JP3858602B2 - 画像処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像処理装置に関し、特に、背景画像を文書画像に合成して出力画像を生成する画像処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、パーソナル・コンピュータの普及、及びプリンタや複写機の高性能化に伴い、戸籍謄本、契約書等のプリントアウトされた機密文書の不正複写、不正使用が問題となっている。従来、このような機密文書の不正複写、不正使用を抑制するために、複写偽造防止用紙と呼ばれる特殊な用紙が使用されてきた。複写偽造防止用紙は、人間の目には見えにくいが、複写機で複写すると隠されていた警告文字等(以下、潜像という)が浮かび上がってくる特殊なパターンがあらかじめ印刷されている用紙である。この複写偽造防止用紙に印刷された文書を複写機で複写した場合、複写物には「複写禁止」「COPY」等の警告文字が目立つように浮き出てくるので、不正に複写する行為に対して心理的な抑止になるとともに、警告文字によりオリジナルと複与物とを区別することが可能になる。
【0003】
また、特開平7−231384号公報に記載された画像処理装置は、上述の複写偽造防止用紙と同様に、複写により可視化する潜像を埋め込んだ薄いグレーの背景画像を画像処理により生成するものである。この装置では、CCD等で読み取られた画像データを複写記録する際に、その潜像文字部分と背景部分とが特定の共通濃度で異なるディザ処理を施された背景画像を文書画像に合成することにより、通常の用紙を用いて複写偽造防止用紙を用いた場合と同様のプリントを得ることができる。
【0004】
更に、例えばプリントアウトされた機密文書を配布する際に、配布先に対応付けられた番号を潜像とする等、配布先毎に異なる背景画像を自動生成し文書画像に合成するようにすれば、複写された場合に、どの配布先で複写されたかを特定することも可能となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の画像処理装置では、複写機の解像力を利用して潜像を可視化する背景画像を使用している。即ち、潜像以外の背景画像は複写機では再現されないが、潜像部分だけは複写機で再現され可視化される。また、プリントアウトされた機密文書において背景画像が人間の目に見え難くなるように、薄いグレーの背景画像が付加されるのが一般的である。このため、プリントアウトされた機密文書を複写する際に、複写機のコピー濃度が薄く調整されると、潜像として埋め込まれた警告文字等が低濃度で複写再現される。同じ条件で繰り返し複写されると、複写再現された警告文字等の濃度が徐々に薄くなり、最後には消失してしまう、という問題があった。
【0006】
一方、機密文書に係る文書画像を作成する際に、文字の色を複写機で再現されにくい色(例えば薄い青色)にすることにより、上記の問題を解消することができる。即ち、機密文書は、薄い青色文字の文書画像に潜像文字を含む薄いグレーの背景画像が合成された画像としてプリントアウトされることになり、機密文書の内容を複写再現するためには、複写機のコピー濃度を高くする必要がある。複写機のコピー濃度を高くする場合には、背景画像中の潜像も高濃度で複写再現されるため、繰り返し複写することにより複写再現された警告文字等を消し去るといった不正複写を防止することができる。
【0007】
しかしながら、この方法では、機密文書に係る文書画像が予め複写機で再現され難い色で作成されている必要がある。このため、既存の機密文書の場合には予め再編集しておかなければならず、変更を要する機密文書の数が多い場合、その作業量が多くなる、という問題がある。また、機密文書の中には、再編集できない形式で保存してあるもの等、文字色を変更できない場合も考えられる。また、機密文書ファイルをモニター等のディスプレイ装置で閲覧する場合、文字色が淡い色に変更されていると読みにくくなる、という問題もある。
【0008】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、背景画像を文書画像に合成して出力画像を生成する際に、文書画像の構成要素の複写後の視認性を低下させて、不正複写を防止することができる画像処理装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の画像処理装置は、コマンドと該コマンドに対応するパラメータとを含む文書画像データを入力する入力手段と、コマンドと該コマンドに対応するパラメータとを含み且つ前記文書画像データと結合する背景画像データを記憶する記憶手段と、文書画像の少なくとも一部分の構成要素の複写後の視認性が低下するように、前記文書画像データ及び記憶手段から読み出した前記背景画像データの少なくとも一方を変換する変換手段と、少なくとも一方が変換された前記文書画像データと背景画像データとを結合する結合手段と、を含んで構成したことを特徴とする。
【0010】
この画像処理装置では、記憶手段には、文書画像データと結合する背景画像データが記憶されており、入力手段から文書画像データが入力されると、変換手段により文書画像の少なくとも一部分の構成要素の複写後の視認性が低下するように、文書画像データ及び記憶手段から読み出した背景画像データの少なくとも一方が変換され、少なくとも一方が変換された文書画像データと背景画像データとが結合手段により結合される。このように文書画像の少なくとも一部分の構成要素の複写後の視認性が低下するように、文書画像データ及び記憶手段から読み出した背景画像データの少なくとも一方を変換するので、文書画像の構成要素の複写後の視認性を低下させて、不正複写を防止することができる。
【0011】
また、本発明の画像処理装置は、コマンドと該コマンドに対応するパラメータとを含む文書画像データを入力する入力手段と、コマンドと該コマンドに対応するパラメータとを含み且つ前記文書画像データと結合する背景画像データを記憶する記憶手段と、前記入力手段から入力された文書画像データが特定文書に係るデータか否かを判定する判定手段と、前記判定手段により前記文書画像データが特定文書に係るデータであると判定された場合に、文書画像の少なくとも一部分の構成要素の複写後の視認性が低下するように、前記文書画像データ及び記憶手段から読み出した前記背景画像データの少なくとも一方を変換する変換手段と、少なくとも一方が変換された前記文書画像データと背景画像データとを結合する結合手段と、を含む構成としてもよい。
【0012】
この画像処理装置では、記憶手段には、文書画像データと結合する背景画像データが記憶されており、入力手段から文書画像データが入力されると、判定手段が入力手段から入力された文書画像データが特定文書に係るデータか否かを判定し、判定手段により文書画像データが特定文書に係るデータであると判定された場合には、変換手段により文書画像の少なくとも一部分の構成要素の複写後の視認性が低下するように、文書画像データ及び記憶手段から読み出した背景画像データの少なくとも一方が変換され、少なくとも一方が変換された文書画像データと背景画像データとが結合手段により結合される。
【0013】
このように文書画像の少なくとも一部分の構成要素の複写後の視認性が低下するように、文書画像データ及び記憶手段から読み出した背景画像データの少なくとも一方を変換するので、文書画像の構成要素の複写後の視認性を低下させて、不正複写を防止することができる。また、判定手段により文書画像データが特定文書に係るデータであると判定された場合に、文書画像データと背景画像データとを結合するので、特定文書に確実に背景画像を付加することができる。
【0014】
上記の画像処理装置において、背景画像データを、複写による偽造を防止するために潜像が埋め込まれた背景画像データとし、判定手段が入力された文書画像データが機密文書に係るデータか否かを判定するようにすることができる。このように複写による偽造を防止するために潜像が埋め込まれた背景画像を機密文書に係る文書画像に合成して出力画像を生成する際に、文書画像の少なくとも一部分の構成要素の複写後の視認性が低下するように、文書画像データ及び記憶手段から読み出した背景画像データの少なくとも一方を変換するので、機密文書の複写後の視認性を低下させて、不正複写を防止することができる。また、判定手段により文書画像データが機密文書に係るデータであると判定された場合に、文書画像データと背景画像データとを結合するので、機密文書に複写による偽造を防止するために潜像が埋め込まれた背景画像を確実に付加することができる。
【0015】
また、上記の画像処理装置において、文書画像に含まれる文字、図形、及びイメージの少なくとも1つの構成要素について、複写後の視認性が低下するようにすることが好ましい。また、文書画像の構成要素の複写後の視認性を低下させるため、文書画像の構成要素の複写後の再現濃度を、背景画像の構成要素の複写後の再現濃度と同等とする、若しくは背景画像の構成要素の複写後の再現濃度より低下させることが好ましい。
【0016】
また、文書画像の構成要素の複写後の視認性は、文書画像及び背景画像の構成要素の色及び濃度の少なくとも1つを変更して低下させることができる。例えば、文書画像の構成要素の色または濃度を、複写再現され難い色または濃度としてもよく、文書画像の構成要素の色を、背景画像と同じ明度で異なる色調とする画像と同じ明度で異なる色調としてもよい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に係る画像処理システムは、図1に示すように、パーソナル・コンピュータで構成されたクライアント装置71、72、本発明の画像処理装置を内蔵したプリントサーバ73、及びプリンタ74が、ネットワーク75に接続されて構成されている。この画像処理システムにおいて、クライアント装置71、72からの指示により文書データの印刷を行う場合には、クライアント装置に内蔵されたプリンタドライバによって、文書データがPDL(Printer Description Language)で記述された文書データ(PDLデータ)に変換されて、PDLデータがネットワーク75を介してプリントサーバ73へ送信される。プリントサーバ73は受信したPDLデータを解析し、機密文書か否かを判定し、機密文書であると判定された場合には、PDLデータを加工して、加工後のPDLデータをネットワーク75を介してプリンタ73へ送信する。プリンタ73は、受信したPDLデータをラスタ画像データに変換しプリント出力を行う。
【0018】
次に、プリントサーバ73に内蔵された画像処理装置の構成に付いて説明する。この画像処理装置は、図2に示すように、判定部21、決定部22、結合部23、記憶部24、文字色命令検出部25、及び文字色変換部26を備えている。
【0019】
入力端Aに入力された第1のPDLデータであるPDL1(文書画像データ)は、判定部21、文字色命令検出部25、及び文字色変換部26に入力される。記憶部24には、第2のPDLデータであるPDL2(背景画像データ)が記憶されている。
【0020】
判定部21は、入力されたPDL1を解析して、機密文書か否かを判定し、決定部22及び文字色命令検出部25に判定結果を通知する。文字色命令検出部25は、PDL1が機密文書と判断された場合に、入力されたPDL1を解析して、文字色を設定する命令を検出する。文字色変換部26は、設定された文字色が予め登録された所定の文字色となるように、文字色を設定する命令を変換して、変換後のPDL1を決定部22及び結合部23に出力する。
【0021】
決定部22は、PDL1が機密文書と判断された場合に、入力されたPDL1(文字色変換部26により文字色を設定する命令が変換されている場合には、変換後のPDL1)を解析して、このPDL1と記憶部24に記憶されているPDL2とを結合させる位置を決定し、結合部23に通知する。
【0022】
結合部23は、記憶部24からPDL2を読み出し、PDL1(文字色変換部26により文字色を設定する命令が変換されている場合には、変換後のPDL1)の決定部22により決定された位置にPDL2を結合させて、第3のPDLデータであるPDL3を生成し、生成したPDL3を出力端Bに出力する。
【0023】
本実施の形態では、PDL1(文書画像データ)とPDL2(背景画像データ)とを合成してPDL3を生成する段階で、PDL1の文字色を設定する命令を変換して、文書画像データの文字色の全部または一部を変更することができるようになる。
【0024】
次に、図4(A)に示すPDLを変換前のPDL1、図4(B)に示すPDLをPDL2とした場合の画像処理装置の処理動作を説明する。なお、各コマンドの意味とパラメータの一例を下記表1及び表2に示すが、コマンド名、意味、パラメータの各々は、例示したものに限定されるわけではない。また、各コマンドは2以上のコマンドで構成されていてもよく、2以上のコマンドを1つのコマンドとパラメータとで表現してもよい。また、パラメータの数値形式は、整数に限らず、浮動小数点実数、固定小数点実数等でもよい。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
まず、PDL2を記述するコマンドについて説明する。図4(B)において※印を付したDrawImageコマンドは、画像データを合成させるコマンドである。ここで、図3(A)に、図4(B)に示すPDL2に基づきプリント出力された画像全体を示す。図3(A)に示す画像は、白色画素を0、黒色画素を1として2進数表現することができる。DrawImageコマンドのパラメータは、このように画像を2進数表現に変換したデータ列であり、描画すべき画像は、図4(B)に示す様に、主走査方向、副走査方向の解像度が各々600dpi、主走査方向、副走査方向の画素数が各々4960画素、7000画素、1ビット/画素のグレー画像である。
【0028】
なお、図3(A)中の文字「COPY」の領域が複写機で複写すると図3(B)い示すように浮かび上がる潜像部であり、その周囲の領域が背景部である。この図では「COPY」の文字が識別できるが、実際には、潜像部の濃度は背景部の濃度と同一濃度とされているので、潜像部の「COPY」の文字は識別し難くなっている。図3(C)は、図3(A)の四角で囲んだ領域を拡大した画像であり、潜像部は比較的大きなドットが粗く配置されたパターンで構成されており、背景部は比較的細かいドットがランダムに配置されたパターンで構成されている。潜像部と背景部とは、各々を構成するパターンは異なるが、プリント出力された場合の平均濃度が同一になるように構成されており、人間の目には全面均一のグレイ背景に見える。図3(A)に示す画像を複写機で複写すると、潜像部の比較的大きなドットは忠実に複写再現されて浮かび上がり、背景部の比較的細かいドットは複写再現されず白く抜ける。その結果として、複写物において、図3(B)に示すように、「COPY」の文字が浮かび上がる。
【0029】
次に、PDL1を記述するコマンドについて説明する。図4(A)に示す様に、PDL1では、Resolutionコマンドで主走査方向、副走査方向の解像度を各々600dpi、PaperSizeコマンドで用紙サイズをA4SEF、SetPointコマンドで描画開始位置を座標(2000、3500)に指定し、FontSizeコマンドでフォントのサイズを24、FontFaceコマンドでフォントの種類をゴシック、FontColorコマンドでフォントの色を黒色に指定して、DrawTextコマンドで「テスト」という文字列を描画している。
【0030】
また、PDL1では、ジョブの開始を示すStartJobコマンドとジョブの終了を示すEndJobコマンドとは1つのプリントジョブには1組しか存在せず、ページの開始を示すStartPageコマンドとページの終了を示すEndPageコマンドとで挟まれたコマンド群の数はプリントジョブの物理ページ数、即ちプリンタでプリントアウトされるページ数を表し、論理ページの開始を示すStartLogicalPageコマンドと論理ページの終了を示すEndLogicalPageコマンドとで挟まれたコマンド群の数はコマンド群が存在する物理ページに印刷される論理ページ数を表すものとする。
【0031】
このPDL1を解釈して印刷すると、24ポイントの黒色文字列「テスト」が座標(2000、3500)を描画開始位置として描画された、1つの論理ページを含む1つの物理ページがプリントアウトされる。図6(A)にプリントアウト例を示す。
【0032】
入力端Aに入力されたPDL1は、判定部21、文字色命令検出部25、及び文字色変換部26に入力される。判定部21は、PDL1から文書ファイル命令を記述したDocumentNameコマンドを検出し、パラメータとして記述された文書ファイル名を抽出して、抽出された文書ファイル名に予め設定されたキーワードが含まれているか否かを解析する。そして、キーワードが含まれている場合には、PDL1は機密文書であると判定し、キーワードが含まれていない場合には、PDL1は通常文書であると判定する。例えば、キーワードを「お客様」とすると、図4(A)に示すPDL1は、文書ファイル名に「お客様」というキーワードを含んでいるので、機密文書と判定され、PDL1が機密文書である旨が判定部21から決定部22及び文字色命令検出部25に通知される。
【0033】
文字色命令検出部25は、PDL1が機密文書と判断された場合に、入力されたPDL1を解析して、文字色を設定するFontColorコマンドを検出し、FontColorコマンドの位置を文字色変換部26に通知する。文字色変換部26は、設定された文字色が予め登録された所定の文字色となるように、FontColorコマンドのパラメータを書き換える。例えば、PDL1で設定された文字色は「黒」であるが、これがシアン等の複写再現されにくい文字色になるように、FontColorコマンドのパラメータを「Black」から「Cyan」に書き換える。なお、本実施の形態では、複写後の視認性が低下する文字色を用いて複写再現され難くしている。そして、変換後のPDL1を決定部22及び結合部23に出力する。
【0034】
決定部22は、PDL1が機密文書と判断された場合に、変換後のPDL1を解析して、1ページ分の描画命令の最後を示すEndPageコマンドを検出し、EndPageコマンドの位置を結合部23に通知する。結合部23は、記憶部24からPDL2を読み出し、PDL1のEndPageコマンドの直前にPDL2を結合させ、PDL2の直後にEndPageコマンドを付加して図5に示すPDL3を生成する。このようにPDL2をPDL1のEndPageコマンド直前に挿入することにより、PDL1の各物理ページにPDL2が挿入される。図5に示すように、PDL3では、PDL1のFontColorコマンドのパラメータが「Black」から「Cyan」に書き換えられると共に、EndPageコマンドの直前にPDL2が結合されている。そして、画像処理装置の出力端BからPDL3が出力される。
【0035】
なお、判定部21によりPDL1が通常文書であると判定された場合には、決定部22及び文字色命令検出部25は何も処理を行わず、入力されたPDL1がそのままPDL3として出力端Bに出力される。
【0036】
次に、図5に示すPDLデータ(PDL3)に基づきプリントアウトされる画像について説明する。既に説明した通り、図4(A)に示すPDL1(文書画像データ)を解釈して印刷すると、24ポイントの黒色文字列「テスト」が座標(2000、3500)を描画開始位置として描画された図6(A)に示す文書画像がプリントアウトされる。また、図4(B)に示すPDL2(背景画像データ)を解釈して印刷すると、図3(A)に示す背景画像がプリントアウトされる。
【0037】
PDL3では、PDL1のFontColorコマンドのパラメータが「Black」から「Cyan」に書き換えられているので、文書画像である文字列「テスト」の色は「黒」から「シアン」に変換される。また、PDL3では、PDL1の各物理ページにPDL2が挿入されるので、文字列の色が「シアン」に変換された文書画像に,図3(A)に示す背景画像が付加される。従って、PDL3を解釈して印刷すると、図6(B)に示す画像がプリントアウトされる。このプリントアウトされた画像を複写機で複写すると、図6(C)に示すように、文書画像の濃度は薄くなって判読が困難となる一方、背景画像に含まれていた潜像文字が浮かび上がり、複写物であることが明らかになる。
【0038】
以上の通り、本実施の形態の画像処理システムでは、プリントサーバに内蔵された画像処理装置において、PDL1(文書画像データ)が機密文書であると判定した場合に、自動的にPDL1とPDL2(背景画像データ)とを合成してPDL3を生成するので、機密文書に背景画像データを付加し忘れることが無く、複写による偽造を確実に防止することができる。
【0039】
また、PDL3を生成する段階で、PDL1の文字色を設定する命令を変換して、文書画像の文字色を複写機で再現され難い色に変更することができるので、文書画像が予め複写機で再現され難い色で作成されていない場合にも、プリントアウト時に文書画像の文字色を複写機で再現され難い色に変更することができ、予め再編集等を行う必要が無い。
【0040】
例えば、上記の機能を利用してプリントアウトされた機密文書は、複写機で再現されにくい色(例えば薄い青色)の文書画像に潜像文字を含む薄いグレーの背景画像が合成された画像となり、この機密文書を複写すると文書画像の再現濃度が低下し、機密文書の内容の判読が困難となる。一方、この機密文書の内容を判読しやすい濃度で複写再現するためには、複写機のコピー濃度を高くする必要があるが、複写機のコピー濃度を高くすると、背景画像中の潜像も高濃度で複写再現されるため、繰り返し複写することにより複写再現された警告文字等を消し去るといった不正複写を行うことができなくなる。
【0041】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、機密文書と判定されたPDLデータの文字色を予め登録された所定の文字色に変換する例について説明したが、第2の実施の形態では、予め複数の文字色を登録しておき、この複数の文字色から機密文書と判定されたPDLデータの文字色と最も近似する文字色を選択し、機密文書と判定されたPDLデータの文字色を選択された文字色に変換するものであり、文字色変換部26の処理動作以外は、第1の実施の形態と同様であるため、相違点のみ説明する。
【0042】
文字色変換部26には、予め16色の文字色が登録されている。この16色の文字色としては、ハイライトグレイ、赤系の淡色、青形の淡色等、種々の色調で且つ複写再現されにくい色が選定されている。文字色変換部26は、PDL1のFontColorコマンドのパラメータとして記述された文字色(設定された文字色)を抽出し、公知の色数削減処理(限定色化処理)を行い、予め登録されている16色の文字色から設定された文字色に最も近似する文字色を選択する。そして、PDL1のFontColorコマンドのパラメータを、選択された文字色に変換する。変換後のPDL1は、決定部22及び結合部23に出力され、第1の実施の形態と同様の処理がなされる。
【0043】
本実施の形態では、元の文書画像の文字色が黒の場合は、文字色がグレイに変換されてプリントアウトされ、元の文書画像の文字色が赤の場合は、文字色が淡色の赤に変換されてプリントアウトされる、という具合に、元の文書画像の色情報が保存されると共に、元の文書画像の文字色が複写機で再現されにくい色に変換されて機密文書がプリントアウトされる。この機密文書を複写すると文書画像の再現濃度が低下し、機密文書の内容の判読が困難となる。一方、この機密文書の内容を判読しやすい濃度で複写再現するためには、複写機のコピー濃度を高くする必要があるが、複写機のコピー濃度を高くすると、背景画像中の潜像も高濃度で複写再現されるため、繰り返し複写することにより複写再現された警告文字等を消し去るといった不正複写を行うことができなくなる。
【0044】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態では、機密文書と判定されたPDLデータの文字色の色調は保存したまま、明度を合成される背景画像データの明度と同じ明度へ変換するものであり、文字色変換部26の処理動作以外は、第1の実施の形態と同様であるため、相違点のみ説明する。
【0045】
文字色変換部26には、記憶部24に記憶されたPDL2(背景画像データ)の明度値が予め登録されている。文字色変換部26は、PDL1のFontColorコマンドのパラメータとして記述された文字色の色情報(例えばRGB値等の色設定値)を抽出し、その文字色の色情報を明度色差系の色空間へ変換して明度値及び色差値を取得する。色差値を変更することなく、明度値を予め登録されているPDL2(背景画像データ)の明度値に変換し、変換後の明度値及び色差値に基づいて元の色空間に逆変換し、変換する文字色の色情報を取得する。そして、PDL1のFontColorコマンドのパラメータを、変換する文字色の色情報(色設定値)に変換する。変換後のPDL1は、決定部22及び結合部23に出力され、第1の実施の形態と同様の処理がなされる。
【0046】
本実施の形態では、プリントアウトされた機密文書は、文字色の明度が背景画像の明度と同一であり、文書画像は複写再現され難くなる。この機密文書を複写すると文書画像の再現濃度が低下し、機密文書の内容の判読が困難となる。一方、機密文書の内容を判読しやすい濃度で複写再現するためには、複写機のコピー濃度を高くする必要があるが、複写機のコピー濃度を高くすると、背景画像中の潜像も高濃度で複写再現されるため、繰り返し複写することにより複写再現された警告文字等を消し去るといった不正複写を行うことができなくなる。
【0047】
(第4の実施の形態)
第1の実施の形態では、機密文書と判定されたPDLデータの文書内容(文字列)全部の文字色を予め登録された所定の文字色に変換する例について説明したが、第4の実施の形態では、一部の文字列の文字色を予め登録された所定の文字色に変換するものであり、画像処理システムの構成は第1の実施の形態と同様であるため説明を省略し、第1の実施の形態と相違する文字色命令検出部及び文字色変換部の処理動作を説明する。
【0048】
本実施の形態では、図7(A)に示すPDLを変換前のPDL1、図7(B)に示すPDLをPDL2とした場合の画像処理装置の処理動作を説明する。なお、各コマンドの意味とパラメータの例は、前記表1及び表2に示す通りである。図7(A)に示すPDL1では、Resolutionコマンドで主走査方向、副走査方向の解像度を各々600dpi、PaperSizeコマンドで用紙サイズをA4SEF、SetPointコマンドで描画開始位置を座標(2000、3500)に指定し、FontSizeコマンドでフォントのサイズを12、FontFaceコマンドでフォントの種類をゴシック、FontColorコマンドでフォントの色を黒色に指定して、DrawTextコマンドで「これは機密文書です」という文字列を描画している。このPDL1を解釈して印刷すると、図9(A)に示すように、12ポイントの黒色文字列「これは機密文書です」が座標(2000、3500)を描画開始位置として描画された、1つの論理ページを含む1つの物理ページがプリントアウトされる。また、図7(B)に示すPDL2は、図4(B)に示すPDL2と同一である。
【0049】
文字色命令検出部25には、予め所定の文字列(例えば「機密」)が登録されている。文字色命令検出部25は、PDL1が機密文書と判断された場合に、入力されたPDL1を解析して、文字色を設定するFontColorコマンドを検出し、パラメータとして記述された文字色(設定された文字色)を一時記憶する。また、同時に入力されたPDL1を解析して、文字列を描画するDrawTextコマンドを検出し、パラメータとして記述された文字列を抽出し、抽出した文字列から予め登録された所定の文字列を検索し、所定の文字列が含まれている場合は、FontColorコマンドの位置、所定の文字列の位置、及び設定された文字色を、文字色変換部26に通知する。
【0050】
文字色変換部26は、DrawTextコマンドのパラメータとして記述された文字列を、所定の文字列(「機密」)部分、所定の文字列前の部分、及び所定の文字列後の部分の3つに分割し、所定の文字列部分のみについて、設定された文字色が予め登録された所定の文字色に変更され、所定の文字列前の部分及び所定の文字列後の部分は、設定された文字色のまま維持されるように、FontColorコマンドのパラメータを書き換える。例えば、図7(A)に示すPDL1では、DrawTextコマンドのパラメータとして記述された文字列は「これは機密文書です」であり、設定された文字色は「黒」であるが、「これは機密文書です」という文字列を、「これは」「機密」「文書です」の3つの文字列に分割し、「機密」部分のみがシアン等の複写再現されにくい文字色になると共に、「これは」「文書です」部分が設定された文字色のまま維持されるように、「機密」部分のFontColorコマンドのパラメータを「Black」から「Cyan」に書き換えると共に、「これは」「文書です」部分のパラメータを「Black」のまま維持する。そして、変換後のPDL1を決定部22及び結合部23に出力する。
【0051】
図8に示すように、PDL3では、PDL1のDrawTextコマンドのパラメータとして記述された文字列「これは機密文書です」が「これは」「機密」「文書です」の3つの文字列に分割され、「機密」部分のFontColorコマンドのパラメータだけが「Black」から「Cyan」に書き換えられると共に、EndPageコマンドの直前にPDL2が結合されている。そして、画像処理装置の出力端Bからは、図8に示すPDL3が出力される。
【0052】
次に、図8に示すPDLデータ(PDL3)に基づきプリントアウトされる画像について説明する。既に説明した通り、図7(A)に示すPDL1を解釈して印刷すると、12ポイントの黒色文字列「これは機密文書です」が座標(2000、3500)を描画開始位置として描画された図9(A)に示す文書画像がプリントアウトされる。また、図7(B)に示すPDL2を解釈して印刷すると、図3(A)に示す背景画像がプリントアウトされる。
【0053】
図8に示すPDL3では、PDL1のDrawTextコマンドのパラメータとして記述された文字列のうち「機密」部分のFontColorコマンドのパラメータだけが「Black」から「Cyan」に書き換えられているので、文書画像の文字列「これは機密文書です」のうち「機密」部分の色だけが「黒」から「シアン」に変換される。
【0054】
また、PDL1の各物理ページにPDL2が挿入されるので、「機密」部分の色が「シアン」に変換された文書画像に、図3(A)に示す背景画像が付加される。従って、図8に示すPDL3を解釈して印刷すると、図9(B)に示す画像がプリントアウトされる。このプリントアウトされた画像を複写機で複写すると、図9(C)に示すように、文書画像のうち「機密」部分の濃度は薄くなって判読が困難となる一方、背景画像に含まれていた潜像文字が浮かび上がり、複写物であることが明らかになる。
【0055】
以上の通り、本実施の形態の画像処理システムでは、プリントサーバに内蔵された画像処理装置において、PDL1(文書画像データ)が機密文書であると判定した場合に、自動的にPDL1とPDL2(背景画像データ)とを合成してPDL3を生成するので、機密文書に背景画像データを付加し忘れることが無く、複写による偽造を確実に防止することができる。
【0056】
また、PDL3を生成する段階で、PDL1の文字色を設定する命令を変換して、文書画像の一部の文字列の文字色を複写機で再現され難い色に変更することができる。これにより、文書画像が予め複写機で再現され難い色で作成されていない場合においても、予め再編集等を行うことなく、プリントアウト時に文書画像の文字色を部分的に複写機で再現され難い色に変更することができる。
【0057】
例えば、上記の機能を利用してプリントアウトされた機密文書は、機密性の高い文字列(「機密」)だけが複写機で再現されにくい色(例えば薄い青色)で表現された文書画像に潜像文字を含む薄いグレーの背景画像が合成された画像となる。この機密文書を複写すると文書画像の機密性の高い文字列の再現濃度が低下し、機密文書の全体的な内容の判読が困難となる。一方、この機密文書の機密性の高い文字列の内容を判読しやすい濃度で複写再現するためには、複写機のコピー濃度を高くする必要があるが、複写機のコピー濃度を高くすると、背景画像中の潜像も高濃度で複写再現されるため、繰り返し複写することにより複写再現された警告文字等を消し去るといった不正複写を行うことができなくなる。
【0058】
上記第1〜第4の実施の形態では、PDLデータのDocumentNameコマンドのパラメータとして記述された文書ファイル名を抽出し、抽出された文書ファイル名に予め設定されたキーワードが含まれているか否かで機密文書であるか否かを判定する例について説明したが、他の方法で機密文書であるか否かを判定するようにしてもよい。例えば、PDLデータのDrawTextコマンドのパラメータとして記述された文書内容(文字列)を抽出し、抽出された文字列に予め設定されたキーワードが含まれているか否かで機密文書であるか否かを判定するようにしてもよい。また、PDLデータに機密文書であることを示す特定のコマンドを含めるようにして、そのコマンドの有無により機密文書であるか否かを判定するようにしてもよい。
【0059】
上記第1〜第4の実施の形態では、文書画像の文字色を所定の文字色に変更する例について説明したが、文書画像に含まれる図形やイメージ等、他の構成要素の色を所定の色に変更するようにしてもよい。また、色に代えて濃度を変更してもよく、色と共に濃度を変更してもよい。例えば、文書画像の文字色「黒」を「薄いグレー」に変更すると、この機密文書を複写した場合に、文書画像の再現濃度が低下し、機密文書の判読が困難になる。
【0060】
上記第1〜第4の実施の形態では、文書画像の構成要素の色を変更する例について説明したが、文書画像の構成要素の複写後の視認性が低下すればよく、背景画像の構成要素の色や濃度を変更するようにしてもよい。
【0061】
上記第4の実施の形態では、文書画像の機密性の高い文字列の文字色を所定の文字色に変更する例について説明したが、文書画像の特定の色(例えば、赤)または濃度に設定された文字列の色または濃度を所定の色または濃度に変更するようにしてもよい。
【0062】
【発明の効果】
本発明の画像処理装置は、背景画像を文書画像に合成して出力画像を生成する際に、文書画像の構成要素の複写後の視認性を低下させて、不正複写を防止することができる、という効果を奏する。
【0063】
また、入力手段から入力された文書画像データが特定文書に係るデータか否かを判定する判定手段を設け、判定手段により文書画像データが特定文書に係るデータであると判定された場合に、文書画像データと背景画像データとを結合させるようにすれば、特定文書に確実に背景画像を付加することができる。
【0064】
特に、複写による偽造を防止するために潜像が埋め込まれた背景画像を機密文書に係る文書画像に合成して出力画像を生成する際に、文書画像の少なくとも一部分の構成要素の複写後の視認性が低下するように、文書画像データ及び記憶手段から読み出した背景画像データの少なくとも一方を変換することにより、機密文書の複写後の視認性を低下させて、機密文書の不正複写を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態の画像処理システムの構成を示す構成図である。
【図2】第1の実施の形態の画像処理システムの画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図3】(A)〜(C)は、PDL2で描画される画像の例を示す図である。
【図4】(A)はPDL1の1例を示す図であり、(B)はPDL2の1例を示す図である。
【図5】PDL3の1例を示す図である。
【図6】(A)はPDL1に基づきプリントアウトされる画像の1例を示す図であり、(B)はPDL3に基づきプリントアウトされる画像の1例を示す図であり、(C)は(B)の画像を複写して得られる画像を示す図である。
【図7】(A)はPDL1の他の例を示す図であり、(B)はPDL2の他の例を示す図である。
【図8】PDL3の他の例を示す図である。
【図9】(A)はPDL1に基づきプリントアウトされる画像の他の例を示す図であり、(B)はPDL3に基づきプリントアウトされる画像の他の例を示す図であり、(C)は(B)の画像を複写して得られる画像を示す図である。
【符号の説明】
21 判定部
22 決定部
23 結合部
24 記憶部
25 文字色命令検出部
26 文字色変換部
71、72 クライアント装置
73 プリントサーバ
74 プリンタ
75 ネットワーク
Claims (14)
- コマンドと該コマンドに対応するパラメータとを含む文書画像データを入力する入力手段と、
コマンドと該コマンドに対応するパラメータとを含み且つ前記文書画像データと結合する背景画像データを記憶する記憶手段と、
文書画像の少なくとも一部分の構成要素の複写後の視認性が低下するように、前記文書画像データ及び記憶手段から読み出した前記背景画像データの少なくとも一方を変換する変換手段と、
少なくとも一方が変換された前記文書画像データと背景画像データとを結合する結合手段と、
を含む画像処理装置。 - コマンドと該コマンドに対応するパラメータとを含む文書画像データを入力する入力手段と、
コマンドと該コマンドに対応するパラメータとを含み且つ前記文書画像データと結合する背景画像データを記憶する記憶手段と、
前記入力手段から入力された文書画像データが特定文書に係るデータか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記文書画像データが特定文書に係るデータであると判定された場合に、文書画像の少なくとも一部分の構成要素の複写後の視認性が低下するように、前記文書画像データ及び記憶手段から読み出した前記背景画像データの少なくとも一方を変換する変換手段と、
少なくとも一方が変換された前記文書画像データと背景画像データとを結合する結合手段と、
を含む画像処理装置。 - 前記背景画像データを、複写による偽造を防止するために潜像が埋め込まれた背景画像データとし、前記判定手段が、入力された文書画像データが機密文書に係るデータか否かを判定するようにした請求項2に記載の画像処理装置。
- 前記文書画像の構成要素は、文書画像に含まれる文字、図形、及びイメージの少なくとも1つである請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
- 文書画像の構成要素の複写後の再現濃度を、背景画像の構成要素の複写後の再現濃度と同等とする、若しくは背景画像の構成要素の複写後の再現濃度より低下させる請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
- 文書画像の構成要素の複写後の視認性を、文書画像及び背景画像の構成要素の色及び濃度の少なくとも1つを変更して低下させる請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
- 文書画像の構成要素の色または濃度を、複写再現され難い色または濃度とする請求項6に記載の画像処理装置。
- 文書画像の構成要素の色を、背景画像と同じ明度で異なる色調とする請求項6に記載の画像処理装置。
- 前記文書画像データは、文書画像の構成要素の色に関する情報を含む請求項1〜8のいずれか1項に記載の画像処理装置。
- 前記背景画像データは、背景画像の色に関する情報を含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の画像処理装置。
- 前記文書画像データ及び前記背景画像データは、ページ記述言語で記述された請求項1〜10のいずれか1項に記載の画像処理装置。
- 前記文書画像データは、構成要素の色を指定するコマンドを含む請求項1〜11のいずれか1項に記載の画像処理装置。
- 前記背景画像データは、画像の色空間を指定するコマンドを含む請求項1〜12のいずれか1項に記載の画像処理装置。
- 前記文書画像データ及び前記背景画像データは、ラスタ画像データに変換前の画像データである請求項1〜13のいずれか1項に記載の画像処理装置。
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