JP3847095B2 - 半導体用樹脂ペースト及び半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、IC、LSI等の半導体素子を金属フレーム等に接着する樹脂ペーストに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、IC等の半導体素子の集積度が高密度化してきたため、半導体素子が大型化してきている。一方、半導体装置のリードフレームとしては、従来から用いられてきた42合金フレームでは高価であることから、コストダウンのため銅フレームが用いられるようになってきている。この様な大型の半導体素子と、銅フレームの様な熱膨張率の大きいリードフレームを用いた半導体装置に対応して、半導体素子をリードフレームに接着するマウント工程には従来使用されていた半導体用樹脂ペーストに代わって、半導体素子のクラックや反りを防止するため、低応力化剤を配合して低弾性率化した半導体用樹脂ペーストが使用されるようになってきている。
他方、電子機器の小型軽量化、高機能化の動向に対応して、半導体装置の小型化、薄型化、狭ピッチ化が益々加速する中で、半導体用樹脂ペーストには、半導体装置の吸湿後の耐半田クラック性や耐湿性の向上が強く求められている。これらの信頼性の向上には半導体素子とリードフレームが密着していることが必要である。しかし従来の低応力化剤を配合した半導体用樹脂ペーストでは、低弾性率化するために多量の低応力化剤を配合しなければならず、リードフレームや半導体素子と半導体用樹脂ペーストとの密着性が低下してしまうため、半導体装置の信頼性が期待した程には向上しないといった問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、密着性の低下がなく、低弾性率で、吸湿処理後の耐半田クラック性試験において半導体用樹脂ペースト層の剥離が起こらない信頼性に優れた半導体用樹脂ペースト、及びこれを用いた半導体装置を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、[1]半導体素子をリードフレームに接着する半導体用樹脂ペーストであって、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)低応力化剤、及び(D)フィラーを必須成分とし、該低応力化剤が、分子末端に水酸基を有し、且つエポキシ樹脂及び硬化剤と混合して硬化させた場合に相分離せず均一に分散する化合物で一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)で示される化合物から選択される1種類以上であり、エポキシ樹脂100重量部当たりの該低応力化剤が3〜100重量部であることを特徴とする半導体用樹脂ペースト、
【化4】
(R1は水素原子、又はメチル基であり、同一でも異なっていてもよい。R2、R3は炭素数1〜6のアルキレン基であり、同一でも異なっていてもよい。a、bは1以上の整数である。)
【0005】
【化5】
(R4は2価の基である。c、d、e、fは1以上の整数で、同一でも異なっていてもよい。)
【0006】
【化6】
(R5は3価の基である。c、d、e、f、g、hは1以上の整数で、同一でも異なっていてもよい。)[2] 第[1]項記載の半導体用樹脂ペーストを用いて製作されてなることを特徴とする半導体装置、である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるエポキシ樹脂は、エポキシ基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を指す。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるポリグリシジルエーテル、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂等の結晶性エポキシ樹脂、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ樹脂、ジグリシジルヒダントイン等の複素環式エポキシ樹脂、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ジシクロペンタジエンジオキサイド、アリサイクリックジエポキシーアジペイト等の脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン等が挙げられ、これらは1種類あるいは複数種を併用して使うことが可能である。
エポキシ樹脂は分子量によって各種のものがあるが、分子量が小さく常温で液状のものが、配合するときの作業性及び配合後の粘度の点から好ましい。
【0008】
エポキシ樹脂が固形や半固形である場合や、液状でも粘度が高い場合は、エポキシ基を有する反応性希釈剤を併用することが好ましい。反応性希釈剤としては、例えば、n−ブチルグリシジルエーテル、バーサティック酸グリシジルエステル、スチレンオサイド、エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル等が挙げられ、これらは1種類あるいは複数種を併用して使うことが可能である。
【0009】
本発明で用いられる硬化剤としては、例えば、フェノール樹脂、ジカルボン酸ジヒドラジド化合物、イミダゾール化合物、脂肪族アミン、芳香族アミン、ジシアンジアミド等が挙げられ、これらは1種類あるいは複数種を併用して使うことが可能である。
【0010】
フェノール樹脂としては、エポキシ基と反応して架橋にあずかる活性水素基を1分子当り2個以上有することが望ましい。このようなフェノール樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシベンゾフェノン、o-ヒドロキシフェノール、m-ヒドロキシフェノール、p-ヒドロキシフェノール、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、エチリデンビスフェノール、メチルエチリデンビス(メチルフェノール)、シクロへキシリデンビスフェノール、又フェノール、クレゾール、キシレノール等の1価フェノール類とホルムアルデヒドとを稀薄水溶液中強酸性下で反応させることによって得られるフェノールノボラック樹脂、1価フェノール類とアクロレイン、グリオキザール等の多官能アルデヒド類との酸性下の初期縮合物や、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン等の多価フェノール類とホルムアルデヒドとの酸性下の初期縮合物等が挙げられ、これらは1種類あるいは複数種を併用して使うことが可能である。
【0011】
ジカルボン酸ジヒドラジド化合物としては、例えば、アジピン酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、p-オキシ安息香酸ジヒドラジド等のカルボン酸ジヒドラジド等が挙げられ、これらは1種類あるいは複数種を併用して使うことが可能である。
【0012】
イミダゾール化合物としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−C11H23−イミダゾール等の一般的なイミダゾールやトリアジンやイソシアヌル酸を付加し、保存安定性を付与した2,4−ジアミノ−6−{2−メチルイミダゾール−(1)}−エチル−S−トリアジン、又そのイソシアネート付加物等が挙げられ、これらは1種類あるいは複数種を併用して使うことが可能である。
【0013】
本発明で用いられる低応力化剤(C)としては、分子末端に水酸基を有し、且つエポキシ樹脂及び硬化剤とともに混合して硬化させた場合に相分離せず均一に分散する化合物であれば、特に限定するものではなく、これらは1種類あるいは複数種を併用して使うことが可能である。又、一般式(1)〜(3)で示される化合物から選択される1種類以上が好ましい。
一般式(1)〜(3)の具体的な例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【化7】
【0014】
【化8】
【0015】
【化9】
分子末端に水酸基を有する化合物であっても、エポキシ樹脂及び硬化剤とともに混合して硬化させた場合に相分離してしまうものだと、相分離せず均一に分散するものに比べて、配合量を多くしないと半導体用樹脂ペーストの低弾性率化ができなかったり、接着強度が低下してしまったりするので好ましくない。
低応力化剤(C)の配合量としては、エポキシ樹脂100重量部当たり3〜100重量部が好ましく、より好ましくは5〜50重量部である。3重量部未満だと低応力化剤を配合することによる低弾性率化の効果が無く、100重量部を超えると接着強度が低下するので好ましくない。
【0016】
本発明で用いられるフィラーとしては、例えば、無機フィラー、有機フィラー等が挙げられる。
無機フィラーとしては、例えば、金粉、銀粉、銅粉、アルミニウム粉等の金属粉や、溶融シリカ、結晶シリカ、窒化珪素、アルミナ、窒化アルミ、タルク等が挙げられる。これらの内、金属粉は主に導電性や熱伝導性を付与するために用いられる。
有機フィラーとしては、例えば、シリコーン樹脂、ポリテトラフロロエチレン等のフッ素樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ベンゾグアナミンやメラミンとホルムアルデヒドとの架橋物等が挙げられる。
これらのフィラーは、ハロゲンイオン、アルカリ金属イオン等のイオン性不純物の含有量が10ppm以下であることが好ましい。
又、フィラーの形状としては、例えば、フレーク状、鱗片状、樹脂状、球状等のものが用いられる。
必要とする半導体用樹脂ペーストの粘度によって、使用するフィラーの粒径は異なるが、通常、平均粒径は0.3〜20μm、最大粒径は50μm程度のものが好ましい。平均粒径が0.3μm未満だと粘度が高くなり、20μmを越えると塗布又は硬化時に樹脂成分が流出するのでブリードが発生する可能性がある。最大粒径が50μmを越えるとディスペンサーで半導体用樹脂ペーストを塗布するときに、ニードルの出口を塞ぎ長時間の連続使用ができない。又、比較的粗いフィラーと細かいフィラーとを混合して用いることもでき、種類、形状についても各種のものを適宜混合してもよい。
又、必要とされる特性を付与するためには、前記以外のフィラーを用いてもよい。例えば、粒径が1〜100nm程度のナノスケールフィラーや、シリカとアクリルとの複合材、有機フィラー表面に金属コーティングを施したもの等の様な有機化合物と無機化合物との複合フィラー等が挙げられる。
尚、本発明のフィラーは、予め表面をアルコキシシラン、アシロキシシラン、シラザン、オルガノアミノシラン等のシランカップリング剤等で処理したものを用いてもよい。
【0017】
本発明の半導体用樹脂ペーストは(A)〜(D)成分を必須成分とするが、それら以外にも必要に応じて硬化促進剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、顔料、染料、消泡剤、界面活性剤、溶剤等の添加剤を適宜配合することができる。
本発明の半導体用樹脂ペーストは、(A)〜(D)成分、及びその他の添加剤等を予備混合し、ロール等を用いて混練した後、真空下脱泡する等の製造方法で得られる。
本発明の半導体用樹脂ペーストを用いて、半導体装置を製造するには、公知の方法を用いることができる。
【0018】
【実施例】
本発明を実施例で具体的に説明する。各成分の配合割合は重量部とする。
<実施例1〜7>
表1の配合に従って各成分をロールで混練し、真空チャンバーを用いて脱泡して半導体用樹脂ペーストを得た。得られた半導体用樹脂ペーストを以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0019】
<用いる原料成分>
エポキシ樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(25℃での粘度9000mPa・s、エポキシ当量185)
反応性希釈剤:フェニルグリシジルエーテル
硬化剤:
フェノールノボラック樹脂(水酸基当量104)、
ジシアンジアミド
低応力化剤:
式(4)で示される化合物
【化10】
【0020】
式(5)で示される化合物
【化11】
【0021】
式(6)で示される化合物
【化12】
無機フィラー:
銀粉 :粒径0.1〜50μm、平均粒径3μm、フレーク状。
シリカ:平均粒径3μm、最大粒径20μm、球状
【0022】
<評価方法>
・粘度:E型粘度計(3°コーン)を用いて、25℃、2.5rpmでの値を測定した。
・弾性率:テフロンシート上に半導体用樹脂ペーストを幅10mm、長さ約150mm、厚さ100μmに塗布し、200℃のオーブン中で60分間硬化した後、引っ張り試験機を用いて試験長100mm、引っ張り速度1mm/60秒、25℃、又は260℃で測定し、得られた応力−ひずみ曲線の初期勾配から弾性率を算出した。
・接着強度:5mm×5mmのシリコンチップを、半導体用樹脂ペーストを用いて銅フレームにマウントし、オーブンを用いて200℃、60分間で硬化した。硬化後、マウント強度測定装置を用いて25℃、又は260℃での熱時ダイシェア強度を測定した。
・相溶性:エポキシ樹脂、硬化剤、及び低応力化剤の混合物を、50mmφアルミカップ中に5cm3入れ、オーブンを用いて200℃、60分間で硬化した。硬化物を目視で観察し相分離の有無を確認した。
・耐半田性(剥離率):シリコンチップ(サイズ9.0mm×9.0mm)を半導体用樹脂ペーストを用いてリードフレーム(銅製)にマウントし、オーブンを用いて窒素雰囲気下、200℃、60分間で硬化した。このリードフレームをエポキシ樹脂封止材を用いて、80ピンQFP(パッケージサイズは14×20mm、厚み2.0mm)を金型温度175℃、射出圧力7.5MPa、硬化時間60秒間でトランスファー成形し、175℃、8時間で後硬化させた。得られたパッケージを85℃、相対湿度85%の環境下で168時間放置し、その後260℃の半田槽に10秒間浸漬した。透過型の超音波探傷装置を用いてパッケージ内部の剥離面積の合計値を測定し、又、反射型の超音波探傷装置を用いてチップとエポキシ樹脂封止材との剥離面積及びリードフレームとエポキシ樹脂封止材との剥離面積の合計値を測定した。(ダイアタッチ層の剥離面積)=[(透過での剥離面積の合計値)−(反射での剥離面積の合計値)]を求め、半導体用樹脂ペーストの剥離率を、(剥離率)=[(ダイアタッチ層の剥離面積)/(チップ面積)×100]として、5個のパッケージの平均値を求め、%で表示した。
【0023】
<比較例1〜7>
表2の配合に従い実施例と同様にして半導体用樹脂ペーストを得、実施例と同様にして評価した。結果を表2に示す。
尚、比較例で使用した低応力化剤の詳細を以下に示す。
アミン末端ブタジエン・アクリロニトリル共重合物(25℃での粘度225Pa・s、活性水素当量450、平均分子量1300。以下、ATBNという)、エポキシ化ポリブタジエン(25℃での粘度100Pa・s、エポキシ当量200、平均分子量1000)
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
【発明の効果】
本発明に従うと、熱時接着強度の低下がなく、吸湿処理後の耐半田クラック性試験において半導体用樹脂ペースト層の剥離が起こらない信頼性に優れた低弾性率の半導体用樹脂ペースト、及びこれを用いた半導体装置が得られる。
Claims (2)
- 半導体素子をリードフレームに接着する半導体用樹脂ペーストであって、 (A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)低応力化剤、及び(D)フィラーを必須成分とし、該低応力化剤が、分子末端に水酸基を有し、且つエポキシ樹脂及び硬化剤と混合して硬化させた場合に相分離せず均一に分散する化合物で一般式(1)、一般式(2)、一般式(3)で示される化合物から選択される1種類以上であり、エポキシ樹脂100重量部当たりの該低応力化剤が3〜100重量部であることを特徴とする半導体用樹脂ペースト。
- 請求項1記載の半導体用樹脂ペーストを用いて製作されてなることを特徴とする半導体装置。
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