、塗料分野、製紙分野、繊維分野においても広く利用されている。これまでEVA系エマルジョンは水系であることから溶剤系接着剤と比較して安全な接着剤と見なされてきた。ところが近年になってシックハウス対策等から、EVA系エマルジョンに微量に含有するホルムアルデヒドの低減もしくは無くすることが急務となってきている。EVA系エマルジョンにホルムアルデヒドが検出されるのは、重合の際に使用されている還元剤のソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート(以下「ロンガリット」という)がホルムアルデヒド誘導体であることに起因している。そこで、このロンガリットを使用しないで重合を進め、従来と同等以上のエマルジョン特性を有するEVA系エマルジョンを製造する技術が緊急に要請されている。
【0003】
EVA系エマルジョンの製造方法として、従来、ラジカルを熱分解させて重合する熱重合方法や、ロンガリット代替の還元剤としてL−アスコルビン酸を使用する方法が行われてきたが、前者は重合の制御が難しく重合速度を上げにくいために生産性に劣るといった欠点を持っており、一方、後者はでき上がったEVA系エマルジョン中のホルムアルデヒド含有量が十分に小さくならず、且つEVA系エマルジョンが黄色に着色するといった課題を有していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はホルムアルデヒド含有量や着色が極めて少ないEVA系エマルジョンの製造方法およびそのEVA系エマルジョンやその接着剤組成物等を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる目的を達成すべく鋭意検討した結果、EVA系エマルジョンを重合する際にロンガリットに替わってホルムアミジンスルフィン酸、二酸化チオ尿素及びこれらの誘導体から選ばれた少なくとも1種以上の化合物を還元剤として使用することで、ホルムアルデヒド含有量や着色が極めて少ないEVA系エマルジョンを製造できることを見出したのである。また、本発明のEVA系エマルジョンは接着性が良好で、発生ホルマリン量や黄変も著しく低減された接着剤組成物を得られることを見出したのである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明で重合されるEVA系エマルジョンのエチレンと酢酸ビニルとその他共重合可能な単量体の割合は質量比で5〜40:95〜40:0〜20、好ましくは10〜35:90〜50:0〜15である。その他共重合可能な単量体としては、例えば塩化ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、エチルメタアクリレート、プロピルメタアクリレート、ブチルメタアクリレート、2−エチルヘキシルメタアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、スチレン、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミドがあるが、これらの成分を一種類以上含有させることができる。また、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートを併用することもでき、接着剤として使用した場合は耐熱性の向上が、モルタル用途に使用した場合は耐アルカリ性を向上させる効果がある。その添加量は1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下である。
【0007】
本発明におけるEVA系エマルジョンを接着剤に使用する場合、エチレンの割合が5〜40質量%の範囲から外れると低温接着性、初期接着性、耐熱性の少なくとも1つ特性が損なわれる。また酢酸ビニルの割合が95質量%を超えると低温接着性が低下し、逆に酢酸ビニルの割合が40質量%未満になると乳化重合時のエマルジョンの安定性もしくは常態接着強度が低下する傾向がある。その他共重合可能な単量体の割合が20質量%を超えると低温接着性もしくは常態接着強度が低下する傾向がある。特に、低温接着性を重視する用途には、エチレンの割合が21〜40質量%のEVA系エマルジョン、耐熱性が重視される用途にはエチレンの割合が5〜21質量%のEVA系エマルジョンが好ましい。
【0008】
本発明で使用する乳化剤は特に限定するものではなく、ポリビニルアルコール(以下「PVA」という。)やヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースといった水溶性高分子を保護コロイドとして使用しても、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン界面活性剤、ラウリル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩やメチルタウリン酸塩、スルホコハク酸塩、エーテルスルホン酸塩、リン酸エステル塩などのアニオン界面活性剤、ノニルフェニル系、ポリアルキレングリコール系、脂肪酸エステル系、等のノニオン界面活性剤、第4級アンモニウム塩やアミン塩類などのカチオン界面活性剤、その他の両性界面活性剤を使用しても良い。得られるEVA系エマルジョンのトルエン不溶分を高め、接着剤として使用する場合、耐熱接着性がより一層改良される点で、特にPVAは有効に用いることができる。トルエン不溶分が30質量%以上、特に45質量%以上のEVA系エマルジョンが得られるようにPVAを乳化剤成分の30質量%以上、特に50質量%以上使用することが好ましい。
【0009】
なお、EVA系エマルジョンにおけるトルエン不溶分の測定は、合成樹脂エマルジョンの乾燥皮膜を細かく裁断したもので行い、例えば、0.5gの皮膜を50mlのトルエンに浸漬し、50℃で5時間振盪した後、200メッシュの金網で濾過回収される不溶分の質量を測定することにより求められる。
【0010】
本発明におけるPVAとしては、通常使用されているものを用いることができ、例えば、平均重合度は200〜4500、ケン化度についても特に制限なく、完全ケン化PVAや部分ケン化PVAやアセトアセチル基、スルホン基、カルボキシル基、アミド基等により変性もしくはオレフィンと共重合されたPVAを用いることができる。その中でもケン化度65〜95%の部分ケン化PVAが特に有効に用いることができる。
【0011】
本発明によればEVA系エマルジョンを重合する際に、ロンガリットに替わってホルムアミジンスルフィン酸、二酸化チオ尿素及びこれらの誘導体から選ばれた少なくとも1種以上の化合物を還元剤として使用することによって、安定に重合することができ、得られるEVA系エマルジョンはホルムアルデヒドを殆ど含有しておらず、且つ着色も殆ど見られないエマルジョンとなる。
【0012】
本発明においてロンガリットに替わって使用するホルムアミジンスルフィン酸、二酸化チオ尿素及びこれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種以上の化合物の使用量は特に限定されるものではないが、好ましくは反応させる全モノマー100質量部に対して0.01〜1.0質量部、更に好ましくは0.08〜0.5質量部である。これら還元剤の添加量が0.01質量部よりも少ないと重合途中に還元剤が枯渇し残存モノマーが増える傾向があり、1.0質量部より多いと重合性は良好であるがコストが高くなり経済性の点で好ましくない。また使用方法も酸化剤を加える前に系内に加えても良いし、酸化剤とともに系内に分添しても良い。また、レドックス重合を円滑に進めるため、鉄、銅、コバルト、ニッケル等の水溶性金属化合物やピロリン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩等のキレート形成化合物を併用することが望ましい。
【0013】
本発明における還元剤であるホルムアミジンスルフィン酸と二酸化チオ尿素は水溶液中で互変異性体として存在することが公知であるが、これらの誘導体としては、N,N’−ジフェニルチオ尿酸やN,N’−ジベンジルチオ尿酸やN,N’−ジシクロヘキシルチオ尿素等のチオ尿素誘導体を過酸化水素で酸化させて得られたものや、特許2808489号公報のアミノ酸と二酸化チオ尿素を反応させて得られる水溶性の二酸化チオ尿素誘導体などが挙げられる。勿論、これらの誘導体の1種以上を、ホルムアミジンスルフィン酸および/または二酸化チオ尿素と併用することができる。
【0014】
共重合に使用するレドックス系のラジカル開始剤としては、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、過硼酸カリウム等の無機ラジカル開始剤や、t−ブチルヒドロパーオキサイド、キュメンヒドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキシド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)ー3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキシド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル、ビス(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシカーボネート、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等の有機ラジカル開始剤を使用することができる。好ましくは、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、t−ブチルヒドロパーオキサイド、キュメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。
【0015】
重合方法は特に限定されず、重合温度は使用するラジカル開始剤の種類により異なるが40〜80℃とすることができる。重合はEVA系エマルジョンに含有される未反応のモノマーが1質量%以下となるまで行うことが好ましい。
【0016】
本発明におけるEVA系エマルジョンの重合方法として、公知の乳化重合法が用いられ、例えば、モノマー逐次添加法、一括仕込法、二段重合法等が挙げられるが特にこれらに限定されない。
【0017】
本発明の方法により製造されたEVA系エマルジョンは、ホルムアルデヒドの含有量が極めて少なく、放出量に至っては測定限界以下の性能を有する。さらに本発明のEVA系エマルジョンは着色が殆ど無く、またロンガリットを使用したEVA系エマルジョンと比較しても同等以上のエマルジョン特性を有する。勿論、接着剤として本発明のEVA系エマルジョンを使用する場合、必要に応じて、硬化剤、可塑剤、粘着付与樹脂、増粘剤、消泡剤、防腐剤、pH調節剤等を配合することができる。
【0018】
特に、本発明の製造方法で得られるEVA系エマルジョンの固形分100質量部当たり、凝固点もしくは融点が20℃以下、大気圧での沸点が190℃以上、且つ、SP(溶解性パラメータ、単位:(MPa)1/2)値が16.0〜22.0であるエステル系化合物1〜30質量部を含有する接着剤組成物は、ホルマリンだけでなく、揮発性有機化合物も低減した接着剤組成物であり、さらに一層、環境に適合(優しい)した接着剤として好適である。例えば、合板、MDF(中質繊維板)、パーティクルボード等の木質材料、スレート板、珪カル板、石膏ボード等の無機質材料と塩ビ製シート、オレフィン製シート等の化粧シートとの貼合せ用の接着剤、プラスチックフィルムや印刷等で加工された加工紙等、ワックス等でコートされた撥水ダンボール等の撥水性材料の接着剤として使用できる。
【0019】
本発明の製造方法で得られるEVA系エマルジョンに添加するエステル系化合物は、接着性改良剤のため使用する成分であるが、凝固点もしくは融点が20℃を超えると低温接着性や耐寒性が低下し、大気圧での沸点が190℃未満の場合、異臭の問題が発生するおそれがあり、SP値が16.0〜22.0の範囲を超えると接着性改良効果が低下する傾向がある。好ましくは、凝固点もしくは融点が10℃以下、沸点220℃以上、且つ、SP値が16.5〜19.5のエステル系化合物であり、特に好ましくは、凝固点もしくは融点が0℃以下、沸点230℃以上、且つ、SP値が16.7〜19.0のエステル系化合物であり、エチレン含有量が5〜40質量%のEVA系エマルジョンに対して、良好な接着性を付与することができる。
【0020】
本発明におけるSP(溶解性パラメーター:Solubility Parameter)値はSmallの式を用いて計算する。
【0021】
【数1】
(ここで、d:密度、G:原子団、基に固有の定数(沖津の修正値を採用)、M:分子量、SP値の単位:(MPa)1/2)
【0022】
本発明の上記条件を満たすエステル系化合物の具体例としては、蓚酸ジブチル、蓚酸ジペンチル、マロン酸ジブチル、コハク酸、グルタル酸及びアジピン酸の炭素数1〜10の脂肪族や脂環族アルコールのジエステル、コルク酸、ピメリン酸、アゼライン酸及びセバシン酸の炭素数1〜10の脂肪族や脂環族アルコールのジエステル化合物、カプロン酸の炭素数4〜10の脂肪族アルコールとのエステル、エナント酸と炭素数3〜10の脂肪族アルコールとのエステル、カプリル酸と炭素数1〜10の脂肪族アルコールとのエステル、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸及びオレイン酸と炭素数1〜10の脂肪族アルコールとのエステルが挙げられる。好ましくは、グルタル酸ジメチル、コハク酸ジブチル、グルタル酸ジエチル、グルタル酸ジブチル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジn−オクチル、アジピン酸ジイソノニル、アゼライン酸ジエチル、アゼライン酸ジヘキシル、アゼライン酸ジイソオクチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジイソオクチル、カプロン酸ヘキシル、エナント酸ヘプチル、カプリル酸ブチル、ラウリル酸エチル、ラウリル酸ヘプチル、ミリスチン酸ブチル、ミリスチン酸イソデシル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸ブチル等であり、特に好ましくは、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソノニル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジヘキシル、ラウリル酸ヘプチル、ミリスチン酸イソデシル、オレイン酸メチル等である。勿論、これらエステル系化合物を2種以上併用してもよい。また、ステアリン酸やベヘニン酸等の炭素数が18以上の長鎖脂肪酸と炭素数1〜10の脂肪族や脂環族アルコールとのエステルは凝固点が20℃を越えるものが殆どであるが、凝固点もしくは融点が20℃以下、大気圧での沸点が200℃以上、且つ、SP値が16.0〜22.0であるエステル系化合物と併用したエステル系化合物の混合物が凝固点もしくは融点が20℃以下、大気圧での沸点が190℃以上、且つ、SP値が16.0〜22.0の条件を満たす限り、これらの凝固点が20℃を越えるエステルも併用することができる。
【0023】
本発明のエステル系化合物の添加量はEVA系エマルジョンの固形分100質量部当たり、1〜30質量部、好ましくは2〜25質量部、特に好ましくは3〜20質量部である。エステル系化合物の添加量が1質量部未満の場合、得られる接着剤組成物の低温接着性や耐寒性が不十分であり、また、30質量部を超えると常態接着性や耐熱性が低下する傾向がある。
【0024】
本発明の接着剤組成物において必要ならば、水性ポリウレタンエマルジョンを添加することにより、低温接着性、低臭気性及び耐熱性に優れた接着剤を得ることができる。水性ポリウレタンエマルジョンの添加量は、EVA系エマルジョンの固形分100質量部当たり、固形分換算で3〜50質量部、好ましくは5〜40質量部である。水性ポリウレタンエマルジョンであれば、とくに限定なく使用することができるが、貯蔵安定性、接着性を維持する点から、スルホン酸変性したものが好ましく、特に酸価が10〜50、さらには15〜30であるものが好ましい。また、前記水性ポリウレタンエマルジョンの固形分濃度としては、20〜60%、さらには35〜55%であるのが、接着剤使用時の作業性、機械的安定性の点から好ましい。
【0025】
前記水性ポリウレタンエマルジョンの好ましい具体例としては、住友バイエルウレタン(株)製、ディスパコールU−42、U−53、U−54、KA−8481、KA−8584、大日本インキ化学工業(株)製ハイドランHW−111、HW−311、HW−333、HW−350、HW−337、HW−374、AP−20、AP−60LM、AP−80、三洋化成工業(株)製サンプレンUXA−3005、UXA−306、UX−312、第一工業製薬(株)製スーパーフレックス107M、110、126、130、150、160、300、361、370、410、420、460、700、750、820などが挙げられる。
【0026】
本発明の方法により製造されるEVA系エマルジョンは、ホルムアルデヒドの含有量や着色が極めて少なく、またロンガリットを使用したEVA系エマルジョンと比較しても同等以上のエマルジョン特性を有するので、接着剤用途だけでなく、壁紙、ラミネート紙加工、流炭防止剤、モルタル混和剤、打継ぎ用塗布剤、防水保護塗料、砂壁状塗料、木材塗料、不織布バインダー、捺染バインダー、電植加工、ボンディング加工等の用途に、環境や人により適合したエマルジョンとして好適に使用することができる。
【0027】
【実施例】
以下から更に詳細に実施例をもって説明する。なお、本発明記載の部及び%は特に記載がなければ、いずれも質量基準で示したものである。
【0028】
<実施例1>
攪拌機付の高圧重合缶にPVA(電気化学工業社製)B−05とB−17を各2部、酢酸ソーダ0.4部、ホルムアミジンスルフィン酸(和光純薬製)0.3部、硫酸第一鉄・七水和物0.005部を90部の純水に溶解してから仕込み、更に攪拌下酢酸ビニルモノマー100部を仕込み、窒素で重合缶内部を置換した後、エチレン25部を充填した。温度を55℃とした後、5%の過硫酸アンモニウム水溶液を連続添加し重合を行った。未反応の酢酸ビニルモノマー量が1%未満になるまで重合を継続し、残存するエチレンをパージしEVAエマルジョンを得た。
【0029】
<実施例2>
実施例1において5%の過硫酸アンモニウム水溶液の替わりに5%のt−ブチルハイドロパーオキサイドを使用して重合を行った。
【0030】
<実施例3>
実施例1においてホルムアミジンスルフィン酸の使用量を0.08部として重合を行った。
【0031】
<比較例1>
実施例1においてホルムアミジンスルフィン酸の替わりにロンガリット(住友精化製)を0.3部使用して重合を行った。
【0032】
<比較例2>
実施例1において、ホルムアミジンスルフィン酸の替わりにL−アスコルビン酸(和光純薬製)を0.3部使用して重合を行った。
【0033】
<比較例3>
実施例1において、ホルムアミジンスルフィン酸の替わりにグリオキサール・亜硫酸水素ナトリウム一水和物(和光純薬製)を0.3部使用して重合を行った。
【0034】
本発明において実施した各物性値の測定・評価方法を以下に説明する。
(不揮発分、粗粒率、pH、粘度、機械安定性、残存モノマー)
JIS K 6828に準じて評価した。なお、残存モノマーは直接滴定法によって測定した。
(ホルムアルデヒド含有量)
厚生省令34号「家庭用品の基準」の方法に準じて評価した。
(ホルムアルデヒド放出量)
JIS A 6922「壁紙施工用でん粉系接着剤」の5.5に準じて評価した。
(エマルジョンの着色度の評価)
エマルジョンをガラス板に厚さ1mm程度で引き伸ばし、着色の度合いを目視にて確認した。
【0035】
【表1】
【0036】
実施例1〜3のいずれも比較例と比較して、ホルムアルデヒドの含有量が極めて低く、且つホルムアルデヒドの放出量は測定限界値以下である。更に得られたエマルジョンに着色は見られない。
【0037】
一方、比較例1は、着色は殆ど見られないものの、ホルムアルデヒド含有量の値が120mg/kgと非常に大きく、更にはホルムアルデヒドの放出量も1.0mg/Lと高い値を示している。
【0038】
比較例2ではホルムアルデヒドの含有量が15mg/kgと比較的小さく、ホルムアルデヒドの放出量も検出限界以下であったが、エマルジョンが薄黄色に着色しており、その着色も放置時間の経過と共に激しくなっていく傾向が見られた。
【0039】
比較例3でもホルムアルデヒドの含有量が18mg/kgと比較的小さく、ホルムアルデヒドの放出量も検出限界以下であったが、エマルジョンが薄黄色に着色しており、その着色も放置時間の経過と共に激しくなる傾向が見られた。
【0040】
<実施例4〜7>
表2に示す仕込み配合以外は、実施例1と同様にEVA系エマルジョンを製造し、表2に示すEVA系エマルジョンを得た。なお、ノニオン界面活性剤として、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(HLB16.2)を使用し、以下POEArと略す。得られたエマルジョンのエチレン含有率は下記の測定法で行い、得られた結果を表2に示す。
【0041】
(エチレン含有率)
プロトンNMRを使用し、酢酸ビニルとエチレンに由来するピーク強度の積分値より算出した。
装置 :BRUKER製 AVANCE300
観測周波数:1H 300MHz
測定溶媒:重クロロホルム
濃度:約5g/100cm3
測定温度:55℃
【0042】
【表2】
【0043】
実施例4〜7は実施例1のエチレン含有量や乳化剤の配合を変えた例であるが、実施例1と同様に、ホルムアルデヒドの含有量は少なく、その放出量は測定下限未満である。更に得られたエマルジョンに着色は見られない。
【0044】
表2の各エマルジョンの固形分100部に対し表3に記載した量の添加剤を均一に混合して、接着剤組成物を得た。なお、接着性に関連する測定・評価方法を下記に示す。
【0045】
なお、接着性改良のための添加剤として、使用した化合物は次に示す。キシレン(Xylと略す)、グルタル酸ジメチル(GDMと略す)、ミリスチン酸エチル(MSEと略す)、アジピン酸ジイソノニル(ADNと略す)、オレイン酸メチル(OLMと略す)、第一工業製薬(株)製ウレタンエマルジョンSF410(SF410と略す)。
【0046】
(低温接着性)
接着特性はパーティクルボード(10mm厚)と半硬質塩化ビニルシートで評価した。2℃雰囲気下で接着剤組成物と試験片を1日間保持して冷却し、2℃の温度条件で接着剤組成物を半硬質塩化ビニルシート上にバーコーターで90g/m2(wet)塗布し、パーティクルボードと貼り合わせ、2kgのゴムローラーで脱気後、そのまま2℃で1日放置した後、手で強制剥離して破壊状態を判定した。10個のうちパーティクルボード表面が破壊した(木破)割合を示すが、この数値が大きいほど低温接着性が良好である。
【0047】
(耐寒性)
上記の試験体を−20℃雰囲気下、1日放置後、鋸で切断し切断面を以下の規準で判定した。
シートが木と密着し、界面剥離が見られない:○
シートと木に一部界面剥離する :△
シートと木とが大部分、界面剥離する :×
【0048】
(臭気)
密閉した容器に添加剤を添加した接着剤組成物入れ、所定の温度で2時間以上放置後、開栓し迅速に4名が直接嗅ぎ、以下の基準で判定した。なお、放置する温度は、通常の使用条件を想定した20℃で行った。
不快いな臭が感じられない :○
不快いな臭がややある :△
不快な臭いがある :×
【0049】
(耐熱クリープ性)
接着特性はパーティクルボード(10mm厚)と半硬質塩化ビニルシートで評価した。20℃で接着剤組成物を半硬質塩化ビニルシート上にバーコーターで90g/m2(wet)塗布し、パーティクルボードと貼り合わせ、2kgのゴムローラーで脱気後、そのまま20℃で3日以上放置後、長さ300mm、幅25mmに切断した接着試験片を作成した。この試験片を半硬質塩化ビニルシートを下側にして両端を固定した状態で水平に置き、60℃のギヤーオーブン中に1時間放置した。雰囲気温度60℃、90度剥離の状態で500g/25mmの静荷重でをかけ、30分後の剥離長さを測定した。
接着性の評価結果を表3に示す。
【0050】
【表3】
【0051】
表3から、本発明の製造方法で得られるEVA系エマルジョンに接着助剤を併用することにより、良好な低温接着性や耐寒性に良好な接着剤が得られる。さらに、ウレタンエマルジョンを添加すると、耐熱クリ−プ性もより改善される。特に、凝固点もしくは融点が20℃以下、大気圧での沸点が190℃以上、且つ、SP(溶解性パラメータ、単位:(MPa)1/2)値が16.0〜22.0であるエステル系化合物を含有することにより、ホルムアルデヒドだけでなく、有機揮発分も低減した接着剤を得ることができる。勿論、実施例8〜15の接着剤組成物に着色は認められなかった。
【0052】
【発明の効果】
本発明のEVA系エマルジョンの製造方法は、ホルムアルデヒド含有量や着色が極めて少ないエマルジョンを得るのに好適であり、各種接着剤やセメント、モルタル混和用等の衛生上安全なエマルジョンとして使用できる。
Claims (6)
- エチレンと酢酸ビニルを必須成分とする単量体混合物の重合において、ホルムアミジンスルフィン酸、二酸化チオ尿素から選ばれた少なくとも1種以上の化合物を還元剤として用いて重合することを特徴とし、かつ反応させる全単量体100質量部に対して該還元剤を0.01〜1.0質量部添加することを特徴とするエチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンの製造方法。
- 有機ラジカル開始剤および/または無機ラジカル開始剤を使用して重合することを特徴とする請求項1記載のエチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンの製造方法。
- 請求項1または2に記載された方法によって製造されることを特徴とするエチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョン。
- 請求項3に記載されたエマルジョンを含有してなる接着剤組成物。
- 請求項1または2に記載された方法によって製造されるエチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンの固形分100質量部当たり、凝固点もしくは融点が20℃以下、大気圧での沸点が190℃以上、且つ、溶解性パラメータ(SP値)が16.0〜22.0(単位:(MPa)1/2)であるエステル系化合物1〜30質量部を含有することを特徴とする請求項4記載の接着剤組成物。
- 請求項1または2に記載された方法によって製造されるエチレン−酢酸ビニル系共重合体エマルジョンの固形分100質量部当たり、固形分換算で3〜50質量部の水性ポリウレタンを添加することを特徴とする請求項4または請求項5記載の接着剤組成物。
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