JP3844189B2 - インクジェット式記録装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、往復移動されるキャリッジに搭載され、印刷デ−タに基づいてインク滴を吐出する記録ヘッドを備えたインクジェット式記録装置に関し、特に記録ヘッドのノズル形成面を封止することができるキャッピング手段が、記録ヘッドのノズル形成面に対して精度よく当接できるように構成したインクジェット式記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にインクジェット式記録装置は、キャリッジに搭載されて主走査方向に移動するインクジェット式記録ヘッドと、前記主走査方向に直交する副走査方向に記録用紙を搬送させる紙送り手段が具備され、印刷データに基づいて記録ヘッドよりインク滴を吐出させることで、記録用紙に対して印刷が実行される。前記したインクジェット式記録ヘッドは、圧力発生室で加圧したインクをノズル開口からインク滴として記録用紙に吐出させて印刷を行う関係上、ノズル開口からのインク溶媒の蒸発に起因するインク粘度の上昇や、インクの固化、塵埃の付着などによりノズル開口に目詰まりを発生させて、印刷不良を起こすという問題を抱えている。
【0003】
このために、この種のインクジェット式記録装置には、非印刷時に記録ヘッドのノズル形成面を封止するためのキャッピング手段を備えている。このキャッピング手段は、記録ヘッドにおけるノズル開口のインクの乾燥を防止する蓋体として機能するだけでなく、ノズル開口に目詰まりが生じた場合には、ノズル形成面を封止し、吸引ポンプからの負圧を作用させて、ノズル開口からインクを吸引排出させることでノズル開口の目詰まりを解消させるインク滴の吐出能力回復機能をも備えている。
【0004】
記録ヘッドの目詰まり解消のために行う強制的なインクの吸引排出処理は、クリーニング操作と呼ばれており、記録装置の長時間の休止後に印刷を再開する場合や、ユーザが印刷不良を認識して例えばクリーニングスイッチを操作した場合などに実行される。そして、前記したとおり吸引ポンプによる負圧を加えて記録ヘッドよりキャッピング手段内にインクを吸引排出させた後に、例えばゴム材料等により形成したワイピング部材により、ノズル形成面を払拭する操作が伴われる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記したキャッピング手段には、記録ヘッドのノズル形成面に当接してシールするキャップ部材を備えたキャップホルダと、このキャップホルダを搭載したスライダが具備され、記録ヘッドが搭載されたキャリッジの移動に伴う駆動力を前記スライダが受けることにより、キャップホルダを記録ヘッドのノズル形成面に向かって上昇させることができるように構成されている。
【0006】
そして、スライダとキャップホルダとの間にはバネ部材が配置されおり、スライダの上昇によって、キャップホルダに形成されたキャップ部材が記録ヘッドのノズル形成面を封止した状態において、前記バネ部材が若干収縮し、当該バネ部材の弾性力によって、キャップ部材がノズル形成面に適正な圧力をもって当接されるように構成されている。
【0007】
この場合、前記スライダには1本の当接部材が垂直方向に突出するように形成されている。そして、キャリッジがキャッピング手段の直上に移動した時に、前記当接部材がキャリッジの一部に当接し、なおもキャリッジが同方向に進行することにより、前記当接部材を介してスライダが同方向に移動されるように構成されている。このスライダは、前記した移動動作に伴って記録ヘッド側にせり上がるような昇降機構を構成しており、これにより、スライダに搭載されたキャップ部材を備えたキャップホルダが上昇し、記録ヘッドのノズル形成面は前記キャップ部材によって封止されるようになされる。
【0008】
一方、キャリッジが印刷領域側に移動した場合には、前記スライダは戻しバネの作用により同方向に移動し、これに伴いキャップ部材を備えたキャップホルダが降下されるため、キャッピング状態が解除される。
【0009】
前記したように、キャッピング動作を実行する場合には、キャリッジの移動による駆動力を、スライダに形成された1本の当接部材が受けるように構成されており、したがって、スライダとこれを上下方向に移動できるように支持するフレームとの間に多少の遊びが有る場合には、記録ヘッドのノズル形成面に当接する前記キャップ部材の位置精度が低下する。このために、スライダは、いわゆる首振りするような動作を行ない、これに伴い記録ヘッドに形成されたノズル開口の一部を、前記キャップ部材が閉塞するなどして、正常なクリーニング動作を実行することが困難となる場合が発生する。
【0010】
また、記録用紙の厚さに対応させて、記録ヘッドとプラテンとの間のプラテンギャップを調整することができるプラテンギャップ調整手段が備えられており、これを操作した場合には、前記調整手段を構成する偏心軸の回動によってキャリッジが若干副走査方向に相対的に移動されるため、同様にノズル開口の一部を、前記キャップ部材が閉塞するなどして、正常なクリーニング動作を実行することが困難となる場合が発生する。
【0011】
特に昨今においては、印刷の多様化が求められ、相当な厚紙を印刷用紙として利用しようとする要求が高まっており、これに応じて前記したプラテンギャップ調整手段による調整可能な範囲も、従来に比べて大幅に増大させる必要に迫られている。したがって、プラテンギャップ調整手段の操作により生ずるキャリッジの副走査方向への移動量は益々増大し、前記したような問題がより顕著に発生することになる。
【0012】
本発明は、前記したような問題点に着目してなされたものであり、スライダとこれを上下方向に移動できるように支持するフレームとの間の遊びを積極的に利用して、キャッピング手段のキャップ部材が記録ヘッドのノズル形成面に対して精度よく当接できるように構成したインクジェット式記録装置を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記した目的を達成するためになされた本発明にかかるインクジェット式記録装置は、往復移動されるキャリッジに搭載され、印刷デ−タに基づいてインク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドと、前記記録ヘッドのノズル形成面を封止することができるキャッピング手段とを備えたインクジェット式記録装置であって、前記キャッピング手段には、少なくともキャリッジの移動に伴う駆動力を受けて上下方向に移動するスライダと、前記スライダに搭載されて記録ヘッドのノズル形成面を封止するキャップ部材とが具備され、前記キャリッジ側および前記スライダ側には、前記キャリッジの移動に伴って一対一で当接する第1の当接部材がそれぞれ備えられ、前記第1の当接部材を構成するキャリッジ側またはスライダ側におけるいずれか一方の当接部材の当接面がV字状に形成され、V字状に形成された当接部材に対向する他方の当接部材が、V字状の中央部に入り込んだ状態で前記スライダに前記キャリッジの移動に伴う駆動力が伝達されるように構成され、前記キャリッジ側およびスライダ側における前記第1の当接部材の互いの当接により、前記スライダの主走査方向および副走査方向の位置を規制すると共に、前記キャリッジ側および前記スライダ側には、前記第1の当接部材以外の第2の当接部材がそれぞれ備えられ、前記キャリッジの移動に伴って前記第2の当接部材が互いに当接することで、前記スライダの主走査方向の位置を規制するように構成される。
【0014】
この場合、好ましくは前記V字状の中央部に入り込む他方の当接部材は、円柱状に形成されていることが望ましい。
【0015】
さらに、前記第2の当接部材を構成するキャリッジまたはスライダに具備される一方の当接部材の当接面は、好ましくは平面状に形成される。また、前記したV字状に形成された当接部材は好ましくはキャリッジ側に具備される。そして、好ましい実施の形態においては、前記キャリッジ側に、当接面がV字状に形成された前記第1の当接部材の一方を構成する当接部材と、当接面が平面状に形成された前記第2の当接部材の一方を構成する当接部材とが具備され、前記スライダ側に円柱状に形成された前記第1および第2の当接部材の他方を構成する一対の当接部材がそれぞれ具備された構成とされる。
【0016】
前記した駆動力伝達手段を備えた構成における好ましい実施の形態においては、前記スライダは、前記駆動力伝達手段を介した駆動力を受けて、フレ−ムに対して回動可能に取り付けられたリンクア−ムを介して記録ヘッド側に移動できるように構成される。加えて、前記スライダには、さらに水平方向にガイド突起が形成され、フレ−ムに傾斜状態に形成された案内溝に前記ガイド突起が摺動されることにより、記録ヘッド側に移動できるように構成される。
【0017】
以上のように構成された記録装置においては、キャリッジ側およびスライダ側には、キャリッジの移動に伴って一対一で当接する第1の当接部材がそれぞれ備えられ、前記キャリッジ側およびスライダ側における前記第1の当接部材の互いの当接により、前記スライダの主走査方向および副走査方向の位置が同時に規制されるように作用する。
【0018】
加えて、前記第1の当接部材を構成するキャリッジ側またはスライダ側におけるいずれか一方の当接部材がV字状に形成され、また、V字状に形成された当該当接部材に対向する他方の当接部材が円柱状に形成されることで、この円柱状に形成された当接部材がV字状の中央部に入り込んだ状態で、前記スライダに駆動力が伝達されるように作用する。
【0019】
したがって、スライダはキャリッジによって主走査方向および副走査方向に位置規制されることになり、特にプラテンギャップ調整手段の操作により生ずるキャリッジの副走査方向への移動に対しても、スライダはその副走査方向に移動しつつキャッピング状態に移行する。したがって、キャッピング手段のキャップ部材が記録ヘッドのノズル形成面に対して精度よく当接することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかるインクジェット式記録装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。図1は本発明が適用されたインクジェット式記録装置の基本構成を示すものである。図1において符号1はキャリッジであり、このキャリッジ1はキャリッジモータ2により駆動されるタイミングベルト3を介し、ガイド部材4に案内されてプラテン5の軸方向に往復移動されるように構成されている。前記キャリッジ1の記録用紙6に対向する面(下側面)には、後述するようにインクジェット式記録ヘッドが搭載され、またその上部には前記記録ヘッドにインクを供給するブラックインクカートリッジ7、およびカラーインクカートリッジ8が着脱可能に装填されている。
【0021】
図中符号9は、非印刷領域(ホームポジション)に配置されたキャッピング手段であって、キャリッジ1に搭載された記録ヘッドが直上に移動した時に上昇して、記録ヘッドのノズル形成面を封止できるように構成されている。そしてキャッピング手段9の下方には、キャッピング手段9の内部空間に負圧を与えるための吸引ポンプ10が配置されている。
【0022】
前記キャッピング手段9は、記録装置の休止期間中における記録ヘッドのノズル開口の乾燥を防止する蓋体として機能する他、前記吸引ポンプ10からの負圧を記録ヘッドに作用させて、記録ヘッドよりインクを吸引排出させるクリーニング手段として機能し、さらに、記録ヘッドに印刷とは関係のない駆動信号を印加してインク滴を空吐出させるフラッシング動作時のインク受けとしての機能も兼ねている。
【0023】
そして、キャッピング手段9の印刷領域側に隣接して、ゴム素材を短冊状に成形したワイピング部材11が、水平方向に進退可能となるように配置されていて、キャリッジ1がキャッピング手段9側に往復移動する際に、必要に応じて記録ヘッドのノズル形成面を払拭することができるように構成されている。これにより、例えばクリーニング動作後においてノズル形成面に付着しているインクを掻き取ることができ、記録ヘッドからインクがボタ落ちするなどして、記録用紙等を汚染させるのを防止できるようになされている。
【0024】
次に図2乃至図4は、前記記録装置に搭載された主にキャッピング手段の構成を示したものである。なお、図2はキャッピング手段を上面から視た状態を示しており、また図3は非キャッピング状態を側面から視た状態で示している。さらに、図4はキャッピング状態を側面から視た状態で示している。
【0025】
まず、図3および図4に示す符号1は、前記したキャリッジであり、このキャリッジ1の下底面には記録ヘッド15が搭載されている。前記記録ヘッド15のノズル形成面15aを封止することができるキャッピング手段9には、方形状に形成されたキャップホルダ21が具備され、このキャップホルダ21の内底部および開口周縁の上部を覆うようにして、エラストマー等の可撓性素材により形成されたキャップ部材22が形成されている。そして、図2に示したようにキャップ部材22とキャップホルダ21を貫通するようにして2つのインク排出口23が形成されており、このインク排出口23に接続された前記吸引ポンプ10の負圧を受けて、記録ヘッド15よりインクを吸引排出させることができるように構成されている。
【0026】
前記キャップホルダ21上に形成されたキャップ部材22の内底部には、インク排出口23を覆うようにしてシート状のインク吸収材24が収容されており、クリーニング動作またはインク滴の吐出を伴うフラッシング動作によって記録ヘッドから排出されたインクを、これにより一時的に保持することができるように構成されている。そして、キャップホルダ21は昇降機構を構成するスライダ26上に搭載されている。このスライダ26の構成は図5に斜視図で示されている。
【0027】
前記スライダ26には、2つのバネ受け用の突起27が形成されており、一方、図3および図4に示されたように、前記キャップホルダ21の下底面にも同様にバネ受け用の突起25が形成されている。そして、それぞれの突起25,27を利用してバネ部材28が配置されており、このバネ部材28によってスライダ26に対してキャップホルダ21が上方に突出されるように付勢されている。この構成によって、図4に示すように記録ヘッドのノズル形成面をキャッピングした状態において、前記バネ部材28が若干圧縮され、当該バネ部材28の弾性力によって、キャップホルダ21に形成されたキャップ部材22がノズル形成面に対して適正な圧力をもって当接されるように作用する。
【0028】
図5に示されたように、前記スライダ26のほぼ中央部には、上部に向かって柱状の支持部材30が形成されており、この支持部材30内には長手方向(上下方向)に沿って空洞部が形成されている。そして、支持部材30の長手方向に沿って前記空洞部に達するスリット32が形成されており、さらに柱状の支持部材における基端部には、幅広の開口部33が形成されている。また、前記スライダ26の端部には、水平方向に突出するように形成された一対の支持部材34が形成されている。
【0029】
一方、図2に示されたように、キャップホルダ21にはスライダ26に形成された前記3つの各支持部材30,34によって支持される被支持部材35,36がそれぞれ形成されている。前記キャップホルダ21の端部中央に形成された被支持部材35は、その先端部がT字状に形成されており、またキャップホルダ21の他端部における両外側に形成された一対の被支持部材36は、上下方向に立ち上がった溝状に形成されている。
【0030】
そして、キャップホルダ21にT字状に形成された被支持部材35は、前記スライダ26に形成された柱状の支持部材30に形成された前記幅広の開口部33を介して支持部材30内に収納されている。これにより、キャップホルダ21にT字状に形成された被支持部材35は、スライダ26における支持部材30に形成されたスリット32を介して上下に移動されつつ、垂直方向に離脱するのを阻止できるように構成されている。
【0031】
また、図2に示されたように、キャップホルダ21に溝状に形成された一対の被支持部材36には、スライダ26に水平方向に突出するように形成された一対の支持部材34の先端部が入り込むようにしてキャップホルダ21を支持している。これにより、キャップホルダ21は、スライダ26から所定以上突出することが規制された状態で、キャップホルダ21はスライダ26上に搭載されている。
【0032】
また、図5に示されたように、スライダ26における柱状の支持部材30には、支持部材30の長手方向に沿って一対の溝部38がそれぞれ形成されている。一方、前記キャップホルダ21には図2に示されたように、T字状に成形された被支持部材35を中央にして、その両外側に一対の係止部材40が平行状態に形成されている。この一対の係止部材40の間隔は、スライダ26に形成された柱状の支持部材30の横幅に対して僅かに広く形成されており、これにより、キャップホルダ21に形成された一対の係止部材40は、スライダ26に形成された柱状の支持部材30を、その両外側から包囲することができるように構成されている。
【0033】
そして、この実施の形態においてはキャップホルダ21に形成された一対の係止部材40の先端部に、互いに内向きとなるように爪部材40aが形成されている。したがって、キャップホルダ21におけるT字状に成形された被支持部材35を、スライダ26における支持部材30の基端部に形成された幅広の開口部33に挿入することで、前記一対の爪部材40aがスライダ26における支持部材30に形成された一対の溝部38内にそれぞれ係止される。これにより、スライダ26に対してキャップホルダ21が上下方向に移動できると共に、スライダに26対してキャップホルダ21が水平方向に離脱するのを阻止することができる。
【0034】
一方、図3および図4に示されたように、前記スライダ26の下底部には、左右に一対の長穴41がほぼ水平方向に形成されている。そして、フレ−ム42に対して回動可能に取り付けられたリンクア−ム43の自由端側には、一対の水平軸44が取り付けられており、この水平軸44が前記各長穴41内に移動可能となるように収容されている。これにより、スライダ26はリンクア−ム43を介してフレ−ム42に対して、ほぼ円弧状軌跡をもって立ち上がることができる。
【0035】
また、前記スライダ26のホームポジション側における端部両側には、それぞれガイド突起46が水平方向に形成されていて、この一対のガイド突起46はフレ−ム42に形成された一対の案内溝47によって支持されるように構成されている。この案内溝47は一端部に形成された低所部47aと、他端部に形成された水平な高所部47bと、さらにこれらを接続する傾斜部47cとにより構成されており、これら3つの領域が連通して形成されている。
【0036】
さらに、スライダ26とフレ−ム42との間には、引っ張りバネ48が張架されていて、この引っ張りバネ48の作用により、スライダ26は印刷領域方向、かつ記録ヘッド15から離間する方向、すなわちこの実施の形態においては下方に位置するように付勢されている。
【0037】
そして、図3に示すようにキャリッジ1がキャッピング手段9の直上に移動した際、キャリッジ1側に配置された後述する当接部材49が、スライダ26に直立するように形成された円柱状の一対の当接部材50に当接することで、図4に示すようにバネ48の引張力に抗しながら、スライダ26はリンクア−ム43を介して立ち上げられる。これと同時に、一対のガイド突起46はフレ−ム42に形成された一対の案内溝47内を傾斜部47cから高所部47bに向かって進行する。したがって、キャップホルダ21に一体に形成されたキャップ部材22が、キャリッジ1に搭載された記録ヘッド15のノズル形成面15aを封止するようになされる。
【0038】
また、キャリッジ1が印刷領域側に移動した場合には、スライダ26に配置された係止部50に対するキャリッジ1側の当接部材49の当接が解かれ、スライダ26はバネ48の引張力によって図3に示した状態に復帰し、これにより、キャップ部材22による記録ヘッド15のノズル形成面の封止が解除される。
【0039】
なお、図3に示したように、非キャッピング状態においては、キャップ部材22におけるシール面、すなわち記録ヘッド15のノズル形成面に当接する上端面は、記録ヘッド15のノズル形成面に対して非平行状態となるように構成されている。すなわち、キャップ部材22のシール面はホームポジション側(図3における右側)端部に対して印刷領域側に僅かに下降するように傾斜状態になされている。これは、スライダ26に形成された長穴41内を移動する水平軸44の位置と、フレ−ム42に形成された一連の案内溝47内を摺動するガイド突起46の配置位置との関係により構成されている。
【0040】
そして、キャップ部材22は、記録ヘッド15のノズル形成面を封止する状態においては、先ずホームポジション側よりノズル形成面15aに当接し、スライダ26の上昇に伴うバネ部材28の縮小作用にしたがって、記録ヘッド15のノズル形成面の全面を封止するように作用する。また、キャップ部材22は、記録ヘッド15のノズル形成面の封止を解く場合においては、記録ヘッド15のノズル形成面に対して、先ず印刷領域側の端部から離れ、ノズル形成面に対して非平行状態で離間するように作用する。
【0041】
このように、記録ヘッドのノズル形成面の封止の解除に際しては、キャップ部材22は、記録ヘッド15のノズル形成面より、印刷領域側の端部から離れ、ノズル形成面に対して非平行状態で離間するように作用するので、記録ヘッドのノズル形成面に残ろうとするインク廃液は、キャップ部材22内に貯留されたインク廃液側に引き戻される作用を受け、このような作用により記録ヘッド15のノズル形成面に残るインクの量を極力低減させることができる。また、記録ヘッド15のノズル形成面に対するキャップ部材22の封止の解除が、一方の端部から進行するため、キャップ部材22内に貯留されたインク廃液が不要に泡立つという現象も低減させることができる。
【0042】
図6はキャリッジ1に配置された前記当接部材49の構成を、上面から視た状態で示している。なお、図6においては当接部材49が配置されたキャリッジの一部のみが示されている。このキャリッジ1には、矢印Aで示すホームポジション側への進行方向に向かって一対の当接部材が配置されており、その一方の第1の当接部材49Aは、その当接面がV字状に形成されている。また他方の第2の当接部材49Bは、その当接面が平面状に形成されている。
【0043】
一方、スライダ26側には、前記したように円柱状に形成された一対の当接部材50がそれぞれ形成されており、この構成により図2に鎖線で示したように、キャリッジが矢印A方向に移動することにより、キャリッジ1側におけるV字状に形成された第1の当接部材49Aが、スライダ26側における円柱状の第1の当接部材50に当接する。また、キャリッジ1側における平面状に形成された第2の当接部材49Bがスライダ26側における円柱状の第2の当接部材50に当接する。すなわち、この構成によってキャリッジの移動に伴い、キャリッジ側からスライダ側に対して二点で当接する駆動力伝達手段を構成している。
【0044】
この場合、キャリッジ1側のV字状に形成された第1の当接部材49Aが、スライダ26側に形成された第1の円柱状の当接部材50に当接する際、円柱状の当接部材50がキャリッジ1側の当接部材49AにおけるV字状の中央部に入り込み、スライダ26を矢印A方向に押し出す。この作用によって、スライダ26はキャリッジ1によって、主走査方向および副走査方向への位置規制を受ける。一方、キャリッジ1側の第2の当接部材49Bも、スライダ26に形成された他の円柱状の当接部材50に当接してスライダ26を矢印A方向に押し出す。この作用によって、スライダ26はキャリッジ1によって、走査方向への位置規制がなされる。また、スライダ26は二点で駆動力を受けるために、前記したような首振り運動の発生が抑制される。
【0045】
一方、図7には前記した記録装置に搭載されたプラテンギャップ調整手段の一例が示されている。図7に示すようにキャリッジ1は、ガイド部材4に案内されて図7の紙面上において、垂直方向に移動されるように構成されている。そして、このガイド部材4内には中軸4aが回動可能となるように収納されており、さらにこの中軸4aは、その長手方向の左右端で記録装置における左右のフレームに軸支された偏心軸4bによって支持されている。前記中軸4aには摺動溝61aを備えた作動レバー61が結合されており、この作動レバー61に形成された摺動溝61aには、前記フレームにその中央部が軸支された操作レバー62における被作動端に配置された摺動子62aが摺動可能に挿入されている。
【0046】
前記操作レバー62の操作側の端部には、これを回動することができる操作部材63が取り付けられており、したがって、操作部材63を利用して操作レバー62を矢印方向に回動させることにより、記録ヘッド15を搭載したキャリッジ1は、上下方向に移動できるようになされる。すなわち、この実施の形態においては、操作レバー62を実線で示すように手前に引く(図7において左回転させる)ことにより、作動レバー61は図において右回転され、これにより前記偏心軸4bの作用によってキャリッジは若干降下し、この結果、記録ヘッド15が下方に移動して、図1に示したプラテン5とのギャップ間隔が狭められるように作用する。
【0047】
また、操作レバー62を鎖線で示すように直立状態に立てることにより、作動レバー61は図において左回転され、これにより前記偏心軸4bの作用によってキャリッジは若干上昇し、この結果、記録ヘッド15が上方に移動して、図1に示したプラテン5とのギャップ間隔が広げられるように作用する。
【0048】
前記した構成から理解されるように、プラテンギャップ調整手段を操作した場合には、記録ヘッド1のノズル形成面とプラテンとの間のギャップが調整できるだけでなく、偏心軸4bの作用によって記録ヘッド1は副走査方向にも移動されることになる。この副走査方向への移動量は、プラテンギャップの調整量を大きくとった場合には、それにほぼ比例して増大する。
【0049】
図8は、前記したようにプラテンギャップの調整に伴って、記録ヘッド15が副走査方向に移動した場合における駆動力伝達手段の作用を説明するものである。なお図8(A),(B)は、すでに説明した図2における駆動力伝達手段を示す一部の構成を示しており、それぞれ同一部分は同一符号で示している。まず、図8(A)は、プラテンギャップの調整操作によって、キャリッジ1が副走査方向の一方向にずれた状態を示している。この状態において、キャリッジ1が矢印A方向に進行した場合、キャリッジ1側のV字状に形成された当接部材49Aの斜面が、スライダ26に形成された一方の円柱状の当接部材50に当接する。
【0050】
この状態で、なおもキャリッジ1が矢印A方向に進行すると、スライダ26に形成された一方の円柱状の当接部材50は、キャリッジ1側の当接部材49AにおけるV字状の中央部に入り込み、この状態でスライダ26を矢印A方向に押し出すように作用する。キャリッジ1側の当接部材49AにおけるV字状の中央部に、スライダ26側の円柱状の当接部材50入り込んだ時、キャリッジ1側の平面状に形成された当接部材49Bは、スライダ26に形成された他方の円柱状の当接部材50にも当接し、この状態でスライダ26を矢印A方向に押し出し、前記したようにキャッピング状態とすることができる。
【0051】
すなわち、スライダ26はキャリッジ1の副走査方向への移動に追従して同方向に移動してキャッピング状態となされる。また、図8(B)は、プラテンギャップの調整操作によって、キャリッジ1が副走査方向の他方向にずれた状態を示している。この場合においても、前記図8(A)に基づいて説明した前記作用と同様に、キャリッジ1側の当接部材49AにおけるV字状の中央部にスライダ26に形成された一方の円柱状の当接部材50が入り込み、結果として、スライダ26はキャリッジ1の副走査方向への移動に追従して同方向に移動してキャッピング状態となされる。
【0052】
前記した作用によって、記録ヘッド15のノズル形成面15aに対して、キャップ部材22が精度よく追従して当接し、ノズル形成面を封止状態とすることができる。これにより、ノズル形成面15aに形成されたノズル開口の全てを、キャップ部材22によって封止することができ、例えばクリーニング動作を実行させた場合において、全てのノズル開口よりインクを吸引排出させる動作が保証される。
【0053】
なお、前記した実施の形態においては、キヤリッジ側にV字状に形成された当接部材49Aと、平面状に形成された当接部材49Bの一対が配置され、スライダ側にそれぞれ円柱状の一対の当接部材50が配置されているが、前記各一対の当接部材の関係は、キャリッジ側およびスライダ側において入れ替えても、同様の作用効果を得ることができる。また、キャリッジ側の一方およびスライダ側の一方にそれぞれ円柱状の当接部材を配置する構成としてもよい。要するに、V字状に形成された当接部材に対して円柱状の当接部材が対向し、平面状に形成された当接部材に対して円柱状の当接部材が対向する構成とすることで、同様の作用効果を得ることができる。
【0054】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、この発明によるインクジェット式記録装置によると、キャリッジの移動に伴い、キャリッジ側からスライダ側に対して二点で当接する駆動力伝達手段を介して、スライダ側に駆動力が伝達されるように構成したので、ノズル形成面を封止するキャップ部材が形成されたキャッピング手段の首振り動作を抑制することができる。この結果、キャッピング手段を構成するキャップ部材が記録ヘッドのノズル形成面に対して精度よく当接することができる。
【0055】
これに加えて、キャリッジ側またはスライダ側におけるいずれか一方の当接部材がV字状に形成し、また、V字状に形成された当接部材に対向する他方の当接部材が円柱状に形成した構成を採用することで、スライダはキャリッジによって位置規制されて主走査方向および副走査方向に追従し、したがって、キャッピング手段を構成するキャップ部材が記録ヘッドのノズル形成面に対して精度よく当接することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されたインクジェット式記録装置の基本構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す記録装置に搭載された主にキャッピング手段の構成を示した上面図である。
【図3】同じくキャッピング手段における非キャッピング状態を示す側面図である。
【図4】同じくキャッピング手段におけるキャッピング状態を示す側面図である。
【図5】キャッピング手段を構成するスライダの構成を示した斜視図である。
【図6】キャリッジの一部に配置された当接部材の構成を示した平面図である。
【図7】記録装置に搭載されたプラテンギャップ調整手段の一例を示した側面図である。
【図8】プラテンギャップの調整に伴って、記録ヘッドが副走査方向に移動した場合における駆動力伝達手段の作用を説明する平面図である。
【符号の説明】
1 キャリッジ
2 キャリッジモータ
4 ガイド部材
4a 中軸
4b 偏心軸
6 記録用紙
7 ブラックインクカートリッジ
8 カラーインクカートリッジ
9 キャッピング手段
10 吸引ポンプ
11 ワイピング部材
15 記録ヘッド
15a ノズル形成面
21 キャップホルダ
22 キャップ部材
26 スライダ
30,34 支持部材
35,36 被支持部材
42 フレ−ム
43 リンクア−ム
46 ガイド突起
47 案内溝
47c 傾斜部
49A,49B キャリッジ側当接部材
50 スライダ側当接部材
61 作動レバー
62 操作レバー
63 操作部材

Claims (7)

  1. 往復移動されるキャリッジに搭載され、印刷デ−タに基づいてインク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドと、前記記録ヘッドのノズル形成面を封止することができるキャッピング手段とを備えたインクジェット式記録装置であって、
    前記キャッピング手段には、少なくともキャリッジの移動に伴う駆動力を受けて上下方向に移動するスライダと、前記スライダに搭載されて記録ヘッドのノズル形成面を封止するキャップ部材とが具備され、
    前記キャリッジ側および前記スライダ側には、前記キャリッジの移動に伴って一対一で当接する第1の当接部材がそれぞれ備えられ、前記第1の当接部材を構成するキャリッジ側またはスライダ側におけるいずれか一方の当接部材の当接面がV字状に形成され、V字状に形成された当接部材に対向する他方の当接部材が、V字状の中央部に入り込んだ状態で前記スライダに前記キャリッジの移動に伴う駆動力が伝達されるように構成され、
    前記キャリッジ側およびスライダ側における前記第1の当接部材の互いの当接により、前記スライダの主走査方向および副走査方向の位置を規制すると共に、
    前記キャリッジ側および前記スライダ側には、前記第1の当接部材以外の第2の当接部材がそれぞれ備えられ、前記キャリッジの移動に伴って前記第2の当接部材が互いに当接することで、前記スライダの主走査方向の位置を規制するように構成したことを特徴とするインクジェット式記録装置。
  2. 前記V字状の中央部に入り込む他方の当接部材が、円柱状に形成されてなる請求項1に記載のインクジェット式記録装置。
  3. 前記第2の当接部材を構成するキャリッジまたはスライダに具備される一方の当接部材は、当接面が平面状に形成されてなる請求項1または請求項2に記載のインクジェット式記録装置。
  4. 前記V字状に形成された当接部材がキャリッジ側に具備されてなる請求項1に記載のインクジェット式記録装置。
  5. 前記キャリッジ側に、当接面がV字状に形成された前記第1の当接部材の一方を構成する当接部材と、当接面が平面状に形成された前記第2の当接部材の一方を構成する当接部材とが具備され、前記スライダ側に円柱状に形成された前記第1および第2の当接部材の他方を構成する一対の当接部材がそれぞれ具備されてなる請求項3に記載のインクジェット式記録装置。
  6. 前記スライダは、前記駆動力伝達手段を介した駆動力を受けて、フレ−ムに対して回動可能に取り付けられたリンクア−ムを介して記録ヘッド側に移動できるように構成した請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のインクジェット式記録装置。
  7. 前記スライダには、さらに水平方向にガイド突起が形成され、フレ−ムに傾斜状態に形成された案内溝に前記ガイド突起が摺動されることにより、記録ヘッド側に移動できるように構成された請求項6に記載のインクジェット式記録装置。
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