JP3854127B2 - 減勢工 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、傾斜地に配管された下水管(傾斜配管)などの管渠から放流される高速水流を減勢するのに用いられる減勢工(減勢装置)に関する。
【0002】
【従来の技術】
傾斜地に配管された下水管などから放流される汚水は高速であるため、そのまま放流すると、公共管やポンプ塔などの施設を損傷するおそれがある。このため高速水流のエネルギを減勢する設備を設ける必要がある。
【0003】
高速水流の放流水脈を減勢する設備として減勢工が知られている。減勢工としては、減勢槽の内部に堰を設け、傾斜下水管などの管渠から減勢層内に流出する水流の運動エネルギを跳水現象により減勢させる跳水型の減勢工がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、跳水型あるいは他の構造の減勢工においては、減勢槽内の底面に汚水等が滞留する可能性がある。減勢槽内において汚水の滞留が生じても減勢のメカニズム上の問題はないが、悪臭の発生や衛生面等において好ましい状況とは言えないので、滞留が起こらないような構造が望まれる。
【0005】
本発明はそのような問題点を解決するためになされたもので、下水等の滞留が生じ難い構造の減勢工の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の減勢工は、下水管などの管渠から放流される高速水流を減勢するのに用いられる減勢工であって、流入口及び流出部が形成された減勢工本体を備え、減勢工本体内の流入口側で分散減勢された水流を同減勢工本体内の流出部側に跳水させるための堰が設けられ、流入口から堰に至るまでの減勢工本体底面部分の全長に下流側に向かうにしたがって下方に傾斜する勾配がつけられていることを特徴とする。
【0007】
本発明の減勢工によれば、減勢工本体の内部で水が流れる部分の流水底面に、流入口側から流出部側に向かうにしたがって下方に傾斜する勾配(流れ方向の勾配)をつけているので、減勢工本体に流入した汚水(下水)は流出部側に向かってスムーズに流れ、減勢工本体の流水底面に汚水が滞留することがなくなる。
【0008】
本発明の減勢工において、前記した流れ方向の勾配に加えて、流水底面の幅方向(流れ方向と略直行する方向)の両端部から幅方向の中央に向かうにしたがって下方に傾斜する勾配をつけておけば、流水底面の隅部(幅方向の隅部)などに汚水が残ることがなくなるので排水性が更に向上する。
【0009】
本発明の減勢工において、減勢工本体の内部に減勢手段として配置されている堰の幅方向中央に、流入口側と流出部側とを連通する貫通穴またはスリットを形成するとともに、貫通穴またはスリットの底部に向けて減勢工本体の流水底面を下り勾配で傾斜させるという構成を採用すれば、堰を有する減勢工においても、減勢工本体内に下水等が滞留することを防止できる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1及び図2は本発明の実施形態の全体構造を示す斜視図である。図3は本発明の実施形態を減勢ブロックを取り外した状態で示す斜視図である。
【0012】
図4は本発明の実施形態の中央縦断面図(A)及び平面図(B)である。図5は図4に示す減勢工を減勢ブロックを取り外した状態で示す平面図である。図6及び図7はそれぞれ図4のX−X断面図及びY−Y断面図である。
【0013】
この例の減勢工1は、傾斜地に配管された下水管(傾斜配管)の下流側に敷設のマンホールに減勢機能を持たせるための装置であって、減勢工本体2とその内部に配置された減勢ブロック5及び堰6を備えている。
【0014】
減勢工本体2は、例えばFRP製で表面(流水表面)にPEシート20が貼着されている(図6、図7参照)。減勢工本体2は、断面楕円形のマンホール100(図9参照)に合わせた形状に加工されている。なお、減勢工本体2の形状は楕円形のほか、円形や矩形であってもよい。
【0015】
減勢工本体2には、流入口3及び流出部4と、減勢ブロック5の傾斜面51によって形成される傾斜流入路7と、傾斜流入路7の先端の流入開口部8から流出部4に通じる流路9が形成されている。
【0016】
減勢ブロック5は、図1に示す設置状態で傾斜面51が流入口3に対し、下方に向けて傾斜した姿勢で対向するようになっており、流入口3に流入した汚水の流れを下方と横方向(左右方向)に向けて分散する。
【0017】
減勢ブロック5は、図1及び図2に示すように、減勢工本体2への取り付け/取り外しが可能である。従って、減勢ブロック5を上方へと引き上げて、減勢工本体2から取り外すことにより、傾斜流入路7の清掃等のメンテナンスを行うことができる。
【0018】
なお、減勢ブロック5の上端部には固定プレート52が設けられており、この固定プレート52を減勢工本体2の上面縁部にボルト止めすることにより、減勢工本体2に対して減勢ブロック5の全体を固定することができる。また、固定プレート52には把手53が設けられている。
【0019】
減勢工本体2には、図2、図5及び図6に示すように、減勢ブロック5の縁部を載置するための段部22が設けられており、その段部22の載置面23と減勢ブロック5の縁部との間にゴム製のパッキン10が挟み込まれている。このように減勢工本体2と減勢ブロック5との間にパッキン10を設けておけば、減勢ブロック5の傾斜面51にて浸入が阻止された連行空気が、減勢ブロック5の上方に逃げることを阻止することができ、減勢工1の周辺に悪臭が洩れることを防ぐことができる。なお、パッキン10は、減勢工本体2側に取り付けておいてもよいし、減勢ブロック5側に取り付けておいてもよい。
【0020】
パッキンとしては、図8(A)に示すような断面Z字形のものが好ましいが、他の形状のパッキンであってもよい。例えば図8(B)及び(C)に示すような断面U字形のパッキン11や、断面Y字形のパッキン12を用いてもよい。さらに矩形断面のパッキンまたは円形断面のパッキン(Oリング)などの他の形状のパッキンを用いてもよい。
【0021】
堰6は、図4に示すように、流入開口部8と流出部4との間の流路9上に設けられている。堰6の底部には傾斜面61が形成されている。この傾斜面61は、流入開口部8から流出した水流の向きを上方(鉛直方向)に効率良く誘導することを目的として形成される。
【0022】
堰6の底部中央(幅方向の中央)には貫通穴62が設けられており、この貫通穴62を介して堰6の上流側流路(汚水滞留部)91と下流側流路(インバート)92とが連通している。貫通穴62の大きさは、汚水等に含まれる汚物などが通過できる程度の大きさ、例えばφ50mm〜φ100mm程度とする。なお、貫通穴の形状は、円形のほか楕円や四角形等であってもよい。
【0023】
堰6の上面(越流部分)は、幅方向の中央が最も低くなるようなV字形状に加工されている。なお、堰6の上面の形状は、堰の幅方向の中央部が他の部分よりも低い形状であれば特に限定されず、例えばU字形状であってもよい。また、堰の上面はフラットな形状であってもよい。
【0024】
そして、本実施形態においては、減勢工本体2の流水底面21に、流入口3側から堰6の貫通穴62に向かうにしたがって下方に傾斜する勾配がつけられており、さらに、流水底面21の幅方向の両端部から幅方向の中央CLに向かうにしたがって下方に傾斜する勾配がつけられている点に特徴がある。
【0025】
これら流水底面21の勾配のうち、流入口3側から堰6の貫通穴62に向かう下り勾配(流れ方向の勾配)は、例えば1/50が好ましい。また、流水底面21の両端部から中央CLに向かう下り勾配(幅方向の勾配)は、例えば1/20が好ましい。
【0026】
なお、これら流れ方向の勾配と幅方向の勾配の双方をつけておくことが好ましいが、流水底面21を汚水がスムーズに流れて滞留することがなければ、流水底面21につける勾配は、流れ方向の勾配のみであってもよい。
【0027】
以上の構造の減勢工1は、図9に示すように、マンホール100内の底部に設置され、減勢工本体2の流入口3に流入管(下水上流管)101が接続され、流出部4に流出管(下水下流管)102が接続される。流出管102の管底は下流側流路92(インバート)の底面と略一致する高さに配置される。
【0028】
図9の設置状態において、流入口3から傾斜流入路7に流入した水流は、流入口3に対向して設けられた減勢ブロック5の傾斜面51によって分散された後に、流入開口部8から減勢工本体2の内部に流入する。
【0029】
減勢工本体2の内部に流入した水流は、流入開口部8と流出部4との間に設置された堰6によって上昇渦流となり、堰6に沿って上方にせり上がってゆき、堰6を越流して流出部4から流出管102に流出する。なお、減勢工本体2内に流入する排水の水量が少量(堰6を越えない水量)である場合、減勢工本体2内に流入した排水は、堰6の貫通穴62を通過して流出部4から流出するので、減勢工本体2内に排水が滞留することはない。
【0030】
以上のように、本発明の実施形態によれば、減勢工本体2内に流入した水流を堰6によって強制的にせり上がらせることにより、減勢工本体2の高さ方向において水流の運動エネルギを発散(減勢)させているので、減勢工本体2の流入口3と堰6との間の距離が短くても、十分な減勢効果を得ることができる。
【0031】
しかも、流入管101を流れる噴流により多量の空気が減勢工本体2に向けて連行されても、その連行空気は、減勢ブロック5の傾斜面51によって減勢工本体2内への浸入が阻止され、その殆どが流入管101に戻される。従って、減勢工1の周辺に悪臭が漂うことがなく、気設備などを設ける必要がなくなる。
【0032】
さらに、減勢工本体2の流水底面21に、堰6の貫通穴62に向けて下方に傾斜する勾配と、幅方向の両端部から中央CLに向けて下方に傾斜する勾配をつけているので、流入開口部8から減勢工本体2の内部に流入した汚水は、堰6の貫通穴62に向かってスムーズに流れる。従って、減勢工本体2の流水底面21に汚水が滞留することがなく、悪臭の発生や衛生面などの問題が生じるおそれがな
い。
【0033】
さらに、本発明の実施形態においては、減勢工本体2の表面(流水表面)に、耐摩耗性に優れたPEシート20を貼着しているので、耐久性にも優れた減勢工を提供することができるという利点もある。
【0034】
なお、以上の実施形態では、堰6に貫通穴62を形成しているが、これに替えて、堰の上端から減勢工本体2の上流側流路91(下流側流路92)の底部まで切れ込むスリットを設けておいてもよい。この場合、スリットの底部に向けて下方に傾斜する勾配を減勢工本体2の流水底面21につけるようにすればよい。
【0035】
ここで、本発明の減勢工は、下水用のマンホールに限られることなく、高速水流を放流する各種配管・管渠に設置のマンホール、あるいは高速水流を放流する他の施設にも適用可能である。
【0036】
また、本発明は、図1〜図9に示した構造の減勢工に限られることなく、例えば跳水現象を利用した減勢手段を配置した構造の減勢工など、高速水流を減勢するのに用いられる減勢工であれば、各種構造・方式の減勢工にも適用することができる。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の減勢工によれば、減勢工本体の内部で水が流れる部分の流水底面に、流入口側から流出部側に向かうにしたがって下方に傾斜する勾配をつけているので、減勢工本体に流入した下水等は流出部側に向かってスムーズに流れる。従って、減勢工本体の底面に下水等が滞留することがなく、悪臭の発生や衛生面などの問題が生じるおそれがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態の全体構造を示す斜視図である。
【図2】 本発明の実施形態の全体構造を示す分解斜視図である。
【図3】 本発明の実施形態を減勢ブロックを取り外した状態で示す斜視図である。
【図4】 本発明の実施形態の中央縦断面図(A)及び平面図(B)である。
【図5】 本発明の実施形態を減勢ブロックを取り外した状態で示す平面図である。
【図6】 図4のX−X断面図である。
【図7】 図4のY−Y断面図である。
【図8】 本発明の実施形態に用いるパッキンの形状例を示す図である。
【図9】 本発明の実施形態を使用状態で示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 減勢工
2 減勢工本体
21 流水底面
CL 流水底面の幅方向の中央
22 段部
23 載置面
3 流入口
4 流出部
5 減勢ブロック
51 傾斜面
6 堰
61 傾斜面
62 貫通穴
7 傾斜流入路
8 流入開口部
9 流路
91 上流側流路
92 下流側流路
10 パッキン
100 マンホール
101 流入管
102 流出管

Claims (3)

  1. 下水管などの管渠から放流される高速水流を減勢するのに用いられる減勢工であって、流入口及び流出部が形成された減勢工本体を備え、減勢工本体内の流入口側で分散減勢された水流を同減勢工本体内の流出部側に跳水させるための堰が設けられ、流入口から堰に至るまでの減勢工本体底面部分の全長に下流側に向かうにしたがって下方に傾斜する勾配がつけられていることを特徴とする減勢工。
  2. 前記流入口から堰に至るまでの減勢工本体底面部分に、その底面の幅方向の両端部から中央に向かうにしたがって下方に傾斜する勾配がつけられていることを特徴とする請求項1記載の減勢工。
  3. 請求項1または2記載の減勢工において、堰の幅方向中央には、流入口側と流出部側とを連通する貫通穴またはスリットが形成されていることを特徴とする減勢工。
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