JP3862292B2 - 耐熱性ロール状フィルム及びその製造法 - Google Patents

耐熱性ロール状フィルム及びその製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、耐熱性の長尺ロール状フィルム及びその製造法に関するものであり、さらに詳しくはフィルムとして特別な要件を備えたが故に加工性に優れた耐熱性長尺ロール状フィルム及びその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリアミド(以下、アラミドという)フィルムやポリイミドフィルムは、耐熱性に優れたフィルムとして、特開昭49−131247号公報、特開昭51−81854号公報、特開昭51−81880号公報、特開昭52−82953号公報、特開昭52−84245号公報、特開昭52−85251号公報、特開昭58−42649号公報、特開昭59−45124号公報、特開昭61−246918号公報、特開昭62−70421号公報、特開昭60−15436号公報、特開昭60−15437号公報、特開昭62−48726号公報などにより知られている。
【0003】
しかしながら、フィルムの加工性が極めて重要であるにもかかわらず、フィルムの加工性に言及した公知資料は殆ど見られない。殊に、これらの耐熱性のフィルムは、吸脱湿による寸法変化が避けられないために、ロール状フィルムの場合、捲姿の低下やそれに伴うロール状からの解除性の低下をひきおこし、また蒸着やスパッタリング等、乾燥状態で加工される時やメッキ等、湿潤状態で加工される時にフィルムの局部的な寸法変化が発生し、このためにフィルムの平坦性の低下やしわの発生が避けられず、これらの結果として加工収率の低下や不均一な加工しか行われない等の問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
フィルムがカールを起こすという問題に関して、特開昭51−81854号公報にはフィルム中のイオン含量を減らすことで耐熱性フィルムのカールを抑える方法が開示されている。
しかし、この方法だけでは、耐熱性フィルムの加工性改良という課題は完全に解決されるには至っていない。
【0005】
本発明の課題は、加工前及び加工中のフィルムの平坦性の低下がなく、かつ加工性に優れた耐熱性の長尺ロール状フィルムを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は200℃での熱収縮率が0〜0.5%のアラミドフィルムであって、平均吸湿率が25℃60%相対湿度でのフィルム平衡吸湿率の30〜100%の範囲であり、かつフィルム内の吸湿率のバラツキが平均吸湿率の13〜22%であることを特徴とする、フィルムの面方向の吸湿膨張係数が3〜100ppm/%RHの耐熱性ロール状アラミドフィルム、及びフィルムの面方向の吸湿膨張係数が3〜100ppm/%RHである耐熱性アラミドフィルムを50〜110℃で60〜100%相対湿度の気体と接触させて、フィルムを加湿させた後、ロール状に捲取ることを特徴とする耐熱性ロール状アラミドフィルムの製造法である。
【0007】
本発明の耐熱性フィルムとしては、アラミドフィルムが用いられる。本発明で用いられるアラミドは、次の構成単位からなる群より選択された単位より実質的に構成される。
−NH−Ar1−NH−(1)
−CO−Ar2−CO−(2)
−NH−Ar3−CO−(3)
ここでAr1、Ar2、Ar3は少なくとも1個の芳香環を含み、同一でも異なっていてもよく、これらの代表例としては下記の化1が挙げられる。
【0008】
【化1】
Figure 0003862292
【0009】
本発明のアラミドは、これらの芳香環の環上の水素の一部がハロゲン基、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基などで置換されているものも含む。また、Xは−O−、−CH2−、−SO2−、−S−、−CO−などである。
これらのアラミドのうち、全ての芳香環の80モル%以上がパラ位にて結合されているアラミドが特に好ましい。
【0018】
また、本発明のアラミドフィルムには、フィルムの物性を損ねたり、本発明の目的に反しない限り、易滑剤、酸化防止剤、その他の添加剤などや、他のポリマーが含まれていてもよい。
本発明の技術は、吸湿膨張係数が3〜100ppm/%RHの範囲のフィルムに適用される。吸湿膨張係数が3ppm/%RH未満の場合、湿度寸法変化安定性に極めて優れているため、もはや本発明の技術を適用する必要性が薄くなる。一方、吸湿膨張係数が100ppm/%RHを超えるフィルムは、湿度寸法安定性が実用に耐えがたいレベルになる。本発明の技術は、好ましくは吸湿膨張係数が5〜50ppm/%RHの範囲のフィルムに適用される。
【0019】
本発明において、フィルムの平均吸湿率が25℃60%相対湿度でのフィルム平衡吸湿率の30〜100%であり、かつフィルム内の任意の箇所で測定した吸湿率のバラツキが平均吸湿率の±30%以内であることが肝要である。フィルムの平衡吸湿率は当該フィルムの製造方法、条件、及び環境条件などによって決まってくるが、本発明においては25℃60%相対湿度での平衡吸湿率を基準とする。
【0020】
本発明において、ロール状フィルムの平均吸湿率は25℃60%相対湿度での平衡吸湿率の30〜100%である必要があり、好ましくは50〜100%の平均吸湿率である。このような平均吸湿率をもっていることによって、加工前及び加工中の温湿度環境の変化に対しても寸法変化率の局部的なバラツキが小さく、種々の加工が均一に、安定して、品質良く、収率良く行えるのである。
【0021】
本発明の場合、フィルムを特定の範囲で加湿させてあるため、メッキ加工などのように高湿度環境下で加工されるときに好都合であることは比較的容易に理解できるが、蒸着、スパッタリング等のように乾燥雰囲気下で実施される加工に対しても好適なフィルムを提供できることは吸湿率の変化が比較的大きいため意外な効果であると言わざるを得ない。これは、多分、特定の範囲に加湿した方が乾燥状態よりもフィルムに残留応力等が残りにくく、このために吸湿率の変化量が大きくても、寸法変化率の局部的なバラツキが小さくできるという作用に基づくと推定される。25℃60%相対湿度での平衡吸湿率の30%未満の平均吸湿率の場合、保管中(加工前)や加工中の温湿度変化に基づく寸法変化又は/及び寸法変化の局部的なバラツキが大きく、加工を安定して行うことが困難になる。もちろん、用途に応じて、つまり加工の種類や加工時の湿度条件などに応じて、本発明の範囲内で最適の平均吸湿率を選ぶことは大いに望ましいことである。
【0022】
本発明において、フィルム内の任意の箇所で測定した吸湿率のバラツキが平均吸湿率の±30%以内であることが必要であり、望ましくは±20%以内である。平均吸湿率の±30%を超える吸湿率のバラツキがあると、ロール状フィルムにあっては捲姿が悪くなったり、フィルムの平坦性の不足や特別な時には波うちが起こることもあるからであり、更にこのようなフィルムを蒸着・スパッタリングやメッキなどの加工に供すると、これらの加工の温湿度環境に置いた時もフィルムの平坦性の不足や波うちが残り、加工の均一性・収率が悪くなるからである。
【0023】
本発明のフィルムのヤング率(Mi)は700〜2500kg/mm2であるのが好ましい。ヤング率が700kg/mm2未満のフィルムは、もはや高剛性フィルムという範ちゅうのフィルムでなくなり、本発明の技術要件を適用する必要性がうすくなるからである。一方、2500kg/mm2を超えるアラミドフィルムは、裂け易く且つ脆くなってもはやフィルムとしての有用性が少なくなってしまうからである。高ヤング率のフィルムは、分子構造的にパラ配向成分を多くすること、製造時に相対的に高い延伸倍率を適用して分子鎖を高配向化することで実現できる。
【0024】
本発明は、水蒸気透過率が0.01〜50g/m2/24hr/0.1mmの範囲にあるフィルムに好ましく適用でき、更に好ましくは0.1〜20g/m2/24hr/0.1mmに適用できる。このようなフィルムは水蒸気の透過速度のかなり小さいフィルムであり、従って湿度環境の変化にともなうフィルムの吸湿率変化及びそれに伴う寸法変化の追随に時間がかかるため、フィルムの吸湿率の局部的なムラが生じ易く、フィルムの寸法変化量の局部的なバラツキ及びそれに付随するフィルム平坦性の欠如を結果し易く、このようなフィルムに本発明の技術の適用が好都合である。水蒸気透過率の小さいフィルムは、ポリマー種の選択、凝集構造緻密化のための凝固条件・熱処理条件などの適正化によって達成できる。
【0025】
本発明は、フィルムの物性がフィルム面内の全方向に一定のいわゆるバランスタイプには勿論のこと、長さ方向または幅方向に強化されたテンシライズドタイプにも適用することができる。
本発明は、平均厚みが約1〜1000μmのフィルムに適用できるが、平均厚みに対する厚みバラツキの比が0〜5%であることが好ましく、0〜4%であることが更に好ましい。比が5%を超えると、ロール状に捲上げたフィルムの捲姿が悪くなり、ロールからの解除そのものや解除後のフィルムの加工性が悪くなるからである。
【0026】
また、本発明のフィルムは伸度が15〜100%であることが好ましい。15%未満の伸度のフィルムは脆いことがおうおうにして見られるからである。一方伸度は一般に大きい方が望ましいが、実際的には100%程度が上限になる。伸度は、ポリマーの種類、重合度や延伸配向度、結晶化度等の調整によって達成できる。
【0027】
本発明のフィルムにおいて、フィルム厚さ方向の吸湿膨張係数についても、0〜600ppm/%RHであるものが好ましく、0〜500ppm/%RHであるものがより好ましいことが判明した。フィルム厚さ方向の吸湿膨張係数が大きすぎると、フィルムをロール状に捲いた時の捲姿が悪くなることがあり、その結果としてフィルムの平坦性の悪化や加工性の低下をきたす。吸湿膨張係数の低減化は、ポリマー種の選択、延伸配向度・結晶化度・ポリマー末端基の調整などにより達成できる。
【0028】
本発明のフィルムとして、200℃での熱収縮率が0〜0.5%のものが好ましい。何故なら、熱収縮が大きいと、フィルムの加工工程等で高温履歴を受けたとき、フィルムの平坦性などが低下することがあるからである。熱収縮率の低減化は、ポリマー種の選択、熱セットなどによって達成できる。熱収縮率の小さいフィルムは、フィルムが耐熱性をもっていることの証左の1つでもある。
【0029】
本発明のフィルムは、金属鏡面との動摩擦係数が0.02〜0.25の範囲にあるものが好ましく、0.02〜0.15であるものが更に好ましい。摩擦係数が小さすぎると加工工程での取扱が不安定になり、逆に大きすぎると加工工程でのしわ・歪の発生や傷つきが多くなるからである。摩擦係数の調整は、易滑剤の添加量・種類・粒度・分散度等の選択によって達成できる。
【0030】
本発明のフィルムは、0.8μm以上の高さの表面の粗大突起を実質的に含有しないことが好ましい。フィルムのこの特徴は、易滑剤の粒度・分散度の選択によって達成できる。
本発明のフィルムの製造法については、それぞれのポリマーに適した製造法が取られてよいが、製膜後、ロール状に捲取るまでの間について、特別の注意義務のもとに行う必要がある。
【0031】
まず、アラミド樹脂については、有機溶剤可溶のものでは直接溶剤中で重合するか、一旦ポリマーを単離した後再溶解するなどして溶液とし、ついで乾式法または湿式法にて製膜し、またポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)等の有機溶剤に難溶のものについては濃硫酸などに溶解して溶液とし、ついで乾式法または湿式法にて製膜する。
【0032】
式法では、溶液はダイから押し出され、金属ドラムやエンドレスベルトなどの支持体上にキャストされ、キャストされた溶液が自己支持性あるフィルムを形成するまで乾燥またはイミド化反応を進める。湿式法では、溶液はダイから直接凝固液中に押し出すか、乾式と同様に金属ドラムまたはエンドレスベルト上にキャストした後、必要ならば溶剤の除去を一部行った後、凝固液中に導き、凝固する。
【0033】
ついでこれらのフィルムはフィルム中の溶剤や無機塩などを洗浄し、延伸、乾燥、熱処理などの処理をする。
以上、何れの製膜方法に於いても、製膜後のフィルムが、3〜100ppm/%RHのフィルム面方向の吸湿膨張係数をもつように、ポリマー種や種々の製膜条件を設定する必要があり、これらは、例えば、前記した公知技術の援用で基本的に可能である。
【0034】
本発明において、製膜後のフィルムをロール状に捲取るまでに特別の方法を適用する必要がある。即ち、フィルムを50〜110℃に加熱された60〜100%相対湿度の気体と接触させて、フィルムを加湿することが肝要である。ここで、気体としては、通常、空気が用いられるが、必要ならば窒素・アルゴン等の不活性気体が用いられてもよい。気体の温度が50℃未満であると、フィルムの加湿速度が小さくなり、工業的生産には向かなくなる。また、気体温度を高くすると、一般に、加湿速度が大きくなって好ましいが、あまり高温にすると加圧系にせざるを得なくなって装置が複雑化したり、エネルギーロスが大きくなって工業的に好ましくなくなるので、110℃以下が選ばれる。気体温度は、好ましくは70〜105℃である。フィルムの平衡吸湿率は、一般に、相対湿度でほぼ決まり、温度には殆ど左右されないため、加熱気体の相対湿度は60%未満であると必要な加湿が行われない恐れがある。一方、100%を超えるとフィルムや加湿装置などに結露が生じることがあり好ましくない。出来るだけ高い温度及び相対湿度で、気体状の水分子を気体からフィルムに供給することが重要であり、相対湿度は、好ましくは70〜100%である。
【0035】
加湿を効率的に行うために、加湿部に入る前にフィルムを予熱したり、加湿部から出たフィルムからの放湿量を最小にするために急冷したり、加湿量のバラツキをなくすために加湿部に気体流をつくったり、結露防止のために保温を徹底するなどの工夫は適宜行われてよい。また、加湿後のフィルムの吸湿率の変化を抑制するために、加湿部から捲取部にかけての雰囲気の温湿度調整を行うことも好ましい態様である。
【0036】
加湿時間はフィルムの種類、厚み、気体温湿度などによって異なるが、フィルムの吸湿率が捲取時に、25℃60%相対湿度でのフィルムの平衡吸湿率の
30〜100%になるように調整すればよい。
更に、製膜後のフィルムの保管は、通常、円筒状ボビンの上に捲上げたロール状で行われるが、外力のかかり方が幅方向で不均一になったり、加熱や吸湿、乾燥等が幅方向で不均一にならないように配慮するのが望ましい。
【0037】
フィルム同志の滑り性を良くしたり、ブロッキング現象を防ぐため、通常はフィルムに微粒子を混在させる方法がとられ、この微粒子を易滑剤とも称する。微粒子としては有機化合物及び無機化合物があるが、通常は例えばSiO2TiO2、ZnO、Al23、CaSO4、BaSO4、CaCO3、カーボンブラック、ゼオライト、その他金属粉末などの無機化合物が用いられる。粒子径は0.001〜2μm、添加量は0.03〜5重量%に選ばれることが多い。即ち、アラミド樹脂の溶液中に、上記微粒子を混入し、この溶液を製膜することにより製造する。この際、微粒子の分散を良くするために、超音波方式や撹拌方式のホモジナイザーが好ましく用いられる。
【0038】
フィルムには、染料や顔料などの着色剤や、難燃剤、帯電防止剤、酸化防止剤、その他の改質剤についても、それが本発明の目的に反しない限り含まれていてもよい。
(特性の測定法)
本発明の特性値の測定法は次の通りである。
(1)フィルムの厚み、強度、伸度、ヤング率の測定法
フィルムの厚みは、直径2mmの測定面を持つダイヤルゲージで測定する。
強度、伸度、ヤング率は、定速伸長型強伸度測定機を用い、測定長100mm、引っ張り速度50mm/分で測定したものである。
(2)吸湿率及び吸湿率のバラツキの測定法
フィルムから10cm×10cmの試料片を切り出し、重量を精密に測定したのち、150℃の熱風式オーブンに2時間静置して乾燥後の重量を精密に測定して、吸湿率を算出した。平均値及びバラツキを測るためのサンプリングは、ロール状フィルムの幅方向に5点以上、長さ方向に10点以上行い、測定値の平均を平均吸湿率とし、測定値中の最大値と最小値を選んだ。これらの差をバラツキとする。
(3)熱収縮率の測定法
フィルムから2cm×5cmの試料片を切り出し、4cmの間隔に刃物で傷をつけて標識とし、予め25℃、55%相対湿度の雰囲気下に72時間放置した後、標識間の距離を読み取り顕微鏡にて測定し、次いで200℃の熱風式オーブンに2時間拘束することなく放置した後、再度25℃、55%相対湿度の雰囲気下に72時間放置した後、標識間の距離を読み取り顕微鏡にて測定して求めた。
(4)フィルム面方向の吸湿膨張係数の測定法
熱力学特性測定機(TMA、真空理工株式会社製TM7000型)に幅5mmのサンプルを取り付け、荷重0.3g下で、一旦300℃まで昇温してサンプルの残留歪を除去した後、乾燥窒素気流下に冷却し、23℃において、乾燥窒素と空気との間の湿度変化及びフィルムの寸法変化を測定し、計算にて求めた。
(5)水蒸気透過率の測定法
JIS Z−0208の方法によって測定した。
(6)動摩擦係数の測定法
金属鏡面として、鏡面に研磨されたステンレス製の固定ロール(直径60mm)に、90゜の抱角になるように、幅1cmのフィルムの一端に50gの荷重をかけ、他端を20cm/分の速度で引っ張り、この時のフィルムの引張張力から、オイラーの式を用いて算出した。
(7)表面の粗大突起の測定法
日本電子株式会社製走査型電子顕微鏡を用い、1000倍で異なる部位を撮影した少なくとも10枚の写真について、0.8μm以上の高さの突起の数を調べた。
【0039】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。
【0040】
【実施例1】
ポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)を、99.8%濃硫酸に、ポリマー濃度が12%になるように溶解し、約300μmのスリット間隔のダイからエンドレスベルト上にキャストした。濃硫酸には、予め0.04μmのシリカ粒子をPPTAに対し0.3重量%となるように超音波撹拌機により分散させておいた。ベルト上で加熱と同時に吸湿処理して、ドープを液晶相から等方相に相転換した後、0℃の45%硫酸中にて凝固させ、中和、水洗し、長さ方向に1.05倍の延伸を施した後クリップテンターにより1.05倍に横延伸し次に定長状態を保ちつつ150℃で熱風乾燥し、次いで400℃で緊張熱処理、300℃でフリー熱処理した後、95℃に加熱した97%相対湿度の空気が保持されている加湿チャンバー内を滞留時間が70秒になるように通して、ロール状に捲き上げ、ポリエチレン製の袋にいれた。ここで、横延伸及び乾燥時にフィルムの幅方向に5℃以上の温度むらが生じないように、また緊張熱処理のヒータの温度分布も中央部と端部とで5℃以上の差が出ないように工夫した。
【0041】
幅500mm、長さ300mで得られたロール状のPPTAフィルムは25℃60%相対湿度での平衡吸湿率が2.9%であり、長尺方向、幅方向に物性差は殆ど無く、表1に示す通りだった。
ポリエチレン製の袋から取り出したフィルムに、銅をスパッタリングした。高真空下で、スパッタリング加工を問題なく実施でき、スパッタリングされた銅の厚みのバラツキも小さく、銅の亀裂などの欠点も全く観察されなかった。
【0042】
【比較例1】
実施例1において、加湿チャンバーを室温(23℃)で64%相対湿度の空気にする以外は実施例1と全く同一にして、フィルムを捲上げて、ポリエチレン製の袋に入れた。フィルムの物性を表1に示した。
次に、ロール状フィルムを袋から取り出して、実施例1と全く同一のスパッタリングを行った。高真空下でのフィルムの走行性が僅かに不安定だったこと、スパッタリングされた銅の厚みの薄い部分が存在したこと、銅に細かな亀裂の存在が部分的に観察されたことが、実施例1との違いであった。
【0043】
【比較例2】
比較例1と全く同一の条件で得たロール状フィルムを、防塵の為の簡易包装だけにして約2ヶ月間静置した。このフィルムの平均吸湿率は2.2%であったが、吸湿率のバラツキは大きく、ロール状フィルムの端部で吸湿率が大きく最大値2.9%を示し、ロール状フィルムの中央部で吸湿率が小さく最小値0.9%を示した。ロール状フィルムからの解除は、端部でいわゆるブロッキングが部分的に起こっていて、円滑に行うのが困難であった。また、解除したフィルムはかなり波打っていた。
【0044】
【実施例2】
実施例1と全く同一の条件で得たロール状フィルムを、比較例2と同一の条件で静置した。フィルムの平均吸湿率は2.5%、最大吸湿率は2.9%、最小吸湿率は2.2%と吸湿率の平均及びバラツキともに少し増加していたものの(平均吸湿率/平衡吸湿率=0.86、バラツキ/平均吸湿率=0.28)、実施例1と同様に、問題なくスパッタリング加工ができた。
【0045】
【実施例3及び比較例3】
実施例1において、ダイのスリット間隔を小さくしたこと、延伸倍率を縦横ともに1.20に変えたこと以外は、実施例1と同一の条件で製膜し、ロール状に捲上げる前に、80℃に加熱した65%相対湿度の空気が保持されている加湿チャンバー内を滞留時間が120秒になるように通し、これを実施例3とした。
【0046】
また、比較例3として、ロール状フィルムへの捲上げ前の加湿処理を、120℃に加熱した水蒸気を加湿チャンバー内に吹き込むことで行ったものをつくった。飽和湿度(100%)を超える雰囲気で加湿された比較例3のフィルムには、小さな水滴が付着した。
得られたフィルムの物性は縦横バランスしており、表1に示す通りであり、25℃60%相対湿度での平衡吸湿率は2.7%であった。
【0047】
袋から取り出した、500mm幅、300m長さのロール状フィルムにエポキシ系樹脂をコーティングした。その結果、実施例3のフィルムは約20μmの厚さに均一に全面コートできたが、比較例3のフィルムはロールからの解除がブロッキングのためにスムーズでなかった上に、塗工ムラが避けられなかった。
【0048】
【実施例4】
ポリパラフェニレン−2−クロロテレフタルアミド(PPClTA)をポリマー濃度が13重量%になるように溶解し、約100μmのスリット間隔のダイからエンドレスベルト上にキャストした。濃硫酸には、予め0.02μmの酸化チタン微粒子をPPClTAに対し0.2重量%となるように超音波分散機により分散させておいた。実施例3と同様の操作を加えてフィルムをつくり、捲上げ前に60℃90%相対湿度に保持した加湿チャンバー内に50秒の滞留時間で通過させ、ロール状に捲上げた。縦横の物性のバランスしたフィルムが得られた。得られたフィルムの特性を表1に示す。なお、25℃60%相対湿度での平衡吸湿率は1.7%であった。
【0049】
袋から取り出した、500mm幅、500m長さのロール状フィルムに、銅メッキ加工を行った。トラブルなしに、約5μm厚さの均一なメッキができた。
【0050】
【表1】
Figure 0003862292
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、平坦性の良い耐熱性の長尺ロール状フィルムが得られ、また、捲形状が良いために、ロール状態からの解除性に優れ、表面処理、スリッティング、コーティング、ラミネーティング等の加工がしやすい。つまり、加工の時にフィルムが取扱い易く、加工時のフィルム品位の低下(例えば、傷つき等)が少なく、品質の良い高収率の加工が可能である。特に、蒸着やスパッタリング、イオンビーム等の加工時に、それに先だってフィルムを高真空下に置いて放湿させても、フィルムの局部的な寸法変化の差が小さく平坦性に優れているので、これらの加工を均一に出来、太陽電池(アモルファスシリコンの蒸着またはスパッタリング)、磁気メディア(磁性材料の蒸着またはスパッタリング)等に有用である。更に、フィルム或いはスパッタリング後のフィルムにメッキ加工するとき、水中でフィルムが吸湿しても、寸法変化が均一であるため、フィルムの平坦性が維持され、均一な厚みのメッキ層が高収率で得られる。

Claims (2)

  1. 200℃での熱収縮率が0〜0.5%のアラミドフィルムであって、平均吸湿率が25℃60%相対湿度でのフィルム平衡吸湿率の30〜100%の範囲であり、かつフィルム内の吸湿率のバラツキが平均吸湿率の13〜22%であることを特徴とする、フィルムの面方向の吸湿膨張係数が3〜100ppm/%RHの耐熱性ロール状アラミドフィルム。
  2. フィルムの面方向の吸湿膨張係数が3〜100ppm/%RHである耐熱性アラミドフィルムを50〜110℃で60〜100%相対湿度の気体と接触させて、フィルムを加湿させた後、ロール状に捲取ることを特徴とする請求項1に記載の耐熱性ロール状アラミドフィルムの製造法。
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