JP3859270B2 - アポトーシス誘導剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、特定のアミノ酸配列を有するペプチドを有効成分として含有するアポトーシス誘導剤に関するものである。さらに詳しくは、この発明は、自己免疫疾患患者の自己反応性リンパ球、癌細胞等を排除するのに有効な、副作用の少ない安全なアポトーシス誘導剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
生物個体を構成する細胞の死滅(細胞死)は、アポトーシス(apoptosis)とネクローシス(necrosis:壊死)の2つに大別される[別冊日経サイエンス、免疫の最前線、第66ページ、日経サイエンス社、1994年]。ネクローシスは、環境の悪化または細胞の物理的障害により惹起される細胞死であり、一方、アポトーシスはこれとは異なり、積極的に制御されている細胞死のことである。
【0003】
近年、このアポトーシスによる細胞死が、生物学および医学等の基礎研究分野、医薬品製造等の工業分野において注目を集めている。その理由は、
▲1▼アポトーシスが個体形成において重要な役割を演じていること、
▲2▼生体内での内的、外的要因による細胞死が多くの場合アポトーシスによるこ
と、
▲3▼エイズそのほかの疾病において、その病因となる体細胞(リンパ系細胞)の
減少にアポトーシスが深く関わっていること、
▲4▼各種の抗癌剤がアポトーシスでの癌細胞破壊を行うこと、および
▲5▼最近の遺伝子研究の進展に伴い、アポトーシスそのものがどのような遺伝子で制御されており、アポトーシスに至る情報がどのようにして伝達されるか
についての知見が蓄積され、細胞生物学上の基本的興味がもたれたこと、
等である[実験医学、第11巻、第17号(増刊)、第11ページ、1993年] 。
【0004】
電子顕微鏡を用いた形態学的観察によれば、アポトーシスによる細胞死では、染色体の凝集、細胞核の断片化、細胞表面の微絨毛の消失、細胞質の凝縮が観察され、アポトーシスにより死滅した細胞は、速やかにマクロファージ等に貧食されて処理されることが明らかにされている。また、染色体DNAの断片化等の生化学的特徴を伴うアポトーシスが観察されることが多いこともよく知られている。
【0005】
アポトーシスとの関連が最も深い生体機能の一つは、免疫系である[別冊日経サイエンス、免疫の最前線、第67ページ、日経サイエンス社、1994年]。免疫系を調節するリンパ球は、数多くの抗原分子と反応できるように多様な抗原レセプターのレパートリーを有しており、この中には、自己抗原に強く反応するものも存在する。自己に強く反応するT細胞またはB細胞が生体内で増殖した場合、自己組織を攻撃するようになり自己免疫疾患に罹患する。そのため、自己に対する免疫反応が抑制される免疫寛容(tolerance)と呼ばれる状態に誘導される必要がある。
【0006】
T細胞が寛容になる機構は、T細胞が分化する場である胸腺において認められることは古くから知られていたが、分化したT細胞が存在する末梢においても免疫寛容が誘導されることが明らかになってきている。免疫寛容に導く機構としては、クローン除去(clonal deletion)とクローン麻痺(clonal anergy)が知られている。これは、自己に強く反応するT細胞またはB細胞が、それぞれ排除または不活性化されることである。クローン除去において、アポトーシスによる細胞死が惹起され、自己反応性リンパ球が排除されているのである。
【0007】
アポトーシスに係わる物質の検索も行なわれている。最もよく知られているものはFasと呼ばれる細胞表面分子である[別冊日経サイエンス、免疫の最前線、第68ページ、日経サイエンス社、1994年]。自己免疫疾患のモデルマウスとして有名なlprマウスでは、リンパ節にlpr細胞[lprは、lymphoproliferation (リンパ球の異常増殖)の略]と呼ばれる特殊なTリンパ球が蓄積し、自己成分に結合する抗体が産生され、さらに、糸球体腎炎等のヒトの全身性自己免疫疾患である全身性エリテマトーデスで見られる疾患が発症するのであるが、この原因がFas分子の欠損によることが示された[ネイチャー(Nature)、第356巻、第314ページ、1992年]。すなわち、lprマウスではFas分子が欠損しているので、Fasを介する刺激が伝達されず、自己反応性リンパ球を含むすべての細胞がクローン除去(アポトーシス)を免れ、これにより自己免疫疾患が発症するのである。Fasを刺激してアポトーシスを惹起するものも明らかにされており、Fasリガンドと呼ばれている[実験医学、第13巻、第16号(増刊)、第51ページ、1995年]。
【0008】
また、多くの抗癌剤が癌細胞に対してアポトーシスを引き起こすことが明らかにされてきた。それらの例として、VP−16、ADM、DNR、CPT、Aca−C、Act−D、COL、SPM、STS、CHX等の抗癌剤が知られ[実験医学、第13巻、第16号(増刊)、第209ページ、1995年]、腫瘍壊死因子(TNF−α)がアポトーシスを惹起することも明らかにされている[実験医学、第13巻、第16号(増刊)、第216ページ、1995年]。
【0009】
以上のような知見は、アポトーシスを誘導することによって、その存在が生体にとって望ましくない細胞、例えば、自己免疫疾患患者の自己反応性リンパ球、アレルギー患者のアレルゲンに感作されたリンパ球、癌細胞等を排除することが可能であることを示しており、そのためにアポトーシス誘導剤の果たす役割が期待されている。
【0010】
一方、ラクトフェリン(lactoferrin 。以下Lfと記載することがある)は、母乳中に極めて多量に含まれている分子量約80,000の鉄結合性糖蛋白質であり、大腸菌、カンジダ菌、クロストリジウム菌、ブドウ球菌等の有害微生物に対して抗菌作用を示すことが知られている[ジャーナル・オブ・ペディアトリクス(Journal of Pediatrics)、第94巻、第1ページ、1979年、およびジャーナル・オブ・デイリー・サイエンス(Journal of Dairy Science)、第67巻、第60ページ、1984年]。
【0011】
また、感染モデル動物におけるLfの効果も報告されており、ザグルスキ(Zagulski)らは、ラットを用い、致死量の大腸菌を投与する24時間前にLfを静脈内に投与した群および無投与群について生存率を比較し、Lfに感染防御作用があることを立証している[ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・パソロジー(British Journal of Experimantal Pathology )、第70巻、第697ページ、1989年]。さらに、ウィルス感染実験においてもLfに感染防御効果があることは知られている[キャンサー・リサーチ(Cancer Research )、第47巻、第4184ページ、1987年]。これらの感染動物で認められた効果は、Lfのin vitro(試験管内)で認められた抗菌作用によるものと考えるよりも、Lfが宿主の免疫力を賦活したためであると考えられている。
【0012】
すなわち、Lfには、抗菌作用の他に免疫賦活作用があると理解されている。このLfの免疫賦活作用を抗癌に応用した例として、ベザウルト(Bezault)らは、癌モデルマウスにLfを静脈内投与し、Lfが癌の成長および転移を抑制する効果を有することを確認しているが、このLfの抗癌作用は、その免疫賦活作用の観点からナチュラル・キラー細胞の活性化作用によるものと考えられている[キャンサー・リサーチ(Cancer Research )、第54巻、第2310ページ、1994年]。
【0013】
なお、疾病の治療剤にラクトフェリンを応用した例として、抗腫瘍剤(特公平5−86932号公報)および抗リウマチ剤(特開平5−186368号公報)が知られている。
また、Lfの分解物については、抗菌性およびチロシナーゼ活性阻害(ヨーロッパ特許公開第438750号)、細胞への病原菌付着防止(特開平3−220130号公報)、抗ウイルス作用(特開平1−233226号公報)等が知られている。
【0014】
さらに、この発明の発明者等は、ラクトフェリンの加水分解物から強い抗菌活性を有するペプチドを単離、またはそれらのペプチドと同一のアミノ酸配列を有するペプチドまたはそれらのペプチドの誘導体を合成し、20個のアミノ酸残基からなる抗菌ペプチド(特開平5−92994号公報)、11個のアミノ酸残基からなる抗菌ペプチド(特開平5−78392号公報)、5個のアミノ酸残基からなる抗菌ペプチド(特開平5−1498296号公報)、3〜6個のアミノ酸残基からなる抗菌ペプチド(特開平5−148295号公報)を、それぞれ既に特許出願した。さらに、ラクトフェリンの加水分解物から得られる特定のアミノ酸配列を有する2種以上のペプチド混合物を有効成分とする非経口用抗腫瘍剤(特開平7−309771号公報)も特許出願している。
【0015】
しかしながら、これらのラクトフェリン由来のペプチドがアポトーシス誘導作用を有することは知られておらず、文献にも記載されていない。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
従来より、抗癌剤をはじめとして種々のアポトーシス誘導物質が見い出されてきたが、それらの多くのものは化学合成品、微生物由来等であるため、長期間使用した場合の副作用の問題等、安全性については必ずしも十分ではなかった。
この発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであって、食品である乳由来のラクトフェリンの加水分解物から得られる特定のアミノ酸配列を有するペプチドがアポトーシスを誘導するという新規な事実に基づき、副作用が少なく安全なアポトーシス誘導剤を提供することを目的としている。
【0017】
【課題を解決するための手段】
この発明は、前記の課題を解決するものとして、ラクトフェリン類の加水分解物由来のペプチド、このペプチドと同一もしくは相同のアミノ酸配列を有するペプチド、これらのペプチドの薬学的に許容される誘導体、これらのペプチドの薬学的に許容される塩類、またはそれらの混合物を有効成分として含有するアポトーシス誘導剤を提供する。
【0018】
また、この発明のアポトーシス誘導剤においては、前記有効成分を製剤1g当たり0.1μg〜100mg含有することを望ましい態様としている。
さらに、有効成分の一つであるペプチドとしては、配列番号1から配列番号31のいずれかに記載されたアミノ酸配列を有するペプチドを例示することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
この発明のアポトーシス誘導剤の有効成分の一つであるペプチドを製造する場合の出発物質として使用するラクトフェリン類は、市販のLf、獣乳または人乳から常法により分離されるLf、これらのLfから常法により鉄を除去したアポラクトフェリン、アポラクトフェリンに常法により鉄、銅、亜鉛、マンガン等の金属を完全にもしくは一部キレートさせた金属飽和もしくは金属部分飽和ラクトフェリン、またはこれらの混合物のいずれであってもよい。
【0020】
この発明のアポトーシス誘導剤の有効成分は、前記ラクトフェリン類の分解物から公知の分離手段によって得られるペプチド、このペプチドと同一のアミノ酸配列、相同なアミノ酸配列を有するペプチド、これらのペプチドの薬学的に許容される誘導体、これらのペプチドの薬学的に許容される塩類、またはこれらの任意の混合物(以下、これらをペプチド類と記載することがある。)であり、同一または相同のペプチド、誘導体および塩類は公知の方法により化学的に合成することもできる。これらのペプチド類は、例えば、特開平5−92994号公報、特開平5−78392号公報、特開平5−148297号公報、特開平5−1498296号公報および特開平5−148295号公報の各発明に記載された方法によって得ることができる。
【0021】
前記の方法によって得られるペプチド類は、次のアミノ酸配列を有するペプチド、その誘導体または塩類を望ましい態様として例示できる。例えば、配列番号1、2および27のアミノ酸配列を有するペプチド、その塩類またはその誘導体(特開平5−78392号公報)、配列番号3、4、5および6のアミノ酸配列を有するペプチド、その塩類またはその誘導体(特開平5−148297号公報)、配列番号7、8、9および31のアミノ酸配列を有するペプチド、その塩類またはその誘導体(特開平5−1498296号公報)、配列番号10から21のアミノ酸配列を有するペプチド、その塩類またはその誘導体(特開平5−148295号公報)、配列番号22から26、28、29および30のアミノ酸配列を有するペプチド、その塩類またはその誘導体(特開平5−92994号公報)である。
【0022】
前記ペプチドの薬学的に許容される塩類としては、塩酸塩、リン酸塩、硫酸塩クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩等の酸付加塩を、前記ペプチドの薬学的に許容される誘導体としては、カルボキシル基をアミド化またはアシル化した誘導体を、それぞれ例示することができる。
この発明のアポトーシス誘導剤は、前記ペプチド類を有効成分として含有する一般的な医薬製剤の形態で実用に供することができる。また、使用目的に応じて各種の剤形を適宜選択可能であり、例えば、ローション剤、エアゾール剤(スプレー)、液状塗布剤、軟膏剤等の外用剤、点眼剤、坐剤、錠剤、丸剤、散剤、カプセル剤、注射剤等を例示することができる。
【0023】
この発明のアポトーシス誘導剤の有効成分の配合量は、特に制限されず、疾患の種類、症状等により適宜選択できるが、望ましい含量は、製剤1g当たり0.1μg〜100mgの範囲である。
また、この発明のアポトーシス誘導剤の有効成分は、食品に由来する天然物であるから、それらの安全性について問題がないことは明らかである。
【0024】
次に試験例を示してこの発明のアポトーシス誘導剤の作用効果について詳しく説明する。
試験例1
この試験は、ラクトフェリン類の加水分解物に由来するペプチドが、ヒト白血病細胞株であるTHP−1細胞に対してアポトーシスを誘導するか否かを調べるために行なった。
(1)試料の調製
参考例2と同一の方法により調製したラクトフェリン類の加水分解物に由来するペプチド(試料1)を、5%ウシ胎児血清および2mMグルタミンを含むRPMI−1640培養液(大日本製薬社製)に表1の各種濃度で溶解した。
(2)試験方法
THP−1細胞(大日本製薬より購入)を24穴カルチャープレート(ファルコン社製)に1穴当たり5×105 個ずつ蒔き、各種濃度の試料を含む培養液
(1ml)で培養し、15時間後、細胞を核染色した。透過型顕微鏡を用い、150個の細胞のうちアポトーシスで死滅した細胞数を計数し、アポトーシスで死滅した細胞の割合を求めた。
(3)試験結果
この試験の結果は表1に示すとおりである。12.5〜100μg/mlの濃度範囲において、用量依存的にアポトーシスが誘導され、100μg/mlの濃度では77%の細胞がアポトーシスで死滅した。すなわち、参考例2と同一の方法により調製したラクトフェリン類の加水分解物に由来するペプチドには、白血病細胞のアポトーシスを誘導する活性があることが認められた。なお、他のLfに由来するペプチドについても試験を行ったが、ほぼ同様の結果が得られた。
【0025】
【表1】
【0026】
参考例1
ウシ・ラクトフェリン(以下bLfと記載することがある)を出発原料として使用し、ラクトフェリン類の加水分解物(以下bLf−Hyと記載することがある)を、次の方法により調製した。
市販のbLf(ミライ社製)500gを、精製水9.5lに溶解し、得られた溶液に塩酸を添加してpHを3.0に調整し、のち市販の豚ペプシン(和光純薬社製)を10g添加し、37℃で6時間加水分解した。次に6規定の水酸化ナトリウムを添加してpHを7.0に調整し、80℃で10分間加熱して酵素を失活させ、室温に冷却し、セライト濾過し、濾液を凍結乾燥し、粉末状のLf加水分解物約470gを得た。
参考例2
市販のbLf(シグマ社製)50mgを精製水0.9mlに溶解し、0.1規定の塩酸を添加してpHを2.5に調整し、のち市販のブタペプシン(シグマ社製)1mgを添加し、37℃で6時間加水分解した。次いで0.1規定の水酸化ナトリウムを添加してpHを7.0に調整し、80℃で10分間加熱して酵素を失活させ、室温に冷却し、15,000rpmで30分間遠心分離し、透明な上清を得た。この上清100μlをTSKゲルODS−120T(東ソー社製)を用いた高速液体クロマトグラフィーにかけ、0.8ml/分の流速で試料注入後10分間0.05%TFA(トリフルオロ酢酸)を含む20%アセトニトリルで溶出し、のち30分間0.05%TFAを含む20〜60%のアセトニトリルのグラジエントで溶出し、24〜25分の間に溶出する画分を集め、真空乾燥したこの乾燥物を2%(W/V)の濃度で精製水に溶解し、再度TSKゲルODS−120T(東ソ−社製)を用いた高速液体クロマトグラフィーにかけ、0.8ml/分の流速で試料注入後10分間0.05%TFAを含む24%アセトニトリルで溶出し、のち30分間0.05%TFAを含む24〜32%のアセトニトリルのグラジエントで溶出し、33.5〜35.5分の間に溶出する画分を集めた上記の操作を25回反復し、真空乾燥し、ペプチド約1.5mgを得た。
【0027】
上記のペプチドを6N塩酸で加水分解し、アミノ酸分析計を用いて常法によりアミノ酸組成を分析した。同一の試料を気相シークェンサー(アプライド・バイオシステムズ社製)を用いて25回のエドマン分解を行ない、25個のアミノ酸残基の配列を決定した。またDTNB[5,5−ジチオ−ビス(2−ニトロベンゾイック・アシド)]を用いたジスルフィド結合分析法[アナリティカル・バイオケミストリー(Analytical Biochemistry )、第67巻、第493頁、1975年]によりジスルフィド結合が存在することを確認した。
【0028】
その結果、このペプチドは、25個のアミノ酸残基からなり、3番目と20番目のシステイン残基がジスルフィド結合し、3番目のシステイン残基からN−末端側に2個のアミノ酸残基が、20番目のシステイン残基からC−末端側に5個のアミノ酸がそれぞれ結合した、配列番号26に記載のアミノ酸配列を有していることが確認された。
参考例3
ペプチド自動合成装置(ファルマシアLKBバイオテクノロジ−社製。LKBBiolynx4170)を用い、シェパ−ド等による固相ペプチド合成法[ジャ−ナル・オブ・ケミカル・ソサイエティ−・パ−キンI(Journal of
Chemical Society Perkin I)、第538頁、1981年]に基づいてペプチドを次のようにして合成した。
【0029】
アミン官能基を9−フルオレニルメトキシカルボニル基で保護したアミノ酸
[以下Fmoc−アミノ酸またはFmoc−固有のアミノ酸の名称(例えば、Fmoc−アスパラギン)と記載することがある]に、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミドを添加して所望のアミノ酸の無水物を生成させ、このFmoc−アミノ酸無水物を合成に用いた。ペプチド鎖を製造するためにC−末端のアスパラギン残基に相当するFmoc−アスパラギン無水物を、そのカルボキシル基を介し、ジメチルアミノピリジンを触媒としてウルトロシンA樹脂(ファルマシアLKBバイオテクノロジ−社製)に固定する。次いでこの樹脂をピペリジンを含むジメチルホルムアミドで洗浄し、C−末端アミノ酸のアミン官能基の保護基を除去する。のちアミノ酸配列のC−末端から2番目に相当するFmoc−アルギニン(Pmc:2,2,5,7,8-Pentamethyl-chroman-6-sulphonyl 基)無水物を前記C−末端アミノ酸残基を介して樹脂に固定されたアスパラギンの脱保護アミン官能基にカップリングさせた。以下同様にして順次グルタミン、トリプトファン、グルタミン、およびフェニルアラニンを固定した。全部のアミノ酸のカップリングが終了し、所望のアミノ酸配列のペプチド鎖が形成された後、94%TFA、5%フェノール、および1%エタンジオールからなる溶媒で保護基の除去およびペプチドの脱離を行ない、高速液体クロマトグラフイーによりペプチドを精製し、この溶液を濃縮し、乾燥し、ペプチド粉末を得た。
【0030】
前記のペプチドについてアミノ酸分析計を用いて常法によりアミノ酸組成を分析し、配列番号10に記載のアミノ酸配列を有することを確認した。
【0031】
【実施例】
次に実施例を示してこの発明をさらに具体的に説明するが、この発明は以下の例に限定されるものでない。
実施例1
ラクトフェリン加水分解物から得られたペプチド
(参考例2と同一の方法により製造) 50(mg)
結晶セルロース 170
コーンスターチ 66
タルク 11
ステアリン酸マグネシウム 3
1錠当り前記の割合の各原料を常法により均一に混合し、造粒し、乾燥し、打錠し、錠剤を得た。なお、ラクトフェリン加水分解物から得られたペプチド以外の原料はいずれも市販品を用いた。
実施例2
ラクトフェリン加水分解物から得られたペプチド
(参考例2と同一の方法により製造) 55(g)
結晶セルロース 412
コーンスターチ 632
前記各材料を均一に混合し、常法により散剤1000袋を調製した。なお、ラクトフェリンの加水分解物から得られたペプチド以外の原料はいずれも市販品を用いた。
実施例3
ラクトフェリン加水分解物に由来する合成ペプチド
(参考例3と同一の方法により製造) 10(mg)
乳糖 120
結晶セルロース 42
カルボキシメチルセルロース 10
タルク 15
ステアリン酸マグネシウム 3
1錠当り前記の割合の各原料を、常法により均一に混合し、カプセル充填機を用いてカプセル剤を調製した。なお、ラクトフェリン加水分解物に由来する合成ペプチド以外の原料はいずれも市販品を用いた。
実施例4
ラクトフェリン加水分解物に由来する合成ペプチド
(参考例3と同一の方法により製造) 10(mg)
プロピレングリコール 500
リン酸水素二ナトリウム 10
ホウ酸 1300
塩化ナトリウム 900
前記の割合の割合の各原料を精製水100mlに溶解し、滅菌フィルタ−を通し、点眼剤を調製した。なお、ラクトフェリン加水分解物に由来する合成ペプチド以外の原料はいずれも市販品を用いた。
【0032】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この発明によって、食品である乳に由来のペプチド類を有効成分とするため、副作用の少ないアポトーシス誘導剤が提供される。これによって、自己免疫疾患、アレルギー性疾患、癌性疾患等の安全かつ有効な治療が可能となる。
【0033】
【配列表】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
Claims (2)
- 配列番号26に記載のアミノ酸配列を有するペプチド、このペプチドのカルボキシル基をアミド化またはアシル化した誘導体、このペプチドの薬学的に許容される塩類、またはこれらの混合物を有効成分として含有する自己免疫疾患またはアレルギー性疾患治療用のアポトーシス誘導剤。
- 有効成分を、製剤1g当たり0.01μg〜100mgする請求項1のアポトーシス誘導剤。
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