JP3848979B2 - 工業用殺菌剤及び工業用殺菌方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、工業用殺菌剤及び工業用殺菌方法に関する。さらに詳しくは、紙・パルプ工場における抄紙工程水やパルプスラリー、各種工業用の冷却水や洗浄水、コーティングカラー、切削油、ラテックス類、合成樹脂エマルション、澱粉スラリー、炭酸カルシウムスラリー、泥水ポリマー、繊維油剤等の防腐や殺菌用として有用である工業用殺菌剤及び工業用殺菌方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
近年、微生物汚染に起因して各種工業用水のスライムによる障害が多発し、種々の弊害をもたらしている。ここでスライムとは、主として微生物の繁殖によって生じる粘性塊状〜泥状物質のことを表す。例えば、化学工場などの冷却水系統の熱交換器や配管などにスライムが発生すると、冷却効率を低下させ、ときには配管を閉塞させる。特に、紙・パルプ工場の抄紙工程水やパルプスラリーにスライムが発生すると、これが剥離して紙料やパルプに混入し、紙切れの原因となるため抄紙工程の運転を中断せざるをえなくなる。また紙やパルプに斑点や着色が発生し、製品の品質が低下してしまう。
【0003】
また、表面サイズ剤やコーテングカラー等に利用される澱粉スラリーは、スラリー溶解タンクで調整され、その後ストレージタンク等に一時的又は所定期間貯溜される。この貯溜期間の長期化又は貯溜温度の変動や、更に他の経路からの微生物の混入等によって、該スラリーが腐敗、変質する。これにより腐敗臭の発生、pHの低下など性状の悪変が起こり、使用に耐えなくなるばかりか、器壁にスライムが発生し、これが剥離することによってストレーナーや経路を閉塞するなど作業上の障害をもたらす。
【0004】
更にまた、炭酸カルシウムスラリー、泥水ポリマー、繊維油剤、切削油、ラテックス類、合成樹脂エマルションや水をベースとするいわゆる水溶性タイプの金属加工油(クーラント)等の工業用途に供される多くの水性液状物も上記澱粉スラリーと同様、微生物によって品質の低下や作業障害が起こりやすい。
そこで、前記微生物に起因する障害を防止するために各種工業用殺菌剤が開発されている。
【0005】
この発明のA成分である2,2’−メチレンビス−(4−クロロフェノール)やB成分である脱ハロゲン化されてカルボニウムイオンを容易に生成するハロゲン含有殺菌剤は、防腐・防かび等を目的とする工業用殺菌・静菌剤として知られている(日本防菌防黴学会より昭和61年発行の「防菌防黴剤事典」参照)。
また、2,2’−メチレンビス−(4−クロロフェノール)と、アルキレンビスチオシアネート、ハロシアノアセトアミド、イソチアゾロン系化合物、グルタルアルデヒドとを併用する工業用殺菌・抗菌組成物が知られている(特開平2-247104号公報、特開平4-290806号公報、特開平4-297401号公報参照)。
【0006】
前記工業用殺菌・抗菌組成物は、対象水系に添加し、殺菌有効成分を水中に均一に分散させ、水中に存在する微生物をある一定レベル以下の菌数まで殺菌することにより、スライムの形成を防止するものである。しかしながら、水中の微生物の菌数とスライム発生の度合いとは必ずしも一致しないことがあり、しばしば異なる場合も多いという問題点があった。
しかもスライム形成菌の多くはマシン、チェスト、管などの壁に付着してから増殖しはじめる場合が多く、たとえ水中の菌数が少なくてもそれがスライムとなって大きなトラブルとなる場合も観察される。このように一旦スライムが形成されると、微生物の代謝産物である粘性ゼラチン質の多糖類からできた粘膜層(Slime layer )が形成され、殺菌剤とスライム中の微生物との接触を妨げる事実を確認した。
【0007】
一方、スライムは主として水面近傍位置に多く形成され、スライム中の菌数は菌の増殖により109 〜1012個/ミリリットルと非常に多くなっている場合が多く、スライム中から菌が水中に移行し更にスライムや腐敗の発生原因となる場合もあった。 また、前記課題に加えて、この発明の一成分である2,2’−メチレンビス−(4−クロロフェノール)は、単独では抗菌スペクトルが狭く、殺菌・静菌対象系が限定されると共に、低濃度では有効な殺菌・静菌効果が発揮されないという問題点があった。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる状況下、この発明の発明者らは、スライム防止メカニズムについて更なる研究開発を行い、その結果、単独では殺菌・静菌効果が弱く使用が困難であった2,2’−メチレンビス−(4−クロロフェノール)に特定の工業用殺菌化合物を併用した場合に、その相乗作用により優れた殺菌効果、特にスライム抑制効果が得られる事実、及びその効果が還元性環境、例えば還元性物質が5mg/リットル(亜硫酸イオン換算)以上存在する環境においても減退しない事実を見出し、この発明を完成するに至った。
【0009】
かくしてこの発明によれば、2,2’−メチレンビス−(4−クロロフェノール)〔A成分〕と、
(a)一般式(I):
【0010】
【化3】
【0011】
(式中、Pは塩素原子、Qは塩素原子又は水素原子)で表されるオキシム系化合物、
(b)4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オン、
(c)α−クロロベンズアルドキシム、
(d)2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセトキシプロパン及び
(f)ビス(トリブロモメチル)スルホン
から選択される少なくとも1種以上の脱ハロゲン化されてカルボニウムイオンを容易に生成するハロゲン含有殺菌剤〔B成分〕とを相乗効果を奏する割合で有効成分として含有することを特徴とする工業用殺菌剤が提供される。
【0012】
また、この発明によれば、工業用殺菌対象系に、2,2'−メチレンビス−(4−クロロフェノール)〔A成分〕と、上記脱ハロゲン化されてカルボニウムイオンを容易に生成するハロゲン含有殺菌剤〔B成分〕とを同時に又は別々に添加することを特徴とする工業用殺菌方法が提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
この発明のB成分である脱ハロゲン化されてカルボニウムイオンを容易に生成するハロゲン含有殺菌剤としては、
(a)一般式(I)で表されるオキシム系化合物、
(b)4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オン、
(c)α−クロロベンズアルドキシム、
(d)2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセトキシプロパン、
(e)2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール及び
(f)ビス(トリブロモメチル)スルホン
の殺菌剤から選択される少なくとも1種以上の化合物が好ましく用いられる。
前記一般式(I)で表されるオキシム系化合物は、具体的にはモノクロログリオキシム、ジクロログリオキシムである。
この発明に用いられる(A)及び(B)成分の化合物は、いずれも公知の殺菌剤であり、市販のものを使用することができる。
【0014】
また、この発明のA成分とB成分との併用割合は、B成分の種類及び組み合わせにより多少異なるが、一般的に重量比として19:1〜1:9が好ましい。具体的には、B成分が(a)一般式(I)で表されるオキシム系化合物の場合、A成分とB成分との併用割合(以下、A:Bと略す)は1:5〜200:1、好ましくは1:19〜9:1、B成分が(b)4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オンの場合、A:Bは1:20〜50:1、好ましくは1:19〜9:1、B成分が(c)α−クロロベンズアルドキシムの場合、A:Bは1:20〜70:1、好ましくは1:19〜9:1、B成分が(d)2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセトキシプロパンの場合、A:Bは1:50〜10:1、好ましくは1:19〜9:1、B成分が(e)2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールの場合、A:Bは1:40〜20:1、好ましくは1:19〜9:1、B成分が(f)ビス(トリブロモメチル)スルホンの場合、A:Bは1:50〜50:1、好ましくは1:19〜9:1である。
【0015】
この発明の有効成分は、通常液剤の形態で製剤化して用いるのが好ましい。しかし、これに限定されることなく、使用対象によっては粉剤等の形態で用いてもよい。また、有効成分を2液又は3液に分けて製剤し、別々に使用しても差し支えない。
【0016】
更に本発明によれば、工業用殺菌対象系に、2,2’−メチレンビス−(4−クロロフェノール)と、脱ハロゲン化されてカルボニウムイオンを容易に生成するハロゲン含有殺菌剤〔B成分〕とを同時に又は別々に添加することを特徴とする工業用殺菌方法が提供される。
【0017】
この発明において、工業用殺菌対象系とは、紙・パルプ工業における抄紙工程水、各種工業用の冷却水や洗浄水、コーティングカラー、切削油、ラテックス類、合成樹脂エマルション、澱粉スラリー、炭酸カルシウムスラリー、泥水ポリマー、繊維油剤等を意味する。特にこの発明の殺菌剤は、工業用殺菌対象系が、還元性環境、例えば還元性物質が5mg/リットル(亜硫酸イオン換算)以上存在する環境においても効果を発揮する。
【0018】
殺菌対象系が製紙工程のプロセス水や工業用冷却水等の各種水系や澱粉スラリーや合成樹脂エマルション等の場合には、有効成分の溶解、分散性を考慮して、水、親水性有機溶媒及び分散剤を用いた液剤とするのが好ましい。
【0019】
この親水性有機溶媒としては、ジメチルホルムアミド等のアミド類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、メチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、炭素数8までのアルコール類もしくはメチルアセテート、エチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、2−エトキシメチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、プロピレンカーボネート及びグルタル酸ジメチル等のエステル類が挙げられる。
【0020】
これら親水性溶媒の中で、安全性及び安定性の点でエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、メチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、炭素数8までのアルコール類もしくはメチルアセテート、エチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、2−エトキシメチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、プロピレンカーボネート及びグルタル酸ジメチル等のエステル類等が好ましい。
【0021】
分散剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤又は両性界面活性剤が適当であり、製剤としての安定性の点でノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0022】
このノニオン性界面活性剤としては、高級アルコールエチレンオキサイド付加物(エチレンオキサイドは以下E.Oと略す)、アルキルフェノール(E.O)付加物、脂肪酸(E.O)付加物、多価アルコール脂肪酸エステル(E.O)付加物、高級アルキルアミン(E.O)付加物、脂肪酸アミド(E.O)付加物、油脂の(E.O)付加物、プロピレンオキサイド〔P.Oと略す〕(E.O)共重合体、アルキルアミン(P.O)(E.O)共重合体付加物、グリセリンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルキロールアミド等が挙げられる。
【0023】
また、これら界面活性剤の代わりに又はその補助剤として、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ゼラチン、CMC(カルボキシメチルセルロース)等の水溶性高分子を用いてもよい。
これら製剤の配合割合は、有効成分の合計量を1〜50重量部、分散剤が有効成分の合計1重量部に対して少なくとも0.01重量部であり、残部を親水性有機溶媒とするのが好ましい。
【0024】
また、殺菌対象系が切削油、油性塗料などの油系の場合には、灯油、重油、スピンドル油等の炭化水素溶媒を用いた液剤とするのが好ましく、上記界面活性剤を用いてもよい。
更に、この発明の有効成分がそれぞれに直接溶解又は分散しうる殺菌対象系に対しては、直接又は固体希釈剤(例えばカオリン、クレー、ベントナイト、CMC等)で希釈した粉剤としてもよく、各種界面活性剤を用いてもよい。又、組合せによっては、溶媒や界面活性剤を用いずに有効成分のみで製剤化してもよい。
【0025】
この発明の組成物の添加量は、殺菌対象水系の種類、スライムの付着状態、スライム構成菌の種類等により異なるが、ことにコーティングカラー、切削油、ラテックス類、合成樹脂エマルション、澱粉スラリー、炭酸カルシウムスラリー、泥水ポリマー、繊維油剤等の防腐対象系については、殺菌有効成分濃度として0.1〜100mg/リットル程度の量が好ましい。
また紙・パルプ工場における抄紙工程水やパルプスラリー、各種工業用の冷却水や洗浄水のスライムコントロール剤として使用する場合は、殺菌有効成分濃度として0.1〜100mg/リットルの範囲で用いられ充分その目的を達成することができる。
また、この発明の組成物は、この発明の効果を阻害しない限り、水や界面活性剤を用いてエマルション製剤とすることもでき、更に、公知の殺菌剤を含有させることもできる。
【0026】
【実施例】
この発明を以下の製剤例及び試験例により例示する。
以下の実施例は、この発明の有効成分(2種の化合物)からなる製剤であり、製剤の調製は、各種親水性有機溶媒に各殺菌有効成分を混合し、攪拌溶解することにより行った。
この発明の実施例である製剤例を以下に示す。
なお、製剤例11及び12、試験例1において2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールを用いた試験(結果を表6に示す)、ならびに試験例2において2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールを用いた試験(結果を図6に示す)を参考例とする。
【0027】
製剤例1
2,2’−メチレンビス−(4−クロロフェノール) 10重量部
ジクロログリオキシム 1重量部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 89重量部
製剤例2
2,2'-メチレンビス-(4-クロロフェノール) 10重量部
ジクロログリオキシム 0.5重量部
グルタル酸ジメチル 19.5重量部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 70重量部
製剤例3
2,2’−メチレンビス−(4−クロロフェノール) 10重量部
モノクロログリオキシム 1重量部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 89重量部
製剤例4
2,2’−メチレンビス−(4−クロロフェノール) 10重量部
モノクロログリオキシム 0.5重量部
グルタル酸ジメチル 19.5重量部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 70重量部
製剤例5
2,2’−メチレンビス−(4−クロロフェノール) 9重量部
4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オン 3重量部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 88重量部
【0028】
製剤例6
2,2’−メチレンビス−(4−クロロフェノール) 4重量部
4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オン 4重量部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 92重量部
製剤例7
2,2’−メチレンビス−(4−クロロフェノール) 15重量部
α−クロロベンズアルドキシム 5重量部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 80重量部
製剤例8
2,2’−メチレンビス−(4−クロロフェノール) 7重量部
α−クロロベンズアルドキシム 7重量部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 86重量部
製剤例9
2,2’−メチレンビス−(4−クロロフェノール) 10重量部
2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセトキシプロパン 10重量部
グルタル酸ジメチル 80重量部
製剤例10
2,2’−メチレンビス−(4−クロロフェノール) 15重量部
2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセトキシプロパン 5重量部
プロピレンカーボネート 80重量部
【0029】
製剤例11
2,2’−メチレンビス−(4−クロロフェノール) 10重量部
2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール 10重量部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 80重量部
製剤例12
2,2’−メチレンビス−(4−クロロフェノール) 5重量部
2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール 15重量部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 80重量部
製剤例13
2,2’−メチレンビス−(4−クロロフェノール) 10重量部
ビス(トリブロモメチル)スルホン 10重量部
ジメチルホルムアミド 5重量部
グルタル酸ジメチル 75重量部
製剤例14
2,2’−メチレンビス−(4−クロロフェノール) 5重量部
ビス(トリブロモメチル)スルホン 15重量部
ジメチルホルムアミド 5重量部
グルタル酸ジメチル 75重量部
製剤例15
2,2’−メチレンビス−(4−クロロフェノール) 10重量部
ジクロログリオキシム 0.5重量部
モノクロログリオキシム 0.5重量部
グルタル酸ジメチル 19重量部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 70重量部
【0030】
試験例1〔紙・パルプ工場の製紙工程白水中におけるスライム生成抑制試験〕
某製紙工場抄造マシンA〔新聞用紙抄造、pH5.5、還元性物質30mg/リットル(亜硫酸イオン換算)含有、スライム菌種:シュードモナス属、フラボバクテリウム属、アルカリゲネス属、バチルス属〕、マシンB〔板紙(中芯原紙)抄造、pH6.5、還元性物質5mg/リットル(亜硫酸イオン換算)、スライム菌種:シュードモナス属、セラチア属、キサントモナス属、ミクロコッカス属)及びマシンC(中質紙抄造、pH8.0、スライム菌種:シュードモナス属、フラボバクテリウム属、アルカリゲネス属、エシェリア属)の3台に付着した細菌性のスライムをミキサーでスラリー状としてそれぞれ試験に供した。マシンA、B及びCの製紙工程水を採取して1時間静置後、上澄液500ミリリットル及び上記スラリー状スライム5gを、スライムを付着させる為の網を設置したビーカーに入れ、72時間30℃でゆっくり攪拌しながらスライム付着試験を行った。この間、2,2’−メチレンビス−(4−クロロフェノール)〔A成分〕と、ジクロログリオキシム、モノクロログリオキシム、4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オン、α−クロロベンズアルドキシム、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセトキシプロパン、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール及びビス〔トリブロモメチル〕スルホンから選択される1種の化合物〔B成分〕からなる供試薬剤5mg/リットルを12時間ごとに30分間上記スライム付着器に接触させた。
72時間後に網に付着したスライム重量を測定し、A成分のみの添加時のスライム付着率を100%として各薬剤処理時のスライム付着率を算出した。その結果を表1〜7に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
【表4】
【0035】
【表5】
【0036】
【表6】
【0037】
【表7】
【0038】
表1〜7より、A成分のみの添加時のスライム付着率に比べて、B成分を併用する本発明の殺菌剤を添加した系では、スライム付着率が顕著に低下することがわかる。
【0039】
試験例2〔紙・パルプ工場の製紙工程白水中での殺菌効力確認試験〕
某製紙工程水(中質紙抄造、pH8.0)から単離したスライム障害の原因菌であるシュードモナス属を用いて、各供試薬剤の24時間、30℃での最少発育阻止濃度(MIC24h) を測定した。その結果を図1〜7に示す。
図1〜7より、本発明の殺菌剤におけるA成分とB成分との相乗効果が確認される。
【0040】
【発明の効果】
この発明の工業用殺菌剤は、2,2’−メチレンビス−(4−クロロフェノール)〔A成分〕と、特定の脱ハロゲン化されてカルボニウムイオンを容易に生成するハロゲン含有殺菌剤〔B成分〕を組み合わせることにより、A成分単独では得ることができない優れた殺菌効果、特にスライム抑制効果を得ることができる。特に殺菌対象系が、還元性環境、例えば還元性物質が5mg/リットル(亜硫酸イオン換算)以上存在する環境においても効果を発揮する。
この発明は、特にスライム障害が直接製品に悪影響を及ぼす紙・パルプ工業における抄紙工程水用の殺菌剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の殺菌剤、2,2’−メチレンビス−(4−クロロフェノール)〔A成分〕とジクロログリオキシム〔B成分〕との相乗効果を示す最少発育阻止濃度のグラフである。
【図2】 この発明の殺菌剤、2,2’−メチレンビス−(4−クロロフェノール)〔A成分〕とモノクロログリオキシム〔B成分〕との相乗効果を示す最少発育阻止濃度のグラフである。
【図3】 この発明の殺菌剤、2,2’−メチレンビス−(4−クロロフェノール)〔A成分〕と4,5−ジクロロ−1,2−ジチオール−3−オン〔B成分〕との相乗効果を示す最少発育阻止濃度のグラフである。
【図4】 この発明の殺菌剤、2,2’−メチレンビス−(4−クロロフェノール)〔A成分〕とα−クロロベンズアルドキシム〔B成分〕との相乗効果を示す最少発育阻止濃度のグラフである。
【図5】 この発明の殺菌剤、2,2’−メチレンビス−(4−クロロフェノール)〔A成分〕と2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−ジアセトキシプロパン〔B成分〕との相乗効果を示す最少発育阻止濃度のグラフである。
【図6】 この発明の殺菌剤、2,2’−メチレンビス−(4−クロロフェノール)〔A成分〕と2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール〔B成分〕との相乗効果を示す最少発育阻止濃度のグラフである。
【図7】 この発明の殺菌剤、2,2’−メチレンビス−(4−クロロフェノール)〔A成分〕とビス〔トリブロモメチル〕スルホン〔B成分〕との相乗効果を示す最少発育阻止濃度のグラフである。
Claims (5)
- A成分とB成分との併用割合が、重量比として19:1〜1:9である請求項1に記載の工業用殺菌剤。
- A成分とB成分との併用割合が、重量比として19:1〜1:9である請求項3に記載の工業用殺菌方法。
- 工業用殺菌対象系が、亜硫酸イオンとして5mg/リットル以上の還元性物質を含有する請求項3又は4に記載の工業用殺菌方法。
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