JP3854345B2 - 変速機のシリーズ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、変速機のシリーズ、特に、内接噛合遊星歯車構造の変速部を備えた複数の変速機によって構成される変速機のシリーズに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、第1軸と、該第1軸に設けた偏心体を介して、この第1軸に対して偏心回転可能な状態で取付けられた外歯歯車と、該外歯歯車が内接噛合する内歯歯車と、前記外歯歯車に該外歯歯車の自転成分のみを伝達する手段を介して連結された第2軸と、を備えた内接噛合遊星歯車構造が広く知られている。
【0003】
この構造の具体的な例を図19及び図20に示す。この例は、前記第1軸を入力軸、第2軸を出力軸とすると共に、内歯歯車を固定することによって上記構造を「減速機」に適用したものである。
【0004】
入力軸1には所定位相差(この例では180°)をもって偏心量eを有する2つの偏心体3、3が嵌合されている。なお、2つの偏心体3、3は一体化されている。それぞれの偏心体3、3には軸受4、4を介して2枚の外歯歯車Ex、Exが取付けられている。この外歯歯車Ex、Exには内ローラ孔6が複数個設けられ、内ピン7及び内ローラ8が嵌合されている。
【0005】
外歯歯車Exを2枚(複列)にしているのは、主に伝達容量の増大、強度の維持、回転バランスの保持を図るためである。
【0006】
前記外歯歯車Ex、Exの外周にはトロコイド歯形や円弧歯形等の外歯9が設けられている。この外歯9はケーシング12に固定された内歯歯車Inと内接噛合している。内歯歯車Inの内歯は具体的には外ピン11が外ピン孔13に遊嵌され、回転し易く保持された構造とされている。
【0007】
前記外歯歯車Ex、Exを貫通する内ピン7は、出力軸2のフランジ部14に固着又は嵌入されている。
【0008】
入力軸1が1回転すると偏心体3、3が1回転する。この偏心体3、3の1回転により、外歯歯車Ex、Exも入力軸1の周りで揺動回転を行おうとするが、内歯歯車Inによってその自転が拘束されるため、外歯歯車Ex、Exは、この内歯歯車Inに内接しながらほとんど揺動のみを行うことになる。
【0009】
今、例えば外歯歯車Ex、Exの歯数をN、内歯歯車Inの歯数をN+1とした場合、その歯数差は1である。そのため、入力軸1の1回転毎に外歯歯車Ex、Exはケーシング12に固定された内歯歯車Inに対して1歯分だけずれる(自転する)ことになる。これは入力軸1の1回転が外歯歯車の−1/Nの回転(マイナスは逆回転)に減速されたことを意味する。
【0010】
この外歯歯車Ex、Exの回転は内ローラ孔6及び内ピン7の隙間によってその揺動成分が吸収され、自転成分のみが該内ピン7を介して出力軸2へと伝達される。
【0011】
この結果、結局わずか1段で非常に高い減速比−1/Nの減速が達成される。
【0012】
なお、この例では、当該内接噛合遊星歯車構造の内歯歯車を固定し、第1軸を入力軸、第2軸を出力軸としていたが、第2軸を固定し、第1軸を入力軸、内歯歯車を出力軸とすることによっても減速機を構成可能である。更に、これらの入出力を逆転させることにより増速機を構成することも可能である。
【0013】
ところで、この種の変速機は、通常、ユーザの便宜を考慮し、様々な変速比と様々な取合寸法(容量)の製品バリエーションが1つの「シリーズ」として用意されている。
【0014】
即ち、図21に示されるように、この種の変速機のシリーズは、一般に「枠番」と称されるサブシリーズA、B、C、・・・Jの集合として構成される。
【0015】
サブシリーズ(枠番)Aには、変速比がR1 の変速機Ga1 、変速比がR2 の変速機Ga2 、変速比がR3 の変速機Ga3 ・・・及び変速比がRk の変速機Gak が属している(製品バリエーションとして用意されている)。なお、ここで、変速比R1 は最も低い変速比であり、R2 、R3 ・・・の順に高くなり、Rk が最も高い変速比である。高い変速比とは、減速比の場合、1/Xの形で表わしたときに分母Xが大きいことを意味している。
【0016】
このサブシリーズAに属する変速機Ga1 〜Gak は、いずれも相手機械に対する取合寸法La(容量Caと同義)が同一の値に統一されている。従って、サブシリーズAに属する変速機Ga1 〜Gak は、いずれも取付けに際して互換性を有している。
【0017】
サブシリーズ(枠番)Bにも全く同様に変速比がR1 の変速機Gb1 、変速比がR2 の変速機Gb2 ・・・変速比がRk の変速機Gbk が用意されている。サブシリーズBに属する変速機Gb1 〜Gbk は、サブシリーズAに属する変速機Ga1 〜Gak と比べてとその容量Cb(相手機械に対する取合寸法Lb)が異なっている。従って、取付けに際し、サブシリーズAに属する変速機Ga1 〜Gak とサブシリーズBに属する変速機Rb1 〜Gbk 間には互換性はないが、サブシリーズBに属する変速機Gb1 〜Gbk 同士の間では互いに取付けに関して互換性を有していることになる。
【0018】
このようにして、相手機械に対する取合寸法が異なるサブシリーズ(枠番)がA、B、・・・Jだけ集合され、合計(k×J)種類の変速機Ga1 〜Gak 、Gb1 〜Gbk 、・・・Gj1 〜Gjk により1つの「変速機のシリーズ」が構成される。
【0019】
なお、ここの説明では、わかり易さのため、各サブシリーズA、B、・・・Jには、それぞれ同一の数の変速比(k種類の変速比)が備えられているように説明したが、当該シリーズにおいて「量」の出るサブシリーズと出ないサブシリーズとでは、用意される変速比の数(種類)が変更(増減)されることはあり得る。
【0020】
ユーザは、このようにして多種類用意された変速機Ga1 〜Gak 、Gb1 〜Gbk 、・・・Gj1 〜Gjk の中から任意の容量(サブシリーズ)の任意の変速比の変速機を選定し、これを注文、あるいは購入し、単独で、あるいは他のマシーン(例えば物流機械)の1つの部品として使用することになる。
【0021】
ところで、このように多種類の変速機からなるシリーズをメーカーが提供しようとする場合には、図19、20で説明した構成において、種々の大きさ及び変速比のバリエーションを用意する必要があることから、基本的には各サブシリーズ(大きさ)において、変速比毎に内歯歯車と外歯歯車とを用意する必要がある。
【0022】
例えば、変速比として1/6〜1/119までを用意したある特定のサブシリーズにおいては、(変速比の並び(設定)を実用上便利な間隔とするために)15種類程度の変速比が用意される(k=15)。又、その上でこのように15種類程度の変速比が用意されたサブシリーズ(枠番)を一般には5〜6種類、場合によっては10数種類程度用意しなければならない(J=5〜15)。そのため、シリーズ全体では、膨大な種類の内歯歯車及び外歯歯車が必要となる。
【0023】
この内歯歯車及び外歯歯車は、歯形が特殊であり、この種の内接噛合遊星歯車構造を採用した変速機において最も製造コスト及び製造時間がかかる部品である。特に、内歯歯車は、一般に変速機のケーシングの一部を兼ねさせることから、その大きさ、重量とも非常に大きい。従ってこれを多種類用意しなければならないというのは、「在庫コスト」の面でもメーカーにとって極めて大きな負担となる。この負担は結果として「製品価格」としてユーザにも振りかかってくることになる。
【0024】
従来、この種の問題を少しでも改善しようとしてシリーズに属する個々の変速機の構成を図22に示されるように改良し、これをギャドモータに適用したものが知られている。
【0025】
この改良シリーズにかかる変速機は、メインとなる内接噛合遊星歯車構造の変速部(主変速部)Mgの前段に基軸(モータ軸)25に設けられたピニオンSgp及びギヤSggから成る平行軸歯車構造の副変速部Sgを連結し、ここで変速比のバリエーションを達成できるようにしたものである。
【0026】
この構成は、この前段に設ける副変速部Sgがインボリュート歯車で構成されるため、1種類の工具で何種類もの副変速部Sgを容易に且つ低コストで製造することができるという利点がある。そこで、内接噛合遊星歯車構造の主変速部Mgを1種類とし、平行軸歯車構造の副変速部SgのピニオンSgp とギヤSgg の歯数を種々変化させることにより総変速比を調整し、結果として種々の変速比の変速機を実現するという構成を採用していた。
【0027】
即ち、この主変速部と副変速部とを有した2段型の変速機から構成される改良シリーズは、副変速部Sgの「モジュールさえ合えば異なる歯数の歯車を1つの工具で切削が可能(交換性歯形)」という性質を利用し、該副変速部Sgにおいて多数の変速比を得てシリーズ化するという技術思想によりシリーズが構成されていたものである。
【0028】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この副変速部Sgによって多数の種類の変速比を得るという方法は、該副変速部Sgによって得られる変速比には(1段の平歯車の組合せで得るということから)当然に制約があるという問題があった。具体的に言うと、この副変速部Sgにおいて得られる変速比は1/6〜1/7程度までであり、これは変速機全体のバランスから見ると、せいぜい1/3〜1/4程度に相当する。従って、この副変速部Sgとの組合せで得られる総変速比は、「最低変速比と最高変速比との比率」をせいぜい3〜4倍程度にしか取れないという問題があった。
【0029】
例えば、内接噛合遊星歯車構造の変速比が1/35であった場合には、副変速部Sgを1/1〜1/4までとしたときの総変速比は(1/35)×(1/1)=1/35から(1/35)×(1/4)=1/140が得られるに過ぎなかった。
【0030】
従って、この改良のシリーズによってより広い変速比範囲を得るためには、内接噛合遊星歯車構造の主変速部Mgの側にも何種類かの変速比を用意するか、あるいは副変速部Sgの側を一対のみのピニオンSgp とギヤSgg で構成するのではなく、2対(ここだけで2段、全体で3段)の構成とするような方法を取らざるを得なかった。
【0031】
ところが、主変速部Mgにおいて何種類かの変速比を得るということは、(少なくとも従来は)必然的に、何種類かの内歯歯車及び外歯歯車を用意しなければならないことを意味していた。この理由は、内歯歯車と外歯歯車との差が少なければ少ないほど、即ち1であるときに最も大きな変速比を得ることができるため、この内接噛合遊星歯車構造を採用している利点、即ち僅か1段の変速部で大きな変速比を得るという利点を最も効率的に得るには、歯数差は「1」であるべきであるという思想が支配していたためと考えられる。
【0032】
一方、副変速部Sg自体を2段にするということは、それだけ装置が大型化し、重量増大、あるいは運転騒音の増大が避けられなかった。
【0033】
このようなことから、副変速部Sgを連結して変速比バリエーションを得るというシリーズ構成は、従来概念のシリーズのままでは何種類かの内歯歯車及び外歯歯車を用意しない限り得られる変速比の範囲が狭くなることや、コンパクト性が損われる等の問題があり、極めて特殊用途の(小規模の)ミニシリーズとして採用されたことはあったが、汎用品としてのシリーズ化の方法として採用されたことはなかった。
【0034】
しかして、内接噛合遊星歯車構造を用いた変速機のシリーズは、本格的に発売されるようになってから数十年の歴史があるものの、シリーズ全体において未だに(必ず)多種類の内歯歯車と外歯歯車を用意しているというのが実情であった。
【0035】
本発明は、このような従来の(内接噛合遊星歯車構造を採用した)変速機のシリーズの問題に鑑みてなされたものであって、同一のサブシリーズにおいて得られる変速比の幅を従来と同様に大きく確保しながら、同一のサブシリーズ内において最もコストのかかる内歯歯車を完全共通化し、僅か1種類のみの内歯歯車にて(同一のサブシリーズ内の)全ての変速比を得ることができるようなシリーズを提供し、もってシリーズ全体としての製造コストを低減すると共に製造時間を短縮することを可能とし、更にシリーズ全体としての在庫コストを低減することのできる変速機のシリーズを提供することを目的とする。
【0036】
【課題を解決するための手段】
本発明は、内歯歯車と、該内歯歯車と内接しながら揺動回転する外歯歯車を有する内接噛合遊星歯車構造の変速部と、を備えた複数の変速機によって構成される変速機のシリーズであって、変速比は、低速比から高速比までそれぞれ異なるが、相手機械に対する取合い寸法は、同一であるような複数の変速機からなるサブシリーズの集合で構成される、変速機のシリーズにおいて、同一のサブシリーズに属する各変速機の変速部は、その全ての内歯歯車が共通とされ、同一のサブシリーズに属する各変速機の変速部は、それぞれ内歯歯車と外歯歯車の歯数の差が互いに異なるように設計されたm種類のタイプが用意され、該同一のサブシリーズに属する各変速機のm種類の変速部に対して、変速比が互いに異なるように設計されたn種類の平行軸歯車構造の副変速部が連結可能に用意され、前記歯数差の異なるm種類の内接噛合遊星歯車構造の変速部と、前記n種類の平行軸歯車構造の副変速部とにより、同一のサブシリーズにおいてm×n種類の変速比バリエーションの変速機が用意され、且つ、前記内歯歯車と外歯歯車の歯数の差が互いに異なるように設計されたm種類のタイプは、それぞれの歯数差が等比級数となるように設計されていることにより、上記課題を解決したものである。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下図面を用いて本発明の実施の形態の例を詳細に説明する。
【0038】
本発明に係る変速機のシリーズは、サブシリーズの集合で構成されているという基本構成は従来と同様である。即ち、図21に示されるように、この実施形態に係るシリーズも、サブシリーズA、B、C・・・Jの集合で構成される。
【0039】
各変速機の構造は図3に示すように構成される。この構造は基本的には前述した改良版(図22)と同様である。但し、軸受位置等に若干の改良を加え、一層の剛性強化及びコンパクト化を図ると共に、新たな軸受17を加え、副変速部Sgの交換性を高めている。
【0040】
サブシリーズAに属する変速機Ga1 、Ga2 ・・・Gak は、それぞれ容量Caが同一、即ち相手機械に対する取合い寸法Laが同一とされ、変速比がRa1 、Ra2 、・・・Rak にそれぞれ設定されている。
【0041】
同様に、サブシリーズBに属する変速機Gb1 、Gb2 、・・・Gbk は、それぞれ容量Cbが同一、即ち相手機械に対する取合寸法Lbが同一とされ、変速比がRb1 、Rb2 、・・・Rbk にそれぞれ設定されている。
【0042】
サブシリーズC以降も全く同様の構成が採用されている。
【0043】
以下図1及び図2を用いてサブシリーズAの構成について詳細に説明する。
【0044】
図1及び図2では、わかり易さを優先し、m=3、n=4、k=m×n=12の例が示されている。なお、差異を明確化するために、以降内接噛合遊星歯車構造の変速部を、平行軸歯車構造の副変速部に対して主変速部と呼ぶことにする。また、本発明では、前記m種類のタイプは、それぞれの歯数差が等比級数となるように設計されるべきであるが、説明の便宜上、等比級数となっていないものから、順に説明していく。
【0045】
サブシリーズAに属する12個の変速機Ga(Ga1 、Ga2 、・・・Ga12)は、その主変速部Mgaとして内歯歯車Inaと外歯歯車Exa(Exa1 、Exa2 、Exa3 )の歯数の差が互いに異なるように設定された3種類(m=3)のタイプ(Mga1 、Mga2 、Mga3 )が用意されている。
【0046】
その上で、この3種類の主変速部Mga1 、Mga2 、Mga3 に対して、変速比が互いに異なるように設定された4種類(n=4)の平行軸歯車構造の副変速部Sga(Sga1 、Sga2 、・・・Sga4 )が連結可能に用意されている。
【0047】
前記歯数差の異なる3種類の内接噛合遊星歯車構造の変速部Mgaと、前記4種類の平行軸歯車構造の副変速部Sgaとにより、サブシリーズAにおいて3×4=12種類の変速比バリエーションの変速機Ga1 、Ga2 、・・・Ga12が用意される。即ち、k=3×4=12である。
【0048】
サブシリーズAに属する12個の変速機Ga1 、Ga2 、・・・Ga12の主変速部Mgaは、(タイプは3種類用意されるが)その全ての内歯歯車Inaが共通とされている。これがこのシリーズの最も大きな特徴である。
【0049】
ところで、従来のこの種のシリーズにおいて主変速部において何種類かの変速比を得ようとした場合には、前述したように内歯歯車と外歯歯車との歯数差は、全て1に設定するのが常識とされていた。この理由は、内歯歯車と外歯歯車との差が少なければ少ないほど、即ち1であるときに最も大きな変速比を得ることができるため、この内接噛合遊星歯車構造を採用している利点、即ち僅か1段の変速部で大きな変速比を得るという利点を最も効率的に得るには、歯数差は「1」であるべきであるという思想が支配していたためと考えられる。
【0050】
しかしながら、この実施形態に係るシリーズにおいては、この従来の常識を抜本的に見直し、サブシリーズAで言えば内歯歯車Inaと外歯歯車Exaとの歯数差を異ならせることによって主変速部Mgaにおいて多種類(3種類)の変速比Rma1 、Rma2 、Rma3 を実現するようにしたものである。
【0051】
内歯歯車と外歯歯車との歯数差が1以外の内接噛合遊星歯車構造は、これ自体は公知である。歯数差が1の内接噛合遊星歯車構造で得られる変速比(減速比)を1/Xとした場合、歯数差が2、3、・・・の内接噛合遊星歯車構造のそれは、(基本的に)それぞれ2/X、3/X、・・・となる。これは、入力軸(第1軸)の1回転当りにおいて外歯歯車Exが内歯歯車In対して自転する角度がそれぞれ2倍、3倍、・・・となるためである。
【0052】
図1及び図2から明らかなように、この実施形態では、このようにして3種類の大きな変速比範囲を主変速部Mgaの側で決定し、その(受け持ち)範囲内で副変速部Sgaによって総合的に得られる変速比をそれぞれ更に4つに分けるようにしている。即ち、主変速部Mgaにおいて得られる3種類の変速比Rma1 、Rma2 、Rma3 と、副変速部Sagによって得られる4種類の変速比Rsa1 、Rsa2 、Rsa3 、Rsa4 の組合せ(掛合せ)によって12種類の総変速比Ra1 〜Ra12を得ている。
【0053】
【実施例1】
より具体的な実施例を図4に示す。
【0054】
図4には、(サブシリーズAの)内歯歯車Inaの歯数を60、m=4としたときの実施例が示されている。図4から明らかなように、このとき外歯歯車の歯数を例えば59、58、56、あるいは54とすれば、歯数差はそれぞれ1、2、4、6の4種(m=4)となり、主変速部Mgaの変速比(の分母)はそれぞれ59/1=59、58/2=29、56/4=14、54/6=9となる。従って、これに副変速部Sga側の変速比を掛合せれば、これらの値59、29、14、9をベースとし、これらの間(あるいは59以上)を埋め得る多数の変速比を容易に得ることができる。なお、この1種類の内歯歯車Inaと4種の外歯歯車Exa(Exa1 、Exa2 、Exa3 、Exa4 )のそれぞれの関係を図示すると、図5〜図8のようになる。
【0055】
図から明らかなように、いずれの場合も、内歯歯車Inaの歯数は60の1種のみであり、共通である。
【0056】
【実施例2】
図9には内歯歯車Inaの歯数を100、同じくm=4としたときの実施例が示されている。この場合に、4種の外歯歯車Exa(Exa1 、Exa2 、Exa3 、Exa4 )の歯数をそれぞれ99、98、96、あるいは92に設定すると、その歯数差は、それぞれ1、2、4、8となり、主変速部Mga1 、Mga2 、Mga3 、Mga4 の変速比(の分母)はそれぞれ99、49、24、11.5となる。
【0057】
このように、歯数差を1、2、4、8というように2の等比級数に設定すると、主変速部Mgaにおいて得られる変速比Rmaも等比級数的に変化させることができるため、副変速部Sgaの変速比Rsaとの組合せによって得られる総変速比Raも等比級数的に変化させることが容易にできるようになる(本発明の本来的な効果)。従って変速比の設定に関して極めて実用度の高い変速機のシリーズを得ることができるようになる。なお、この実施例2に係る内歯歯車Inaと外歯歯車Exaを具体的に図示すると図10〜図13のようになる。
【0058】
図から明らかなように、いずれの場合も、内歯歯車Inaの歯数は100の1種のみであり、共通である。
【0059】
【実施例3】
一方、図14に副変速部Sgaの変速比を種々変化させたときの主変速部Mgaとの組合せ例を示す。
【0060】
図から明らかなように、副変速部SgaのピニオンSgap とギヤSgag の歯数を変化させることにより種々の変速比を得ることができ、これと例えば図5〜図8に示す主変速部Mgaと組合せることにより非常に多種類の総変速比を得ることができるのがわかる。
【0061】
実際のシリーズの構成にあっては、重量、製造コスト、製造のし易さ、騒音性能、耐久性等を考慮し、重なり合った領域の変速比(例えばαとβで示す領域)のうちの一方をカットして低変速比から高変速比までを連続させれば良い。
【0062】
なお、本発明においては、内接噛合遊星歯車構造の主変速部Mg及び平行軸歯車構造の副変速部Sgの具体的構成を上記実施形態の構成に限定するものではない。
【0063】
例えば、図15〜図17に示されるように、基軸25の回転を1個のピニオンSgp を介して3つのギヤSgg で受け、3つのシャフト(第1軸)1を同じ方向に同期して回転させ、該3つのシャフト1上にそれぞれ配置した3つの偏心体3を介して外歯歯車Exを揺動回転させるような構成であっても良い。
【0064】
この構成は、副変速部Sgを有しながら、基軸25と主変速部Mgの出力軸2とを同芯に維持にすることができるため、特に該変速機にモータMoを組合せ、いわゆるギヤドモータのシリーズとして製品化する場合等にそのコンパクト性を向上させることができるという点で非常に有利となる。本発明は本発明に係る「変速機のシリーズ」の技術概念をそっくり内在する「ギャドモータのシリーズ」を含むものである。
【0065】
更に、図18に示されるように、この構成の軸受構造を変更したものであってもよい。これにより、一層剛性を強化することができる。
【0066】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によれば、従来と同様の広く、且つ細かい(多種類の)の変速比を確保しながら、同一のサブシリーズにおいては内歯歯車を僅か1種類で済ますことができるようになり、シリーズ全体の変速機の1つ1つを非常に容易に且つ短時間で製造できるようになると共に、その製造コスト及び在庫コストを激減させることができるようになるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用された変速機のシリーズの実施形態に係るサブシリーズAの構成例を示す表
【図2】同じくサブシリーズAを構成する主変速部と副変速部の組合せ例を示した説明図
【図3】上記実施形態のシリーズを構成する変速機の構造例を示した断面図
【図4】内歯歯車の歯数を60としたときに得られる主変速部の変速比の例を示した表
【図5】図4の表において、変速比1/59を得るための内歯歯車と外歯歯車を具体的に図示した線図
【図6】図4の表において変速比1/29を得るための内歯歯車と外歯歯車を具体的に図示した線図
【図7】図4の表において変速比1/14を得るための内歯歯車と外歯歯車を具体的に図示した線図
【図8】図4の表において変速比1/9を得るための内歯歯車及び外歯歯車を具体的に図示した線図
【図9】内歯歯車の歯数を100としたときに得られる主変速部の変速比の例を示した表
【図10】図9の表において変速比1/99を得るための内歯歯車及び外歯歯車を具体的に図示した線図
【図11】図9の表において変速比1/49を得るための内歯歯車及び外歯歯車を具体的に図示した線図
【図12】図9の表において変速比1/24を得るための内歯歯車及び外歯歯車を具体的に図示した線図
【図13】図9のグラフにおいて変速比1/11.5を得るための内歯歯車及び外歯歯車を具体的に図示した線図
【図14】副変速部と主変速部との組合せにより具体的に得られる変速比(の分母)の例を示した表
【図15】本発明に係る変速機のシリーズを構成するための変速機の他の構造例を示した断面図
【図16】図15の矢視XVI −XVI 線に沿う拡大断面図
【図17】図15の矢視XVII−XVII線に沿う拡大断面図
【図18】本発明に係る変速機シリーズを構成するための変速機の更に他の構造例を示した断面図
【図19】従来の内接噛合遊星歯車構造の変速機の構造例を示す断面図
【図20】図19のXX−XX線に沿う断面図
【図21】従来の内接噛合遊星歯車構造を採用した変速機のシリーズの構成例を示すグラフ
【図22】上記従来の変速機のシリーズを改良するために該シリーズに属する変速機(ギャドモータ)を改良した例を示す図18相当の断面図
【符号の説明】
In…内歯歯車
Ina…サブシリーズAの内歯歯車
Ex…外歯歯車
Exa…サブシリーズAの外歯歯車
Mg…主変速部
Mga…サブシリーズAの主変速部
Sg…副変速部
Sga…サブシリーズAの副変速部
R1 、R2 、・・・Rk …総変速比
Ra1 、Ra2 、・・・Rak …サブシリーズAの総変速比
Rm1 、Rm2 、Rm3 …主変速部の変速比
Rma1 、Rma2 、Rma3 …サブシリーズAの主変速部の変速比
Rs1 〜Rs4 …副変速部の変速比
Rsa1 〜Rsa4 …サブシリーズAの副変速部の変速比

Claims (1)

  1. 内歯歯車と、該内歯歯車と内接しながら揺動回転する外歯歯車とを有する内接噛合遊星歯車構造の変速部を備えた複数の変速機によって構成される変速機のシリーズであって、
    変速比は、低速比から高速比までそれぞれ異なるが、相手機械に対する取合い寸法は、同一であるような複数の変速機が属するサブシリーズの集合で構成される、変速機のシリーズにおいて、
    同一のサブシリーズに属する各変速機の変速部は、その全ての内歯歯車が共通とされ、
    同一のサブシリーズに属する各変速機の変速部は、それぞれ内歯歯車と外歯歯車の歯数の差が互いに異なるように設計されたm種類のタイプが用意され
    該同一のサブシリーズに属する各変速機のm種類の変速部に対して、変速比が互いに異なるように設計されたn種類の平行軸歯車構造の副変速部が連結可能に用意され、
    前記歯数差の異なるm種類の内接噛合遊星歯車構造の変速部と、前記n種類の平行軸歯車構造の副変速部とにより、同一のサブシリーズにおいてm×n種類の変速比バリエーションの変速機が用意され、且つ、前記内歯歯車と外歯歯車の歯数の差が互いに異なるように設計されたm種類のタイプは、それぞれの歯数差が等比級数となるように設計されていることを特徴とする変速機のシリーズ。
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