JP3846669B2 - スペアタイヤカバーの取付構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の車体後部のラッゲージルーム等に配設されるスペアタイヤカバーの取付構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、自動車の車体後部のラッゲージルームには、タイヤ交換用のスペアタイヤが予備に設けられている。このスペアタイヤは、図7〜図10に示す如く、ラッゲージルームのリヤフロアパネル51に形成されたタイヤ収納用凹部52に寝かせた状態で収納配置され、該凹部52は、スペアタイヤカバー53によって覆われている。また、ラッゲージルームのテールエンド部には、これを覆う断面略クランク形状のテールエンドトリム54が車幅方向に沿って配設されており、該テールエンドトリム54はスペアタイヤカバー53の取付けにも利用されている。
【0003】
上記スペアタイヤカバー53は、凹部52の開口周縁部およびテールエンドトリム54の下部に載置されている。このため、スペアタイヤカバー53の後端部53aには、図8および図9に示す如く、左右一対の貫通穴55が車幅方向に間隔を置いて穿設されている。また、テールエンドトリム54の前面下部には、図7および図9に示す如く、ラッゲージルーム(車両前方)側へ延出され、先端を垂直方向へ起立した左右一対の突片56がスペアタイヤカバー53の貫通穴55と対応して配設されている。なお、スペアタイヤカバー53の裏面側の複数箇所には、ガタ音吸収用のパッド57が貼着されている。
【0004】
このようなスペアタイヤカバー53は、これを持って上方から後端部53aの貫通穴55にテールエンドトリム54の突片56をそれぞれ差し込んで係合させることにより、テールエンドトリム54の下部に取付けられ、位置決めされた状態で凹部52の開口周縁部とテールエンドトリム54の下部に載置されるように構成されている。その後、スペアタイヤカバー53の上に図示しないラッゲージフロアカーペットを載せ、該フロアカーペットをクリップなどによってリヤフロアパネル51に固定すれば、スペアタイヤカバー53の取付作業は完了することになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の取付構造にあっては、テールエンドトリム54の突片56が垂直方向へ延びる板状体に形成されており、スペアタイヤカバー53を取付ける際、後端部53aの貫通穴55に当該突片56を入れて互いに係合するようにしているに過ぎないので、スペアタイヤカバー53の位置決めが車両の車幅方向および前後方向のみで行われ、図9の矢印で示す上下方向では行われておらず、自動車走行中の振動などによりスペアタイヤカバー53が上下動し、ガタ音が発生するおそれがあった。
そこで、従来の取付構造では、ガタ音の発生を防止するため、リヤフロアパネル51およびスペアタイヤと当たるスペアタイヤカバー53の裏面にパッド57を貼着しているが、ガタ音の発生防止には当該パッド57を多数使用する必要があり、その結果、部品点数および組付工数が増えてコスト高を招くとともに、スペアタイヤカバー53の外観を損なうおそれがあった。
【0006】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、スペアタイヤカバーの上下および水平方向への移動を確実に規制し、ガタ音の発生防止により使用するパッド数を従来に比べて減らすことができ、かつスペアタイヤカバーを円滑に取付けたり、取外したりすることが可能なスペアタイヤカバーの取付構造を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明においては、車両のリヤフロアに形成されたスペアタイヤ収納用の凹部を覆うペアタイヤカバーの後端部に位置決め用穴を設ける一方、前記リヤフロアの後縁に配設されるテールエンドトリムの前面下部に上部側が斜め上方へ屈曲している係合爪を立設し、該係合爪の上部傾斜面に沿って前記スペアタイヤカバーの後端部を押し付け、前記スペアタイヤカバーの位置決め用穴に前記テールエンドトリムの係合爪を差し込んで係合させることにより、前記スペアタイヤカバーを上下および水平方向の移動を規制した状態で取付けられるスペアタイヤカバーの取付構造において、
前記係合爪の下部表面には、前記スペアタイヤカバーの前後方向の移動を規制するリブが設けられ、このリブの車両前後方向の長さは、前記係合爪を前記スペアタイヤカバーの位置決め用穴に差し込んだ状態で、前記位置決め用穴の車両前方側壁面に前記リブが当接する長さに形成されているとともに、前記リブの上面部が前記係合爪の上部側の湾曲傾斜面とほぼ同一角度に傾斜して形成されている。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0009】
図1〜図5は、本発明に係るスペアタイヤカバーの取付構造の第1実施形態を示している。図における自動車1の車体後部には、荷物などを積載するためのラッゲージルームRが設けられており、該ラッゲージルームRのリヤフロアパネル2には、スペアタイヤ3を寝かせた状態で収納するタイヤ収納用凹部4が形成されている。この凹部4の開口は、図1および図2に示す如く、種々の突起および穴を有する樹脂製の板状スペアタイヤカバー5によって覆われており、該スペアタイヤカバー5の上部には、複数のクリップ6を前部側のクリップ穴7およびリヤフロアパネル2の取付穴(図示せず)に押し込むことにより捲り上げ可能に固定されるラッゲージフロアカーペット8が載置され、スペアタイヤカバー5の上部を覆うことによってラッゲージルームRの外観向上が図られている。
【0010】
上記スペアタイヤカバー5は、図2、図4および図5に示す如く、タイヤ収納用凹部4の開口面積よりも大きく形成され、タイヤ収納用凹部4の開口周縁部および後述するテールエンドトリムの前面下部に載置されるようになっている。このため、スペアタイヤカバー5の後端部5aは、当該テールエンドトリムの前面下部の上方に位置すべく構成されており、その中央寄りの後端部には左右一対の位置決め用穴9が車幅方向に間隔を置いて穿設され、これら位置決め用穴9は車幅方向へ延びる長方形状に形成されている。
【0011】
一方、上記ラッゲージルームRのリヤフロアパネル2の後縁に位置するテールエンド部には、図2〜図5に示すように、合成樹脂等の一体成形品であるテールエンドトリム10が車幅方向の全幅にわたって設けられており、このテールエンドトリム10によって当該テールエンド部が覆われている。そのため、テールエンドトリム10は、上部側に位置し車両後方へ向かって水平に設けられ、かつ前後幅の広いステップパネル部11と、該ステップパネル部11の前端から下方へ向かって延びる垂直パネル部12と、該垂直パネル部12の前面下端から車両前方(ラッゲージルームR側)へ向かって水平に延び、かつ前後幅の狭い支持パネル部13とによって断面略クランク形状に形成されており、該支持パネル部13の上にはスペアタイヤカバー5の後端部5aが載置されるようになっている。
【0012】
上記支持パネル部13の左右両側には、スペアタイヤカバー5の位置決め用穴9に差し込む係合爪14が車幅方向に間隔を置いてそれぞれ立設されており、該係合爪14の車幅方向の寸法は位置決め用穴9とほぼ対応する大きさに設定されている。これら係合爪14は、図3〜図5に示す如く、下部14a側がほぼ真っ直ぐ立ち上がり、上部14b側が垂直パネル部12(車両後方)に向かって斜め上方へ屈曲した湾曲形状に形成されている。このため、係合爪14の上部14bは、差し込んだ状態にあるスペアタイヤカバー5の後端部5aが振動などにより上方へ移動する際に係合する位置および長さに形成され、上部14b側の湾曲傾斜面は、スペアタイヤカバー5の後端部5aのガイド面として利用されている。
【0013】
また、係合爪14の下部14a側の前方表面中央位置には、スペアタイヤカバー5の前後方向の移動を規制するリブ15が突設されている。このリブ15の前後長さは、係合爪14をスペアタイヤカバー5の位置決め用穴9に差し込んだ状態で、同位置決め用穴9の前方壁面に前部が当接する大きさに形成されており、その上面部は係合爪14の上部14b側の湾曲傾斜面とほぼ同一角度に傾斜している。しかも、リブ15は、係合爪14の寸法よりも幅狭に形成されており、これによってスペアタイヤカバー5との間にガタが生じたり、あるいはスペアタイヤカバー5が係合爪14から外れたりした場合、成形金型を修正することにより簡単に寸法調整を行うことができるように構成されている。
【0014】
本発明の第1実施形態の取付構造によって、スペアタイヤカバー5の後端部5aをテールエンドトリム10の支持パネル部13に取付けるには、まず、図2に示すようにスペアタイヤカバー5をタイヤ収納用凹部4の上方位置まで持ち、図4の鎖線で示すように水平配置したスペアタイヤカバー5の後端部5aの端縁をテールエンドトリム10の垂直パネル部12の下部に当接させる。次いで、スペアタイヤカバー5の後端部5aを下方へ向けて押し付けると、位置決め用穴9の前方壁面の下縁点Pが係合爪14の上部14b側の湾曲傾斜面とリブ15の上面部にガイドされながら傾斜面に沿って下降し、位置決め用穴9に係合爪14およびリブ15が差し込まれて係合することにより位置決めされる。したがって、スペアタイヤカバー5の後端部5aは、図4の実線で示すように、車両の車幅方向および前後方向のみならず、上下方向の移動が規制された状態で取付けられ、タイヤ収納用凹部4の開口周縁部およびテールエンドトリム10の支持パネル部13に載置されることになる。
【0015】
また、上記スペアタイヤカバー5の後端部5aをテールエンドトリム10の支持パネル部13から取外すには、まず、図2で示す挿入穴20に指を入れてスペアタイヤカバー5を持ち上げる。すると、図5の鎖線で示すように、スペアタイヤカバー5の前方側が上がり、リブ15と係合している位置決め用穴9が開放されるから、スペアタイヤカバー5を更に持ち上げることにより、スペアタイヤカバー5の後端部5aは係合爪14より抜け出て、テールエンドトリム10の支持パネル部13から外れることになる。
【0016】
本発明の第1実施形態に係るスペアタイヤカバー5の取付構造では、スペアタイヤカバー5の位置決め用穴9へ差し込む係合爪14がテールエンドトリム10の支持パネル部13の左右両側に設けられ、係合爪14の上部14b側が垂直パネル部12に向かって斜め上方へ屈曲した湾曲形状に形成されているとともに、スペアタイヤカバー5の前後方向の移動を規制するリブ15が係合爪14の下部14a側の前面中央位置に設けられているため、係合爪14を位置決め用穴9に差し込んで係合させると、スペアタイヤカバー5の後端部5aが車両の上下方向、車幅方向および前後方向に固定され、スペアタイヤカバー5の全方向への移動が規制されることになる。したがって、自動車1の走行中に発生する通常の振動では、スペアタイヤカバー5に大きな力が掛かることはないので、本実施形態の取付構造によってスペアタイヤカバー5の後端部5aをテールエンドトリム10の支持パネル部13に取付けた場合には、パッドの使用数を減らしても、これを基因とするガタ音の発生を確実に防げるとともに、スペアタイヤカバー5の後端部5aが係合爪14から外れるということは起こらない。
しかも、上記係合爪14の上部14b側の湾曲傾斜面とリブ15の上面部は、スペアタイヤカバー5のガイド面として利用可能であるため、スペアタイヤカバー5の後端部5aの取付けおよび取外しを円滑に行うことができる。
【0017】
図6は、本発明に係るスペアタイヤカバー5の取付構造の第2実施形態を示しており、本実施形態の係合爪14のスペアタイヤカバー5に臨む傾斜面(上部14b側の後方面)には、下方へ突出する段部16が設けられている。その他の構成およびスペアタイヤカバー5の取付手順は上記第1実施形態と同様である。
したがって、本発明の第2実施形態に係るスペアタイヤカバー5の取付構造によれば、上記第1実施形態と同様の効果が得られる上、スペアタイヤカバー5の上方への移動時、後端部5aが係合爪14の段部16に当たるため、スペアタイヤカバー5の上下方向の移動をより確実に規制し、係合爪14から抜けにくい状態で固定することができる。
【0018】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
例えば、本発明の実施形態に係る取付構造では、位置決め用穴9および係合爪14をそれぞれ2個ずつ設けたが、スペアタイヤカバー5の大きさなどに応じて3個以上設けることもできる。また、既述の実施形態では、係合爪14の上部14b側を垂直パネル部12に向かって斜め上方へ屈曲させた湾曲形状に形成したが、反対側の車両前方に向かって斜め上方へ屈曲させた湾曲形状や直線状に形成しても良い。この場合、リブ15は係合爪14の後方表面中央位置に設けられることになる。
【0019】
【発明の効果】
上述の如く、本発明に係るスペアタイヤカバーの取付構造は、車両のリヤフロアに形成されたスペアタイヤ収納用の凹部を覆うペアタイヤカバーの後端部に位置決め用穴を設ける一方、前記リヤフロアの後縁に配設されるテールエンドトリムの前面下部に上部側が斜め上方へ屈曲している係合爪を立設し、該係合爪の上部傾斜面に沿って前記スペアタイヤカバーの後端部を押し付け、前記スペアタイヤカバーの位置決め用穴に前記テールエンドトリムの係合爪を差し込んで係合させることにより、前記スペアタイヤカバーを上下および水平方向の移動を規制した状態で取付けられるものであって、前記係合爪の下部表面には、前記スペアタイヤカバーの前後方向の移動を規制するリブが設けられ、このリブの車両前後方向の長さは、前記係合爪を前記スペアタイヤカバーの位置決め用穴に差し込んだ状態で、前記位置決め用穴の車両前方側壁面に前記リブが当接する長さに形成されているとともに、前記リブの上面部が前記係合爪の上部側の湾曲傾斜面とほぼ同一角度に傾斜し形成されているので、スペアタイヤカバーの上下方向および水平方向の移動規制が確実となって、ガタ音の発生や係合爪からの外れを防止できるとともに、従来に比べて使用するパッド数を低減でき、コストダウンを図ることができる。しかも、本発明の取付構造では、スペアタイヤカバーの取付時に、係合爪の上部傾斜面をガイド面として利用し得るので、スペアタイヤカバーの後端部の取付けおよび取外しを迅速かつ円滑に行うことができ、取付作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係るスペアタイヤカバーの取付構造が適用された自動車のラッゲージルーム付近を概念的に示す斜視図である。
【図2】図1におけるA部を拡大しており、テールエンドトリムにスペアタイヤカバーを取付ける前の状態を示す斜視図である。
【図3】図2におけるB部付近のテールエンドトリムを示す斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態のテールエンドトリムにスペアタイヤカバーを取付ける状態を示す図3中のC−C線断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態のテールエンドトリムからスペアタイヤカバーを取外す場合を示す図3中のC−C線断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態のテールエンドトリムにスペアタイヤカバーを取付ける状態を示す図3中のC−C線断面図である。
【図7】従来の取付構造に適用されるテールエンドトリムを示す斜視図である。
【図8】従来の取付構造に適用されるスペアタイヤカバーを示す平面図である。
【図9】従来のテールエンドトリムにスペアタイヤカバーを取付けた状態を示す図7中のD−D線断面図である。
【図10】リヤフロアパネルのタイヤ収納用凹部周縁に従来のスペアタイヤカバーを載置した状態を示す図8中のE−E線断面図である。
【符号の説明】
1 自動車
2 リヤフロアパネル
3 スペアタイヤ
4 タイヤ収納用凹部
5 スペアタイヤカバー
5a 後端部
9 位置決め用穴
10 テールエンドトリム
11 ステップパネル部
12 垂直パネル部
13 支持パネル部
14 係合爪
15 リブ
16 段部
R ラッゲージルーム

Claims (2)

  1. 車両のリヤフロアに形成されたスペアタイヤ収納用の凹部を覆うペアタイヤカバーの後端部に位置決め用穴を設ける一方、前記リヤフロアの後縁に配設されるテールエンドトリムの前面下部に上部側が斜め上方へ屈曲している係合爪を立設し、該係合爪の上部傾斜面に沿って前記スペアタイヤカバーの後端部を押し付け、前記スペアタイヤカバーの位置決め用穴に前記テールエンドトリムの係合爪を差し込んで係合させることにより、前記スペアタイヤカバーを上下および水平方向の移動を規制した状態で取付けられるスペアタイヤカバーの取付構造において、
    前記係合爪の下部表面には、前記スペアタイヤカバーの前後方向の移動を規制するリブが設けられ、このリブの車両前後方向の長さは、前記係合爪を前記スペアタイヤカバーの位置決め用穴に差し込んだ状態で、前記位置決め用穴の車両前方側壁面に前記リブが当接する長さに形成されているとともに、前記リブの上面部が前記係合爪の上部側の湾曲傾斜面とほぼ同一角度に傾斜して形成されていることを特徴とするスペアタイヤカバーの取付構造。
  2. 前記係合爪のスペアタイヤカバーに臨む傾斜面には、下方へ突出する段部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のスペアタイヤカバーの取付構造。
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