JP3846258B2 - 電子部品実装装置における真空バルブの異常検出方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子部品を吸着保持する吸着ノズルから真空吸引する真空吸引系の異常の有無を検出する電子部品実装装置における真空バルブの異常検出方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子部品を基板に実装する電子部品実装装置において電子部品を保持する方法として、真空吸着による方法が用いられる。この方法は、下端部に吸着孔が設けられた吸着ノズルを電子部品の上面に当接させた状態で吸着孔から真空吸引することにより発生する負圧を利用して電子部品を保持するものであり、真空吸引をオンオフすることのみによって保持状態を制御できるという利点がある。
【0003】
この反面、吸着ノズルから真空吸引するための真空吸引源や内部に組み込まれた異物除去用のフィルタ、真空吸引のオンオフを行う真空バルブなど、真空吸引系を構成する各部の動作不具合によって吸着状態が変化しやすく、確実な電子部品の保持・保持解除が保証されないという欠点がある。このため、真空吸引によって電子部品を保持する吸着ノズルを用いた電子部品実装装置では、真空吸引系が正常に機能しているか否かをチェックする必要がある。従来より、この真空吸引系の機能確認は、電子部品実装装置の保守点検時に行うようにしていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記真空吸引系の機能検査に際しては、移載ヘッドから真空バルブやフィルタなどの機能部品を取り外して個別の部品ごとに異常の有無を検査する必要があることから、検査作業に多大の手間と時間を要し、作業の簡略化が望まれていた。
【0005】
そこで本発明は、吸着ノズルから真空吸引する真空吸引系の異常の有無を簡便な方法で検出することができる電子部品実装装置における真空バルブの異常検出方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の電子部品実装装置における真空バルブの異常検出方法は、部品供給部から移載ヘッドの吸着ノズルによって電子部品を真空吸着によりピックアップして基板に実装する電子部品実装装置において、前記吸着ノズルに接続された真空吸引源と前記吸着ノズルに至る真空吸引回路に設置された真空バルブの異常を検出する真空バルブの異常検出方法であって、真空吸引源と真空バルブの間に介設された流量センサによって、前記真空吸引源を駆動して真空吸引しながら前記真空バルブの開閉動作を行わせたときの前記真空吸引回路内を通過する空気の流量を計測する工程と、流量計測によって求められた流量の経時的変化を示す流量パターンに基づいて、前記真空バルブの異常の有無を判定する工程とを含む。
【0007】
本発明によれば、移載ヘッドの吸着ノズル装着状態を異常検出用の特定条件に設定した状態で、真空吸引源を駆動して真空吸引しながら流量センサによって真空吸引回路内を通過する空気の流量を計測し、流量計測によって求められた流量の経時的変化を示す流量パターンに基づいて真空バルブの異常の有無を判定することにより、簡便な方法で真空バルブの異常の有無を検出することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施の形態の電子部品実装装置の平面図、図2は本発明の一実施の形態の電子部品実装装置の移載ヘッドの構成を示す図、図3は本発明の一実施の形態の電子部品実装装置の真空吸引・制御系の構成を示すブロック図、図4は本発明の一実施の形態の電子部品実装装置における真空吸引系の異常検出用流量パターンの説明図、図5は本発明の一実施の形態の電子部品実装装置における真空吸引系の異常検出処理のフロー図である。
【0009】
まず図1を参照して電子部品実装装置の構造を説明する。図1において基台1の中央にはX方向に搬送路2が配設されている。搬送路2は基板3を搬送し電子部品の実装位置に位置決めする。搬送路2の両側方には、部品供給部4が配置されており、それぞれの部品供給部4には多数のテープフィーダ5が並設されている。テープフィーダ5はテープに保持された電子部品を収納し、このテープをピッチ送りすることにより電子部品を供給する。
【0010】
基台1上面の両端部上にはY軸テーブル6A,6Bが配設されており、Y軸テーブル6A,6B上には2台のX軸テーブル7A,7Bが架設されている。Y軸テーブル6Aを駆動することにより、X軸テーブル7AがY方向に水平移動し、Y軸テーブル6Bを駆動することにより、X軸テーブル7BがY方向に水平移動する。X軸テーブル7A,7Bには、それぞれ移載ヘッド8および移載ヘッド8と一体的に移動するカメラ9が装着されている。
【0011】
Y軸テーブル6A,X軸テーブル7A、Y軸テーブル6B,X軸テーブル7Bをそれぞれ組み合わせて駆動することにより移載ヘッド8は水平移動し、それぞれの部品供給部4から電子部品を吸着ノズル10(図2参照)によってピックアップし、搬送路2に位置決めされた基板3上に実装する。基板3上に移動したカメラ9は、基板3を撮像して認識する。また基板3上部品供給部4から搬送路2に至る経路には、ラインカメラ19が配設されている。ラインカメラ19は、それぞれの移載ヘッド8に保持された状態の電子部品を下方から撮像する。
【0012】
次に図2を参照して移載ヘッド8について説明する。図2に示すように、移載ヘッドはマルチタイプであり、部品保持手段としての単位移載ヘッド8aを8個備えた構成となっている。これらの単位移載ヘッド8aはそれぞれ下端部に電子部品を吸着して保持する吸着ノズル10を備え、個別に昇降動作が可能となっている。ここで吸着ノズル10は単位移載ヘッド8aの下部に設けられた装着部8b(図3参照)に着脱自在に装着され、電子部品の種類に応じて交換されるようになっている。
【0013】
ここで図3を参照して、吸着ノズル10から真空吸引する真空吸引・制御系の構成について説明する。図3に示すように、単位移載ヘッド8aにおいて吸着ノズル10が装着される装着部8bには真空バルブ11が接続されており、真空バルブ11は真空吸引源である真空ポンプ13に接続されている。装着部8bに吸着ノズル10が装着された状態で真空ポンプ13を駆動し、真空バルブ11を開状態にすることにより、吸着ノズル10の下端部の吸着面に設けられた吸着孔10aより真空吸引する。吸着ノズル10から真空ポンプ13に至る回路は、真空吸引時に空気が通過する真空吸引回路となっている。装着部8bには、フィルタ18が内蔵されており、吸着ノズル10から吸引された空気がフィルタ18を通過することにより、真空吸引時に空気とともに吸引された異物がフィルタ18によって捕集される。
【0014】
真空バルブ11と真空ポンプ13の間の真空吸引回路には、流量センサ12が介設されている。流量センサ12は、内部を流れる流体の温度差を検出することにより、真空吸引によって単位時間当たりに真空吸引回路内を流れる空気の量を、流量の経時的な変化を示す流量パターン(図4参照)として計測する。流量センサ12の計測結果は、判定部14に送られる。
【0015】
判定部14は、流量センサ12の流量計測結果を記憶部16に記憶されている基準の流量パターンや流量パターンから抽出される判定用のパラメータと比較することにより、吸着ノズル10の下端部における電子部品の有無や吸着状態などの、真空吸引系の状態の判定を行う。判定結果は制御部15に送られ、制御部15は判定結果に基づいて報知部17を制御することにより、真空吸引系を構成する真空バルブ11などの機能部品の交換・清掃を指示する報知を行う。
【0016】
次に吸着ノズル10から真空ポンプ13によって真空吸引を行う真空吸引系の異常検出について説明する。ここで真空吸引系の異常とは、吸着ノズル10から真空ポンプ13に至る真空吸引回路の構成要素に主に経時劣化によって発生する不良状態を意味している。ここでは、真空吸引回路を断接する真空バルブ11の異常を例にとって説明する。
【0017】
一般に真空バルブには、開状態において許容される空気の流量で示されるバルブ容量が適正に確保されていることと、閉状態において確実に空気の流れを遮断するシール性に加えて、制御手段からの信号に応じて所定時間内に確実に動作する応答性とが求められる。このようなバルブ動作状態は、目視などの簡単な検査によって確認することは困難であることから、従来は保守点検時に真空バルブを移載ヘッドから取り外し、専用の試験装置によって性能検査を行った上で、動作状態の合否を判定する必要があった。
【0018】
これに対し本実施の形態では、真空バルブ11の動作状態を示す特性を以下に説明する流量パターンによって表すことにより、検査対象の真空バルブ11が実機に装着されたままで、動作状態の合否判定が行えるようにしている。すなわち、吸着ノズル装着状態を異常検出用の特定条件に設定した上で、真空バルブ11を動作させて流量パターンを求め、この流量パターンを予め記憶された基準の流量パターンと比較することにより、当該時点におけるバルブ動作状態の合否判定を行うようにしている。
【0019】
以下、流量パターンについて図4を参照して説明する。図4(a)、(b)、(c)は、図3に示す単位移載ヘッド8aの装着部8bに吸着ノズル10が装着されていない状態において、真空ポンプ13を駆動して真空吸引を行いながら、真空バルブ11に開閉動作を行わせたときの真空吸引回路内の流量を流量センサ12によって連続的に計測し、流量の経時的変化を流量パターンとしてグラフで表したものである。
【0020】
ここでは、装着部8bに吸着ノズル10が装着されていない状態が、真空バルブの異常検出用の特定条件として用いられている。これは、真空吸引回路を流れる流量をできるだけ大流量として、より明瞭な流量パターンを得ることを目的としたものである。もちろんこれ以外にも、正常に吸引できることが保証された大流量型の吸着ノズルを装着することを、異常検出用の特定条件としてもよい。
【0021】
図4(a)は基準の流量パターンであり、動作特性が保証された正常な真空バルブ11を装備した状態で真空吸引を行い、この真空バルブ11に開閉動作を行わせたときの流量パターンを示している。ここで、流量f1は真空バルブ11のバルブ容量が正常であるか否かを判定するためのしきい値としての所定到達流量であり、到達流量f(a)が所定応答時間T1以内に所定到達流量f1を上回り、かつ真空バルブ11を閉にしたときに、流量が所定収束時間T2以内に所定収束流量f2(零近傍に設定される)以下に収束することが、真空バルブ11が正常であると判定されるための条件となっている。
【0022】
図4(a)に示す流量パターンaでは、真空バルブ11が開となるタイミングt1から流量が増加して所定到達流量f1に到達するタイミングt2までの実応答時間T(a)、真空バルブ11が閉となるタイミングt3から流量が減少して所定収束流量f2以下に収束するタイミングt4までの実収束時間T(b)は、所定応答時間T1、所定収束時間T2をそれぞれ下回っており、さらに実到達流量f(a)は所定到達流量f1を上回っていることから、正常であると判定されるための条件を満たしている。
【0023】
これに対し、図4(b)、(c)はともにバルブ動作異常の例を示している。まず図4(b)は開状態・開動作における異常であり、実線で示す流量パターンbでは、実到達流量f(a)が所定到達流量f1に満たず、内部に異物付着など流路を塞ぐような異常が生じていることを示している。また破線で示す流量パターンb’では、実到達流量f’(a)は所定到達流量f1を上回っているものの、到達するまでに所定到達時間T1を超える実到達時間T(a)を要しており、バルブ機構に機械的なガタや異物噛み込みなどの動作不良を招くような異常が生じていることを示している。
【0024】
また図4(c)に示す例は、閉状態・閉動作における異常であり、実線で示す流量パターンcでは、真空バルブ11を閉にした後の実収束流量f(b)が所定収束流量f2よりも大きく、すなわち閉状態においても真空バルブ11内を許容リーク量を超えて空気が流れるシール異常が生じていることを示している。また破線で示す流量パターンc’では、閉動作後に流量が所定収束流量f2以下に収束しているものの、収束するまでに所定収束時間T2を超える実収束時間T(b)を要しており、バルブ機構に機械的なガタや異物噛み込みなどの動作不良を招くような異常が生じていることを示している。
【0025】
次に図5を参照して、真空吸引系の異常検出処理について説明する。この異常検出処理は、電子部品実装装置を継続的に稼働させる際に、所定累積稼動時間ごとに定期的に、または真空吸引系に起因すると認められる何らかの不具合が発生したときには随時に、実行される処理である。
【0026】
まず、対象となる移載ヘッド8の単位移載ヘッド8aから吸着ノズル10を取り外し、当該単位移載ヘッド8aにおける吸着ノズル装着状態を異常検出用の特定条件に設定する(ST1)。次いで真空ポンプ13が駆動した状態で、真空バルブ11を開にし(ST2)、単位移載ヘッド8aの装着部8bの装着孔から真空吸引する(ST3)。
【0027】
このとき、流量センサ12は常に真空吸引回路内を流れる流量を連続的に計測しており、この流量計測データは逐次判定部14によって取り込まれる(ST4)。そして所定のバルブ開放時間が経過したならば、真空バルブ11を閉にし(ST5)、その後も流量計測データの取り込みを行う(ST6)。そして流量計測によって求められた流量パターンに基づいて、真空吸引系の真空バルブ11の異常の有無を判定部14によって判定する(ST7)。
【0028】
すなわち求められた流量パターンから、図4に示すように、真空バルブ11を開にした後の実到達流量f(a)および実到達時間T(a)、真空バルブ11を閉にした後の実収束流量f(b)および実収束時間T(b)をそれぞれ求める。そして、求められた値を、記憶部16に記憶された所定到達流量f1、所定到達時間T1、所定収束流量f2、所定収束時間T2とそれぞれ比較することにより、真空バルブ11の異常の有無を判定する。この判定結果は制御部15に伝達され、判定結果によって真空バルブ11の清掃や交換を必要とする場合には、報知部17によってその旨報知される。
【0029】
上記説明したように、流量計測によって求められた流量パターンに基づいて真空吸引系の異常の有無を判断することにより、移載ヘッドから機能部品を取り外すことなく、簡便な方法で真空吸引系の異常の有無を検出することができ、真空吸引系の異常に起因する動作不具合の発生を減少させることができる。
【0030】
なお上記実施の形態では、真空吸引系の真空バルブの異常について説明したが、真空吸引系を構成する他の機能部品、例えばフィルタや配管継ぎ手など経時劣化や装着異常などによって流量に変化を生じる特性を有するものであれば、本発明の対象とすることが可能である。
【0031】
また上記実施の形態では、到達流量、収束流量、到達時間、収束時間を、正否判定のパラメータとして用いる例を示しているが、流量の経時的変化を示す流量パターンからどのようなパラメータを抽出するかは任意であり、流量の変化率や流量積分値など、対象に応じて各種のパラメータを定義して判定に用いることができる。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、移載ヘッドの吸着ノズル装着状態を異常検出用の特定条件に設定した状態で、真空吸引源を駆動して真空吸引しながら流量センサによって真空吸引回路内を通過する空気の流量を計測し、流量計測によって求められた流量の経時的変化を示す流量パターンに基づいて真空バルブの異常の有無を判断することにより、簡便な方法で真空バルブの異常の有無を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置の平面図
【図2】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置の移載ヘッドの構成を示す図
【図3】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置の真空吸引・制御系の構成を示すブロック図
【図4】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置における真空吸引系の異常検出用流量パターンの説明図
【図5】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置における真空吸引系の異常検出処理のフロー図
【符号の説明】
1 基台
3 基板
4 部品供給部
8 移載ヘッド
8a 単位移載ヘッド
8b 装着部
10 吸着ノズル
12 流量センサ
13 真空ポンプ
14 判定部
15 制御部
16 記憶部
Claims (1)
- 部品供給部から移載ヘッドの吸着ノズルによって電子部品を真空吸着によりピックアップして基板に実装する電子部品実装装置において、前記吸着ノズルに接続された真空吸引源と前記吸着ノズルに至る真空吸引回路に設置された真空バルブの異常を検出する真空バルブの異常検出方法であって、真空吸引源と真空バルブの間に介設された流量センサによって、前記真空吸引源を駆動して真空吸引しながら前記真空バルブの開閉動作を行わせたときの前記真空吸引回路内を通過する空気の流量を計測する工程と、流量計測によって求められた流量の経時的変化を示す流量パターンに基づいて、前記真空バルブの異常の有無を判定する工程とを含むことを特徴とする電子部品実装装置における真空バルブの異常検出方法。
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