JP3845794B2 - 布帛よりの付着表面層付布製品形成方法 - Google Patents

布帛よりの付着表面層付布製品形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は多重布帛より布製品を実質的に無縫製にて衣類などの布製品を切り出しにより形成する方法に関し、特に、この種の布製品であって表面付着層を有したたものの形成方法に関するものである。ここに表面付着層は捺染のみならず、インクジェットによりインクを布帛表面に吹き付けることにプリント柄を布帛に形成するものや、転写や、フィルムや金属箔などをコーティングするものも包含するものとする。
【0002】
【従来の技術】
多重布帛より布製品を実質的に無縫製にて形成する方法については本発明者が既に提案している。たとえば、特開2001-115357号公報では2重織などの多重織組織にてジャガードにより織布を形成し、その際、衣類の輪郭線に沿って2重組織における上下層を接結しておき、織布を輪郭線に沿って切断することにより織布上下層により構成される前身頃と後身頃とが接結部により接続された衣類を得ている。
【0003】
また、本発明者は特開2001-115365号公報では内周及び外周にジャガード選針機構を有した丸編機を使用して内、外2層の筒状編布をそれぞれダイヤル針、シリンダ針単独により形成し、そして、衣類の輪郭線に沿ってダイヤル針とシリンダ針とを使用した組織により編成を行うことにより内外2層の筒状編布を衣類の輪郭線に沿って接結し、編布を輪郭線に沿って切断することにより内外層により構成される前身頃と後身頃とが接結部により接続された衣類を得ている。
【0004】
また、特開2001-115358号公報には多重織、又は丸編組織による前記技術に加えて、縦編組織によって上下2層間を衣類の輪郭線に沿って接結し、編成後に輪郭線に沿って編布を切断し、前身頃と後身頃とが接結部により接続されてなる衣類も開示されている。
【0005】
他方、布製品に柄を施す手段として捺染は古来より行われており、スクリーンを使用したものでは、原反をベルト上に載置し、他方、原反に対向し、スクリーン型を昇降可能に配置し、スクリーン型を原反を介してベルトに押し付け、スクリーン型上の捺染糊のスキージングを行うことによりスクリーンを介して原反に捺染を行っている。捺染工程において、ベルトの停止状態でスクリーン型が布帛に押しけつられ、スキージングによる染料の貼着が行われ、その後、スクリーン型は布帛から剥離するべく上昇せしめられ、次いでベルトにより布帛を一区画分移動させ、スクリーン型を下降させ、スキージングを行う、という操作が繰り返される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特開2001-115357号公報などに記載した上下層が衣類の外径線によって接結された多重組織の布帛において捺染が困難な問題があった。即ち、この特許に開示された布帛では衣類の外径線、即ち、接結部の内側では上下層が衣類の前身頃と後身頃を構成しており、上下層は基本的に分離している。そのため、スクリーン型を布帛に押し付け、スキージング後にスクリーン型を引き上げるとき、2重布帛における上側の層のみがスクリーン型に付着しベルトに接触した下側層から離れてしまう。そのため、生地が皺などにより歪んでしまい、良好なプリントが行われないことが多かった。布地が歪むことによる弊害は多色刷りの場合特に著しい。即ち、布地の歪みによりひどいときは部分的な印刷欠陥となった見当ずれの原因となり、不良品となるおそれが多かった。
【0007】
この発明は以上の問題点に鑑みてなされたものであり、上下層を布製品の上下面とする多重布帛に対する捺染やインクジェットや転写やコーティングなどの付着表面層の形成を良好に行いうるようにすることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明によれば、少なくとも2層よりなる多重布帛を形成し、前記多重布帛の一方の層を布製品の一方側面、多重布帛の他方の層を布製品の他方側面とし、布製品の輪郭線に沿って前記一方の層及び前記他方の層を接結し、前記輪郭線に沿って少なくとも一部の接結部は残して布帛を切断し、対向側面同士が接結部により接続された付着表面層付製品を形成する方法において、前記多重布帛の形成時に布製品の一方及び他方の側面となる多重布帛の層同士は適宜の間隔をおいた部位において付加的に接結させることにより多重布帛の上下層を仮想的に一体化し、多重布帛の形成後に、布製品における少なくとも片面における少なくとも衣類となる部分において前記多重布帛に表面付着層の形成を行い、表面付着層の形成後にこの付加的接結部を構成する少なくとも一部の糸条を除去することにより布製品の輪郭線に沿った接結部を除いて布製品の一方及び他方の側面となる多重布帛の層同士を分離させることを特徴とする布帛よりの付着表面付布製品形成方法が提供される。
【0009】
請求項1の発明の作用・効果を説明すると、多重布帛は基本的には上下独立層になるように織製若しくは編成され、その織製若しくは編成の際に、多重布帛の一方の層は衣類などの布製品の一方側面(例えば前身頃)となり、多重布帛の他方の層は衣類などの布製品の他方側面(例えば後身頃)となるようにされる。そして、布製品の一方及び他方の側面となる多重布帛の層同士は適宜の間隔をおいた部位において散開状に点接結されており、この状態では多重布帛はその上下層は一体化される。付着表面層の形成処理は上下層の一体化状態で行われるため、スクリーン捺染時等においてスクリーンを剥離する場合に、スクリーンの分離の際に布帛の歪みがなく、スクリーンの円滑な剥離を行いうるため、良好に捺染された布製品を得ることができる。この発明においてプリントは布製品における少なくとも片面における少なくとも衣類となる部分において行われ、換言すれば、両面若しくは片面に行うことができる。前記少なくとも一部の糸条の除去により布帛は本来の多重構成に復帰される。
【0010】
また、スクリーン捺染でないインクジェットや転写やコーティングの場合はスクリーン引き剥がし時における布帛の歪みのような問題はないが、巻取時や延反時に上下層が皺になったりテンション斑が生じたりして所期のインクジェットや転写やコーティングが行いえない恐れがあったが、この発明による散開状の点接結により多重布帛は擬似的に1重組織を呈するため巻取時や延反時の皺やテンション斑の発生を防止することができ、綺麗な処理を行いうるようになる効果がある。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、付加的接結部を構成する前記少なくとも一部の糸条は溶解性であり、多重布帛の形成後に溶解除去することを特徴とする方法が提供される。
【0012】
請求項2の発明の作用・効果を説明すると、散開的点状接結部を構成する少なくとも一部糸条(例えば織布によける緯糸又は編布における挿入糸)は例えば水溶性ビニロンなどの水溶性であるため、布帛に織製若しくは編成後の処理によって付加的接結部を構成する糸条の除去を極めて簡単に行うことができる。水溶性でなくても溶媒に溶解性の糸条により散開的点状接結部を構成することができる。この場合はプリント後に溶媒に浸漬することにより点状接結部を構成する糸条を溶解除去することになる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、付加的接結部を構成する前記少なくとも一部の糸条はしつけ糸などの破断容易糸であり、多重布帛の形成後に破断除去することを特徴とする方法が提供される。
【0014】
請求項3の発明の作用・効果を説明すると、破断容易糸により布帛に散開的な点状接結部を構成することにより織り上がり状態では擬似的な1重組織となり、巻取や延反時の皺の発生やテンション斑の発生を防止することができる。そして、プリントやインクジェットや転写やコーティング後に破断容易糸は引っ張ることなどにより容易に破断され、本来の多重組織に復帰させることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、前記付着表面層形成はスクリーン捺染であることを特徴とする方法が提供される。
【0016】
請求項4の発明の作用・効果を説明すると、スクリーン捺染においてはスクリーンを布帛若しくは衣類面に当て、スキージングによって染料を浸透せしめる、その後スクリーンの引き剥がしを行う。このとき布帛は散開的点状接結部により擬似的な一重組織をなしているため、スクリーンの引き剥がし時において、上下層が分離されることはなく、生地に歪みが生ずることはなく、所期のスクリーン捺染を実施することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、前記付着表面層形成はインクジェットであることを特徴とする方法が提供される。
請求項5の発明の作用・効果を説明すると、インクジェットの場合はノズルよりインクを噴出することによりプリントが行われ、引き剥がし時布地の歪みの原因となるスクリーンは使用されない。しかしながら、多重組織の場合は巻取や延反時において皺が生じやすく、これがプリント品質に影響を及ぼす懸念はあるが、請求項5の発明では散開的な点状接結により布帛は擬似的に1次組織をなしており、層間の歪みが生じ難く布帛はスムースな状態に維持されるため、良好なインクジェットプリントを行うことができる。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、前記付着表面層形成は転写であることを特徴とする方法が提供される。
【0019】
請求項6の発明においても請求項5の発明と同様に転写によるプリント時に布帛に対する皺やテンション斑の発生を抑制し、良好な転写を行うことができる効果がある。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、前記付着表面層形成はコーティングであることを特徴とする方法が提供される。
【0021】
請求項7の発明においても請求項5の発明と同様に転写によるコーティング時に布帛に対する皺やテンション斑の発生を抑制し、良好なコーティングを行うことができる効果がある。
【0022】
【発明の実施の形態】
次に、この発明の実施形態を説明すると、図1はこの発明の実施である織布10を上面より見て示す該略図であり、縦糸方向はy、緯糸方向はxにて表示される。織布はこの実施形態では2重織組織(2重織より層数の多い多重組織もこの発明には包含される)である。即ち、図1の紙面上に表示されたものを表の織布面とすればその下側にもう一つの織布面が具備されている。即ち、図2において12は上側の織布面、14は下側の織布面を模式的に示しており、上側の織布面は12A及び緯糸12Bとから構成され、下側の織布面は14A及び緯糸14Bとから構成される。二重組織は織耳で上下面12, 14が分離したとなった通常の2重織でも織耳が上下面12, 14で袋形状に連なった所謂袋織組織でもいずれでもよい。
【0023】
ここに説明の実施形態では袋織を構成する二重組織における、上側の織布面12にジャケットの前身頃16を構成し、下側の織布面14にジャケットの後身頃(下側織布面において前身頃16に対向するように形成される)を構成している。上側の組織面12と下側の組織面14とはジャケットの輪郭線に沿って接結部18にて接結されている。接結部18は図1で18-1, 18-2, 18-3の各部から構成される。即ち、18-1は衣服における襟から上側の袖口までのライン、18-2は脇の下から下側の袖口までのライン、18-3は脇の下から裾までのラインに沿っている。
【0024】
接結部18-1, 18-2, 18-3の組織は図2の例では接結部はオックスフォード組織となっている。オックスフォード組織は織物組織分類上は一重織であり、複数本の及び緯糸を引き揃え平織組織などに製織したものであり、柔軟性が高いという点で接結部として適したものである。即ち、接結部18-1(18-2, 18-3)では上下の12A, 14A及び上下の緯糸12B, 14Bは夫々引き揃えられ、製織されている。そのため、前身頃16及び後身頃の縁部となるこれらの接結部18-1, 18-2, 18-3では二重織の上下の組織は一体となり、この部位で上下層12, 14は接合状態となっている。
【0025】
図1においてジャケットの輪郭線に沿った接結部18-1, 18-2, 18-3は織布10の実質的に全幅において横糸方向及び縦糸方向のいずれとも平行しない方向に走行している。そのため、織布10の織製には織布の実質的に全幅において縦糸一本一本の開口制御が可能な開口装置が必要であり、そのためはジャカードが事実上必須である。
【0026】
また、図1において、前身頃16及び後身頃を構成する部位を中心に織布の上下層12, 14は散開的に分布された接結部25により接結される。このような散開的に分布された接結部25を図1では●印によって表示している。また、接結部25を構成する緯糸を破線aにて示す、同じく縦糸を破線bにて示す。即ち、この実施例では接結部25を構成する緯糸12B, 14Bは、図3に示すように、ひき揃えられ、同じくひき揃えられた縦糸12A, 12Bと交錯されており、そのため接結部25において上下層12, 14は一体化され、一枚の層を形成している。すなわち、接結部25は織物構造的には図3の衣類外径線の部位と同様なオックスフォード組織を呈している。このこのような散開的な接結部25により、織布は織り上げた状態では上下層12, 14、即ち、前身頃及び後身頃は相互に固定されており、前身頃及び後身頃となる織布の部位に良好なスクリーン捺染を付すことができる。そして、接結部25における緯糸12B, 14Bは除去可能であり、例えば、接結部25を構成する緯糸は水溶性ビニロンなどの水溶糸により構成され、スクリーン捺染後における浸漬処理により水溶糸は除去され、その結果上下層12, 14は衣類の前身頃と後身頃として分離されることになる。散開状点接結部25を構成する糸は全てが水溶性若しくは溶解性でなく、織布の場合は緯糸だけでもよいがこの場合において水溶性若しくは溶解性でない糸として色糸を加えて使用することができる。即ち、水溶性糸若しくは溶解性糸は透明であったり白濁しているものが多いが色糸とすることにより、作業確認(点接結糸の除去の確認など)が容易となる。水溶糸を使用する代わりに接結部25を構成する緯糸をスクリーン捺染後に引き抜くようにしてもよい。また、実施形態のように織布や編布中に織り込んだり編み込んだりする代わりにミシンや手縫いにより散開的な点接結25を構成してもよい。このミシン若しくは手縫いの散開的接結部25の糸はプリント後に除去することになる。
【0027】
図1〜図3に示した、衣類の外径線に沿った上下層の接結パターンを有した織布10は衣類への切り出しに先立ってスクリーン捺染処理を受ける(織布から切り出し後の衣類をスクリーン捺染することもこの発明に包含される)。図4はフラットスクリーン捺染の原理的構成を示しており、捺染すべき織布10はコンベヤベルトなどの移動台29上に固定載置されている。エンドレスベルト上の織布に対向してスクリーン枠30が設けられ、スクリーン枠30に捺染スクリーン32が張設され、捺染スクリーン32の裏面にスキーザ34が配置される。スキーザ34には捺染糊36が充填される。捺染時にスクリーン枠30はスクリーン32が送られてきた布帛10に密着するように下降され、スキーザ34は矢印fの方向に移動され、捺染糊のスキージングが行われ、スクリーン32を捺染糊が布帛に貼着せしめられる。
【0028】
スキージング後に織布の次の領域の捺染の準備のためスクリーン枠30は持ち上げられる。この際、捺染糊の粘性によってスクリーン32が捺染を受けた2重織布の上面に付着し下面から分離しようとするが、この発明では2重織布10は図1に示すように捺染を受けるべき上下層の全面における適宜の間隔をおいた部位25が仮接結されており、実質的に1層構造をなしている。そのため、スクリーン枠30の上昇時に2重織布の上層のみがスクリーン32に接着し移動台29から持ち上がり歪んでしまうようなことはないため、スクリーン32の剥離が円滑に行われ、良好な捺染を行うことができる。
【0029】
スクリーン枠34の上方への移動後、移動台29は織布の次の部位の捺染のため図4の紙面に直交する方向に一区画分移動後停止され、スクリーン枠30はこの一区画の捺染のため再び下降せしめら、上述の工程を繰り返す。尚、捺染時に生地端にプリント柄によって裁断マークやバーコードなどを同時的にプリントしておくことができる。
【0030】
以上説明したように2重織組織で織製した織布10の上下面12, 14はジャケットの輪郭線に沿って接結部18-1, 18-2, 18-3にて連結されている。即ち、ジャケットの輪郭線の部位のみ1重組織となっており、ジャケットの輪郭線に沿って接結部18-1, 18-2, 18-3を少なくとも一部残して織布10を切断することにより上下の身頃がその周縁部に沿って接続されたジャケットを切り出すことができる。即ち、織布10からの切り出したままにおいても、そのままジャケットを得ることができ、縫製は必ずしも必要がない。また、20のネックホール、22の袖口、24の裾については基本的には接結されていないため、ライン20, 22, 24に沿って織布10を切断することによってそのままネックホール、袖口、裾が形成されることになる。
【0031】
織製時において上下層にはその全面にわたって散開的な接結が図1の●印のように少なくとも捺染を受けるべき織布の部位の全面に施されており、これは上述のように捺染時のスクリーンの剥離を円滑に行わしめることを高めことを狙ったものであるが、この接結部25を構成する緯糸は水溶糸にて形成されているため、水洗処理により完全に溶融除去されうるため、最終的な衣類の状態では上下層(前身頃及び後身頃)が完全に分離された衣類を提供することが可能となる。散開的な接結部25は織布の全体に設けるようにしてもよいことはいうまでもない。
【0032】
水溶糸の溶解温度は各種のものが市場より入手可能であるが、上記実施例では捺染時に溶解が生じない温度に設定する必要があることはいうまでもない。即ち、捺染時には溶解は生じないであろうが、洗浄・乾燥などの前工程において接結部25を構成する水溶糸が溶解しないように温度のものを選定する必要がある。そして、織布10の内外の温度差も充分考慮しておく必要がある。また、捺染後における水溶糸の溶解の際に溶解した成分が織布10に再付着したまま残ることがないように十分配慮する必要がある。また、接結部近傍にガーゼやオックスフォードなどの透き目が大きい組織を形成し、洗浄が効率的に行われるようにすることができる。また、水溶性糸の代わりに溶解性の糸を使用することにより溶媒に対する浸漬により点状接結部25の除去を行うことができる。
【0033】
以上の実施形態ではスクリーン捺染による織布若しくは衣類身頃へのプリントを説明しているが、インクジェットによるプリントにもこの発明は応用しうる。インクジェットによるプリントではノズルからインクを布帛に吹き付けることにより所望の柄を得るようにしている。インクジェットによるプリントではスクリーン捺染のようにスキージング後のスクリーンの剥がしによる布地の歪みのような問題はないが、布地に皺があったりテンション斑があったりすると、プリントされた柄が歪んでくる問題がある。この発明に従って、布帛の上下層12, 14を散開的な点接結により擬似的な一重組織化しておくことにより巻取や延反時の皺やテンション斑の発生が抑制され、布地は平坦状に維持されるためインクジェットによるプリントを良好に実施することができる効果がある。
【0034】
また、この発明のアイディアは転写によるプリントにおいても応用できる。即ち、転写によりプリントでは布地表面にバインダを塗布し、その上に転写フィルムを載せて昇華転写を行う。そして、この発明に従って布帛の上下層12, 14を散開的な点接結により擬似的な一重組織化しておくことにより良好な転写プリントを実施することができる。転写プリントでは180〜200℃での昇華による乾熱処理が行われるが、このような高温でも水溶糸は溶解することはないから、散開的な点接結による擬似的な一重組織化状態は維持されることに留意されたい。
【0035】
また、この発明のアイディアはコーティングにおいても応用できる。即ち、コーティングにおいてはフィルムや箔を布地表面に圧着ないしはバインダにて接着する。そして、この発明に従って布帛の上下層12, 14を散開的な点接結により擬似的な一重組織化しておくことにより布帛表面に皺や歪みがないため良好なコーティングを実施することができる。
【0036】
図1及び図2に示される実施形態は織布(2重織)でのこの発明の応用を示しているが、この発明は特開2001-115365号公報におけるダブルジャカードの丸編機による無縫製衣類における捺染時の布帛の歪み防止にも適している。即ち、丸編機を使用した場合は、同特許公報に記載のようにダイヤル針により平編組織などで内周の編成、シリンダ針により平編などで外周の編成が行われ、衣類の輪郭線に沿った接結部ではダイヤル針及びシリンダ針の双方を使用した組織(ゴム編など)による編成が行われる。そして、第1の実施形態と同様に衣類の外径線に沿って接結部を残して編布が切断され、編布より実質的に無縫製で衣類を切り出すことができる。
【0037】
このような丸編機による無縫製の衣類でも織布について説明したと同様に上下層が仮接結部で一体化されているため捺染時にスクリーンを剥離する際の布地の歪み防止し、良好な捺染作業に実施することができる効果がある。
【0038】
この発明は織布や丸編に限らず縦編や緯編でも採用可能である。即ち、縦編や緯編においても図1と接結部25と同様編布の全面において散開的な点接結部を設けることにより擬似的な1重組織とし、皺発生やテンション斑の対策とすることが好ましい。縦編組織の場合は点接結のためバックヤーンのいずれかに潜在若しくは顕在巻縮加工糸を挿入する。また、よこ編の場合は点接結部における必要な本数の経糸を潜在若しくは顕在巻縮加工糸とし点接結を行わせるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はこの発明の実施である2重織組織の織布の概略的平面図である。
【図2】図2は図1のII−II線に沿った矢視断面であり、接結部における縦糸及び緯糸の配置を模式的に示している。
【図3】図3は図1のIII−III線に沿った矢視断面であり、仮接結部における縦糸及び緯糸の配置を模式的に示している。
【図4】図4はスクリーン印刷機によるスクリーン印刷工程を説明する概略図である。
【符号の説明】
10…織布
12…上側の織布面
14…下側の織布面
16…前身頃
18…ジャケットの輪郭線に沿った接結部
25…点状接結部
29…移動台
30…スクリーン枠
32…捺染スクリーン
34…スキーザ
36…捺染糊

Claims (1)

  1. 少なくとも2層よりなる多重布帛を形成し、前記多重布帛の一方の層を布製品の一方側面、多重布帛の他方の層を布製品の他方側面とし、布製品の輪郭線に沿って前記一方の層及び前記他方の層を接結し、前記輪郭線に沿って少なくとも一部の接結部は残して布帛を切断し、対向側面同士が接結部により接続された付着表面層付製品を形成する方法において、前記多重布帛の形成時に布製品の一方及び他方の側面となる多重布帛の層同士は適宜の間隔をおいた部位において付加的に接結させることにより多重布帛の上下層を仮想的に一体化し、多重布帛の形成後に、布製品における少なくとも片面における少なくとも衣類となる部分において前記多重布帛に表面付着層の形成を行い、表面付着層の形成後にこの付加的接結部を構成する少なくとも一部の糸条を除去することにより布製品の輪郭線に沿った接結部を除いて布製品の一方及び他方の側面となる多重布帛の層同士を分離させることを特徴とする布帛よりの付着表面付布製品形成方法。
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