JP3677054B2 - ヒトt細胞白血病ウィルス感染・増殖抑制剤 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ラクトフェリン、トランスフェリン、オボトランスフェリン、ラクトフェリンのペプチド修飾物、ラクトフェリンのポリアミン修飾物、ラクトフェリンのトリプシン分解物、ラクトフェリンのペプシン分解物およびラクトフェリンの酸加水分解物よりなる群から選択される少なくとも1種を有効成分とする、ヒトT細胞白血病ウィルスの感染・増殖抑制剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヒトT細胞白血病ウィルス(HTLV)は、成人性T細胞白血病(ATL)と呼ばれる特異な白血病を発症させる。この白血病は、九州や四国など日本の西南部において40歳以上の成人に多発している予後不良の疾患であり、ヘルパーTリンパ球の腫瘍である。ATLの発症は、そのウイルスキャリアーのうち1000〜2000人に1人であると言われているが、地域によっては成人の40〜50%がキャリアーであることも珍しくない。日本では現在約100万人のHTLVキャリアーがいると言われており、日本の他、カリブ海沿岸やアフリカにおいて多発地帯が見られる。HTLVの感染経路は、母乳による母子感染、性交渉による夫から妻への感染、輸血による感染などが考えられている。感染予防の方法としては、母親がキャリアーの場合人工乳による保育を行うなどの処置がとられているが、これまで特に有効な予防法や治療法は確立されていない。
現在、ウィルスに対する化学療法剤が盛んに研究されている。しかし、ウィルスは宿主の細胞内で増殖し、その増殖のための機能のほとんどを細胞に依存しているために、ウィルスの増殖を抑制する化学物質の多くは宿主の細胞に対しても毒性を示すという問題がある。
これに対して、ウィルスの感染や増殖を抑制する手段の一つに吸着阻害剤を用いる方法がある。これは感染の最も初期の段階であるウィルスの標的細胞への吸着を阻害することにより個体にウィルスを感染させない、あるいは生体内でウィルスの伝播を抑えることによりウィルスの増殖を抑制するものである。このような方法を採用するためには、個々のウイルスに特異的な吸着阻害剤を見出す必要がある。
これまで、HTLVに対する吸着阻害剤を用いて感染・増殖を抑制したという報告はない。
【0003】
【本発明が解決しようとしている課題】
本発明は、HTLVによる感染や増殖を効率よく阻止することを目的としてなされたものである。本発明者らは、ラクトフェリンやトランスフェリンなど鉄結合性のたんぱく質が、サイトメガロウィルス(ヘルペスウィルス科)、インフルエンザウィルス(オルソミクソウィルス科)、ヒト免疫不全ウィルス(レトロウィルス科)の吸着阻害剤として作用することを見出した(特開平2−233619、特願平4− 220635)。また、特開平1−233226にも鉄結合性の乳たんぱく質を有効成分とする抗ウィルス剤について記載されており,単純ヘルペスウィルス(ヘルペスウィルス科),サイトメガロウィルス,ラブドウィルス(ラブドウィルス科)に対する抗ウィルス効果が例示されている。
しかし,HTLVに対する感染防御効果についてはこれまで報告がなく、同じレトロウィルス科のウィルスであっても、ヒト免疫不全ウィルスの場合は、その感染メカニズムが分子レベルで解明されており、その吸着阻害剤をスクリーニングする上で有効な情報が明らかとなっている。一方、HTLVの場合はこの様な感染メカニズムの解明が十分でなく、ヒト免疫不全ウィルスの場合の様にその感染メカニズムに基づいてHTLVの吸着阻害剤をデザインし、スクリーニングすることはできなかった。
本発明者らは、再現性のよいHTLVウィルス感染判定系を用い、種々の天然成分のスクリーニングを行った結果、脊椎動物由来の鉄結合性たんぱく質その化学修飾物あるいは分解物にHTLV感染・増殖抑制作用が存在することを見出して本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、ラクトフェリン、トランスフェリン、オボトランスフェリン、ラクトフェリンのペプチド修飾物、ラクトフェリンのポリアミン修飾物、ラクトフェリンのトリプシン分解物、ラクトフェリンのペプシン分解物およびラクトフェリンの酸加水分解物よりなる群から選択される少なくとも1種を有効成分とする、ヒトT細胞白血病ウィルスの感染・増殖抑制剤を提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ラクトフェリン、トランスフェリン、オボトランスフェリン、ラクトフェリンのペプチド修飾物、ラクトフェリンのポリアミン修飾物、ラクトフェリンのトリプシン分解物、ラクトフェリンのペプシン分解物およびラクトフェリンの酸加水分解物よりなる群から選択される少なくとも1種を有効成分とするHTLVの感染および増殖抑制剤に関する。
本発明の鉄結合性たんぱく質としては、ラクトフェリン、トランスフェリン、オボトランスフェリンを用いることができる。ラクトフェリンは哺乳類の乳汁や分泌液から、トランスフェリンは動物血液や組織等から、オボトランスフェリンは鳥類の卵等から、それぞれ公知の方法によって調製することができる。代表的な鉄結合性たんぱく質であるラクトフェリンは哺乳類の乳から分離されるが、本発明の実施にあたってはどのような種、由来のものでも差し支えない。また必要に応じて、遺伝子組み換えにより生産することもできる。また現在最も安価でかつ容易に入手できるものとしては牛乳より分離したものである。牛乳より分離する場合は、特開昭61−145200号公報に開示された抗ラクトフェリン抗体を使用する方法が採用しうる。
【0005】
オボトランスフェリンはニワトリ卵白中に含まれる分子量77,000〜87,000の糖たんぱく質でラクトフェリンに良く似た鉄結合性のたんぱく質である。オボトランスフェリンを得るためには、公知のクロマトグラフィー等の分離精製が可能である。例えば、カルボキシメチルセルロースによる方法(ギャリアン他「ジャーナル・オブ・フードサイエンス」45巻460頁、1980年)、金属固定化親和クロマトグラフィーを用いる方法(アルーマシキ他「アグリカルチャル バイオロジカル ケミストリー」51巻、2881〜2887頁、1987年)等の方法を採用し得る。またトランスフェリンについても血液等の材料からクロマト操作により回収精製することができる。
また、これらのたんぱく質の分解処理は、トリプシン、ペプシン、パパイン、サーモライシン、サブチリシンンなどのたんぱく質分解酵素によって、あるいは塩酸、硫酸、水酸化ナトリウムなどの化学物質によって行うことができる。
【0006】
例えば、ラクトフェリンを0.025M塩化カルシウムを含む0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH8.2)に1%濃度に溶解し、トリプシンを1:50の割合で加え、37℃で4時間加水分解することによって、ラクトフェリンを限定酵素分解することができる。これを10%酢酸中でゲル濾過することにより、分子量3万および5万の断片を得ることができる(Legrand 等,バイオケミカ エト バイオフィジカ アクタBiochimica et Biophysica Acta , 787巻,90〜96頁,1984年を参照)。また、80mgのラクトフェリンを8mlの水に溶解し、pHを濃塩酸で1.4とした後、1.6mgのペプシンで37℃、6時間加水分解した後、煮沸して酵素を失活させた後、凍結乾燥させてペプシン分解物とすることができる(Tani等,アグリカルチャー バイオロジカル ケミストリ Agric. Biol. Chem. ,54巻,1803〜1810頁,1990年)。さらに、水に5%溶液となるよう溶解したラクトフェリンを濃塩酸でpH2に調整し、これを120℃で15分間加熱することによって、ラクトフェリンの酸加水分解ペプチドを得ることができる(Saito 等,ジャーナル オブ デイリー サイエンスJ. Dairy Sci. ,74巻,3724〜3730頁,1991年)。
【0007】
またラクトフェリンは、特開平2─207100号公報に開示された方法により、ラクトフェリン分子中のアミノ基にアミジン化、グアニジル化などの化学修飾やアルギニン、リジンなどの塩基性アミノ酸を含有するペプチドをペプチド結合させたり、あるいは特開平2─211386号公報に開示された方法によりアミノ基、またはカルボキシル基にスペルミンやスペルミジンなどを導入し修飾され、細胞親和性が向上したものを用いることもできる。
これら鉄結合性たんぱく質あるいはその分解物は、単独で使用してもよいし混合して用いてもよい。例えばウシラクトフェリンおよびヒトラクトフェリンを混合して用いてもよいし、ヒトラクトフェリンとウシラクトフェリン分解物の混合物を使用する場合もある。このようなHTLV感染、増殖防御剤は,様々な形態で投与することができる。経口投与用、注射用、皮膚科用、眼科用、耳鼻科用、膣灌注剤用、口内洗浄用などの用途に、乾燥粉末、錠剤、溶液、ゼリー、クリームなど、種々の形態の製剤とすることができる。また、性交時のHTLV感染予防のため、避妊具等へ塗布することもできる。通常、感染予防、増殖防御のためには成人一人あたり、ラクトフェリンまたはオボトランスフェリンとして1mg〜1000mgを1日1ないし3回投与することができる。また効果・症状により投与量は増減させることができる。
本発明に係る鉄結合性たんぱく質であるラクトフェリン、オボトランスフェリン、トランスフェリンはそれぞれ、乳、卵白、血液に含まれておりその安全性も確認されている。
【0008】
本発明のHTLV感染、増殖防御剤に関し、実施例実験例により詳細に説明する。
【実施例1】
ウシラクトフェリンの調製
ウシラクトフェリンは「ジャーナル・オブ・デイリー・サイエンス」20巻、752〜759頁(1987年)に開示された抗ウシラクトフェリン抗体アフィニティーカラムを用い牛乳より調製した。
脱脂乳を抗ウシラクトフェリンモノクローナル抗体アフィニティーカラムに負荷し、ウシラクトフェリンを吸着させ、次いでpH7.3のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で十分洗浄した。その後、0.5M食塩を含むpH7.3のPBSで洗浄し、さらに0.2M酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.7、0.15M食塩を含む)でカラムに吸着したラクトフェリンを溶出した。溶出後pHを中性付近に調整し、脱イオン水に対して3日間透析した後凍結乾燥し、ラクトフェリンを得た。得られたウシラクトフェリンは電気泳動により純度を確認した。
【0009】
【実施例2】
ヒトラクトフェリンの調製
ヒトラクトフェリンはヘパリン─セファロースCL6Bカラムを用い、人乳より調製した。
脱脂人乳をヘパリン─セファロースCL6Bカラムに負荷し、ヒトラクトフェリンを吸着させ、次いでpH7.3の0.01Mリン酸緩衝液で十分洗浄した。その後、1.0M食塩を含むpH7.3の0.01Mリン酸緩衝液でカラムに吸着したラクトフェリンを溶出した。溶出後pHを中性付近に調整し、脱イオン水に対して3日間透析した後凍結乾燥し、ラクトフェリンを得た。得られたヒトラクトフェリンは電気泳動により純度を確認した。
【0010】
【実施例3】
オボトランスフェリンの調製
卵白に硫安を2.5Mとなるように加えて、たんぱく質を沈殿させた。遠心により沈殿を集め、pH6.0の0.01Mリン酸緩衝液に再溶解させ、ジエチルアミノエチルセルロースカラムに負荷した。卵白中のオボトランスフェリンをカラムに吸着させた後、pH6.0の0.01Mリン酸緩衝液で洗浄しついで、0.1Mの食塩を含むpH6.0のリン酸緩衝液でオボトランスフェリンを溶出した。溶出後pHを中性付近に調整し、脱イオン水に対して3日間透析した後凍結乾燥し、オボトランスフェリンを得た。得られたオボトランスフェリンは電気泳動により純度を確認した。
【0011】
【実施例4】
HTLV感染、増殖抑制剤の製造
本実施例においては、上記実施例1〜3の方法により得ることのできた鉄結合性たんぱく質の注射製剤の生産例を示す。
上記組成をpH7.0の0.01MのPBSで溶解し、全量を20mlに調整し、滅菌後、バイアル瓶に2mlずつ分注し、凍結乾燥密封した。
上記組成を注射用生理食塩水に溶解し、全量を20mlに調整し、滅菌後、バイアル瓶に2mlずつ分注し、凍結乾燥密封した。
上記組成をpH7.0の0.01MのPBSで溶解し、全量を20mlに調整し、滅菌後、バイアル瓶に2mlずつ分注し、凍結乾燥密封した。
上記組成を注射用生理食塩水に溶解し、全量を20mlに調整し、滅菌後、バイアル瓶に2mlずつ分注し、凍結乾燥密封した。
上記組成を注射用生理食塩水に溶解し、全量を20mlに調整し、滅菌後、バイアル瓶に2mlずつ分注し、凍結乾燥密封した。
上記組成をpH7.0の0.01MのPBSで溶解し、全量を20mlに調整し、滅菌後、バイアル瓶に2mlずつ分注し、凍結乾燥密封した。
【0012】
【実施例5】
ラクトフェリン分解物の調製
トリプシン処理、ペプシン処理および酸処理によるラクトフェリンの分解をおこなった。
(1)トリプシン処理
ラクトフェリン100mgを10mlの25mM塩化カルシウムを含む0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH8.2)に溶解し、トリプシン(シグマ社)2mgを加えて37℃で4時間インキュベートした。トリプシンは2倍量の大豆トリプシンインヒビターで不活性化した後、10%酢酸で平衡化したバイオゲルP−30(バイオラド社)による分子ふるいクロマトグラフィーによって脱塩し凍結乾燥することにより凍結乾燥粉末60mgを得た。
(2)ペプシン処理
ラクトフェリン100mgを10mlの0.01M塩酸に溶解し、pHを1.4に調整した後、ペプシン(シグマ社)を2mg加え37℃で6時間インキュベートした。加水分解終了後、水酸化ナトリウムでpHを7.0として反応を停止させた。この処理によって、高度に加水分解されたラクトフェリン9mgが得られた。分解物中の低分子画分(6%トリクロロ酢酸可溶性画分)は約60%であった。
(3)酸処理
ラクトフェリン1gを20mlの水に溶解し、濃塩酸(12N)でpHを2.0に調整した。この溶液を耐圧性ガラス容器に密封し、オートクレーブで120℃、15分間加熱した。加熱後ただちにオートクレーブの蒸気を排出し、ラクトフェリン溶液の温度を常温に戻した。不純物を10000×g、20分間の遠心分離により除き、上清を凍結乾燥することにより0.6gのラクトフェリン酸加水分解ペプチドを得た。
【0013】
【実施例6】
化学修飾ラクトフェリンの調製
(1)テトラペプチド導入ラクトフェリンの調製
特開平2─207100号公報に開示された方法に従って、テトラペプチドを導入し、細胞親和性を高めたヒトラクトフェリンを調製した。
下記の配列を有するペプチドについてC末端アミノ酸のカルボキシル基をNヒドロキシスクシンイミドで活性化しN末端アミノ酸のアミノ基をメチルスルホニルエチルオキシカルボニル(MSCO)で保護したものを用いた。
Gly-Arg-Arg-Gly
Gly-Arg-Arg-Arg-Arg-Gly
Gly-Arg-Lys-Gly
Gly-Lys-Lys-Gly
ヒトラクトフェリン1モルに対して200〜1000等量の上記ペプチドを添加し、0〜10℃で一晩攪拌し、ペプチドを導入した。反応終了後、0.1N水酸化ナトリウムでpH12に調整し、さらに0.1N塩酸でpHを5〜6に下げることによりアミノ基の保護基をはずした。さらにpH7.3のPBSに対して3日間透析し、遊離のペプチドを除去した。ラクトフェリン1分子当たりに導入されたペプチドの分子数は,化学修飾ラクトフェリンを6N塩酸で加水分解後,アミノ酸分析し,天然のラクトフェリンと比べて増加したGly の量から計算した。
各ペプチドをラクトフェリン1分子当たりに10〜15分子導入し、細胞親和性の向上したラクトフェリンを調製した。
【0014】
(2)ポリアミン導入ラクトフェリンの調製
特開平4─95100号公報に開示された方法に従って、ポリアミンを導入し、細胞親和性を高めたヒトラクトフェリンを調製した。
スペルミン4塩酸塩348mg(1mM)又はスペルミジン3塩酸塩(1mM)を用い、これをジメチルホルムアミド(DMF)3mlに溶かし、氷冷下トリエチルアミン(Et3N)0.56mlを加えた。これにさらに2( メチルスルホニル) エチルNサクシミジルカーボネート(Msco OSu)266mgを氷冷下30分間ごとに3回に分けて加えた。6時間後Nヒドロキシコハク酸イミド115mg1エチル3(3ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩180mgを加え室温で8時間攪拌した後、反応液を減圧濃縮し残渣として目的の化学修飾試薬を得た。この試薬を脱イオン水1mlに溶かし保存した。ヒトラクトフェリン8mgを0.1Mリン酸緩衝液(pH7.8)1mlに溶かし、氷冷下、上記試薬200μl を加え12時間攪拌した。反応後、反応液を0.1M水酸化ナトリウムでpH12に調整し、その後直ちに0.1M塩酸でpH5〜7とすることで保護基を除去した。さらにpH7.3のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に対して3日間透析し遊離の修飾剤を除去し、ポリアミン化ラクトフェリンを得た。ラクトフェリン1分子当たりに導入されたポリアミンの分子数は,化学修飾ラクトフェリンを6N塩酸で加水分解後、アミノ酸分析を行うことでポリアミンを定量することにより決定した。
【0015】
上記実施例により調製したヒトT細胞白血病ウイルス感染・増殖抑制剤の活性を実験により確認した。
【実験例1】
ラクトフェリン,トランスフェリン,オボトランスフェリンの抗HTLV活性の測定
(方法)HTLV−1の持続感染株であるILF−8M2細胞から、ヒトリンパ球細胞であるMOLT−4cl.8細胞へのHTLVの感染に対する阻止効果について検討した。培養したMOLT−4cl.8細胞(1×106 Cells/ml,0.25ml)をあらかじめサンプルと30分間プレインキュベートし、これにILF−8M2細胞(1×106 Cells/ml,0.25ml)を添加した。20時間混合後、生細胞から結果を判定した。なお陽性コントロールとして試料を加えないもの、陰性コントロールとしてILF−8細胞を加えないものも同時に行った。
(結果)実験結果を表1に示す。結果はHTLV感染による巨細胞形成抑制率で示した。ラクトフェリンは、1mg/mlでHTLVの感染を完全に阻害した。ウシトランスフェリンおよびオボトランスフェリンもラクトフェリンより弱いながら、HTLVに対して阻害効果を示した。
【0016】
【表1】
【0017】
【実験例2】
ラクトフェリン分解物の抗HTLV作用
(方法)実験例1の方法を用い、ヒトラクトフェリンの限定トリプシン分解物、ペプシン分解物、および酸加水分解物の抗HTLV活性を測定した。それぞれの添加濃度は1mg/mlである。
(結果)表2に結果を示す。結果はHTLV感染による巨細胞形成抑制率で示した。ラクトフェリンの分解物については、いずれの分解物も抗HTLV活性を保持しており、分解物の中に抗HTLV活性のあるフラグメントが含まれることを示唆している。
【0018】
【表2】
【0019】
【実験例3】
化学修飾ラクトフェリンの抗HTLV作用
(方法)実験例1の方法を用い、化学修飾ラクトフェリンの抗HTLV活性を測定した。
(結果)実験結果を表3に示す。結果はHTLV感染による巨細胞形成抑制率で示した。化学修飾ラクトフェリンは、いずれも天然のラクトフェリン以上の活性を示し、本化学修飾はラクトフェリンの抗HTLV活性を向上させることが明らかとなった。
【0020】
【表3】
【0021】
【発明の効果】
本発明の実施により、HTLV感染・増殖抑制剤が提供される。
本発明によるHTLV感染・増殖抑制効果を要約すると、次のとおりである。
(1)HTLVの感染を防ぐことができ、また、既感染者に対しては、体内でさらにウィルスが増殖して感染細胞が増加することを防ぐことができる。
(2)すでに通常食品として摂取している成分を有効成分とする組成であるため、投与することによる副作用の心配が少ない。
(3)原料が比較的大量に存在するため、従来の抗HTLV製剤に比べて製造コストが非常に安い。
(4)従来の抗HTLV製剤に比べて比較的容易に、しかも大量に調製できるため、特定の患者の治療に使用が限定されることがなく、広くHTLV感染・ウィルス増殖を予防することができる。
Claims (1)
- ラクトフェリン、トランスフェリン、オボトランスフェリン、ラクトフェリンのペプチド修飾物、ラクトフェリンのポリアミン修飾物、ラクトフェリンのトリプシン分解物、ラクトフェリンのペプシン分解物およびラクトフェリンの酸加水分解物よりなる群から選択される少なくとも1種を有効成分とする、ヒトT細胞白血病ウィルス感染・増殖抑制剤。
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