JP3854866B2 - ミコフェノール酸およびその誘導体の製造方法 - Google Patents

ミコフェノール酸およびその誘導体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
本発明は、式(I):
【0002】
【化2】
Figure 0003854866
【0003】
[式中、R1 はメチル基を意味し、R2 はヒドロキシル基を表す]
のミコフェノール酸およびその誘導体[式(I)において、R1 はメチルまたはヒドロキシメチル基を意味し、R2 はアミノ基である]の微生物学的製造方法に関する。式(I)のミコフェノール酸[(E)−6−(1,3−ジヒドロ−4−ヒドロキシ−6−メトキシ−7−メチル−3−オキソ−5−イソベンゾフラニル)−4−メチル−4−ヘキセン酸]は、その免疫抑制作用に起因して、治療用途に使用される。
【0004】
ミコフェノール酸は1896年にペニシリウム・グラウクム(Penicillium glaucum)の発酵ブロス中で初めて報告され[E.L.Jonesら:J.Invest.Dermatol.65,537(1975)]、後に、例えばペニシリウム・ブレビコンパクツム(P.brevicompactum)、ペニシリウム・ストロニフェルム(P.stoloniferum)、ペニシリウム・エキヌラツム(P.echinulatum)、ペニシリウム・ロックフォルティ(P.roqueforti)およびペニシリウム・ビリディカツム(P. viridicatum)などのペニシリウム属の他の種の発酵ブロスからも単離された。ミコフェノール酸の構造はJ.M.Birkinshawら[Biochem. J. 50,630(1952)]によって1952年に決定された。ミコフェノール酸の発見後にその抗細菌活性も記載されたが、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属の病原性株がミコフェノール酸に対する耐性を速やかに獲得したため、この分野がさらに発達することはなかった[E.P.Abrahamら:Biochem.J.39,398(1945)]。エピデルモフィトン(Epidermophyton)属およびトリコフィトン(Trichophyton)属のいくつかの株に対する本化合物の抗真菌活性も明らかにされている。同様に、その抗ウイルス作用も、とりわけ単純疱疹ウイルスに対して立証されている[R.H.Williamsら:J.Antibiot.21,463(1968)]。また、その抗腫瘍活性も公表され、近年集中的に研究されるようになった[Y. Sidiら:Br. J. Cancer 58,61(1988)]。80年代後半に記載されたミコフェノール酸のモルホリノエチルエステル誘導体は免疫抑制剤としての治療的使用が認可されている。
ミコフェノール酸の広範な生物学的効力は、この化合物がイノシン−5’−モノリン酸デヒドロゲナーゼ酵素およびグアニン−5’−モノリン酸シンテターゼ酵素の活性に対して阻害作用を持ち、それがグアニン合成量の低下を引き起こすことによって説明することができる。このグアニン合成は、一部の細胞において、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ酵素により、他の経路でも達成することができる。しかし、Tリンパ球およびBリンパ球にはこの酵素がないので、これらリンパ球の成長はミコフェノール酸によって選択的に阻害される。
【0005】
1970年代の初頭に、多くのミコフェノール酸誘導体が製造された。修飾は微生物学的手段および化学的手段により、イソベンゾフラニル環にも4−メチル−4−ヘキセン酸側鎖にも施された[D.F.Jonesら:J.Chem.Soc.1725(1970)]。一部のミコフェノール酸誘導体は抗腫瘍試験でミコフェノール酸に近い活性を示している[M.J.Sweeneyら:Cancer Research 32,1795(1972)]。イノシン−5' −モノリン酸デヒドロゲナーゼに対してミコフェノール酸より高い阻害作用を発揮するミコフェノール酸誘導体もあった[M.J.Sweeneyら:CancerResearch 32,1803(1972)]。
【0006】
一側面として、本発明は、その使用によってミコフェノール酸を文献公知の方法よりも有利に製造することができる微生物の選択および遺伝的改良を目指した。
もう一つの側面として、本発明は、ミコフェノール酸および治療的に有効である可能性を持つ新規ミコフェノール誘導体の微生物学的製造方法を目指した。
微生物由来の新規活性物質を探索する研究の過程で、本発明者らは、様々な地域で収集した土壌試料から分離された微生物を調べた。抗真菌剤スクリーニングプログラムの一環として、発酵ブロス中にミコフェノール酸を含有する真菌株を分離した。この株から、突然変異選抜法により、高濃度のミコフェノール酸を産生する突然変異株を作出した。突然変異原として紫外線照射とN−メチル−N−ニトロ−N' −ニトロソグアニジンを利用した。
【0007】
ミコフェノール酸の生合成は、ペニシリウム・グラウクム、ペニシリウム・ストロニフェルム、ペニシリウム・ブレビコンパクツム、ペニシリウム・スカブルム(Penicillium scabrum)、ペニシリウム・ナゲミ(Penicillium nagemi)、ペニシリウム・パトリスメイ(Penicillium patrismei)、ペニシリニウム・グリセオブルンネウム(Penicillium griseobrunneum)およびペニシリウム・ビリディカツムの株について記載されている。ミコフェノール酸の生合成の過程で、この分子のイソベンゾフラン部分は、それに結合している側鎖とは異なる方法で形成される。側鎖の生合成はファルネシルピロリン酸まではステロイド骨格の合成に従う。イソベンゾフラン部分は1分子のアセチルCoAと3分子のマロニルCoA−sから形成される。芳香環上のメチル基はS−アデノシルメチオニンから当該分子内に組み込まれる。8員鎖を切り離すことでミコフェノール酸の側鎖を形成するファルネシルピロリン酸はイソベンゾフラン環のC−6に結合される。この生合成の最終工程は、S−アデノシルメチオニンからのメトキシル基の形成を含む[W.L. Muthら:Antimicrobial Agents and Chemotherapy 8,321(1975)]。
【0008】
文献に記載されているミコフェノール酸産生株は全てペニシリウム属のアシンメトリカ(Asymmetrica)節に属する。分類学的決定によれば、本発明者らが分離した株はペニシリウム属内のモノベルチシラータ(Monoverticillata)亜属に属し、ミコフェノール産生能を持つことは文献には今まで報告されていない種ペニシリウム・ワクスマニ(Penicillium waksmani)に分類することができる。
分類学的決定を以下に述べる。
【0009】
一般的な培養形態上の特徴:
本新規分離株は、分生子柄の形成ならびに分枝、メトレおよびそのフィアライドの配置に関して、ペニシリウム属に特有の典型を示す。その胞子形成性気中菌糸体は通常ビロード様で、よく発達している。成熟状態において、デンプン+硫酸アンモニウム寒天培地では暗い茶灰色;サブロー(Sabouraud)ペプトン+グルコース寒天培地では明るい茶灰色;サブローグルコース寒天培地では暗い灰色;アスパラギン+グリセロール培地では明るい緑色;牛血を添加したツァペック(Czapek)(硝酸塩+スクロース)寒天培地では茶黒色;単純なツァペック培地では暗い茶灰色;麦芽寒天培地では暗色化する緑色;麦芽エキス+酵母エキス+グルコース寒天培地では暗色化する茶灰色;オートフレーク寒天培地では暗い茶灰色である。最初は、多数の菌糸が培養培地上で緑色または青緑色であることが多いが、成熟した気中菌糸体は灰色または茶灰色である。一般に、本株の基底菌糸体は無色または淡黄褐色である。可溶性色素の産生はどの培地でも観察されなかった。コロニー表面のしわは少ない。気中菌糸体の平均厚は、1〜3mmを越えない。メラニン様色素の産生(チロシナーゼ活性)は陰性である。
【0010】
分生子柄の長さは極めて多様である。分生子柄は、多くの場合、基底菌糸体から直接成長するが、長い軸糸の側方分枝である場合もある(図1a〜fの分生子柄タイプを参照されたい;a、d、eおよびfはアスパラギン+グリセロール寒天培地;bは麦芽寒天培地;cはデンプン+硫酸アンモニウム寒天培地;gは分生子鎖)。圧倒的多数が一つのフィアライド輪からなるブラシを持つことから、本株は、モノベルチシラータ種に分類することができる。このモノベルチシラータ型のブラシは「ディバリカータ(divaricata)」形に配置される場合が極めて多い(図1参照)。ビベルチシリウム(Biverticillium)型の分生子柄もそれぞれ別途観察することができる(図1参照)。フィアライドによって形成される輪は2〜8(ほとんどの場合、3)構成である。分生子は丸く、ほとんどの場合、2〜25μmの大きさで、平滑な表面を持つ。分生子鎖中の分生子数は20を超える場合もある。
【0011】
生理学的性質:
エスクリン加水分解:陽性。硫化水素の産生:陰性。NaCl耐性:最大3%まで。pH耐性:3.0〜9.0。アンモニアまたは気体の発生を伴う硝酸塩からの亜硝酸塩の生成は検出されなかった。カタラーゼ試験:陽性。オキシダーゼ試験:陽性。尿素分解:陽性。レシチナーゼおよびゼラチナーゼ活性:陽性。デンプン加水分解は弱い。ツウィーン(Tween)20加水分解:陽性。しかしツウィーン40およびツウィーン60の加水分解は極めて弱い。有機酸のナトリウム塩からは、安息香酸塩、サリチル酸塩では有利に生育し、酢酸塩、酒石酸塩およびコハク酸塩では弱く生育する。マロン酸塩、ピルビン酸塩、乳酸塩およびクエン酸塩では全く生育しないか、痕跡程度にしか生育しない。グルコース、フルクトース、アラビノース、キシロース、ラムノース、スクロース、ラフィノース、マンニトールおよびイノシトールを非常によく資化する。グルコース、スクロース、ラムノース、デキストリン、メリビオース、マルトース、ラフィノース、フルクトース、イノシトール、イヌリン、グリセロール、キシロース、ズルシトールおよびマンニトールで強い酸産生が観察された(R.E. Gordonの培養培地でブロモクレゾールパープル指示薬を使用)。ガラクトース、アラビノースおよびサリシンでの酸産生は弱かった。
【0012】
分類学上の位置:
本発明者らが分離したミコフェノール酸産生性ペニシリウム株はペニシリウム・ワクスマニ(Penicilium waksmani)種に近い変種であると考えることができる。この同定は下記表1のデータによっても確認される。
表1:ペニシリウム・ワクスマニの標準的記載と本発明者らが分離したミコフェノール酸産生性ペニシリウム株の特徴的特性との比較
【0013】
【表1】
Figure 0003854866
【0014】
一側面として本発明は、本発明者らが分離しナショナル・コレクション・オブ・アグリカルチャラル・アンド・インダストリアル・マイクロオーガニズムス(National Collection of Agricultural and Industrial Microorganisms)に受託番号NCAIM(P)F001269として寄託されたミコフェノール酸産生性ペニシリウム・ワクスマニ株は、突然変異選抜法による発生の後に、適切な発酵条件下で高濃度のミコフェノール酸を産生するという認識に基づいている。
さらに本発明は、本発明者らが土壌試料から同様に分離したストレプトミセス・グリセオルバー(Streptomyces griseoruber)No.1/6株(ストレプトミセスsp.No.1/6として寄託)およびストレプトミセス・レシストミシフィカス(Streptomyces resistomycificus)No.1/28株の培養物がそれぞれ、ミコフェノール酸を、R1 がメチルまたはヒドロキシメチル基を意味しかつR2 がアミノ基を表す一般式(I)の化合物に変換する能力を持つという認識に基づいている。
【0015】
ストレプトミセスNo.1/6株の分類学的説明
培養形態上の特徴的性質:オートミール寒天培地では、典型的赤色のよく発達した気中菌糸体(赤色系列;「シンナモメウス(Cinnamomeus)」色系列)が基底菌糸体表面を覆う。基底菌糸体の色は黄色を帯びている。可溶性色素は認められない。赤い胞子塊が観察され、多くのレチナキュラム・アペルツム(Retinaculum apertum)型担胞子体の存在を検出することができる。ツァペック寒天培地では、コロニーは強く発達した、赤みを帯びた気中菌糸体、赤黄色の基底菌糸体および薄く赤みを帯びた拡散性色素を特徴とする。ポテトスライスでは、褐色の基底菌糸体が赤みを帯びた気中胞子塊で覆われ、ポテトの色は暗い茶赤色になった。大豆ペプトン寒天培地では、よく発達した赤みを帯びた気中菌糸体の下の基底菌糸体及び培地そのものは暗褐色または黒色である。リンゴ酸寒天平板では、黄色を帯びた気中菌糸体のほとんどが不稔性のままで、褐色を帯びた基底菌糸体の下に、強い赤褐色の可溶性色素の拡散を見ることができる。酵母−鉄寒天培地では、No.1/6株は極めて明白なメラニン様色素産生を示す。また、チロシン寒天培地でも、強度は弱いものの、発色性であることがわかった。
【0016】
生理学的性質:No.1/6株はセルロースを分解しない。培地中の唯一の資化源としてのグルコース、フルクトース、スクロース、ラムノースおよびi−イノシトールの資化は陽性であり、また、生育は比較的弱いもののキシロースとアラビノースの資化も陽性であることが観察された。ラフィノースでは極めて弱い生育(資化陰性)が検出された。
【0017】
分類学上の位置:レチナキュラム・アペルツム(らせん)型担胞子体を特徴とする典型的赤色ストレプトミセス(赤色系列の胞子塊色、基底菌糸体の色:黄褐色+赤色、赤みを帯びた可溶性色素)としてのNo.1/6株は、Kampferらの数値分類体系[J. Gen. Microbiol. 137,1831−1891(1991)]のクラスター18(23)に属するストレプトミセス・グリセオルバー・ヤマグチ・アンド・サブリ(Streptomyces griseoruber Yamaguchi and Saburi)(1955)種にかなり類似した培養形態を示す。しかし、その近縁関係を明確にするには、いくつかの生理学的相違点に関して、さらなる研究が必要だろう。
【0018】
ストレプトミセスNo.1/28株の分類学的説明
培養形態上ならびに光学および電子顕微鏡形態上の特徴的性質:オートミール寒天平板では、気中菌糸体が弱く発達し、その色は最初は白色で、後に明るい灰色を帯び、インターナショナル・ストレプトミセス・プロジェクト(International Streptomyces Project)の色系列カテゴリーに従って正確に特徴づけることはできない[(ShirlingおよびGottlieb,Int. J. Syst. Bact.,16,313−340(1966)]。顕微鏡観察の結果、菌糸は不稔性であることが判明し、担胞子体および分生子への分化は観察されなかった。基底菌糸体の中等度の発達と、淡黄褐色可溶性色素の産生が検出された。酵母エキス−麦芽エキス寒天培地では、弱く発達した白色および不稔性の気中菌糸体、赤褐色基底菌糸体および明るい黄色を帯びた拡散性色素が観察された。無機塩類−デンプン寒天平板では、よく発達した暗い赤灰色基底菌糸体が、相対的にさらによく発達した気中菌糸体で覆われ、その色は白色から短い(レチナキュラム・アペルツム型)らせん状担胞子体および平滑な表面を持つ胞子の黄灰色の塊に変化した。可溶性色素の存在は検出されなかった。この株(1/28)の培養物は、ペプトン−酵母−鉄寒天培地でもチロシン寒天培地でも、暗褐色または黒色のメラニン様色素を産生した。
【0019】
生理学的性質:セルロースでは良好な生育が観察されたが、セルロース繊維の目に見える分解はなかった。硝酸塩ブロスでは良好な生育を示したが、亜硝酸塩アンモニアまたは気体の発生は検出されなかった。6%までのNaCl濃度と5〜11のpH値に耐えうることがわかった。エスクリン加水分解試験およびウレアーゼ試験は陽性だった。グルコース、フルクトース、アラビノース、キシロース、ラムノース、スクロース、マンニトール、ラフィノースおよびメソイノシトールを培地中の唯一の炭素源として良好な生育が観察された。クエン酸Na、マロン酸Na、ピルビン酸Na、乳酸Caおよびコハク酸Caでは弱い生育が観察された。酢酸Na、酒石酸Naおよび安息香酸Naでは痕跡程度にしか生育しなかった。
【0020】
分類学上の位置:気中菌糸体の色の正しい同定は不可能だったが、最も重要な特徴的性質に基づいて、この株はストレプトミセス・レシストミシフィカス・リンデンバイン(Streptomyces resistomycificus Lindenbein)1952(Kampferら(1991)によればストレプトミセス・ビオラセウス(Str. violaceus))の弱胞子形成性変種と呼ぶことができる。
したがって本発明は、一般式(I):
【0021】
【化3】
Figure 0003854866
【0022】
[式中、R1 はメチルまたはヒドロキシメチル基を意味し、R2 はヒドロキシルまたはアミノ基を表す]
の化合物の微生物学的製造方法であって、ミコフェノール酸生合成能を持つペニシリウム・ワクスマニ真菌株を、同化可能な炭素および窒素源ならびに無機塩類を含む培養培地で22℃〜30℃にて生育し、R1 がメチル基を意味しかつR2 がヒドロキシル基を表す一般式(I)の化合物を発酵ブロスから分離し、所望によりそれを精製し、所望によりそれを、同化可能な炭素および窒素源ならびに無機塩類を含む培養培地で、液中曝気条件下に、生物変換反応が完了するまで、
a)ナショナル・コレクション・オブ・アグリカルチャラル・アンド・インダストリアル・マイクロオーガニズムスにストレプトミセスsp.No.1/6として受託番号NCAIM(P)B 001275の下に寄託されているストレプトミセス・グリセオルバーNo.1/6放線菌株の培養物を使って発酵することにより、R1 がメチル基を意味しかつR2 がアミノ基を表す一般式(I)の化合物を製造するか、または、
b)ナショナル・コレクション・オブ・アグリカルチャラル・アンド・インダストリアル・マイクロオーガニズムスに受託番号NCAIM(P)B 001276の下に寄託されているストレプトミセス・レシストミシフィカスNo.1/28放線菌株の培養物を使って発酵することにより、R1 がヒドロキシメチル基を意味しかつR2 がアミノ基を表す一般式(I)の化合物を製造した後、
生成した一般式(I)の化合物を培養物から分離し、所望によりそれを精製することからなる方法に関する。
【0023】
本発明では、グルコース、マルトース、スクロース、グリセロール、麦芽エキスおよび水溶性デンプンを炭素源として有利に資化するペニシリウム・ワクスマニ株の培養物をミコフェノール酸の製造に使用する。酵母エキス、ペプトン、肉エキス、カゼイン、トリプカシン(trypcasin)、大豆粉、コーンスティープリカー、硝酸ナトリウムまたは硫酸アンモニウムを窒素源として使用することができる。
ミコフェノール酸の製造に使用する培養培地には、上記炭素および窒素源の他に、無機塩類(例えば硫酸マグネシウム)、アミノ酸類、ビタミン類および消泡剤が存在してもよい。
【0024】
本発明のミコフェノール酸製造方法の好ましい一態様では、ナショナル・コレクション・オブ・アグリカルチャラル・アンド・インダストリアル・マイクロオーガニズムスに受託番号NCAIM(P)F 001269として寄託されているペニシリウム・ワクスマニ株またはミコフェノール酸生合成能を持つその突然変異株の傾斜寒天培養物から蒸留水で胞子懸濁液を調製する。この胞子懸濁液5mlを種培養培地に接種した後、24℃〜28℃(好ましくは25℃)で3日間生育した接種用培養物を生産培養培地に接種し、22℃〜28℃(好ましくは25℃)で7日間生育する。培養を好気培養条件で行ったところ、その間にpH値は3.5と7.5の間で変化した。発酵の主要期間中は吸気量を毎時120リットルとし、撹拌速度を毎分400回転とした。
【0025】
発酵中に、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)または薄層クロマトグラフィー(TLC)後のデンシトメトリーを用いて、発酵ブロスの活性物質含量を決定した。培養物が最高濃度のミコフェノール酸を含有する時に発酵を停止した。遠心分離した発酵ブロス試料の上清をメタノールで4倍希釈したものを高速液体クロマトグラフィーによる分析にかけた[装置:LKB無勾配システム;カラム:ヌクレオシル(Nucleosil)C18 5μm(BST);中間カラム:40×4mm;分析カラム;250×4.6mm;25℃にサーモスタット制御;238nmで測定;溶離液:アセトニトリル−リン酸でpH2に調節した蒸留水(60:40);流量:1.0ml/分;注入量:10μl]。このシステムでのミコフェノール酸の保持時間は15.8分である。
【0026】
1 がメチル基を意味しかつR2 がアミノ基を表す一般式(I)の化合物を製造する本発明方法の好ましい一態様では、ストレプトミセス・グリセオルバーNo.1/6株の傾斜寒天培養物から蒸留水で胞子懸濁液を調製する。この胞子懸濁液を種培養培地に接種し、次に25℃〜37℃(好ましくは28℃)で3日間生育した接種用培養物を生産培養培地に接種し、次いでそれを25℃〜32℃(好ましくは28℃)で3日間培養した。培養物にミコフェノール酸を加えた後、培養をさらに7日間続けた。
【0027】
1 がヒドロキシメチル基を意味しかつR2 がアミノ基を表す一般式(I)の化合物を製造する本発明方法のもう一つの好ましい態様では、ストレプトミセス・レシストミシフィカスNo.1/28株の傾斜寒天培養物から蒸留水で胞子懸濁液を調製する。この胞子懸濁液を種培養培地に接種し、次に25℃〜37℃(好ましくは28℃)で3日間生育した接種用培養物を生産培養培地に接種して3日間培養した。培養物にミコフェノール酸を加えた後、培養をさらに7日間続けた。
本発明の方法を以下の実施例によって例示する。
【0028】
実施例1
高濃度のミコフェノール酸を生合成するペニシリウム・ワクスマニ突然変異株[NCAIM(P)F 001269]を、N−メチル−N−ニトロ−N' −ニトロソグアニジンを使って行う突然変異選抜実験で作製した。土壌試料から分離したミコフェノール酸生合成性ペニシリウム・ワクスマニ株をMS寒天傾斜培地で25℃にて10日間生育した。
培養培地MSの組成(蒸留水1000ml中):
グルコース 4g
麦芽エキス 10g
酵母エキス 4g
寒天 20g
【0029】
寒天傾斜培地から5mlの滅菌0.1Mリン酸緩衝液(pH8.0)で胞子を洗い落とした。その胞子懸濁液にN−メチル−N−ニトロ−N' −ニトロソグアニジンを1mg/mlの最終濃度で加えた。その懸濁液を28℃、150rpmで35分間振とうした。次に、5000rpmの速度で遠心分離することによって胞子を沈降させた後、滅菌蒸留水に再懸濁した。その懸濁液をMS寒天平板に塗布した。平板を25℃で10日間培養した後、生育したコロニーをMS培養培地に接種した。生育した寒天傾斜培養物のミコフェノール酸産生能を、実施例2に記載する方法により、振とうフラスコ実験でスクリーニングした。
【0030】
実施例2
麦芽エキスおよび酵母エキスを含む傾斜寒天培地で7〜10日間生育したNCAIM(P)F001269ペニシリウム・ワクスマニ株の培養物から、5mlの滅菌水を使って胞子を洗い落とし、その胞子懸濁液を、500mlエルレンマイヤーフラスコ中で滅菌した100mlのMI接種用培養培地に接種した。MI培養培地の組成は次の通りである(水道水1000ml中)。
グルコース 40g
カゼイン加水分解物 5g
硝酸ナトリウム 3g
リン酸二水素カリウム 2g
塩化カリウム 0.5g
硫酸マグネシウム 0.5g
硫酸鉄 0.01g
【0031】
滅菌前に培養培地のpH値を6.0に調節し、滅菌を121℃で25分間行った。培養物を振とう装置(250rpm、振幅2.5cm)で3日間振とうした後、容量各500mlのエルレンマイヤーフラスコ50本にて121℃で25分間滅菌した100mlの培養培地A2に接種した。
培養培地A2の組成は、水道水1000ml中、
グルコース 80g
トリプカシン 10g
である。
【0032】
滅菌は121℃で25分間行った。フラスコを振とう装置(250rpm、振幅2.5cm)で25℃にて振とうした。発酵ブロスの活性物質含量をHPLC法で決定した。発酵を168時間続け、発酵ブロスからミコフェノール酸を単離した。3100mg/リットルのミコフェノール酸を含む5Lの発酵ブロスから、以下のように生成物を単離した。
【0033】
発酵が完了した後、20重量%の硫酸を添加することによって発酵ブロスのpH値を3.2±0.2に調節し、その酸性発酵ブロスを2500mlの塩化メチレンと共に1時間撹拌した。次に、相を分離した後、水相を1250ml×3の塩化メチレンで上記のように抽出した。ミコフェノール酸を含有する合わせた塩化メチレン抽出物を500ml×1および250ml×2の5重量%炭酸水素ナトリウム溶液で抽出した。ミコフェノール酸ナトリウム塩を含む合わせたアルカリ性水溶液を20℃未満に冷却し、溶液のpH値を20重量%硫酸溶液で3.2±0.2に調節した。その酸性溶液を280ml×3の塩化メチレンで抽出した後、合わせた塩化メチレン抽出物を減圧下にエバポレートした。蒸発残渣を80℃のイソプロピルアルコール88mlに溶解し、1.1gの活性炭を使って30分間清澄化した。活性炭を濾過した後、濾紙表面を熱イソプロピルアルコールで2回洗浄した。合わせたイソプロピルアルコールろ液を減圧下でエバポレートした後、粗生成物を80℃のイソプロピルアルコール88mlに溶解した。次に、得られた溶液を室温に冷却し、0〜5℃で終夜静置した。結晶を濾過し、冷イソプロピルアルコールで1回、n−ヘキサンで2回洗浄した。得られた生成物を減圧下に50〜60℃で乾燥した。次に、その乾燥生成物を60℃の外温でエタノール55mlに溶解し、得られた溶液を撹拌しながら脱イオン水22mlを滴下した。その溶液を室温に冷却し、0〜5℃で終夜静置した。濾過した後、結晶をエタノールと水の4:10混合液で1回、n−ヘキサンで2回洗浄し、最後に減圧下に50〜60℃で乾燥したところ、9.0gの純粋なミコフェノール酸を得た。
融点:141℃
生成物の分光データは以下の通りである:
紫外スペクトル(96%エタノール中、濃度20μg/ml、層厚1cm)
【0034】
【表2】
Figure 0003854866
【0035】
IR:3415;1745;1710;1625cm-1
1H−NMR(CDCl3 ,δTMS =0ppm):1.80(s,3H,4−CH3 );2.13(s,3H,7’−CH3 );2.30(t,J=8Hz,2H,H2 −3);2.42(t,J=8Hz,2H,H2 −2);3.37(d,J=6.6Hz,2H,H2 −6);3.76(s,3H,6’−OCH3 );5.16(s,2H,H2 −1’);5.25(t,J=6.6Hz,1H,H−5);
13C−NMR(CDCl3 ,δTMS =0ppm):11.5,q(7’−CH3 );16.0,q(4−CH3 );22.5,t(C−6);32.7,t(C−2);34.1,t(C−3);60.9,q(6’−OCH3 );70.0,t(C−1’);106.3,s(C−3a’);116.7,s(C−7’);122.0,s(C−5’);122.9,d(C−5);133.8,s(C−4);144.0,s(C−7a’);153.6,s(C−4’);163.6,s(C−6’);172.9,s(C−3’);179.4,s(C−1)
質量分析
電子衝撃イオン化(EI)質量分析
特徴的スペクトルデータ:
EI(70eV);m/z 320([M]+ );m/z 302([M−H2 O]+ );m/z 247([M− CH2 CH2 −COOH]+ );m/z 229([247−H2 O]+ ); m/z 207([C11114+ );m/z 159([C1072+
化学イオン化(CI)質量分析
特徴的スペクトルデータ:
CI(i−ブタン):m/z 321([M+H]+ );m/z 320([M]+ );m/z 303([M+H−H2 O]+ )。
【0036】
実施例3
作業容量5Lの研究用発酵槽にて121℃で45分間滅菌した5Lの生産培養培地A2に、実施例2で述べたように調製した振とう培養接種物250mlを接種した。接種後、120L/時の滅菌空気を吹き込み、撹拌機の速度を400rpmとして、発酵槽を25℃で運転した。発酵を168時間続けた後、ミコフェノール酸を発酵ブロスから単離した。得られた4.9Lの発酵ブロスは発酵の終了時点で2000mg/lのミコフェノール酸を含有した。実施例2で述べたように発酵ブロスからミコフェノール酸を単離した。
【0037】
実施例4
研究用発酵槽にて121℃で35分間滅菌した5Lの生産培地A3に、実施例2に記載したように調製した種培養物250mlを接種した。
培地A3の組成(水道水1000ml中):
グルコース 80g
NZアミンYTT(Quest社) 10g
上記発酵槽を曝気量120L/時および撹拌速度400rpmにて27℃で運転した。発酵を168時間続けた。得られた5Lの発酵ブロスは2550mg/lのミコフェノール酸を含有した。ミコフェノール酸を実施例2に従って発酵ブロスから単離した。
【0038】
実施例5
ストレプトミセスsp.No.1/6として寄託したストレプトミセス・グリセオルバーNo.1/6株[NCAIM(P)B 001275]をCM寒天傾斜培地で生育した培養物から、細胞懸濁液を調製した。
寒天培養培地CMの組成(蒸留水1000ml中):
グルコース 25g
ペプトン 2g
酵母エキス 1g
硫酸マグネシウム−水(1:7) 0.5g
リン酸二水素カリウム 5g
寒天 20g
【0039】
容量500mlのエルレンマイヤーフラスコに入っている100mlの滅菌接種用培養培地MBに上記懸濁液5mlを接種した。
培養培地MBの組成(水道水1000ml中):
グルコース 20g
麦芽エキス 30g
酵母エキス 10g
硫酸マグネシウム−水(1:7) 1g
【0040】
滅菌前に培養培地のpH値を7.0に調節し、滅菌を121℃で25分間行った。培養物を振とう装置(250rpm、振幅2.5cm)で28℃にて3日間生育した後、得られた種培養各5mlを、容量各500mlのエルレンマイヤーフラスコ50本に入っている100−100mlの滅菌生物変換反応培養培地MBTに接種した。培地MBTはそれぞれ以下の組成を有する。(水道水1000ml中):
グルコース 20g
麦芽エキス 10g
大豆粉 5g
ペプトン 10g
硫酸マグネシウム−水(1:7) 1g
リン酸二水素カリウム 1g
【0041】
滅菌前に培養培地のpH値を7.0に調節した。滅菌は121℃で25分間行った。接種時に、別途滅菌したグルコースを少しずつ培養培地に加えた。フラスコは振とう装置(250rpm、振幅2.5cm)を用いて3日間28℃で振とうした。72時間培養物に、エタノールに溶解したミコフェノール酸を最終濃度が0.1mg/mlになるように添加した。この添加の後、発酵をさらに7日間続けた。生物変換反応の最後に、2.0Lのアセトンと4.0Lの酢酸エチルを4.0Lの発酵ブロスに加えた。次に、その混合物を1時間撹拌した。次に、相を分離し、水相を4.0Lのクロロホルムで再び抽出した。抽出の過程で得られた乳化した有機相を遠心分離した。次に、分離した有機相をエバポレートし、得られた粗生成物(2.0g)を、100gのキーゼルゲル(Kieselgel)60(粒径0.063〜0.2mm;Reanal社(ブダペスト))吸着剤で調製したカラムによるクロマトグラフィーにかけた。粗生成物をクロロホルム、メタノールおよび99.5%酢酸(8.5:1.5:0.01)の混合液と共にカラムにのせ、クロマトグラフィー中は、上記の混合液を展開溶媒として使用した。このカラムクロマトグラフィーでは、各10mlの画分を集め、それらの画分をキーゼルゲル60F254 DCアルフォイル(alufoil)(Merck社)でのTLCにより、上記の展開混合液を用いて分析した(1%FeCl3 /エタノール試薬を使って室温で検出)。主にミコフェノール酸アミドを含む画分を合わせ、得られた120mlの溶液に40mlの脱イオン水を加えた。その混合物のpH値を、1N水酸化ナトリウム溶液の添加によって4.0〜4.5に調節した。相を分離した後、水相を40mlのクロロホルムで抽出した。合わせた抽出物を減圧下でエバポレートし、得られた生成物(0.3g)を再び、30gのキーゼルゲル60(粒径0.063〜0.02mm;Reanal社(ブダペスト))吸着剤で調製したカラムによるクロマトグラフィーにかけた。このクロマトグラフィーカラムは塩化メチレンと酢酸エチルの混合液(酢酸エチル含量10%)を使って調製した。溶出には、以降の各溶出毎に、この混合液の酢酸エチル含量を10%ずつ増加させた。クロマトグラフィーの過程で15〜20mlの画分を収集し、上記の条件下でTLCで調べた。(検査の際には、ベンゼンと酢酸エチルからなる混合液(1:2)を展開溶媒系として使用した)。生成物は、塩化メチレンと酢酸エチルの混合液(酢酸エチル含量40%)を使ってカラムから溶離させた。生成物を含む画分を減圧下にエバポレートして、クロマトグラフィー的に純粋なミコフェノール酸アミド0.2gを得た。
【0042】
IR:3433;1737;1665;1622cm-1
1H−NMR(CDCl3 ,δTMS =0ppm):1.80(s,3H,4−CH3 );2.14(s,3H,7’−CH3 );2.31(s,4H,H2 −2およびH2 −3);3.39(d,J=6.3Hz,2H,H2 −6);3.76(s,3H,6’−OCH3 );5.19(s,2H,H2 −1’);5.21(t,J=6.3Hz,1H,H−5);
13C−NMR(CDCl3 ,δTMS =0ppm):11.4,q(7’−CH3 );16.0,q(4−CH3 );22.5,t(C−6);34.2,t(C−2);34.9,t(C−3);61.0,q(6’−OCH3 );70.0,t(C−1’);106.3,s(C−3a’);116.7,s(C−7’);122.0,s(C−5’);123.0,d(C−5);134.2,s(C−4);144.1,s(C−7a’);153.5,s(C−4’);163.5,s(C−6’);172.8,s(C−3’);176.4,s(C−1)
質量分析
電子衝撃イオン化(EI)質量分析
特徴的スペクトルデータ
EI(70eV):([M]+ )319,C1721NO5 ;m/z 302,C17185 ([M−NH3+ );m/z 301,C1719NO4 ,([M−H2 O]+ );m/z 261,C15174 ,([M− CH2 CONH2+ );m/z 207,C11114 ,(M− 58 CONH2+
化学イオン化(CI)質量分析
特徴的スペクトルデータ:
CI(i−ブタン):([M+H]+ )320;([M]+ )319;m/z 303([M+H−NH3+ );m/z 207([M− 58 CONH2+
【0043】
実施例6
実施例5で述べたように、CM寒天傾斜培地で生育したストレプトミセス・レシストミシフィカスNo.1/28株[NCAIM(P)B 001276]の培養物から調製した細胞懸濁液を使って、接種用培養物の調製と生物変換反応を行った。
【0044】
生物変換反応の最後に体積4.5Lの発酵ブロスを実施例4に述べたように抽出した。抽出物を減圧下でエバポレートすることにより3.8gの粗生成物を得て、114gのキーゼルゲル60吸着剤(粒径0.063〜0.2mm;Reanal社)で調製したクロマトグラフィーカラムで粗生成物を精製した。クロマトグラフィーによる精製では、クロロホルム、メタノールおよび99.5%酢酸の混合液(8.5:1.5:0.01)を展開溶媒系として使用した。クロマトグラフィー中は各15〜20mlの画分を収集し、実施例5で述べたようにTLCによって分析した。クロロホルム、メタノールおよび99.5%酢酸からなる混合液(8.5:1.5:0.1)を展開溶媒系として使用した。主にヒドロキシメチルミコフェノール酸アミドを含む画分を合わせ、その溶液を実施例5で述べたように処理してからエバポレートした。生成物(0.4g)をさらに、40gのキーゼルゲル60(粒径0.063〜0.2mm;Reanal社)吸着剤で調製したカラムによるクロマトグラフィーにかけた。このクロマトグラフィーカラムはクロロホルム中に調製し、溶出中はクロロホルムとメタノールを含む混合液(メタノール含量は各溶出毎に1%ずつ増加させた)を使用した。クロマトグラフィー中は各10mlの画分を収集し、上記の条件下にTLCで分析した。生成物は5%のメタノールを含むクロロホルムを使ってカラムから溶離させた。生成物を含む画分をエバポレートし、得られた生成物(0.3g)を、300mlのセファデックス(Sephadex)LH−20ゲル(Pharmacia社(スウェーデン))を含むカラムで、メタノールを溶媒として、さらに精製した。このゲル濾過クロマトグラフィーでは、各10mlの画分を収集し、上記の条件下にTLCで分析した。純粋な生成物を含む画分を合わせ、減圧下にエバポレートしたところ、クロマトグラフィー的に均一なヒドロキシメチルミコフェノール酸アミド0.22gを得た。
【0045】
得られた生成物の分光データは以下の通りである。
IR:3339;1735;1657;1615cm-1
1H−NMR(MeOH−d4 ,δTMS =0ppm):1.80(s,3H,4−CH3 );2.25(s,4H,H2 −2およびH2 −3);3.38(d,J=6.5Hz,2H,H2 −6);3.78(s,3H,6’−OCH3 );4.66(s,2H,7’−CH2 −OH);5.25(t,J=6.5Hz,1H,H−5);5.40(s,2H,H2 −1’);
13C−NMR(MeOH−d4 ,δTMS =0ppm):16.2,q(4−CH3 );23.4,t(C−6);35.3,tおよび36.5,t(C−2およびC−3);57.8,t(7’−CH2 −OH);62.9,q(6’−OCH3 );71.5,t(C−1’);108.2,s(C−3a’);122.0,sおよび123.6,s(C−5’およびC−7’);124.2,d(C−5);135.3,s(C−4);146.8,s(C−7a’);156.1,s(C−4’);164.1,s(C−6’);173.7,s(C−3’);178.7,s(C−1)
質量分析
ポジティブ(+)およびネガティブ(−)FABスペクトル
特徴的スペクトルデータ:
+および−FAB(キセノン,9kV):[M+H]+ 336,m/z 318[M+H−H2 O]+ ;[M−H]- 334
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明者らが分離した新規ミコフェノール酸産生株の分生子柄の形状を示す図。a、d、eおよびfはアスパラギン+グリセロール寒天培地、bは麦芽寒天培地、cはデンプン+硫酸アンモニウム寒天培地、gは分生子鎖。

Claims (5)

  1. 一般式(I):
    Figure 0003854866
    [式中、Rはメチル基を意味し、Rはヒドロキシル基を表す]
    の化合物の微生物学的製造方法であって、ミコフェノール酸生合成能を持つ、ナショナル・コレクション・オブ・アグリカルチャラル・アンド・インダストリアル・マイクロオーガニズムスに受託番号NCAIM(P)F 001269として寄託されているペニシリウム・ワクスマニ(Penicillium waksmani)真菌株または、その突然変異株を、同化可能な炭素および窒素源ならびに無機塩類を含む培養培地で22℃〜30℃にて生育し、Rがメチル基を意味しかつRがヒドロキシル基を表す前記一般式(I)の化合物を発酵ブロスから分離することを特徴とする、前記一般式(I)の化合物の微生物学的製造方法。
  2. 一般式(I):
    Figure 0003854866
    [式中、Rはメチル基を意味し、Rはアミノ基を表す]
    の化合物の微生物学的製造方法であって、ミコフェノール酸生合成能を持つペニシリウム・ワクスマニ(Penicillium waksmani)真菌株を、同化可能な炭素および窒素源ならびに無機塩類を含む培養培地で22℃〜30℃にて生育し、Rがメチル基を意味しかつRがヒドロキシル基を表す前記一般式(I)の化合物を発酵ブロスから分離し、精製し、同化可能な炭素および窒素源ならびに無機塩類を含む培養培地で、液中曝気条件下で生物変換反応が完了するまで、ナショナル・コレクション・オブ・アグリカルチャラル・アンド・インダストリアル・マイクロオーガニズムス(National Collectionoorganisms)にストレプトミセスsp.No.1/6として受託番号NCAIM(P)B 001275の下に寄託されているストレプトミセス・グリセオルバー(Streptomyces griseoruber)No.1/6放線菌株の培養物を使って生物変換することにより、Rがメチル基を意味しかつRがアミノ基を表す一般式(I)の化合物を製造し、その後、生成した前記一般式(I)の化合物を培養物から分離することを特徴とする、前記一般式(I)の化合物の微生物学的製造方法。
  3. 一般式(I):
    Figure 0003854866
    [式中、Rはヒドロキシメチル基を意味し、Rはアミノ基を表す]
    の化合物の微生物学的製造方法であって、ミコフェノール酸生合成能を持つペニシリウム・ワクスマニ(Penicillium waksmani)真菌株を、同化可能な炭素および窒素源ならびに無機塩類を含む培養培地で22℃〜30℃にて生育し、Rがメチル基を意味しかつRがヒドロキシル基を表す前記一般式(I)の化合物を発酵ブロスから分離し、精製し、同化可能な炭素および窒素源ならびに無機塩類を含む培養培地で、液中曝気条件下で生物変換反応が完了するまで、ナショナル・コレクション・オブ・アグリカルチャラル・アンド・インダストリアル・マイクロオーガニズムスに受託番号NCAIM(P)B 001276の下に寄託されているストレプトミセス・レシストミシフィカス(Streptomyces resistomycificus)No.1/28放線菌株の培養物を使って生物変換することにより、Rがヒドロキシメチル基を意味しかつRがアミノ基を表す一般式(I)の化合物を製造し、その後、生成した前記一般式(I)の化合物を培養物から分離することを特徴とする、前記一般式(I)の化合物の微生物学的製造方法。
  4. 前記の分離された化合物を精製する工程を更に含むことを特徴とする、請求項1、2及び3のいずれか1項に記載の微生物学的製造方法。
  5. 前記ペニシリウム・ワクスマニ真菌株が、ナショナル・コレクション・オブ・アグリカルチャラル・アンド・インダストリアル・マイクロオーガニズムスに受託番号NCAIM(P)F 001269として寄託されているペニシリウム・ワクスマニ真菌株であることを特徴とする、請求項2及び3のいずれか1項に記載の微生物学的製造方法。
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