JP3770624B2 - ウィルス感染・増殖抑制剤 - Google Patents

ウィルス感染・増殖抑制剤 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、副作用の少ないペプチド性のウィルス感染・増殖抑制剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
ウィルス感染による疾患の克服のために、これまで多くの努力がなされてきた。しかし近年、世界的にも猛威をふるっているヒト免疫不全ウィルス(HIV)や毎年流行するインフルエンザウィルスのようにいまだ有効な予防法や治療法の無いものもある。ウィルス感染による疾患に対する治療法として抗ウィルス剤による化学療法がある。しかし現在のところ、全身的に投与され明白な効果を示す抗ウィルス剤はほとんど無い。その理由として、ウィルスは細胞内で増殖し、増殖のための機能をほとんど細胞に依存している。つまりウィルスは感染後、その増殖を治療すべき人体の構成細胞自体の増殖機能を利用して行っている。従ってウィルスの増殖を抑える化学物質の多くは細胞にも作用して毒性を示すからである。抗ウィルス剤の問題点としては上述のように薬剤の選択毒性が低いこと以外にもウィルス感染症の特徴から由来するいくつかの問題点がある。特に急性・全身性のウィルス感染症では、症状が現れる時期がウィルスの体内増殖のピークが過ぎてしまった後なので、むしろウィルスの感染を阻止し増殖を抑制する物質が求められている。この様なウィルスの感染を防御する方法としてワクチンの予防接種による方法があるが、この方法はしばしばアレルギー反応や種々の副作用を示すことが知られており、しかもウィルスの変異に対しては対処できないのが現実である。
【0003】
この様な状況において、本発明者らは、ラクトフェリン(LF)、トランスフェリン、オボトランスフェリンなど鉄結合能を有するタンパク質が、インフルエンザウィルスやサイトメガロウィルス(CMV)の感染・増殖を抑制することを見出し特許出願を行った(特開平2−233619)。LFは、乳中に分泌される鉄結合性のタンパク質で抗菌活性があることが知られている。LFは、ヒトおよびウシ由来のものについて詳細な研究が行われており、ヒトLF、ウシLFともその全アミノ酸配列がすでに決定されている(M.W. Rey,et al., Neucleic Acid Res.,Vol.18,5288,1990およびP.E. Mead et al., Neucleic Acid Res.,Vol.18,7167,1990)。特開平1−233226にはLF等の乳タンパク質を有効成分とする抗ウィルス剤が開示されており、この中にLFが、外被性ウィルスおよび非外被性ウィルスに対して有効であることが記載されている。また最近、本発明者らは、HIVに対するこれら鉄結合性タンパク質の感染・増殖抑制効果についても確認し、LFを有効成分とするHIV感染・増殖抑制剤について特許出願を行った(特願平4−220635)。
【0004】
この様に、LFなど鉄結合性タンパク質はウィルスの感染・増殖抑制効果を持つことが次第に明らかとなり、抗ウィルス剤として、その実用化が期待されてきた。これらタンパク質が実際に感染・増殖抑制剤として用いられるためには、(i)体内に投与した場合抗原性の点で問題が無いこと、(ii)大量に供給できることが必要である。これらの鉄結合性タンパク質のうち、ウシLFやウシトランスフェリン、又は鶏卵から得られるオボトランスフェリンは大量に供給できるが人体内に投与した場合抗原性を示すという問題がある。一方、ヒトLFは抗原性に関しては問題無いが大量に供給することが困難である。
この様な問題を解決するために、本発明者らはLF由来のペプチドフラグメントのうち〔化4〕および〔化5〕が抗ウィルス活性を持つことを見出し特許出願をおこなった(特願平5‐69210)。
【0005】
化4
Cys-Phe-Gln-Trp-Gln-Arg-Asn-Met-Arg-Lys-Val-Arg-Gly-Pro-Pro-Val-Ser-Cys
(ただし、式中 Cys は還元型でもよく、またペプチド内の2個の Cys が−S−S−結合して酸化型となってもよい。 )
【0006】
化5
Cys-Arg-Arg-Trp-Gln-Trp-Arg-Met-Lys-Lys-Leu-Gly-Ala-Pro-Ser-Ile-Thr-Cys
(ただし、式中Cys は還元型でもよく、またペプチド内の2個のCysが−S−S−結合して酸化型となってもよい。)
【0007】
これらのペプチドはそれぞれヒトLFの20〜37残基およびウシLFの19〜36残基に相当するもので分子内のS−S結合は抗ウィルス活性に必須ではなかった。これらのペプチドは天然のLFに比べて極めて鎖長が短いため、化学合成や遺伝子操作による合成により容易に供給することができる。またマウスを用いた感染防御試験においては、CMVの感染を完全に抑制するのに必要な〔化4〕および〔化5〕のペプチド量は、 0.1g/体重kgであった。
【本発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、さらに強力な抗ウィルス活性を有するLFフラグメントを得る目的で、いくつかのLFフラグメントを化学的に合成し、その抗ウィルス活性を検討することで、ヒトLFの抗ウィルス活性に関する必須部分を検索した。その結果、ヒトLFでは次の〔化6〕で示される25〜40残基部分が、抗ウィルス活性に必須であることを見出した。なお以後のLFペプチドの残基の番号は天然のヒトラクトフェリンのアミノ酸配列に付与された番号を用いる。
【0009】
化6
Arg-Asn-Met-Arg-Lys-Val-Arg-Gly-Pro-Pro-Val-Ser-Cys-Ile-Lys-Arg
【0010】
本発明者らは、この活性部分を含み、さらに高活性な抗ウィルスペプチドを開発する目的で、〔化6〕に示したペプチドを中心にN端側およびC端側にペプチド鎖を延長したところ、ヒトLFでは1〜52残基〔化7〕に相当する部分および25〜52残基〔化8〕に相当する部分が、これまで知られていたLF由来ペプチドに比べてより高活性であることを見出した。
【0011】
化7
Gly-Arg-Arg-Arg-Arg-Ser-Val-Gln-Trp-Cys-Ala-Val-Ser-Gln-Pro-Glu-Ala-Thr-Lys-Cys-Phe-Gln-Trp-Gln-Arg-Asn-Met-Arg-Lys-Val-Arg-Gly-Pro-Pro-Val-Ser-Cys-Ile-Lys-Arg-Asp-Ser-Pro-Ile-Gln-Cys-Ile-Gln-Ala-Ile-Ala-Glu
【0012】
化8
Arg-Asn-Met-Arg-Lys-Val-Arg-Gly-Pro-Pro-Val-Ser-Cys-Ile-Lys-Arg-Asp-Ser-Pro-Ile-Gln-Cys-Ile-Gln-Ala-Ile-Ala-Glu
【0013】
また、これらのペプチドフラグメントのうち〔化7〕は、分子内に2つのS−S結合をもつことができるが、このS−S結合はウイルス活性の発現には必須ではなかった。S−S結合は存在していても、存在していなくとも良い。
従って、〔化7〕のCys は還元型であってもあるいは相互にS−S結合して酸化型になってもよい。
【0014】
これらのLFフラグメントに関するこれまでの知見としては、ヒトLFの1〜50残基部分がLF分子の受容体結合領域であるとする報告(B.F. Anderson,et al,J.Mol.Biol.,209,711,1989)、ヒトLFの4〜52に相当するペプチドがLFとリンパ球の結合を阻害したという報告(D.Legrand,et al,Biochemistry,31,9243,1992)、ヒトLFの1〜47残基に相当するペプチドおよびウシLFの17〜41残基に相当するペプチドが抗菌活性をもつという報告(W.Bellamy,et al., Biochem Biophys.Acta,1121,130,1992 )などがあるが抗ウィルス活性についての記載は無い。またこの抗菌活性に関して、特開平5−78392ではヒトLFの19〜29残基あるいはウシLF18〜28残基部分を含むペプチドが、特開平5−148295ではヒトLFの21〜26残基あるいはウシLF20〜24残基部分を含むペプチドが、特開平5−148296ではウシLFの21〜25残基あるいはウシLF25〜29残基部分を含むペプチドが、特開平5−148297ではウシLFの20〜24残基部分を含むペプチドについてそれぞれ記載されているが、いずれも本発明の抗ウィルス効果に必須な部位とは異なっている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、次の〔化9〕で表されるペプチドを有効成分とするウィルス感染・増殖抑制剤に関する。
また、このペプチドは薬理的に許容される塩の形となっていてもよい。
【0016】
化9
Arg-Asn-Met-Arg-Lys-Val-Arg-Gly-Pro-Pro-Val-Ser-Cys-Ile-Lys-Arg
【0017】
また〔化9〕に示す配列を基にN末端側およびC末端側にペプチド鎖を延長したペプチドを有効成分とすることができる。このようなペプチドとしては、例えば、前記した、〔化7〕、〔化8〕に示すペプチドが例示される。さらにこれらの薬理的に許容される塩、例えば塩酸塩、酢酸塩なども用いることができる。〔化9〕に示すペプチドは、ヒトLFの25〜40残基に相当する配列であり、前述のように本発明における抗ウィルス活性に必須な領域である。以下本発明のウィルス感染・増殖抑制剤中の有効成分のLF由来のアミノ酸配列を含むペプチドはヒトLF(25−40)のようにLF中のアミノ酸配列の番号で記載する。
本発明のペプチドを得るためには、通常の化学合成による方法、LFのプロテアーゼ分解物から単離する方法、遺伝子組み換えによる方法などどれでもよい。さらに、市販のペプチドシンセサイザー等の合成装置を用いて直鎖ペプチドを得た後、通常の方法でS−S結合を形成させることもできるし、S−S結合を形成させなくても良い。
【0018】
これらのペプチドまたはペプチド誘導体は単独もしくは賦型剤、安定剤を添加して製剤化することができる。本発明のウィルス感染・増殖抑制剤は、経口、注射、座薬として投与することができる。通常は、成人1日あたり0.1〜1.0gを投与することにより効果を示す。またこれらのペプチドは、従来から食品素材として用いられているタンパク質の一部なので安全性の面でも問題無い。特にヒト由来のペプチドフラグメントは、その抗原性が非常に低いため実用上好ましい。
【0019】
以下に本発明によるウィルス感染・増殖抑制剤について実施例により詳細に説明する。なお、合成は、泉谷ら著「ペプチド合成の基礎と実験」(1985年丸善刊)p194-233に記載の方法に従い固相合成法にて行った。
【実施例1】
【0020】
ヒトLF(25−40)の合成
ペプチドシンセサイザー431A(ABI社)により、パラヒドロキシメチルフェノキシメチルポリスチレン(HMP)樹脂を用い、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基をアミノ末端の保護基としてC末端側からペプチド鎖を順次延長することにより0.25mmolスケールで直鎖保護ペプチドを合成した。得られたHMP樹脂結合保護ペプチド1233mgをフェノール、1,2−エタンジチオール、チオアニソール存在下、トリフルオロ酢酸(TFA)によりペプチドのHMP樹脂からの切り離しと保護基の除去を同時に行った。減圧濃縮によりTFAを除去した後、エチルエーテルで粗ペプチドを結晶化させ、これを5%酢酸に溶解し凍結乾燥を行った。得られた直鎖粗ペプチド500mgは、HPLC〔カラム:オクタデシル4PW(21.5×150mm,東ソー社),溶出:0.1%TFAを含む水−アセトニトリルにてグラジエント溶出〕により精製しヒトLF(25−40)の直鎖精製ペプチド340mgを得た。得られた精製ペプチドの純度は、HPLCによる分析の結果93%であった。
【実施例2】
【0021】
ヒトLF(25−52)の合成
実施例1と同様の方法で合成し、純度96%のヒトLF(25−52)の鎖状ペプチド386mgを得た。
【実施例3】
【0022】
N−アセチル−ヒトLF(25−40)−アミド(Ac−ヒトLF(25−40)−NH2)の合成
ペプチドシンセサイザー431A(ABI社)によりベンズヒドリルアミン樹脂を用い第3ブチルオキシカルボニル(t−Boc)基をアミノ末端の保護基としてC末端側から遂次ペプチド鎖を延長することにより0.25mmolスケールで合成を行った。縮合反応をすべて終えた後、アミノ末端のt−Boc基を除去し、無水酢酸でこれをアセチル化した。HF処理によりペプチドの樹脂からの切り離しと保護基の除去を同時に行った。減圧濃縮によりHFを除去し目的の粗Ac−ヒトLF(25−40)−NH2を得た。この粗ペプチドを実施例1と同様にしてHPLCで精製し、純度91%の上記精製ペプチド42mgを得た。
【実施例4】
【0023】
ヒトLF(1−52)、〔20Cys(Acm),37Cys(Acm) 〕ヒトLF(1−52)および〔10CysSH,20Cys(Acm),37Cys(Acm),46CysSH 〕ヒトLF(1−52)の合成
ペプチドシンセサイザー431A(ABI社)により、パラヒドロキシメチルフェノキシメチルポリスチレン(HMP)樹脂を用い、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基をアミノ末端の保護基とし、20Cys および37Cys のSH基をアセトアミドメチル(Acm)基で保護してC末端側から遂次ペプチド鎖を延長することにより0.25mmolスケールで直鎖保護ペプチドを合成した。得られたHMP樹脂結合保護ペプチド2337mgをフェノール、1,2−エタンジチオール、チオアニソール存在下、トリフルオロ酢酸(TFA)によりペプチドのHMP樹脂からの切り離しと保護基の除去を同時に行った。減圧濃縮によりTFAを除去した後、エチルエーテルで粗ペプチドを結晶化させ、これを5%酢酸に溶解し凍結乾燥を行った。得られた直鎖粗ペプチド970mgは、HPLC〔カラム:オクタデシル4PW(21.5×150mm,東ソー社),溶出:0.1%TFAを含む水−アセトニトリルにてグラジエント溶出〕により精製し直鎖精製ペプチド〔10CysSH,20Cys(Acm),37Cys(Acm),46CysSH 〕ヒトLF(1−52)607mgを得た。得られた精製ペプチドの純度は、HPLCによる分析の結果96%であった。このペプチドをフェリシアン化カリウム存在下空気酸化により10Cys,46Cys にS−S結合を形成させさらにHPLCにて精製することで、純度90%の〔20Cys(Acm),37Cys(Acm) 〕ヒトLF(1−52)450mgを得た。さらにこのペプチドをヨウ素処理しAcm基の除去とS−S結合の形成を同時に行い、HPLCで精製することでヒトLF(1−52)120mgを得た。HPLCによる分析の結果このペプチドの純度は89%であった。
実施例5
【0024】
ウィルス感染、増殖抑制剤の製造
本実施例においては、上記実施例1〜の方法により得ることのできたペプチドの注射製剤の生産例を示した。
(i) ヒトLF(25−40) 100mg
ヒト血清アルブミン 100mg
上記組成をpH7.0 の0.01M のPBS で溶解し、全量を20mlに調製し、滅菌後、バイアル瓶に2ml ずつ分注し、凍結乾燥密封した。
(ii) ヒトLF(25−52) 100mg
ツイーン80 1mg
ヒト血清アルブミン 100mg
上記組成を注射用生理食塩水に溶解し、全量を20mlに調製し、滅菌後、バイアル瓶に2ml ずつ分注し、凍結乾燥密封した。
(iii) ヒトLF(1−52) 100mg
ツイーン80 1mg
ヒト血清アルブミン 100mg
上記組成を注射用生理食塩水に溶解し、全量を20mlに調製し、滅菌後、バイアル瓶に2ml ずつ分注し、凍結乾燥密封した。
(iv) Ac−ヒトLF(25−40)−NH2 100mg
ツイーン80 2mg
ソルビトール 4g
上記組成をpH7.0 の0.01M のPBS で溶解し、全量を20mlに調製し、滅菌後、バイアル瓶に2ml ずつ分注し、凍結乾燥密封した。
【発明の効果】
【0025】
本発明の実施により、ウィルス感染・増殖抑制剤が提供される。
本発明によるウィルス感染・増殖阻止作用のある組成物の作用効果を要約すると次のとおりである。
(1)ウィルスの感染を防ぐことができ、また、既感染者に対しては、体内でさらにウィルスが増殖して感染細胞が増加することを防ぐことができる。
(2)通常食品として摂取している成分を有効成分とする組成であるため、投与することによる副作用の心配が少ない。
(3)低分子であるため、LFなど 結合性タンパク質に比べ化学合成法などで比較的容易にしかも大量に調製できる。ゆえに特定の患者の治療に使用が限定されることがなく、広くウィルスの感染・増殖を予防することもできる。
本発明のウィルス感染・増殖抑制剤は、インフルエンザあるいはエイズの予防または治療や臓器移植の際のサイトメガロウィルス感染防御に有用である。
以下に実験例を示し、本発明の効果をさらに詳細に説明する。
【0026】
【実験例1】
LF由来ペプチドのサイトメガロウィルス(CMV)に対する感染・増殖抑制効果
方法:LF由来ペプチドを2%血清添加MEM培地に溶解し、濾過滅菌しストック溶液とした。このストック溶液を必要に応じて2%血清添加MEM培地により希釈して用いた。ヒト胎児繊維芽細胞(HEL細胞)を試料を含む2%血清添加MEM培地に懸濁させ10分間インキュベートした。遠心分離により細胞を取り出しさらに2%血清添加MEM培地で細胞を2回洗浄した後、細胞を2%血清添加MEM培地に懸濁させた。これにヒトCMV(TANAKA株)を添加し、24時間培養後、ヒトCMV陽性血清で蛍光染色し細胞へのヒトCMVの吸着能力を測定した。
【0027】
結果:表1にヒトLF由来ペプチドのCMVに対する感染・増殖阻害効果を示す。表1に示すペプチドのうち抗ウィルス活性をもつペプチドに共通する配列から、25〜40残基部分が活性に必須な構造を含むものと推察された。また表2では、ヒトLF由来ペプチドがCMVの感染・増殖を、コントロールと比較して90%阻害するのに必要な最少濃度を示している。この結果より、本発明によるペプチドは、天然のLFやこれまで知られていたLF由来のペプチドより低濃度で抗ウィルス効果を示すことが明らかとなった。なおここで使用したペプチドのうち本発明を構成するペプチド以外のものについても、実施例1に示した方法と同様にして化学的に合成したものであり、その純度はHPLCによる分析の結果いずれも85%以上であることを確認している。
【0028】
【表1】
ヒトLF由来ペプチドのCMVに対する感染増殖阻害効果
____________________________
ペプチド*1 S−S結合 感染阻害率(%)
____________________________
LF(1−52) 10Cys‐46Cys,20Cys‐37Cys 95
LF(1−52) 10Cys‐46Cys, 95
LF(1−52) 97
LF(18‐52) 24
LF(25‐52) 91
LF(1‐40) 97
LF(28‐40) 0
LF(19‐31) 2
LF(2‐19) 14
LF(4‐29) 0
LF(18‐42) 97
____________________________
*1 ペプチド濃度は、0.5mg/ml
【0029】
【表2】
LF由来ペプチドの抗CMV効果における最少活性発現濃度
____________________________
サンプル 最少活性発現濃度*1(mg/ml)
____________________________
ヒトLF 1.0
ヒトLF(25‐40) 1.0
ヒトLF(25‐52) 0.5
ヒトLF(1−52) 0.05
ヒトLF(18−42) 1.5
____________________________
*1 90%の感染阻止率を示す濃度
【0030】
【実験例2】
LF由来ペプチドのHIVに対する感染・増殖抑制効果
方法: HIVの一株であるHTLV−III B 持続感染株であるMOLT−4/HTLV−III B(以下MT−4と略記する)細胞の培養上清をウィルス液として用いた。上清は−80℃に保存した。検定に用いる細胞はヒトT細胞系のMT−4を用いた。MT−4は10%牛胎児血清(FCS)を含むRPMI1640培地を用いて継代した。試料(LF由来ペプチド)は、培地(RPMI1640)に溶解し目的の濃度として細胞に1ml添加した。60分間インキュベートした後、HIVをmoi(細胞/感染ウィルス比)=0.01となるようにMT−4細胞に感染させ、3×105/mlに調製した細胞液を1ml加えた。細胞を3日間培養後、HIV感染細胞を間接蛍光抗体法を用いて測定した。
HIV感染細胞は、HIV感染患者血清を一次抗体とした間接蛍光抗体法で測定した。蛍光顕微鏡下で細胞500個以上を観察し、蛍光染色された細胞の割合を算出した。なお、陽性コントロールとして試料を加えずに培養したHIV感染MT−4細胞、陰性コントロールとしてウィルス液を添加しない細胞培養を同時に行った。
【0031】
結果:実験結果を表3に示す。結果はHIVの感染を90%阻止するのに必要な濃度を示している。この結果より、本発明によるペプチドは、天然のLFやこれまで知られていたLF由来のペプチドより低濃度で抗ウィルス効果を示すことが明らかとなった。
【0032】
【表3】
LF由来ペプチドの抗HIV効果における最少活性発現濃度
_____________________________
サンプル 最少活性発現濃度*1(mg/ml)
_____________________________
ヒトLF 0.1
ヒトLF(25‐40) 0.05
ヒトLF(25‐52) 0.05
ヒトLF(1−52) 0.02
ヒトLF(18‐42) 0.1
_____________________________
*1 90%の感染阻止率を示す濃度
【0033】
【実験例3】
LF由来ペプチドのインフルエンザウィルスに対する感染・増殖抑制効果
方法:インフルエンザウィルスに対するLF由来ペプチドの感染・増殖抑制効果は、ウィルス実験学総論、国立予防衛生研究所学友会編、p.113−129 丸善(1973)に従い、ふ化鶏卵内培養法によって行った。ヒトLF、および実施例1 〜 で調製したペプチドを生理食塩水に溶解し、濾過滅菌した。卵令10日のふ化鶏卵25個を5個ずつ群にわけ、コントロール群には生理食塩水のみを、他の群には試料溶液100μlを尿液腔内に接種した。3時間後、各ふ化鶏卵にインフルエンザウィルスA/PR/8/34のウィルス液100μlを尿液腔内に接種した。なおここで用いたウィルス量は、尿液腔内に接種した後採取した尿液を64倍希釈した溶液で赤血球凝集(HA)反応を示すことのできるウィルス量である。2日後それぞれの卵を氷室中で一夜静置しその後尿液を採取した。得られた尿液を生理食塩水で段階的に希釈しこれにヒヨコ安定化赤血球(武田薬品)を加え、HA反応を行うことでウィルスを定量した。
【0034】
結果:実験結果を表4に示す。結果はインフルエンザウィルスの感染を90%阻止するのに必要な濃度を示している。この結果より、本発明によるペプチドは、天然のLFやこれまで知られていたLF由来のペプチドより低濃度で抗ウィルス効果を示すことが明らかとなった。
【0035】
【表4】
LF由来ペプチドの抗インフルエンザウィルス効果における最少活性発現濃度
_________________________________________________________
サンプル 最少活性発現濃度*1(mg/ml)
________________________________________________________________
ヒトLF 2.0
ヒトLF(25‐40) 0.5
ヒトLF (25‐52) 0.5
ヒトLF (1−52) 0.2
ヒトLF (18‐42) 1.0
________________________________________________________
*1 90%の感染阻止率を示す濃度
【0036】
【実験例4】
in vivoにおけるCMV感染防御試験
方法:4週令雄のBalbc/AJclマウス(1群10匹)を用いた。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に試料を溶かし、マウス腹腔内に投与した。6時間後、1×106PFUのマウスCMVを腹腔内に投与し、10日後のマウスの生存率で感染防御率を評価した。
【0037】
結果:実験結果を表5に示す。本発明によるペプチドは0.01g/体重kg以上の投与でマウスCMVに対して感染防御効果をもつことが明らかとなった。
【0038】
【表5】
in vivoにおけるマウスCMV感染防御試験
_________________________________________
試料 投与量(g/体重kg) 生存率(%)
________________________________________________
― ― 100
CMV 0
CMV+ヒトLF(1−52) 0.002 40
0.005 60
0.01 100
0.02 100
0.05 100
_________________________________________
【0039】
【配列表】
配列番号:1
配列の長さ:16
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
配列
Arg Asn Met Arg Lys Val Arg Gly Pro Pro Val Ser Cys Ile Lys Arg
1 5 10 15
【0040】
配列番号:2
配列の長さ:52
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
配列
Gly Arg Arg Arg Arg Ser Val Gln Trp Cys Ala Val Ser Gln Pro Glu
1 5 10 15
Ala Thr Lys Cys Phe Gln Trp Gln Arg Asn Met Arg Lys Val Arg Gly
20 25 30
Pro Pro Val Ser Cys Ile Lys Arg Asp Ser Pro Ile Gln Cys Ile Gln
35 40 45
Ala Ile Ala Glu
50
【0041】
配列番号:3
配列の長さ:28
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
配列
Arg Asn Met Arg Lys Val Arg Gly Pro Pro Val Ser Cys Ile Lys Arg
1 5 10 15
Asp Ser Pro Ile Gln Cys Ile Gln Ala Ile Ala Glu
20 25

Claims (3)

  1. 次の〔化1〕で表されるペプチドまたはその薬理学的に許容される塩を有効成分とするウィルス感染・増殖抑制剤。
    Figure 0003770624
  2. 次の〔化2〕で表されるペプチドまたはその薬理学的に許容される塩を有効成分とするウィルス感染・増殖抑制剤。
    Figure 0003770624
    (ただし、式中Cys は還元型でもよく、またペプチド内の2個のCys が結合して-S-S-結合を形成した酸化型であってもよい)
  3. 次の〔化3〕で表されるペプチドまたはその薬理学的に許容される塩を有効成分とするウィルス感染・増殖抑制剤。
    Figure 0003770624
    (ただし、式中Cys は還元型でもよく、またペプチド内の2個のCys が結合して-S-S-結合を形成した酸化型であってもよい)
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