JP3856667B2 - 灰溶融炉のパージ方法およびその装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、灰溶融炉、特に電気式溶融炉における溶融飛灰(ダスト)の付着成長を防止するためのパージ方法およびその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、都市ごみ等の焼却処理に伴って発生する焼却残渣(焼却灰、ばいじん)を、灰溶融炉を用いて溶融固化する処理方法が多く利用されている。その理由は、この溶融処理方法により、焼却残渣の減溶化が可能となり、最終処分場の延命化が図れることに加え、焼却残渣に含まれるダイオキシン類の分解および重金属類の溶出防止などの無害化が図れるからである。なお、この溶融処理方法において、溶融時に発生する排ガスに気化状態で存在する溶融飛灰は、下流の低温域で集塵装置等により回収される。ここで、溶融飛灰(以下、単に「ダスト」と称する。)とは、溶融により焼却残渣に含まれている低沸点の重金属(例えば、鉛、亜鉛、カドミウム等)や塩化物等が揮散し、冷却固化により下流の集塵装置で捕集される粉塵のことである。
【0003】
従来、例えば図2に示される電気溶融方式の灰溶融炉100においては、被溶融物102を溶融処理する際に発生する排ガス中の低沸点物質等が溶融炉本体101における排ガス出口103、スラグ出滓口104、覗き窓107等の各所でダスト化し付着成長して灰溶融炉100の連続運転が妨げられるという不具合が発生していた。この不具合を回避するために、排ガス出口103、スラグ出滓口104、覗き窓107等の各所では、パージ流体ホルダー105より供給されるパージ流体で気化状態のダストを含有する排ガスを溶融炉本体101内部へ追い返すように送風する、すなわちパージが行われるようにされている。なお、スラグ出滓口104等に供給されたパージ流体は、溶融炉本体101内部を通過して排ガス出口103から排ガスダクト106を介して系外に排出される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来技術では、前記パージ流体の温度が一般に常温であり、排ガスの温度と比べて著しく低温であるため、そのようなパージ流体を溶融炉本体101内部に向けて送風すると、溶融炉本体101内部が冷却されて溶融状態の悪化を招くという問題点がある。また、排ガス中に含まれる低沸点物質のダスト化を促進することとなり、ダストの付着成長を助長するという問題点もある。また、一般にパージ効果は送風される流体の容積に比例して高められるとされているが、前記パージ流体は常温であるため、所望のパージ効果を得るためには大量のパージ流体を送風させる必要があり、このため溶融炉本体101から排出される排ガス量が増加することとなって、排ガスダクト106並びにこの排ガスダクト106の下流に付設される設備等の大型化を招くという問題点がある。
【0005】
本発明は、このような問題点を解消するためになされたもので、炉の運転に支障を来すことなくダストの付着成長を防止することができるとともに、パージ流体の供給量を抑制しても十分なパージ効果を得ることができる灰溶融炉のパージ方法およびその装置を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段および作用・効果】
前記目的を達成するために、第1発明による灰溶融炉のパージ方法は、
溶融炉本体内部に向けて送風されるパージ流体によってダストの付着成長を防止する灰溶融炉のパージ方法において、
前記パージ流体を加熱し高温化することを特徴とするものである。
【0007】
本発明によれば、加熱されて高温化されたパージ流体が溶融炉本体内部に向けて送風されるので、溶融炉本体内部の温度低下が抑制されるとともに、排ガス中の揮散物質のダスト化が抑制される。したがって、炉の運転に支障を来すことなくダストの付着成長を防止することができる。また、本発明によれば、パージ流体は加熱されて高温化されることで実容積が増加されるので、供給量を抑制しても十分なパージ効果を得ることができ、パージ流体供給設備並びに排ガス処理関連設備の小型化を図ることができる。なお、前記パージ流体としては、例えば酸化炉では空気、還元炉では窒素などが用いられて好適である。
【0008】
次に、第2発明による灰溶融炉のパージ装置は、
溶融炉本体内部に向けて送風されるパージ流体によってダストの付着成長を防止するように構成される灰溶融炉のパージ装置において、
前記溶融炉本体内部へのパージ流体供給路途中に加熱器を設けることを特徴とするものである。
【0009】
本発明は、第1発明による灰溶融炉のパージ方法を具体化するための装置に関わるものである。本発明によれば、前記パージ流体は前記加熱器によって加熱されて高温化されるので、前記第1発明と同様の作用効果を奏する。また、パージ流体供給路途中に加熱器を設けるという簡易な構成で、所望の目的を達成することができるので、新設、既設を問わず容易に付設できるという利点がある。
【0010】
前記第2発明において、前記パージ流体は、前記溶融炉本体に連設される排ガスダクトおよび排ガスダクト清掃装置を冷却した後に、前記加熱器に供給されるのが好ましい(第3発明)。このようにすれば、排ガスダスト清掃装置および排ガスダクトを冷却する際の熱交換によって予め加熱されたパージ流体が更に前記加熱器にて加熱されるので、その加熱器の容量の小型化を図ることができるという効果を奏する。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に、本発明による灰溶融炉のパージ方法およびその装置の具体的な実施の形態につき、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1には、本発明の一実施形態に係る灰溶融炉のパージ装置の概略システム構成図が示されている。
【0013】
本実施形態に係る灰溶融炉1(例えばプラズマ式溶融炉)は、還元炉であって、溶融炉本体2と、この溶融炉本体2に付設され、図示省略されるごみ焼却炉における焼却残渣等の被溶融物10が投入されるホッパ3と、このホッパ3に投入された被溶融物10を溶融炉本体2内に供給する灰供給装置11とを備えて構成されている。この灰溶融炉1においては、前記溶融炉本体2に装備されるプラズマトーチ4にプラズマ生成用ガスを供給し、電圧を印加して10000℃以上の高温、高速のプラズマを発生させ、被溶融物10を連続的に溶融するようにされている。そして、溶融処理された被溶融物10は、順次溶融スラグとされてオーバーフロー部より溢流され、スラグ出滓口6よりシュート5を介してスラグコンべヤ7の水冷槽に投入され、このスラグコンべヤ7により系外に排出される。一方、溶融時に発生するガスは、溶融炉本体2の天井部に連設される排ガスダクト9を介して下流の排ガス処理設備(図示省略)に送入される。なお、排ガスダクト9には、この排ガスダクト9内部に付着したダストを除去するための排ガスダクト清掃装置8が付設されている。
【0014】
本実施形態における灰溶融炉のパージ装置30は、スラグ出滓口6や排ガス出口12、覗き窓13等(以下、これらをまとめて「スラグ出滓口6等」と称する。)が加熱器20を介してパージ流体ホルダー15と連通するように接続されてなるパージ流体供給路21と、パージ流体ホルダー15から供給される流体にて排ガスダクト9および排ガスダクト清掃装置8が冷却されるように接続されてなる付帯設備冷却用流体供給路22と、この付帯設備冷却用流体供給路22の還流路であって、前記パージ流体供給路21と合流するように接続されてなる付帯設備冷却用流体還流路23とを備えて構成されている。
【0015】
前記パージ流体ホルダー15は、パージ流体を蓄えるとともに、必要に応じて前記パージ流体供給路21および付帯設備冷却用流体供給路22にその蓄えられたパージ流体を流通させることができるように構成された容器である。なお、本実施形態においては、灰溶融炉1が還元炉であるため、パージ流体として窒素が用いられている。一方、前記加熱器20は、パージ流体を加熱するための機器であって、パージ流体の温度を700℃程度まで昇温させる機能を有している。
【0016】
このように構成される灰溶融炉のパージ装置30においては、排ガス清掃装置8および排ガスダクト9が高温の溶融排ガスに曝されることから、これらを冷却する必要があり、パージ流体ホルダー15から付帯設備冷却用流体供給路22を介して供給されるパージ流体によって、それら排ガスダクト清掃装置8および排ガスダクト9の冷却が行われる。こうして、排ガスダクト清掃装置8および排ガスダクト9の冷却が行われた結果、パージ流体ホルダー15において常温(20℃)であったパージ流体が約70℃程度まで昇温される。こうして、昇温されたパージ流体は、付帯設備冷却用流体還流路23を介してパージ流体供給路21と合流され、パージ流体ホルダー15から直接パージ流体供給路21に送出されたパージ流体とともに更に加熱器20にて加熱されて約700℃以上まで昇温された後、スラグ出滓口6等に送入され、排ガスを溶融炉本体101の内部へと追い返すように送風される。このように、本実施形態では、加熱されて高温化されたパージ流体によって、気化状態のダストを含有する排ガスを溶融炉本体101の内部へと追い返すように送風する、すなわち排ガスをパージすることで、スラグ出滓口6等におけるダストの付着成長が防止される。
【0017】
本実施形態によれば、加熱されて高温化(常温から700℃以上)されたパージ流体を溶融炉本体2内部に向けて送風することによって、溶融炉本体2内部の温度低下および排ガス中の揮散物質のダスト化を抑制しつつ排ガスを溶融炉本体2内部へとパージすることができ、これによって炉の運転に支障を来すことなくスラグ出滓口6等におけるダストの付着成長を防止することができる。また、パージ流体が加熱されて高温化されることによって、溶融炉本体2内部に向って送風されるパージ流体の実容積が増加されるので、パージ流体ホルダー15から供給されるパージ流体の量が少量であっても、十分なパージ効果を得ることができ、その結果パージ流体供給設備(例えばパージ流体ホルダー15)の小型化が図れるという効果を奏する。また、こうして、所望のパージ効果を得るために必要なパージ流体の供給量を抑制することができるに伴い、溶融炉本体2内からの排ガス量の増加を抑制することができるので、図2に示される従来技術と比較して、ガス処理に伴う付帯設備、例えば排ガスダクト9やその下流に配される図示されない燃焼室、冷却塔、集塵装置、煙突等の小型化を図ることができる。
【0018】
また、本実施形態においては、排ガスダスト清掃装置8および排ガスダクト9を冷却する際の熱交換によって予め加熱されたパージ流体が更に加熱器20にて加熱される構成とされているので、加熱器20の容量の小型化を図ることができるという効果を奏する。
【0019】
本実施形態では、灰溶融炉1が還元炉であるため、パージ流体として窒素が用いられた例を示したが、これに限られず、酸化作用をもたらさない流体の中から適宜選択したものをパージ流体として用いることができるのは言うまでもない。また、灰溶融炉1が酸化炉である場合には、パージ流体として、例えば空気等の流体が用いられるのが好適な態様である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る灰溶融炉のパージ装置の概略システム構成図である。
【図2】図2は、従来の灰溶融炉のパージ装置の概略システム構成図である。
【符号の説明】
1 灰溶融炉
2 溶融炉本体
6 スラグ出滓口
15 パージ流体ホルダー
20 加熱器
21 パージ流体供給路
22 付帯設備冷却用流体供給路
23 付帯設備冷却用流体還流路
Claims (3)
- 溶融炉本体内部に向けて送風されるパージ流体によってダストの付着成長を防止する灰溶融炉のパージ方法において、
前記パージ流体を加熱し高温化することを特徴とする灰溶融炉のパージ方法。 - 溶融炉本体内部に向けて送風されるパージ流体によってダストの付着成長を防止するように構成される灰溶融炉のパージ装置において、
前記溶融炉本体内部へのパージ流体供給路途中に加熱器を設けることを特徴とする灰溶融炉のパージ装置。 - 前記パージ流体は、前記溶融炉本体に連設される排ガスダクトおよび排ガスダクト清掃装置を冷却した後に、前記加熱器に供給される請求項2に記載の灰溶融炉のパージ装置。
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