JP3861677B2 - ウエザーストリップ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両に設けられるウエザーストリップに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両に設けられるウエザーストリップとして、例えば、ミラーブラケットがある。ミラーブラケットは、ドアミラーを取付けるための本体部を備えている。該本体部は、金属製インサートを内包してなる弾性部材を備えており、かかる弾性部材は、断面略コ字状の基部と該基部の先端から延びる一対のリップとを備えている。リップ側から基部内にドアガラスの端縁部が収容されるようになっている。
【0003】
ドアガラスが摺動する際の抵抗等を抑え、かつ、弾性部材の耐久性を向上させるために、ドアガラスが接触しうる基部の内壁やリップには、表面処理剤が塗布されている。特に、リップについては、リップ先端の巻き込み防止を図るべく、リップの内壁のみならず、外壁にも表面処理剤を塗布する必要がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、表面処理剤を弾性部材の全ての面に塗布することとすると、機能的に不必要な範囲までも表面処理剤を塗布することとなるため、作業時間の増大及びコストの増大を招くこととなってしまう。
【0005】
一方で、必要でない部位については、表面処理材を塗布することなく、コストの増大等を抑えることが考えられる。しかしながら、この場合には、表面処理剤の塗布された部分と、塗布されない部分、すなわち、表面処理材が塗布された面と、ゴム等の弾性部材が剥き出しの面とでは、光沢や色彩の相違が著しく目立ってしまう。その結果、外観品質の低下を招いてしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、表面処理層を備えるウエザーストリップにおいて、コスト増大等を抑えつつ、外観品質の低下を防止することのできるウエザーストリップを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段及びその効果】
上記の課題を解決するために有効な手段等を以下に示す。なお、必要に応じてその作用、効果等についても説明する。
【0008】
手段1.シール用のリップを備えた弾性部材の表面のうち、少なくとも外部から視認可能な領域において、表面処理層で被覆された部分と被覆されない部分とを有してなるウエザーストリップであって、
前記弾性部材は、型成形により形成されたものであり、
前記弾性部材の表面のうち、少なくとも前記表面処理層で被覆された部分と被覆されない部分との境界部分及びその近傍、又は、該境界部分及びその近傍並びに前記被覆されない部分は、その被成形面に関しシボ加工が施されることにより、微細な表面凹凸状をなしており、
前記表面処理層で被覆された部分と、前記被覆されない表面凹凸状の部分との光沢差(グロス)が、0.5以下であることを特徴とするウエザーストリップ。
【0009】
手段1によれば、弾性部材の表面のうち、少なくとも外部から視認可能な領域において、表面処理層で被覆されない部分が存在することで、全体として表面処理層を形成するための表面処理剤の使用量の低減を図ることができる。そのため、作業時間の短縮化及びコストの抑制を図ることができる。また、弾性部材の表面のうち、少なくとも前記表面処理層で被覆された部分と被覆されない部分との境界部分及びその近傍、又は、該境界部分及びその近傍並びに前記被覆されない部分は、微細な表面凹凸状をなしている。ここで、表面処理層で被覆された部分は、当該表面処理層の存在によって光沢等が鈍くなる傾向にあるのだが、境界部分及びその近傍、又は、該境界部分及びその近傍並びに前記被覆されない部分が微細な表面凹凸状をなしていることから、当該部分も凹凸状をなしていない場合に比べて光沢等が鈍くなる。従って、両者の光沢差等が少なくなり、境目が区別しにくくなる。その結果、光沢等の相違が目立ってしまうことによる、外観品質の低下を抑制することができる。
【0013】
また、弾性部材が型成形により形成される。該型成形に際して、予め表面凹凸状にされた成形型の成形面が、成形される被成形面に転写されることでシボ加工が施されることにより、被成形面が表面凹凸状となる。このため、比較的容易に表面凹凸状とすることができるとともに、上述した作用効果に関し各ウエザーストリップ間での製品毎のばらつきが抑えられる。
【0015】
また、光沢差(グロス)が、0.5以下であることから、光沢の相違が目立ってしまうことによる、外観品質の低下をより確実に抑制することができる。
【0016】
手段2.前記表面処理層で被覆された部分と、前記被覆されない表面凹凸状の部分との色差(CIE L*a*b*表色系)が、1.5以下であることを特徴とする手段1に記載のウエザーストリップ。
【0017】
手段2によれば、色差の相違が目立ってしまうことによる、外観品質の低下をより確実に抑制することができる。
【0018】
手段3.前記表面処理層で被覆された部分と被覆されない部分との境界部分では、前記表面処理層の膜厚が前記被覆されない部分に近づくほど薄いことを特徴とする手段1又は2に記載のウエザーストリップ。
【0019】
手段3によれば、前記境界部分では、表面処理層の膜厚が、表面処理層で被覆されない部分に近づくほど薄いため、いわゆるグラデーション作用により、より一層境界が区別しにくいものとなり、光沢等の相違が目立ってしまうことによる、外観品質の低下をより一層抑制することができる。
【0020】
手段4.前記表面処理層で被覆された部分と被覆されない部分との境界部分では、前記表面凹凸状の度合いが前記被覆されない部分に近づくほど粗となっていることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載のウエザーストリップ。
【0021】
手段4によれば、前記境界部分では、弾性部材の表面凹凸状の度合いが前記被覆されない部分に近づくほど粗となっているため、いわゆるグラデーション作用により、より一層境界が区別しにくいものとなり、光沢等の相違が目立ってしまうことによる、外観品質の低下をより一層抑制することができる。
【0022】
手段5.手段1乃至4のいずれかにおいて、前記ウエザーストリップは、ドアミラーブラケットであること。特に、ドアミラーブラケットの具体例としては、「インサートと、インサートを被覆する弾性部材とを備えており、該弾性部材は、ドアガラスを収容しうる断面略コ字状の基部と、基部の先端から延びる一対のリップを備えていること」が挙げられる。
【0023】
手段6.少なくとも一部に微細な凹凸加工の施された成形面を有する金型を用いて弾性部材を成形する成形工程と、
弾性部材の表面のうち少なくとも摺動体(例えばドアガラス)が摺動しうる部位を含む部分に表面処理剤を塗布し、表面処理層を形成する一方で、弾性部材の表面の視認可能な部位のうち、表面処理層の形成されていない部分との境界部分及びその近傍、又は、前記境界部分及びその近傍並びに表面処理層の形成されていない部分が、微細な凹凸状となって露出せしめる塗布形成工程とを備えたことを特徴とするウエザーストリップの製造方法。
【0024】
手段6によれば、少なくとも一部に微細な凹凸加工の施された成形面を有する金型が用いられることで弾性部材が成形される。弾性部材のうち、前記微細な凹凸可能の施された成形面に対応する面は、微細な表面凹凸状となる。また、弾性部材の表面のうち少なくとも摺動体(例えばドアガラス)が摺動しうる部位を含む部分に表面処理剤が塗布されることで、表面処理層が形成される。このとき、弾性部材の表面の視認可能な部位のうち、表面処理層の形成されていない部分との境界部分及びその近傍、又は、前記境界部分及びその近傍並びに表面処理層の形成されていない部分が、微細な凹凸状となって露出させられる。ここで、表面処理層で被覆された部分は、当該表面処理層の存在によって光沢等が鈍くなる傾向にあるのだが、境界部分及びその近傍、又は、該境界部分及びその近傍並びに前記表面処理層の形成されていない部分が微細な凹凸状となって露出していることから、当該部分も凹凸状をなしていない場合に比べて光沢等が鈍くなる。従って、両者の光沢差等が少なくなり、境目が区別しにくくなる。その結果、光沢等の相違が目立ってしまうことによる、外観品質の低下を抑制することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、一実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、ウエザーストリップとしてのミラーブラケット1は、自動車のフロントドア2に取付けられる。ミラーブラケット1には、図示しないドアミラーが取付けられる。図2(a),(b)に示すように、ミラーブラケット1は、金属製のブラケット基材3を備えている。該ブラケット基材3の下部は、ドアパネル4に固定するための取付け部となっている。また、その上部は、略三角形状の本体部5のインサートとして機能している。すなわち、ブラケット基材3の上部は弾性部材6で被覆されており、これらブラケット基材3の上部及び弾性部材6により本体部5が構成されている。
【0026】
該弾性部材6は、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合体)からなる型成形体である。弾性部材6は、断面略コ字状の基部7と該基部の先端から延びる一対のリップ8とを備えている。弾性部材6の内側は、収容部9となっており、前記リップ8側から収容部9内にドアガラス10の端縁部が収容されるようになっている。そして、ドアガラス10の端縁部の車内側及び車外側が、それぞれリップ8でシールされるようになっている。収容部9の内壁とリップ8とは、ドアガラス10の摺動を円滑にするための表面処理層12で被覆されている。表面処理層12で被覆された面は、一般に、型成形されたEPDMの鏡面仕上げ面に比べ、光沢が低く、色彩が若干異なっている。なお、本実施の形態の表面処理層12を構成する表面処理剤としては、プライマー内添タイプのウレタン塗料が採用されている。
【0027】
また、本体部5は、その車外側及び車内側からそれぞれ略三角形状のカバー13等が取付けられることによって部分的に覆われている。このため、通常、ミラーブラケット1が自動車に組付けられた状態において外観が見える部分(以下、「視認部」という)というのは、前記カバー13よりもドアガラス側のリップ8の外壁14と、リップ8とは反対側の基部7の外壁の一部である背部15とである。
【0028】
ここで、図3に従って、表面処理層12の被覆範囲について、さらに詳しく説明する。本実施の形態では、収容部9の内壁、並びに、リップ8の内壁16及び外壁14が、所定膜厚の表面処理層12で被覆されている。これに対し、基部7の外壁は被覆されていない。また、弾性部材6上部のリップ8の外壁14と背部15との交わる部分及びその近傍においては、背部15側ほど表面処理層12の被覆膜厚がグラデーション状に薄くなっている。すなわち、視認部のうち表面処理層12で被覆された部分αと被覆されない部分βとの境界部分γにおいては、表面処理層12の被覆膜厚が、前記被覆されていない部分βに近づくに従って薄くなっている。
【0029】
また、本実施の形態では、弾性部材6の外壁(基部7の外壁及びリップ8の外壁14)には、表面処理層12の光沢及び色彩に近づけるための表面凹凸加工としての梨地状のシボ加工が予め施されている。かかるシボ加工に際しては、成形面がブラスト処理された金型が用いられている。より詳しくは、弾性部材6を成形するための金型のうち、弾性部材6の外壁を成形する複数の金型の成形面には、ブラスト処理(ショットブラスト SB#80)が施されている。
【0030】
次に、上記のように構成されてなるミラーブラケット1の製造方法について説明する。まず、金型の所定位置に、ブラケット基材3をセットする。そして、EPDMをキャビティに充填し、硬化させた後、成形された型成形体(つまりは弾性部材6)が型から取り出される。このとき得られる弾性部材6の外壁は、上述したように、表面梨地状のシボ加工が施されていることとなる。
【0031】
次に、図示しないスプレーガンのノズルをリップ8側から収容部9内へと差し込む。そして、スプレーガンから前記表面処理剤を噴出し、収容部9の内壁及びリップ8の内壁16に対し表面処理剤をほぼ均一に塗布する。さらに、スプレーガンのノズルを収容部9から外に出し、今度はリップ8の外壁14に対し表面処理剤を塗布する。このとき、弾性部材6上部のリップ8の外壁14と背部15との交わる部分(γ)においては、背部15側ほどスプレーガンの距離を遠ざけることによって、背部15側ほど塗布量の少ない、グラデーション塗装が施される。これにより、上述したミラーブラケット1が得られる。
【0032】
ここで、上記のように製造されたミラーブラケット1の光沢及び色彩について説明する。まず、比較例として、シボ加工を施すことなく上記と同様に弾性部材を成形し、その表面の一部に上記と同様の表面処理層を形成した。そして、かかる表面処理層で被覆された部分と、被覆されない部分との光沢差(グロス)を測定した。その結果、光沢差は「5.9」であり、光沢の相違が著しく目立つものとなった。これに対し、本実施の形態の弾性部材6にあっては、表面処理層12で被覆された部分と、被覆されない部分との光沢差は、「0.4」と非常に小さく、光沢の相違がほとんどなかった。
【0033】
また、前記比較例の表面処理層で被覆された部分と、被覆されない部分との色差ΔE(CIE L*a*b*表色系)を測定した。その結果、色差ΔEは「3.0」であり、色彩の相違が目立つものとなった。これに対し、本実施の形態の弾性部材6にあっては、表面処理層12で被覆された部分と、被覆されない部分との色差ΔEは、「1.2」で非常に小さく、色彩の相違がほとんどなかった。
【0034】
以上詳述したように、本実施の形態によれば、本体部5(弾性部材6)の外壁にシボ加工を施すこととしている。このため、本体部5(弾性部材6)の外壁における表面処理層12で被覆された部分αと表面処理層12で被覆されない部分βとの光沢差及び色差が、シボ加工されていない場合と比較して、非常に小さく、光沢及び色彩の相違をほどんどなくすことができる。従って、表面処理層12で被覆された部分αと被覆されない部分βとの外観上の相違を著しく少なくすることができる。その結果、全面に表面処理層12を設けなくとも外観品質の著しい向上を図ることができる。
【0035】
さらに、リップ8の外壁14と背部15とが交わる部分、すなわち、表面処理層12で被覆される部分αと被覆されない部分βとの境界γに、グラデ−ション塗装を施すこととしている。このため、表面処理層12で被覆された部分αの光沢及び色彩を徐々に被覆されない部分βの光沢及び色彩に近づけることができ、表面処理層12の有無による外観上の相違を一層目立たなくすることができる。
【0036】
加えて、上述したように、本実施の形態では、視認部全体に表面処理剤を塗布したりする必要がない。また、部分的に塗布を行うために、被覆されない部位にマスキングテープ等を貼着して表面処理剤の塗布範囲を限定したりする必要が無い。そのため、製造コストの増大、作業効率の低下を抑制することができる。
【0037】
尚、上記実施の形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。
【0038】
(a)上記実施の形態では、表面凹凸加工として梨地状のシボを施しているが、シボの種類として特に梨地状に限定されるわけではない。また、シボを施すために、金型にブラスト処理が施されているが、ブラスト処理以外で凹凸をつけてもよい。
【0039】
(b)上記実施の形態では、リップ8の外壁14は、所定膜厚の表面処理層12で被覆されているが、前記外壁14のうち、ドアガラス10摺動時に巻き込まれうる範囲、すなわち、リップ8の先端近傍のみを所定膜厚で被覆し、外壁14の先端近傍部分以外の表面処理層12の膜厚がリップ8の先端から遠ざかるほど薄くなるように、グラデーション状に変化させてもよい。
【0040】
(c)上記実施の形態では、表面処理層12で被覆される部分αと被覆されない部分βとの境界γにおいて、表面処理層12の被覆膜厚をグラデーション状に変化させることとしているが、このようなグラデーション状の変化を付与しない構成としてもよい。
【0041】
(d)表面処理層12で被覆される部分αと被覆されない部分βの境界において、表面凹凸加工の度合いをグラデーション状に変化させることで、より一層境界をわかりにくくすることとしてもよい。
【0042】
(e)上記実施の形態では、ウエザーストリップとして、ミラーブラケット1を具体例として説明したが、本技術をガラスランやアウターウエザーストリップやインナーウエザーストリップ等の他のウエザーストリップに適用しても差し支えない。
【0043】
(f)弾性部材6の材質は、必ずしもEPDMに限定されず、他のゴムやTPO等の樹脂でもよい。
【0044】
(g)表面処理剤を塗布するために、必ずしもスプレーガンを採用する必要はなく、刷毛等の他の塗布手段を採用してもよい。
【0045】
(h)表面処理剤としては、上記実施の形態で例示したプライマー内添タイプのウレタン塗料以外にも、単なるウレタン塗料、シリコン塗料等を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施の形態においてドアミラーブラケットの配設位置を説明するべく、ドアを内側から見た状態を示す正面図である。
【図2】(a)はドアミラーブラケットの正面図であり、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図3】表面処理層で被覆される部分と被覆されない部分とを説明するためのドアミラーブラケットの正面図である。
【符号の説明】
1…ウエザーストリップとしてのミラーブラケット、3…インサートを構成するブラケット基材、5…本体部、6…弾性部材、7…基部、8…リップ、12…表面処理層。
Claims (3)
- シール用のリップを備えた弾性部材の表面のうち、少なくとも外部から視認可能な領域において、表面処理層で被覆された部分と被覆されない部分とを有してなるウエザーストリップであって、
前記弾性部材は、型成形により形成されたものであり、
前記弾性部材の表面のうち、少なくとも前記表面処理層で被覆された部分と被覆されない部分との境界部分及びその近傍、又は、該境界部分及びその近傍並びに前記被覆されない部分は、その被成形面に関しシボ加工が施されることにより、微細な表面凹凸状をなしており、
前記表面処理層で被覆された部分と、前記被覆されない表面凹凸状の部分との光沢差(グロス)が、0.5以下であることを特徴とするウエザーストリップ。 - 前記表面処理層で被覆された部分と、前記被覆されない表面凹凸状の部分との色差(CIE L*a*b*表色系)が、1.5以下であることを特徴とする請求項1に記載のウエザーストリップ。
- 前記表面処理層で被覆された部分と被覆されない部分との境界部分では、前記表面処理層の膜厚が前記被覆されない部分に近づくほど薄いことを特徴とする請求項1又は2に記載のウエザーストリップ。
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