JP3854126B2 - 減勢工 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、傾斜地に配管された下水管(傾斜配管)などの管渠から放流される高速水流を減勢するのに用いられる減勢工(減勢装置)に関する。
【0002】
【従来の技術】
傾斜地に配管された下水管などから放流される汚水は高速であるため、そのまま放流すると、公共管やポンプ塔などの施設を損傷するおそれがある。このため高速水流のエネルギを減勢する設備を設ける必要がある。
【0003】
高速水流の放流水脈を減勢する設備としては減勢工が知られている。減勢工としては、例えば図12に示すように、減勢槽(減勢池)201の下流部に堰202を設け、傾斜下水管などの管渠203から流出する水流の運動エネルギを跳水現象により減勢させる跳水型減勢工がある。なお、このような跳水式減勢工では、堰202の上流側の跳水渦領域に、バッフルピアやシルなど、水流を衝突分散させる補助構造物を設けて減勢効果を高めるという方法も採られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図12に示す構造の減勢工において、十分な減勢効果を得るには、跳水長L(跳水を起こさせるために必要な長さ)を大きくとる必要があるため、減勢工全体の規模が大きくなってしまうという問題がある。
【0005】
また、図12に示す構造の減勢工では、管渠203から流出する水流が減勢槽201内に噴射状に開放されるので、管渠203から減勢槽201内に連行される空気量が多い。特に、管渠203に流入する汚水等が多量で、管内の水流が射流(ジェット流)状態となる場合、減勢槽201内への空気連行量が非常に多くなるため、減勢槽201に通気孔などの排気設備が必要となる。しかも、下水管等からの連行空気は臭いため、外部への排気を行うと減勢工の周辺に悪臭が漂うという問題もある。
【0006】
さらに、この種の減勢工においては、十分な減勢効果を得るために、流入管(下水管)を斜めに傾けた状態で減勢槽(減勢工本体)に接続しており(特開2000−32356号公報)、このため流入管の接続作業が困難である。また、流入管と減勢槽との接続部の止水性を確保することも難しいという問題もある。
【0007】
本発明はそのような問題点を解決するためになされたもので、規模が小さくて空気の連行量が少ない構造で、しかも流入管の接続を容易に行うことが可能な減勢工を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の減勢工は、マンホール内に挿入されて流入管に接続される流入口及び流出管に接続される流出口を有する減勢工本体に、流入管からの流入水に対する減勢面を備えた減勢ブロックが減勢面の前方に流入口を臨ませるように着脱自在に取り付けられ、前記減勢面に流入口側に向けて突出する凸部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の減勢工において、流入管(管渠)を流れる汚水は、減勢工本体の流入口を通じて内部に流入し、その減勢工本体に流入した水流は、流入口に対向して設けられた減勢面によって分散される。
【0010】
このように本発明の減勢工では、流入口から流入した水の流れを減勢面によって強制的に分散させて水流の運動エネルギを減勢させているので、減勢工本体の流入口から流出部までの距離が短くても、高い減勢効果を得ることができる。
【0011】
また、本発明の減勢工によれば、管渠を流れる噴流により多量の空気が管渠から連行されても、その連行空気は、流入口に対向して設けられた減勢面によって減勢工本体の内部への浸入が阻止され、その殆どが管渠に戻されるので、排気設備・悪臭等による問題を解消することできる。
【0012】
さらに、本発明の減勢工では、水の流れを分散して減勢するための減勢面を、流入口に対向する位置に設けているので、流入口に流入管を水平状態で接続しても、高い減勢効果を得ることができる。従って、流入管を減勢工本体に接続する際の作業が簡単となり施工性が向上する。
【0013】
本発明の減勢工において、流入口に対向して設ける減勢面に、流入口側に向けて突出する凸部(例えば三角錐形状の凸部)を設けてある。このように凸部を設けておくと、水の流れの分散による減勢効果をより一層高めることができる。
【0014】
本発明の減勢工において、減勢工本体の内部で流出部の前方となる位置に堰を設けておいてもよい。このように堰を配置しておくと、減勢面にてエネルギが減勢された後の水流を更に減勢することができる。すなわち、減勢面を経て堰に到達した水流は、堰によって上昇渦流となって上方にせり上がってゆき、そのせり上がり時において水流の運動エネルギが発散(減勢)されるので、減勢効果を更に高めることができる。
【0015】
本発明の減勢工において、減勢面を減勢ブロックに形成し、その減勢ブロックを減勢工本体から取り外すことができるようにしてあり、内部のメンテナンス性が向上する。
【0016】
この場合、減勢工本体に、減勢ブロックの縁部を載置するための段部を設け、その段部の載置面と減勢ブロックの縁部との間にパッキンを設けておくことが好ましい。このようにパッキンを設けておけば、減勢ブロックの減勢面にて浸入が阻止された連行空気が、減勢ブロックの上方に逃げることを阻止することができる。これにより、減勢工の周辺に悪臭が洩れることを防ぐことができ、また、減勢工を設置したマンホール等の内圧が連行空気によって上昇して鉄蓋が飛散するというような危険も回避することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1及び図2は本発明の実施形態の全体構造を示す斜視図である。図3はその実施形態の中央縦断面図(A)及び平面図(B)である。図4は図3の減勢工をブロックを取り外した状態で示す平面図である。図5は図3のX−X断面図である。
【0019】
この例の減勢工1は、傾斜地に配管された下水管(傾斜配管)の下流側に敷設のマンホールに減勢機能を持たせるための装置であって、減勢工本体2とその内部に配置された減勢ブロック5及び堰6を備えている。
【0020】
減勢工本体2は、例えばFRP製で表面(流水表面)にPEシート20が貼着されている(図5参照)。減勢工本体2は、断面楕円形のマンホール100(図9参照)に合わせた形状に加工されている。なお、減勢工本体2の形状は楕円形のほか、円形や矩形であってもよい。
【0021】
減勢工本体2には、流入口3及び流出部4と、減勢ブロック5の下端部に位置する流入開口部7と、その流入開口部7から流出部4に通じる流路8が形成されている。流入開口部7は横方向に長細の長方形に加工されている。
【0022】
減勢ブロック5は、図1及び図2に示すように、減勢工本体2への取り付け/取り外しが可能である。従って、減勢ブロック5を上方へと引き上げて、減勢工本体2から取り外すことにより、流入口3から流入開口部7までの内面(流水表面)の清掃等のメンテナンスを行うことができる。
【0023】
減勢工本体2には、図2、図4及び図5に示すように、減勢ブロック5の縁部を載置するための段部22が設けられており、その段部22の載置面23と減勢ブロック5の縁部との間にゴム製のパッキン9が挟み込まれている。このように減勢工本体2と減勢ブロック5との間にパッキン9を設けておけば、減勢ブロック5の減勢面51にて浸入が阻止された連行空気が、減勢ブロック5の上方に逃げることを阻止することができ、減勢工1の周辺に悪臭が洩れることを防ぐことができる。なお、パッキン9は、減勢工本体2側に取り付けておいてもよいし、減勢ブロック5側に取り付けておいてもよい。
【0024】
パッキンとしては、図8(A)に示すような断面Z字形のものが好ましいが、他の形状のパッキンであってもよい。例えば図8(B)及び(C)に示すような断面U字形のパッキン91や、断面Y字形のパッキン92を用いてもよい。さらに矩形断面のパッキンまたは円形断面のパッキン(Oリング)などの他の形状のパッキンを用いてもよい。
【0025】
減勢ブロック5は、図1に示す設置状態で減勢面51が流入口3に対し、下方に向けて傾斜した姿勢で対向するようになっている。また、減勢ブロック5の減勢面51には三角錐形状の凸部52が形成されており、流入口3に流入した汚水の流れを下方と横方向(左右方向)に向けて分散する。
【0026】
なお、減勢ブロック5の上端部には固定プレート53が設けられており、この固定プレート53を減勢工本体2の上面縁部にボルト止めすることにより、減勢工本体2に対して減勢ブロック5の全体を固定することができる。また、固定プレート53には把手54が設けられている。
【0027】
堰6は、図3に示すように、流入開口部7と流出部4との間の流路8上に設けられている。堰6の底部には傾斜面61が形成されている。この傾斜面61は、流入開口部7から流出した水流の向きを上方(鉛直方向)に効率良く誘導することを目的として形成される。
【0028】
堰6の底部中央(幅方向の中央)には貫通穴62が設けられており、この貫通穴62を介して堰6の上流側流路(汚水滞留部)81と下流側流路(インバート)82とが連通している。貫通穴62の大きさは、汚水等に含まれる汚物などが通過できる程度の大きさ、例えばφ50mm〜φ100mm程度とする。なお、貫通穴の形状は、円形のほか楕円や四角形等であってもよい。
【0029】
堰6の上面(越流部分)は、幅方向の中央が最も低くなるようなV字形状に加工されている。なお、堰6の上面の形状は、堰の幅方向の中央部が他の部分よりも低い形状であれば特に限定されず、例えばU字形状であってもよい。また、堰の上面はフラットな形状であってもよい。
【0030】
減勢工本体2の底面21は、流入口3から堰6の貫通穴62に向けて例えば1/50の下り勾配で傾斜している。さらに幅方向の両端部から中央に向けて例えば1/20の下り勾配で傾斜しており、減勢工本体2の底面21に排水が滞留しないようになっている。
【0031】
以上の構造の減勢工1は、図9に示すように、マンホール100内の底部に設置され、減勢工本体2の流入口3に流入管(下水上流管)101が接続され、流出部4に流出管(下水下流管)102が接続される。流出管102の管底は下流側流路82(インバート)の底面と略一致する高さに配置される。
【0032】
図9の設置状態において、流入口3から減勢工本体2内に流入した水流は、流入口3に対向して設けられた減勢ブロック5の減勢面51及び三角錐形状の凸部52によって下方と横方向(左右方向)に向けて分散される。
【0033】
このように本実施形態の減勢工1では、流入口3から流入した水の流れを、減勢ブロック5によって強制的に分散させて水流の運動エネルギを減勢させているので、高い減勢効果を得ることができる。
【0034】
さらに、減勢工本体2の内部で流出部4の前方位置に堰6を設けているので、減勢ブロック5にてエネルギが減勢された後の水流の勢いを、堰6にて更に減勢することができ、減勢効果をより一層高めることができる。
【0035】
なお、堰6には底部中央に貫通穴62が設けられており、減勢工本体2内に流入する排水の水量が少量(堰6を越えない水量)である場合、減勢工本体2内に流入した排水は、堰6の貫通穴62を通過して流出部4から流出するので、減勢工本体2内に排水が滞留することはない。
【0036】
以上説明したように、本発明の実施形態では、減勢ブロック5と堰6の2段階で水流の運動エネルギを減勢しているので、小さい規模の減勢工1で高い減勢効果を実現することができる。
【0037】
また、本発明の実施形態によれば、流入管101を流れる噴流により多量の空気が減勢工本体2に向けて連行されても、その連行空気は、減勢ブロック5の減勢面51によって減勢工本体2内への浸入が阻止され、その殆どが流入管101に戻される。従って、減勢工1の周辺に悪臭が漂うことがなく、排気設備などを設ける必要がなくなる。
【0038】
さらに、本発明の実施形態では、減勢ブロック5の減勢面51(凸部52も含む)を、流入口3に対向する位置に設けているので、流入口3に流入管101を水平状態で接続しても、高い減勢効果を得ることができる。従って、流入管101を減勢工本体に接続する際の作業が簡単となり施工性が向上する。また、流入管101と減勢工本体2との接続部の止水を簡単な構造で確保することが可能になる。
【0039】
さらに、本発明の実施形態においては、減勢工本体2の表面(流水表面)に、耐摩耗性に優れたPEシート20を貼着しているので、耐久性にも優れた減勢工を提供することができる。
【0040】
次に、本発明の減勢工の他の実施形態を図10に示す。
【0041】
この実施形態においては、流入開口部7と堰6との間に分散ブロック10を設けている点に特徴がある。
【0042】
分散ブロック10は、図11に示すように、流入開口部7から堰6に向かう汚水の流れを横方向(左右方向)に向ける傾斜面11,11と、汚水の流れを上方向に向ける傾斜面12が形成されている。分散ブロック10の傾斜面11,11は、汚水の流れ方向に対して45度、水平面に対して45度傾斜している。傾斜面12は水平面に対して45度傾斜している。
【0043】
分散ブロック10は、堰6の上流側流路81の幅方向の中央位置に配置されている。従って、流入開口部7から堰6の上流側流路81に流入した汚水が、堰6の貫通穴62に直接向かうことがなく、勢いが残っている汚水が堰6の貫通穴62を通過して流出部4に達することがなくなる。
【0044】
なお、以上の実施形態では、減勢ブロック5の減勢面51に三角錐形状の凸部52を形成しているが、減勢面に形成する凸部としては、例えば断面台形状の凸部、円錐面を有する凸部、円柱面を有する凸部あるいは球面を有する凸部などの他の形状の凸部であってもよい。
【0045】
以上の実施形態では、堰6に貫通穴62を形成しているが、これに替えて、堰の上端から減勢工本体2の上流側流路81(下流側流路82)の底部まで切れ込むスリットを設けておいてもよい。
【0046】
以上の実施形態では、堰6や分散ブロック10を設けているが、減勢ブロック5による水流の分散によって、必要とする減勢効果を得ることができるのであれば、堰6や分散ブロック10の構成を省略して、減勢ブロック5のみで減勢を行うようにしてもよい。
【0047】
ここで、本発明の減勢工は、下水用のマンホールに限られることなく、高速水流を放流する各種配管・管渠に設置のマンホール、あるいは高速水流を放流する他の施設にも適用可能である。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の減勢工によれば、減勢工本体の内部で流入口に対向する位置に減勢面を設け、流入口から流入した水流を減勢面にて強制的に分散させて、水流の運動エネルギを減勢するように構成しているので、減勢工本体の流入口から流出部までの距離を短くすることができ、減勢工全体の規模を小さくすることができる。また、管渠を流れる噴流により多量の空気が管渠から連行されても、その連行空気は、流入口に対向して設けられた減勢面によって減勢工本体の内部への浸入が阻止され、その殆どが管渠に戻されるので、排気設備・悪臭等による問題を解消することできる。
【0049】
さらに、水の流れを分散して減勢するための減勢面を、流入口に対向する位置に設けているので、流入口に流入管を水平状態で接続しても、高い減勢効果を得ることができる。従って、流入管を減勢工本体に接続する際の作業が簡単となり施工性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態の全体構造を示す斜視図である。
【図2】 本発明の実施形態の全体構造を示す分解斜視図である。
【図3】 本発明の実施形態の中央縦断面図(A)及び平面図(B)である。
【図4】 本発明の実施形態を減勢ブロックを取り外した状態で示す平面図である。
【図5】 図3のX−X断面図である。
【図6】 本発明の実施形態に用いる減勢ブロックの斜視図である。
【図7】 同じく減勢ブロックの正面図(A)及び底面図(B)である。
【図8】 本発明の実施形態に用いるパッキンの形状例を示す図である。
【図9】 本発明の実施形態を使用状態で示す縦断面図である。
【図10】 本発明の他の実施形態の縦断面図である。
【図11】 図10の実施形態に用いる分散ブロックのみを抽出して示す側面図(A)及び平面図(B)である。
【図12】 跳水型減勢工の一例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1 減勢工
2 減勢工本体
21 底面
22 段部
23 載置面
3 流入口
4 流出部
5 減勢ブロック
51 減勢面
52 凸部
6 堰
61 傾斜面
62 貫通穴
7 流入開口部
8 流路
81 上流側流路
82 下流側流路
9 パッキン
10 分散ブロック
100 マンホール
101 流入管
102 流出管
Claims (4)
- マンホール内に挿入されて流入管に接続される流入口及び流出管に接続される流出口を有する減勢工本体に、流入管からの流入水に対する減勢面を備えた減勢ブロックが減勢面の前方に流入口を臨ませるように着脱自在に取り付けられ、前記減勢面に流入口側に向けて突出する凸部が形成されていることを特徴とする減勢工。
- 凸部が三角錘形であることを特徴とする請求項1記載の減勢工。
- 減勢工本体の内部で流出口の前方となる位置に堰が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の減勢工。
- 減勢工本体には、減勢ブロックの縁部を載置するための段部が設けられており、その段部の載置面と減勢ブロックの縁部との間にパッキンが挾み込まれていることを特徴とする請求項1〜3何れか記載の減勢工。
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