JP3860106B2 - 万年筆用ペン先 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は万年筆用ペン先に関し、更には太い筆跡と細い筆跡が筆記可能であり、楽譜用万年筆に適したペン先に関する。
【0002】
【従来の技術】
万年筆用のペン先は、金合金板やステンレス板にて、先端部が三角形状に成形されるとともに、全体がやや円弧状に成形される。そして,三角形状部分の先端から軸線方向に所定長さのインキ切り溝が形成されている。このペン先は,インキ溝や櫛歯状のインキ貯留部などが形成された略円筒状のペン芯と重ね合わせた状態で万年筆の先口に固定され、ペン芯のインキ溝からペン先のインキ切り溝にインキが供給される。ここで、この万年筆用のペン先は、筆記時において、筆圧により少し撓むとともに、インキ切り溝が少し広がる。そして、筆圧が解除されるとペン先が復元するが、このペン先の撓み・復元の動きがポンプ作用の働きをしてインキがペン先のインキ切り溝にインキが供給される。
【0003】
かかる万年筆で例えば音楽の楽譜を筆記する場合において、一本の万年筆で太い筆跡と細い筆跡が筆記可能であれば便利であり、実際に楽譜用万年筆が発売されている。図4は従来から知られている楽譜用万年筆を示すが、ペン先10先端の三角形状部分11の先端裏側にはポイントが形成されている。ここで、このペン先10の側面形状は、図4(B)に示すように、通常の万年筆用ペン先と同じである。しかし、図4(A)に示すように、三角形状部分11の先端縁11aは幅広であり、従って、ポイント14の横幅Yも幅広になっている。そして、太い筆跡Lで筆記するときは、ポイント14を紙面に当て、図5(A)に示すように、ペン先10の上面に対して直交するように万年筆を移動させ、細い筆跡Sで筆記するときは、図5(B)に示すように、ぺん先10の上面に平行方向に万年筆を移動させる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、かかる万年筆によって太い筆跡で正確に筆記しようとすると、図6(A)に示すように、三角形状部分の先端縁11aの幅広のポイント14を横方向に全て紙面に接触させる必要がある。しかしながら、万年筆で筆記するときは、通常の人は、ペン先の上面がよく見えるように、つまり、ペン先の上面の視線に対する投影面積が大きくなるように、ペン先の上面を紙面に対してやや傾けて筆記する傾向がある。従って、実際には、図6(B)に示すように、ペン先がやや傾くので幅広のポイント14の横方向が完全には紙面に密着しない。このとき、横方向が幅広であるので、インキ切り溝13のインキ出端13aが紙面から大きく離れる。このため、太い筆跡が正確に描けず、細くなったり、かすれたりする不具合がある。
なお、かかる万年筆で細い筆跡で筆記するときは、万年筆をぺん先の上面に平行方向に移動させるので、ぺん先の上面が紙面に対してやや傾いていても正確に描くことができる。
【0005】
そこで本発明は、ペン先の上面を紙面に対してやや傾けて筆記しても、太い筆跡と細い筆跡を正確に描くことができ、ことに楽譜用万年筆に適したペン先を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、請求項1の発明は、先端部が金属板により三角形状に成形されるとともにこの三角形状部分の先端裏側に略楕円半球状のポイントが形成され、該ポイントの軸線方向の長さXが先端部の横幅Yよりも大きく、三角形状部分の先端から軸線方向にインキ切り溝が形成された万年筆用ペン先において、前記三角形状部分は複数枚の金属板を重ね合わせることにより形成し、金属板の先端を、上側ほど前方にせり出すことによりポイントの軸線方向の長さXを増大させるとともに、金属板の境界線をポイント表面に露出させ、かつ、XをYの3倍以上とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に、図面に基づいて本発明の実施の形態を具体的に説明する。図1は本発明実施例の平面図と側面図を示すが,図1において,ペン先10は、金合金板やステンレス板で成形されたであり、先端部分は三角形状に形成され三角形状部分11であり、三角形状部分11に断面が円弧状の胴部12が一体に連設されている。そして、三角形状部分11の先端から軸線方向に所定長さのインキ切り溝13が形成されている。また、インキ切り溝13で切り割られた三角形状部分11の先端裏側にはポイント14が形成されている。
【0008】
ここで、三角形状部分11は、複数枚、例えば3枚の金属板を重ね合わせて形成されている。3枚の金属板は上側ほど僅かにせり出ており、従って、三角形状部分11の先端縁11aは肉厚であるとともに傾斜状になっている。この肉厚で傾斜状の部分にポイント14が形成されるので、ポイント14の形状は略楕円半球状となり、ポイント14の軸線方向の長さXは先端部の横幅Yよりも大きくなる。そして、図2(B)に示すように、金属板の境界線はポイント14の表面に露出している。また、XはYの3倍以上の長さにする。
【0009】
合成樹脂で成形されたペン芯20には、インキ溝や櫛歯状のインキ貯留部などが形成されているが、ぺン先本体10はペン芯20と重ね合わされて万年筆の先口30に固定されている。そして、先口30の接続部に接続された図示略のインキカートリッジ内のインキがペン芯20のインキ溝を通ってペン先10のインキ切り溝13に供給される。
【0010】
しかして、太い筆跡Lで筆記する場合は、ポイント14を紙面に当て、図2(B)に示すように、ぺん先10の上面に平行方向に万年筆を移動させる。従って、ぺん先10の上面が紙面に対してやや傾いても、その傾きにほとんど関係なく、太い筆跡Lを正確に描くことができる。
一方、細い筆跡Sで筆記するときは、図2(A)に示すように、ペン先10の上面に対して直交するように万年筆を移動させる。ここで、ぺん先10の上面が紙面に対して傾かなければ、図3(A)に示すように、ポイント14の全面が紙面に接触するが、実際には、図3(B)に示すように、ぺん先10の上面が紙面に対してやや傾いている。しかし、ポイント14の横幅Yは短いので、ぺん先10の上面が紙面に対してやや傾いていても、インキ切り溝13のインキ出端13aは紙面からあまり離れない。従って、ポイント14と紙面の間にインキが十分に供給され、細い筆跡Sを正確に描くことができる。結局のところ、太い筆跡Lも細い筆跡Sも共に正確に描くことができる。
【0011】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、先端部が金属板により三角形状に成形されるとともにこの三角形状部分の先端裏側に略楕円半球状のポイントが形成され、該ポイントの軸線方向の長さXが先端部の横幅Yよりも大きく、三角形状部分の先端から軸線方向にインキ切り溝が形成された万年筆用ペン先において、前記三角形状部分は複数枚の金属板を重ね合わせることにより形成し、金属板の先端を、上側ほど前方にせり出すことによりポイントの軸線方向の長さXを増大させさせるとともに、金属板の境界線をポイント表面に露出させ、かつ、XをYの3倍以上とするので、ペン先の上面を紙面に対してやや傾けて筆記しても、太い筆跡と細い筆跡を正確に描くことができ、従って楽譜用万年筆に適したペン先とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明実施例の平面図、(B)は側面図である。
【図2】太い筆跡と細い筆跡の描き方の説明図である。
【図3】細い筆跡を描く場合のペン先と紙面の関係説明図である。
【図4】(A)は従来例の平面図、(B)は側面図である。
【図5】従来例の太い筆跡と細い筆跡の描き方の説明図である。
【図6】従来例の太い筆跡を描く場合のペン先と紙面の関係説明図である。
【符号の説明】
10 ペン先
11 三角形状部分
11a 三角形状部分の先端縁
12 胴部
13 インキ切り溝
13a インキ切り溝のインキ出端
14 ポイント
20 ペン芯
30 先口
X ポイントの軸線方向の長さ
Y ポイント先端の横幅
L 太い筆跡
S 細い筆跡

Claims (1)

  1. 先端部が金属板により三角形状に成形されるとともにこの三角形状部分の先端裏側に略楕円半球状のポイントが形成され、該ポイントの軸線方向の長さXが先端部の横幅Yよりも大きく、三角形状部分の先端から軸線方向にインキ切り溝が形成された万年筆用ペン先において、
    前記三角形状部分は複数枚の金属板を重ね合わせることにより形成され、金属板の先端を、上側ほど前方にせり出すことによりポイントの軸線方向の長さXを増大させるとともに、金属板の境界線をポイント表面に露出させ、かつ、XをYの3倍以上としたことを特徴とする万年筆用ペン先。
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