JP3856200B2 - 地盤改良工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、交差噴流を用いて改良するべき地盤中に地中固結体を造成する地盤改良工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
水平翼を有するロッドを挿入し、上下1対の水平翼先端部から固化材の高圧交差噴流を噴射し、ロッドを回転して固化材の高圧交差噴流により地盤を切削・撹拌しつつ、ロッドを地上側に引き上げ、円柱状の地中固結体を造成する地盤改良工法が存在する。
【0003】
係る地盤改良工法において、水平翼先端よりも半径方向内方の領域を良好に地盤改良するため、比較的低圧にて固化材をロッドから吐出している。
【0004】
ここで、低圧の固化材吐出に際しては、引き抜きタイプ(引き抜き時に固化材を吐出するタイプ)Vでは、図11で示す様に、低圧の固化材は水平翼の上方から吐出しないと、水平翼の撹拌効果により良好な混合が困難である。一方、貫入タイプ(貫入時に固化材を吐出するタイプ)では、図12で示す様に、最下方の水平翼よりも下方から低圧で固化材を吐出し、水平翼で撹拌して、地盤と固化材とを混合している。
【0005】
上記二つのタイプの工法の内、貫入タイプが一般的であるが、地盤改良工法を施工する地盤の土性にバラツキがあり、貫入速度が一定に制御できない様な地盤に対して施工する際には、引き抜きタイプの工法を使用している。
しかし、引き抜きタイプでは、交差噴流による地盤切削前に、水平翼の上方から吐出圧の低い固化材を吐出するので、最深部に位置する際に、水平翼間には固化材が回り難い。
従って、その領域には固化材が不足すると言う不具合が生じていた。
【0006】
上記不具合に対処するために、前記上下1対の水平翼の上下から低圧の固化材を吐出することが考えられる。
しかし、その場合には、高圧噴流用の流路及び高圧気体用の流路をロッドに形成することに加えて、低圧の固化材の吐出を上下で独立して制御するため、当該ロッドを4重管以上の多重管とする必要があり、継ぎ手及び、装置全体の構造が複雑化してしまうと言う問題を残している。
【0007】
更に従来技術では、交差噴流により造成される固結体の直径(或いは強度)を均一にするため、ロッドの引上げ速度を一定に制御する必要があった。このため、必要以上に固化材を噴射しなければならない場合もあり、コスト高騰の要因にもなっていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述した従来技術に鑑みて提案されたものであり、装置及び工程管理を簡素化し、コスト低減を図り、地盤の土性のバラツキに対処することが出来て、しかも、固化材が不足する領域が生じることを防止出来る地盤改良工法の提供を目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、回転するロッドRに第1の水平翼M1と第2の水平翼M2とを設け、それらの両水平翼M1、M2の先端に高圧エアで包囲された固化材が互いに交差するように高圧で噴射させるノズルN1、N2が設けられ、それらのノズルN1、N2からの固化材による地盤改良工法において、前記ロッドの前記第1および第2の水平翼M1、M2の中間に固化材吐出手段N3を設け、前記ロッドRを回転させて第1および第2の水平翼M1、M2で地盤を攪拌しながらロッドRを地盤中に貫入させ、次いで前記ロッドを回転させながら前記ノズルN1、N2から高圧エアと共に固化材の交差噴流JJで地盤Eを掘削粉砕し、同時に固化材吐出手段N3から低圧の固化材を吐出させて前記ロッドを引き上げるようになっている。
【0010】
また本発明によれば、回転するロッドRに第1の水平翼M1と第2の水平翼M2とを設け、それらの両水平翼M1、M2の先端に高圧エアで包囲された固化材が互いに交差するように高圧で噴射させるノズルN1、N2が設けられ、それらのノズルN1、N2からの固化材による地盤改良工法において、前記ロッドの前記第1および第2の水平翼M1、Mの中間に低圧気体吐出ノズルN30を設け、前記ロッドRを回転させて第1および第2の水平翼M1、M2で地盤を攪拌しながらロッドRを地盤中に貫入させ、次いで前記ロッドを回転させながら前記ノズルN1、N2から高圧エアと共に固化材の交差噴流JJで地盤Eを掘削粉砕し、同時に低圧気体吐出ノズルN30から低圧の固化材を吐出させて前記ロッドを引き上げるようになっている。
【0013】
係る構成を具備する本発明によれば、低圧固化材の吐出が貫入時或いは引き抜き時の何れであっても、同一の装置により施工が可能となる。
【0014】
ここで、前記水平翼先端のノズルは二重管で構成されており中心側の管状体からは高圧の固化材が、中心の管状体と外側の管状体で形成される管路、即ち環状管体からは高圧のエアが噴射される様に構成されている。したがって交差噴流は固化材噴流をエア噴流が包囲しており、該エア噴流のエアが切削対象である地盤の壁に跳ね返り、上昇して、上昇気流を形成する。
【0015】
一方、高圧交差噴流の到達点の軌跡は螺旋状を描く。これと前記上昇気流の軌跡との相乗作用により、固化材の噴流により切削された地盤と固化材とが、全領域に亘って均等に撹拌・混合され、固化材の不足領域が生じることを防止する。
【0016】
低圧固化材吐出量を調整することにより改良体積に対する固化材配合量(或いは添加量)の制御が可能となり、ロッド引き上げ速度を均一化出来、施工の容易化及びコスト低減が図られる。
【0017】
また、低圧の固化材に代えて気体を噴射した場合には、低圧エアの上昇気流により、水平翼間の領域に負圧が発生し、該負圧の作用により水平翼から噴射される固化材は水平翼から離隔しようとしても、水平翼間の領域に吸い込まれる。
したがって、低圧エアの吐出量(或いは吐出圧)を調節することにより上昇気流の量を調節して、周囲からの固化材回り込み量を調整することができる。
【0018】
上述の如く、改良体積に対する固化材の配合量(或いは添加量)の制御は引き上げ速度以外で調整できるので、ロッド引き上げ速度を一定とすることが出来、効率的な施工が容易となる。
【0021】
本発明の実施に際して、最下方の水平翼の直上に位置する水平翼の上方に、別個の翼を設けることが好ましい。
係る翼を設けることにより、貫入時に土壌を細かく破砕することが出来る。その結果、引き抜き時に、スライム(排泥)の流動性を向上して、スライム排出効率を向上することが出来る。
【0022】
さらに、撹拌ヘッドの代わりに、最下方の水平翼の下側に、掘削ビットを設けることが好ましい。こうすることにより貫入時に土壌を破砕し、混合撹拌効率が向上する。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1実施形態に関して、図1〜図7に基づき説明する。
図1及び図2において、全体を符号Fで示す固化材噴射装置は、ロッドRと、該ロッドRに夫々直交する最下方の第1の水平翼M1と、その直上の第2の水平翼M2と、該第1の水平翼M1と第2の水平翼M2との間におけるロッドRの領域に設けられた低圧固化材吐出ノズル(請求項3では「固化材吐出手段」と記載)N3、とにより構成される。
尚、図1中、破線で示したノズルN3の位置は変位可能である。又、図2においてDoは交差噴流JJの到達点の軌跡を、Diは後述の前記第1の水平翼M1及び第2の水平翼M2の先端に設けられたノズルN1、N2の先端の軌跡を表す。
【0024】
ノズルN1及びN2は、図3の部分断面図及び、図3のX―X断面図である図4に示す様に内管Tiと外管Toとを有する二重管で構成されており、内管Tiからは高圧の固化材が、内管Tiと外管Toとで画成された環状の流路tからは高圧のエアが噴射される様に構成されている。
【0025】
図1に戻り、したがって固化材の高圧噴流J1、J2により構成される交差噴流JJは高圧エア噴流ja1で包囲されており、該高圧エア噴流ja1によって付勢されている。又、前記低圧固化材吐出ノズルN3からは低圧の固化材の吐出流Jbが吐出される。
【0026】
尚、図1、図2においてY1はロッドの回転方向を、Y2、Y3は固化材噴射装置Fの上下動を示す。
【0027】
係る構成を具備する本発明によれば、図5(地盤切削時の状態図)に示す様に固化材噴射装置FはロッドRをY1方向に回転させながら第1の水平翼先端のノズルN1、及び第2の水平翼M2先端のノズルN2から固化材の高圧噴流J1、J2を噴射し、交差噴流JJを形成する。
【0028】
交差噴流JJの先端は地盤Eに衝突し、これを掘削・粉砕する。この時、前記固化材の高圧噴流J1、J2の周囲は前記ノズルの内管Tiと外管Toとで形成された環状の流路tから噴射された高圧エア噴流ja1で包囲されており、前記固化材の高圧噴流J1、J2の勢いは減少しない。
また、高圧エア噴流ja1は壁面に衝突した後、上昇気流ja2となってロッド周囲Bの図示しない開口部から大気に放出される。
【0029】
一方、前記低圧固化材吐出ノズルN3からは低圧の固化材が吐出流Jbとなって吐出されている。吐出後の吐出流は図6に示す様に螺旋の軌跡jbを描く。
【0030】
従来技術では前述の低圧固化材の吐出が無く、第1、第2の水平翼M1、M2と固化材の高圧噴流J1、J2で囲われた領域内に掘削・粉砕された地盤と高圧固化材が十分に回り込まず、特にロッドセンタ近傍では高圧固化材の濃度が薄くなってしまったが、本発明では前記低圧固化材吐出ノズルN3からの低圧固化材の吐出流Jbにより粉砕地盤と固化材が効率よく混合撹拌され、固化材の濃度が増すことが出来、均質な改良地盤が得られる。
【0031】
また、図7に示すように、交差噴流JJ、高圧エア噴流ja1及び低圧固化材の吐出流Jbの混合した螺旋状の流れSJを前記上昇気流ja2が包むことにより更に粉砕された地盤と固化材が混合・撹拌され易くなっている。
【0032】
さらに、ロッド引き上げ速度を一定のまま、低圧固化材吐出量を調整することにより固化材濃度の制御が可能となり、均質な地盤改良、施工の容易化及びコスト低減が図られる。
それに加えて、貫入タイプであっても、引き抜きタイプであっても、同一種類の機器を使用することが出来る。
【0033】
本発明の第2実施形態を図8に基づき説明する。
全体を符号Fで示す固化材噴射装置は、前述の第1実施形態に対して、低圧固化材吐出ノズルN3を低圧気体吐出ノズルN30に置換え、気体としては低圧エアを用いる点が異なるのみでその他は同じである。異なる点に関して作用・効果を中心に、説明する。
【0034】
固化材噴射装置Fは、ロッドRをY1方向に回転させながらノズルN1、N2から固化材の高圧噴流J1、J2を噴射し、交差噴流JJを形成する。
この時、前記固化材の高圧噴流J1、J2の周囲は第1実施形態と同様な仕組みで高圧のエア噴流ja1で包囲されされており、前記固化材の高圧噴流J1、J2はその勢いは衰えない。
交差噴流JJの先端は図示しない地盤を掘削・粉砕する。
【0035】
一方、前記低圧気体吐出ノズルN30からは大気圧よりは高いが、前記高圧エア噴流ja1より低圧のエア噴流JcがロッドR軸に直行する方向(水平方向)に噴射されている。
他方、前記高圧の交差噴流JJ及びエア噴流ja1は、地盤を切削し、該地盤の切削片共々前記低圧のエア噴流Jcとの圧力差により、中央(ロッドR軸側)に引きこまれる。即ち、低圧エアにより、水平翼間の領域に負圧が発生し、該負圧の作用により、水平翼から噴射される固化材は水平翼から離隔しようとしても、水平翼間の領域に吸い込まれる。
地盤を切削した高圧噴流は、低圧のエア噴流Jcと混じり合って上昇気流jacを形成し上方に抜ける。
【0036】
したがって、低圧エアの吐出量或いは前記水平翼先端から噴射される高圧の交差噴流JJ及びエア噴流ja1を調節することにより上昇気流の量を調節して、周囲からの固化材回り込み量を調整することができる。
【0037】
本発明の第3実施形態を図9に基づき説明する。
全体を符号F2で示す固化材噴射装置は、ロッドRと、該ロッドRに夫々直交する最下方の第1の水平翼M1と、その直上の第2の水平翼M2と、該第2の水平翼M2の直上の別個の翼M3、とにより構成される。
【0038】
係る構成を具備する本発明の固化材噴射装置によれば、地盤への貫入時には、土壌を細かく破砕することが出来る。又、引抜き時には、スライム(排泥)の流動性を向上してスライム排出効率を高めることが出来る。
【0039】
本発明の第4実施形態を図10に基づき説明する。
全体を符号F3で示す固化材噴射装置は、ロッドRと、該ロッドRに夫々直交する最下方の第1の水平翼M1と、その直上の第2の水平翼M2、とにより構成される。
また、前記第1の水平翼M1と、第2の水平翼M2の先端にはノズルN1、N2が設けてある。前記第1の水平翼M1、第2の水平翼M2およびノズルN1、N2の働きに関してはその他の実施例と同じであるので説明を省略する。
前記最下方の第1の水平翼M1の下側には掘削ビットMbが複数個(図示では8個)設けてある。
【0040】
したがって、固化材噴射装置の地盤への貫入時には、前記掘削ビットMbが土壌を破砕するために混合撹拌効率が向上する。
【0041】
係る構成を具備する本発明の地盤改良工法及びそれに用いられる装置によれば、装置及び工程管理を簡素化し、コスト低減を図り、地盤のバラツキに対処することが出来て、しかも、固化材が不足する領域が生じることを防止出来る。
【0042】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない旨を付記する。
例えば、図示の実施形態では固化材噴射装置から2方向に向かって高圧の固化材噴流が噴射されているが、本発明は2方向へ噴射する場合のみに限定する訳ではない。1方向へのみ固化材を噴射しても良いし、或いは、3以上の方向へ固化材を噴射しても良い。
【0043】
【発明の効果】
本発明の作用効果を以下に列記する。
(a) 固化材噴射装置を簡素化出来る。
(b) 工程制御・工程管理が簡素化出来る。
(c) 固化材噴射装置を簡素化出来、且つ、工程制御・工程管理が簡素化出来ることにより、工期を短縮し、コストを削減出来る。
(d) 地盤のばらつきに対処出来る。
(e) 固化材不足領域を生じさせない(改良土壌の均質化が図られる)。
(f) スライム(排泥)の排出効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す側面図。
【図2】図1の平面図。
【図3】図1のノズルN1及びN2の部分断面詳細図。
【図4】図3のX―X断面図。
【図5】本発明の第1実施形態で地盤を切削している状態を示す図。
【図6】図5の平面図で、特に噴射された固化材の軌跡を示す図。
【図7】噴射された固化材と上昇気流の軌跡を示す図。
【図8】本発明の第2実施形態を示す側面図。
【図9】本発明の第3実施形態を示す側面図。
【図10】本発明の第4実施形態を示す側面図。
【図11】従来技術を示す側面図。
【図12】その他の従来技術を示す側面図。
【符号の説明】
F・・・固化材噴射装置
J1・・・固化材の噴流
Ja1・・・エア噴流
Ja2・・・上昇気流
JJ・・・交差噴流
M1・・・第1の水平翼
M2・・・第2の水平翼
N1・・・ノズル
R・・・ロッド
Claims (2)
- 回転するロッド(R)に第1の水平翼(M1)と第2の水平翼(M2)とを設け、それらの両水平翼(M1、M2)の先端に高圧エアで包囲された固化材が互いに交差するように高圧で噴射させるノズル(N1、N2)が設けられ、それらのノズル(N1、N2)からの固化材による地盤改良工法において、前記ロッドの前記第1および第2の水平翼(M1、M2)の中間に固化材吐出手段(N3)を設け、前記ロッド(R)を回転させて第1および第2の水平翼(M1、M2)で地盤を攪拌しながらロッド(R)を地盤中に貫入させ、次いで前記ロッドを回転させながら前記ノズル(N1、N2)から高圧エアと共に固化材の交差噴流(JJ)で地盤(E)を掘削粉砕し、同時に固化材吐出手段(N3)から低圧の固化材を吐出させて前記ロッドを引き上げることを特徴とする地盤改良工法。
- 回転するロッド(R)に第1の水平翼(M1)と第2の水平翼(M2)とを設け、それらの両水平翼(M1、M2)の先端に高圧エアで包囲された固化材が互いに交差するように高圧で噴射させるノズル(N1、N2)が設けられ、それらのノズル(N1、N2)からの固化材による地盤改良工法において、前記ロッドの前記第1および第2の水平翼(M1、M2)の中間に低圧気体吐出ノズル(N30)を設け、前記ロッド(R)を回転させて第1および第2の水平翼(M1、M2)で地盤を攪拌しながらロッド(R)を地盤中に貫入させ、次いで前記ロッドを回転させながら前記ノズル(N1、N2)から高圧エアと共に固化材の交差噴流(JJ)で地盤(E)を掘削粉砕し、同時に低圧気体吐出ノズル(N30)から低圧の固化材を吐出させて前記ロッドを引き上げることを特徴とする地盤改良工法。
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