JP3847001B2 - ガラスパネルの保持構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラスパネルの周縁部が全周に亘って嵌め込まれる凹溝部を備えた保持枠体に、前記周縁部に対してその全周に亘って一連に厚み方向から弾性的に密着する密着片が、前記周縁部の表裏各面に対応して密着方向に突設されているガラスパネルの保持構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記ガラスパネルの保持構造は、ガラスパネルをサッシュ等にがたつきなく取付けることができるように、保持枠体をガラスパネルの周縁部の全周に亘って装着するものであり、その周縁部に対して弾性的に密着する密着片を設けて、周縁部と保持枠体との間への水の侵入を防止するようにしてある。
【0003】
そして、従来、周縁部からの保持枠体の脱落を阻止するにあたって、保持枠体と周縁部とを一体的に固定せずに、周縁部を嵌め込んである保持枠体の端部どうしを互いに接着して、周縁部を全周に亘って嵌め込んだ保持枠体を一連の環状に連結することで、その脱落を阻止しているが、運搬作業等の取扱時にその保持枠体が変形したり位置ずれしたりして、保持枠体が周縁部から外れ易い欠点がある。
【0004】
そこで、この欠点を解決する為に、図7に示すように、保持枠体BとガラスパネルAの周縁部とを接着して、周縁部からの保持枠体Bの脱落を阻止するようにしたガラスパネルの保持構造が提案されている。
【0005】
この保持構造では、周縁部に対してその全周に亘って一連に厚み方向から弾性的に密着する密着片6を周縁部の表裏各面に対応して突設し、その密着片6よりも凹溝部4側の周縁部と保持枠体Bとの間に周縁部の全周に亘って一連に充填した接着剤Eにて、保持枠体Bと周縁部とを接着している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように保持枠体BとガラスパネルAの周縁部とを接着すると、保持枠体Bが周縁部から外れにくくなるが、周縁部の全周に亘って、図7(イ)に示すように接着剤Eを充填しているため、多量の接着剤Eが必要となるだけでなく、接着剤Eの充填量が多すぎると、図7(ロ)に示すように、余分な接着剤Eが密着片6と周縁部との間からはみ出して、保持枠体Bを装着したガラスパネルAの外観を損なうおそれがある。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、保持枠体を装着したガラスパネルの外観を損なうことなく、従来よりも少ない量の接着剤で、その周縁部からの保持枠体の脱落を確実に阻止できるようにすることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載のガラスパネルの保持構造の特徴構成は、前記周縁部と前記保持枠体とが、前記密着片よりも前記凹溝部側に、その凹溝部の長手方向に沿って充填部と非充填部とを並べて形成するように充填してある接着剤で接着されている点にある。
【0009】
つまり、密着片よりも凹溝部側に、その凹溝部の長手方向に沿って接着剤の充填部と非充填部とを並べて形成して、接着剤の充填量を減らしながら、充填部に充填した接着剤でガラスパネルの周縁部と保持枠体とを接着するのであるが、特に、ガラスパネルの周縁部を充填部に嵌め込むに伴って、その充填部の接着剤が非充填部側に広がり、接着剤が弾性片とガラスパネルの周縁部との間からはみ出すおそれがない。
【0010】
従って、保持枠体を装着したガラスパネルの外観を損なうことなく、従来よりも少ない量の接着剤で、その周縁部からの保持枠体の脱落を確実に阻止できる。
【0011】
尚、保持枠体の凹溝部に対応する箇所に水抜き孔が形成されている場合は、接着剤をその水抜き孔の形成箇所を避けて充填すると、万一、凹溝部の内側に水が侵入しても、その水が水抜き孔から抜け易いので、凹溝部の内側に滞留した水に起因して繁殖したかび等で外観が損なわれたり、保持枠体が早期に傷んでしまうような事態を防止できる。
【0012】
請求項2記載のガラスパネルの保持構造の特徴構成は、前記接着剤が、少なくとも、前記ガラスパネルの板面に沿って折曲する前記保持枠体の角部の前記凹溝部内に充填されている点にある。
【0013】
つまり、保持枠体が温度変化によって伸縮すると、ガラスパネルの板面に沿って折曲する角部において、保持枠体どうしが押し合ったり引っ張り合ったりしながらガラスパネルの周縁部に対して相対変位を繰り返し、その結果、周縁部と密着片との密着度が緩み易くなるが、少なくとも、そのような角部の凹溝部内に接着剤を充填して、周縁部と保持枠体とを接着して、周縁部と保持枠体との相対変位を阻止するので、周縁部と密着片との密着度が緩みにくい。
【0014】
従って、ガラスパネルの板面に沿って折曲する角部において、凹溝部の内側に水が侵入しにくくなり、凹溝部の内側に侵入した水に起因して繁殖したかび等で外観が損なわれたり、保持枠体が早期に傷んでしまうような事態を防止できる。
【0015】
請求項3記載のガラスパネルの保持構造の特徴構成は、前記密着片が、前記周縁部に対してその全周に亘って一連に、かつ、前記凹溝部の深さ方向に互いに間隔を隔てて弾性的に密着する第1弾性片と第2弾性片とを並設して構成され、前記接着剤が、前記第1弾性片と第2弾性片とのうちの前記凹溝部の奥側に設けた第2弾性片よりも更に奥側に充填されている点にある。
【0016】
つまり、密着片として単一の弾性片を設けて、その弾性片よりも凹溝部側に接着剤を充填すると、弾性片の変形範囲が硬化又は固化した接着剤にて規制されることがあり、凹溝部の内側への水の侵入を効果的に防止できなくなるおそれがあるが、第1弾性片と第2弾性片とを間隔を隔てて並設して、第2弾性片よりも凹溝部側に接着剤を充填するので、第2弾性片の変形範囲が硬化又は固化した接着剤にて規制されても、変形範囲が規制されない第1弾性片にて周縁部に対する密着を確保することができる。
【0017】
従って、凹溝部の内側への水の侵入を、ガラスパネルの周縁部の全周に亘って効果的に防止することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、図面において従来例と同一の符号で表示した部分は、同一又は相当の部分を示している。
【0019】
図1,図2は、ガラスパネルの一例としての複層ガラスAの保持構造を示し、この複層ガラスAの周縁部は、その全周に亘って装着した保持枠体Bにて保持されている。
【0020】
図4,図5は、上述の保持枠体Bにて保持されている複層ガラスAのガラスパネル取付用サッシュCへの取り付け状態を示し、複層ガラスAは、保持枠体Bを介してサッシュCに対して弾性的に保持されている。
【0021】
因みに、サッシュCはアルミニウム製で、上下左右の各辺部分を構成するチャンネル状の枠部材C1を矩形枠状に組み付けて形成してあり、各枠部材C1を組み付けた状態で、上下または左右に対向する各枠部材C1どうしの対向部分には、複層ガラスAに装着した保持枠体Bを嵌め込んで取り付けるための嵌め込み用溝C2を各別に形成してあり、下辺部の枠部材C1の嵌め込み用溝C2内には、複層ガラスAを載置自在なセッティングブロックC3を配置してある。
【0022】
前記複層ガラスAは、二枚の板ガラス1A,1Bを、一方の板ガラス1Aの外周縁が他方の板ガラス1Bの外周縁よりも外方に延出させる状態で厚み方向に対向させるとともに、それらの板ガラス1A,1Bの間にスペーサ2を挟み込んで空隙部Dを形成し、その空隙部Dの周囲を低融点ガラス3にて密封して、空隙部D内が減圧状態に維持されている。
【0023】
前記保持枠体Bは合成樹脂製の長尺体で、その横断面形状を概ね「U」字型に形成してあり、複層ガラスAの周縁部が全周に亘って嵌め込まれる凹溝部4を備えると共にサッシュCに嵌め込み自在に形成してある硬質保持部5と、凹溝部4に複層ガラスAの周縁部を嵌め込んだ状態で、その複層ガラスAの周縁部に対して全周に亘って一連に厚み方向から弾性的に密着する密着片としての軟質保持部6とを一体的に設けて構成してあり、軟質保持部6は複層ガラスAの周縁部の表裏各面に対応して左右に各別に設けてある。
【0024】
前記硬質保持部5は硬質塩化ビニル製(又は、板金製でも可)で、凹溝部4の底部7を、複層ガラスAの厚み寸法に合わせて幅狭に形成すると共に、その底部7よりも凹溝部4の開口側に、底部7の幅より幅広の広幅部8を設けて構成してあり、この硬質保持部5の弾性復元力によって、複層ガラスAの周縁部を、軟質保持部6を介して挟持するようにしてある。
【0025】
そして、複層ガラスAの周縁部が凹溝部4の底部7に嵌合することによって相互の姿勢を安定させて、複層ガラスAに対する保持枠体Bの取付状態をより安定化できるようにしてあり、凹溝部4の底部7には、図2に示すように、保持枠体Bと複層ガラスAとの間等から浸入した水を逃がすための複数の水抜き孔9を、長手方向に間隔を隔てて形成してある。
尚、硬質保持部5は、熱膨張率の低い材料を選択することが好ましい。
【0026】
前記軟質保持部6の各々は、塩化ビニル樹脂やTPE(熱可塑性エラストマー),クロロプレン系樹脂,EPDM系樹脂等のショアA硬度60〜75度程度のもので形成してあり、凹溝部4に嵌め込んだ複層ガラスAの周縁部に対してその全周に亘って一連に、かつ、凹溝部4の深さ方向に互いに間隔を隔てて弾性的に密着する第1弾性片11と第2弾性片12とが、複層ガラスAに対する密着方向に突出させる状態で一体に並設されている。
【0027】
前記第2弾性片12は第1弾性片11よりも凹溝部4の奥側に設けられ、左右の第1弾性片11の先端部どうしの間隔寸法、及び、左右の第2弾性片12の先端部どうしの間隔寸法は、複層ガラスAの厚み寸法より小さい寸法になるように設けられている。
【0028】
尚、第2弾性片12の先端部どうしの間隔寸法を、第1弾性片11の先端部どうしの間隔寸法よりも小さく設定して、複層ガラスAが凹溝部4に入り込む際に、複層ガラスAによって左右の第2弾性片12を底部7側に向けて弾性的に曲げ変形させて、相互の密着状態を保ちながら、引き抜き力が作用した場合に強く抵抗できるようにしてある。
【0029】
また、このような第2弾性片12の弾性変形を積極的に許容するために、硬質保持部5の広幅部8の脇部分に、変形許容空間10を形成して、複層ガラスAに対して保持枠体Bを外れにくい状態で容易に取り付けることができるように構成してある。
尚、硬質保持部5と軟質保持部6は、両者間に外力が繰り返し作用しても剥離し難いように、長手方向の全長に亘って互いに強力に接合されている。
【0030】
前記両軟質保持部6の外縁には、サッシュCの嵌め込み用溝C2の両縁部に対してそれぞれ係止自在な弾性張出係止部13を設けてあり、この弾性張出係止部13は、嵌め込み用溝C2の両縁部に対向する対向部14を、張り出し方向の基端部よりも張り出し方向先端部がサッシュCに近接する状態に傾斜させて、サッシュCに馴染み易いように形成してある。
【0031】
前記保持枠体Bは、複層ガラスAに装着する前は一本ものの長尺体であり、図4に示すように、複層ガラスAへの装着に先立ち、予め、複層ガラスAの各辺の長さ寸法に対応させた所定寸法に、且つ、その端縁部が45度の切口角度になるように切断した保持枠部材B1の各凹溝部4に複層ガラスAの周縁部を嵌め込んで装着してあり、各保持枠部材B1の端縁部どうしを突き合わせて接着剤で互いに接着してある。
【0032】
前記複層ガラスAの周縁部と保持枠体Bは、図1,図3に示すように、軟質保持部6よりも凹溝部4側に、その凹溝部4に沿って充填部と非充填部とを形成するように断続的に充填した接着剤としてのシリル基含有特殊ポリマーやシリコーン樹脂Eにて接着されている。
【0033】
詳述すると、複層ガラスAの板面に沿って折曲する保持枠体Bの角部F、つまり、保持枠部材B1どうしの突き合わせ部分に対応する保持枠部材B1の凹溝部4内であって、かつ、第2弾性片12よりも奥側に、固化する前のシリコーン樹脂Eを予め充填しておいて、それらの保持枠部材B1を複層ガラスAの周縁部に嵌め込むことによって、複層ガラスAの周縁部と保持枠体Bとが固化したシリル基含有特殊ポリマーやシリコーン樹脂Eにて断続的に接着されている。
【0034】
尚、図2に示すように、接着剤としてのシリコーン樹脂Eは、保持枠体Bに形成した水抜き孔9を避けて充填してあり、万一、凹溝部4の内側に水が侵入しても、その水が水抜き孔9から抜け易くなっている。
【0035】
〔その他の実施の形態〕
1.上記実施形態では、ガラスパネルとしての周縁部に段差がある複層ガラスの保持構造を示したが、周縁部に段差がない複層ガラスや合せガラス,単一の板ガラスの保持構造であっても良い。
2.上記実施形態では、密着片として第1弾性片と第2弾性片とを備えた保持枠体を示したが、密着片として単一の弾性片を備えた保持枠体であっても良い。
3.上記実施形態では、硬質保持部と軟質保持部とを接合して保持枠体を構成したが、全体が塩化ビニル樹脂やTPE(熱可塑性エラストマー),クロロプレン系樹脂,EPDM系樹脂等のショアA硬度60〜75度程度のもので一体形成されたものであっても良い。
4.上記実施形態では、保持枠部材どうしの突き合わせ部分に対応する箇所における保持枠部材の凹溝部内に接着剤を充填するように構成したが、保持枠部材の長手方向の途中箇所に接着剤を断続的に充填しても良い。
5.ガラスパネルとしての複層ガラスは、例えば、三枚以上の板ガラスを備えて構成してあるものであっても良い。また、全部又は一部の板ガラスが、例えば、熱線吸収、紫外線吸収や熱線反射(遮熱用を含む)等の機能を備えたものや、網入りや強化処理等を施したもので構成してあっても良い。
6.ガラスパネルへの保持枠体の装着は、先の実施形態で説明したものに限らず、例えば、図6に示すように、長尺の保持枠体Bに対して、ガラスパネルAの各辺の長さ寸法に対応させた所定位置の底側に横断方向の切れ目15を入れて、その部分で屈曲させながら、ガラスパネルAの周縁部に嵌め込んで装着するようにしても良い。
7.ガラスパネルの周縁部と保持枠体とを、複数種の接着剤を使用して接着しても良い。
つまり、図示しないが、保持枠体Bの角部Fは、エポキシ系樹脂やシアノアクリレート系瞬間接着剤等の、耐候性は低いが接着力が大きくて弾性変形し難い接着剤を使用し、角部Fどうしの間の箇所は、シリル基含有特殊ポリマーやシリコーン樹脂等の、接着力は低いが弾性変形し易くて耐候性が高い接着剤を使用して、ガラスパネルの周縁部と保持枠体とを接着しても良い。
8.接着剤は、凹溝部に沿う一箇所にのみ非充填部を形成し、残りの凹溝部に沿って一連の充填部を形成するように充填されていても良い。
9.上記実施形態では、複層ガラスAに装着した保持枠体Bを嵌め込み用溝C2内に配置したセッティングブロックC3に載置して、その複層ガラスAをガラスパネル取付用サッシュCに取り付けたが、セッティングブロックC3を使用せずに取り付けても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (イ)は、保持枠体の角部にガラスパネルを嵌め込む前のガラスパネルの保持構造を示す断面図,(ロ)は、保持枠体の角部にガラスパネルを嵌め込んだ後のガラスパネルの保持構造を示す断面図
【図2】 (イ)は、保持枠体の水抜き孔形成箇所にガラスパネルを嵌め込む前のガラスパネルの保持構造を示す断面図,(ロ)は、保持枠体の水抜き孔形成箇所にガラスパネルを嵌め込んだ後のガラスパネルの保持構造を示す断面図
【図3】 ガラスパネルの保持構造を示す正面図
【図4】 ガラスパネルのサッシュへの取り付け構造を示す断面図
【図5】 ガラスパネルのサッシュへの取り付け構造を示す斜視図
【図6】 ガラスパネルの保持構造の別実施形態を示す正面図
【図7】 従来のガラスパネルの保持構造を示す断面図
【符号の説明】
4 凹溝部
6 密着片
11 第1弾性片
12 第2弾性片
A ガラスパネル
B 保持枠体
E 接着剤
F 角部
Claims (3)
- ガラスパネルの周縁部が全周に亘って嵌め込まれる凹溝部を備えた保持枠体に、前記周縁部に対してその全周に亘って一連に厚み方向から弾性的に密着する密着片が、前記周縁部の表裏各面に対応して密着方向に突設されているガラスパネルの保持構造であって、
前記周縁部と前記保持枠体とが、前記密着片よりも前記凹溝部側に、その凹溝部の長手方向に沿って充填部と非充填部とを並べて形成するように充填してある接着剤で接着されているガラスパネルの保持構造。 - 前記接着剤が、少なくとも、前記ガラスパネルの板面に沿って折曲する前記保持枠体の角部の前記凹溝部内に充填されている請求項1記載のガラスパネルの保持構造。
- 前記密着片が、前記周縁部に対してその全周に亘って一連に、かつ、前記凹溝部の深さ方向に互いに間隔を隔てて弾性的に密着する第1弾性片と第2弾性片とを並設して構成され、
前記接着剤が、前記第1弾性片と第2弾性片とのうちの前記凹溝部の奥側に設けた第2弾性片よりも更に奥側に充填されている請求項1又は2記載のガラスパネルの保持構造。
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