JP3844706B2 - 燃料蒸気ガス処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料蒸気ガス処理装置、特に故障診断装置を備えた燃料蒸気ガス処理装置の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来技術として、例えば特開平07−317611号公報に記載の燃料蒸気ガス処理装置がある。これは、燃料タンクとキャニスタとを連通するエバポ通路の途中に絶対圧センサを設置し、また基準圧として大気圧を装置と別置した大気圧センサを用いて測定することで、基準圧とエバポ通路内の圧力との差圧に基づいて燃料蒸気ガス処理装置内の故障診断を行うものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記燃料蒸気ガス処理装置には絶対圧センサと大気圧センサの2つのセンサを設置する必要があり、コスト高を招いていた。
【0004】
しかし、大気圧センサを廃止した場合には、内燃機関の始動によってインテークマニホールド内の負圧によって燃料ガス蒸気処理装置内に圧力変動が生じるが、その際に絶対圧センサが検出する圧力値が正常値であるのか、または燃料ガス蒸気処理装置に備えられたパージバルブが開状態で固着した場合の圧力値であるのかの判別ができないと言う問題がある。
【0005】
また、エンジン始動後に基準圧を計測しようとしても、パージバルブが開状態で故障した場合には前述のようにインテークマニホールド内の負圧によってパージ配管内には負圧が生じており、基準圧を設定することができない。
【0006】
さらに基準圧を設定したとしても、基準圧の設定後、故障を診断するための絶対圧を検出するまでの経過時間が長いときには基準圧としての大気圧が変化したり、または車両の高所への移動により気圧が変化し、基準圧が変化したにもかかわらず、基準圧が変更されない場合には、絶対圧との差圧に誤差が生じて故障診断が誤った判断を行う恐れがある。
【0007】
そこで本発明の目的は、上記課題を解決するパージバルブの故障を判断する燃料蒸気ガス処理装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、燃料タンクと、前記燃料タンクから蒸発する蒸発燃料を吸着するキャニスタと、前記キャニスタとキャニスタからの蒸発燃料が流入する吸気通路との途中に配置されるパージバルブと、前記燃料タンクとキャニスタとを連通する第1の配管と、前記キャニスタとパージバルブとを連通する第2の配管と、前記パージバルブと吸気通路とを連通する第3の配管と、前記第1または第2の配管内の絶対圧を検出するセンサと、内燃機関のスタータモータの起動、停止を電気的に検出する手段と、からなる燃料蒸気ガス処理装置において、内燃機関のスタータモータの起動を電気的に検知するまでに前記センサが検出した配管内の圧力の最大値を前記パージバルブの故障診断に適用する基準圧として設定する故障診断装置を備える。
【0009】
【発明の効果】
第1と2の発明では、パージバルブの故障診断装置が、診断時に用いる基準圧を内燃機関の始動を電気的に検知する前の絶対圧の最大値を用いて設定することにより、パージバルブが故障している場合であっても、内燃機関の始動による負圧の影響を受けることなく、確実に精度よく基準圧を検出することができる。
【0010】
第2の発明では、基準圧を設定後、所定時間内に判定圧を設定するようにしたので、基準圧が変化することによる差圧の誤差を防止することができ、パージバルブ故障診断の誤診断を防止できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を説明するために、まず参考例について説明する。
図1は燃料蒸発ガス処理装置の構成を示している。
【0012】
燃料蒸発ガス処理装置は、エンジン1の燃料タンク2内で発生する蒸発燃料を処理するためのものであり、燃料吸着剤(活性炭)を内蔵したキャニスタ3と、キャニスタ3と燃料タンク2をつなぐ第1の配管(パージ通路)4と、キャニスタ3とエンジン1のスロットルバルブ5下流の吸気通路6をつなぐ第2、第3の配管(パージ通路)7a、7bとを備える。
【0013】
第2、第3の配管7a、7bの間には、配管7a、7bを開閉するパージバルブ8と、第2の配管7aには燃料タンク2とパージバルブ8の間の配管内の圧力(絶対圧)および大気圧(絶対圧)を測定する絶対圧センサ9が設けられる。なお絶対圧センサ9は第1の配管4に設置してもよい。
【0014】
キャニスタ3には大気開放口10が備えられ、大気開放口10には大気開放口10を閉じるドレンカットバルブ11が設けられる。
【0015】
燃料タンク2内で発生した蒸発燃料は、第1の配管4を介してキャニスタ3に導かれ、燃料成分だけがキャニスタ3内の活性炭に吸着され、残りの空気は大気開放口10より外部に放出される。そして、活性炭に吸着された燃料を処理するには、コントローラ15からの信号により運転状態に応じてパージバルブ8を開き、スロットルバルブ5下流の吸入負圧を利用して大気開放口10からキャニスタ3内に新気を導入する。この新気によって活性炭に吸着されていた燃料が離脱し、新気と共に第2、第3の配管7a、7bを介してエンジン1の吸気通路6内に導入される。
【0016】
絶対圧センサ9が検出した圧力値は、コントローラ(故障診断装置)15に出力される。さらにコントローラ15には、エンジンの運転条件を検出する各種センサ(図示しない)、車速センサ16、燃料温度センサ17等からのエンジンの回転数、吸入空気量、スロットル開度、冷却水温、吸入空気温度、車速、燃料温度および燃料噴射量等に基づき、所定の運転域(定常走行時等)にパージバルブ8を開くと共に、パージバルブ8の開度を制御するパージ制御(通常パージ処理)を行う。
【0017】
一方、コントローラ15は、エンジンの回転数、吸入空気量、スロットル開度、冷却水温、吸入空気温度、車速、燃料温度、燃料噴射量および大気圧(絶対圧センサ9による)等に基づき、燃料タンク2からパージバルブ8間の系20のリーク診断の許可条件を判定して、許可の場合にリーク診断を行う。
【0018】
また、さらにコントローラ15には、吸気通路6内のブースト圧の出力信号、イグニッションスイッチのオン/オフ信号、スタータモータを起動するスタータスイッチのオン/オフ信号、バッテリ電圧信号、さらにエンジン回転数信号等が入力される。コントローラ15は前述の入力値等を用いてパージバルブ8の故障診断を行う。
【0019】
次に図2と図3に示すフローチャートを用いて、コントローラ15が行うパージバルブ8の故障診断について説明する。
【0020】
まず図2のフローチャートは、基準圧を設定するための制御内容を示すフローチャートであり、一定間隔、例えば10msecごとに行われるものである。また基準圧の初期値は予め記憶しておく。
【0021】
ステップ101では、基準圧の更新フラグ(0もしくは1)を判別する。更新フラグが0のときにはステップ102に進み、故障診断の計測条件が満たされているかどうかを判断する。一方、更新フラグが1の場合には、制御を終了する。更新フラグの初期値として0を記憶しておく。
【0022】
計測条件として、例えば、以下のすべての条件を満たす必要がある。
1)他の構成、例えば、図示しない吸気通路6のブースト圧検出センサが故障している等のNG判定が出されていないこと2)ドレンカットバルブ11が開かれていること3)パージバルブ8が閉じられていること4)イグニッションスイッチがオンになっていること5)エンジン回転数が第1の所定回転数(例えば、500rpm)より低いこと6)バッテリ電圧が8V以上であることこれらの条件を満たしたときにステップ103に進み、スタータスイッチのオン/オフを判断する。計測条件を満たしていないときには制御を終了する。
【0023】
エンジンの始動状態を示す、例えばスタータスイッチがオンである場合には、ステップ104に進み、更新フラグを0から1に置き換えて制御を終了し、オフの場合にはステップ105に進み、基準圧を絶対圧センサ9が検出した検出値に上書きして、スタータスイッチオンのエンジンスタート前の制御を終了する。なお基準圧はほぼ大気圧に相当する圧力となる。
【0024】
図3に示すフローチャートは、図2のフローチャートによって基準圧が設定された後に、パージバルブ8の開状態に固着された故障を判定するための圧力判定を行うもので、一定間隔、例えば、100msec毎に実施されるものである。
【0025】
まずステップ111で、パージバルブ8の故障判定終了を示すフラグを確認する。フラグが0の場合にはステップ112に進み、1の場合には制御を終了する。判定終了フラグの初期値は0とする。
【0026】
ステップ112で、圧力判定を行う条件を満たしているかどうかを判断する。計測条件を満たすには、例えば、以下のすべての条件を満たす必要がある。
1)他の構成、例えば、吸気通路6のブースト圧検出センサが故障している等のNG判定が出されていないこと2)ドレンカットバルブ11が開かれていること3)パージバルブ8が閉じられていること4)イグニッションスイッチがオンになっていること5)エンジン回転数が第2の所定回転数(例えば、500rpm)より低いこと6)バッテリ電圧が11V以上であること7)スタータスイッチがオフであること8)基準圧の更新フラグが1であること9)上記1)から8)までの条件が、第1の所定時間、例えば1sec以上、継続されていること10)基準圧計測終了後、第2の所定時間、例えば10sec経過していないこと計測条件を満たしている場合には、ステップ112に進み、満たしていない場合には制御を終了する。
【0027】
ステップ113では、前述の状態での絶対圧センサ9の検出値をストアし、続くステップ114で、このストアした圧力値(判定圧)と基準圧との差を算出し、その差圧が所定圧以上(たとえば、5mmHg以上)であるかどうかを判定する。
【0028】
所定圧以上の差圧である場合にはパージバルブ8が開状態で固着していると判断し、ステップ116で異常をドライバーやサービスマンに認知させる。差圧が所定圧に満たない場合には、パージバルブ8は正常に作動していると判断して運転を継続する(ステップ115)。
【0029】
つまり、パージバルブ8の作動が正常であれば、エンジンが起動して吸気通路6内に負圧が生じても、パージバルブ8によって配管が遮断されるため、パージバルブ8上流での配管内の圧力は略大気圧となる。
【0030】
続くステップ117では、判定終了フラグを0から1に切り換え、制御を終了する。
【0031】
図4に示すタイミングチャートは、各構成の作動状態を時系列に示したものである。
【0032】
まず、時刻t1で基準圧の計測条件を判断し(ステップ102)、条件を満たし、かつスタータスイッチがオフの場合に(ステップ103)、絶対圧センサ9の検出値を基準圧としてストアする(ステップ105)。基準圧の検出は、時刻t2でスタータスイッチがオンになる直前、言い換えるとエンジン始動の直前まで実施される。スタータスイッチがオンになる前に絶対圧の検出を終了し、基準圧として設定することで、スタータスイッチがオンになることによってクランキングが開始されて配管内の圧力が不安定になる影響を排除することができ、確実に正確な大気圧を基準圧として設定することができる。
【0033】
時刻t2でスタータスイッチがオンに変わり、エンジンが起動する。これに伴い、バッテリ電圧が低下し、また吸気通路6内の圧力も低下する。続く時刻t3で、スタータスイッチはオフされるが、エンジンの回転は継続されている。スタータスイッチがオフされたため、バッテリ電圧は上昇する。スタータスイッチがオンの状態と、スタータスイッチがオフに切り換わった後、所定時間はエンジンの回転が不安定な状態となっており、パージバルブ8の故障診断に適切な状態となっていない。
【0034】
そこで時刻t5になるまで、つまりエンジンが安定状態になるまで故障診断を行わないようにする。エンジンの安定状態は時刻t4で確保することができると考えられるが、余裕分を考慮して時刻t5で故障診断のための圧力を検出するようにしている。
【0035】
時刻t5で差圧が所定値以上であれば(ステップ114)、パージバルブ8はコントローラ9からの指令が閉状態であるにもかかわらず、開状態となっているとして異常を告知することになる(ステップ116)。また差圧が所定値未満のほぼ大気圧を維持している場合には、パージバルブ8は正常な作動状態であるとしてエンジンの運転を維持する(ステップ115)。
【0036】
したがって、スタータスイッチがオンとなる、エンジン起動前に第1または第2の配管内の圧力を検出し、基準圧として設定後、エンジンの回転が安定した状態で配管内の圧力(判定圧)を絶対圧センサ9で検出し、基準圧との差圧からパージバルブ8の異常を検出するので、第1または第2の配管に設置した1つの絶対圧を検出する絶対圧センサ9を設置するのみで、大気圧センサを用いることなく、パージバルブ8の開状態が維持される異常状態を検出することができる。また、大気圧センサを用いる必要がないのでコスト減に役立つ。
【0037】
また基準値を設定後、所定時間内にパージバルブ8の故障状態を判定するための配管の圧力を検出し、判定するので、大気圧が変化して基準圧との差圧が生じ、誤診断を生じることを防止できる。
【0038】
次に第2の参考例として、パージバルブ8の異常診断後に行われる燃料タンク2からパージバルブ8までの経路中のリーク診断について説明する。
【0039】
このコントローラ15のリーク診断の制御内容を図5〜図7のフローチャートに基づいて説明する。
【0040】
図5のように、ステップ1にて、リーク診断の許可条件が成立しているかどうかを見る。これは、パージバルブ8を閉じる所定の運転域にあり、冷却水温、吸入空気温度、燃料温度、大気圧等が所定範囲にあり、かつその他の診断において異常がないときに、許可条件成立とする。
【0041】
リーク診断の許可条件が成立した場合、ステップ2に進み、リーク診断前の大気圧1を測定する診断前大気圧計測処理を行う。
【0042】
診断前大気圧計測処理は、図6のように、ステップ21にてドレンカットバルブ11が開状態にあるか否か、ステップ22にてパージバルブ8が閉状態にあるか否かを見る。
【0043】
ドレンカットバルブ11が開状態にあり、パージバルブ8が閉状態にあれば、ステップ23にてそのときの絶対圧センサ9の出力値を大気圧として読み込む。
【0044】
即ち、パージ制御を行なっているときは、ドレンカットバルブ11は開状態にあり、運転条件等に応じてパージバルブ8の開度操作を行うため、絶対圧センサ9が配置されている配管7b内の圧力は導入されるエンジンの吸入負圧によって負圧になっているが、この状態からパージバルブ8を閉じると、エンジンの吸入負圧が遮断されて配管7b内は大気圧となり、これによって絶対圧センサ9によりリーク診断前の大気圧1が検出される。
【0045】
次に、ステップ3に進み、ドレンカットバルブ11を閉じて、パージバルブ8を開いてエンジンの吸入負圧によって系20内の圧力を所定負圧に減圧(プルダウン)する減圧処理を行う。
【0046】
この減圧処理を終えると、ステップ4に進み、パージバルブ8を閉じて系20を閉塞して、絶対圧センサ9により系20内の圧力変化を検出するリークダウン処理(リーク診断)を行う。
【0047】
このリーク診断では、系20内の圧力が一定時間でどの程度増加するかを測定する。
【0048】
このリーク診断を終えると、ステップ5からステップ6に進み、ドレンカットバルブ11を開状態にして、リーク診断後の大気圧2を測定する診断後大気圧計測処理を行う。
【0049】
診断後大気圧計測処理は、図7のように、ステップ31にてパージバルブ8が閉状態にあるか否か、ステップ32にてドレンカットバルブ11が開状態にあるか否かを見る。
【0050】
パージバルブ8が閉状態にないあるいはドレンカットバルブ11が開状態にない場合は、ステップ34にて時間を計測するタイマをクリアする。
【0051】
パージバルブ8が閉状態にあり、ドレンカットバルブ11が開状態にあれば、ステップ33にてこの状態を継続している時間をタイマによりカウントして、ステップ35に進む。
【0052】
ステップ35では、タイマにより所定時間をカウントすると、つまりパージバルブ8が閉、ドレンカットバルブ11が開の状態のまま所定時間経過すると、ステップ36にてそのときの絶対圧センサ9の出力値を大気圧として読み込む。
【0053】
即ち、リーク診断後、ドレンカットバルブ11を開くことで、絶対圧センサ9が配置されている配管7b内に大気が流入し、パージバルブ8が閉、ドレンカットバルブ11が開の状態を所定時間継続すると、配管7b内が大気圧となり、これによって絶対圧センサ9によりリーク診断後の大気圧2が検出される。
【0054】
次に、ステップ7に進み、リーク診断前の大気圧1とリーク診断後の大気圧2との差から大気圧の変化を演算する。
【0055】
そして、ステップ8では大気圧の変化を所定のしきい値と比較して、大気圧の変化がしきい値以下であれば、ステップ9にてリーク判定を行う。
【0056】
リーク判定では、ステップ4で測定したデータ(系20内の圧力の一定時間における増加度)を所定値と比較して、所定値以下のときは正常、所定値を超えたときは異常と判定する。
【0057】
一方、大気圧の変化がしきい値を超えたときは、ステップ10にてリーク判定を禁止つまりステップ4で測定したデータをキャンセルする。
【0058】
図8、図9に、このリーク診断制御のタイミングチャートを示す。図8は、大気圧の変化がないときのもので、リーク診断にて、リークが無い場合は系20内(燃料タンク2内)の圧力は変わらないが、系20内の圧力の一定時間における増加度が所定値を超えた場合、異常(リーク有り)と判定する。図9は、リーク診断の前後に大気圧が変化したときのもので、大気圧の変化が所定値を超えた場合、リーク判定を禁止する。
【0059】
このように、系20に1つの絶対圧センサ9を配置して、系20内の圧力状態と大気圧とを検出することができるのであり、複数の圧力センサを備えずにすみ、コストを低減できる。
【0060】
また、ドレンカットバルブ11が開、パージバルブ8が閉の状態のときに大気圧を検出するので、大気圧を精度良く検出できると共に、1つの絶対圧センサ9で系20内の圧力状態と大気圧とを検出する構成によって、診断装置の構造が複雑になることはなく、コストを一層低減できる。
【0061】
一方、リーク診断制御において、リーク診断の前後に、絶対圧センサ9により大気圧を検出して、大気圧の変化が所定値を超えた場合、リーク判定を禁止するので、大気圧の変化を確実に検出でき、リーク診断を誤診断することを防止できる。
【0062】
リーク診断を開始した後、例えば車両の登坂走行等によって大気圧が下降した場合、図9のように系20内の圧力と大気圧との相対圧が小さくなるため、リークが有っても、系20内の圧力の増加度は小さくなってしまうが、大気圧が所定値を超えて変化た場合、リーク判定を禁止するので、誤診断を防止できる。
【0063】
また、リーク診断を終えた場合、パージバルブ8を閉状態のままドレンカットバルブ11を開いた直後は、系20内に負圧が残っているが、ドレンカットバルブ11を開いて所定時間経過したときに、リーク診断後の大気圧を検出するため、大気圧の変化を一層確実に検出できる。
【0064】
なお、リーク診断に入る前は、パージバルブ8を閉じて所定時間経過したときに、リーク診断前の大気圧を検出するようにできる。
【0065】
図10は本発明の第3の参考例を示す。これは、絶対圧センサ9により大気圧を検出する代わりに、車速と、道路の勾配とにより、大気圧の変化を推定するものである。
【0066】
リーク診断の許可条件が成立すると、スタートする。
【0067】
ステップ41では、車速を読み込む。
【0068】
ステップ42では、道路の勾配を推定する。これは、予め記憶した平地走行でのエンジン回転数とエンジン負荷(スロットル開度等)の状態に対して、現在のエンジン回転数とエンジン負荷(スロットル開度等)の状態を比較し、その大小およびその差で勾配を推定する。
【0069】
ステップ43では、車速に勾配推定値を掛けて時間当たりの高度変化率を求める。登り坂のときは勾配推定値、高度変化率は正、降り坂のときは勾配推定値、高度変化率は負とする。
【0070】
ステップ44では、高度変化率を演算タイミング毎に積算して、高度変化を得る。
【0071】
ステップ45では、高度変化に大気圧変化係数を乗じることで、大気圧変化を得る。大気圧変化係数は、例えば高度変化100m当たり、9mmHgとすればよい。
【0072】
ステップ46以降では、その大気圧変化に基づき、リーク診断のリーク判定、判定禁止を行う。
【0073】
このようにすれば、リーク診断前後の大気圧の変化の監視結果を待つ必要がなく、リアルタイムにリーク診断のキャンセルを行える。
【0074】
図11は本発明の第4の参考例を示す。これは、リーク診断中の系20内の圧力と、大気圧との差が、燃料タンク2のフィラーキャップ12に設けているリリーフ弁(図示しない)の開弁圧以上の場合、リーク判定を禁止するものである。
【0075】
ステップ51では、リークダウン処理(リーク診断)開始の判定を行なう。
【0076】
リークダウン処理を開始すると、ステップ52でリークダウン処理中の絶対圧センサ9による系20内の圧力の最小値をリークダウン中圧力として、メモリにストアする。
【0077】
リークダウン処理を終了すると、ステップ53からステップ54に進み、ドレンカットバルブ11を開状態にして、絶対圧センサ9によるリーク診断後の大気圧をメモリにストアする。
【0078】
ステップ55では、リーク診断後の大気圧とリークダウン中圧力との差(リークダウン中相対圧)を求める。
【0079】
そして、ステップ56では、リークダウン中相対圧を燃料タンク2のフィラーキャップ12に設けているリリーフ弁の開弁圧(しきい値)と比較して、リークダウン中相対圧がその開弁圧よりも小さければ、ステップ57にてリーク判定を行う。
【0080】
一方、リークダウン中相対圧がその開弁圧以上であれば、ステップ58にてリーク判定を禁止する。
【0081】
図12に、このリーク診断制御のタイミングチャートを示す。
【0082】
リーク診断を開始した後、例えば車両の降坂走行等によって大気圧が上昇した場合、系20内の圧力と大気圧との相対圧が大きくなると、リークが無くても、フィラーキャップ12のリリーフ弁が作動して系20内に大気が流入して、系20内の圧力が増加する可能性があるが、この場合、系20内の圧力と、大気圧との差が、フィラーキャップ12のリリーフ弁の開弁圧以上の場合、リーク判定を禁止するので、フィラーキャップ12のリリーフ弁の作動に起因する誤診断を防止できる。
【0083】
図13は本発明の第5の参考例を示す。これは、リーク診断開始時とリーク診断終了時に系20内の圧力を測定して、これらの圧力と、大気圧との差が、燃料タンク2のフィラーキャップ12のリリーフ弁の開弁圧以上の場合、リーク判定を禁止するものである。
【0084】
ステップ61では、リークダウン処理(リーク診断)開始の判定を行なう。
【0085】
リークダウン処理を開始すると、ステップ62で絶対圧センサ9による系20内の圧力をリークダウン開始圧として、メモリにストアする。
【0086】
ステップ63では、リークダウン時間を計測する。
【0087】
リークダウン時間が経過すると、ステップ64で絶対圧センサ9による系20内の圧力をリークダウン終了圧として、メモリにストアする。
【0088】
リークダウン処理を終了すると、ステップ65からステップ66に進み、ドレンカットバルブ11を開状態にして、絶対圧センサ9によるリーク診断後の大気圧をメモリにストアする。
【0089】
ステップ67では、リーク診断後の大気圧とリークダウン開始圧との差(リークダウン開始時相対圧)を求め、ステップ68では、リーク診断後の大気圧とリークダウン終了圧との差(リークダウン終了時相対圧)を求める。
【0090】
そして、ステップ69、70では、リークダウン開始時相対圧、リークダウン終了時相対圧を燃料タンク2のフィラーキャップ12のリリーフ弁の開弁圧(しきい値)と比較して、いずれもその開弁圧よりも小さければ、ステップ71にてリーク判定を行う。
【0091】
一方、リークダウン開始時相対圧、リークダウン終了時相対圧のいずれかがその開弁圧以上であれば、ステップ72にてリーク判定を禁止する。
【0092】
このようにすれば、前記第4の参考例のように系20内の圧力の最小値を検出する場合に比べて、圧力の測定を容易に行える。なお、リークダウン開始圧のみ検出して、用いるようにしても良い。
【0093】
次に本発明の実施形態について説明する。
【0094】
エンジン始動の検出は、スタータスイッチのオン/オフを機械的に検出している。このオン/オフ信号を電気的にPOS信号やREF信号に置き換えてコントローラに送信した場合には、スタータスイッチのオン/オフを機械的に検出してからコントローラがエンジンの始動を検出するまでに時間的な遅れが生じることになる。
【0095】
この遅れについて詳しく説明すると、スタータスイッチが例えば、オン状態に切り換わると(機械的には、この時点でスタータスイッチがオンになったことを検出できる)、スタータのピニオンギアがドライブプレートのリングギアに噛み込み、スタータの回転がリングギアを介してエンジンに伝達され、回転する。エンジンの回転によりREF信号が出力され、センサがREF信号を検出し、コントローラにREF信号が出力される。コントローラはREFを入力することにより、スタータスイッチがオンに切り換わったことを検出するため遅れが生じることになる。
【0096】
エンジンの回転上昇に伴い発生するエンジンブーストにより燃料蒸発ガス処理装置内に負圧を生じさせるが、エンジンの始動検出が遅れるほど、燃料蒸発ガス処理装置内の圧力が負圧となり、パージバルブの故障診断時の基準圧が負圧側にずれることになる。基準圧が負圧側にずれるとパージバルブが故障したときに圧力との差圧が小さくなり、故障診断の精度が低下するという課題を生じる。
【0097】
以下、この課題を解決する本発明の実施形態を図3、図14と図15を用いて説明する。
【0098】
まず図14のフローチャートは、本発明の実施形態での基準圧を設定する制御内容を示すフローチャートであり、一定間隔、例えば10msecごとに行われるものである。また基準圧の初期値は予め記憶しておく。
【0099】
ステップ201では、基準圧の更新フラグ(0もしくは1)を判別する。更新フラグが0のときにはステップ202に進み、故障診断の計測条件が満たされているかどうかを判断する。一方、更新フラグが1の場合には、制御を終了する。なお、更新フラグの初期値として0を記憶しておく。
【0100】
計測条件として、例えば、以下のすべての条件を満たす必要がある。
1)他の構成、例えば、図示しない吸気通路6のブースト圧検出センサが故障している等のNG判定が出されていないこと2)ドレンカットバルブ11が開かれていること3)パージバルブ8が閉じられていること4)イグニッションスイッチがオンになっていること5)エンジン回転数が第1の所定回転数(例えば、500rpm)より低いこと6)バッテリ電圧が8V以上であることこれらの条件を満たしたときにステップ203に進み、スタータスイッチのオン/オフを電気的に判断する。計測条件を満たしていないときには制御を終了する。ステップ203でエンジンの始動状態を示す、例えばスタータスイッチがオンである場合には、ステップ206に進み、更新フラグを0から1に変えて制御を終了する。オフの場合にはステップ204に進み、計測された圧力が基準圧より高いか否かを判断する。高い場合にはステップ205に進み、以下の場合には制御を終了する。
【0101】
基準圧との比較に用いられる計測圧力は、負圧の影響を受けないように機械的にスタータスイッチがオンのとき、つまりエンジン始動時に設定を終える。
【0102】
詳しく説明すると、燃料蒸発ガス処理装置の配管内の圧力は絶対圧センサ9により検出され、圧力の検出は例えば、イグニッションスイッチがオンに切り換わるとともに開始され、エンジン回転数が所定回転数(例えば、エンジンストールに至る限界回転数)以下で、バッテリ電圧が所定電圧以下(例えば、8ボルト以下)で、かつエンジン回転数が上昇したときに、エンジンが始動したと判断し、圧力検出を中断する。そして、エンジン始動時までに検出された計測圧のうち最大値を基準圧と比較する。
【0103】
ステップ205では、絶対圧センサ9が検出した計測圧を基準圧として新たに記憶してスタータスイッチオンのエンジンスタート前の制御を終了する。なお基準圧はほぼ大気圧に相当する圧力となる。
【0104】
このようにしてパージバルブ8の故障診断時に使用される基準圧を設定することができるので、エンジンの起動に伴う燃料蒸発ガス処理装置内の負圧の影響を受けることなく、基準圧を正確に設定することができ、したがって、パージバルブ9の故障診断の精度を向上することができる。
【0105】
図14のフローチャートによって基準圧が設定された後に、パージバルブ8の開状態に固着された故障を判定するための圧力判定を行う制御は図3に示したフローチャートと同じ内容であり、ここでは説明しない。この制御は、一定間隔、例えば、100msec毎に実施されるものである。
【0106】
図15に示すタイミングチャートは、本発明の実施形態での各構成の作動状態を時系列に示したものである。なお、ステップは図3、14のフローチャートに対応するものである。
【0107】
まず、時刻t1でイグニッションスイッチがオンし、基準圧の計測条件を判断する(ステップ102)。条件を満たし、かつスタータスイッチがオフの場合に(ステップ103)、絶対圧センサ9の検出値をストアする。時刻t2でスタータスイッチがオン(機械的に)となり、エンジンが起動する。これに伴い、バッテリ電圧が低下し、また吸気通路6内の圧力も低下する。検出値の検出は、エンジン回転数が所定回転数以下で、バッテリ電圧が所定電圧以下で、かつエンジン回転数の上昇が検出されまで実施される。そして電気的スタータスイッチがオンになる(時刻t3)前に検出値の検出を終了し、検出値の最大値を基準圧として設定する。このように基準圧を設定することで、スタータスイッチが機械的にオンになることによってクランキングが開始され、燃料蒸発ガス処理装置内の圧力が負圧となり、不安定になる影響を排除することができ、確実に正確な大気圧を基準圧として設定することができる。
【0108】
時刻t4で、スタータスイッチはオフされるが、エンジンの回転は継続されている。スタータスイッチがオフされたため、バッテリ電圧は上昇する。スタータスイッチがオンの状態と、スタータスイッチがオフに切り換わった後の所定時間はエンジンの回転が不安定な状態となっており、パージバルブ8の故障診断に適切な状態となっていない。
【0109】
そこで時刻t6になるまで、つまりエンジンが安定状態になるまで故障診断を行わないようにする。エンジンの安定状態は時刻t5で確保することができると考えられるが、余裕分を考慮して時刻t6で故障診断のための圧力を検出し、記憶するようにしている。
【0110】
時刻t6で基準圧と検出値との差圧が所定値以上であれば(ステップ114)、パージバルブ8はコントローラ9からの指令が閉状態であるにもかかわらず、開状態となっているとして異常を告知する(ステップ116)。また差圧が所定値未満のほぼ大気圧を維持している場合には、パージバルブ8は正常な作動状態であるとしてエンジンの運転を維持する(ステップ115)。
【0111】
スタータスイッチの機械的なオン状態に対する電気的なオン状態の遅れに起因する燃料蒸発ガス処理装置内に生じる負圧によるパージバルブ故障診断の誤差要因は、故障診断の基準値を所定条件下で、負圧の影響を受けることなく設定することで、排除することができ、故障診断の精度を向上することができる。
【0112】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内でさまざまな変更がなしうることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【図1】燃料蒸発ガス処理装置の構成図である。
【図2】同じく基準圧を設定するための制御フローチャートである。
【図3】同じくパージバルブの故障を判定するための制御フローチャートである。
【図4】同じく第1の参考例の各構成の作動状態を示すタイミングチャートである。
【図5】第2の参考例の制御フローチャートである。
【図6】第2の参考例の制御フローチャートである。
【図7】第2の参考例の制御フローチャートである。
【図8】リーク診断制御のタイミングチャートである。
【図9】リーク診断制御のタイミングチャートである。
【図10】第3の参考例の制御フローチャートである。
【図11】リーク診断制御のタイミングチャートである。
【図12】第4の参考例の制御フローチャートである。
【図13】第5の参考例の制御フローチャートである。
【図14】本発明の実施の形態の制御フローチャートである。
【図15】本発明の実施形態の各構成の作動状態を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン
2 燃料タンク
3 キャニスタ
4 第1パージ配管
6 吸気通路
7a 第2パージ配管
7b 第3パージ配管
8 パージバルブ
9 絶対圧センサ
10 大気開放口
11 ドレンカットバルブ
15 コントローラ
Claims (2)
- 燃料タンクと、
前記燃料タンクから蒸発する蒸発燃料を吸着するキャニスタと、
前記キャニスタとキャニスタからの蒸発燃料が流入する吸気通路との途中に配置されるパージバルブと、
前記燃料タンクとキャニスタとを連通する第1の配管と、
前記キャニスタとパージバルブとを連通する第2の配管と、
前記パージバルブと吸気通路とを連通する第3の配管と、
前記第1または第2の配管内の絶対圧を検出するセンサと、
内燃機関のスタータモータの起動、停止を電気的に検出する手段と、
からなる燃料蒸気ガス処理装置において、
内燃機関のスタータモータの起動を電気的に検知するまでに前記センサが検出した配管内の圧力の最大値を前記パージバルブの故障診断に適用する基準圧として設定する故障診断装置を備えたことを特徴とする燃料蒸気ガス処理装置。 - 前記基準圧が設定された後、所定時間内に前記判定圧が設定されることを特徴とする請求項1に記載の燃料蒸気ガス処理装置。
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