JP3830179B2 - 抗寄生虫剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、抗寄生虫剤に関するものである。さらに詳しくは、この発明は、ヒトおよび家畜、ペット等の動物に寄生する蠕虫あるいは原虫によってそれらの動物に発生する各種疾病を予防および治療する薬剤に関するものである。
なお、以下の記載において、寄生虫とは細菌、真菌、ウィルス等の微生物以外の寄生性生物を意味し、抗菌活性という用語は、細菌、真菌、ウィルス等の微生物を静菌または殺菌する作用を意味する。
【0002】
【従来の技術】
寄生虫症(原虫症、蠕虫症)は、世界的視野より見れば、感染率も高く、特定の地域または衛生設備の整っていない地域では、未だに多くの犠牲者を出している。また、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ニワトリ等の家畜、イヌ、ネコ等の愛玩動物も寄生虫による疾患に罹患しやすい。寄生虫による疾患には、蛔虫、線虫、鉤虫、蟯虫、鞭虫、線毛虫、条虫、吸虫等による蠕虫症、またはマラリア、トキソプラズマ、ニューモシスチカリニ、アメーバ等による原虫症があり、それぞれの寄生虫によって、その宿主または寄生場所には特徴がある。
【0003】
寄生虫が宿主にとって深刻な生命的危機を与えないとしても、特に家畜業界等においては、動物の飼料効率および成長速度が減少し、牛乳、羊毛等の生産に打撃を与える等、経済的損害は甚大である。また、愛玩動物への寄生虫の侵入は、愛玩動物と密接に関わる人々にとって大きな問題である。
現在これらの寄生虫症に対して、パモ酸ピランテル等のピリミジン誘導体、アルベンダゾール、メベンダゾール等のベンツイミダゾール誘導体、プラジカンテル等のイソキノリン誘導体、リン酸ピペラジン、クエン酸ジメチルカルバマジン等のピペラジン誘導体等の駆虫剤、メトロニダゾール等のニトロイミダゾール誘導体、スルファメトキサゾール・トリメトプリム等のピリミジン誘導体、キニーネ等のアルカロイド系物質、イセチオン酸ペンタミジン等のジアミジン系物質、8−アミノキノリン等のキノリン系物質、テトラサイクリン等の抗生物質等の抗原虫剤が使用されている(日本臨床、第513ページ〜第520ページ、1991年および「1991年版動物用医薬品用具要覧」、社団法人日本動物薬事協会、第217〜218ページ、1991年)。しかしながら、これらの薬剤は腹痛、悪心、下痢、嘔吐等の副作用、妊婦への使用厳禁等好ましくない欠点を有している。
【0004】
一方、ラクトフェリンは、乳汁および唾液、涙、粘膜分泌液等のヒトを含む哺乳動物の体液に存在する鉄結合性タンパク質であり、大腸菌、カンジタ菌、クロストリジウム菌等の有害微生物に対して抗菌作用を示すことが知られている[ジャーナル・オブ・ペディアトリクス(Journal of Pediatrics) 、第94巻、第1ページ、1979年]。また、ブドウ球菌および腸球菌に対して、0.5〜30mg/mlの濃度で抗菌作用を有することが知られている[ジャーナル・オブ・デイリー・サイエンス(Journal of Dairy Science)、第67巻、第606ページ、1984年]。
【0005】
この発明の発明者らは、ラクトフェリンの抗菌性に着目し、哺乳類のラクトフェリン、アポラクトフェリン、または金属飽和ラクトフェリン(以下、これらをまとめて「ラクトフェリン類」と記載することがある)を酸または酵素により加水分解した物質が、望ましくない副作用(例えば抗原性)等がなく、しかも未分解のラクトフェリン類よりも強い耐熱性および抗菌性を有することを見い出し、既に特許出願を行った(特開平5−320068号公報)。
【0006】
また、この発明の発明者らは、ラクトフェリンの分解物から強い抗菌活性を有するペプチドを単離し、それらのペプチドと同一のアミノ酸配列を有するペプチドまたはそれらのペプチドの誘導体を合成し20個のアミノ酸残基からなる抗菌性ペプチド(特開平5−92994号公報)、11個のアミノ酸残基からなる抗菌性ペプチド(特開平5−78392号公報)、6個のアミノ酸残基からなる抗菌性ペプチド(特開平5−148297号公報)、5個のアミノ酸残基からなる抗菌性ペプチド(特開平5−148296号公報)、3〜6個のアミノ酸残基からなる抗菌性ペプチド(特開平5−148295号公報)を、それぞれ既に特許出願した。
【0007】
さらに、この発明の発明者らは、ラクトフェリン類を酸または酵素により加水分解した物質と同一のアミノ酸配列を有するペプチドまたはこれらペプチドの誘導体に脳の保護作用(特願平4−327738号公報)、ラクトフェリン加水分解物に上皮細胞増殖因子による繊維芽細胞増殖を促進する作用(特開平6−48955号公報)および神経成長因子産生促進作用(特開平5−23557号公報)があることを見い出し、それぞれ既に特許出願した。また、ラクトフェリンがヘパリンに結合する性質を利用して乳からラクトフェリンを分離精製する方法(特願昭63−255299号公報)も開示されている。
【0008】
さらに、この発明の発明者らは、ラクトフェリン類およびラクトフェリン類を酸または酵素により加水分解した物質と同一のアミノ酸配列を有するペプチドが、水生動物の寄生生物性疾患に対して予防および治療効果を有することを見い出し既に特許出願した(特開平7−145069号公報)。
ただし、これらのラクトフェリン類、その分解物および分解物と同一のアミノ酸配列を有するペプチドが、ヒトおよびウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ニワトリ等の家畜、イヌ、ネコ等の愛玩動物に寄生する原虫または蠕虫等による寄生虫疾患に有効であることは従来知られておらず、またそのような事実を記載した刊行物も皆無である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来技術から明らかなように、副作用の少ない抗寄生虫剤が待望されているが、未だ優れた物質は知られていないのが現状であった。
この発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、ヒトおよび家畜、ペット等の寄生虫疾患に対して、少量で有効な予防および治療効果を有し、かつ副作用が少ない抗寄生虫剤を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明は、前記の課題を解決するものとして、配列番号26に記載のアミノ酸配列を有するペプチド、薬学的に許容されるこのペプチドの塩類(以下、これらをまとめて「ペプチド類」と記載することがある)、またはこれらの少なくとも1種を有効成分として含有する抗トキソプラズマ剤を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
この発明の抗寄生虫剤の有効成分であるペプチド類をラクトフェリン類から製造する場合、出発物質として使用するラクトフェリン類は、市販のラクトフェリン、哺乳類(例えば、ヒト、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ)の初乳、移行乳、常乳、末期乳等、またはこれらの乳の処理物である脱脂乳、ホエー等から常法(例えば、イオン交換クロマトグラフィー)により分離したラクトフェリン、それらを塩酸、クエン酸等により脱鉄したアポラクトフェリン、アポラクトフェリンを鉄、銅、亜鉛、マンガン等の金属をキレートさせた金属飽和または部分飽和ラクトフェリンであり、市販品または公知の方法により製造した調製品を使用することもできる。
【0012】
この発明において使用するペプチド類は、ラクトフェリン類の分解物から分離手段によって得られるペプチド、これらのペプチドと同一のアミノ酸配列、相同なアミノ酸配列を有するペプチド、これらのペプチドの誘導体、これらのペプチドの薬学的に許容される塩類またはこれらの任意の混合物であり、公知の方法により化学的に合成することもできる。これらのペプチド類は、例えば、前記特開平5−92994号公報、特開平5−78392号公報、特開平5−148297号公報、特開平5−1498296号公報および特開平5−148295号公報の各発明に記載された方法によって得ることができる。
【0013】
前記の方法によって得られるペプチドは次のアミノ酸配列を有するペプチド、その誘導体または塩類を望ましい態様として例示できる。例えば、配列番号1、2および27のアミノ酸配列を有するペプチド、その塩類またはその誘導体(特開平5−78392号公報)、配列番号3、4、5および6のアミノ酸配列を有するペプチド、その塩類またはその誘導体(特開平5−148297号公報)、配列番号7、8、9および31のアミノ酸配列を有するペプチド、その塩類またはその誘導体(特開平5−148296号公報)、配列番号10から21のアミノ酸配列を有するペプチド、その塩類またはその誘導体(特開平5−148295号公報)、配列番号22から26、28、29および30のアミノ酸配列を有するペプチド、その塩類またはその誘導体(特開平5−92994号公報)である。
【0014】
前記ペプチドの薬学的に許容される塩類としては、塩酸塩、リン酸塩、硫酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩等の酸付加塩を例示でき、誘導体としては、カルボキシル基をアミド化またはアミノ基をアシル化した誘導体を例示することができる。
得られたペプチド類は、試験例4に示すように毒性が極めて低く、公知の方法により、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、シロップ剤、顆粒剤、散剤、注射剤等の薬剤として適宜使用することができ、また軟膏剤、液状塗布剤、ローション剤、エアゾール(スプレー)剤、座剤等としても使用できる。さらにまた、食品、飼料、飲料水等に適宜混合することによっても投与可能である。
【0015】
この発明の抗寄生虫剤の有効成分であるペプチド類の配合量は、症状等により適宜選択できるが、経口剤の場合体重1kg当たり少なくとも0.1mg、望ましくは1mg以上、注射剤の場合体重1kg当たり少なくとも0.02mg、望ましくは0.2mg以上、外用剤の場合1g当たり0.05〜100mgである。
【0016】
次に試験例を示し、この発明の抗寄生虫剤の有効成分であるペプチド類の効果等について詳しく説明する。
試験例1
この試験は、ペプチド類の殺寄生虫効果を調べるために行った。
1)試験方法
参考例1の方法により製造した配列番号26のペプチドを0μg/ml(対照)、100μg/ml、1000μg/mlの各濃度で含有するD−MEM1%BSA(1%BSAを含むDulbeccoの改変最小必要培地)にトキソプラズマ ゴンディー(Toxoplasma gondii)懸濁液(Corrnelisen らの方法[パラサイトロジー(Parasitology)、第83巻、第103ページ〜第108ページ、1981年]により分離)を添加し、37℃で、30分、または1時間、2時間、4時間培養を行った。培養終了後、それぞれの培養液を1,200×g、10分間遠心分離して寄生虫を集め、リン酸緩衝液(PBS)で3回洗浄を行い、再びD−MEM1%BSAに1×106 個/mlの寄生虫濃度で懸濁した。これらの懸濁液5μlに対し、等量の0.5%トリパンブルーを含有するPBSを添加し、検鏡下トキソプラズマ ゴンディー(Toxoplasma gondii)の生残率の計数を行った。
2)試験結果
この試験の結果は、図1に示すとおりである。図1は、トキソプラズマ ゴンディー(Toxoplasma gondii)の生残率を示し、縦軸および横軸は、それぞれ寄生虫の生残率(染色されない寄生虫の割合)および培養時間を示し、○、●および▲は、それぞれ対照、配列番号26のペプチドを100μg/ml含む培養液および配列番号26のペプチドを1000μg/ml含む培養液を示す。
【0017】
図1から明らかなように、対照群では培養4時間後まで寄生虫の生残率に変化がないのに対し、配列番号26のペプチドを100μg/ml含む培養液中では、1、2、および4時間後の寄生虫の生残率が、それぞれ64%、51%、および5%であり、また配列番号26のペプチドを1000μg/ml含む培養液中では、30分後以上の寄生虫の生残率がいずれも5%以下であった。この結果から、配列番号26のペプチドに殺寄生虫効果があることが認められた。なお、ペプチドの種類を変更して試験したが、ほぼ同様な結果が得られた。
試験例2
この試験は、マウス胚細胞を用い、ペプチド類の寄生虫細胞内侵入阻止効果を調べるために行った。
1)試験方法
マウス胚細胞(Omata らの方法[パラサイトロジー・リサーチ(Parasitology Research) 、第75巻、第189ページ〜第193ページ、1990年]により調製)をD−MEM10%FBS(10%FBSを含むDulbeccoの改変最小必要培地)中で培養後、0.025%トリプシンを含むPBS中で保温し、800×g、10分間の遠心分離によって細胞を集め、再びD−MEM10%FBSに5×104 細胞/mlの濃度で懸濁し、これをそれぞれ200μlずつ培養プレート(直径15mm。松波ガラス社製)にまき、37℃で1昼夜培養した。このマウス胚細胞の培養液中に、試験例1と同様の方法により配列番号26のペプチドで0時間、または15分、30分、1時間、2時間、4時間処理を行ったトキソプラズマ ゴンディー(Toxoplasma gondii)の培養液を0.1ml添加し、さらに37℃で培養を行った。この18時間後に、プレートをPBSにて洗浄し、メタノールにより固定化の後、ギムザ染色を行った。マウス胚細胞500個に対するトキソプラズマ ゴンディー(Toxoplasma gondii)寄生細胞の割合を計数し、感染率を求めた。
2)試験結果
この試験の結果は、図2に示すとおりである。図2は、トキソプラズマ ゴンディー(Toxoplasma gondii)によるマウス胚細胞の感染率を示し、縦軸および横軸は、それぞれマウス胚細胞の感染率および寄生虫の配列番号26のペプチドによる処理時間を示し、○、●および▲は、それぞれ対照、配列番号26のペプチドを100μg/ml含む培養液および配列番号26のペプチドを1000μg/ml含む培養液を示す。
【0018】
図2から明らかなように、対照群では処理時間4時間まで寄生虫の感染率が78%以上であるのに対し、配列番号26のペプチド100μg/mlで、15分、30分、1、2、および4時間処理した後の寄生虫による感染率は、それぞれ80%、58%、35%、20%および8%であり、また配列番号26のペプチド1000μg/mlで、30分、および1時間以上処理した後の寄生虫による感染率は、それぞれ16%、および10%以下であった。この結果から、配列番号26のペプチドに、寄生虫の細胞内侵入阻止効果があることが認められた。なお、ペプチドの種類を変更して試験したが、ほぼ同様な結果が得られた。
試験例3
この試験は、マウスを用い、試験例2と同様にペプチド類の寄生虫感染防止効果を調べるために行った。
1)試験方法
試験例1の試験方法と同様の方法で、トキソプラズマ ゴンディー
(Toxoplasma gondii)懸濁液を配列番号26のペプチド0μg/ml(対照)、100μg/ml、1000μg/mlで4時間処置した後、各群5匹のマウスの腹腔に、それぞれ100個のトキソプラズマ ゴンディー(Toxoplasma
gondii)を注入した。その後、30日間にわたりマウスの生存をモニターした。2)試験結果
この試験の結果は、表1に示すとおりである。表1は、寄生虫注入後のマウスの生存数の変化を示す。
【0019】
表1から明らかなように、ペプチド無処理の寄生虫を注入した群(対照群)では注入9日後までに5匹全例が死亡したのに対し、配列番号26のペプチド100μg/ml、1000μg/mlで4時間処置した寄生虫を注入した群では、注入9日後までそれぞれ全例が生存しており、さらに1000μg/ml処置群では、注入30日後まで5例中4例が生存していた。この結果から、配列番号26のペプチドに、殺寄生虫効果があることが、実際の生体を用いて確認された。なお、ペプチドの種類を変更して試験したが、ほぼ同様な結果が得られた。
【0020】
【表1】
【0021】
試験例4
この試験は、ペプチド類の急性毒性を調べるために行った。
1)試験方法
6週齢のCD(SD)系のラット(日本SLCから購入)の両性を用い、雄および雌を無作為にそれぞれ4群(1群5匹)に分けた。
【0022】
体重1kg当り1000または2000mgの割合で参考例1と同一の方法で製造した配列番号26のペプチドを注射用水(大塚製薬社製)に溶解し、体重100g当たり4mlの割合で金属製玉付き針を用いて単回強制経口投与し、急性毒性を試験した。
2)試験結果
この試験の結果、このペプチドを1000mg/kg体重または2000mg/kg体重の割合で投与した群に死亡例は認められなかった。従って、このペプチドのLD50は、2000mg/kg体重以上であり、毒性は極めて低いことが判明した。なお、他のペプチド類についても同様の試験を行ったが、ほぼ同様な結果が得られた。
参考例1
市販のウシ・ラクトフェリン(シグマ社製)50mgを精製水0.9mlに溶解し、0.1規定の塩酸でpHを2.5に調整し、のち市販のブタペプシン(シグマ社製)1mgを添加し、37℃で6時間加水分解した。次いで0.1規定の水酸化ナトリウムでpHを7.0に調整し、80℃で10分間加熱して酵素を失活させ、室温に冷却し、15,000rpmで30分間遠心分離し、透明な上清を得た。この上清100μlをTSKゲルODS−120T(東ソ−社製)を用いた高速液体クロマトグラフィーにかけ、0.8ml/分の流速で試料注入後10分間0.05%TFA(トリフルオロ酢酸)を含む20%アセトニトリルで溶出し、のち30分間0.05%TFAを含む20〜60%のアセトニトリルのグラジエントで溶出し、24〜25分の間に溶出する画分を集め、真空乾燥した。この乾燥物を2%(W/V)の濃度で精製水に溶解し、再度TSKゲルODS−120T(東ソー社製)を用いた高速液体クロマトグラフィーにかけ、0.8ml/分の流速で試料注入後10分間0.05%TFAを含む24%アセトニトリルで溶出し、のち30分間0.05%TFAを含む24〜32%のアセトニトリルのグラジエントで溶出し、33.5〜35.5分の間に溶出する画分を集めた。上記の操作を25回反復し、真空乾燥し、ペプチド約1.5mgを得た。
【0023】
上記のペプチドを6N塩酸で加水分解し、アミノ酸分析計を用いて常法によりアミノ酸組成を分析した。同一の試料を気相シークェンサー(アプライド・バイオシステムズ社製)を用いて25回のエドマン分解を行ない、25個のアミノ酸残基の配列を決定した。またDTNB[5,5−ジチオ−ビス(2−ニトロベンゾイック・アシド)]を用いたジスルフィド結合分析法[アナリティカル・バイオケミストリー(Analytical Biochemistry )、第67巻、第493頁、1975年]によりジスルフィド結合が存在することを確認した。
【0024】
その結果、このペプチドは、25個のアミノ酸残基からなり、3番目と20番目のシステイン残基がジスルフィド結合し、3番目のシステイン残基からN−末端側に2個のアミノ酸残基が、20番目のシステイン残基からC−末端側に5個のアミノ酸がそれぞれ結合した、配列番号26に記載のアミノ酸配列を有していることが確認された。
参考例2
ペプチド自動合成装置(ファルマシアLKBバイオテクノロジー社製。LKBBiolynx4170)を用い、シェパード等による固相ペプチド合成法[ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイエティー・パーキンI(Journal of Chemical Society Perkin I)、第538頁、1981年]に基づいてペプチドを次のようにして合成した。
【0025】
アミン官能基を9−フルオレニルメトキシカルボニル基で保護したアミノ酸[以下Fmoc−アミノ酸またはFmoc−固有のアミノ酸の名称(例えば、Fmoc−アスパラギン)と記載することがある]に、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミドを添加して所望のアミノ酸の無水物を生成させ、このFmoc−アミノ酸無水物を合成に用いた。ペプチド鎖を製造するためにC−末端のアスパラギン残基に相当するFmoc−アスパラギン無水物を、そのカルボキシル基を介し、ジメチルアミノピリジンを触媒としてウルトロシンA樹脂(ファルマシアLKBバイオテクノロジー社製)に固定する。次いでこの樹脂をピペリジンを含むジメチルホルムアミドで洗浄し、C−末端アミノ酸のアミン官能基の保護基を除去する。のちアミノ酸配列のC−末端から2番目に相当するFmoc−アルギニン無水物を前記C−末端アミノ酸残基を介して樹脂に固定されたアルギニンの脱保護アミン官能基にカップリングさせた。以下同様にして順次グルタミン、トリプトファン、グルタミン、およびフェニルアラニンを固定した。全部のアミノ酸のカップリングが終了し、所望のアミノ酸配列のペプチド鎖が形成された後、94%TFA、5%フェノール、および1%エタンジオールからなる溶媒でアセトアミドメチル以外の保護基の除去およびペプチドの脱離を行ない、高速液体クロマトグラフイーによりペプチドを精製し、この溶液を濃縮し、乾燥して、ペプチド粉末を得た。
【0026】
前記のペプチドについてアミノ酸分析計を用いて常法によりアミノ酸組成を分析し、配列番号10に記載のアミノ酸配列を有することを確認した。
次に実施例を示してこの発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、この発明は以下の例に限定されるものではない。
【0027】
【実施例】
実施例1
1錠当たり次の配合割合の錠剤を製造した。
参考例2と同一の方法により製造した
配列番号10のペプチド 10.0(mg)
乳糖一水和物 30.0
トウモロコシデンプン 19.8
結晶セルロース 28.0
ケイ酸マグネシウム五水和物 2.0
ステアリン酸マグネシウム 0.2
配列番号10のペプチド、乳糖一水和物、トウモロコシデンプンおよび結晶セルロースの混合物に滅菌水を適宜添加しながら均一に混練し、50℃で3時間乾燥し、得られた乾燥物にケイ酸マグネシウム五水和物およびステアリン酸マグネシウムを添加して混合し、常法により打錠機で打錠した。なお、ペプチド以外の原料はいずれも市販品を用いた。
実施例2
注射用水(大塚製薬社製)1mlに、参考例1と同一の方法により製造した配例番号26のペプチド粉末10mgおよび塩化ナトリウム(和光純薬工業社製)9mgの割合で溶解し、水酸化ナトリウム(和光純薬工業社製)および塩酸(和光純薬工業社製)でpHを約7に調整し、濾過滅菌し、常法により1mlずつアンプルに充填し、注射用の抗寄生虫剤を製造した。
実施例3
注射用水(大塚製薬社製)10mlに、参考例2と同一の方法により製造した配例番号10のペプチド粉末1mgおよびD−マンニット(和光純薬工業社製)49.5mgの割合で溶解し、リン酸緩衝剤粉末(和光純薬工業社製)の水溶液でpHを約7に調整し、濾過滅菌し、常法により1mlずつバイアル瓶に充填し、凍結乾燥し、注射用の抗寄生虫剤を製造した。
実施例4
100g当たり次の配合割合の軟膏を常法により製造した。なお、ペプチド以外の原料はいずれも市販品を用いた。
【0028】
参考例1と同一の方法により製造した
配列番号26のペプチド 0.1(g)
スクワラン 10.0
白色ワセリン 8.0
セトステアリルアルコール 8.0
グリセリンモノステアレート 2.0
ポリオキシエチレンモノステアレート 1.0
パラオキシ安息香酸メチル 0.2
パラオキシ安息香酸プロピル 0.1
1,3−ブチレングリコール 2.5
滅菌精製水 68.1
【0029】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この発明は、ペプチド類を有効成分として含有する抗寄生虫剤に係るものであり、この発明によって秦せられる効果は次のとおりである。
(1)副作用が少ない。
(2)耐熱性があり、水に可溶性で、水溶液中で安定なため、薬剤として安定である。
(3)ペプチドは抗菌作用を有するので、製剤化に当たり防腐剤を使用する必要がない。
(4)正常細胞に対しては細胞毒性を示さず、寄生虫に対してのみ毒性を示す。
【0030】
【配列表】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、寄生虫の生残率と培養時間との関係を示す。
【図2】図2は、トキソプラズマよるマウス胚細胞の感染率と処理時間との関係を示す。
Claims (1)
- 配列番号26に記載のアミノ酸配列を有するペプチド、薬学的に許容されるこのペプチドの塩、またはこれらの少なくとも1種を有効成分として含有する抗トキソプラズマ剤。
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