JP3575625B2 - 新規ペプチド - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、Gly−Tyr−Pro−Met−Tyr−Pro−Leu−Pro−Arg のアミノ酸配列を有する新規ペプチドに関する。本発明のペプチドは抗オピオイド活性、ファゴサイトーシス活性、インターロイキン−1産生促進活性を有し、免疫増強物質として医薬品あるいは生化学試薬として有用である。
【0002】
【従来の技術】
近年、内因性の神経ホルモンの中に免疫修飾活性を持つものがあるなど、神経系と免疫系の相互調節機構が明らかになってきており、このような神経系と免疫系の両方に影響するような物質が食品から得られれば、非常にユニークであるばかりではなく、食品による生体調節という観点からも極めて興味深い。元来、米は我々日本人の主食であり、この米中に生体機能を調節する生理活性物質の存在が証明されれば、日常摂取している米の新しい生理的意義を解明することにつながる。従来、米に含まれる生理活性物質として、米糠のアルカリ油等から得られるオリザノールが知られており、この一成分であるシクロアルテノールフェルラ酸エステルを用いた性腺刺激による動物の繁殖能力を上げるもの(特開昭 57−149248号)や、オリザノールを含む栄養組成物(特開昭61−58536号)などが知られている。また、米糠を特定濃度の蔗糖溶液に浸漬後、熱水処理して得た抽出液に極性溶媒を加え、生じた沈殿を分離精製し得られる抗腫瘍活性、免疫調節活性、感染防御活性を有する生理活性多糖RON(特開平2−208301号)等も開示されている。また、米に含まれる生理活性蛋白質として、システインプロテアーゼ阻害活性を有するオリザシスタチンがあり、抗ウイルス作用を示すことが報告されている(FEBS LETTERS,Vol.299,No.1,pp48−50(1992))。本発明者らは神経ホルモンの一つとして特にオピオイド関連物質に注目し、米中に含まれる成分と生理活性との関係を研究する過程において、新たに米の蛋白質の加水分解物中に抗オピオイド活性、ファゴサイトーシス活性、及びインターロイキン−1産生促進活性を有するペプチドを見出し、本発明を完成するに至った。本発明ペプチドをオリザテンシンと命名した。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、米の蛋白質のなかから、生理活性物質を得ることを目的とする。さらに具体的には、本発明はGly−Tyr−Pro−Met−Tyr−Pro−Leu−Pro−Arg のアミノ酸配列を有し、抗オピオイド活性、ファゴサイトーシス活性、並びにインターロイキン−1産生促進活性を有し免疫増強物質として利用可能なペプチドを提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、Gly−Tyr−Pro−Met−Tyr−Pro−Leu−Pro−Arg のアミノ酸配列を有するペプチドである。本発明のペプチドは、新規なペプチドであり、抗オピオイド活性、ファゴサイトーシス活性及びインターロイキン−1産生促進活性を有し、免疫増強作用を利用して医薬品あるいは生化学試薬として有用に利用される。
本発明のペプチドは、米粉に食塩水を加え透析して得られた可溶性蛋白質をトリプシン処理し、高速液体クロマトグラフで分画を行い得ることができる。又、市販のペプチドシンセサイザーを用いることにより容易に合成が可能である。例えば、合成装置としてSam Twoペプチド合成装置(Biosearch社製)を用いてペプチドの合成を行う。即ち、樹脂に活性基を保護したアミノ酸を吸着させ、これにデブロッキング液を注入して保護基を除去し、活性基を保護したアミノ酸を注入し、両者を反応させ、ジペプチドを合成する。この操作を繰り返すことにより、目的とする配列を有するペプチドを合成する。ペプチドの担体としての樹脂からの脱離と保護基の除去は、10%アニソールを含む無水フッ化水素中で0°Cの温度条件下に1時間攪拌することにより行う。フッ化水素を留去した後樹脂をエーテルで洗浄し、30%酢酸により抽出し、凍結乾燥により粗ペプチドが得られる。この粗ペプチドを0.1%トリフルオロ酢酸に溶解した後、オクタデシルシラン(ODS)カラムを接続した高速液体クロマトグラフにより、0.1%のトリフルオロ酢酸を含むアセトニトリルの直線的濃度勾配にて展開、精製する。目的とするペプチドは、ペプチド特有の溶出位置を示す。このようにして得られたペプチドのアミノ酸配列は、プロテインシーケンサーによる配列分析及びアミノ酸分析計によるアミノ酸分析により特定できる。
【0005】
本発明ペプチドは、オピオイド活性、ファゴサイトーシス活性並びにインターロイキン−1(IL−1)産生促進活性作用を有し、ヒト及び動物に対する免疫増強剤として使用される。本発明ペプチドは生体防御機構、即ち免疫機構に働く細胞の活性化促進を適用とし、具体的にはアレルギー症、感染症、免疫不全症、自己免疫強化による腫瘍に対する生体防御及び移植に伴う生体拒絶反応、その他各種免疫疾患等に使用できる。
【0006】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。しかしこれらは単に例示するのみであり、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【実施例1】
酵素分解による本発明ペプチドの製造方法
米粉を7倍量の1M食塩水にて抽出し、その遠心上清を0.1M食塩水に対して透析し可溶性蛋白質を得た。透析は、Viskase Sales社製の透析膜を用いて透析した。この蛋白質をpH7.6に調整した後、蛋白質の1/100に相当するトリプシンを加え37°Cにて5時間の消化を行い、沸騰水上で10分間加熱して酵素を失活させ、トリプシン消化物とした。21mgのトリプシン消化物をオクタデシルシランカラム(Cosmosil 5C18−AR、20φ×250mm、ナカライテスク社製)を装着した高速液体クロマトグラフ(M600、ミリポア社製)にて、0.1%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリルの直線的濃度勾配(0〜50%/分、10ml/分)により分画した。溶出パターンを図1に示す。アセトニトリル濃度約31%で溶出された活性画分をフェネチルシリカカラム(Develosil PH−A−T−5、4.6φ×250mm、野村科学社製)にて0.1%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリルの直線的濃度勾配(0〜40%/分、1ml/分)により分画した。溶出パターンを図2に示した。アセトニトリル濃度約36%で溶出された活性画分をさらにオクタデシルシランカラム(Cosmosil 5C18−AR、4.6φ×150mm、ナカライテスク社製)にて10mMリン酸緩衝液(pH7.4)を含むアセトニトリルの直線的濃度勾配(0〜40%/分、1ml/分)により分画した。溶出パターンを図3に示す。アセトニトリル濃度約28%で溶出された活性画分をプロテインシーケンサー(477A、アプライドバイオシステムズ社製)にて解析し、Gly−Tyr−Pro−Met−Tyr−Pro−Leu−Pro−Arg のアミノ酸配列を有する9残基からなるペプチドを確認した。
このペプチドのRf値は、次の条件で測定して0.56であった。
薄層プレート;メルク社製 silica gel 60F254
展開溶媒;n−ブタノール:酢酸:ピリジン:水=15:3:10:12
【0007】
【実施例2】
合成による本発明ペプチドの製造方法
Sam Twoペプチド合成装置(Biosearch社製)により、同装置の標準プロトコールに従って合成した。即ち、1g当たり0.5mmolのt−Boc−Arg(Tos)を結合したアシルオキシメチル樹脂2gをペプチド合成装置の反応容器にセットし、45v/v%トリフルオロ酢酸、2.5v/v%アニソール、52.5v/v%ジクロロメタンを含むデブロック液と20分間接触させt−Boc基を除いた。ジクロロメタンによる洗浄の後、10v/v%ジイソプロピルエチルアミンを含むジクロロメタンにて樹脂中和し、ジクロロメタンにより洗浄した。その後6.7mmolのt−Boc−Pro及び6.7mmolのジイソプロピルカルボジイミド(それぞれ理論当量の6.7倍)を含む34mlのジクロロメタン、ジメチルフォルムアミド混合液中で2時間室温にて反応せしめた。ジメチルフォルムアミド及びジクロロメタンにて順次洗浄した後、上記と同様にデブロッキングを行い、以下同様にC末端側からt−Boc−Leu、t−Boc−Pro、t−Boc−Tyr(Cl2 Bzl)、t−Boc−Met、t−Boc−Pro、t−Boc−Tyr(Cl2 Bzl)、t−Boc−Glyを順次結合せしめ、t−Boc−Gly−Tyr(Cl2 Bzl)−Pro−Met−Tyr(Cl2 Bzl)−Pro−Leu−Pro−Arg(Tos)−樹脂を得た。この樹脂を10%アニソールを含む無水フッ化水素中で1時間0°Cで反応させた後、フッ化水素の留去及びエーテルによる洗浄を行った。得られたペプチド及び樹脂の混合物から30%酢酸にてペプチドを抽出し凍結乾燥することによって約800mgの粗ペプチドを得た。粗ペプチドを0.1%トリフルオロ酢酸に溶解した後、オクタデシルシランカラム(Cosmosil 5C18−AR、20φ×250mm、ナカライテスク社製)を接続した高速液体クロマトグラフ(M600型、日本ウォータース社製)により、0.1%のトリフルオロ酢酸を含むアセトニトリルの直線的濃度勾配(0〜50%/50分、10ml/分)にて展開した。目的とするペプチドはアセトニトリル濃度約39%にて溶出された。このようにして得られた物質がGly−Tyr−Pro−Met−Tyr−Pro−Leu−Pro−Arg であることはアミノ酸分析(Pro:Gly:Met:Leu:Tyr=2.90:1.00:0.95:0.97:1.90)及びプロテインシーケンサー(477A、アプライドバイオシステムズ社製)により確認された。このRf値を実施例1と同様の方法で測定したところ実施例1と同様に0.56であった。
【0008】
【試験例1】
抗オピオイド活性の測定
モルモット回腸縦走筋神経叢標本のオピオイド作用薬による収縮抑制を解除する作用により測定した。体重300〜350gのモルモットより抽出した回腸から縦走筋神経叢標本を調製し、該標本の一端を糸を介して等長性トランスジューサに接続し、他端を内容積2mlのマグナス管の底に固定した。マグナス管にはクレブス−リンゲル液を満たし、37°Cの温度に保ち、O2 /C02 混合ガス(95:5)を通気した。マグナス管内の電極には10秒に1回の割合で電気刺激(10V、0.5msec)を与え、筋収縮の張力を電気的に記録した。尚、収縮はオピオイドアゴニストによって抑制される。検体のオピオイドアンタゴニストの活性の強さは、〔D−Ala2 、N−Me−Phe4 、Glyol5 〕エンケファリンのオピオイドアゴニスト活性を1/2にするのに必要なアンタゴニストの濃度EC50値により表した。このようにして測定した本発明ペプチドのEC50値は、0.2μMであった。
【0009】
【試験例2】
モルモット回腸収縮作用
体重300〜500gのモルモットより摘出した回腸縦走筋切片を高木らの方法(高木他編、94〜99頁、南山堂、1972年発行)に従って処理をし、上述のオピオイドアンタゴニスト活性測定と同様に測定をした。但し、本測定においては、回腸収縮反応を最大値の50%誘起する値を求めた。本発明ペプチドは回腸収縮作用としてのED50値は、0.2μMであった。
【0010】
【試験例3】
ファゴサイトーシス活性の測定方法
ヒト末梢血にPBSを加え1000rpm×5分の遠心分離で血球を洗浄した後、PBSにて4×106 個/mlの血球の懸濁液を調製した。この溶液100μlを採り、PBSに溶解させたペプチド溶液10μlを加え37°Cで10分インキュベートを行い、次いでヒト末梢血でオプソニン化した4×108 個/mlの蛍光標識ラテックスビーズ液10μlを加え、さらに5分インキュベートを行った。EDTAを含むPBSで反応を停止させ、遠心により血球を分離し、これに塩化アンモニウム溶血剤を加えて溶血させ白血球を得た。これをEDTAを含むPBSに懸濁後、フローサイトメトリーにて測定した。結果を表1及び図4に示した。
【0011】
【表1】
【0012】
【試験例4】
インターロイキン−1産生促進能の測定
デンプンを腹腔内投与したC3H/JeNマウスから4日後に腹腔マクロファージを調製し、5%ウシ胎児血清を含むRPMI1640培地にて培養して得られた付着細胞にペプチドを添加後24時間培養する。その培養上清をCon Aによって刺激されたC3H/HeJマウス胸腺細胞培養系に添加し、10%ウシ胎児血清を含むRPMI1640培地にて66時間培養する。〔 3H〕チミジンを添加後さらに6時間培養し、細胞への取り込みを測定した。細胞へのチミジンの取り込みはマクロファージによって生産されたインターロイキン−1量を反映している。結果を表2及び図5に示した。
【0013】
【表2】
【0014】
【発明の効果】
本発明により、抗オピオイド活性、ファゴサイトーシス活性、インターロイキン−1産生促進活性を有し、免疫増強物質として利用可能なペプチドが提供される。本発明のペプチドは医薬品あるいは生化学試薬として有用である。
【0015】
【配列表】
配列番号:1
配列の長さ:9
配列の型:アミノ酸
トポロジー:直鎖状
配列の種類:ペプチド
配列
Gly Tyr Pro Met Tyr Pro Leu Pro Arg
1 5
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1による本発明ペプチドのオクタデシルシランカラム(pH2)からの溶出パターンを示す。
【符号の説明】
矢印が本発明ペプチドの溶出を示す。
【図2】実施例2による本発明ペプチドのフェネチルシリカカラム(pH2)からの溶出パターンを示す。
【符号の説明】
矢印が本発明ペプチドの溶出を示す。
【図3】実施例1による本発明ペプチドのオクタデシルシランカラム(pH7.4)からの溶出パターンを示す。
【符号の説明】
矢印が本発明ペプチドの溶出を示す。
【図4】試験例3による本発明ペプチドのファゴサイトーシス促進活性を示す。
【図5】試験例4による本発明ペプチドのインターロイキン−1産生促進活性を示す。
Claims (1)
- 次のアミノ酸配列からなるペプチド
Gly-Tyr-Pro-Met-Tyr-Pro-Leu-Pro-Arg
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JPH07258288A JPH07258288A (ja) | 1995-10-09 |
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JP07426494A Expired - Fee Related JP3575625B2 (ja) | 1994-03-18 | 1994-03-18 | 新規ペプチド |
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1994
- 1994-03-18 JP JP07426494A patent/JP3575625B2/ja not_active Expired - Fee Related
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