JP3849328B2 - 噴霧測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、噴霧測定装置に関し、特に噴霧に平面状のシート光を投光して被計測断面を照射し、被計測断面を撮影することにより噴霧状態を測定する噴霧測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、液体を微細な粒子にして噴射する噴射装置は、内燃機関(以下、「内燃機関」をエンジンという。)等に広く用いられている。エンジンに用いられる燃料噴射装置が噴射する噴霧の濃度や拡散状態は、燃料の着火特性、燃焼効率、窒素酸化物の排出量等に深く関係する。このため、燃料噴射装置の開発及び検査においては、噴霧の濃度や拡散状態を正確に測定し、噴霧と燃焼の関係を解析することが重要である。
【0003】
近年、レーザシート光を噴霧に投光して被計測断面上の燃料粒子を照射し、燃料粒子の散乱光の強度を計測することによって噴霧の濃度等を測定する噴霧測定装置が用いられるようになった。例えば特公平3−55780号広報に開示される装置は、一方向から被計測断面にレーザシート光を投光し、被計測断面の噴孔反対側で噴霧進行方向上に設置される撮像装置によって、被計測断面上にある燃料粒子の散乱光の強度を計測する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような従来の噴霧測定装置は、以下に掲げる課題を含有していた。
▲1▼噴霧に一方向から進入するシート光は、被計測断面上に位置する多くの粒子によって減衰しながら進行し、被計測断面上の粒子が受光する光は、シート光進入側からその反対側に向かって徐々に弱くなり均一でないため、正確な噴霧の解析ができなかった。
【0005】
▲2▼被計測断面上の粒子から噴孔反対側に進行する散乱光は、被計測断面より噴孔反対側に位置する多くの粒子によって減衰しながら進行する。一方、被計測断面の噴孔からの位置、及び噴射時刻から測定時刻までの時間間隔を一定にして噴射しても、噴射装置の噴射特性のばらつきがあるため、測定時刻において被計測断面より噴孔反対側に位置する粒子の量は一定ではない。すなわち、粒子から撮像装置に向かって発散される散乱光が噴霧中を進行する距離等が異なる。このため、被計測断面より噴孔反対側に位置する粒子の影響による散乱光の減衰量にばらつきがあり、正確な噴霧の解析ができなかった。
▲3▼噴霧に投光されるシート光の強度が測定ごとに変動し、正確な噴霧の解析ができなかった。
▲4▼噴霧に投光されるシート光の強度が被計測断面と平行な面において面均一でなかったため、正確な噴霧の解析ができなかった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために創作されたものであって、噴霧中を進行するシート光の減衰による測定誤差が少なく、解析精度が高い噴霧測定装置を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の別の目的は、噴霧中を進行する散乱光の減衰による測定誤差が少なく、解析精度が高い噴霧測定装置を提供することにある。
本発明のまた別の目的は、シート光の強度の変動による測定誤差が少なく、解析精度が高い噴霧測定装置を提供することにある。
本発明のまた別の目的は、シート光の強度むらによる測定誤差が少なく、噴霧の解析精度が高い噴霧測定装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1から5のいずれか一項記載の噴霧測定装置によると、互いに異なる方向から噴霧に被計測断面上で重なるシート光を投光し被計測断面上の粒子を照射する第1投光部及び第2投光部を備えるため、それぞれの粒子が受光するシート光の強度の和を略均一にすることができる。また、シート光によって照射される粒子の散乱光を被計測断面の斜め方向から第1撮像部及び第2撮像部で計測するため、噴射装置の噴射特性に起因する散乱光の減衰量のばらつきを低減することができる。さらに二方向から散乱光を計測するため、噴霧の形状、及び被計測断面を撮影する方向と噴霧の中心軸とのずれに起因する散乱光の減衰量のばらつきを低減することができる。強度の和が略均一なシート光を受光した粒子から発散され略均一に減衰した散乱光を受光した撮像部が被計測断面の像を記録し、データ処理部においてその像を解析することにより、測定誤差が少なく解析精度の高い噴霧測定ができる。
【0011】
本発明の請求項2記載の噴霧測定装置によると、シート光が噴霧に進入する前に投光部から投光されるシート光の強度を計測する出力計測手段と、シート光の強度の変動に応じて記録された像を補正する補正手段とを備えるため、シート光の出力のばらつきによる測定誤差を抑制し、解析精度の高い噴霧測定ができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を示す実施例を図面に基づいて説明する。
本発明の一実施例による噴霧測定装置を図1に示す。
第1実施例による噴霧測定装置は、ガソリンエンジン用燃料噴射装置8の噴霧の濃度分布及び燃料粒子の大きさを測定する装置であって、第1投光部1、第2投光部2、第1撮像部3、第2撮像部4、出力計測手段5、6、及びデータ処理部7を備え、レーザシート光によって照射される燃料粒子から発散される散乱光の強度を計測することによって、噴霧の濃度分布等を測定する装置である。
【0014】
第1投光部1と第2投光部2は、それぞれが投光するレーザシート光が噴霧の被計測断面上で重なるように噴霧の両側に向かい合って設置される。第1投光部1及び第2投光部2は、実質的に同じ構成であり、それぞれ単色平行光束レーザビームを出力するYAGレーザ発振器11、21、及び円筒面レンズの組み合わせからなるテレセントリック光学系を応用したシート化手段12、22を備える。第1投光部1と第2投光部2は、シート化手段12、22によって、YAGレーザ発振器11、21が発生するレーザビームを所定の広がりと厚みをもち、被計測断面と平行な面における強度が面均一な平面状のレーザシート光に加工して出力する。
【0015】
第1撮像部3及び第2撮像部4は、被計測断面より噴孔側で燃料噴射装置8の軸を対称の軸として線対称な位置に設置され、燃料噴射装置8の軸に対して45度の角度から噴霧の被計測断面を撮影する。第1撮像部3及び第2撮像部4は、実質的に同一の構成であり、集光レンズ、CCD等を備え、被計測断面上における燃料粒子の散乱光を受光し光電変換することによりデータ処理部7に散乱光の強度を表わすデータ信号を送信する。
【0016】
出力計測手段5、6は、YAGレーザ発振器11、12から出力されるレーザビームがシート化手段12、22に入射するまでの経路において、レーザビームの強度を測定する装置である。出力計測手段5、6は、集光レンズ、フォトダイオードを備え、レーザビームの一部を受光し光電変換することによりデータ処理部7にレーザビームの強度を表わす補正信号を送信する。
【0017】
データ処理部7は、データ信号及び補正信号に基づいて後述の合成処理、出力補正処理、及び撮影角度補正処理を行うマイクロコンピュータを有する。データ処理部7には表示装置71が接続され、画面上に被計測断面上の噴霧の濃度分布が表示される。
【0018】
以下、上述の噴霧測定装置の作動について説明する。
噴孔から被計測断面までの距離を決めて燃料噴射装置8を設置し、所定時刻に燃料を噴射させる。噴射から所定時間経過後同時に第1投光器1及び第2投光器2から噴霧にレーザシート光を投光する。このとき、YAGレーザ発振器11、21から出力されるレーザビームの強度が出力計測手段5、6によって計測され、データ処理部7に補正信号が送信される。
【0019】
第1投光器及び第2投光器から投光されるレーザシート光は、噴霧の進行方向に垂直な平面状の光であって、噴霧を被計測断面で切断するように噴霧に進入する。それぞれのレーザシート光は、被計測断面上に位置する燃料粒子によって減衰しながら噴霧中を進行する。このため、一方のレーザシート光についてみると、散乱光を計測する瞬間にレーザシート光が進入する反対側にある燃料粒子が受光する光は、レーザシート光が進入する側にある燃料粒子が受光する光より弱い光となる。燃料粒子が第1投光器及び第2投光器から受光する光の強度と、被計測断面上の位置関係を模式的に図2に示す。
【0020】
レーザシート光を受光した燃料粒子は、全方向に散乱光を発散する。第1撮像部3及び第2撮像部4が設置されているそれぞれの方向に発散する散乱光は、被計測断面より噴孔側に位置する燃料粒子によって減衰しながら噴霧中を進行する。被計測断面上の特定の位置における燃料粒子から発散される散乱光が噴霧中を進行する距離は、燃料噴射装置8の噴射時期のずれや噴射特性のばらつきによらず略一定であるため、測定ごとに燃料粒子による散乱光の減衰量が大きく相違することはない。
【0021】
一方、ある特定の一つの燃料粒子から発散される散乱光についてみると、第1撮像部3及び第2撮像部4は、燃料噴射装置8の軸を対称の軸として線対称に配置されているため、第1撮像部3に向かって進行する散乱光と、第2撮像部4に向かって進行する散乱光が噴霧中を進行する距離は図3に示すように相違している。被計測断面上で第1撮像部に最も近い位置Aにある燃料粒子から第1撮像部3に向かって発散される散乱光は、実質的に他の燃料粒子による影響を受けず減衰せずに第1撮像部3に受光され、第2撮像部4に向かって発散される散乱光は、被計測断面より噴孔側に位置する多くの燃料粒子による影響を受け減衰して第2撮像部4に受光される。散乱光の減衰量は、噴霧中を散乱光が進行する距離Lによって決まる。直線AB上にある任意の点から第1撮像部3及び第2撮像部4に向かって進行する散乱光が噴霧中を進行する距離Lと線分AB上の位置関係を模式的に図4に示す。これらの関係は、第1撮像部3及び第2撮像部4で測定される散乱光の減衰量と燃料粒子の位置関係と実質的に同じである。
【0022】
散乱光を受光した第1撮像部3及び第2撮像部4は、それぞれ散乱光の強度を表わすデータ信号をデータ処理部7に送信する。
データ処理部7は、第1撮像部3及び第2撮像部4から受信したデータ信号に対し、燃料噴射装置8の軸方向と第1撮像部3及び第2撮像部4が被計測断面を撮影する角度に基づいて座標の補正をする撮影角度補正処理を実行する。すなわち、被計測断面を斜め方向から撮影することに起因して被計測断面において円形に分布する噴霧が楕円形の分布として計測されているため、これを補正するための処理を実行する。
【0023】
次に、撮影角度補正処理が施されたデータ信号を出力計測手段5、6から受信した補正信号に基づいて補正をする出力補正処理を実行する。すなわち、所定の基準強度と実際にYAGレーザ発振器11、12が出力したレーザビームの強度との差分をデータ信号に反映する処理を実行する。この処理によって測定ごとのYAGレーザ発振器の出力のばらつきが測定結果に及ぼす影響を減少させることができる。
【0024】
次に、出力補正処理が施された第1撮像部3及び第2撮像部4から受信したデータ信号を同じ座標平面上で合成する合成処理を実行する。すなわち、被計測断面上の同じ位置における燃料粒子から発散された散乱光を測定したそれぞれのデータ信号を加算し、加算した値をその位置における輝度値として算定する。図2に示すように、被計測断面上の特定の一点が第1投光器1及び第2投光器から受光するレーザシート光の強度の和は、被計測断面上のいずれの点においても略等しい。また、図4に示すように、被計測断面上の特定の一点から発散される散乱光が第1撮像部3及び第2撮像部4に向かって噴霧中を進む距離の和は、被計測断面上のいずれの点においても略等しい。このため、それぞれのデータ信号を加算することにより被計測断面より噴孔側にある燃料粒子によるレーザシート光及び散乱光の減衰量は被計測断面上のいずれの点においても略等しく測定され、所定の減衰量を考慮してデータ信号を評価することにより、レーザシート光及び散乱光の減衰に影響されない測定値を得ることができる。
【0025】
データ処理部7で上述の処理によって算出された測定値は、表示装置71にデータ信号として送信される。表示装置71は、受信したデータ信号に基づき所定の基準値と測定値との比較演算等を行い、画面上に被計測断面上の噴霧の濃度分布を示す画像及び分布特性を示す種々のテキストデータを表示する。測定値との比較対称となる基準値は、被計測断面の燃料粒子を実際に補足しその質量分布を計測することによって得られる。
【0026】
本実施例による噴霧測定装置によると、互いに向き合う2方向からレーザシート光を噴霧に投光するため、燃料粒子によるレーザシート光の減衰に起因する測定誤差を減少させ、解析精度の高い測定をすることができる。
【0027】
また、レーザシート光によって照射される燃料粒子の散乱光を被計測断面より噴孔側の2方向から計測するため、燃料粒子による散乱光の減衰に起因する測定誤差を減少させ、解析精度の高い測定をすることができる。
さらに、レーザビームの出力のばらつきを計測し、データ信号を補正することにより測定誤差を減少させ、解析精度の高い測定をすることができる。
またさらに、テレセントリック光学系を応用したシート化手段13、23を用いてレーザシート光を投光するため、レーザシート光の強度むらによる測定誤差を減少させ、解析精度の高い測定をすることができる。
【0028】
(変形例)
本実施例による噴霧測定装置においては、2方向からレーザシート光を噴霧に投光すること、2方向から散乱光を計測すること、レーザビームの出力を計測してデータ信号の補正に反映すること、及びシート化手段によって面均一なレーザシート光を投光することのそれぞれが解析精度の向上において固有の効果をもたらすため、それらのいずれかにより、又はそれらを多様に組み合わせて装置を構成することも可能である。また、装置に設置する投光部又は撮像部は、燃料噴射装置の軸に対してそれぞれ等角度間隔で3台以上設置することによりさらに装置の解析精度を高めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例による噴霧測定装置を示すブロック図である。
【図2】 燃料粒子によるレーザシート光の減衰を説明するためのグラフである。
【図3】 燃料粒子による散乱光の減衰を説明するための模式図である。
【図4】 散乱光が噴霧中を進む距離を説明するためのグラフである。
【符号の説明】
1 第1投光部
2 第2投光部
3 第1撮像部
4 第2撮像部
5、6 出力計測手段
7 データ処理部
12、22 シート化手段
Claims (5)
- 噴孔から噴射される噴霧の被計測断面に所定の厚みと広がりをもつ平面状のシート光を投光し、そのシート光によって照射された前記被計測断面の噴霧状態を測定することにより、燃料噴射装置の噴霧状態を計測する噴霧測定装置であって、
前記噴霧の両側に互いに向き合って設置され、前記被計測断面上で重なる平行な前記シート光を投光し前記被計測断面を照射する第1投光部及び第2投光部と、
前記燃料噴射装置の軸を対象の軸として線対称な位置に配置され、前記被計測断面を斜め方向から撮影し、前記シート光で照射された前記被計測断面の像を記録する第1撮像部及び第2撮像部と、
前記撮像部でそれぞれ記録される前記像を解析するデータ処理部と、
を備えることを特徴とする噴霧測定装置。 - 前記シート光が前記噴霧に進入する前に前記投光部から投光されるシート光の強度を計測する出力計測手段と、前記シート光の強度の変動に応じて前記記録された像を補正する補正手段とを備えることを特徴とする請求項1記載の噴霧測定装置。
- 前記データ処理部は、前記第1撮像部及び前記第2撮像部から受信したデータ信号に対し、前記燃料噴射装置の軸と前記第1撮像部及び前記第2撮像部とが形成する撮影角度に基づいて、座標を補正することを特徴とする請求項1又は2記載の噴霧測定装置。
- 前記被計測断面にある特定の一点が前記第1投光部及び前記第2投光部から受光するシート光の強度の和は、前記被計測断面にあるいずれの点においても概ね等しいことを特徴とする請求項1、2又は3記載の噴霧測定装置。
- 前記被計測断面にある特定の一点から発散される散乱光が前記第1撮像部及び前記第2撮像部へ向けて噴霧中を進む距離の和は、前記被計測断面にあるいずれの点においても概ね等しいことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の噴霧測定装置。
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