JP3852265B2 - プリンタ用金属製基板の製造方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はプリンタ用金属製基板の製造方法に関し、特に、抜き形状が含まれた部分の折り曲げ加工に関する
【0002】
【従来の技術】
図10はプリンタ用金属製基板の斜視図である。この金属製基板20は図示のように略直角に折り曲げられているが、その折り曲げ部分21には抜き加工が施されて形成された孔(抜き形状)22がある。そして、その孔22は図の右側に偏在している。このような金属製基板10の折り曲げ加工においては、従来は他の製品形状の場合と同様に、折り曲げ部分21の全体に亘る幅寸法のパンチにより折り曲げ加工を施していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来のプリンタ用金属製基板の製造方法においては その折り曲げ部分に抜き形状が偏在している場合においても、折り曲げ部分の全体に亘る幅寸法のパンチにより折り曲げ加工を施している。このため、製品材料のパンチ側への引き込み量がその折り曲げ位置により異なったものとなる。抜き形状が偏在していない側はそのパンチへの引き込み量が抜き形状が偏在している側に比べて多くなり、その結果、基準位置からの折り曲げ長さが短くなってしまい、設計値どおりの結果が得られない。例えば後述の図2の例では従来のパンチにより折り曲げ加工を施した場合には、基準位置から曲げ辺までの距離がL側とR側とでは0.2mm程度異なってしまい(基準位置から折り曲げ位置までの長さが抜き形状が偏在していない側が短くなる)、その許容誤差±0.05の範囲に入らなくなる。そして、金属製基板の折り曲げ位置の誤差は、それに搭載される部品の取り付け位置の誤差を引き起こし、プリンタの印字精度にも影響を与える、という問題点があった。
【0004】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、折り曲げ部分に抜き形状が偏在しても高精度に折り曲げ加工を施すことができるようにしたプリンタ用金属製基板の製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
(1)本発明の一つの態様に係るプリンタ用金属製基板の製造方法は、折り曲げ部位に抜き形状が偏在して含まれる被加工部材を直角に折り曲げ加工し、プリンタ用金属製基板を形成するプリンタ用金属製基板の製造方法において、折り曲げ加工するためのパンチの端面に段差を設け、抜き形状が偏在する側の被加工部材を前記パンチの内、高さが高い部分の第1の部分側に配置し、抜き形状が偏在しない側の被加工部材を前記パンチの内、前記第1の部分より高さが低い部分の第2の部分側に配置し、前記パンチの端面により被加工部材に曲げ応力を加えて当該被加工部材を前記パンチの側面に沿って折り曲げ、抜き形状が偏在する側の被加工部材を前記第1の部分により折り曲げ加工を行ない、抜き形状が偏在しない側の被加工部材を前記第2の部分により折り曲げ加工を行って、前記被加工部材を直角に折り曲げる。本発明においては、抜き形状が偏在する側の被加工部材をパンチの第1の部分(高い部分)により折り曲げ加工をし、抜き形状が偏在しない側の被加工部材をパンチの第2の部分(低い部分)により折り曲げ加工をするようにしたので、これらの部分のパンチへの引き込み量がほぼ同じになり、折り曲げ長さが同一になる。このため、金属製基板の折り曲げ位置が高精度なものとなり、それに搭載される部品の取り付け位置も誤差を含まないものとなる。従って、プリンタの印字も高精度になる。
【0006】
(2)本発明の他の態様に係るプリンタ用金属製基板の製造方法は、折り曲げ部位に抜き形状が偏在して含まれる被加工部材を直角に折り曲げ加工しプリンタ用金属製基板を形成するプリンタ用金属製基板の製造方法において、前記被加工部材の折り曲げ加工の加工方向に対して長さが異なる複数の部材によりパンチを構成し、抜き形状が偏在する側の被加工部材を前記パンチの内、長さが長い部材からなる第1の部材側に配置し、抜き形状が偏在しない側の被加工部材を前記パンチの内、前記第1の部材より長さが短い部材からなる第2の部材側に配置し、 前記パンチの端面により被加工部材に曲げ応力を加えて当該被加工部材を前記パンチの側面に沿って折り曲げ、抜き形状が偏在する側の被加工部材を前記第1の部材により折り曲げ加工を行ない、抜き形状が偏在しない側の被加工部材を前記第2の部材により折り曲げ加工を行って、前記被加工部材を直角に折り曲げる。本発明においては、折り曲げ加工するためのパンチを長さが異なる複数の部材から構成する。そして、抜き形状が偏在する側の被加工部材を第1の部材(長い方の部材)により折り曲げ加工をし、抜き形状が偏在しない側の被加工部材を第2の部材(短い方の部材)により折り曲げ加工をする。このように折り曲げ加工をするので、パンチへの引き込み量がほぼ同じになり、折り曲げ長さが同一になる。このため、金属製基板の折り曲げ位置が高精度なものとなり、それに搭載される部品の取り付け位置も誤差を含まないものとなる。従って、プリンタの印字も高精度になる。
【0007】
(3)本発明の他の態様に係るプリンタ用金属製基板の製造方法は、上記(1)又は(2)の製造方法において、パンチと被加工部材との接触長さを、抜き形状が偏在する側の被加工部材と、抜き形状が偏在しない側の被加工部材とで異ならせたものである。本発明においては、パンチと被加工部材との接触長さを、抜き形状が偏在する側の被加工部材と、抜き形状が偏在しない側の被加工部材とで異ならせたことにより、パンチへの引き込み量をほぼ同じにしている。
【0008】
(4)本発明の他の態様に係るプリンタ用金属製基板の製造方法は、上記(3)の製造方法において、パンチと抜き形状が偏在しない側の被加工部材との接触長さを、パンチと抜き形状が偏在する側の被加工部材との接触長さよりも短くしたものである。本発明においては、パンチと抜き形状が偏在しない側の被加工部材との接触長さを、パンチと抜き形状が偏在する側の被加工部材との接触長さよりも短くしたことにより、パンチへの引き込み量をほぼ同じにしている。
【0014】
【発明の実施の形態】
実施形態1.
図1は本発明の実施形態1に係るプリンタ用金属製基板の製造装置のパンチの概念図である。この製造装置のパンチ10には例えば0.5mm程度の段差11が設けられており、段差の高い方の部分のパンチ12は抜き形状が偏在している側を折り曲げるものとし、段差の低い方の部分のパンチ14は抜き形状が偏在していない側を折り曲げるものとする。そして、パンチ12,14の先端部の製品側には曲面部16が設けられており、折り曲げ加工の際に製品に疵が付かないように配慮されている。
【0015】
図2は抜き形状が偏在している製品(プリンタ用金属製基板)の正面図である。この製品20は正面右側に抜き形状22が偏在している例である。
【0016】
図3は図1のパンチ10により折り曲げ加工を施しているときの斜視図であり、図4はその側面図である。これらの図に示されるように、パンチ12の先端はパンチ14よりも突起しているので(0.5mm)、まず、パンチ12による抜き形状22が偏在している側(R側)に対する折り曲げ加工が始まり、その後にパンチ14による抜き形状22が偏在していない側(L側)に対する折り曲げ加工が始まる。そして、このパンチ12,14が同時に折り曲げ加工を施しているときのパンチ12,14と製品20との接触長さは、パンチ12の方がパンチ14よりも0.5mm長い。パンチ14はパンチ12よりも接触長さが短いが、抜き形状22が偏在していない側を折り曲げ加工するので、パンチ14と製品20との接触面積は接触長さに比べて相対的に多くなり、この部分のパンチ14への引き込み量(引き込まれる量)が相対的に多くなる。このため、この曲げ加工における接触長さに差(0.5mm)を設けることにより、パンチ12,14への引き込み量(引き込まれる量)が同じになり折り曲げ位置の差を減少させる。この例では、曲げ位置の差が従来0.2mm(後述の表1参照)であったものが、本実施形態においては0.07mm(後述の表2参照)であり、許容誤差の範囲に入っていることが確認されている。
【0017】
図5は抜き形状が均一に分布している製品(被加工部材)の例である。このような製品を従来のパンチにより曲げ加工をすると、曲げ位置の差は0.04mm程度である(後述の表3参照)。即ち、抜き形状(穴形状)の配置の偏りによる影響は0.16mm(=0.20−0.04)程度あることが分かる。
【0018】
また、図5の製品(被加工部材)を図1のパンチ12,14にて曲げ加工を行った場合には、曲げ位置の差は0.03mm程度あることが確認されている(後述の表4参照)。
【0019】
以上の点から次のようなことが分かる。
▲1▼従来のパンチ(以下一体パンチという)による曲げ位置の差0.2mmを生じる要因は、抜き形状(穴形状)の配置の偏り、曲げ足長さの偏り、その他の形状特性による。
▲2▼図1のパンチ(以下分割パンチという)による効果は0.133mm(=0.204−0.071:主として穴形状、曲げ足長さの偏りを回避)である。(表1、表2参照)
▲3▼抜き形状(穴形状)の偏りを排除した後の分割パンチによる効果は、0.007mm(=0.041−0.034)である。(表3、表4参照)
▲4▼抜き形状(穴形状)の偏りに対する分割パンチの効果は、上記▲2▼,▲3▼により、0.126mm(=0.133−0.007)である。
【0020】
したがって、本実施形態に係る分割パンチによれば、抜き形状(穴形状)が偏在している製品であっても、曲げ位置の差が減少して設計どおりの製品寸法が得られる。
【0021】
なお、本実施形態においては、パンチ10に段差11を設けた例について説明したが、パンチ10を2個の部材から構成して隣接して取り付けるようにしてもよい。また、段差11の大きさについては、抜き形状の大きさや偏在の程度に応じて適宜決定されるものとする。
【0022】
【実施例】
実施例1.
表1は図2の製品(被加工部材)を従来の一体パンチで折り曲げ加工を施したときの各部(L,M,R)の折り曲げ位置の寸法を示した表であり、表2は本発明に係る分割パンチによる場合の折り曲げ位置の寸法を示した表である。図6及び図7は表1及び表2に対応した特性図である。なお、この製品の材質はSECC、板厚は1.2mmである(後述の実施例2も同様である)。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
実施例2.
表3は図5の製品(被加工部材)を従来の一体パンチで折り曲げ加工を施したときの各部(L,M,R)の折り曲げ位置の寸法を示した表であり、表3は本発明に係る分割パンチによる場合の折り曲げ位置の寸法を示した表である。図8及び図9は表3及び表4に対応した特性図である。
【0026】
【表3】
【0027】
【表4】
【0028】
上記の実施例1及び2から、上記▲1▼〜▲4▼のことが分かり、本発明に係る分割パンチによる効果を上記の▲4▼から把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1に係るプリンタ用金属製基板の製造装置のパンチの概念図である。
【図2】折り曲げ加工が施された製品(プリンタ用金属製基板)の正面図である。
【図3】図1のパンチにより折り曲げ加工を施しているときの斜視図である。
【図4】図3の側面図である。
【図5】抜き形状が均一に分布している製品(被加工部材)の正面図である。
【図6】表1に対応した特性図である。
【図7】表2に対応した特性図である。
【図8】表3に対応した特性図である。
【図9】表3に対応した特性図である。
【図10】プリンタ用金属製基板の斜視図である。
【符号の説明】
10 分割パンチ
20 製品(被加工部材)
Claims (4)
- 折り曲げ部位に抜き形状が偏在して含まれる被加工部材を直角に折り曲げ加工し、プリンタ用金属製基板を形成するプリンタ用金属製基板の製造方法において、
折り曲げ加工するためのパンチの端面に段差を設け、抜き形状が偏在する側の被加工部材を前記パンチの内、高さが高い部分の第1の部分側に配置し、抜き形状が偏在しない側の被加工部材を前記パンチの内、前記第1の部分より高さが低い部分の第2の部分側に配置し、
前記パンチの端面により被加工部材に曲げ応力を加えて当該被加工部材を前記パンチの側面に沿って折り曲げ、抜き形状が偏在する側の被加工部材を前記第1の部分により折り曲げ加工を行ない、抜き形状が偏在しない側の被加工部材を前記第2の部分により折り曲げ加工を行って、前記被加工部材を直角に折り曲げることを特徴とするプリンタ用金属製基板の製造方法。 - 折り曲げ部位に抜き形状が偏在して含まれる被加工部材を直角に折り曲げ加工しプリンタ用金属製基板を形成するプリンタ用金属製基板の製造方法において、
前記被加工部材の折り曲げ加工の加工方向に対して長さが異なる複数の部材によりパンチを構成し、抜き形状が偏在する側の被加工部材を前記パンチの内、長さが長い部材からなる第1の部材側に配置し、抜き形状が偏在しない側の被加工部材を前記パンチの内、前記第1の部材より長さが短い部材からなる第2の部材側に配置し、
前記パンチの端面により被加工部材に曲げ応力を加えて当該被加工部材を前記パンチの側面に沿って折り曲げ、抜き形状が偏在する側の被加工部材を前記第1の部材により折り曲げ加工を行ない、抜き形状が偏在しない側の被加工部材を前記第2の部材により折り曲げ加工を行って、前記被加工部材を直角に折り曲げることを特徴とするプリンタ用金属製基板の製造方法。 - 前記パンチと被加工部材との接触長さを、抜き形状が偏在する側の被加工部材と、抜き形状が偏在しない側の被加工部材とで異ならせたことを特徴とする請求項1又は2記載のプリンタ用金属製基板の製造方法。
- 前記パンチと抜き形状が偏在しない側の被加工部材との接触長さを、前記パンチと抜き形状が偏在する側の被加工部材との接触長さよりも短くしたことを特徴とする請求項3記載のプリンタ用金属製基板の製造方法。
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