JP3568742B2 - 半導体用樹脂ペースト - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はIC、LSI等の半導体素子を金属フレーム等に接着する樹脂ペーストに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エレクトロニクス業界の最近の著しい発展により、トランジスター、IC、LSI、超LSIと進化してきており、これら半導体素子に於ける回路の集積度が急激に増大すると共に大量生産が可能となり、これらを用いた半導体製品の普及に伴って、その量産に於ける作業性の向上並びにコストダウンが重要な問題となってきた。従来は半導体素子を金属フレームなどの導体にAu−Si共晶法により接合し、次いでハーメチックシールによって封止して、半導体製品とするのが普通であった。しかし量産時の作業性、コストの面より、樹脂封止法が開発され、現在は一般化されている。これに伴い、マウント工程に於けるAu−Si共晶法の改良としてハンダ材料や樹脂ペースト即ちマウント用樹脂による方法が取り上げられるようになった。
【0003】
しかし、ハンダ法では信頼性が低いこと、素子の電極の汚染を起こし易いこと等が欠点とされ、高熱伝導性を要するパワートランジスター、パワーICの素子に使用が限られている。これに対しマウント用樹脂はハンダ法に較べ、作業性に於いても信頼性等に於いても優れており、その需要が急激に増大している。
【0004】
更に近年、IC等の集積度の高密度化により、チップが大型化してきており、一方従来用いられてきたりードフレームである42合金フレームが高価なことより、コストダウンの目的から銅フレームが用いられるようになってきた。ここでIC等のチップの大きさが約4〜5mm角より大きくなると、IC等の組立工程での加熱により、マウント法としてAu−Si共晶法を用いると、チップの熱膨張率と銅フレームの熱膨張率との差からチップのクラックや反りによる特性不良が問題となってきている。
【0005】
即ちこれは、チップの材料であるシリコン等の熱膨張率が3×10−6/℃であるのに対し、42合金フレームでは8×10−6/℃であるが、銅フレームでは20×10−6/℃と大きくなる為である。これに対し、マウント法としてマウント用樹脂を用いることが考えられるが、従来のエポキシ樹脂系ペーストでは、熱硬化性樹脂で三次元硬化する為、弾性率が高く、チップと銅フレームとの歪を吸収するには至らなかった。
【0006】
また、硬化時に架橋密度を小さくするようなエポキシ樹脂、例えばエポキシモノマーを多量に含むものを使用すれば弾性率を低くできるが、接着強度が低下するという欠点があった。更に通常のエポキシ樹脂は粘度が高く、これに無機フィラーを配合すると粘度が高くなりすぎ、ディスペンス時の糸ひきが発生し作業性が悪くなる。作業性を改良するために多量の溶剤を添加するとボイドが発生するという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、熱時接着強度を低下させないで、硬化物の低弾性率化を計ることにより、IC等の大型チップと銅フレーム等の組合せでもチップクラックや反りによるIC等の特性不良が起こらず、速硬化でかつボイドの発生のない樹脂ペーストを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は(A)一般式(1)で示される液状エポキシ樹脂とエポキシ基を有する反応性希釈剤の重量比が50:50〜90:10である液状エポキシ樹脂、(B)フェノール硬化剤、(C)潜在性硬化剤、(D)第3級アミン又はその塩である硬化促進剤及び(E)無機フィラーを必須成分とし、成分(A)100重量部に対し、成分(B)が10〜30重量部、成分(C)が0.5〜5重量部であり、かつ成分(A)(B)(C)の合計100重量部に対し、成分(D)が0.1〜10重量部である半導体用樹脂ペーストである。
【0009】
【化1】
【0010】
本発明に用いる液状エポキシ樹脂(A)は一般式(1)で示される液状エポキシ樹脂とエポキシ基を有する反応性希釈剤の重量比が50:50〜90:10である液状エポキシ樹脂で、一般式(1)で示される液状エポキシ樹脂は分子量により各種のものがあるが、分子量が小さく常温で液状のものが、配合するときの作業性及び配合後の粘度の点から好ましい。
【0011】
一般式(1)で示される液状エポキシ樹脂と混合するエポキシ基を有する反応性希釈剤にはn−ブチルグリシジルエーテル、バーサティック酸グリシジルエステル、スチレンオサイド、エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル等があり、これらの内の1種類あるいは複数種と併用可能である。
【0012】
一般式(1)で示される液状エポキシ樹脂とエポキシ基を有する反応性希釈剤の重量比は50:50〜90:10であることが好ましい。反応性希釈剤の重量比が50を越えると接着強度が弱く、10未満では樹脂ペーストとしたときに粘度が高くなり作業性が低下する。
【0013】
本発明においては他のエポキシ樹脂を混合して用いてもよい。上記液状エポキシ樹脂と混合する場合の他のエポキシ樹脂としては,例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック類とエピクロルヒドリンとの反応により得られるポリグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ、ジグリシジルヒダントイン等の複素環式エポキシ、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ジシクロペンタジエンジオキサイド、アリサイクリックジエポキシーアジペイトのような脂環式エポキシがあり、これらの内の1種類あるいは複数種と併用可能である。
【0014】
本発明に用いるフェノール硬化剤(B)はエポキシ樹脂の硬化剤として用いられる。
本発明に用いるフェノール硬化剤はエポキシ基と反応して架橋にあずかる活性水素基を分子当り2個以上有することが望ましい。このようなフェノール化合物の例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシベンゾフェノン、o−ヒドロキシフェノール、m−ヒドロキシフェノール、p−ヒドロキシフェノール、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、エチリデンビスフェノール、メチルエチリデンビス(メチルフェノール)、シク口へキシリデンビスフェノール、またフェノール、クレゾール、キシレノール等の1価フェノール類とホルムアルデヒドとを稀薄水溶液中強酸性下で反応させることによって得られるフェノールノボラック樹脂、1価フェノール類とアクロレイン、グリオキザール等の多官能アルデヒド類との酸性下の初期縮合物や、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン等の多価フェノール類とホルムアルデヒドとの酸性下の初期縮合物などであり、これらは単独でも混合して用いてもよい。
【0015】
フェノール硬化剤(B)の配合量は液状エポキシ樹脂(A)に対し10〜30重量%使用するのが接着性及び低応力性の点から好ましい。
【0016】
本発明に用いる潜在性硬化剤(C)はエポキシ樹脂の硬化剤として用いられ、例えばアジピン酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、P−オキシ安息香酸ジヒドラジド等のカルボン酸ジヒドラジドやジシアンジアミドである。潜在性硬化剤を用いるとフェノール硬化剤単独で硬化した場合に比べ著しく熱時接着強度が高くなる。又潜在性硬化剤はフェノール硬化剤よりも当量が小さいため、併用することにより粘度がそれ程高くなく、又潜在性であるため保存性にも優れたペーストを得ることができる。潜在性硬化剤(C)の配合量は全エポキシ樹脂に対し、0.5〜5重量%使用するのが好ましい。0.5重量%未満では熱時接着強度が弱く、5重量%を越えると低応力性が低下するので好ましくない。
【0017】
本発明に用いる硬化促進剤は第3級アミン又はその塩であり、ジメチルベンジルアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、脂環式超塩基類、イミタゾール類の群より選ばれた少くとも1種の第3級アミンとフェノール類又は塩基酸類との塩であることが望ましい。脂環式超塩基とはトリメチレンジアミン、1,8ージアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、ドデカヒドロ−1,4,7,9bテトラアザフェナレンなどである。イミダゾール類とは2−及び/または4−の位置にメチル、エチル、プロピルまたはよりC17までの長鎖のアルキル基、フェニル基などの置換基を導入したものである。これらの第3級アミン類と塩を形成するものとしては、フタル酸(o,m,p)、テトラヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、トリメリット酸、アジピン酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸などの塩基酸、またはレゾルシン、ピロガロール、ハイドロキノン、フェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、低分子ノボラックなどのフェノール類である。
これらの第3級アミンの塩は液状エポキシ樹脂(A)、フェノール硬化剤(B)、潜在性硬化剤(C)の総量に対して0.1〜10重量%使用することが望ましい。これより少いと、促進硬化が不十分であり、これより多くしても硬化がさほど促進されないのに保存性が低下するおそれがあるので何れも望ましくない。
【0018】
本発明に用いる無機フィラー(F)としては銀粉、シリカフィラー等がある。銀粉は導電性を付与するために用いられ、ハロゲンイオン、アルカリ金属イオン等のイオン性不純物の含有量は10ppm以下であることが好ましい。又銀粉の形状としてはフレーク状、樹脂状や球状等が用いられる。必要とするペーストの粘度により、使用する銀粉の粒径は異なるが、通常平均粒径は2〜10μm、最大粒径は50μm程度のものが好ましい。又比較的粗い銀粉と細かい銀粉とを混合して用いることもでき、形状についても各種のものを適宜混合してもよい。
【0019】
本発明に用いるシリカフィラーは平均粒径1〜20μmで最大粒径50μm以下のものである。平均粒径が1μm以下だと粘度が高くなり、20μm以上だと塗布又は硬化時に樹脂分が流出するのでブリードが発生するため好ましくない。最大粒径が50μm以上だとディスペンサーでペーストを塗布するときに、ニードルの出口を塞ぎ長時間の連続使用ができない。又比較的粗いシリカフィラーと細かいシリカフィラーとを混合して用いることもでき、形状についても各種のものを適宜混合してもよい。
又、必要とされる特性を付与するために本発明以外の無機フィラーを使用してもよい。
【0020】
本発明における樹脂ペーストには、必要により用途に応じた特性を損なわない範囲内で、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、顔料、染料、消泡剤、界面活性剤、溶剤等の添加剤を用いることができる。本発明の製造法としては、例えば各成分を予備混合して三本ロール等を用いて、ペーストを得て、真空下脱抱すること等がある。
【0021】
【実施例】
本発明を実施例で具体的に説明する.各成分の配合割合は重量部とする.
【0022】
実施例1〜8、比較例1〜10
表1に示した組成の各成分と無機フィラーを配合し、三本ロールで混練して樹脂ペーストを得た。この樹脂ペーストを真空チャンバーにて2mmHgで30分間脱泡した後、以下の方法により各種の性能を評価した。評価結果を表1に示す。
【0023】
用いる原料成分
・一般式(1)で示される液状エポキシ樹脂(エポキシA):粘度2000mPa・s、エポキシ当量270
【0024】
【化1】
【0025】
【0026】
評価方法
粘度 :E型粘度計(3°コーン)を用い25℃、2.5rpmでの値を測定し粘度とした。
弾性率 :テフロンシート上にペーストを幅10mm長さ約150mm厚さ100μmに塗布し、200℃オーブン中60分間硬化した後、引っ張り試験機で試験長100mm引っ張り速度1mm/分にて測定し得られた応力ーひずみ曲線の初期勾配より弾性率を算出した。
接着強度 :2×2mmのシリコンチップをペーストを用いて銅フレームにマウントし200℃中60分間オーブンで硬化した。硬化後マウント強度測定装置を用い25℃,250℃での熱時ダイシェア強度を測定した。
反り量 :6×15×0.3mmシリコンチップを銅フレーム(200μm厚さ)に導電性樹脂ペーストでマウントし、200℃60分間硬化した後、チップの反りを表面粗さ計(測定長13mm)で測定した。
ポットライフ:25℃の恒温槽内に樹脂ペーストを放置した時の粘度が初期粘度の1.2倍以上増粘するまでの日数を測定した。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
実施例1〜8では熱時接着強度、低応力性(低弾性率、低反り量)及びポットライフ長い優れたペーストが得られるが、比較例1はビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用したため低応力性が悪く、反り量が大きくなりチップクラックが発生する。比較例2はビスフェノールF型エポキシ樹脂を使用したため低応力性が悪く、反り量が大きくなりチップクラックが発生する。比較例3は反応性希釈剤の配合量が多く、接着強度が著しく低下する。比較例4は反応性希釈剤の配合量が少なく、粘度が著しく高くなり作業性が低下する。比較例5はフェノール硬化剤の配合量が少なく、接着強度が著しく低下する。比較例6はフェノール硬化剤の配合量が多く、反り量が大きくなりチップクラックが発生する。比較例7は潜在性硬化剤の配合量が少なく、接着強度が著しく低下する。比較例8は潜在性硬化剤の配合量が多く、反り量が大きくなりチップクラックが発生する。比較例9は硬化促進剤の配合量が少なく、接着強度が著しく低下する。比較例10は硬化促進剤の配合量が多く、ポットライフが著しく短くなる。
【0030】
【発明の効果】
本発明の半導体用樹脂ペーストは、熱時接着強度が高く、かつ応力緩和性に優れているため、IC等の大型チップと銅フレームとの接着に適しており、IC組立工程でのチップクラックやチップ歪みによるIC等の特性不良を防止できる。
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