JP3861715B2 - 二重床支持構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、二重床支持構造に係り、特に、床パネルに加えられる衝撃を吸収して躯体側への衝撃伝播を低減することのできる二重床支持構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、コンクリート製のスラブ等からなる躯体の上面側に一定の空間を形成するように床パネルを配置した二重床が知られている。この二重床を形成する床パネルの端部支持は、(1)固定際根太を介して行なう形態、(2)防振支持具を床パネルの端部下面側に配した、いわゆる防振際根太を介して行なう形態、(3)床パネルの端部下面側に際根太を用いることなく支持する形態とが存在する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記(1)の支持形態にあっては、固定された際根太に床パネルの端部が直接支持される構造であるため、床パネルに加えられる振動エネルギーが殆ど減衰することなくスラブ若しくは壁面等の躯体に伝播してしまい、床パネルの端部以外の下面側領域を支えるための防振支持具を採用しても十分な振動遮断性能を得ることができず、結果として大きな床衝撃音を発生してしまうという不都合がある。
【0004】
また、前記(2)の支持形態にあっては、軽量床衝撃音に対して若干の振動吸収効果が得られるが、重量床衝撃音に対しては十分に機能しないという不都合がある。特に、この支持形態では、床パネルを敷設する作業に際して防振際根太を不用意に倒伏させてしまう場合も多い。これは、床パネルを敷設する際に、当該床パネルの端部側を壁面に沿わせて持ったときに、床パネルが傾いた姿勢になり易いことに起因する。
【0005】
更に、前記(3)の支持形態は、際根太が存在しないことで床パネルの端部領域における振動の絶縁を行なうことが可能となるが、床パネル上に設置される重量構造物、例えば、書棚、箪笥等を壁面に沿って設置したときに、床パネルに大きな撓みを発生させてしまう原因となる。また、この支持形態では、床パネルに衝撃が加えられたとき、特に、重量床衝撃音では、床パネルの端部が水平位置に対して上方に数ミリ程度変位してしまう振動を発生してしまい、これにより、床パネルが巾木の下端を叩いて二次加振を発生させてしまう別異の不都合を招来する。
【0007】
【発明の目的】
本発明は、このような不都合に着目して案出されたものであり、その目的は、床衝撃音レベルの低減を実現しつつ、二重床を施工する際の防振支持具の倒伏を回避して作業性を改善することのできる二重床支持構造を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明は、スラブ上に配置される床パネルの下面側を支持する受け板と、この受け板の下方に位置する防振弾性体とを含む防振支持具と、この防振支持具に係合して前記床パネルの振動を吸収する振動減衰装置とを備えた二重床支持構造であって、
前記振動減衰装置は、壁面に取り付けられて前記受け板の少なくとも端部上面側に位置する拘束部と、この拘束部と前記受け板の上面との間に配置された緩衝材とを備えて構成される、という構成を採っている。このような構成では、振動減衰装置によって壁面側の防振支持具がしっかりと支えられる構造となり、床パネルを敷設するときに防振支持具が転倒するような虞を回避することができ、床パネル敷設時の施工性を良好に改善することができる。
【0012】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1には、本実施例に係る二重床の正面図が示され、図2には、その平面図が示されている。また、図3には、二重床の要部概略斜視図が示されている。これらの図において、コンクリート製のスラブSの上面側で空間Cを形成する所定の高さ位置に床パネルPを配置して二重床が形成されている。この床パネルPは、前記スラブS上に設置されて床パネルPの下面側に配置された複数の防振支持具10を介して支持されている、これら防振支持具10のうち、壁面Wに近接する位置で当該壁面Wに沿って配置された防振支持具10は、壁面Wに取り付けられた振動減衰装置30に係合する状態で組み合わされている。
【0014】
前記パネルPは、特に限定されるものではないが、本実施例では、下地パネルP1と、その上面に敷設されたフローリング等からなる仕上げパネルP2との複層構造体によって構成されている。下地パネルP1の側端は、壁面Wに対して隙間S1(図4参照)を形成するように配置され、また、仕上げパネルP2の側端は、隙間S1よりも小さな隙間S2を壁面Wとの間に形成し、且つ、上部に位置する巾木40の下端面領域内に位置するように配置されている。
【0015】
前記防振支持具10は、図4に示されるように、床パネルPの下面側に位置する平面視略方形の受け板20と、この受け板20の中央部下面側に位置する支持脚11と、この支持脚11を支える防振弾性体12と、当該防振弾性体12の外周側に装着された錘部材13とを構えて構成されている。
【0016】
支持脚11は、上下方向に軸線が向けられたナット部材11Aと、このナット部材11Aの上端側からねじ込まれて上下方向に進退可能なボルト11Bとからなり、このボルト11Bの上端は、図示しないナットを介して前記受け板20に固定されている。
【0017】
前記防振弾性体12はゴム製であり、当該防振弾性体12は、略円盤状をなす内周弾性部21と、この内周弾性部21と一体に成形されるとともに、当該内周弾性部21と略同心円上に設けられた略円筒状の外周弾性部22とにより構成されている。内周弾性部21は、前記支持脚11のナット部材11Aを上部中央で支持する一方、下面がコンクリートスラブSとの間に空間C1(図4参照)を形成する高さに設けられ、上方からの衝撃に対して剪断力を受ける領域が形成されるようになっている。この内周弾性部21は、ナット部材11A回りにおいて、上方に向かうに従って次第に縮径する傾斜面となる二段階のテーパ面部を備え、下面外周側にも同様に縮径する傾斜面となるテーパ面部を備えた形状に設けられ、これにより、ナット部材11Aの支持安定性が確保されると同時に、上方から加えられる衝撃によって剪断方向に変形する時の一定の抵抗が付与されるようになっている。
【0018】
前記外周弾性部22は、その硬度が内周弾性部21の硬度よりも相対的に大きな材質により構成されている。この外周弾性部22は、その下面側が内周弾性部21の下面よりも低位置に設けられてスラブSへの設置部とされている。この外周弾性部22の外周面には、上下方向中間部に段部25が形成されており、この段部25により、外周弾性部22の上部外径が下部外径よりも小径とされている。また、外周弾性部22の下面は周方向に沿って延びるとともに略同心円上に位置する複数の溝26が形成され、これらの溝26間に位置する設置部となる複数のひれ状部28がスラブSの上面に接して略水平方向に滑り難くされている。ここで、外周弾性部22の設置部側には、前記空間C1を内外に連通させる通略29が形成され、この通路29により、内周弾性部21が剪断方向に変形したときの空間C1内の空気逃げが行われる一方、元の位置に戻るときに外気を導入して空間C内の負圧化を防止できるようになっている。
【0019】
前記外周弾性部22の外周に設けられた錘部材13は、金属もしくは樹脂により構成されている。この錘部材13は略円筒状をなし、その下端が前記段部25に着座する状態に保たれ、これにより、防振支持具10の全体に対して上方から衝撃が加えられた時でも防振弾性体12と錘部材13との一体性が確実に保たれる。
【0020】
前記振動減衰装置30は、前述した複数の防振支持具10のうち、壁面Wに近接する位置に配置された防振支持具10に組み合わせて使用されるものである。この振動減衰装置30は、図3及び図4に示されるように、前記受け板20の端部上面側と下面側に位置する上下一対の拘束部31,32と、これら拘束部31,32間に位置して各拘束部31,32を一体化させるとともに、ねじ34を介して壁面Wに取付可能に設けられた連結部35と、拘束部31,32と受け板20との間に設けられた第1の緩衝材36と、連結部35の内面と受け板20の端面との間に設けられた第2の緩衝材37とを備えて構成されている。この振動減衰装置30は側端形状が略コ字状をなし、受け板20の一辺長さに略対応する長さに設けられている。
【0021】
前記拘束部31,32及び連結部35は、本実施例では金属製のものが採用されているが、拘束性を担保できる剛性を備えている限り、樹脂や木材等の使用を妨げない。また、第1及び第2の緩衝材36,37は、特に限定されるものではないが、発泡シリコン、シリコンゲルが用いられている。
【0022】
次に、本実施例に係る二重床の施工要領について、図5をも参照しながら説明する。
【0023】
一辺の長さが約900mmとなる方形の下地パネルP1の各コーナー領域を支持する相互間隔を隔てて防振支持具10をスラブS上に配置する。この際、壁面Wに沿って配置された各防振支持具10に対応して、壁面Wの所定高さ位置に振動減衰装置30を予め取り付けておき、当該振動減衰装置30における拘束部31,32間の隙間内に、防振支持具10の受け板20を差し込んだ状態で当該防振支持具10をスラブS上に設置する。
【0024】
次いで、下地パネルP1を各防振支持具10の受け板20に載せるように配置する。この際、図5に示されるように、振動減衰装置30に組み合わされた防振支持具10側、即ち、壁面W側に位置する下地パネルP1の端部が低くなるように当該下地パネルP1が傾斜姿勢で受け板20上に載せられ、下地パネルP1を水平姿勢にすることで各コーナー対応領域に位置する受け板20上に下地パネルP1を載せることができる。この際、受け板20の上面と下地パネルP1との合わせ面は接着剤を介して相互接着される。そして、仕上げパネルP2を下地パネルP1上に敷設して巾木40を壁面Wに固定することで、床パネルPの施工を完了することができる。
【0025】
図6及び図7は、床パネル施工後の実験結果を、従来の固定際根太を採用した場合と、防振際根太を採用した場合と比較して示したものである。これらの図表から明らかなように、総じて、本発明による床パネルの支持形態が従来例よりも優れていることが理解されるであろう。
【0026】
なお、前記実施例では、振動減衰装置30に第1及び第2の緩衝材36,37を設けたが、本発明はこれに限定されるものではなく、少なくとも、第1の緩衝材36があればよい。この場合、連結部35と下地パネルP1の端面との間に隙間が形成されるように設けることが好ましい。また、第1及び第2の緩衝材36,37は同一の組成物で側端形状がコ字状となる単一部品によって構成してもよい。
【0027】
更に、前記実施例では、上下一対となる拘束部31,32を図示、説明したが、受け板20の端部上面側に位置する拘束部31のみを設ける構成としてもよく、これによっても床パネルPが巾木40の下端面を叩いてしまうことを防止可能となる。
【0028】
また、下地パネルP1の側端面と第1の緩衝材36との間の隙間、若しくは、図4に示される隙間S1の領域内に更に緩衝材を配置することができる。
【0029】
更に、前記実施例では、防振支持具10に、内周弾性部21と外周弾性部22とからなる防振弾性体12を適用した場合を図示、説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく。例えば、単なる円盤状をなす一般的なゴムを用いることもできる。但し、前記実施例における構成を備えた防振弾性体12を採用した場合には、一般的なゴムよりも優れた振動低減効果を得ることができる。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る二重床支持構造によれば、振動減衰装置によって壁面側に位置する防振支持具が支えられる構造となり、床パネルを敷設するときに防振支持具が転倒するような虞を回避することができ、転倒等に伴う防振支持具の再設定から開放されて床パネルの施工性を良好に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施例の概略縦断面図。
【図2】 二重床の平面図。
【図3】 前記実施例の要部を拡大した概略斜視図。
【図4】 図1のA部を拡大して示す部分断面。
【図5】 床パネル敷設時の作用説明図。
【図6】 前記実施例による軽量床衝撃音実験結果を示す線図。
【図7】 前記実施例による重量床衝撃音実験結果を示す線図。
【符号の説明】
10…防振支持具、30…振動減衰装置、31,32…拘束部、35…連結部、36…第1の緩衝材、37…第2の緩衝剤、40…巾木、C…空間、S…スラブ
Claims (1)
- スラブ上に配置される床パネルの下面側を支持する受け板と、この受け板の下方に位置する防振弾性体とを含む防振支持具と、この防振支持具に係合して前記床パネルの振動を吸収する振動減衰装置とを備えた二重床支持構造であって、
前記振動減衰装置は、壁面に取り付けられて前記受け板の少なくとも端部上面側に位置する拘束部と、この拘束部と前記受け板の上面との間に配置された緩衝材とを備えて構成されていることを特徴とする二重床支持構造。
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